(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148112
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ウィンドウフィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231005BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20231005BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20231005BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231005BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J133/14
C09J11/06
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055976
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】加茂 実希
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AH06B
4F100AH06G
4F100AH06H
4F100AK04C
4F100AK25B
4F100AK25G
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA07B
4F100CA07G
4F100CA07H
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4J004AA10
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4J040HD32
4J040JA09
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4J040KA29
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4J040LA06
4J040LA10
4J040LA11
4J040MA05
4J040NA12
4J040NA16
4J040PA23
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】被着体との良好な密着性と、被着体への貼着の際に、糊ズレ発生の抑制とを高いレベルで両立することが可能なウィンドウフィルムを提供すること。
【解決手段】本発明のウィンドウフィルムは、基材と、基材の一方の面側に設けられた粘着剤層とを備えるウィンドウフィルムであって、粘着剤層は、アクリル系粘着剤と、シランカップリング剤とを含む材料で構成され、シランカップリング剤は、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物であり、該3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、アクリル系粘着剤との反応物として粘着剤層に含まれていることを特徴とする。3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の割合が、アクリル系粘着剤:100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面側に設けられた粘着剤層とを備えるウィンドウフィルムであって、
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤と、シランカップリング剤とを含む材料で構成され、
前記シランカップリング剤は、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物であり、該3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、前記アクリル系粘着剤との反応物として前記粘着剤層に含まれていることを特徴とするウィンドウフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層における、前記3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の含有量が、前記アクリル系粘着剤:100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下である請求項1に記載のウィンドウフィルム。
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤は、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上99質量%以下の割合で含有し、かつ、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを0.5質量%以上20質量%以下の割合で含有するものである請求項1または2に記載のウィンドウフィルム。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、および、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルよりなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項3に記載のウィンドウフィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層は、さらに紫外線吸収剤を含むものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項6】
前記基材は、ポリエステルを含む材料で構成されたものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項7】
前記粘着剤層の厚さが、1μm以上100μm以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層の、前記基材とは反対側の面に剥離ライナーが配されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載のウィンドウフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドウフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンドウフィルムとは、自動車、船舶、鉄道等の車両、家屋、マンション、オフィスビル等の建築物等の窓ガラスに適用される粘着フィルムであり、太陽光中の紫外線および/または赤外線の遮蔽、プライバシー保護、防犯、ガラスの飛散防止、装飾等を目的として広く使用されている。(例えば、特許文献1)
【0003】
ウィンドウフィルムの施工方法としては、貼り直しや位置の調整が容易であることから、被着体の表面に、界面活性剤を水に添加した施工液を吹き付けた後、ウィンドウフィルムを被着体に積層し、スキージと呼ばれる治具で圧力をかけつつ、ウィンドウフィルムと被着体との間の空気や水分等を押し出してウィンドウフィルムを貼着する、いわゆる水貼りと呼ばれる方法が広く採用されている。(例えば、特許文献2)
