(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014812
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】調製甘酒、凍結乾燥食品、凍結乾燥食品粉末及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20230124BHJP
A23L 3/44 20060101ALI20230124BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A23L2/38 102
A23L3/44
A23L2/00 B
A23L2/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118975
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】513189247
【氏名又は名称】株式会社久原本家グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 裕光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一信
(72)【発明者】
【氏名】花田 真結子
【テーマコード(参考)】
4B022
4B117
【Fターム(参考)】
4B022LA08
4B022LB06
4B022LN09
4B117LE06
4B117LG12
4B117LK23
4B117LP03
4B117LP05
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】加熱劣化や経時劣化しにくく甘酒として飲用に供しても風味豊かであり、しかも、凍結乾燥食品用の加工原料として使用すれば製造時のコラプスの発生や加工品の品質劣化を抑制可能な調製甘酒を提供する。
【解決手段】黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒であって、水分活性が0.98以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~5.4であることとした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒であって、
水分活性が0.98以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~5.4であることを特徴とする調製甘酒。
【請求項2】
水分活性が0.94以下、pHが3.5~4.6である請求項1に記載の調製甘酒。
【請求項3】
水分活性が0.83以下、pHが3.5~4.0である請求項1に記載の調製甘酒。
【請求項4】
黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒の凍結乾燥物であり、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品。
【請求項5】
密度が0.05g/cm3~0.22g/cm3であることを特徴とする請求項4に記載の凍結乾燥食品。
【請求項6】
デキストロース当量が72.5~74.1%であることを特徴とする請求項5に記載の凍結乾燥食品。
【請求項7】
請求項4~6いずれか1項に記載の凍結乾燥食品の粉砕粉末からなる凍結乾燥食品粉末。
【請求項8】
黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物を発酵して得られる黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒を混合して調製する調製甘酒の製造方法であって、
水分活性を0.98以下、デキストロース当量を72.5~74.1%、pHを3.5~5.4に調整することを特徴とする調製甘酒の製造方法。
【請求項9】
水分活性が0.94以下、pHが3.5~4.6である請求項8に記載の調製甘酒の製造方法。
【請求項10】
水分活性が0.83以下、pHが3.5~4.0である請求項8に記載の調製甘酒の製造方法。
【請求項11】
黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物を発酵して得られる黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒を混合して調製甘酒を調製し、同調製甘酒を凍結乾燥に供することで得た、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品の製造方法であって、
前記調製甘酒のBrix値を5.0~20.0に調整することで、凍結乾燥食品の密度を0.05g/cm3~0.22g/cm3とすることを特徴とする凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項12】
前記調製甘酒のデキストロース当量が72.5~74.1%であることを特徴とする請求項11に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の凍結乾燥食品の製造方法にて得られたブロック状の凍結乾燥食品を粉砕することを特徴とする凍結乾燥食品粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調製甘酒、凍結乾燥食品、凍結乾燥食品粉末及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甘酒は、本邦の伝統的な甘味飲料の一つであり、夏場は冷たく冷やし、また冬場は温めるなどして飲用に供される。
【0003】
特に、米糀を用いて作られる糀甘酒は、麹菌(コウジカビ)の発酵に由来する豊かなコクと甘みを楽しむことができ、長きにわたり老若男女問わず広く親しまれている。
【0004】
また近年では、凍結乾燥させた甘酒も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。凍結乾燥された甘酒は、変性するほどの熱を与えることなく乾燥させているため、色や香り、風味、食感などが復元されやすく、栄養価が損なわれにくいという長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで長年にわたり親しまれている糀甘酒は、確かに米糀由来のコクや甘みを楽しむことが可能であるものの、加熱劣化や経時劣化しにくく風味豊かな甘酒が求められていた。
【0007】
また、甘酒の凍結乾燥品はいつでも手軽に喫食に供することができ利便性が高いものであるが、経時的な品質劣化やコラプスの発生を抑制できれば、製品としてより有利であると言える。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、加熱劣化や経時劣化しにくく甘酒として飲用に供しても風味豊かであり、しかも、凍結乾燥食品用の加工原料として使用すれば製造時のコラプスの発生や加工品の品質劣化を抑制可能な調製甘酒及びその製造方法を提供する。
