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  • 特開-レンズ位置決め構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148121
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】レンズ位置決め構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20231005BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
G02B7/02 H
G03B15/00 V
G03B15/00 S
G02B7/02 A
G02B7/02 F
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055990
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(72)【発明者】
【氏名】平尾 朋三
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA18
2H044AH01
2H044AH05
2H044AH11
2H044AH15
2H044AH18
2H044AJ05
(57)【要約】
【課題】簡便にかつ精密にレンズ同士の位置決めが行え、高温下での熱変形を抑制することができるレンズユニットを提案する。
【解決手段】中空円筒形状の位置決めスペーサーSPの上面側SP1と下面側SP2にそれぞれ樹脂レンズPL1とPL2を有するレンズユニットであって、前記位置決めスペーサーSPの上面側SP1と下面側SP2の外径部が略同径であり、前記樹脂レンズPL1とPL2の光線通過径外のフランジ部には、前記位置決めスペーサーSPとの径方向の位置決めに使用する垂直壁部PL11、PL21と、前記位置決めスペーサーSPとの光軸方向の位置決めに使用するストレート部PL12、PL22とを有し、前記位置決めスペーサーSPの線膨張係数が、前記樹脂レンズPL1とPL2よりも小さくなるように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒形状の位置決めスペーサーの上面側と下面側にそれぞれ樹脂レンズを有するレンズユニットであって、
前記位置決めスペーサーの上面側と下面側の外径部が略同径であり、
前記樹脂レンズの光線通過径外のフランジ部には、
前記位置決めスペーサーとの径方向の位置決めに使用する垂直壁部と、
前記位置決めスペーサーとの光軸方向の位置決めに使用するストレート部と、を有し、
前記位置決めスペーサーの線膨張係数が、前記樹脂レンズよりも小さいことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記位置決めスペーサーが線膨張係数30×E-6以下の金属材料で形成されることを特徴とする請求項1記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記位置決めスペーサーの上面側と下面側の少なくともどちらか一方の面に、面取りが施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記位置決めスペーサーの内径中空部が、連続した段差形状であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温下でも樹脂で形成されたレンズの変形を抑制する、レンズ位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載や監視用途で使用されるカメラモジュールの使用温度は上昇しており、近年では120度以上の環境下でのカメラモジュールの動作が求められている。
【0003】
120度以上の使用温度が求められるカメラモジュールで使用されるレンズの多くはガラス製である。ガラスで形成されたレンズは、温度による変化が少なく、高温下でも変形しづらいが、樹脂で形成されたレンズは、高温で劣化し透過率の減少や屈折率の変化、熱変形による形状や寸法変化が大きいことが知られている。
【0004】
近年では、高温下でも透過率や屈折率の変化が抑えられたレンズ用樹脂も市場に提供され始めており、生産性やコストの面から、車載や監視用途のカメラモジュールに、樹脂製のレンズが積極的に検討され始めている。
【0005】
樹脂製のレンズを使用する場合、温度変化による性能変化に対応できるような、レンズ位置決め構造が必要となる。温度による樹脂材料の屈折率変化や形状の変化に伴う、画角や解像度の変化を抑える以外にも、各部材の位置決め部を介して、樹脂レンズに伝わる熱膨張による応力を緩和し、樹脂レンズ自体の熱変形を防止することが必要になる。