【0004】
上記のようにウィンドウフィルムを被着体に貼着する際に、ウィンドウフィルムを被着体に積層した後、圧力をかける前に、ウィンドウフィルムを手で押してずらすことにより位置を調整する場合があるが、この際に、ウィンドウフィルムの基材と粘着剤層とのズレ、いわゆる糊ズレが発生することがある。ウィンドウフィルムに糊ズレが発生すると、外観低下や機能低下の原因となってしまう。
【0005】
このような糊ズレは、ウィンドウフィルムと被着体との粘着力が高いことにより問題となるものであり、被着体との良好な密着性と、被着体への貼着の際に、糊ズレの発生の抑制とを高いレベルで両立することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-012082号公報
【特許文献2】特開2018-150392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、被着体との良好な密着性と、被着体への貼着の際に、糊ズレの発生の抑制とを高いレベルで両立することが可能なウィンドウフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、以下の本発明により達成される。
本発明のウィンドウフィルムは、基材と、前記基材の一方の面側に設けられた粘着剤層とを備えるウィンドウフィルムであって、
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤と、シランカップリング剤とを含む材料で構成され、
前記シランカップリング剤は、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物であり、該3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、前記アクリル系粘着剤との反応物として前記粘着剤層に含まれていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、前記粘着剤層における、前記3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の含有量が、前記アクリル系粘着剤:100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0010】
本発明では、前記アクリル系粘着剤は、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50質量%以上99質量%以下の割合で含有し、かつ、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを0.5質量%以上20質量%以下の割合で含有するものであることが好ましい。
【0011】
本発明では、前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、および、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルよりなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0012】
本発明では、前記粘着剤層は、さらに紫外線吸収剤を含むものであることが好ましい。
本発明では、前記基材は、ポリエステルを含む材料で構成されたものであることが好ましい。
【0013】
本発明では、前記粘着剤層の厚さが、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明では、前記粘着剤層の、前記基材とは反対側の面に剥離ライナーが配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被着体との良好な密着性と、被着体への貼着の際に、糊ズレの発生の抑制とを高いレベルで両立することが可能なウィンドウフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のウィンドウフィルムの一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]ウィンドウフィルム
まず、本発明のウィンドウフィルムについて説明する。
【0018】
図1は、本発明のウィンドウフィルムの一構成例を示す断面図である。
ウィンドウフィルム1は、基材2と、基材2の一方の面側に設けられた粘着剤層3とを備えている。そして、粘着剤層3は、アクリル系粘着剤と、シランカップリング剤とを含む材料で構成され、前記シランカップリング剤は、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物であり、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、アクリル系粘着剤との反応物として粘着剤層3に含有されている。
【0019】
下記式(1)で表されるように、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、アルコキシシリル基および酸無水物基を有するシランカップリング剤である。
【0020】
【0021】
下記式(2)に示すように、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、粘着剤層3中において、アクリル系粘着剤と反応し、酸無水物部分が開環した状態で存在している。言い換えると、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、アクリル系粘着剤との反応物として粘着剤層3に含まれている。このように、シランカップリング剤が酸無水物基を有することにより、アクリル系粘着剤との反応性に優れ、粘着力がより優れたものとなる。特に、粘着剤層3と基材2との密着性が優れたものとなる。
【0022】
【0023】
また、ウィンドウフィルム1の被着体がガラスである場合に、粘着剤層3が、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を含有することで、ウィンドウフィルム1をいわゆる水貼りによりガラスに貼着するときに、シランカップリング剤のアルコキシシリル基が加水分解してSiOHを生成し、ガラス表面に水素結合により吸着すること、または、ガラスとの間で-O-Si-O-という共有結合を形成することで、粘着剤層3とガラスとの密着性が優れたものとなる。
【0024】
このように、本発明のウィンドウフィルム1では、粘着剤層3が、アルコキシシリル基および酸無水物基を有するシランカップリング剤である3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物を含有することで、粘着剤層3は、被着体への密着性と、基材2との密着性とに、ともに優れたものとなる。
【0025】
これにより、ウィンドウフィルム1のガラスへの貼着時に、位置調整のために、ウィンドウフィルム1を手で押してずらしても、基材2と粘着剤層3とのズレ、いわゆる糊ズレの発生が抑制される。
【0026】
