IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンエイ糖化株式会社の特許一覧

特開2023-148163澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法及び澱粉含有食品
<>
  • 特開-澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法及び澱粉含有食品 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148163
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法及び澱粉含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231005BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20231005BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20231005BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20231005BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20231005BHJP
【FI】
A23L5/00 N
A23L7/10 B
A21D2/18
A21D10/00
A21D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056051
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591014097
【氏名又は名称】サンエイ糖化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】林 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健生
(72)【発明者】
【氏名】小栗 幹也
(72)【発明者】
【氏名】深見 健
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
4B035
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE02
4B023LK08
4B023LP10
4B032DB01
4B032DB06
4B032DK02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK16
4B032DK18
4B032DK43
4B032DK47
4B032DL08
4B035LC03
4B035LG21
4B035LG26
4B035LP21
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、澱粉含有食品中の澱粉の老化抑制効果に優れる、澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法及び澱粉含有食品を提供することである。
【解決手段】水溶性ヘミセルロースを含み、前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、前記水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、前記水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、式(1)及び(2)を満たす、澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤とする。
0<y≦7417.4x-278369・・・(1)
50≦x≦100・・・(2)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ヘミセルロースを含み、
前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、
前記水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、前記水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たす、澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤。
0<y≦7417.4x-278369・・・(1)
50≦x≦100・・・(2)
【請求項2】
請求項1に記載の澱粉老化抑制剤を澱粉含有食品に配合する工程を含む、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法。
【請求項3】
水溶性ヘミセルロースを含む澱粉含有食品であって、
前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、