【0009】
また本願では、品質劣化やコラプスによる不良部位の少ない凍結乾燥食品や凍結乾燥食品粉、更にはこれらの製造方法についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る調製甘酒では、(1)黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒であって、水分活性が0.98以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~5.4であることを特徴とすることとした。
【0011】
また本発明に係る調製甘酒では、以下の点にも特徴を有する。
(2)水分活性が0.94以下、pHが3.5~4.6であること。
(3)水分活性が0.83以下、pHが3.5~4.0であること。
【0012】
また、本発明に係る凍結乾燥食品では、(4)黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒の凍結乾燥物であり、可食液体に戻して喫食するブロック状とした。
【0013】
また本発明に係る凍結乾燥食品では、以下の点にも特徴を有する。
(5)密度が0.05g/cm3~0.22g/cm3であること。
(6)デキストロース当量が72.5~74.1%であること。
【0014】
また、本発明に係る凍結乾燥食品粉末では、(7)上記(4)~(6)のいずれか1つに記載の凍結乾燥食品の粉砕粉末からなることとした。
【0015】
また、本発明に係る調製甘酒の製造方法では、(8)黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物を発酵して得られる黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒を混合して調製する調製甘酒の製造方法であって、水分活性を0.98以下、デキストロース当量を72.5~74.1%、pHを3.5~5.4に調整することとした。
【0016】
また、本発明に係る調製甘酒の製造方法では、以下の点にも特徴を有する。
(9)水分活性が0.94以下、pHが3.5~4.6であること。
(10)水分活性が0.83以下、pHが3.5~4.0であること。
【0017】
また、本発明に係る凍結乾燥食品の製造方法では、(11)黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物を発酵して得られる黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒を混合して調製甘酒を調製し、同調製甘酒を凍結乾燥に供することで得た、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品の製造方法であって、前記調製甘酒のBrix値を5.0~20.0に調整することで、凍結乾燥食品の密度を0.05g/cm3~0.22g/cm3とすることとした。
【0018】
また、本発明に係る凍結乾燥食品の製造方法では、(12)前記調製甘酒のデキストロース当量が72.5~74.1%であることにも特徴を有する。
【0019】
また、本発明に係る凍結乾燥食品粉末の製造方法では、(13)上記(11)又は(12)に記載の凍結乾燥食品の製造方法にて得られたブロック状の凍結乾燥食品を粉砕することとした。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る調製甘酒によれば、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒であって、水分活性が0.98以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~5.4であることとしたため、加熱劣化や経時劣化しにくく甘酒として飲用に供しても風味豊かであり、しかも、凍結乾燥食品用の加工原料として使用すれば製造時のコラプスの発生や加工品の品質劣化を抑制可能な調製甘酒を提供することができる。
【0021】
また、本発明に係る凍結乾燥食品によれば、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒の凍結乾燥物であり、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品としたため、品質劣化やコラプスによる不良部位の少ない凍結乾燥食品を提供することができる。
【0022】
また、本発明に係る凍結乾燥食品粉末では、上述の凍結乾燥食品の粉砕粉末からなることとしたため、品質劣化が少なく、可食液体に溶かして甘酒として飲用に供した際に風味豊かな粉末状の凍結乾燥食品粉末を提供することができる。
【0023】
本発明に係る調製甘酒の製造方法では、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物を発酵して得られる黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒を混合して調製する調製甘酒の製造方法であって、水分活性を0.98以下、デキストロース当量を72.5~74.1%、pHを3.5~5.4に調整することとしたため、加熱劣化や経時劣化しにくく甘酒として飲用に供しても風味豊かであり、しかも、凍結乾燥食品用の加工原料として使用すれば製造時のコラプスの発生や加工品の品質劣化を抑制可能な調製甘酒の製造方法を提供することができる。
【0024】
また、本発明に係る凍結乾燥食品の製造方法では、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物を発酵して得られる黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒を混合して調製甘酒を調製し、同調製甘酒を凍結乾燥に供することで得た、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品の製造方法であって、前記調製甘酒のBrix値を5.0~20.0に調整することで、凍結乾燥食品の密度を0.05g/cm3~0.22g/cm3とすることとしたため、品質劣化やコラプスによる不良部位の少ない凍結乾燥食品を製造することができる。
【0025】
また、本発明に係る凍結乾燥食品粉末の製造方法によれば、上述の凍結乾燥食品の製造方法にて得られたブロック状の凍結乾燥食品を粉砕することとしたため、品質劣化が少なく、可食液体に溶かして甘酒として飲用に供した際に風味豊かな粉末状の凍結乾燥食品粉末を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、調製甘酒、凍結乾燥食品、凍結乾燥食品粉末及びこれらの製造方法に関するものである。
【0027】
