(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148154
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20231005BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60K11/04 F
B60K11/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056030
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】除村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】儘田 知憲
(72)【発明者】
【氏名】東 祐司
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AA04
3D038AA05
3D038AB09
3D038AC03
3D038AC11
3D038AC12
3D038AC14
3D038AC23
(57)【要約】
【課題】作業機械の周囲の状況を考慮して冷却ファンの逆回転を制御する。
【解決手段】作業機械(10)は、車体と、熱交換器ユニット(18)と、冷却ファン(10)と、冷却ファンの回転方向を制御するコントローラ(110)と、前記冷却ファンの逆回転が禁止された位置を特定した禁止エリア情報を記憶する禁止エリア情報記憶装置と、GNSSセンサ(17)と、を備え、コントローラは、車体が禁止エリア内又は外にあるかを判定し、禁止エリア外にあると判定すると冷却ファンの逆回転信号を出力し、車体位置が禁止エリア内にあると判定すると冷却ファンの逆回転信号の出力を禁止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
車体と、
熱交換器を有する熱交換器ユニットと、
正回転又は逆回転で回転し、前記熱交換器ユニットに送風する冷却ファンと、
前記冷却ファンの回転方向を制御するコントローラと、
前記冷却ファンの逆回転が禁止された禁止エリアの位置情報を含む禁止エリア情報を記憶する禁止エリア情報記憶装置と、
車体位置を検知して車体位置情報を出力するGNSSセンサと、
を備え、
前記コントローラは、前記禁止エリア情報及び前記車体位置情報に基づいて前記車体位置が前記禁止エリア内又は前記禁止エリア外にあるかを判定し、前記禁止エリア外にあると判定すると前記冷却ファンの逆回転信号を出力し、前記車体位置が前記禁止エリア内にあると判定すると前記冷却ファンの逆回転信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
作業機械であって、
車体と、
熱交換器を有する熱交換器ユニットと、
正回転又は逆回転で回転し、前記熱交換器ユニットに送風する冷却ファン及び当該冷却ファンを逆回転した際の排気を排出する排気口と、
前記冷却ファンの回転方向を制御するコントローラと、
前記冷却ファンの逆回転により生じる排気の噴射から保護したい保護エリアに前記排気口が対向する前記車体の向きである車体方位を記憶する車体方位記憶装置と、
複数のGNSSアンテナ及びこれら複数のGNSSアンテナが受信したGNSS信号に基づいて前記車体の向き情報を検知するGNSSセンサと、
を備え、
前記コントローラは、前記車体の向き情報と前記車体方位とを比較し、前記排気口が前記保護エリアに向いていないと判定すると前記冷却ファンの逆回転信号を出力し、前記排気口が前記保護エリアに向いていると判定すると前記冷却ファンの逆回転信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記車体には、前記冷却ファンが逆回転をした際に生じる排気が排出される排気口が備えられ、
前記GNSSセンサは、複数のGNSSアンテナを備え、これら複数のGNSSアンテナが受信したGNSS信号に基づいて前記車体の向き情報を検知し、
前記コントローラは、前記禁止エリア情報及び前記車体の向き情報に基づいて、前記車体位置が前記禁止エリア内にあっても、前記排気口が排気の噴射から保護したい保護エリアに対向していないと判定すると前記冷却ファンの逆回転信号を出力し、前記車体位置が前記禁止エリア内にあり、かつ前記排気口が前記保護エリアに向いていると判定すると前記冷却ファンの逆回転信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の作業機械において、
前記所定の条件とは、予め定められた清掃のタイミングに到達したこと、または前記作業機械に備えられたファン逆回転スイッチのON操作を受け付けたことである、