【0006】
温度変化による光学性能の劣化を抑える、樹脂レンズの位置決め構造が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-12337
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、金属製の鏡筒に樹脂レンズを固定する方法が提案されており、樹脂レンズとレンズを固定するそれぞれの部材間に、適切なクリアランスを設けることで、低温環境と高温環境での変形を防止する構造となっている。
【0009】
特許文献1の構造では、1枚の樹脂レンズに対して、熱変形を抑止できる構造が提示されているが、カメラ用レンズの多くは複数枚のレンズが使用されており、樹脂レンズが2枚以上使用される場合も想定しなければならない。このため提示された構造が樹脂レンズの枚数分必要になり、レンズユニット構造が複雑になる結果、精度やコストの面で不利となる。
【0010】
特に樹脂材料は、120度以上の高温では軟化してしまい、低温時や室温時よりも変形しやすくなるため、高温時の熱膨張による応力がかからないような構造が必要となる。
【0011】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、樹脂レンズを使用した場合でも、使用環境に対して性能変化や性能劣化が少なく、精密なレンズ位置固定を簡便に実行できる、位置決めスペーサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
中空円筒形状の位置決めスペーサーの上面側と下面側にそれぞれ樹脂レンズを有するレンズユニットであって、前記位置決めスペーサーの上面側と下面側の外径部が略同径であり、前記樹脂レンズの光線通過径外のフランジ部には、前記位置決めスペーサーとの径方向の位置決めに使用する垂直壁部と、前記位置決めスペーサーとの光軸方向の位置決めに使用するストレート部と、を有し、前記位置決めスペーサーの線膨張係数が、前記樹脂レンズよりも小さいことを特徴とするレンズユニットが提供される。
【0013】
このように構成することで、単純な円筒形状をした位置決めスペーサーで、樹脂レンズの径方向は垂直壁部で位置決めスペーサーに精密に位置決めをすることが可能で、光軸方向の位置はストレート部を介して精密に位置決めスペーサーに固定することが可能となる構成としても良い。
【0014】
円筒形状の位置決めスペーサーは、上面側と下面側の外径部が略同径となっており、単純な構造のため、円筒パイプのような部品でも使用可能であり、コスト面でも優位である。
【0015】
また、位置決めスペーサーの上面側と下面側にそれぞれの樹脂レンズを差し込むだけなので、簡便に位置決めを行うことが可能である。
【0016】
さらに、高温下での熱膨張に関して、樹脂レンズの位置決めに使用している垂直壁部は高温による熱膨張で径が大きくなる方に移動する。一方で、位置決めスペーサーは、樹脂レンズよりも線膨張係数が小さい材料で形成されているため、樹脂レンズよりも熱膨張が小さい。よって、それぞれの樹脂レンズの垂直壁部と位置決めスペーサーの間には空間(クリアランス)が発生する。この空間を意図的に発生させることで、樹脂レンズに高温下での応力がかからないようにすることが可能となる。この結果、高温下でのレンズ変形が発生しないため、光学性能の劣化を抑えられる。
【0017】
また、位置決めスペーサーは線膨張係数が30×E-6以下の金属材料で形成されることが望ましい。
【0018】
線膨張係数が小さい金属材料を位置決めスペーサーに使用することで、使用環境の温度変化で、樹脂レンズのレンズ間隔変化を抑制することができ、光学性能の変化を抑制することができる。
【0019】
さらに、本願の位置決めスペーサー構造は単純な円筒構造となっているため、例えば円筒研削等の安価な工程で、アルミやステンレス等を精度良く加工して、スペーサーとして使用することが出来る他、中空金属パイプを位置決めスペーサーとして使用することも可能であるため、安価に大量に部品を供給することができる。
【0020】
また、位置決めスペーサーの上面側と下面側の少なくともどちらか一方の面に、面取りを形成する構成としても良い。
【0021】
面取りを形成することにより、樹脂レンズを位置決めスペーサーに挿入する際に、より挿入しやすくなる。
【0022】
さらに、位置決めスペーサーの内径部に、連続する段差形状を形成する構成としても良い。
【0023】