また本発明は、美味しさと機能性を両立させた甘酒とその製造方法を提供するものであるといえ、特に、甘味料や酸味料や保存料などの食品添加物を使用せずに米と麹菌と水のみで製造され、優れた風味・保存性・機能性を合わせ持つ甘酒とその製法に関するものであり、固有の風味や流通温度帯や液体・乾燥品など商品形態に対応した商品設計を可能とするために複数因子で特定された甘酒及びその製法を提供するという側面も有している。
【0028】
ここで、本願発明の理解に供すべく、まずは技術的背景について言及すると、麹、糀(こうじ)は、米、麦、大豆などにコウジカビなどを繁殖させたものとして知られている。コウジカビは、その菌糸からデンプンやタンパク質などを分解する酵素を生成してブドウ糖やアミノ酸に形を変えて栄養源として取り込みやすくしている。
【0029】
中には人の腸内環境を良くすると言われるオリゴ糖やビタミンなどの栄養素を含有し、人が摂取することで健康に良い影響があると言われる様々な麹を利用した発酵食品も存在する。
【0030】
日本醸造学会は、われわれの先達が長い間大切に育み、使ってきた貴重な財産「楸菌」をわが国の「国菌」に認定宣言している。楸菌は、わが国で醸造及び食品等に汎用されている菌であり、(1)和名を黄楸菌と称するAspergillus oryzae。(2)黄楸菌(オリゼー群)に分類されるAspergillus sojaeと黄楸菌の白色変異株。(3)黒楸菌に分類されるAspergillus luchuensis(Aspergillus luchuensis var. awamori)及び黒楸菌の白色変異株である白楸菌Aspergillus luchuensis mut. Kawachii(Aspergillus kawachii)が挙げられる。
【0031】
麹は、それぞれ独自の特徴を活かすことで、清酒、酢、焼酎など様々な発酵食品に幅広く利用されている。甘酒もその一つであり、日本の伝統的な甘味飲料である。
【0032】
甘酒の起源は古く、「日本書紀」に甘酒の起源とされる記述もある。栄養豊富な甘酒は体力回復に効果的な夏バテを防ぐ飲料として、江戸時代には夏の風物であった。
【0033】
現在に至り、商品形態は多岐にわたり、瓶入り、缶入りの液体、フリーズドライのブロック、粉末等が販売されている。内容もそのままストレートに飲めるドリンクやお湯などで希釈するものもあり、商品形態も温度帯も常温品、冷蔵品、冷凍品など幅が広がってきている。
【0034】
原料としては、先述の如く米と麹と水だけのものや、酒粕を原料にしたもの、それぞれを混合したもの、果汁や添加物を加えたもの等があるが、本実施形態に係る調製甘酒や凍結乾燥食品、凍結乾燥食品粉末(以下、調製甘酒等ともいう。)の原料としては麹菌と米と水だけである。
【0035】
麹菌と米と水を使用した甘酒の一般的な製造方法としては、麹菌と米から製麹された米麹と温水を混合、撹拌した物を50~60℃程度に保温、10~12時間程度保温すると麹由来の酵素によってデンプンが糖化されて甘味が出てくる。
【0036】
麹由来の酵素はアミラーゼ、プロテアーゼなど様々なものがあり、麹の違いによって酵素も様々であり、出来る甘酒も同じ工程であっても麹の違いによって違った甘酒が出来上がる。
【0037】
本発明は麹の違いによって出来る甘酒の風味・保存性・機能性を調べ、加工適性を試し、保存テストを行う一連のトライアンドエラーを繰り返し鋭意検討を重ねることで、優れた風味・保存性・機能性を合わせ持つ飲料を生み出した。
【0038】
更には生み出された特徴を複数の因子を使って用途適性別に特定した。複数の因子はその組み合わせによって流通温度帯や商品形態に対応した商品設計を可能とするものである。
【0039】
具体的には、黄麹菌(Aspergillus oryzae)、黒麹菌(Aspergillus luchuensis)、白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)の3種の麹菌のうちいずれか1種類と米と水を使用して単独に作られた3種の甘酒のうちから少なくとも2種以上の甘酒を含有させた液体であって、米麹の種類、製法、甘酒の製法、濃度、配合の調整をすることによって水分活性、デキストロース当量(DE)、pHの因子を特定の範囲に調整することが出来、加圧加熱殺菌甘酒・無菌パック甘酒(レトルト・無菌充填、常温流通)、冷凍甘酒(冷凍流通)、濃縮甘酒ドリンク(冷蔵流通)、濃縮甘酒ジャム(常温流通)、粉末甘酒(フリーズドライ、常温流通)などのあらゆる流通温度帯、商品形態に最適な商品設計を可能にするものである。
【0040】
次に、本願技術分野の先行技術を紹介する。特開2001-069957号公報(以下、先行特許文献1という。)に記された甘酒では第1工程において、蒸煮した穀類又は製麹可能な澱粉質原料にアスペルギルス属の麹菌であって、クエン酸生成能の大きい麹菌を接種した後、該麹菌の発育に適当な温度で35時間以上、上記麹菌を培養してクエン酸を多量に含む麹を製造し、ついで、第2工程において、かく得られた麹に水を加えた後、混合物を45~60℃の温度で3時間以上保持して、麹中のクエン酸を水中に溶出させると同時に、該麹中の種々の成分を麹中の酵素によって自己消化させることを特徴とする、クエン酸含有飲料の製造方法としてある。
【0041】
先行特許文献1に開示された実施例1によれば、この麹と製法で得られた液体はブドウ糖30.65%、クエン酸1.98%、その他の有機酸(リンゴ酸、乳酸、コハク酸等)0.57%を含有しており、そのpHは3.4であったとある。
【0042】
この菌は黒楸菌に分類されるAspergillus luchuensis(Aspergillusluchuensis var. awamori)及び黒楸菌の白色変異株であり、主として泡盛や焼酎用に使用されることが多い。一方、清酒製造に使用されることが多いのが黄麹菌である。
【0043】
特開2005-348607号公報(以下、先行特許文献2という。)に記されているのは、白米を洗米、浸漬、水切り、蒸きょう後、冷却し、清酒製造に用いられる黄麹菌を接種して30時間以上培養し、麹を造る。次いで、水に酵母と麹、蒸米を加えて醗酵を行い、清酒醪を製造する。
【0044】
一方で、紫黒米の玄米を破砕して、加水、蒸きょうした後、冷却し、焼酎製造に用いられる白麹菌または黒麹菌を接して30時間以上培養し、クエン酸生成を特徴とする麹を製造する。
【0045】
こうして得られた麹に1.2~2倍量の水を加え、45~65℃の温度で6~24時間保持して、クエン酸を7,000~19,000mg/リットル、ポリフェノールを1,600~3,200mg/リットル含む糖化液を得る。
【0046】
この糖化液と上記清酒醪とを混合したのち圧搾することを特徴とする低アルコール機能性清酒の製造方法である。
【0047】
先行特許文献2は清酒醪とクエン酸・ポリフェノールを含む糖化液を混合することで、低アルコールで爽やかな酸味等があり、飲みやすくて食欲を増進し、食前酒としても好適な清酒であり、クエン酸およびポリフェノールを豊富に含有し、健康にも良好な清酒を製造することが出来るとしている。
【0048】