上述したように、糊ズレは、ウィンドウフィルム1と被着体との粘着力が高いことにより発生するものであるが、本発明では、ウィンドウフィルム1と被着体との高い粘着力を維持しつつ、糊ズレの発生を効果的に抑制することができる。
【0027】
その結果、本発明によれば、被着体との良好な密着性と、被着体への貼着の際に、糊ズレの発生の抑制とを高いレベルで両立することが可能なウィンドウフィルム1を提供することができる。
【0028】
本発明による優れた効果は、ウィンドウフィルム1が上記のような構成を有することにより得られるのであって、上記のような構成を有していない場合には得られない。例えば、粘着剤層3がシランカップリング剤として3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物を含有していないと、粘着剤層3の、被着体への密着性と、基材2との密着性とを、ともに優れたものとすることができず、本発明の目的とする効果が得られない。
【0029】
[1-1]基材
基材2は、粘着剤層3を支持する機能を有する。
【0030】
基材2は、いかなる材料で構成されていてもよく、例えば、基材2の構成材料としては、各種樹脂材料等が挙げられるが、基材2は、ポリエステルを含む材料で構成されていることが好ましく、主としてポリエステルで構成されていることがより好ましい。
【0031】
これにより、ウィンドウフィルム1のハンドリング性が良好なものとなり、ウィンドウフィルム1の被着体への貼着等の作業性が向上する。また、ウィンドウフィルム1の耐久性が良好なものとなる。
【0032】
なお、本明細書において、「主として」とは、対象となる部位のうち最も含有率が高いもののことを言う。
【0033】
特に、基材2中におけるポリエステルの含有率は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
基材2を構成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0035】
これにより、ウィンドウフィルム1のハンドリング性がより良好なものとなり、ウィンドウフィルム1の被着体への貼着等の作業性がより向上する。また、ウィンドウフィルム1の耐久性がより良好なものとなる。また、後述する材料で構成される粘着剤層3との密着性が良好なものとなる。
【0036】
基材2は、上記以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤等が挙げられる。
【0037】
基材2は、全体にわたって実質的に均一な組成を有していてもよいし、組成の異なる部位を有していてもよい。例えば、基材2は、互いに組成が異なる(例えば、樹脂材料の分子量が異なる場合等を含む)部位を有する複数の層を備えた積層体であってもよいし、組成が厚さ方向に沿って傾斜的に変化する傾斜材料で構成されていてもよい。
【0038】
基材2は、粘着剤層3との密着性を高めるための表面処理が施されていてもよい。
このような表面処理としては、例えば、コロナ処理や、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリエチレンイミン系、アクリル系等の接着向上剤の塗布等が挙げられる。
【0039】
これらの表面処理法は、基材2を構成する材料に応じて適宜選ばれるが、一般には接着向上剤の塗布が効果および操作性等の面から好ましい。
【0040】
基材2の厚さは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であることが好ましく、15μm以上400μm以下であることがより好ましく、20μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
これにより、ウィンドウフィルム1の耐久性が得られるとともに、ウィンドウフィルム1のハンドリング性が向上し、被着体への貼着等の作業を容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。
【0042】
[1-2]粘着剤層
粘着剤層3は、ウィンドウフィルム1を被着体に貼着する際に、被着体に接触し接合する機能を有する。
【0043】
粘着剤層3は、アクリル系粘着剤と、シランカップリング剤として3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物とを含む材料で構成される。
【0044】
[1-2―1]アクリル系粘着剤
アクリル系粘着剤は、構成単位のモノマー成分として(メタ)アクリル系のモノマーを含むものであればよいが、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとを含むものであることが好ましい。
【0045】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1以上20以下であることが好ましく、1以上12以下であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
中でも、粘着性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸ブチルであることがより好ましく、アクリル酸ブチルであることがさらに好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、および、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
中でも、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、および、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルよりなる群から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【0051】
これにより、より高い凝集力を確保することができ、上述した効果をより顕著なものとすることができる。
【0052】
アクリル系粘着剤が、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとを含むものである場合、アクリル系粘着剤中における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、50質量%以上99質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
また、アクリル系粘着剤が、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとを含むものである場合、アクリル系粘着剤中における(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの含有率は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの含有率が上記の条件を満たすことにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0055】