このように連続した段差を設けると、内径部で発生する反射光が、次のレンズに入射しづらくなる。その結果、画質を劣化させるフレアやゴーストの発生を抑えることができる。
【0024】
位置決めスペーサーの外径部を使って、ホルダーの内径部との固定を行うことができる。
【0025】
樹脂レンズは、位置決めスペーサーを介して位置決めされているが、さらにレンズホルダー等、別部材に固定する必要がある。位置決めスペーサーの外径は円筒形となっているため、ホルダーの内径部に簡単に圧入することが可能である。さらに、位置決めスペーサーとホルダーの線膨張係数の差を10×E-6以下とすることで、高温環境下での熱膨張による位置ずれを抑制することができる。
【0026】
ホルダーへの径方向に関する位置決めは、位置決めスペーサーを介しており、樹脂レンズを直接介していないため、高温下での熱膨張による応力を樹脂レンズが受けることは無い。
【発明の効果】
【0027】
本発明の位置決めスペーサーを用いた樹脂レンズ固定構造によれば、精密にレンズの位置決めができ、かつ熱膨張時に樹脂レンズへ応力がかからないため、樹脂レンズの変形が発生せず、高温下での使用に際しても性能の劣化を抑制したレンズユニットを、安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】位置決めスペーサーによるレンズ位置決め構造断面図
図2】位置決め構造図の分解断面図
図3】熱膨張時の位置決め部断面図
図4】実施例1の構造断面図
図5】実施例2の構造断面図
図6】実施例3の構造断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態例について説明する。なお、各図は、本発明に係る一構成例を図示するものであり、本発明が理解できる程度に各構成要素の断面形状や配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、本発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の条件等を用いることがあるが、これらの材料および条件は好適例の一つに過ぎず、従って、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0030】
図1は本発明の位置決めスペーサーを用いたレンズユニット構造の構成図である。図2は、各面の位置関係を分かりやすくするために、組立前の状態を図示したものである。中空円筒構造の位置決めスペーサーSPの上面側SP1に樹脂で形成された樹脂レンズPL1、下面側SP2に樹脂レンズPL2が配され、樹脂レンズPL1はレンズ有効径外のフランジ部に、位置決めスペーサーSPの外形部SP4と径方向で位置合わせをするための垂直壁部PL11と、光軸CLへの位置合わせをするためのストレート部PL12を有し、樹脂レンズPL2はレンズ有効径外のフランジ部に、位置決めスペーサーSPの外形部SP4と径方向で位置合わせをするための垂直壁部PL21と、光軸CLへの位置合わせをするためのストレート部PL22を有し、位置決めスペーサーSPを介して位置決めされている。
【0031】
位置決めスペーサーSPの外径部SP4は、上面側SP1と下面側SP2が略同径の円筒形状であり、内径部SP3はレンズの有効な光線を遮らない程度の形状が設定されている。
【0032】
ここで、レンズ有効径は、レンズ設計上必要な光線が通過する曲面部を指す。ただし、曲面部であっても、レンズ設計上の必要な光線が通過する領域の外であれば、レンズ有効径外となる。本願では、レンズ有効径の外側を便宜上フランジ部と呼称する。光軸方向は、図1に示されている光軸CLに対して、位置決めスペーサーSPの上面側SP1から下面側SP2に向かう方向としている。
【0033】
図3で熱膨張後のレンズユニット位置決め部の変化について図示にて説明をする。温度上昇に伴い、樹脂レンズPL1とPL2は、線膨張係数と上昇した温度分だけ熱膨張をする。熱膨張後、樹脂レンズPL1とPL2の径方向の位置決めを担う垂直壁部PL11とPL21は、径が拡大する方向に移動する。一方で、位置決めスペーサーSPは、樹脂レンズPL1とPL2よりも線膨張係数が小さいため、樹脂レンズPL1とPL2よりも熱膨張が小さくなる結果、位置決めスペーサーSPと樹脂レンズPL1、PL2それぞれの間には、空間A1とA2が生じる。この空間A1とA2は温度が高くなるほど大きくなる。温度が下がり、室温に戻るとこの空間A1とA2はなくなり、位置決めスペーサーSPと樹脂レンズPL1、PL2が再び接して、各部材が再び位置決めされる。
【0034】
このように構成することで、樹脂レンズPL1とPL2が高温下で熱膨張しても、位置決め部に空間A1とA2が発生するため、樹脂レンズPL1とPL2には高温下で応力がかかることが無く、熱変形を抑えることができる。