特開平06-133745号公報(以下、先行特許文献3という。)に記されているのは、米に加水し蒸煮してα化し、これに麹またはでんぷん分解酵素を加えて糖化を行い、糖化後または糖化中に、白麹菌、黒麹菌、黄麹菌およびリゾープス菌のうち1種または2種以上を加え、培養、発酵を行うことを特徴とする米を原料とする飲料である。
【0049】
特開平06-343435号公報(以下、先行特許文献4という。)に記されているのは、米麹及び非還元性の甘味成分を含み、エチルアルコール含量が1%以下、グルコース、マルトース及びイソマルトースからなる還元性糖類の含量が10%以下であり、pHが3.5~5.0であることを特徴とする密封容器入り甘酒飲料である。
【0050】
先行特許文献4によれば、通常の甘酒は、pHが5.7前後である。アミノカルボニル反応はpHが高いほど反応が進行し、pHが低くなると反応が起こりにくくなる。しかし、甘酒飲料の場合、pHを下げただけでは変色を十分に抑制できず、糖化により生成した還元性糖類も減らす必要があった。
【0051】
すなわち、pHを低くし、しかも還元性糖類の含量を低くしてはじめて、加熱殺菌及び加温状態での保管における変色や変質を抑制することが可能となったとされている。
【0052】
特開2010-187633号公報(以下、先行特許文献5という。)に記されているのは甘酒を用意するステップ、該甘酒に乳酸菌を添加するステップ、及び乳酸菌発酵を行うステップを含む乳酸発酵甘酒の製造方法である。乳酸発酵甘酒は、乳酸発酵により生じた適度な酸味及び好ましい香味を有し、麹の独特な臭みはマスクされており、甘味と酸味のバランスがよいのはpH4前後とされている。
【0053】
特開昭63-248376号公報(以下、先行特許文献6という。)に記載されているのはでんぷん質原料を、米麹、あるいは酵素で糖化して、甘酒を製造する工程において、糖化直後の糖化液に、糖化液のpHを4.0以下にし得る量のゆず果汁を添加し、少なくとも10分間殺菌することを特徴とするゆず甘酒の製造方法である。
【0054】
この殺菌条件では甘酒特有の風味、色調に変化は生じなく、長期間保管しても甘酒の品質の劣化がないとされている。
【0055】
特開2008-109919号公報(以下、先行特許文献7という。)に記載されているのは、糯米を原料にしたお粥と米麹を4時間から6時間60℃に保温し糖化を進行させる。糯米と米麹混合液を保温した状態で8時間かけて徐々に温度40℃までを下げる甘酒とし、この方法でできた甘酒をミキサーにかけた後に、IHクッキングヒーターの中火で加熱しながら練りこむことにより糖度を60以上に濃縮する甘酒ジャムの製造方法である。
【0056】
砂糖を使わずに甘味を出しており、肥満や糖尿病の原因とはなりにくい。また麹のかもし出す自然の甘味とビタミンやミネラルを食生活に取り入れることができる。しかも、甘酒ジャムは加熱濃縮工程を経ているので、微生物的に安定であり、添加物のない安全な甘味調味料となっている。
【0057】
先述の特許文献1に記載されているのは、少なくとも糖類を含有する水溶液を凍結乾燥して得られる、水性可食液体に戻して喫食するタイプのブロック状の凍結乾燥食品において、ラクトース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、マルトシルトレハロース、及び、マルトテトラオースから選ばれる糖類を全固形分中9~90質量%含有し、密度が0.23g/cm3~0.72g/cm3であることを特徴とする凍結乾燥食品である。
【0058】
この凍結乾燥食品はブロックの形状や喫食時における水戻り性が良好で、高密度のブロック状の凍結乾燥食品及びその製造方法を提供することができるとある。
【0059】
しかしながら、甘味料や酸味料や保存料などの食品添加物を使用せずに米と麹菌と水のみで、優れた風味・保存性・機能性を合わせ持つ甘酒や甘酒の乾燥品を提供するという観点においては、これら先行特許文献には何ら示唆されておらず、未だ改良の余地が残されていた。
【0060】
また、このような調製甘酒等を開発することや、それらの製造方法を導くこと、甘酒固有の風味や流通温度帯や商品形態に対応した商品設計を可能とする因子の組み合わせを見出して数値化し特定することは、調製甘酒等の製品化に際し極めて有意義であると言える。
【0061】
各文献と対比しつつ述べると、先行特許文献1の実施例1によれば、白麹菌で試作されたクエン酸含有飲料のpHは3.4であったとある。酸味、甘さ、旨味の調和のとれたものであり、飲料として優れたものであったと記されている。
【0062】
確かに、飲料として優れていると思われる。例えば、黄麹菌を使用して製造した甘酒のpHは先行特許文献4の記載にもある通り、5.7前後の低酸性のものが多いが、白麹菌を使用して製造した甘酒のpHは先行特許文献1の記載にもある通り3.4前後となり、この二つの甘酒の風味は全く違ったものになる。甘酒のpHは甘酒の優れた風味・保存性・機能性を発揮できる範囲を数値で特定することが出来る、課題の解決の為の1因子になりうる。もっともpHは酸味や保存性に及ぼす影響は大きいものの風味を決定づける因子はpHだけではない。
【0063】
例えば、黄麹菌と白麹菌の持つアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素群は当然ながら同一ではない。酵素活性や至適環境も違い酵素同士の拮抗もある。
【0064】
米澱粉がデキストリンを経てグルコースに至る前の途上で酵素失活させており、大小さまざまな分子量を持つ複合体になっている。グルコース、ラクトース、マルトースなどの既知の成分値だけでは大小さまざまな分子量を持つ複雑な複合体の風味や機能を表現できない。複数の麹由来の含有物はなおさらである。この複合体の全体像を俯瞰的に表現できる因子がどうしても必要である。さらにそういった因子は一つでは足りず複数の因子の組み合わせにならざるを得ない。
【0065】
澱粉科学ハンドブック(朝倉書店,1995年2月20日第12刷,p431-p435;以下、先行非特許文献1という。)によれば、澱粉糖は加水分解の程度により、甘味度の他に溶解性、粘度、結晶性、吸湿性、その他の性状が連続的に変化するのが大きな特徴である。澱粉の加水分解の程度、すなわち糖化の進行程度は、DE(デキストロース当量)として世界共通の指標として表示されている。DEとはdextrose equivalentの略称で、次式で表される。
DE=直接還元糖(グルコースとして表示)/全固形分×100
【0066】
結晶ブドウ糖の様に、ほとんど純粋なものは、デキストロース当量=100に近い。水アメや粉アメは澱粉の分解程度が低く、ブドウ糖の他にデキストリンや各種のオリゴ糖を含んでいるので、デキストロース当量は25~50と幅が広い。このようにデキストロース当量により、それぞれの澱粉糖の性質が異なってくる。澱粉糖の性質はデキストロース当量により一定の方向に変化する。
【0067】
