(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014818
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】処理システム、ロボットシステム、制御装置、教示方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20230124BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20230124BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20230124BHJP
G01N 29/48 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G01N29/265
B25J9/22 A
G01N29/11
G01N29/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118985
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】千葉 康徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真拡
【テーマコード(参考)】
2G047
3C707
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB07
2G047BA03
2G047BB04
2G047BC03
2G047BC07
2G047BC18
2G047EA13
2G047GA04
2G047GB02
2G047GB17
2G047GE01
2G047GG20
2G047GG24
2G047GG28
2G047GG33
2G047GH06
3C707BS10
3C707KS03
3C707KS36
3C707LS14
3C707LS15
3C707MT01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便に教示点を設定可能な、処理システム、ロボットシステム、制御装置、教示方法、プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】ロボットは、第1方向と、第1方向と交差する第2方向と、に沿って配列された複数の検出素子を含む検出器と、検出器が取り付けられたマニピュレータと、を含む。処理システムは、接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、検出器に実行させ、探査により得られた反射波の強度を示す第1強度データに基づいて、第1方向及び第2方向に沿う第1面における溶接部の中心位置を算出する。処理システムは、中心位置と、第1面における検出器の第1位置と、の間の距離が第1閾値以下の場合、第1位置に基づいてロボットの教示点を設定する。処理システムは、距離が第1閾値を超える場合、距離を減少させるように第1面に沿って検出器を第2位置へ動かし、第2位置に基づいて教示点を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って配列された複数の検出素子を含む検出器と、前記検出器が取り付けられたマニピュレータと、を含むロボットに動作を教示する処理システムであって、
接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、前記検出器に実行させ、
前記探査により得られた前記反射波の強度を示す第1強度データに基づいて、前記第1方向及び前記第2方向に沿う第1面における前記溶接部の中心位置を算出し、
前記中心位置と、前記第1面における前記検出器の第1位置と、の間の距離が第1閾値以下の場合、前記第1位置に基づいて前記ロボットの教示点を設定し、
前記距離が前記第1閾値を超える場合、前記距離を減少させるように前記第1面に沿って前記検出器を第2位置へ動かし、前記第2位置に基づいて前記教示点を設定する、
位置教示処理を実行する、処理システム。
【請求項2】
前記溶接部に対して、前記検出器に前記探査を実行させ、
前記探査により得られた前記反射波の強度を示す第2強度データに基づいて、第1姿勢にある前記検出器の前記溶接部に対する傾きを算出し、
前記傾きが第2閾値以下の場合、前記第1姿勢に基づいて前記教示点を設定し、
前記傾きが前記第2閾値を超える場合、前記傾きを減少させるように前記検出器を第2姿勢に動かし、前記第2姿勢に基づいて前記教示点を設定する、
姿勢教示処理をさらに実行する、請求項1記載の処理システム。
【請求項3】
前記位置教示処理の後に、前記姿勢教示処理を実行する、請求項2記載の処理システム。
【請求項4】