【実施例0035】
図4は、第1の実施例におけるレンズユニットの構成図である。樹脂レンズPL1とPL2が位置決めスペーサーSPに、レンズフランジ部に形成された垂直壁部PL11とPL21、ストレート部PL12とPL22を介して位置決めされ、ホルダーHには樹脂レンズPL1のフランジ部に形成されたテーパーTP1を介して位置決めされ、ホルダーHにストッパーST1が圧入固定されることで、樹脂レンズPL2を介して、樹脂レンズPL1とPL2、位置決めストッパーSPがホルダーHの内部に固定されている。ホルダーHと位置決めスペーサーSP、ストッパーST1の線膨張係数は、樹脂レンズPL1とPL2よりも小さい弾性部材を使用している。
【0036】
ホルダーHにはレンズの画角やF値を決める開口部APが設けられている。また、樹脂レンズPL1とホルダーHの間は、テーパーTP1で位置決めされており、熱膨張した際に、樹脂レンズPL1が径方向に膨張することで、テーパーTP1が径方向に移動する。線膨張係数はホルダーHの方が小さいため、ホルダーHと樹脂レンズPL1のテーパーTP1の間に空間が発生する。空間が発生した後、樹脂レンズPL1は、光軸方向にもわずかに膨張するが、テーパーTP1とホルダーHの間に発生する空間があるため、光軸方向の膨張を吸収することができる。
【0037】
樹脂レンズPL1、PL2と位置決めスペーサーSPは、前述した通り、熱膨張により樹脂レンズPL1、PL2と位置決めスペーサーSPの間に空間(クリアランス)が発生するため、熱膨張による応力の影響を抑制することができる。樹脂レンズPL1とPL2は熱膨張時に外部からの応力がかからないため弾性変形のみとなり、熱膨張による塑性変形が発生しないため、常温に戻った後も、精度が維持され、変形も無いことからレンズの光学性能の劣化を防ぐことができる。
【0038】
レンズ間の同軸は、設計上精密に制御されることが性能維持のために望ましい。本願では、レンズ間の位置決めについて、精度の良い位置決めをするために、上面側SP1と下面側SP2の外径部が略同径となる円筒の位置決めスペーサーSPを、樹脂レンズPL1とPL2のフランジ部に形成された垂直壁部PL11とPL21と、ストレート部PL12とPL22とを介して固定することで、径方向と光軸方向のレンズ間位置を精密に制御できる。樹脂レンズPL1とPL2のフランジ部に形成した垂直壁部PL11とPL21と、ストレート部PL12とPL22とは、金型加工の際にレンズ曲面部と一体加工をすることが可能であり、レンズ曲面部に対して誤差無く上記の位置決め部を形成することが可能となる。
【0039】
レンズのフランジ部に形成したテーパー等でレンズ同士を位置決めする手法も広く知られているが、レンズ同士の間隔が大きく開いている設計の場合は、フランジ部を光軸方向に延長すると、レンズサイズが大きくなる他、偏肉形状となるため成形が困難な形状となる。本実施例では、位置決めスペーサーを有効に使うことで、レンズ間隔が広いレンズユニットに対して、レンズ成形可能な形状にした上で、かつ精密に位置決めを実行することが可能となっている。
【0040】
このように構成することで、位置決め精度を確保しながら、レンズユニットの各構成部材の熱膨張で樹脂レンズに変形を発生させず、レンズユニットとしての性能を確保することが可能となる。
【実施例0041】
図5は2つ目の実施例を示す図である。3枚のレンズが使用されており、上面側から順に、ガラスで形成されたガラスレンズGL1、樹脂で形成された樹脂レンズPL1、PL2が配され、樹脂レンズPL1とPL2は、ステンレスで形成された位置決めスペーサーSPを介して、実施例1と同様の手法により位置決めされている。位置決めスペーサーSPの外径部は、上下面とも面取部が形成されている。面取部を形成することにより、樹脂レンズPL1とPL2を挿入する際に、組立性が良くなる。ホルダーHには、特定の波長の光をカットするフィルター板Fが接着固定されている。
【0042】
ガラスレンズGL1の外径GL11が樹脂レンズPL1に形成された垂直壁部PL13に挿入されることで、ガラスレンズGL1の径方向の位置を精度良く位置決めされている。
【0043】
樹脂レンズPL2のフランジ部に形成されたテーパーは、ホルダーHに形成されたテーパーに接して、位置決めされている。ホルダーHにはストッパーST1が圧入され、ホルダーHを介して、ガラスレンズGL1が固定されている。
【0044】