先行非特許文献1のp432、「表21.5 澱粉糖の性質(鈴木、1975)」、及び最新 果汁・果実飲料辞典(朝倉書店, 1997年10月1日 初版第1刷, p454-p455;以下、先行非特許文献2という。)のp455、「表III.B.2.5でんぷん糖のDEと性状」によれば、デキストロース当量が大きくなり100に近づいていくほど、甘味度は大きく、粘度は小さく、吸湿性は小さく、溶液の凍結点は低く、浸透圧は高く、糖の結晶性は大きく、糖結晶の抑制作用は小さく、平均分子量は小さくなっていく。
【0068】
澱粉糖を使用する際には、これらの諸性質を組み合わせて、どの程度のデキストロース当量の澱粉糖が適当か、使用目的に合わせて選択されるとある。
【0069】
本発明者はこのデキストロース当量を甘酒の評価因子に適用すること、官能評価、保存テスト、加工テストと分析を繰り返すことによって、甘酒の優れた風味・保存性・機能性を発揮できる範囲を数値で特定でき、課題の解決の為の1因子になりうることを発見しており、詳細は後述する。
【0070】
先行特許文献2によれば、水に酵母と黄麹、蒸米を加えて醗酵を行っている為、清酒醪を製造した時点で黄麹菌によって糖化された低分子の糖分は酵母に資化されアルコールに転化してしまっており、白麹菌または黒麹菌由来の糖化液と上記清酒醪とを混合しても、低アルコール機能性清酒としては好ましいとしても、本発明とは違うものである。
【0071】
先行特許文献3に記されているのは、米に加水し蒸煮してα化し、これに麹またはでんぷん分解酵素を加えて糖化を行い、糖化後または糖化中に、白麹菌、黒麹菌、黄麹菌およびリゾープス菌のうち1種または2種以上を加え、培養、発酵を行うことを特徴とする米を原料とする飲料である。
【0072】
通常の甘酒の製造に使用される麹菌は主として黄麹菌、黒麹菌、白麹菌の3種の麹菌であり、糖化後または糖化中に白麹菌、黒麹菌、黄麹菌及びリゾープス菌のうち1種又は2種以上を加えることは、一部同じ菌を2回に分けて加えているにすぎない。また、違う菌を加えていたとしても、そもそも至適糖化条件が異なる2種類の麹菌を同条件で糖化しても麹菌同士の拮抗の可能性がある。
【0073】
例えばクエン酸などの一方の麹菌の産出物がpHを変え、もう一方の麹菌の活性を下げたりして、それぞれの麹菌が持つ酵素活性が十分に機能しない。どちらか一方が淘汰されることさえ考えられる。複数の麹が1つの澱粉の糖化に関与する為、低分子量化が進む可能性はあるが、求める風味や機能はブドウ糖(デキストロース当量=100)では得られない。出来る糖化物は限定され、成り行きの結果を受け入れざるを得ず、自由な商品設計に制限がかかる。それぞれの麹菌が単独でそれぞれの至適糖化条件で出来た糖化含有物とは別物である。先行特許文献4では、還元性糖類の含量を10%以下とし、しかもpHを3.5~5.0とすることにより、殺菌時の加熱や加温販売における変色を問題とならない程度とすることができたとしている。
【0074】
pHの調整は、クエン酸、乳酸、酢酸、酢、レモン汁、梅エキスなどの添加や、乳酸発酵が例示されている。還元性糖類を10%以下とするには、糖化物の使用量を少なくして湯水で希釈したり、糖化の途中で冷却したり、加熱して酵素の活性を停止することにより行うこととある。還元性糖類の含量を10%以下とすると甘味が不足し、嗜好性が悪くなるので、砂糖、還元澱粉分解糖類、ステビアサイド、アスパルテームなどの非還元性の甘味料を添加して甘味を補うようにして、風味を損なわないようにすると記述あるが、砂糖やアスパルテームなどの非還元性の甘味料の風味は米麹由来の糖化物とは全く違った風味であり代替できない。
【0075】
先行特許文献5でも、先行特許文献4と同様に乳酸発酵の記述があり、乳酸発酵甘酒は、乳酸発酵により生じた適度な酸味及び好ましい香味を有し、麹の独特な臭みはマスクされており、甘味と酸味のバランスがよいのはpH4前後とされている。更に、先行特許文献6に記載されているのは、糖化直後の糖化液に、糖化液のpHを4.0以下にし得る量のゆず果汁を添加し、少なくとも10分間殺菌することを特徴とするゆず甘酒の製造方法である。甘酒の品質の劣化がないとされている。
【0076】
先行特許文献4,5,6の様にクエン酸、乳酸、酢酸、酢などの添加物や酸味料、レモン汁、梅エキス、ゆず果汁などの果汁の添加、乳酸発酵で出来る乳酸風味などが例示されている。その多くは風味の改善や保存性の改善を狙ったものと思われるが、結果的にpH変化の影響を受けるものが多い。黄麹菌、黒麹菌、白麹菌の3種の麹菌によって出来る風味やpH変化もそれぞれ固有のものであるため、デキストロース当量同様、pHについても甘酒の優れた風味・保存性・機能性を発揮できる範囲を数値で特定でき、課題の解決の為の1因子になりうる。
【0077】
先行特許文献7に記載されているのは、糖度を60以上に濃縮する甘酒ジャムの製造方法である。砂糖を使わずに甘味を出しており、肥満や糖尿病の原因になりにくいとしている。
【0078】
新潟県農林水産業研究成果集(平成26年度 米麹を使った新たな甘味料の簡易製造法;以下、先行非特許文献4という。)は、米麹を使った新たな甘味料の簡易製造法であるが、
図4「清澄糖液の濃縮によるBrixとAwの関係」に記載されているように水分活性(Aw)は微生物増殖抑制の目安とされる。清涼飲料水の製造基準では、ウエルシュ菌など耐熱性芽胞菌の増殖抑制のためにAwを0.94以下に設定している。
【0079】
清涼飲料水の製造における衛生管理計画手引書(一般社団法人全国清涼飲料連合会,2018年11月p7;以下、先行非特許文献5という。)に記載されている「4.清涼飲料水の製造基準(法令)で必要とされる加熱殺菌条件、二酸化炭素圧力」の項の「(2)加熱殺菌条件」を見ると、
(i)pH4.0未満のものの殺菌にあっては、その中心部の温度を65℃で10分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うこと。
(ii)pH4.0以上のもの(pH4.6以上で、かつ、水分活性が0.94を超えるものを除く。)の殺菌にあっては、その中心部の温度を85℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法で行うこと。
(iii)pH4.6以上で、かつ、水分活性が0.94を超えるものの殺菌にあっては、原材料等に由来して当該食品中に存在し、かつ、発育し得る微生物を死滅させるのに十分な効力を有する方法又は2.に定める方法で行うこと。
が列挙されており、pHと水分活性と殺菌条件の組み合わせによって初めて衛生的にも最適な商品設計が可能となることが示唆されている。
【0080】
すなわち、デキストロース当量やpHだけでは足りず、水分活性を加えることで甘酒の優れた風味・保存性・機能性を発揮できる範囲を数値で特定でき、課題の解決の為の1因子になりうる。
【0081】
食品凍結乾燥の基礎知識(冷凍,2004年8月号,第79巻,第922号;以下、先行非特許文献6という。)に記載されているのは、食品凍結乾燥の基礎知識と実用技術への展開であるが、その中で「コラプス」の課題が取り上げられている。「コラプス」とは対象材料の既乾燥層の構造が崩壊して水蒸気の通路を防ぐ結果、十分な凍結状態を維持できなくなり氷結晶の局部融解と蒸発による発泡を起こす現象であり、このコラプス現象を起こす温度をコラプス温度と呼んでいる。
