(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148135
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】自律走行装置および自律走行装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231005BHJP
【FI】
G05D1/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056009
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】芳川 知樹
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2次元センサの情報で搬送物の下に進入可能な自律走行装置を提供することを目的とする。
【解決手段】自律走行装置は、走行の障害となる障害物における2次元的な外形を検出する2次元センサと、上記2次元センサで検出された2次元的な外形のうち、目標の停止姿勢における前後方向に沿った方向へと延びた外形部分を抽出する外形抽出部と、上記外形部分に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置を算出する目標算出部と、上記目標の停止位置に向かって弧状の進路で自装置を走行させる走行部と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行の障害となる障害物における2次元的な外形を検出する2次元センサと、
前記2次元センサで検出された2次元的な外形のうち、目標の停止姿勢における前後方向に沿った方向へと延びた外形部分を抽出する外形抽出部と、
前記外形部分に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置を算出する目標算出部と、
前記目標の停止位置に向かって弧状の進路で自装置を走行させる走行部と、
を備える自律走行装置。
【請求項2】
前記目標の停止位置に対して前記目標の停止姿勢で後退した方向に存在する自由回転可能な初期位置から当該目標の停止位置へと向かう請求項1に記載の自律走行装置。
【請求項3】
前記初期位置まで、予め与えられた地図情報と前記2次元センサによる障害物検出とに基づいた自律的なナビゲーションによって移動する請求項2に記載の自律走行装置。
【請求項4】
前記外形部分と自装置との接触が予測される場合に、前記初期位置に戻り、前記目標の停止位置へと向かう走行をやり直す請求項2または3に記載の自律走行装置。
【請求項5】
前記目標算出部は、前記目標の停止位置へと向かって走行する間の複数時点それぞれで当該目標の停止位置を算出し、最新の目標の停止位置として、最新に抽出された前記外形部分に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置と、算出済みの目標の停止位置とを含んだ統計値を算出する請求項1から4のいずれか1項に記載の自律走行装置。
【請求項6】
前記目標算出部は、前記外形部分の最奥位置を基準とした相対関係で前記目標の停止位置を算出する請求項1から5のいずれか1項に記載の自律走行装置。
【請求項7】
前記外形抽出部は、前記目標の停止位置を起点とした所定範囲内について前記外形部分を抽出する請求項1から6のいずれか1項に記載の自律走行装置。
【請求項8】
前記外形抽出部は、前記外形部分を進行方向の左右それぞれについて抽出する請求項1から7のいずれか1項に記載の自律走行装置。
【請求項9】
走行の障害となる障害物における2次元的な外形を検出する2次元センサで検出された2次元的な外形のうち、目標の停止姿勢における前後方向に沿った方向へと延びた外形部分を抽出する外形抽出過程と、
前記外形部分に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置を算出する目標算出過程と、
前記目標の停止位置に向かって弧状の進路で自律走行装置を走行させる走行過程と、
を有する自律走行装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行装置および自律走行装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサなどによって自機の周囲の障害物を検知しながら自律的に走行する自律走行装置として、無人搬送車(AGV)や自律移動ロボット(AMR)が知られる。また、自律走行装置がパレットや梱包箱などの搬送物の下に進入して搬送物を保持し搬送することで荷積み(および荷下ろし)を自動化する運用が求められている。
【0003】