前記水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、前記水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たす、澱粉含有食品。
y≦7417.4x-278369・・・(1)
50≦x≦100・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法及び澱粉含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯、パン、麺等澱粉を含む食品が広く流通している。澱粉は、時間経過により老化により硬くなる性質を持ち、低温では著しく硬化が進行する。このため、澱粉含有食品は、時間経過や低温保存により、食感が劣化し、嗜好性を損なうことにつながる恐れがある。このため、澱粉含有食品の保管時の食感の劣化を防ぐ方法について、種々検討がなされている。
【0003】
例えば、保存米飯の食感を改良する方法として、原料米をα、α-トレハロースの存在下で炊飯する方法(特許文献1参照)、酵母処理物及び増粘安定剤を炊飯前の米に添加する方法(特許文献2参照)、水溶性ヘミセルロース及び有機酸又はその塩を添加する方法(特許文献3参照)や、米に対して0.1~30重量%のトレハロース及び0.1~30重量%の水溶性ヘミセルロースを併用する方法(特許文献4参照)、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-147916号公報
【特許文献2】特開2017-169514号公報
【特許文献3】特開2004-105198号公報
【特許文献4】特開2000-166491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、澱粉含有食品中の澱粉の老化をより抑制することで、食感をより改善することが望まれる。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、澱粉含有食品中の澱粉の老化抑制効果に優れる、澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法及び澱粉含有食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、水溶性ヘミセルロースを含み、当該水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、且つ、当該水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、当該水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、当該水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たす澱粉老化抑制剤により、上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) 水溶性ヘミセルロースを含み、
前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、
前記水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、前記水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たす、澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤。
0<y≦7417.4x-278369・・・(1)
50≦x≦100・・・(2)
【0009】
(2) (1)に記載の澱粉老化抑制剤を澱粉含有食品に配合する工程を含む、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法。
【0010】
(3) 水溶性ヘミセルロースを含む澱粉含有食品であって、
前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、
前記水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、前記水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、前記水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たす、澱粉含有食品。
y≦7417.4x-278369・・・(1)
50≦x≦100・・・(2)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、澱粉含有食品中の澱粉の老化抑制効果に優れる、澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法及び澱粉含有食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1):x(質量%)と、水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw):yとの関係性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0014】
<澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤>
本発明の澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤(以下、「本発明の澱粉老化抑制剤」ともいう。)は、水溶性ヘミセルロースを含み、水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、下記式(1)及び(2)を満たす。
0<y≦7417.4x-278369・・・(1)
50≦x≦100・・・(2)
【0015】
(澱粉含有食品)
本発明の澱粉老化抑制剤が澱粉老化を抑制する澱粉含有食品は、特に限定されないが、精白米、玄米や、もち米等の米を炊飯して得られる米飯、赤飯、おこわ、炊き込みご飯、ピラフ、ドライカレー、酢飯等や、おにぎり、寿司用シャリのようにこれら澱粉含有食品を加工した成形米飯、あるいはこれらを冷凍した冷凍米飯、パン類、うどん、パスタ等の麺類、スポンジケーキ、求肥、水まんじゅう等の菓子類、これら澱粉を含有する飲食品を冷凍した冷凍食品類やチルドで流通されるチルド食品類等が挙げられる。
【0016】
(水溶性ヘミセルロース)
本発明の澱粉老化抑制剤が含む水溶性ヘミセルロースは、重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下である。また、本発明の澱粉老化抑制剤が含む水溶性ヘミセルロースは、水溶性ヘミセルロースの質量(含有量)(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、上記式(1)及び(2)を満たす。
水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)は、プルラン換算の重量平均分子量であり、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0017】
このように、重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、且つ式(1)及び(2)を満たす水溶性ヘミセルロースを含む本発明の澱粉老化抑制剤は、後述する実施例に示すように、澱粉含有食品の澱粉の硬化を顕著に抑制することができ、澱粉含有食品の澱粉の硬化抑制効果に優れる。
【0018】
米や小麦粉などに含まれる澱粉は、水素結合により硬い結晶構造をとっている。炊飯すると澱粉の水素結合が切断されて水分子を取り込むことで柔らかくなる。これを澱粉の糊化という。炊飯された米飯を放置したり低温保存したりすると、澱粉から水分子が離れることで次第に硬くなる。これを澱粉の老化という。澱粉が老化(硬化)することで澱粉含有食品が硬化すると、澱粉含有食品の食感が著しく損なわれる。
【0019】
水溶性ヘミセルロースは、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース等を構成糖とする高分子素材であり、水との親和性が高いため、保水力を有すると考えられる。このため、水溶性ヘミセルロースは、糊化澱粉からの離水を抑制することができ、水溶性ヘミセルロースを含むことにより、澱粉の老化(硬化)を抑制することができると推測される。
【0020】
しかしながら、水溶性ヘミセルロースを澱粉含有食品へ配合しても、澱粉の老化(硬化)を抑制する効果が不十分であり、また、澱粉の老化を抑制できない場合もある。
これに対し、本発明者らは、澱粉の老化に水溶性ヘミセルロースの分子量が大きく寄与することを知見し、さらに検討を重ねた結果、重量平均分子量(Mw)が10000以上500000以下であり、且つ式(1)及び(2)を満たす水溶性ヘミセルロースにより、澱粉の老化(硬化)を大幅に抑制できることを知見した。
具体的には、下記[実施例]により、重量平均分子量(Mw)が10000以上500000以下であり、且つ、式(1)及び式(2)を満たす水溶性ヘミセルロースを、老化抑制成分として用いることで、澱粉含有食品の澱粉の硬化を大幅に抑制できることを知見した。図1において、式(1)に関し、y=7417.4x-278369を実線で示した。
重量平均分子量(Mw)が10000以上500000以下であり、且つ、式(1)及び式(2)を満たす水溶性ヘミセルロース(以下「特定の水溶性ヘミセルロース」とも記載する。)を用いることで、澱粉の老化抑制効果に優れる理由は、当該水溶性ヘミセルロースが水に対して十分に膨潤するためであると推測される。
【0021】
一方、重量平均分子量(Mw)が10000以上500000以下を満たさない場合や、式(1)を満たさない場合や、式(2)を満たさない場合は、硬さの上昇の抑制効果が劣る又は抑制できない。例えば、質量平均分子量が500000より大きい場合や式(1)を満たさない場合は、粘度が増大し、水に対して十分に膨潤することができないためか、澱粉の老化抑制効果を発揮し難い。また、式(2)を満たさない場合は、水に対する保水力が低いためか、澱粉の老化抑制効果を発揮し難い。
【0022】