アクリル系粘着剤は、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸を含んでいてもよい。特に、アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに加えて、さらに、(メタ)アクリル酸をモノマー成分として含むのが好ましい。
【0056】
アクリル系粘着剤が、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸を含むものである場合、アクリル系粘着剤中における(メタ)アクリル酸の含有率は、0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0057】
アクリル系粘着剤は、さらに、その他のモノマー成分を構成単位として含んでいてもよい。前記その他のモノマー成分としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
アクリル系粘着剤が、さらに、前記その他のモノマー成分を構成単位として含む場合、アクリル系粘着剤中における前記その他のモノマー成分の含有率は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
粘着剤層3中において、アクリル系粘着剤の含有率は、75質量%以上99.99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上99.95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上99.9質量%以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著なものとすることができる。
【0060】
[1-2-2]シランカップリング剤
粘着剤層3は、シランカップリング剤として、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物を含有する。
【0061】
上述したように、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物は、粘着剤層3中において、アクリル系粘着剤と反応し、酸無水物部分が開環した状態で存在している。
【0062】
このような3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「X-12-967C」等が挙げられる。
【0063】
粘着剤層3における、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の含有量は、前記アクリル系粘着剤:100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上8質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上6質量部以下であることがさらに好ましい。
【0064】
これにより、粘着剤層3と基材2との密着性をより優れたものとすることができる。また、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の含有量が前記範囲内の値であることにより、ウィンドウフィルム1と被着体との間の粘着力が過度に高くなることが抑制され、貼着時の糊ズレの発生をより効果的に抑制することができる。
【0065】
[1-2-3]紫外線吸収剤
粘着剤層3は、さらに紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
【0066】
紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-アミル-5’-イソブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-プロピルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等の2’-ヒドロキシフェニル-5-クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の2’-ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2’-ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等の2-ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸フェニル、4-tert-ブチル-フェニル-サリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤;2-エチル-ヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、オクチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、トリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
粘着剤層3中における紫外線吸収剤の含有量は、粘着剤組成物中の固形分100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であるのが好ましく、1質量部以上10質量部以下であるのがより好ましい。
【0068】
[1-2-4]その他の成分
粘着剤層3は、アクリル系粘着剤およびシランカップリング剤を含む材料で構成されていればよく、上記以外の成分を含んでいてもよい。以下、この項目内において、このような成分をその他の成分と言う。
【0069】
その他の成分としては、例えば、アクリル系粘着剤以外の粘着剤、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物以外のカップリング剤、溶剤、架橋剤、分散剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合開始剤、光安定剤、熱安定剤、軟化剤、充填剤、着色剤および帯電防止剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
ただし、粘着剤層中におけるその他の成分の含有率は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
粘着剤層3における、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の含有量は、前記アクリル系粘着剤:100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上8質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上6質量部以下であることがさらに好ましい。
【0072】
[1-2-5]その他の条件
粘着剤層3の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上80μm以下であることがより好ましく、10μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。
【0073】