例えば特許文献1は、3Dカメラから受け取った情報によりパレットが配置された棚に入り込み、パレットを搬送する自律走行装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3656702号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、3Dカメラの搭載は自律走行装置のコスト増を招くので、2Dレーザセンサなどの2次元センサを備えた機種で搬送物の下に進入するための技術が求められる。
そこで、本発明は、2次元センサの情報で搬送物の下に進入可能な自律走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自律走行装置の一態様は、走行の障害となる障害物における2次元的な外形を検出する2次元センサと、上記2次元センサで検出された2次元的な外形のうち、目標の停止姿勢における前後方向に沿った方向へと延びた外形部分を抽出する外形抽出部と、上記外形部分に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置を算出する目標算出部と、上記目標の停止位置に向かって弧状の進路で自装置を走行させる走行部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る自律走行装置の制御方法の一態様は、走行の障害となる障害物における2次元的な外形を検出する2次元センサで検出された2次元的な外形のうち、目標の停止姿勢における前後方向に沿った方向へと延びた外形部分を抽出する外形抽出過程と、上記外形部分に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置を算出する目標算出過程と、上記目標の停止位置に向かって弧状の進路で自律走行装置を走行させる走行過程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2次元センサの情報で搬送物の下に進入可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の自律走行装置の外観を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の自律走行装置の外観を示す正面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の自律走行装置の外観を示す上面図である。
【
図4】
図4は、自律走行装置の変形例を示す側面図である。
【
図5】
図5は、自律走行装置の変形例を示す正面図である。
【
図6】
図6は、2次元センサの検知範囲を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の自律走行装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、進入位置に到達した自律走行装置を示す図である。
【
図11】
図11は、外形抽出部による外形線分の抽出を示す図である。
【
図12】
図12は、外形線分の方向による絞り込み例を示す図である。
【
図13】
図13は、外形線分の位置による絞り込み例を示す図である。
【
図14】
図14は、絞り込みを経た外形線分から選択される左右の外形線分を示す図である。
【
図15】
図15は、新たな目標の停止位置の算出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の自律走行装置および自律走行装置の制御方法の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、先に説明した図に記載の要素については、後の図の説明において適宜に参照する場合がある。
【0011】
図1~
図3は、本実施形態の自律走行装置の外観を示す図である。
図1には側面図が示され、
図2には正面図が示され、
図3には上面図が示される。
本実施形態の自律走行装置100は、例えば工場などで資材などの搬送物を搬送するAMR(Autonomous Mobile Robot)と称される装置である。自律走行装置100は、搬送物を支持した棚などを避けながら搬送物の下に進入し、搬送物を下から保持して搬送する。
【0012】
自律走行装置100は、本体部101と荷台102とホイール103とキャスタ104と2次元センサ105とを備える。
本体部101は、制御用のコンピュータや駆動の電源などを内蔵する。上下方向から見た本体部101の形状は長方形的な形状である。「長方形的な形状」とは、長方形、長方形の角が面取りされた形状、および長方形の角が丸められた形状を含む。以下、自律走行装置100の前後の目印として2次元センサ105の位置が図示される場合がある。