このように、本発明の澱粉老化抑制剤は、澱粉の老化抑制効果に優れるため、澱粉含有食品の時間経過による硬化の抑制効果や、澱粉含有食品の低温保存による硬化の抑制効果に優れる。このため、炊飯後の時間経過や低温保存後においても、好ましい食感(柔らかさ)を維持することができる。
【0023】
例えば、澱粉含有食品を常温(例えば20℃)、冷蔵(例えば4℃)、又は冷凍(例えば-25℃)等で保管する場合、本発明の澱粉老化抑制剤及びその他の澱粉老化抑制剤を添加しない澱粉含有食品の保管後の硬さを1とすると、本発明の澱粉老化抑制剤を添加した澱粉含有食品では、同条件で保管後の硬さを0.90未満に抑えることができる。なお、硬さは、澱粉の老化の指標であり、澱粉含有食品の硬さは実施例に示した方法で求めることができる。
【0024】
また、従来知られる澱粉老化抑制剤(例えば、トレハロースやキシロースを含む澱粉老化抑制剤)は、添加される澱粉含有食品に甘味等の味を付与する可能性がある。一方、本発明の澱粉老化抑制剤が澱粉老化抑制成分(硬化抑制成分)として含む上記特定の水溶性ヘミセルロースは、自身の味強度が弱いため、本発明の澱粉老化抑制剤は、甘味等の余計な味を付与せずに又はほとんど付与することなく、澱粉含有食品の澱粉老化を抑制することができる。
【0025】
本発明の澱粉老化抑制剤が含む水溶性ヘミセルロースは、上述のとおり、重量平均分子量(Mw)が10000以上500000以下であり、式(1)及び(2)を満たせばよい。
当該重量平均分子量(Mw)は、30000以上、50000以上や、100000以上でもよく、また、350000以下、250000以下や、150000以下でもよい。
水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)、すなわちx(質量%)は、60以上や、70以上でもよく、また、90以下や80以下でもよい。
【0026】
上記特定の水溶性ヘミセルロースの原料としては、ともろこし由来のコーンファイバーやコーンジャーム、小麦ふすま、イネ科の多年草のネピアグラス、広葉樹、竹、針葉樹、ケナフ、稲わら、麦わら、籾殻、バガス、サトウキビの絞りかす等が挙げられる。
【0027】
上記特定の水溶性ヘミセルロースの形態は、液体(シロップ等)であっても粉末であってもよい。
【0028】
(上記特定の水溶性ヘミセルロースの製造方法)
水溶性ヘミセルロースは、例えばコーンファイバーなどに含まれる細胞壁から、アルカリ抽出、酸加水分解、水熱処理などでヘミセルロース画分を溶出させた後、塩阻止率の低めのRO膜やNF膜を使い低分子画分の除去や脱塩・濃縮操作により様々な分子量の水溶性ヘミセルロース画分を得ることが可能である。
より具体的には、例えば平均粒径500μm以下に粉砕処理したコーンファイバー中に含まれる澱粉を、アミラーゼに作用させて除澱粉処理した後、1N等の水酸化ナトリウム水溶液下にて80℃で60分等の抽出処理を行う。これに1N塩酸等で中和反応を行った後、ヘミセルラーゼなどの酵素製剤を添加し、低分子化処理を行う。酵素反応後に遠心分離機を用いて上清液を回収した後、塩阻止率96%のRO膜によるダイアフィルトレーションろ過等により低分子画分の除去及び塩類の粗除去を行う。ここで得られた粗精製液をイオン交換樹脂による脱塩処理と減圧濃縮後にスプレードライヤー等にて粉末化することで、粉末製品を得ることができる。
抽出処理の条件や低分子化処理の条件を調整することや、条件を変えて得られた複数種の粉末を混合すること等により、上記特定の水溶性ヘミセルロースを得ることができる。
【0029】
(その他の成分)
本発明の澱粉老化抑制剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。このような任意の成分としては、例えば、水、香料、増粘剤、甘味料(砂糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、はちみつ、水飴、粉飴、マルトデキストリン、ソルビトール、マルチトール、還元水飴、マルトース、トレハロース、黒糖等)、食物繊維、タンパク質(乳、豆、ビーフエキス、チキンエキス、ポークエキス、魚肉エキス、ゼラチン等)、酸味料(クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸)、ミネラル類(カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム、亜鉛、銅等)、アミノ酸類(アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等)、香辛料(ニンニク、ショウガ、ごま、唐辛子、わさび、山椒、ミョウガ等)、乳化剤、酵素、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
【0030】
また、本発明の澱粉老化抑制剤は、従来知られる澱粉含有食品の物性改良剤を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。従来知られる物性改良剤としては、糖質(マルトース、マルトトリオース、増粘多糖類)等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の澱粉老化抑制剤は、従来知られる米飯やパン等の製造方法で用いられる成分を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。このような成分として、pH調整剤、有機酸等が挙げられる。