これにより、ウィンドウフィルム1の耐久性が得られるとともに、ウィンドウフィルム1のハンドリング性が向上し、被着体への貼着等の作業をより容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等が向上し、皺等の発生が効果的に防止される。
【0074】
[1-3]剥離ライナー
ウィンドウフィルム1では、粘着剤層3の、基材2とは反対側の面に剥離ライナー4が配されていてもよい。
【0075】
これにより、製造されるウィンドウフィルム1の保管時、搬送時等に、粘着剤層3に埃等が付着してしまったり、粘着剤層3が不本意な部位に貼着してしまったりすることを効果的に防止することができる。
【0076】
剥離ライナー4は、ウィンドウフィルム1を被着体に貼着する際には、粘着剤層3から剥離される。
【0077】
剥離ライナー4としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート等の各種樹脂よりなるシートや、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等の各種紙材を基材とし、この基材の粘着剤層3との接触面に、必要により剥離処理が施されたもの等を用いることができる。
【0078】
剥離処理としては、例えば、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤よりなる剥離剤層の形成等が挙げられる。
【0079】
剥離ライナー4の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上400μm以下であることが好ましい。また、上記の剥離層が設けられる場合の当該剥離層の厚さは、例えば、0.01μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0080】
[1-4]その他の条件
ウィンドウフィルム1の厚さは、特に限定されないが、11μm以上600μm以下であることが好ましく、18μm以上500μm以下であることがより好ましく、20μm以上400μm以下であることがさらに好ましい。
【0081】
これにより、ウィンドウフィルム1の耐久性や、紫外線吸収機能をより優れたものとすることができるとともに、ウィンドウフィルム1のハンドリング性がさらに向上し、被着体への貼着等の作業をより容易に行うことができる。また、湾曲した被着体への形状追従性等がさらに向上し、皺等の発生がより効果的に防止される。
【0082】
なお、上記ウィンドウフィルム1の厚さには、剥離ライナー4の厚さは含まれない。言い換えると、被着体に貼着される部分のみの厚さである。
【0083】
ウィンドウフィルム1は、被着体の外観を損なわないよう、透明であることが好ましい。
【0084】
なお、本明細書において「透明」とは、可視光領域における透過率が60%以上(上限値100%)であることをいい、80%以上(上限値100%)であることが好ましい。ウィンドウフィルム1の透過率は、JIS A5759:2016(建築窓ガラス用フィルム-可視光線透過率試験)に準じた方法により測定することができる。
【0085】
ウィンドウフィルム1は、黄色度(YI)が4以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。
【0086】
これにより、着色がより好適に抑制されたウィンドウフィルム1が得られ、より優れた透明性や無色性を得ることができ、ウィンドウフィルム1としてより好適である。
【0087】
なお、ウィンドウフィルム1の黄色度(YI)は、JIS K7373:2006に準じた方法により測定することができる。
【0088】
ウィンドウフィルム1は、JIS A5759:2016の粘着力の測定法に準拠して、幅25mmに切断したウィンドウフィルム1を、2kgローラーを使用して圧着回数一往復でフロートガラス板に圧着し、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置後における、180°の角度および剥離速度300mm/minの条件で測定される粘着力が、9N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、11N/25mm以上であることがさらに好ましい。
【0089】
これにより、ウィンドウフィルム1は、被着体に対し、より良好な密着性を有するものとなる。
【0090】
[2]ウィンドウフィルムの製造方法
次に、ウィンドウフィルムの製造方法について説明する。
【0091】
まず、上述したような基材2を準備し、この基材2上に粘着剤層3を形成する。
粘着剤層3の形成方法は特に限定されないが、上述したような成分を含有する、粘着剤層3形成用の組成物を基材2上に塗布する方法が挙げられる。
【0092】
塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーター等の公知の塗布装置を用いて塗布することができる。
【0093】
粘着剤層3形成用の組成物を基材2上に塗布後、乾燥処理を行うことによって、粘着剤層3が形成される。この際の乾燥条件としては特に限定されず、例えば、60℃以上150℃以下にて10秒以上120秒以下の条件で行われる。
粘着剤層3上に、粘着剤層3を保護するための剥離ライナー4を貼着してもよい。
【0094】
なお、ウィンドウフィルム1の製造方法は、これに限定されず、例えば、剥離ライナー4に粘着剤層3形成用の組成物を付与し、その後、剥離ライナー4上に付与された前記組成物と基材2とを接触させる方法を用いて製造してもよい。
【0095】
剥離ライナー4上への粘着剤層3の形成は、上記の方法と同様にして行うことができる。
【0096】
[3]被着体
次に、ウィンドウフィルム1が貼着される被着体について説明する。
【0097】
ウィンドウフィルム1は、住宅、ビル等の建物や、自動車、電車等の乗物の窓ガラス、鏡、ガラスケースやショーウィンドウのガラス等に好適に適用される。
【0098】
特に、被着体は、ウィンドウフィルム1が適用される表面に、-Si-OHの化学構造を有するものであることが好ましい。
【0099】
[4]ウィンドウフィルムの貼着方法
次に、ウィンドウフィルム1の貼着方法について説明する。
【0100】
ウィンドウフィルム1を窓ガラス等の被着体に貼着する場合、剥離ライナー4がある場合には、まず剥離ライナー4を剥離して粘着剤層3を露出させ、粘着剤層3を被着体に接着させることにより貼着することができる。
【0101】
ここで、被着体の表面に、界面活性剤を水に添加した施工液を吹き付けた後、ウィンドウフィルム1を被着体に積層し、スキージと呼ばれる治具で圧力をかけつつ、ウィンドウフィルム1と被着体との間の空気や水分等を押し出してウィンドウフィルム1を貼着する、いわゆる水貼りと呼ばれる方法により貼着することが好ましい。
【0102】
これにより、ウィンドウフィルム1の位置調整等を好適に行うことができる。また、作業性が向上し、被着体とウィンドウフィルム1との間における気泡の残存等を好適に防止することができる。
【0103】
特に、従来のウィンドウフィルム1においては、水貼りにおいてウィンドウフィルム1の位置調整等を行うときに、上述したような糊ズレの問題が顕著に発生していた。これに対し、本発明のウィンドウフィルム1では、上述したような問題の発生を十分に抑制することができる。
【0104】