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に係り、特に冷却ファンを逆転させることによって熱交換器ユニットから塵芥を除去可能な作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に油圧ショベル等の作業機械のエンジンルームには、各種流体を冷却するための複数の熱交換器を有する熱交換器ユニットと、エンジンルーム内に冷却風を供給する冷却ファンとが設けられている。冷却ファンによって生成された冷却風は、複数の熱交換器のそれぞれを通る各種流体を冷却し、エンジンルーム内を通過してエンジンルーム外に排出される。
【0003】
作業機械が稼働する作業現場には埃や細かな木屑等の塵芥が多量に浮遊している場合があり、このような作業現場において作業機械が稼働していると、冷却ファンの冷却風によって塵芥がエンジンルーム内に運ばれ、運ばれた塵芥が熱交換器ユニットに堆積し熱交換器の冷却効率を悪化させるおそれがある。そこで、作業機械には、熱交換器ユニットの冷却効率の悪化を防止するため、熱交換器ユニットに堆積した塵芥を逆転させた冷却ファンによって吹き飛ばして除去するようになっているものがある。冷却ファンの逆転は、たとえば作業機械のオペレータが手動で逆転スイッチを操作して必要な時間だけ行われ、あるいは作業機械に搭載されたコントローラによって所定時間ごとに行われるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却ファンを逆転させて熱交換器の目詰まりを除去すると、塵芥を含む排気が排出され、作業機械の周囲にいる作業者等や建屋、道路を通行中の他の車両などにかかるおそれがある。この課題については特許文献1では考慮されていないことから更なる改善が求められている。
【0006】
本発明は上記に課題に鑑みてなされたものであり、作業機械の周囲の状況を考慮して冷却ファンの逆回転を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、特許請求の範囲に記載の構成を備える。その一例をあげるならば、本発明は、作業機械であって、車体と、熱交換器を有する熱交換器ユニットと、正回転又は逆回転で回転し、前記熱交換器ユニットに送風する冷却ファンと、前記冷却ファンの回転方向を制御するコントローラと、前記冷却ファンの逆回転が禁止された禁止エリアの位置情報を含む禁止エリア情報を記憶する禁止エリア情報記憶装置と、車体位置を検知して車体位置情報を出力するGNSSセンサと、を備え、前記コントローラは、前記禁止エリア情報及び前記車体位置情報に基づいて前記車体位置が前記禁止エリア内又は前記禁止エリア外にあるかを判定し、前記禁止エリア外にあると判定すると前記冷却ファンの逆回転信号を出力し、前記車体位置が前記禁止エリア内にあると判定すると前記冷却ファンの逆回転信号の出力を禁止する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業機械の周囲の状況を考慮して冷却ファンの逆回転を制御することができる。上記した以外の目的、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】油圧ショベルのハードウェア構成を示すブロック図。
【
図4】本実施形態に係るコントローラの機能構成を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態に係る冷却ファン制御システムの処理の流れを示すフローチャート。
【
図6】第1実施形態に係る禁止エリアの設定例を示す図。
【
図7】第2実施形態に係る冷却ファン制御システムの処理の流れを示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態に係る冷却ファンの逆回転を禁止する車体の向きである車体方位の設定例を示す図。
【
図9】第3実施形態に係る冷却ファン制御システムの処理の流れを示すフローチャート。
【
図10】第3実施形態に係る禁止エリアと車体方位の設定例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一又は関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
図1、
図2を参照して油圧ショベル10の外観について説明する。
図1は、油圧ショベル10の構成を示す上面図である。
図2は、油圧ショベル10の左側面図である。
【0012】
油圧ショベル10は、左クローラ11L、右クローラ11R(走行体に相当する)と、走行体に旋回機構を介して旋回自在に支持される上部旋回体12と、上部旋回体12に取り付けられるキャブ13と、上部旋回体12に俯仰可能に連結されたフロント作業機とを備える。走行体及び上部旋回体12を総称した車体101と表現することがある。
【0013】