【0032】
<澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法>
本発明の澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法は、上述の本発明の澱粉老化抑制剤を澱粉含有食品に配合する工程を含む。澱粉老化抑制剤を澱粉含有食品に配合することにより、澱粉含有食品の老化(硬化)を抑制することができ、澱粉含有食品の時間経過による硬化や、低温保存による硬化が抑制できる。
【0033】
澱粉含有食品に配合する本発明の澱粉老化抑制剤の量は特に限定されず、澱粉含有食品の種類や、実現しようとする硬さ等に応じて適宜選択される。
例えば、生米、米粉、小麦粉等の澱粉素材100質量部に対して、上記特定の水溶性ヘミセルロースの合計が、好ましくは0.01質量部以上になるように、より好ましくは0.05質量部以上になるように、本発明の澱粉老化抑制剤を配合する。また、生米、米粉、小麦粉等の澱粉素材100質量部に対して、上記特定の水溶性ヘミセルロースの合計が、好ましくは10重量部以下となるように、より好ましくは5質量部以下となるように、本発明の澱粉老化抑制剤を配合する。0.05重量部以上であると澱粉含有食品に好ましい硬さ等の物性を付与しやすく、10重量部以下であると澱粉含有食品に付与される硬さ等の物性が適度となりやすい。
【0034】
澱粉含有食品に本発明の澱粉老化抑制剤を配合するタイミングは特に限定されず、澱粉含有食品の種類等に応じて適宜選択される。
例えば、本発明の澱粉老化抑制剤を、炊飯前や炊飯中に混合してもよく、炊飯後に混合してもよい。
【0035】
<澱粉含有食品>
本発明の澱粉含有食品は、水溶性ヘミセルロースを含み、水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)が、10000以上500000以下であり、水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)をx(質量%)とし、水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)をyとしたとき、上記式(1)及び(2)を満たす。
このように、上記特定の水溶性ヘミセルロースを含むため、本発明の澱粉含有食品は澱粉の老化が抑制され、澱粉含有食品の時間経過による硬化や、低温保存による硬化が抑制される。したがって、本発明の澱粉含有食品は、炊飯後の時間経過や低温保存後においても、好ましい食感(柔らかさ)を維持することができる。また、保存によるパサつきも抑制される。また、澱粉老化抑制剤による甘味(例えば、トレハロースやキシロースによる甘味)等の余計な味を有さない又はほとんど有さない澱粉含有食品とすることができる。
澱粉含有食品、上記特定の水溶性ヘミセルロースや、配合量等については、上記<澱粉含有食品の澱粉老化抑制剤>や<澱粉含有食品の澱粉老化を抑制する方法>と同様である。
【0036】
本発明の澱粉含有食品は、殺菌処理や容器詰めされていてもよい。殺菌処理や容器詰めの方法や順序は特に限定されない。
容器詰めする場合、容器としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)等の樹脂製品(レトルトパウチ容器、プラスチックボトル等)、スチールやアルミ等の金属製品(缶等)、紙パック等が挙げられる。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【0038】
<水溶性ヘミセルロースの製造>
以下の方法で水溶性ヘミセルロースa~hを製造した。また、以下の方法で、水溶性ヘミセルロースa~hの、重量平均分子量(Mw)、及び、水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)を求めた。用いた水溶性ヘミセルロースのMw及びM2/M1を表に記載する。また、水溶性ヘミセルロースa~hが式(1)や式(2)を満たすか判定した結果を、満たす場合を○、満たさない場合を×として、表に示す。
【0039】
[水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)]
水溶性ヘミセルロースa~hの重量平均分子量(Mw)は、標準プルラン(昭和電工(株)製)を標準物質として、HPLC法(RI検出器)により求めた。
HPLC法の測定条件は以下のとおりである。
ガードカラム:TSKgel PWH(内径7.5mmφ×長さ75mm、1本、東ソー(株)製)
カラム:TSKgel GMPW(内径7.5mmφ×長さ300mm、3本、東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
流速:1.0ml/min 溶離液:0.2M硝酸ナトリウム水溶液
【0040】