【0082】
コラプス温度は材料のガラス転移温度と密接に関係しており最適乾燥状態にするための材料ガラス転移温度を応用した製法がみられる。
【0083】
先述した特許文献1に記載されているのは、密度が0.23g/cm3~0.72g/cm3であることを特徴とする水戻り性が良好である高密度のブロック状の凍結乾燥食品及びその製造方法であるが、密度が0.23g/cm3~0.72g/cm3の状態でラクトース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、マルトシルトレハロース、及び、マルトテトラオースから選ばれる糖類のガラス転移温度に着目し、全固形分中9~90質量%含有することによって「コラプス」が発生しにくい状態を作っているとされる。
【0084】
しかしながら本発明が目指すのは、甘味料や酸味料や保存料などの食品添加物等を使用せず麹菌と米と水のみで作られる優れた風味・保存性・機能性を合わせ持つ甘酒と甘酒乾燥品であり、本発明における甘酒乾燥品の凍結乾燥ブロックの密度は0.23g/cm3~0.72g/cm3であることを必要としない。
【0085】
麹菌と米と水のみで、優れた風味に加え、凍結乾燥適性に優れ、乾燥時に局部融解せず、乾燥後の保存性も高い、優れた風味・保存性・機能性を合わせ持つ甘酒凍結乾燥品である。凍結乾燥ブロック品を粉砕した粉末も同様である。
【0086】
本発明では複数の麹由来の甘酒を含有し複雑に絡み合う複合体において、美味しさに優れた風味を細かく数値化したり、新たな風味づくり、流通温度帯、商品形態に応じた商品設計を実施するための因子とその組み合わせを探求した。
【0087】
特に、液体品に関して着目されるべき点としては、水分活性、デキストロース当量、pHの組み合わせ、さらに乾燥品については、凍結乾燥品ブロックの密度(かさ比重)と乾燥前の液体のBrixの因子が挙げられる。
【0088】
次に、甘味料や酸味料や保存料などの食品添加物を使用せずに麹菌と米と水のみを原料とし優れた風味・保存性・機能性を合わせ持つ甘酒と甘酒乾燥品、更にそれらの製造法について詳細に説明する。また、甘酒固有の風味や流通温度帯や商品形態に対応した商品設計を可能とする因子の組み合わせを数値化し特定する方法についても言及する。
【0089】
まず、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌の3種の麹菌のうちいずれか1種類と米と水だけを使用して甘酒を作る。製法は常法に従うが、例えば、蒸煮した米に麹菌を接種した後、それぞれの麹菌に最適な培養条件温度で48時間以上保持して麹を製造し、この麹に、通常、その重量の0.2倍から1.6倍の量の水を加えた混合物を作る。この混合物を55~62℃の温度で12時間以上保持する。この製法にて3種の麹菌から3種の甘酒が出来上がる。この中から少なくとも2種以上の甘酒を含有した液体で、先行非特許文献5に記載されている「4.清涼飲料水の製造基準(法令)」に適した因子の組み合わせを設計することが出来る。まず水分活性が0.98以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~5.4になるように調整された甘酒加工品である。
【0090】
調整方法は、麹菌の種類選択と製麹製法、甘酒の製法、麹菌甘酒の配合率、希釈率、濃縮率などである。この因子の組み合わせの場合の加工適性はレトルト高温高圧殺菌、UHT法(Ultra high temperature heating method:超高温加熱処理法)、UHT法と無菌充填機を組み合わせてたアセプティック製品など110~150℃の高温高圧で殺菌され、無菌充填され常温流通される商品などに適用される。水分活性、デキストロース当量、pHの組み合わせによって高温高圧で殺菌される時に発生する褐変反応などに影響が出てくる。
【0091】
次に水分活性が0.94以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~4.6になるように調整された甘酒加工品である。この因子の組み合わせの場合は、冷蔵流通品などに適用される。
【0092】
次に水分活性が0.83以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~4.0になるように調整された甘酒加工品である。この因子の組み合わせの場合は、常温流通かつ開封後冷蔵保存で使用される商品、常温で流通かつ開封後常温で使用される商品などに適用される。Brix濃度が高いジャム様の甘酒や常温流通できるテーブル調味料などの商品群と製法に適用される。
【0093】
次に黄麹菌、黒麹菌、白麹菌の3種の麹菌のうちいずれか1種類と米と水だけを使用して単独に作られた3種の甘酒のうち少なくとも1種以上、例えば2種以上の甘酒を含有した液体を凍結乾燥することによって得られる、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品において、密度が0.05g/cm3~0.22g/cm3であるブロック状の凍結乾燥食品である。
【0094】
この構成にすることによって3種の麹菌のいずれであっても製造工程にて「コラプス」の生成や溶融を最小限に抑えつつさらには乾燥後も保存安定性の高い凍結乾燥甘酒を得ることが出来る。また、ブロックを粉砕した粉末品においても同様の保存性を発揮する。この黄麹菌、黒麹菌、白麹菌の3種の麹菌のうちいずれか1種類と米と水だけを使用して単独に作られた3種の甘酒のうち少なくとも1種以上の甘酒を含有した液体を凍結乾燥することによって得られる、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品の製造法においては、Brix(糖度)が5.0~20.0になるように調整された液体を凍結乾燥することによって、密度が0.05g/cm3~0.22g/cm3である凍結乾燥食品を製造することが出来るのである。また、ブロックを粉砕した粉末品においても同様の保存性を発揮する。
【0095】
次に黄麹菌、黒麹菌、白麹菌の3種の麹菌のうちいずれか1種類と米と水だけを使用して単独に作られた3種の甘酒のうち少なくとも2種以上の甘酒を含有した液体を凍結乾燥することによって得られる、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品においては、デキストロース当量が72.5~74.1%、密度が0.05g/cm3~0.22g/cm3の構成にて、製造工程にて「コラプス」の生成を抑制すべく水分活性とデキストロース当量を調整しながらブロック状の凍結乾燥食品を作ることが出来る。また、ブロックを粉砕した粉末品においても同様の保存性を発揮する。この黄麹菌、黒麹菌、白麹菌の3種の麹菌のうちいずれか1種類と米と水だけを使用して単独に作られた3種の甘酒のうち少なくとも2種以上の甘酒を含有した液体を凍結乾燥することによって得られる、可食液体に戻して喫食するブロック状の凍結乾燥食品の製造法においては、デキストロース当量が72.5~74.1%、Brix(糖度)が5.0~20.0になるように調整された液体を凍結乾燥することにより、密度が0.05g/cm3~0.22g/cm3である凍結乾燥食品を製造することが出来、製造工程にて「コラプス」の生成を抑制でき、さらには乾燥後も保存安定性の高い凍結乾燥甘酒を得ることが出来る。また、ブロックを粉砕した粉末品においても同様の保存性を発揮する。