上部旋回体12の上面には、左GNSSアンテナ17L、及び右GNSSアンテナ17Rが備えられる。第2、3実施形態では車体の向きを検知するため複数のGNSSアンテナが必要であるが、第1実施形態では単数でもよい。
【0014】
キャブ13には、ディスプレイ120が備えられる。
【0015】
フロント作業機は、上部旋回体12に対して俯仰自在に支持されるブーム14、該ブーム14に上下揺動自在に支持されるアーム15(
図2参照)、該アーム15に回転自在に支持されるバケット16を含む。
【0016】
また走行体を用いた前進動作、後退動作、上部旋回体12の旋回動作、及びブーム14、アーム15、バケット16の俯仰動作、揺動動作、回転動作を各々実施するために、油圧モータや油圧シリンダといったアクチュエータを備えている。油圧モータは旋回動作等のために備えられ、油圧シリンダはブーム14等の俯仰動作、揺動動作、回転動作のために備えられている。なお、ここでは油圧式を想定したがそれに拘るものでなく、例えば電動モータやリニアアクチュエータなど電動式でもよい。
【0017】
上部旋回体12の内部には、各種流体を冷却するための熱交換器ユニット18と、冷却風を供給する冷却ファン19と、エンジン21とが備えられる。熱交換器ユニット18には、エンジン冷却水を冷却するためのラジエタや、油圧アクチュエータを作動させるための作動油を冷却するオイルクーラ等が含まれる。
【0018】
上部旋回体12の左側面には、給排気口20が形成される。
【0019】
油圧ショベル10の通常運転時は冷却ファン19が正回転する。冷却ファン19が正回転をすると、上部旋回体12の左側面に設けられた給排気口20から外気が取り込まれ(図中の矢印PRで取り込まれる外気の向きを示す。)、熱交換器ユニット18、冷却ファン19を経てエンジン21に向けて冷却風が供給される。冷却風はエンジンルーム22内に供給された後、エンジンルーム22の外へ排出される。
【0020】
熱交換器ユニット18の清掃時は、冷却ファン19が逆回転する。冷却ファン19が逆回転をすると、エンジンルーム22内の空気が冷却ファン19により熱交換器ユニット18へ送風される。その結果、熱交換器ユニット18に堆積した塵芥を含んだ排気が給排気口20から車外に排出される。図中の矢印BRで排出される排気の向きを示す。
【0021】
図3は、油圧ショベル10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0022】
コントローラ110は、CPU(Central Processing Unit)等からなるプロセッサ111、RAM(Random Access Memory)112、ROM(Read Only Memory)113、記憶装置114、入力I/F115、出力I/F116を含みこれらがバス117を介して互いに接続される。
【0023】
記憶装置114は、データを不揮発に記憶できるデバイスであればよく、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)など種類を問わない。
【0024】
入力I/F115には、GNSSセンサ17、キャブ13に備えられたファン逆回転スイッチ23及び入力装置24が接続される。GNSSセンサ17は、油圧ショベル10の車体の絶対座標系の車体位置情報を出力する。また、左GNSSアンテナ17L及び右GNSSアンテナ17Rを備える場合は、車体の向き情報も出力可能である。
【0025】
ファン逆回転スイッチ23は、油圧ショベル10のオペレータが操作すると、冷却ファン19を逆回転させて熱交換器ユニット18の清掃が行える。
【0026】
入力装置24は、油圧ショベル10のオペレータが後述する禁止エリアを設定する際の操作インタフェースである。入力装置24は、例えばディスプレイ120に積層されたタッチパネルでもよい。
【0027】
出力I/F116には、ディスプレイ120とファンモータ25とが接続される。ファンモータ25は、冷却ファン19を正回転及び逆回転させる。コントローラ110からファンモータ25に正回転信号又は逆回転信号が出力されると、それに応じて冷却ファン19が正回転又は逆回転する。
【0028】
図4は、本実施形態に係るコントローラ110の機能構成を示すブロック図である。
【0029】
プロセッサ111は、止エリア・車体方位設定部131、表示制御部132、ファン逆回転判定部134、ファンモータ制御部135の各部の機能を実行する。禁止エリア・車体方位設定部131は、後述する第1実施形態では禁止エリア情報だけを、第2実施形態では車体方位情報だけを設定すればよく、第3実施形態では禁止エリア情報及び車体方位情報を設定する。禁止エリア情報及び車体エリア情報の詳細については後述する。上記各部は、プロセッサ111が、冷却ファン制御プログラムをRAM112にロードして実行することにより実現する。
【0030】