【0013】
荷台102は、資材などの搬送物を下から保持するため、搬送物を持ち上げる機能などを有する。
ホイール103は、一例として本体部101の左右2箇所に設けられ、本体部101内のモータによって回転駆動される。左右のホイール103は独立に駆動可能であり、自律走行装置100は、左右のホイール103の駆動により、前進、後進、その場回転、および旋回(弧状のカーブを描く動き)が可能である。
【0014】
キャスタ104は、一例として本体部101の四隅それぞれに設けられ、本体部101が傾かないように支持する。キャスタ104は駆動力を持たず、本体部101の動きに従って転がり、方向も本体部101の動きに従って変わる。
2次元センサ105は、本体部101の前方と左右の広い範囲について障害物などを検出する。2次元センサ105としては例えば2D-LiDARなどが用いられる。
自律走行装置100は、本体部101の後方の障害物などを検知する赤外線センサなどを備えてもよい。
【0015】
図4および
図5は、自律走行装置100の変形例を示す図である。
図4には側面図が示され、
図5には正面図が示される。
変形例の自律走行装置100は、上記実施形態の自律走行装置100と同様に、本体部101と荷台102とホイール103とキャスタ104と2次元センサ105とを備える。
変形例の自律走行装置100では、2次元センサ105が本体部101の隅に設けられる。変形例における2次元センサ105は、本体部101の2隅に設けられてもよく、4隅に設けられてもよい。
本発明は、
図1~
図3に示す実施形態の自律走行装置100と、
図4、
図5に示す変形例の自律走行装置100とのいずれにも適用可能である。以下では、
図1~
図3に示す実施形態の自律走行装置100を例として説明する。
【0016】
図6は、2次元センサ105の検知範囲を示す図である。
2次元センサ105は、自律走行装置100の前方側(即ち
図6の右側)から左右方向へと広がる広い範囲に向かってレーザ光Lを放射状に発する。2次元センサ105の検知範囲は、2次元センサ105を中心とした例えば約270度の範囲である。
【0017】
図7は、本実施形態の自律走行装置100の機能構成を示す機能ブロック図である。
自律走行装置100は、制御部110と記憶部120と駆動部130と計測部140を備える。
制御部110は、本体部101に内蔵されたコンピュータによって担われる機能であり、自律走行装置100全体を制御する。
【0018】
記憶部120は、自律走行装置100が走行する領域の地図情報と、その領域上で走行する経路を記憶する。
駆動部130は、本体部101に内蔵された電源やモータと上記ホイール103によって担われる機能である。制御部110による制御に従って駆動部130が駆動することで自律走行装置100が走行する。
【0019】
計測部140は、上記2次元センサ105によって担われる機能であり、障害物などを計測する。
制御部110は、進入位置決定部111と外形抽出部112と目標算出部113と走行部114と接触確認部115とを備える。
進入位置決定部111は、記憶部120に記憶された地図情報において搬送物の下に設定された目標の停止位置に安全に進入するための起点となる進入位置を地図情報に基づいて決定する。
【0020】
外形抽出部112は、2次元センサ105による検知信号に基づいて、障害物の直線的な外形部分を抽出する。抽出の詳細については後述する。
目標算出部113は、地図情報に設定された目標の停止位置の初期値に代わる新たな目標の停止位置を、外形抽出部112で抽出された直線的な外形部分に基づいて算出する。目標の停止位置の算出に関する詳細についても後述する。
【0021】
走行部114は、地図情報や2次元センサ105の検出信号などに基づいた自律的なナビゲーションによって駆動部130を制御することで進入位置への移動や目標の停止位置への移動を実現する。
接触確認部115は、進入位置から目標の停止位置までの移動に際して、自律走行装置100と障害物との接触を予測的に確認する。
【0022】
図8は、進入位置を示す図である。
図8には、複数の障害物200が示され、障害物200の間に存在する点Dによって目標の停止位置が示される。点Dに付された矢印は目標の停止姿勢を示す。点Dが示す目標の停止位置は、例えば地図情報に設定された位置であり、目標の停止位置の初期値(目安)として与えられた位置である。点Dが示す目標の停止位置は、外部からの入力で自律走行装置100に与えられてもよい。
【0023】
各障害物200の周囲には走行禁止領域201が存在し、この走行禁止領域201から自律走行装置100の中心が外れていれば自律走行装置100は自由回転可能である。