[水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)]
上記のHPLC法測定で得られた積分分子量分布曲線より求めた、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)を、水溶性ヘミセルロースの質量(M1)で除すことで、M2/M1を求めた。
【0041】
[水溶性ヘミセルロースa(重量平均分子量(Mw):17359、M2/M1:37.6質量%)]
10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを0.2M水酸化ナトリウム水溶液下で抽出処理(80℃、1時間)した後、1M塩酸で中和反応を行い、ヘミセルラーゼ(ノボザイムズ社製)を0.3重量%加えて50℃の酵素処理(50℃、2週間)を行った。酵素処理後に遠心分離(3000G、10分間)により上清液を回収し,粉末活性炭を0.1重量%加えて活性炭処理(60℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースaを得た。
【0042】
[水溶性ヘミセルロースb(重量平均分子量(Mw):207811、M2/M1:61.3質量%)]
10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを0.8M水酸化ナトリウム水溶液下で抽出処理(80℃、5時間)したスラリーに、10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを蒸留水下で抽出処理(200℃、5分間)したスラリーを40重量%加えて混合した。これに1M塩酸で中和反応を行い、遠心分離(3000G、10分間)により上清液を回収し、粉末活性炭を0.1重量%加えて活性炭処理(50℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースbを得た。
【0043】
[水溶性ヘミセルロースc(重量平均分子量(Mw):309055、M2/M1:99.1質量%)]
10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを0.8M水酸化ナトリウム水溶液下で抽出処理(80℃、5時間)した後、1M塩酸で中和反応を行い、遠心分離(3000G、10分間)により上清液を回収し,粉末活性炭を0.1重量%加えて活性炭処理(60℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースcを得た。
【0044】
[水溶性ヘミセルロースd(重量平均分子量(Mw):114575、M2/M1:84.6質量%)]
10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを0.2M水酸化ナトリウム水溶液下で抽出処理(80℃、1時間)した後、シュウ酸(1M塩酸)で中和反応を行い、ヘミセルラーゼ(ノボザイムズ社製)を0.1重量%加えて50℃で3時間の酵素処理を行った。酵素処理後に遠心分離(3000G、10分間)により上清液を回収し、粉末活性炭を0.1重量%加えて活性炭処理(60℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースdを得た。
【0045】
[水溶性ヘミセルロースe(重量平均分子量(Mw):44221、M2/M1:68.2質量%)]
10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを0.2M水酸化ナトリウム水溶液下で抽出処理(80℃、1時間)した後、シュウ酸(1M塩酸)で中和反応を行い、ヘミセルラーゼ(ノボザイムズ社製)を0.1重量%加えて酵素処理(50℃、22時間)を行った。酵素処理後に遠心分離(3000G、10分間)により上清液を回収し,粉末活性炭を0.1重量%加えて活性炭処理(60℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースeを得た。
【0046】
[水溶性ヘミセルロースf(重量平均分子量(Mw):11367、M2/M1:84.8質量%)]
3重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを蒸留水下で抽出処理(175℃、20分間)した後、ガラス繊維ろ紙で吸引ろ過して抽出液を回収した。抽出液を分画分子量500Daの限外ろ過膜により低分子画分の除去並びに塩類の粗除去を行った。ここで得られた粗精製液に粉末活性炭を5重量%加えて活性炭処理(60℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースfを得た。
【0047】
[水溶性ヘミセルロースg(重量平均分子量(Mw):213810、M2/M1:66.6質量%)]