また、記憶装置114は、設定された禁止エリア情報及び車体方位情報を記憶する禁止エリア・車体方位情報記憶部133を含む。後述する第1実施形態では禁止エリア情報だけを、第2実施形態では車体方位情報だけを記憶すればよく、第3実施形態では禁止エリア情報及び車体方位情報を記憶する。禁止エリア情報及び車体エリア情報の詳細については後述する。
【0031】
<第1実施形態>
第1実施形態は、車体位置が冷却ファンの逆回転を禁止する禁止エリア内にある場合に、逆回転を禁止する実施形態である。
【0032】
図5は、第1実施形態に係る冷却ファン制御システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
図5の処理を開始するにあたり、油圧ショベル10のコントローラ110の主電源が投入されエンジン21が始動すると、ファンモータ制御部135は正回転信号をファンモータ25に出力して冷却ファン19が正回転する。これにより、上部旋回体12に設けられた給排気口20から外気が取り込まれ(
図1中の矢印PR)、熱交換器ユニット18に冷却風が送風される。
【0034】
まずステップS01として、禁止エリア・車体方位設定部131はGNSSセンサ17から油圧ショベル10の車体位置情報を取得する。
【0035】
次にステップS02で禁止エリア・車体方位設定部131は、設定された禁止エリア200を示す禁止エリア情報を禁止エリア・車体方位情報記憶部133に記憶する。
図6は、第1実施形態に係る禁止エリアの設定例を示す図である。第1実施形態では、止エリア200は禁止エリア200の設定時の車体位置210(GNSSセンサ17から取得した世界座標系の車体位置である)を中心に、所定の範囲、例えば車体を中心に半径rの範囲で設定される。または、ディスプレイ120に油圧ショベル10の現在位置を含む地図情報を表示し、オペレータが入力装置24によって入力したエリアを禁止エリア200として設定してもよい。
【0036】
次にステップS03で、コントローラ110は冷却ファン19の逆転を行うための判定を行う。この例では、油圧ショベル10において、コントローラ110が冷却ファンの逆転を行うための条件として、例えば各種センサの情報に基づき、予め定められた清掃のタイミングに到達、または油圧ショベル10のオペレータによりファン逆回転スイッチ23のON操作を受け付けたことがあり、こうした条件が成立したかを判定する。この条件が不成立の場合(S03:No)は、ファン逆回転の可否を判定せずに、ステップS07へ進む。
【0037】
ステップS03で条件が成立したと判定されると(S03:Yes)、ステップS04に進み、ファン逆回転判定部134は、車体位置210が禁止エリア200内にあるかを判定し、禁止エリア200内にあると判定すると(S04:Yes)、ステップS05でファンモータ制御部135に対して冷却ファン19の逆回転を禁止する。なお、この状態で油圧ショベル10のオペレータがファン逆回転スイッチ23をON操作しても、ファンモータ制御部135は、逆回転信号をファンモータ25には出力しない。
【0038】
ステップS04の判定では
図6の“NG”で示すように、車体の一部、フロント作業機が禁止エリア200の外にあっても、上部旋回体12の中心位置が禁止エリア200の内側にあれば、車体位置210が禁止エリア200内にあると判定する。
【0039】
またステップS04で車体位置210が禁止エリア200の外にあれば(S04:No)、ステップS06に進みファン逆回転判定部134は逆回転制御を行う。ファン逆回転判定部134はファンモータ制御部135に逆回転信号の出力を許可し、ファンモータ制御部135は、自動、又はファン逆回転スイッチ23の操作に連動して逆回転信号を出力し、冷却ファン19が逆回転をする。これによりエンジンルーム22内の空気が冷却ファン19から熱交換器ユニット18に送風され、熱交換器ユニット18に堆積した塵芥が給排気口20から排気と共に排出する。
【0040】
そしてステップS07で油圧ショベル10が作業を終了によりエンジン21を停止を判定すると(S07:Yes)、処理を終了する。
【0041】
本実施形態によれば、作業員や建物、および道路を通行中の車両等への影響を考慮して、油圧ショベル10の車体位置210を中心に禁止エリア200を設定し、その禁止エリア200内に車体位置210がある場合は、冷却ファン19の逆回転を防止する。これにより、禁止エリア200内で作業中の作業員等に向けて塵芥を含んだ排気が噴射され作業員等が塵芥に晒されることを防ぐことができる。一方、禁止エリア200の外では、冷却ファン19を逆回転させて熱交換器ユニット18を清掃できるため、熱交換器ユニット18の目詰まりを除去し、熱交換器ユニット18の性能低下を防ぐことができる。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態は、排気の噴射から保護したいエリア(以下、保護エリア)に油圧ショベルの給排気口が向いている場合に、逆回転を禁止する実施形態である。