ガラスレンズGL1と樹脂レンズPL1の間には、径方向の中心に円形の穴が開いており不要な光を遮断する遮光板CA1が設置され、位置決めスペーサーSPと樹脂レンズPL2の間には、画角やF値を決める開口部APを有する遮光板CA2が設置されている。遮光板CA2は、位置決めスペーサーSPとともに樹脂レンズPL2の垂直壁部PL21とストレート部PL22で、径方向と光軸方向で位置決めされている。
【0045】
このように構成することで、位置決め精度を確保しながら、レンズユニットの各構成部材の熱膨張で樹脂レンズに変形を発生させず、レンズユニットとしての性能を確保することが可能となる。
【実施例0046】
図6で第3の実施例について説明をする。第3の実施例は、4枚のレンズが使用されている。4枚全て樹脂で形成されたレンズで、上面側から順番に樹脂レンズPL3、PL4、PL1、PL2となっている。樹脂レンズPL1とPL2はアルミで形成された位置決めスペーサーSPを介して、実施例1と2で説明した手法と同様の方法で径方向と光軸方向に位置決めされている。
【0047】
樹脂レンズPL2のフランジ部に円周状に形成された凹部PL23が、ステンレスで形成されたホルダーHに円周状に形成されたH3部へ挿入され、径方向の位置が決められる。樹脂レンズPL2に形成された凹部とホルダーHに形成された凸部は、凸部の外側で接しており、内側は空間が空くように設定している。このように構成すれば、熱膨張により樹脂レンズPL2が膨張しても位置決め部に負荷がかかることが無い。
【0048】
ホルダーHにアルミで形成されたストッパーST1が圧入され、ストッパーST1に形成されたテーパーを介して樹脂レンズPL3のフランジ部に形成されたテーパーを押さえることで、樹脂レンズPL3を固定している。樹脂レンズPL3とPL4は、それぞれのレンズに形成されたテーパーで位置決めされ、樹脂レンズPL4とPL1は同様に、それぞれの樹脂レンズのフランジ部に形成されたテーパーで位置決めされている。レンズ間の間隔が狭い場合には、このようなテーパーでの位置決めが有効である。レンズに使用している樹脂の線膨張係数の差が20×E―6以下であれば、高温による熱膨張でも、各レンズに形成された位置決めに使用するテーパーの径方向膨張差が小さく、かつテーパー形状の場合は、テーパー面で上下にわずかに移動が可能となるため、レンズに応力がかからないようにすることができる。
【0049】
ホルダーHには、特定の波長をカットするフィルターFが接着固定されている。
【0050】
アルミで形成された位置決めスペーサーSPの内径部SP3は、上面側から下面側に向かって径が小さくなるような、階段状の形状となっている。このような構造を取ることで、スペーサー内面の反射光線が樹脂レンズPL2に入射することを防ぎ、フレアやゴーストのような画質を劣化する不具合を防ぐことができる。
【0051】
樹脂レンズPL3とPL4の間に、円形穴を有し、不要な光線を遮光する遮光板CA1とCA2が配され、樹脂レンズPL4とPL1の間には遮光板CA3が配置されている。位置決めスペーサーSPと樹脂レンズPL2の間には、画角やF値を決める遮光板CA4が配されている。不要な光線を適宜カットできる遮光板を有効に配置することで、不要な光線が次のレンズに入射することを防げるため、コントラストの低下を防ぐことができる。
【0052】
このように構成することで、位置決め精度を確保しながら、レンズユニットの各構成部材の熱膨張で樹脂レンズに変形を発生させず、レンズユニットとしての性能を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
F 特定の波長をカットするフィルター
H ホルダー
A1 熱膨張時に樹脂レンズPL1と位置決めスペーサーSPの間に発生する空間
A2 熱膨張時に樹脂レンズPL2と位置決めスペーサーSPの間に発生する空間
AP F値と画角を決める開口部
CL 光軸
H3 ホルダーHに円周状に形成された凸部
SP 位置決めスペーサー
CA1 円筒穴の開いた遮光板
CA2 円筒穴の開いた遮光板
CA3 円筒穴の開いた遮光板
CA4 円筒穴の開いた遮光板
GL1 ガラスレンズ
PL1 樹脂レンズ
PL2 樹脂レンズ
PL3 樹脂レンズ
PL4 樹脂レンズ
SP1 位置決めスペーサーSPの上面側
SP2 位置決めスペーサーSPの下面側
SP3 位置決めスペーサーSPの内径
SP4 位置決めスペーサーSPの外径
TP1 樹脂レンズPL1のフランジ部に形成されたテーパー
GL11 ガラスレンズGL1の外径
PL11 PL1のフランジ部に形成された垂直壁部
PL12 PL1のフランジ部に形成されたストレート部
PL21 PL2のフランジ部に形成された垂直壁部
PL22 PL2のフランジ部に形成されたストレート部
PL23 PL1のフランジ部に円周状に形成され凹部


図1
図2
図3
図4
図5
図6