本実施形態のウィンドウフィルム1は、建物や自動車等の窓ガラスの内側に貼着される、いわゆる内貼り、窓ガラスの外側に貼着される、いわゆる外貼りのどちらの用途にも好適に適用可能である。
【0105】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0106】
例えば、ウィンドウフィルムは、前述した以外の構成を有するものであってもよい。より具体的には、例えば、基材と粘着剤層との間に、少なくとも1層の中間層を有していてもよいし、基材の外表面側に少なくとも1層のコート層(ハードコート層等)をさらに有していてもよい。
【実施例0107】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0108】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例中の処理、測定で、温度条件を示していないものについては、室温(23℃)で行った。
【0109】
[5]ウィンドウフィルムの製造
(実施例1)
モノマーとしてアクリル酸ブチル80質量%と、アクリル酸メチル8質量%と、酢酸ビニル5質量%と、アクリル酸1質量%と、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル6質量%とを混合して共重合することによりアクリル系粘着剤を調製した。
【0110】
調製したアクリル系粘着剤100質量部(固形分)に、シランカップリング剤としての3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製、X-12-967C)5質量部、および、トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製、TINUVIN477)4質量部を配合し、十分撹拌して粘着剤層形成用塗工液を得た。
【0111】
剥離ライナーとして、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一面にシリコーン系剥離層を設けたものを用意した。
【0112】
粘着剤層形成用塗工液をロールナイフコーターにて乾燥後の厚さが20μmになるように、剥離ライナーの剥離層面側に塗工し、90℃で1分間加熱乾燥して粘着剤層を形成した。
【0113】
基材として、厚さ188μmの易接着性ポリエステルフィルム「コスモシャイン A4360」(東洋紡社製)を用意した。
【0114】
剥離ライナー上に形成された粘着剤層と、基材とを貼り合わせて、ウィンドウフィルムを製造した。
【0115】
(実施例2~7)
粘着剤層形成用塗工液の調製において、アクリル系粘着剤のモノマー組成、および3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物の添加量を、表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、ウィンドウフィルムを製造した。
【0116】
(比較例1~6)
粘着剤層形成用塗工液の調製において、アクリル系粘着剤のモノマー組成、シランカップリング剤の種類および添加量を、表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、ウィンドウフィルムを製造した。
【0117】
[6]ウィンドウフィルムの評価
得られたウィンドウフィルムにつき、以下の評価を行った。
【0118】
[6-1]粘着力の評価
まず、JIS A5759:2016の粘着力の測定法に準拠して、ウィンドウフィルムを幅25mm、長さ150mmに切断してサンプルとした。続いて、剥離フィルムを除去したウィンドウフィルムの粘着剤層面を、フロートガラス板に、23℃および50%RHの条件下で質量2kgのゴムローラを1往復させて圧着させた。
【0119】
次いで、引張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロン」)を用い、JIS A5759:2016の粘着力の測定法に準じて、180°の角度および剥離速度300mm/minの条件でサンプルを剥離し、その際の粘着力を測定した。
【0120】
粘着力が10N/25mm以上の場合を「○」(合格)とし、10N/25mm未満の場合を「×」(不合格)とした。
【0121】
[6-2]糊ズレの評価
ウィンドウフィルムを幅25mm、長さ50mmに切断してサンプルとした。
【0122】
サンプルの粘着剤層と、被着体の3mm厚フロートガラス面に、界面活性剤を水に添加した施工液を噴霧し、ウィンドウフィルムをガラス上に固定した。ウィンドウフィルムをスキージで擦って水を抜いた後、サンプルを指で押すことによりガラス面上でサンプルを1cmずらした。
【0123】
ウィンドウフィルムに光を透過させた際の、白化の有無を目視で確認した。そして、白化が最も弱い場合を「5」、白化が最も強い場合を「1」とし、5~1の5段階で評価した。
【0124】
評価が5および4の場合を「○」(合格)とし、3~1の場合を「×」(不合格)とした。
【0125】
表1に、前記各実施例および各比較例について、粘着剤層の構成ととともに、上記の評価の結果をまとめて示す。表1中、アクリル酸ブチルを「BA」、酢酸ビニルを「Vac」、アクリル酸メチルを「MA」、アクリル酸を「AA」、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルを「HEMA」、アクリル酸4-ヒドロキシブチルを「4HBA」、アクリル酸2-エチルヘキシルを「2EHA」、アクリル酸イソブチルを「i-BA」と示した。また、表1に示すシランカップリング剤の表記は、いずれも信越化学工業社製の製品名であり、X-12-967Cは上記式(1)で示される3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物であり、KBM403は、下記式(3)で示されるものであり、KBE402は、下記式(4)で示されるものであり、KBM4803は、下記式(5)で示されるものであり、KBM3066は、下記式(6)で示されるものである。また、表1中、シランカップリング剤の添加量としては、アクリル系粘着剤:100質量部に対する割合を示しており、アクリル系粘着剤組成で示す各モノマーの含有率の単位は、質量%である。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
表1から明らかなように、アクリル系粘着剤とともに、シランカップリング剤として、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物を含有する前記各実施例では、180°引き剥がし試験において、高い粘着力を有しており、糊ズレ試験においても、白化が弱く、良好な結果が得られていた。
【0132】
このように、実施例のウィンドウフィルムでは、被着体との良好な密着性と、糊ズレとを高いレベルで両立することができた。
【0133】
これに対し、シランカップリング剤として、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物以外のシラン化合物を用いた各比較例では、糊ズレ試験において、白化が強く、満足の行く結果が得らなかった。また、各比較例では、180°引き剥がし試験において、十分な粘着力が得られなかった。