前記位置教示処理において、前記距離が前記第1閾値を超える場合、前記第1面に垂直な第3方向に沿って前記検出器を前記溶接部から遠ざけた後に、前記検出器を前記第2位置へ動かす、請求項1~3のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項5】
前記位置教示処理において、
液体を介して前記検出器を前記接合体に接触させた状態で、前記検出器に前記反射波を検出させ、
前記教示点を設定する際に、前記第1面に垂直な第3方向に沿って前記検出器を前記溶接部に接近させ、前記第1位置又は前記第2位置のいずれかと、接近後の前記第3方向における位置と、に基づいて前記教示点を設定する、
請求項1~3のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項6】
前記検出器の位置を前記教示点の位置に設定し、
別の接合体の溶接部に対して、前記検出器に前記探査を実行させ、
前記探査により得られた前記反射波の強度を示す第3強度データに基づいて、前記溶接部を検査する、
検査処理を、前記位置教示処理の後に実行する、請求項1~5のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項7】
前記第1強度データにおける強度の重心位置を前記中心位置として算出する、請求項1~6のいずれか1つに記載の処理システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の処理システムと、
前記ロボットと、
を備えたロボットシステム。
【請求項9】
接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、検出器と、前記検出器が取り付けられたマニピュレータと、を含むロボットに実行させ、
前記検出器に含まれる複数の検出素子の二次元的な配列方向に沿う第1面において、前記探査の結果から算出される前記溶接部の中心位置と、前記検出器の第1位置と、の間の距離が第1閾値以下の場合、前記第1位置に基づいて前記ロボットの教示点を設定し、
前記距離が前記第1閾値を超える場合、前記距離を減少させるように前記第1面に沿って前記検出器を第2位置へ動かし、前記第2位置に基づいて前記教示点を設定する、制御装置。
【請求項10】
第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って配列された複数の検出素子を含む検出器と、前記検出器が取り付けられたマニピュレータと、を含むロボットに動作を教示する教示方法であって、
接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、前記検出器に実行させ、
前記探査により得られた前記反射波の強度を示す第1強度データに基づいて、前記第1方向及び前記第2方向に沿う第1面における前記溶接部の中心位置を算出し、
前記中心位置と、前記第1面における前記検出器の第1位置と、の間の距離が第1閾値以下の場合、前記第1位置に基づいて前記ロボットの教示点を設定し、
前記距離が前記第1閾値を超える場合、前記距離を減少させるように前記第1面に沿って前記検出器を第2位置へ動かし、前記第2位置に基づいて前記教示点を設定する、
位置教示を備えた、教示方法。
【請求項11】
前記溶接部に対して、前記検出器に前記探査を実行させ、
前記探査により得られた前記反射波の強度を示す第2強度データに基づいて、第1姿勢にある前記検出器の前記溶接部に対する傾きを算出し、
前記傾きが第2閾値以下の場合、前記第1姿勢に基づいて前記教示点を設定し、
前記傾きが前記第2閾値を超える場合、前記傾きを減少させるように前記検出器を第2姿勢に動かし、前記第2姿勢に基づいて前記教示点を設定する、
姿勢教示をさらに実行する、請求項10記載の教示方法。
【請求項12】
前記位置教示の後に、前記姿勢教示を実行する、請求項11記載の教示方法。
【請求項13】
前記位置教示において、
液体を介して前記検出器を前記溶接部に接触させた状態で、前記検出器に前記反射波を検出させ、
前記教示点を設定する際に、前記第1面に垂直な第3方向に沿って前記検出器を前記溶接部に接近させ、前記第1位置又は前記第2位置のいずれかと、接近後の前記第3方向における位置と、に基づいて前記教示点を設定する、
請求項10~12のいずれか1つに記載の教示方法。
【請求項14】
前記第1強度データにおける強度の重心位置を前記中心位置として算出する、請求項10~13のいずれか1つに記載の教示方法。
【請求項15】
接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、検出器と、前記検出器が取り付けられたマニピュレータと、を含むロボットに実行させ、
前記検出器に含まれる複数の検出素子の二次元的な配列方向に沿う第1面において、前記探査の結果から算出される前記溶接部の中心位置と、前記検出器の第1位置と、の間の距離が第1閾値以下の場合、前記第1位置に基づいて前記ロボットの教示点を設定し、