目標の停止位置に対する進入位置は点Aで示され、点Dから目標の停止姿勢のまま後退した方向に存在するとともに、走行禁止領域201の外に存在する。この進入位置を初期位置として自律走行装置100が目標の停止位置へと向かうことで、自律走行装置100は、他の位置から目標の停止位置へと向かう場合に較べて安全に搬送物の下に進入することができる。即ち、目標の停止位置に対して目標の停止姿勢で後退した方向に存在する自由回転可能な初期位置から当該目標の停止位置へと向かうことで安全な進入が可能となる。
【0024】
本実施形態において、進入位置へと向かう自律走行装置100の走行は、地図情報と2次元センサ105とを使用した、自己位置推定手法と経路計画手法と経路追従手法と障害物回避手法を組み合わせた自律ナビゲーションによって実行される。つまり、自律走行装置100は、初期位置である進入位置まで、予め与えられた地図情報と2次元センサ105による障害物200の検出とに基づいた自律的なナビゲーションによって移動する。
【0025】
一方、
図8の点Bが示す位置は、点Dから停止姿勢のまま前進した方向に位置する。このため、自律走行装置100が点Bの示す位置から目標の停止位置へと向かうと、自律走行装置100の姿勢は目標の停止姿勢に対して逆向きとなってしまう。従って、点Bが示す位置は進入位置としては不向きな位置である。
自律走行装置100は、目標の停止位置へと向かう前に、まず、点Aで示される進入位置へと向かう。自律走行装置100の進入位置決定部は、進入位置へと向かう経路の算出も担う。
【0026】
図9は、進入位置に到達した自律走行装置100を示す図である。
進入位置に到達した自律走行装置100は、その場回転により目標の停止位置301の方向を向く。この結果、自ずと自律走行装置100の姿勢は目標の停止姿勢300とほぼ同じ姿勢となる。
その後、自律走行装置100は、自機付近の障害物200を2次元センサ105で検出しながら目標の停止位置へと向かい、障害物200の検出信号に基づいて目標の停止位置を更新する。
【0027】
図10は、障害物200の検出例を示す図である。
自律走行装置100は、2次元センサ105から周囲にレーザ光Lを発し、各レーザ光Lが障害物200に当たった各点の位置を表した点群情報を得る。点群情報は、障害物200の外形を表した情報である。即ち、2次元センサ105は、走行の障害となる障害物における2次元的な外形を検出する。
点群情報としては、2次元センサ105の位置を起点とした各点の方向と距離を得てもよい。また、点群情報は、2次元センサ105の測定可能距離よりも短く設定された制限範囲内のみの測定で得られてもよい。測定範囲が制限されることで点群情報の情報量が制限されて演算処理の軽減が図られる。
【0028】
図11は、外形抽出部112による外形線分210の抽出を示す図である。
自律走行装置100の外形抽出部112は、例えばRANdom SAmple Consensus(RANSAC)などといった公知の任意の技術により、点群情報から障害物200の直線状に延びた外形線分210を抽出する。外形線分210の抽出により、搬送物を支えた棚などを効率よく発見することができる。
外形抽出部112では、抽出した外形線分210の絞り込みが行われる。
【0029】
図12および
図13は、外形線分210の絞り込み例を示す図である。
図12では、
図11に示す外形線分210が、目標の停止姿勢300の前後方向に沿って延びる外形線分211に絞り込まれる。言い換えると、外形抽出部112は、2次元センサ105で検出された2次元的な外形のうち、目標の停止姿勢300における前後方向に沿った方向へと延びた外形部分を抽出する。外形線分211の延びた方向は、目標の停止姿勢300の前後方向に対して多少異なった方向であってもよい。延伸方向の相違は、例えば2次元センサ105の測定誤差に相当する程度ならば許容範囲である。
図13では、
図12に示す外形線分211が、目標の停止位置301を中心とした所定距離範囲310内に届いた外形線分212に絞り込まれる。つまり、外形抽出部112は、目標の停止位置301を起点とした所定範囲310内について外形線分212を抽出する。
【0030】
図14は、絞り込みを経た外形線分212から選択される左右の外形線分213、214を示す図である。
図12、
図13の絞り込みを経た外形線分212から、外形抽出部112は、自律走行装置100の左側に位置する外形線分213と、自律走行装置100の右側に位置する外形線分214とを選択する。外形抽出部112は、外形線分213、214を進行方向の左右それぞれについて抽出する。これらの外形線分213、214は、目標の停止位置301を間に挟んで向き合った1対の対向面に相当する。自律走行装置100は、この1対の対向面の間に進入して停止することになる。
【0031】