【0096】
本発明は甘味料や酸味料や保存料などの食品添加物を使用せずに麹菌と米と水のみを原料とし優れた風味・保存性・機能性を合わせ持つ甘酒と甘酒乾燥品、更にそれらの製造法であるが、これに既存技術を応用し、乳酸菌や還元糖や添加物や果汁の配合によって新たな付加価値を創造することを否定するものではない。
【0097】
これらの技術思想を背景に、本実施形態に係る調製甘酒に特徴的な点としては、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒であって、水分活性が0.98以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~5.4である点が挙げられる。
【0098】
なお、上記少なくともいずれか2つの甘酒の調合重量比率は、水分活性を0.98以下、デキストロース当量を72.5~74.1%、pHを3.5~5.4とすることが可能な割合であれば特に限定されるものではない。一例を挙げるならば、上記水分活性、デキストロース当量、pHを満たすことを条件に、黄麹甘酒:黒麹甘酒=10~96:4~90、黄麹甘酒:白麹甘酒=10~96:4~90、黄麹甘酒:黒麹甘酒:白麹甘酒=10~96:2~88:2~88の範囲内で調整することができる。
【0099】
そして、このような構成とすることにより、甘酒として飲用に供しても風味豊かであり、しかも、凍結乾燥食品用の加工原料として使用すれば製造時のコラプスの発生や退色の如き加工品の品質劣化を抑制可能な調製甘酒を提供することができる。
【0100】
以下、本実施形態に係る調製甘酒、凍結乾燥食品、凍結乾燥食品粉末及びこれらの製造方法について、実施例を参照しつつ更に具体的に説明する。なお、以下では主に黄麹菌や白麹菌を使用した甘酒を原料とした例について説明するが、白麹菌は黒麹菌の変異株であって基本的には同様の性状を有するものとして、ここでは黒麹菌の製造例や実験結果については割愛する。
【0101】
〔実施例1〕
蒸煮した米に黄麹菌を接種した後、36~38℃で48時間保持して麹Aを製造し、製造した麹Aの重量の0.6倍の量の水を加えた混合物を作る。この混合物を58~62℃の温度で12時間以上保持し殺菌冷却したものを甘酒A1とした。
【0102】
これとは別に蒸煮した米に白麹菌を接種した後、36~38℃で48時間保持して麹Bを製造し、製造した麹Bの重量の0.6倍の量の水を加えた混合物を作る。この混合物を58~62℃の温度で12時間以上保持し殺菌冷却したものを甘酒B1とした。
【0103】
次に、甘酒A1と甘酒B1を原料とし、両者を混合することにより水分活性が0.930で、デキストロース当量が72.6%、pH3.74であり、優れた甘酒風味を持つ本実施形態に係る調製甘酒C1を調製した。なおここでは、甘酒A1と甘酒B1の混合重量割合を甘酒A1:甘酒B1=38~50:50~62とすることで、凡そ上記水分活性やデキストロース当量、pHとした。
【0104】
次に、この甘酒A1、甘酒B1、調製甘酒C1について、それぞれのBrix値が22.0となるように希釈し、これらを冷凍処理して凍結甘酒A2、凍結甘酒B2、凍結調製甘酒C2を作成した。
【0105】
そして、これら凍結品A2~C2について、官能評価と測色計による色(Lab)の測定を行った。官能評価試験は、社内にて長年にわたり商品試作や官能評価に携わる4名をパネリストとして選定し、風味の良さについて評価した。風味の良さについての評価は、凍結甘酒A2及び凍結甘酒B2については、それぞれ黄麹菌、白麹菌で調製した一般的な糀甘酒と比較することとし、凍結調製甘酒C2については凍結甘酒A2や凍結甘酒B2単独の場合と比較することとした上で、風味の良さを感じない(1点)、風味の良さをあまり感じない(2点)、普通(3点)、風味の良さをやや感じる(4点)、風味の良さを強く感じる(5点)の5段階にて評価した。なお、4名の各パネリストは、官能試験に先立って行われた予備官能試験にて、評価の度合いがおおよそ揃うように訓練が行われている。
【表1】
【0106】
表1からもわかるように、凍結甘酒A2、凍結甘酒B2、凍結調製甘酒C2の解凍品について検討を行ったところ、凍結調製甘酒C2は凍結甘酒A2や凍結甘酒B2に比して良好な風味を有してることが示された。なお、甘酒C2の水分活性は0.959、デキストロース当量は72.6%、pHは4.06であった。
【0107】
次に、上述と同様に、甘酒A1、甘酒B1、調製甘酒C1について、それぞれのBrix値が22.0となるように希釈し、これらを別々にレトルト用パウチに充填し、121℃にて16分間にわたりレトルト加圧加熱殺菌処理することで、レトルト甘酒A3、レトルト甘酒B3、レトルト調製甘酒C3を作成した。
【0108】
そして、これらレトルト品A3~C3について、官能評価と測色計による色(Lab)の測定を行った。官能評価試験は、それぞれ凍結品A2~C2の解凍品に対する風味変化について評価した。評価は、風味変化を強く感じる(1点)、風味変化をやや感じる(2点)、普通(3点)、風味変化をあまり感じない(4点)、風味変化をほとんど感じない(5点)の5段階評価とした。なお、パネリストについては、先程と同様である。
【表2】
【0109】
表2からもわかるように、レトルト甘酒A3、レトルト甘酒B3、レトルト調製甘酒C3について検討を行ったところ、レトルト調製甘酒C3の凍結調製甘酒C2に対する風味変化は、レトルト甘酒A3の凍結甘酒A2に対する風味変化やレトルト甘酒B3の凍結甘酒B2に対する風味変化と比較して、風味の変化が少なく良好であることが示された。また同様に、色差の点においてもレトルト調製甘酒C3は、他のレトルト品A3,B3と比較して、凍結品A2~C2との間での色の差が少なく退色性に優れていることが示された。
【0110】
〔実施例2〕
実施例1に記載された調製甘酒C1を使用して保存テストを実施した。保存テストの条件は、5℃、25℃、35℃の3温度帯であり、保存期間は1ケ月である。甘酒A1は衛生的保存性が悪いことが容易に予見され、また甘酒B1は調製甘酒C1に対して風味の良さで劣ったため、ここでは調製甘酒C1でのみ試験を行った。その結果を表3に示す。
【表3】
【0111】
結果、衛生的保存性に問題なく、かつ35℃の色差が大きかったが、官能評価での経時劣化も許容範囲内であった。甘酒C1がチルド流通可能であることが証明された。
【0112】
〔実施例3〕