前記距離が前記第1閾値を超える場合、前記距離を減少させるように前記第1面に沿って前記検出器を第2位置へ動かし、前記第2位置に基づいて前記教示点を設定する、教示方法。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1つに記載の教示方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項17】
請求項10~15のいずれか1つに記載の教示方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、処理システム、ロボットシステム、制御装置、教示方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
接合体を検査するロボットがある。このロボットについて、検査時の教示点をより簡便に設定できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より簡便に教示点を設定可能な、処理システム、ロボットシステム、制御装置、教示方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る処理システムは、ロボットに動作を教示する。前記ロボットは、第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って配列された複数の検出素子を含む検出器と、前記検出器が取り付けられたマニピュレータと、を含む。前記処理システムは、接合体の溶接部に対して、超音波の送信及び反射波の検出を行う探査を、前記検出器に実行させる。前記処理システムは、前記探査により得られた前記反射波の強度を示す第1強度データに基づいて、前記第1方向及び前記第2方向に沿う第1面における前記溶接部の中心位置を算出する。前記処理システムは、前記中心位置と、前記第1面における前記検出器の第1位置と、の間の距離が第1閾値以下の場合、前記第1位置に基づいて前記ロボットの教示点を設定する。前記処理システムは、前記距離が前記第1閾値を超える場合、前記距離を減少させるように前記第1面に沿って前記検出器を第2位置へ動かし、前記第2位置に基づいて前記教示点を設定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係るロボットシステムを示す模式図である。
【
図2】検出器及び接合体の構造を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る処理システムの動作を説明するための模式図である。
【
図4】探査により得られた強度データを例示する模式図である。
【
図5】実施形態に係る教示方法を示すフローチャートである。
【
図6】強度データを処理して得られた反射波の強度分布を示す模式図である。
【
図8】実施形態の第1変形例に係る教示方法を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態の第2変形例に係る教示方法を示すフローチャートである。
【
図13】実施形態の第2変形例に係る教示方法を説明するための模式図である。
【
図14】実施形態に係る検査処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係るロボットシステムを示す模式図である。
図1に示すように、実施形態に係るロボットシステム2は、処理システム1及びロボット20を含む。処理システム1は、制御装置10、操作端末11、及び処理装置12を含む。処理システム1は、ロボット20に動作を教示する。
【0009】
制御装置10は、ロボット20の動作を制御する。制御装置10は、いわゆるロボットコントローラである。制御装置10は、制御回路やサーボ制御部、電源装置などを含む。制御装置10は、予め記憶された動作プログラムや操作端末11によって設定された教示データなどに従って、各軸のサーボモータを制御することで、ロボット20の動作を制御する。
【0010】
操作端末11は、ロボット20を操作するための端末装置である。操作端末11は、いわゆるティーチングペンダントである。操作端末11は、制御装置10と接続され、ロボット20の動作プログラムの入力、設定の入力などを受け付ける。また、ユーザは、操作端末11を用いて、教示データの変更、修正、又は新規作成などを行える。教示データとは、ロボット20の動作をロボット20に教示するためのデータである。
【0011】
ロボット20は、マニピュレータ21と、マニピュレータ21に取り付けられた検出器22と、を含む。例えば、マニピュレータ21は、垂直多関節型である。検出器22は、エンドエフェクタとして、マニピュレータ21の先端に設けられる。マニピュレータ21は、水平多関節型又はパラレルリンク型であっても良い。マニピュレータ21は、垂直多関節型、水平多関節型、及びパラレルリンク型から選択される2種以上の組み合わせを含んでも良い。マニピュレータ21は、6自由度以上を有することが好ましい。