10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを0.8M水酸化ナトリウム水溶液下で抽出処理(80℃、5時間)したスラリーに、10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを蒸留水下で抽出処理(200℃、5分間)したスラリーを35重量%加えて混合した。これに1M塩酸で中和反応を行い、遠心分離(3000G、10分間)により上清液を回収し、粉末活性炭を0.1重量%加えて活性炭処理(50℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースgを得た。
【0048】
[水溶性ヘミセルロースh(重量平均分子量(Mw):64820、M2/M1:52.6質量%)]
10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを0.2M水酸化ナトリウム水溶液下で80℃1時間の抽出処理した後、1M塩酸で中和反応を行い、ヘミセルラーゼ(ノボザイムズ社製)を0.1重量%加えて酵素処理(50℃、22時間)を行ったスラリーに、10重量%の粉砕処理並びに除澱粉処理したコーンファイバーを蒸留水下で抽出処理(200℃、5分間)したスラリーを45重量%加えて混合した。このスラリーから遠心分離(3000G、10分間)により上清液を回収し、粉末活性炭を0.1重量%加えて活性炭処理(60℃、1時間)を行い、ガラス繊維ろ紙を用いた吸引ろ過で粉末活性炭を除いて活性炭処理液を回収した。活性炭処理液をイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂DOWEX88(ダウ・ケミカル社製)並びに陰イオン交換樹脂DOWEX22(ダウ・ケミカル社製))による脱塩処理と減圧濃縮後に凍結乾燥機で粉末化することで、水溶性ヘミセルロースhを得た。
【0049】
<試験1:米飯>
以下の材料及び水溶性ヘミセルロースa~hを用いて生米を炊飯し、保存による硬さの変化を評価した。
(材料)
トレハロース(粉末):(株)林原製
キシロース(粉末):関東化学(株)製
【0050】
(米飯の調製)
市販の生米(秋田県産あきたこまち、精白米)を用い、以下の方法で炊飯米飯を調製した。
(1)生米150gを研いで炊飯窯に移し、表1-1及び1-2に記載する質量の水を加えて全量368gとした。
(2)表1-1及び1-2に記載の質量の水溶性ヘミセルロース、トレハロース、又はキシロースをそれぞれ添加して軽くかき混ぜた後、炊飯器で炊飯した。
(3)炊飯終了後、しゃもじで軽くまぜ、保温を切った状態で1時間蒸らした。
(4)50gずつラップで包んで室温で1時間放冷した後、常温(20℃)または冷蔵(4℃)で24時間保管した。
【0051】
(硬さの測定)
室温で1時間放冷した直後(当日)、常温保管後(常温24時間)、冷蔵保管後(冷蔵24時間)のそれぞれにおいて、米飯の硬さを以下の方法で測定した。測定は10回繰り返し、平均値を算出した。その結果を表1-1及び1-2の「硬さ」欄に示す。
硬さの測定にはレオメータ(株式会社山電製)を用い、米飯3粒をΦ30mmの円柱プランジャーにて圧縮速度1mm/sでサンプル高さの50%まで圧縮した際の最大荷重を各米飯の硬さとみなした。
常温(20℃)または冷蔵(4℃)で24時間保管後の硬さについて、それぞれ比較例1-1の硬さを1としたときの保管後の硬さを、「硬さ変化率」欄に示す。硬さ変化率が低いほど、硬化が抑制されており、硬化(老化)抑制効果が高いといえる。硬さ変化率が0.90未満に抑えられているものを、硬化抑制効果に優れていると評価した。
【0052】
【表1-1】
【0053】
【表1-2】
【0054】
表1-1及び1-2に示されるとおり、トレハロース、キシロースや水溶性ヘミセルロースを添加していない比較例1-1では米飯の硬さは保管によって上昇するが、重量平均分子量が10000以上500000以下であり、且つ式(1)及び(2)を満たす水溶性ヘミセルロースc~hを添加した実施例では、硬さ変化率が低く比較例1-1と比べて硬さが大幅に低くなっており、硬さの上昇抑制効果(澱粉の老化抑制効果)に優れていることが確認された。一方、トレハロースやキシロースを添加した比較例や、式(1)及び(2)を満たさない水溶性ヘミセルロースa~bを用いた比較例は、硬さの上昇の抑制効果が劣る又は硬さの上昇を抑制できないことが分かる。
図1に、実施例及び比較例で用いた水溶性ヘミセルロースについて、水溶性ヘミセルロースの質量(M1)に対する、水溶性ヘミセルロースが含む分子量が1000以上である水溶性ヘミセルロースの質量(M2)の割合(M2/M1)x(質量%)と、水溶性ヘミセルロースの重量平均分子量(Mw)yとの関係性を示す。
【0055】
<試験2:澱粉ゲル>
以下の材料及び水溶性ヘミセルロースdを用いて澱粉ゲルを調製し、保存による硬さの変化を評価した。
【0056】
(材料)
トレハロース(粉末):(株)林原製
粳米澱粉:上越スターチ(株)製
【0057】
(澱粉ゲルの調製)
以下の方法で澱粉ゲルを調製した。
(1)表2に記載の材料を全て混合し、常温で撹拌した。
(2)60℃で30分撹拌の後、スチームコンベクションオーブン(tanico)にて95℃で30分スチーム加熱した。
(3)硬さ測定用容器に充填し、25℃で3時間放冷した後、冷蔵(4℃)で保管した。
【0058】
(硬さの測定)
25℃で3時間放冷した直後(当日)、冷蔵保管後(冷蔵96時間)のそれぞれについて、澱粉ゲルの硬さを以下の方法で測定した。測定は2回繰り返し、平均値を算出した。その結果を表2の「硬さ」の項に示す。