実施例1に記載した調製甘酒C1を使用して減圧濃縮を行い、Brix73.3のジャムを製造した。分析した所、水分活性は0.698、デキストロース当量は72.6%、pHは3.92であった。ガラス瓶容器に充填し密封したものを90℃の温水槽で90分浸漬した。25℃まで冷却したものを官能評価に供した。その結果、減圧脱水濃縮や加熱に伴う風味や色合いの顕著な劣化は感じられなかった。なお、甘酒A1や甘酒B1を使用して同様に調製したジャムは、風味や色合いの劣化が観察された。
【0113】
また、調製したジャムを室温にて4ケ月保存したが、衛生評価合格・風味変化は、初発時の評価を5.0とした場合に対し、5℃にて4.5、25℃にて4.0、更には35℃においても3.5であり合格と判断された。
【0114】
〔実施例4〕
次に、凍結乾燥物の調製を行った。具体的には、まず、実施例1に記載した甘酒A1を使用し、Brixの値を20.6、15.2、10.4、5.1の4種類に水で希釈調整した。
【0115】
次に、所定サイズの容器にそれぞれの希釈甘酒を収容し、-30℃以下の温度条件で3~48時間にわたり予備凍結行った。
【0116】
次に、予備凍結物を凍結乾燥装置にセットし凍結乾燥した。凍結乾燥条件は、減圧開始から24~50時間かけて10torr以下に減圧した後、品温を50~65℃まで加温し、その加温状態を24~50時間維持し、その後、常温、常圧に戻した。
【0117】
その結果、所定容器の内形状に沿った4種のブロック状の凍結乾燥食品が得られた。Brixの値を20.6とした希釈甘酒の凍結乾燥食品である乾燥甘酒A1F1の比重は0.235g/cm3であり、Brix15.2の乾燥甘酒A1F2は0.173g/cm3、Brix10.4の乾燥甘酒A1F3は0.107g/cm3、Brix5.1の乾燥甘酒A1F4は0.041g/cm3であった。
【0118】
得られた乾燥甘酒A1F1~A1F4について凍結乾燥時の物性や風味の評価を行った後、乾燥甘酒A1F1~A1F4をポリエチレン袋に入れ、室温にて1ヶ月間保管して再度同様に評価を行った。
【0119】
評価は、凍結乾燥ブロック品についてはコラプスについて行い、粉砕粉末品についてはケーキングや溶解について行った。また凍結乾燥直後と1ヶ月保管後の凍結乾燥ブロック品について風味の評価も行った。
【0120】
コラプスやケーキングの評価は、発生量が多いほど点数が低く、発生がなければ点数が高くなるよう1点~5点の5段階評価とした。また、官能評価は、風味の良さを感じない(1点)、風味の良さをあまり感じない(2点)、普通(3点)、風味の良さをやや感じる(4点)、風味の良さを強く感じる(5点)の5段階にて評価した。なお、パネリストについては、先程と同様である。その結果を表4に示す。
【表4】
【0121】
表4からもわかるように、Brix値を15.2、10.4、5.1に希釈して調製した乾燥甘酒A1F2~A1F4は凍結乾燥時のコプラスの発生がほとんどなく、また、得られたブロック品も、これを粉砕して得た粉砕粉末品も保存性は良好であった。
【0122】
一方、Brix値を20.6に希釈して調製した乾燥甘酒A1F1は、そのブロック凍結乾燥品を調製する過程においてコラプス発生により乾燥不足が発生した。また保存性にも劣り、ブロック凍結乾燥品も粉砕粉末品も室温1ケ月でケーキングや溶融が発生した。なお、風味に大きな影響はなかった。
【0123】
〔実施例5〕
次に、実施例4とおよそ同様の工程により、甘酒B1と調製甘酒C1の甘酒希釈液について凍結乾燥物の調製を行った。具体的には、まず、実施例1に記載した甘酒B1と調製甘酒C1を使用し、それぞれBrix値を10.1と10.0に水で希釈調整した。
【0124】
次に、所定サイズの容器にそれぞれの希釈甘酒を収容し、-30℃以下の温度条件で3~48時間にわたり予備凍結行った。
【0125】
次に、予備凍結物を凍結乾燥装置にセットし凍結乾燥した。凍結乾燥条件は、減圧開始から24~50時間かけて10torr以下に減圧した後、品温を60℃まで加温し、その加温状態を24~30時間維持し、その後、常温、常圧に戻した。
【0126】
その結果、それぞれ所定容器の内形状に沿ったブロック状の凍結乾燥食品が得られた。Brixの値を10.1とした甘酒B1の甘酒希釈液の凍結乾燥食品である乾燥甘酒B1F1の比重は0.111g/cm3であり、Brixの値を10.0とした調製甘酒C1の甘酒希釈液の凍結乾燥食品である乾燥調製甘酒C1F1の比重は0.110g/cm3であった。
【0127】
得られた乾燥甘酒B1F1と乾燥調製甘酒C1F1について凍結乾燥時の物性や風味の評価を行った後、乾燥甘酒B1F1と乾燥調製甘酒C1F1をポリエチレン袋に入れ、室温にて1ヶ月間保管して再度同様に評価を行った。なお評価手法は実施例4と同様である。その結果を表5に示す。
【表5】
【0128】
表5からもわかるように、乾燥甘酒B1F1と乾燥調製甘酒C1F1のいずれにおいても、コプラスの発生がほとんどなく、また、得られたブロック品も、これを粉砕して得た粉砕粉末品も保存性は良好であったが、わずかながらも乾燥調製甘酒C1F1の方が風味の点において良好であった。
【0129】
上述してきたように、本実施形態に係る調製甘酒によれば、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌から選ばれるいずれか一種の麹菌と米と水のみからなる混合物の発酵産物である黄麹甘酒、黒麹甘酒、白麹甘酒のうち、少なくともいずれか2つの甘酒からなる調製甘酒であって、水分活性が0.98以下、デキストロース当量が72.5~74.1%、pHが3.5~5.4であることとしたため、加熱劣化や経時劣化しにくく甘酒として飲用に供しても風味豊かであり、しかも、凍結乾燥食品用の加工原料として使用すれば製造時のコラプスの発生や加工品の品質劣化、ケーキングや溶融などの経時劣化を抑制可能な調製甘酒及びその製造方法を提供することができる。
【0130】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
日本醸造学会は、われわれの先達が長い間大切に育み、使ってきた貴重な財産「麹菌」をわが国の「国菌」に認定宣言している。麹菌は、わが国で醸造及び食品等に汎用されている菌であり、(1)和名を黄麹菌と称するAspergillus oryzae。(2)黄麹菌(オリゼー群)に分類されるAspergillus sojaeと黄麹菌の白色変異株。(3)黒麹菌に分類されるAspergillus luchuensis(Aspergillus luchuensis var. awamori)及び黒麹菌の白色変異株である白麹菌Aspergillus luchuensis mut. Kawachii(Aspergillus kawachii)が挙げられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
この菌は黒麹菌に分類されるAspergillus luchuensis(Aspergillusluchuensis var. awamori)及び黒麹菌の白色変異株であり、主として泡盛や焼酎用に使用されることが多い。一方、清酒製造に使用されることが多いのが黄麹菌である。