【0012】
検出器22は、対象に対して探査(プロービング)を実行する。探査では、対象に向けた超音波の送信と、その反射波の検出(受信)と、が実行される。検出器22は、探査によって、反射波の強度を示す強度データを取得する。検出器22は、強度データを処理装置12へ送信する。
【0013】
図1の例では、エンドエフェクタとして、吐出器25がさらに設けられている。吐出器25は、対象の表面にカプラント液を吐出する。
【0014】
探査の対象は、複数の部材が溶接によって接合された接合体である。複数の部材は、溶接部において接合されている。処理装置12は、強度データを処理し、溶接部に関するデータを取得する。例えば、処理装置12は、強度データを用いて溶接部に対する検査処理を実行する。ロボットシステム2は、同じ種類の複数の接合体50に対して、検査処理をそれぞれ実行する。
【0015】
図2は、検出器及び接合体の構造を示す模式図である。
図2の例では、検出器22による探査の対象は、接合体50である。接合体50は、金属板51(第1部材)及び金属板52(第2部材)を含む。金属板51と金属板52は、溶接部53において接合されている。すなわち、溶接部53には、金属板51と金属板52との間の境界面が存在しない。溶接部53には、溶融した金属が混ざり合って形成された凝固部54が存在する。溶接部53は、抵抗スポット溶接により形成される。
【0016】
検出器22は、
図2に示すように、検出素子22a、伝搬部22b、筐体22c、及びセンサ22dを含む。
【0017】
検出素子22aは、X方向(第1方向)及びY方向(第2方向)に沿って二次元的に配列されている。X方向とY方向は、互いに交差する。この例では、Y方向は、X方向に対して垂直である。例えば、検出素子22aは、トランスデューサであり、1MHz以上100MHz以下の周波数の超音波を発する。検出素子22aは、Z方向(第3方向)に沿って超音波を送信する。Z方向は、X-Y面(第1面)に対して垂直である。
【0018】
複数の検出素子22aは、筐体22cの先端に設けられ、伝搬部22bにより被覆されている。検出器22を接合体50に接触させた際、伝搬部22bは、検出素子22aと接合体50との間に位置する。検出素子22aが超音波を発すると、超音波は、伝搬部22bを伝搬して検出器22の外部に送信される。超音波が反射されると、その反射波は、伝搬部22bを伝搬して検出素子22aに到達する。
【0019】
検出素子22aは、反射波を検出する。検出素子22aによって検出された信号の強度は、反射波の強度に対応する。検出器22は、反射波強度を示す信号(強度データ)を取得し、処理装置12に送信する。
【0020】
伝搬部22bは、超音波が伝搬し易い樹脂材料などにより構成される。伝搬部22bにより、検出器22が溶接部53へ接触した際に、検出素子22aの変形、損傷などを抑制できる。伝搬部22bは、溶接部53への接触時の変形、損傷などを抑制するために、十分な硬さを有する。
【0021】
センサ22dは、筐体22cに取り付けられ、検出器22の接合体50への接触を検出する。センサ22dは、例えば、力センサ、加速度センサ、角速度センサ、遮光センサ、又は測距センサである。
【0022】
探査時には、検出器22と接合体50との間で超音波が伝搬し易くなるように、接合体50の表面にカプラント液55が塗布される。それぞれの検出素子22aは、カプラント液55が塗布された接合体50に向けて超音波USを送信する。
【0023】
例えば
図2に示すように、1つの検出素子22aが接合体50に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、接合体50の上面又は下面などで反射される。複数の検出素子22aのそれぞれは、反射波RWを検出する。探査では、それぞれの検出素子22aが順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の検出素子22aで検出する。
【0024】
処理装置12は、強度データを用いて、種々の処理を実行する。例えば、処理装置12は、溶接部53を検査する。処理装置12は、接合体50における溶接部53の位置を特定しても良い。処理装置12は、溶接部53の中心位置を算出しても良い。処理装置12は、溶接部53の径を算出しても良い。
【0025】
図3(a)~
図3(c)は、実施形態に係る処理システムの動作を説明するための模式図である。
図3(a)に示すように、超音波USは、伝搬部22bの表面、金属板51の上面51a及び下面51b、溶接部53の上面53a及び下面53bで反射される。
【0026】