自律走行装置100の目標算出部113は、地図情報に設定されている初期値としての目標の停止位置301を、自律走行装置100に対する相対位置に変換して、目標の停止位置301への進入を行う。しかし、地図情報が示している領域に対する自律走行装置100の自己位置推定は誤差を生じ、自律走行装置100の進入位置にも誤差を生じる。このため、自律走行装置100は目標算出部113で、例えば
図14に示す外形線分213、214から、初期値としての目標の停止位置301に代わる新たな目標の停止位置を算出する。
【0032】
図15は、新たな目標の停止位置の算出例を示す図である。
図15(A)に示すように、目標算出部113は、新たな目標の停止位置320として、左右の外形線分213、214から等距離Leであって、外形線分213、214の最奥の位置215から所定の後退距離Lbだけ後方の位置を算出する。言い換えると、目標算出部113は、外形線分213、214に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置320を算出する。より具体的には、目標算出部113は、外形線分213、214の最奥位置215を基準とした相対関係で目標の停止位置320を算出する。
【0033】
2次元センサ105の計測範囲は後方側が狭いため、自律走行装置100が進んで停止位置320に近づくと、外形線分213、214の手前側は測定範囲から外れてしまう場合があるからである。これに対し、最奥の位置215は、停止位置320に到達するまで2次元センサ105の計測範囲に収まっていると期待されるので、精度の良い停止位置320の算出が可能となる。
【0034】
自律走行装置100は、算出された目標の停止位置320をそのまま目的地として走行するのではない。自律走行装置100は、最新に算出された目標の停止位置320と、それまでに算出済みの目標の停止位置320とを平均化した位置へと向かって走行を行う。目標算出部113は、その平均化の処理も実行する。平均化の処理においては、算出済みの目標の停止位置320に対し、自律走行装置100に対する相対位置が自律走行装置100の移動量に基づいて修正される。
【0035】
左右の外形線分213、214の位置には2次元センサによる計測誤差が含まれており、平均化によってこの誤差が打ち消されるので、目標の停止位置320の精度が向上する。なお、自律走行装置100は、目標の停止位置320の平均値以外の統計的な代表値(例えば中央値)が示す位置に向かって走行してもよい。
【0036】
つまり、目標算出部113は、目標の停止位置320へと向かって走行する間の複数時点それぞれで当該目標の停止位置320を算出し、最新の目標の停止位置320として、最新に抽出された外形線分213、214に対する相対的な位置関係を有する目標の停止位置320と、算出済みの目標の停止位置320とを含んだ統計値を算出する。
図15(B)に示すように、左右の外形線分213、214の位置が、互いに前後に異なっている場合には、最奥の位置215として、奥側に延びている方(
図15(B)の例では右の外形線分214)の最奥の位置215が用いられる。
【0037】
図15(C)に示すように、左右の外形線分213、214の一方のみ(
図15(C)の例では左の外形線分213)が検出された場合には、当該一方からの距離が所定距離Lhであって、最奥の位置215から所定の後退距離Lbだけ後方の位置が目標の停止位置320として算出される。所定距離Lhとしては、例えば地図情報に設定された目標の停止位置301を間に挟んだ左右の障害物200の隙間の半分が用いられる。あるいは、所定距離Lhとしては、例えば外部から入力された設定値が用いられてもよい。
【0038】
図15(D)に示すように、左右の外形線分213、214の延伸方向がやや異なる場合にも、目標算出部113は、新たな目標の停止位置320として、左右の外形線分213、214から等距離Leであって、外形線分213、214の最奥の位置215から所定の後退距離Lbだけ後方の位置を算出する。
【0039】
目標算出部113が、新たな目標の停止位置320の算出と平均化を行うと、走行部114は、目標の停止位置320の平均値が表す位置へと向かう弧状の経路で自律走行装置100を走行させる。「弧状」とは、円弧に限られず、例えば螺旋の一部や楕円の一部であってもよい。つまり、走行部114は、目標の停止位置320に向かって弧状の進路で自律走行装置100を走行させる。
【0040】
図16は、走行経路の例を示す図である。
自律走行装置100が走行する弧状の経路400は、目標の停止位置320の平均値が表す停止位置302を通るとともに、当該停止位置302では目標の停止姿勢300の前後方向に延びる。なお、経路400の全体としては弧状であるが、