硬さの測定にはレオメータ(株式会社山電製)を用い、澱粉ゲルを容器に充填したままの状態で測定に用いた。Φ20mmの円柱プランジャーにて圧縮速度1mm/sでサンプル高さの50%まで圧縮した際の最大荷重を各澱粉ゲルの硬さとみなした。
冷蔵(4℃)で96時間保管後の硬さについて、比較例2-1の硬さを1としたときの保管後の硬さを、「硬さ変化率」欄に示す。硬さ変化率が0.90未満に抑えられているものを、硬化抑制効果に優れていると評価した。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示されるとおり、澱粉ゲルの硬さは保管によって上昇するが、重量平均分子量が10000以上500000以下であり、且つ式(1)及び(2)を満たす水溶性ヘミセルロースを添加した実施例では、硬さ変化率が低く比較例2-1と比べて硬さが大幅に低くなっており、硬さの上昇抑制効果に優れていることが確認された。
【0061】
<試験3:スポンジケーキ>
以下の材料及び水溶性ヘミセルロースdを用いてスポンジケーキを調製し、保存による硬さの変化を評価した。
【0062】
(材料)
トレハロース(粉末):(株)林原製
砂糖:日新製糖(株)製
全卵:イセデリカ(株)製
薄力粉:日清フーズ(株)製
ベーキングパウダー:(株)アイコク製
サラダ油:(株)J―オイルミルズ製
【0063】
(スポンジケーキの調製)
以下の方法でスポンジケーキを調製した。
(1)全卵に砂糖とヘミセルロースdまたはトレハロースを加えて泡立てた後、薄力粉とベーキングパウダーを加えて混ぜ合わせ、さらにサラダ油を加えて混合して、生地を調製した。
(2)調製した生地を型に分注し、スチームコンベクションオーブン(tanico)で170℃12分間焼成した。
(3)室温で1時間放冷した後、常温(20℃)、冷凍(-25℃)で保管した。
【0064】
(硬さの測定)
焼成後、室温で1時間放冷した直後(当日)、常温保管後(常温24時間)、冷凍保管後(冷凍240時間)のそれぞれについて、スポンジケーキの硬さを以下の方法で測定した。冷凍保管サンプルは常温解凍の後、測定に用いた。測定は5回繰り返し、平均値を算出した。その結果を表2の「硬さ」の項に示す。
硬さの測定にはレオメータ(株式会社山電製)を用い、スポンジケーキを2cm×2cmにカットしたサンプルについて、Φ20mmの円柱プランジャーにて圧縮速度1mm/sでサンプル高さの30%まで圧縮した際の荷重を各スポンジケーキの硬さとみなした。常温(20℃)24時間または冷凍(-25℃)240時間保管後の硬さついて、それぞれ比較例3-1の硬さを1としたときの保管後の硬さを、「硬さ変化率」欄に示す。硬さ変化率が0.90未満に抑えられているものを、硬化抑制効果に優れていると評価した。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示されるとおり、スポンジケーキの硬さは保管によって上昇するが、重量平均分子量が10000以上500000以下であり、且つ式(1)及び(2)を満たす水溶性ヘミセルロースを添加した実施例では、硬さ変化率が低く比較例3-1と比べて硬さが大幅に低くなっており、硬さの上昇抑制効果に優れていることが確認された。
【0067】
<試験4:パン>
以下の材料及び水溶性ヘミセルロースdを用いてパンを調製し、保存による硬さの変化を評価した。
【0068】
(材料)
トレハロース(粉末):(株)林原製
強力粉:日清フーズ(株)製
砂糖:日新製糖(株)製
食塩:(財)塩事業センター製
脱脂粉乳:森永乳業(株)製
イーストフード:日清フーズ(株)製
ショートニング:日清フーズ(株)製
【0069】
(パンの調製)
以下の方法でパンを調製した。
(1)全ての材料を表4に記載の質量で混合し、ホームベーカリー(panasonic)でパンを調製した。
(2)焼成後すぐに取り出し、室温で1時間放冷の後、常温(20℃)で保管した。
【0070】
(硬さの測定)
焼成後、常温で1時間放冷した直後(当日)、常温保管後(24時間)のそれぞれについて、パンの硬さを以下の方法で測定した。測定は3回繰り返し、平均値を算出した。その結果を表4の「硬さ」の項に示す。
硬さの測定にはレオメータ(株式会社山電製)を用い、パンを2cm×2cmにカットしたサンプルについて、Φ20mmの円柱プランジャーにて圧縮速度1mm/sでサンプル高さの30%まで圧縮した際の荷重を各パンの硬さとみなした。
常温(20℃)で24時間保管後の硬さについて、比較例4-1の硬さを1としたときの保管後の硬さを、「硬さ変化率」欄に示す。硬さ変化率が0.90未満に抑えられているものを、硬化抑制効果に優れていると評価した。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に示されるとおり、パンの硬さは保管によって上昇するが、重量平均分子量が10000以上500000以下であり、且つ式(1)及び(2)を満たす水溶性ヘミセルロースを添加した実施例では、硬さ変化率が低く比較例4-1と比べて硬さが大幅に低くなっており、硬さの上昇抑制効果に優れていることが確認された。
図1