伝搬部22bの表面、上面51a、上面53a、下面51b、及び下面53bのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と検出素子22aとの間のZ方向におけるそれぞれの距離が、互いに異なる。検出素子22aがこれらの面からの反射波を検出すると、反射波強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか判別できる。
【0027】
図3(b)及び
図3(c)のそれぞれは、X-Y面内の1点において、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。
図3(b)及び
図3(c)において、横軸は、検出された反射波RWの強度を表す。縦軸は、超音波USを送信した後の経過時間を表す。時間は、Z方向における位置に対応する。
図3(b)のグラフは、伝搬部22bの表面、上面51a、及び下面51bからの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、
図3(b)のグラフは、接合されていない点からの反射波RWの検出結果を例示している。
図3(c)のグラフは、伝搬部22bの表面、上面53a、及び下面53bからの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、
図3(c)のグラフは、接合されている点からの反射波RWの検出結果を例示している。
【0028】
図3(b)及び
図3(c)のグラフにおいて、ピークPe10は、伝搬部22b表面からの反射波RWに基づく。ピークPe11は、上面51aからの反射波RWに基づく。ピークPe12は、下面51bからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe11及びピークPe12が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面51a及び下面51bのZ方向における位置に対応する。
【0029】
同様に、ピークPe13は、上面53aからの反射波RWに基づく。ピークPe14は、下面53bからの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe13及びピークPe14が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面53a及び下面53bのZ方向における位置に対応する。
【0030】
処理装置12は、X-Y面内の各点におけるZ方向の反射波強度分布において、ピークPe12が存在するか判定する。具体的には、処理装置12は、ピークPe12が検出されうるZ方向の範囲において、ピークを検出する。処理装置12は、そのピーク強度を、閾値と比較する。Z方向の範囲及び閾値は、予め設定される。
【0031】
ピーク強度が閾値を超えている場合、処理装置12は、そのピークがピークPe12であると判定する。ピークPe12の存在は、その点において下面51bが存在し、金属板51と金属板52が接合されていないことを示す。処理装置12は、ピークPe12が検出された点を、接合されていないと判定する。処理装置12は、ピークPe12が検出されない点を、接合されていると判定する。処理装置12は、X-Y面内の各点が接合されているか、順次判定する。処理装置12は、接合されていると判定された点の集合を、溶接部53として特定する。
【0032】
例えば、処理装置12は、検査処理において、溶接部53を特定し、溶接部53の径を算出する。処理装置12は、径を、予め設定された閾値と比較する。径が閾値を超えている場合、処理装置12は、その溶接部53を合格と判定する。径が閾値以下の場合、処理装置12は、その溶接部53を不合格と判定する。閾値と比較される径は、溶接部53の長径又は短径である。
【0033】
図3(b)及び
図3(c)の例では、反射波RWの強度は、絶対値で表されている。反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、検出素子22aから出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。特定の周期の周波数成分のみが抽出されるように、フィルタリングが実行されても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、本願で説明する各種処理を実行可能である。
【0034】
図4は、探査により得られた強度データを例示する模式図である。
探査では、上述したように、それぞれの検出素子22aが超音波を順次送信し、それぞれの反射波を複数の検出素子22aで検出する。