図16に示す部分は経路400の最後の一部であるため、ほぼ直線の形状である。
【0041】
図16(A)に示すように、左右の外形線分213、214の延伸方向が等しい場合には、自律走行装置100が走行する経路400は、停止位置302上で左右の外形線分213、214と平行に延び、左右の外形線分213、214のほぼ中央を通る。従って、経路400上を走行する自律走行装置100は、障害物200から距離を保って安全に停止位置302に至ることができる。
【0042】
図16(B)に示すように、左右の外形線分213、214の前後位置が互いに異なっている場合も同様である。
図16(C)に示すように、左右の外形線分213、214の一方のみ(
図16(C)の例では左の外形線分213)が検出された場合には、当該一方に対して適度に離れた経路400となる。このため、外形線分が検出されなかった方の障害物200からも距離を保った走行が可能となる。
図16(D)に示すように、左右の外形線分213、214の延伸方向がやや異なる場合には、自律走行装置100の走行する経路400は、左右の外形線分213、214からほぼ等距離を保ち、左右の外形線分213、214のほぼ中央を通る。
【0043】
このように自律走行装置100は、障害物200から距離を保って安全に停止位置302に至ることができ、搬送物の下に安全に進入することができる。本実施形態の自律走行装置100は、安全性を更に確保するため、自律走行装置100と障害物200との接触の可能性を接触確認部115で確認しながら走行する。
【0044】
図17は、接触確認の例を示す図である。
接触確認部115は、自律走行装置100の本体部101の形状を、自律走行装置100の走行する経路400上で仮想的に移動させ、本体部101と左右の外形線分213、214との接触の有無を確認する。
図17(A)に示すように、左右の外形線分213、214の延伸方向が等しい場合には、本体部101の形状が左右の外形線分213、214のほぼ中央を移動する。このため、本体部101と左右の外形線分213、214との距離が確保され、接触は生じない。
【0045】
図17(B)に示すように、左右の外形線分213、214の前後位置が互いに異なっている場合も同様である。
図17(C)に示すように、左右の外形線分213、214の一方のみ(
図16(C)の例では左の外形線分213)が検出された場合には、当該一方に対して経路400がやや傾く場合がある。このため、左右の外形線分213、214の一方のみが検出された場合には、両方が検出された場合に較べ、接触の虞が高い。
図17(D)に示すように、左右の外形線分213、214の延伸方向がやや異なる場合には、外形線分213、214同士の距離が狭まっているところで、本体部101と外形線分213、214との接触を生じる虞が増す。
【0046】
接触確認部115による確認の結果、本体部101と左右の外形線分213、214との接触が生じる場合には、停止位置302へと向かう走行が中止され、自律走行装置100は上述した進入位置まで戻る。そして、進入位置から改めて、目標の停止姿勢300への進入が再開されるので、自律走行装置100における走行の安全性が確保される。つまり、自律走行装置100は、外形線分213、214と自装置との接触が予測される場合に、上述した初期位置である進入位置に戻り、目標の停止位置302へと向かう走行をやり直す。
【0047】
自律走行装置100が搬送物の下に進入して停止位置302で停止した後、自律走行装置100は荷台102によって搬送物を保持して搬送物を搬送する。自律走行装置100が停止位置302を離れる場合には、外形線分213、214に沿った経路400上を走行して上述した進入位置へと向かう。その後、自律走行装置100は、任意の目的地まで自律走行を行う。
【0048】
なお、ここでは、本発明の自律走行装置および自律走行装置の制御方法の適用例としてAMRが挙げられるが、本発明の自律走行装置および自律走行装置の制御方法の適用としては上記に限定されず、AGV(Automatic Guided Vehicle)や自動運転車など広範囲に使用可能である。
上述した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
100 :自律走行装置
101 :本体部
102 :荷台
103 :ホイール
104 :キャスタ
105 :2次元センサ
110 :制御部
111 :進入位置決定部
112 :外形抽出部
113 :目標算出部
114 :走行部
115 :接触確認部
120 :記憶部
130 :駆動部
140 :計測部
200 :障害物
201 :走行禁止領域
210、211、212、213、214 :外形線分
300 :目標の停止姿勢
301、320 :目標の停止位置
302 :停止位置
400 :経路