【0043】
図7は、第2実施形態に係る冷却ファン制御システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
図7の処理を開始するにあたり、油圧ショベル10のコントローラ110の主電源が投入されエンジン21が始動すると、ファンモータ制御部135は正回転信号をファンモータ25に出力して冷却ファン19が正回転する。
【0045】
ステップS11として、禁止エリア・車体方位設定部131は冷却ファンの逆回転を禁止する車体の向き(「車体方位」という)を設定する。
【0046】
図8は、第2実施形態に係る冷却ファンの逆回転を禁止する車体の向きである車体方位220の設定例を示す図である。第2実施形態では、道路や作業者用通路など冷却ファン19を逆回転させて生じる排気を噴出させたくない場所を保護エリア230とし、給排気口20が保護エリア230を向く(対向する)際の車体の向きを冷却ファン19の逆回転を禁止する車体向きである車体方位220として設定する。冷却ファン19の逆回転を禁止する車体の向き(車体方位220)の設定操作では、ディスプレイ120に油圧ショベル10の現在位置を含む地図情報を表示し、オペレータが道路や作業用通路などの保護エリア230に給排気口20が向く車体の向きを車体方位220としてオペレータが入力する。これにより給排気口20が保護エリア230に向く車体の向きを登録して、ファン逆回転判定部134の処理に用いる。
【0047】
ステップS12でGNSSセンサ17は、左右のGNSSアンテナ17L、17Rが受信したGNSS信号を基に油圧ショベル10の車体の向き(方位)を取得する。
【0048】
ステップS13では油圧ショベル10において、コントローラ110が冷却ファンの逆転を行うと判定するきっかけとなる条件が成立したかを判定する。例えば各種センサの情報からコントローラ110が清掃のタイミングを判定しその清掃タイミングになったか、また油圧ショベル10のオペレータがファン逆回転スイッチ23を押したかが所定の条件の一例である。所定の条件が不成立の場合(S13:No)は、ファン逆回転の可否を判定する必要がないのでステップS07へ進む。
【0049】
コントローラ110が所定の条件は成立したと判定すると(S13:Yes)、ステップS14においてファン逆回転判定部134は車体向き情報と車体方位とを比較し、車体の給排気口20が保護エリア230に対向する向きに車体が向いているか、即ち車体の向きが車体方位と一致するかを判定する。
【0050】
図8の“NG”で示すように、給排気口20が保護エリア230に向いていれば(S14:Yes)、ステップS05で冷却ファン19の逆回転を禁止する。
【0051】
車体の向きが保護エリア230を向いていなければ(S14:No)、ステップS06でファン逆回転判定部134は逆回転制御を行い、ステップS07へ進む。
【0052】
本実施形態によれば、油圧ショベル10の給排気口20が保護エリア230に向いている場合は、冷却ファン19の逆回転を防止する。よって、塵芥を含んだ排気を排出しても差支えがない向きに車体が向いている場合、即ち保護エリア230に給排気口20が向いていない場合は熱交換器ユニット18の清掃のために冷却ファン19を逆回転させる。これにより、冷却ファン19を逆転させて熱交換器ユニット18の目詰まりを除去すると、塵芥を含む排気が排出され、油圧ショベル10の周囲にいる作業者等や建屋、道路を通行中の他の車両などにかかるおそれがあるが、本実施形態によれば、油圧ショベル10の周囲の状況を考慮して冷却ファン19の逆回転を制御できる。
【0053】
<第3実施形態>
第3実施形態は、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせ、車体位置が禁止エリアにあっても給排気口が保護エリアに向いていなければ冷却ファンの逆回転を許可する実施形態である。
【0054】
図9は、第3実施形態に係る冷却ファン制御システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
ステップS21として、禁止エリア・車体方位設定部131は油圧ショベル10のオペレータは、冷却ファン19の逆回転を禁止する禁止エリア200と、冷却ファン19の逆回転を禁止する車体方位220を設定する。
【0056】
図10は、第3実施形態に係る禁止エリアと車体方位の設定例を示す図である。第3実施形態では、冷却ファン19の逆回転を禁止する禁止エリア200を設定する。本実施形態では禁止エリア200は車体位置210から等距離の範囲ではなく、保護エリア230に沿った一画を禁止エリア200として設定する。禁止エリア200の設定は、油圧ショベル10のオペレータがディスプレイ120に表示された地図上で入力装置24を用いて設定してもよい。また車体方位220の設定は、油圧ショベル10のオペレータがディスプレイ120に表示された地図上で入力装置24を用いて設定してもよいし、コントローラ110が油圧ショベル10の作業現場の地図情報を参照し、道路や作業者通路を保護エリア230として自動設定し、保護エリア230に給排気口20が向く車体の向きを車体方位220として自動設定してもよい。