図2に示す具体例では、8×8の64個の検出素子22aが設けられている。この場合、64個の検出素子22aが超音波を順次送信する。1つの検出素子22aは、反射波を64回繰り返し検出する。1つの検出素子22aからは、Z方向の反射波強度分布の検出結果が、64回出力される。1つの検出素子22aから出力された64回の反射波の強度分布は、合算される。合算された強度分布が、1回の探査において、1つの検出素子22aが設けられた座標における強度分布となる。64個の検出素子22aのそれぞれによる検出結果について、同様の処理が実行される。各検出素子22aの検出結果に対して、X方向及びY方向における分解能を向上させるために、開口合成が実行されても良い。以上の処理により、X-Y面(第1面)内の各点において、Z方向における反射波の強度分布が生成される。すなわち、X方向、Y方向、及びZ方向の各点における反射波強度を含む3次元の強度データが得られる。
【0035】
図4は、その3次元の強度分布を模式的に示している。
図4の模式図では、3次元強度データの溶接部53近傍の様子が示されている。
図4において、輝度が高い部分は、超音波の反射波強度が相対的に大きい部分である。
図4の例では、溶接部53の上面及び下面からの反射波と、これら上面と下面との間で多重反射した反射波と、が現れている。
【0036】
検査処理において溶接部に関するデータを得る場合、制御装置10は、検出器22の先端が溶接部53に接触するように、マニピュレータ21を動作させる。検査処理において探査が実行されるときの検出器22先端の位置及び姿勢は、教示点として予め設定される。検出器22先端の位置及び姿勢と対応する別の部分の位置及び姿勢が、教示点として設定されても良い。この場合も、検出器22先端の位置及び姿勢が教示点として設定されていると見なすことができる。
【0037】
制御装置10は、検出器22の先端の位置及び姿勢が教示点の位置及び姿勢に設定されるように、動作プログラムに従ってマニピュレータ21を動作させる。具体的には、制御装置10は、マニピュレータ21の各関節に備えられたエンコーダーから、各アクチュエーターの回転角を示すデータを取得する。制御装置10は、記憶した教示点と、取得したデータと、に基づいて制御信号を生成する。制御装置10は、生成した制御信号をロボット20に送信し、各アクチュエーターを動作させることによってマニピュレータ21を動かす。
【0038】
実施形態に係る処理システム1は、ロボット20に動作を教示する。処理システム1は、ロボット20の教示点の設定に利用可能である。処理システム1は、検出器22から送信された強度データを用いて、教示点を設定する。
【0039】
図5は、実施形態に係る教示方法を示すフローチャートである。
ユーザは、検出器22の先端を溶接部53に接近させる。溶接部53には、カプラント液が塗布される。検出器22が、溶接部53に接触する(ステップS1)。例えば、ユーザが、手又は操作端末11によってマニピュレータ21を動かし、検出器22の先端を溶接部53に接触させる。又は、ユーザが検出器22を溶接部53に接近させた後、制御装置10がマニピュレータ21を動かし、検出器22を溶接部53に接触させても良い。処理システム1は、位置教示処理を実行する(ステップS10)。
【0040】
位置教示処理において、処理装置12は、検出器22が溶接部53に接触した状態で、検出器22に探査を実行させる(ステップS11)。検出器22は、探査によって、反射波の強度を示す強度データ(第1強度データ)を取得する(ステップS12)。処理装置12は、強度データを検出器22から受信する。処理装置12は、強度データに基づいて、X-Y面における溶接部53の中心位置を算出する(ステップS13)。処理装置12は、中心位置を制御装置10に送信する。制御装置10は、検出器22のX-Y面における位置(第1位置)を参照する。制御装置10は、受信した中心位置と、第1位置と、の間の距離を、予め設定された閾値(第1閾値)と比較する(ステップS14)。
【0041】
例えば、検出器22のX-Y面における位置は、強度データのX-Y面における中心位置に対応する。この場合、強度データに基づいて算出される溶接部53の中心位置が、溶接部53の中心位置と、強度データのX-Y面における中心位置と、の間の距離に対応する。このため、ステップS14において、制御装置10は、受信した溶接部53の中心位置を、予め設定された閾値(第1閾値)と比較する。
【0042】
距離が閾値以下の場合、制御装置10は、第1位置に基づいて教示点を設定する(ステップS15)。例えば、制御装置10は、第1位置を、教示点の位置として設定する。制御装置10は、第1位置に対する演算によって得られた位置を、教示点の位置として設定しても良い。
【0043】
距離が閾値を超える場合、制御装置10は、距離を減少させるようにX-Y面に沿って検出器22を移動させる(ステップS16)。このとき、制御装置10は、検出器22と接合体50との摩擦を回避するために、検出器22を接合体50から遠ざけても良い。制御装置10は、検出器22を接合体50から遠ざけた後に、X-Y面に沿って検出器22を移動させる。その後、制御装置10は、検出器22を接合体50に接触させる。
【0044】
制御装置10は、移動後の検出器22のX-Y面における位置(第2位置)を参照する。制御装置10は、第2位置に基づいて教示点を設定する(ステップS17)。例えば、制御装置10は、第2位置を、教示点の位置として設定する。制御装置10は、第2位置に対する演算によって得られた位置を、教示点の位置として設定しても良い。
【0045】
制御装置10は、ステップS16の後に、ステップS14を再度実行しても良い。この場合、中心位置と検出器22の位置との間の距離が閾値と再度比較される。距離が閾値以下になるまで、ステップS16が繰り返される。これにより、教示点の位置をより適切に設定できる。制御装置10は、設定した教示点を保存する(ステップS18)。
【0046】
図2に示すXYZ座標系は、教示点の表現に用いられるロボット座標系と異なっていても良い。制御装置10又は処理装置12は、ステップS13において算出された中心位置を、ロボット座標系に適宜変換しても良い。制御装置10又は処理装置12は、教示点を設定する際に、検出器22のX-Y面における位置を、ロボット座標系に適宜変換しても良い。
【0047】
上述した教示方法における、溶接部53の中心位置の算出方法について説明する。中心位置は、以下のいずれかの方法を用いて算出できる。
【0048】
図6(a)~
図6(c)は、強度データを処理して得られた反射波の強度分布を示す模式図である。
処理装置12は、強度データを処理し、
図6(a)~
図6(c)に示すデータを取得する。
図6(a)は、溶接部53近傍のX-Y面における反射波の強度分布を示す。
図6(b)は、溶接部53近傍のY-Z面における反射波の強度分布を示す。
図6(c)は、溶接部53近傍のX-Z面における反射波の強度分布を示す。
【0049】
図6(a)のデータは、X-Y面の各点において、Z方向に強度を合算することで得られる。
図6(b)のデータは、Z方向の各点において、X方向に強度を合算することで得られる。
図6(c)のデータは、Z方向の各点において、Y方向に強度を合算することで得られる。
図6(a)~
図6(c)では、反射波の強度が、模式的に二値化されて示されている。白色の点は、その点における反射波の強度が相対的に高いことを示す。黒色の点は、その点における反射波の強度が相対的に低いことを示す。
【0050】
例えば、処理装置12は、
図6(a)に示すX-Y面における反射波の強度分布について、強度の重心位置を、溶接部53の中心位置として算出する。例えば
図6(a)に示すように、二値化された画像における輝度的重心位置が算出されても良い。又は、各画素が3段階以上(例えば0~255)のいずれかの画素値を有する画像について、輝度的重心位置が算出されても良い。
【0051】
又は、処理装置12は、Z方向において、溶接部53からの反射波成分を抽出し、重心位置を算出しても良い。例えば、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、溶接部53からの反射波が検出される周期は、その他からの反射波が検出される周期と異なる。処理装置12は、予め設定された溶接部53の厚さを用いて、Z方向において強度分布をフィルタリングする。これにより、処理装置12は、溶接部53からの反射波成分を抽出する。処理装置12は、フィルタリング後のX-Y面における強度分布の重心位置を、溶接部53の中心位置として算出する。
【0052】
又は、処理装置12は、溶接部53を特定し、特定された溶接部53に基づいて中心位置を算出しても良い。
【0053】
図7は、特定された溶接部を例示する模式図である。
図7は、探査が実行されたX-Y面の各点での、接合又は未接合の判定の結果を示す。接合又は未接合の判定が実行される領域のX方向及びY方向における範囲は、X方向及びY方向において強度データが得られた範囲に対応する。一例として、
図7に示す2次元データのX方向における範囲及びY方向における範囲は、
図4に示す3次元の強度データのX方向における範囲及びY方向における範囲にそれぞれ対応する。X方向及びY方向において、強度データが得られた範囲の一部が抽出され、抽出された領域に対して接合又は未接合の判定が実行されても良い。
図7では、強度データに基づいて接合されていると判定された点は、白色で表されている。接合されていないと判定された点は、黒色で表されている。接合されていると判定された点の集合が、溶接部53として特定される。処理装置12は、各点における接合の判定結果を用いて、
図7に示す2次元データを生成する。
【0054】
処理装置12は、特定された溶接部53のX-Y面における重心位置を溶接部53の中心位置として算出しても良い。溶接部53は、上述したように、X-Y面内の各点における接合又は未接合を判定することで、特定できる。処理装置12は、特定された溶接部53について、X-Y面において内接又は外接する円の中心を、溶接部53の中心位置として算出しても良い。