【0057】
ステップS22では、GNSSセンサ17は、左右のGNSSアンテナ17L、17Rが受信したGNSS信号を基に油圧ショベル10の車体位置210及び車体の向き(方位)を取得する。
【0058】
ステップS23では、油圧ショベル10において、コントローラ110が冷却ファンの逆転を行うと判定するきっかけとなる条件、例えば各種センサの情報からコントローラ110が清掃のタイミングを判定しその清掃タイミングになったか、また油圧ショベル10のオペレータがファン逆回転スイッチ23を押したかが所定の条件の一例であり、こうした条件が成立したかを判定する。所定の条件が不成立の場合(S23:No)は、ファン逆回転の可否を判定する必要がないのでステップS07へ進む。
【0059】
コントローラ110が所定の条件は成立したと判定すると(S23:Yes)、ステップS24としてファン逆回転判定部134は車体位置210が禁止エリア200内にあるかを判定する。ファン逆回転判定部134は、車体位置210が禁止エリア200内にあると判定すると(S24:Yes)、ステップS25として車体向き情報と車体方位とを比較し、車体の給排気口20が保護エリア230に対向する向きに車体が向いているか、即ち車体の向きが車体方位220と一致するかを判定する。
【0060】
ファン逆回転判定部134は、車体の向きが車体方位と一致すると(S25:Yes)、ステップS05として冷却ファン19の逆回転を禁止する。
【0061】
一方、車体位置210が禁止エリア200外にある場合(S24:No)、及び車体位置210が禁止エリア200内にあっても(S24:Yes)給排気口20が保護エリア230を向いていない、即ち、車体の向きが車体方位220と一致しなければ(S25:No)、ステップS06として冷却ファン19の逆回転を許可する。油圧ショベル10は、エンジンが停止するまで(S07:No)、ステップS22へ戻り処理を繰り返す。そして油圧ショベル10は、エンジンが停止すると(S07:Yes)処理を終了する。
【0062】
本実施形態によれば、車体位置が禁止エリアにあっても給排気口20が保護エリア230に向いていなければ冷却ファン19の逆回転を許可する。これにより、禁止エリア200内に油圧ショベル10が作業している場合でも、油圧ショベル10の車体の向きを給排気口20が保護エリア230に向かわないように変えるだけで冷却ファン19を逆回転させることができる。そのため、冷却ファン19の逆回転のために油圧ショベル10を移動させる必要がない。これにより、冷却ファン19を逆転させて熱交換器ユニット18の目詰まりを除去すると、塵芥を含む排気が排出され、油圧ショベル10の周囲にいる作業者等や建屋、道路を通行中の他の車両などにかかるおそれがあるが、本実施形態によれば、油圧ショベル10の周囲の状況を考慮して冷却ファン19の逆回転を制御できる。
【0063】
上記実施形態は、本発明を限定する趣旨ではなく、様々な変更態様も本発明に含まれる。例えば、カメラの取付位置や数は上記に限定されない。
【0064】
また、上部旋回体12の排気口周辺に監視カメラを搭載し、監視カメラの撮像画像に対して画像解析処理を実行し、作業員が撮像されていることが認識できると冷却ファン19の逆回転を禁止するように構成してもよい。これにより、更に高精度に周囲の環境に考慮して冷却ファン19の逆回転を制御できる。
【0065】
また、上記実施形態では、冷却ファンを逆回転させて熱交換器ユニット18を清掃する作業機械の例として油圧ショベル10を例示したが、作業機械は油圧ショベル10に限らない。
【符号の説明】
【0066】
10 :油圧ショベル
11L :左クローラ
11R :右クローラ
12 :上部旋回体
13 :キャブ
14 :ブーム
15 :アーム
16 :バケット
17 :GNSSセンサ
17L :左GNSSアンテナ
17R :右GNSSアンテナ
18 :熱交換器ユニット
19 :冷却ファン
20 :給排気口
21 :エンジン
22 :エンジンルーム
23 :ファン逆回転スイッチ
24 :入力装置
25 :ファンモータ
101 :車体
110 :コントローラ
111 :プロセッサ
112 :RAM
114 :記憶装置
115 :入力I/F
116 :出力I/F
117 :バス
120 :ディスプレイ
131 :禁止エリア・車体方位設定部
132 :表示制御部
133 :禁止エリア・車体方位情報記憶部
134 :ファン逆回転判定部
135 :ファンモータ制御部
200 :禁止エリア
210 :車体位置
220 :車体方位
230 :保護エリア