【0055】
教示点が設定されると、それ以降、ロボットシステム2は、その教示点を用いて検査処理を実行する。例えば、ロボットシステム2は、教示点を参照し、別の接合体50の溶接部53に対する検査処理を実行する。検査処理の実行時、制御装置10は、マニピュレータ21を動かし、検出器22先端の位置及び姿勢を、教示点の位置及び姿勢に設定する。
【0056】
1つの接合体50に複数の溶接部53が形成される場合は、各溶接部53に対して教示点がそれぞれ設定される。複数の教示点が設定された後は、別の接合体50の複数の溶接部53に対して、検査処理がそれぞれ実行される。
【0057】
実施形態の利点を説明する。
マニピュレータ21を用いて自動的に接合体50を検査するためには、検査時の検出器22の位置及び姿勢を予め教示する必要がある。教示は、ティーチングプレイバック方式により実行される。以下は、参考例に係る教示方法である。ロボット20のユーザは、接合体50を用意する。ユーザは、目視で接合体50の溶接部53を確認する。ユーザは、手又は操作端末11でマニピュレータ21を動かし、検出器22の先端を溶接部53の中心に接触させる。制御装置10は、そのときの検出器22の先端の位置及び姿勢を、教示点として設定する。
【0058】
検出器22の先端を溶接部53の中心に接触させるためには、検出器22の位置を細かく調整する必要がある。ユーザがこの作業に不慣れな場合、教示点の設定に長い時間を要する。教示された位置に、ばらつきも生じる。教示中に、検出器22を接合体50に接触させ、検出器22を損傷させる可能性もある。また、溶接部53が形成された位置には、溶接痕が存在する。ユーザは、この溶接痕の中心を溶接部53の中心として捉え、検出器22を溶接痕の中心に接触させる。しかし、溶接痕の中心は、実際の溶接部53の中心からずれることがある。検出器22の位置が溶接部53の中心からずれると、検査の精度が低下しうる。このため、より簡便に、溶接部53の中心を教示点として設定できる技術が望まれている。
【0059】
この課題について、実施形態に係る処理システム1では、位置教示処理が実行される。位置教示処理では、探査によって得られた強度データに基づいて、検出器22の位置が溶接部53の中心位置からずれているか、自動的に判定される。検出器22の位置が溶接部53の中心位置からずれている場合、処理システム1は、検出器22が溶接部53の中心位置に接近するように、マニピュレータ21を制御する。このため、ユーザは、検出器22の位置を調整する必要が無い。教示される位置のばらつきも抑制できる。教示中における、検出器22の損傷を抑えることができる。また、検出器22の位置を、ユーザが目視では確認できない溶接部53の中心位置に合わせることができる。実施形態によれば、より簡便に、溶接部53の中心位置を教示点として設定できる。
【0060】
(第1変形例)
図8は、実施形態の第1変形例に係る教示方法を示すフローチャートである。
検出器22の姿勢は、探査により得られる強度データに影響する。検出器22の姿勢は、溶接部53の表面に対して垂直であることが好ましい。処理システム1は、
図8に示すように、位置教示処理(ステップS10)に加えて、姿勢教示処理(ステップS20)を実行しても良い。
【0061】
姿勢教示処理において、処理装置12は、検出器22が溶接部に接触した状態で、検出器22に探査を実行させる(ステップS21)。検出器22は、探査によって、反射波の強度を示す強度データ(第2強度データ)を取得する(ステップS22)。処理装置12は、強度データに基づいて、探査時の検出器22の姿勢(第1姿勢)が、溶接部53に対してどの程度傾いているか算出する(ステップS23)。処理装置12は、算出した傾きを、制御装置10に送信する。制御装置10は、傾きを、予め設定された閾値(第2閾値)と比較する(ステップS24)。
【0062】
傾きが閾値以下の場合、制御装置10は、第1姿勢に基づいて教示点の姿勢を設定する(ステップS25)。例えば、制御装置10は、第1姿勢を、教示点の姿勢として設定する。制御装置10は、第1姿勢に対する演算によって得られた姿勢を、教示点の姿勢として設定しても良い。
【0063】
傾きが閾値を超える場合、制御装置10は、傾きが小さくなるように、検出器22をX方向まわり又はY方向まわりに回転させる(ステップS26)。例えば、検出器22の先端が、回転中心に設定される。制御装置10は、回転後の検出器22の姿勢(第2姿勢)を参照する。制御装置10は、第2姿勢に基づいて教示点の姿勢を設定する(ステップS27)。例えば、制御装置10は、第2姿勢を、教示点の姿勢として設定する。制御装置10は、第2姿勢に対する演算によって得られた姿勢を、教示点の姿勢として設定しても良い。
【0064】
制御装置10は、ステップS26の後に、ステップS24を再度実行しても良い。この場合、傾きが閾値と再度比較される。傾きが閾値以下になるまで、ステップS162繰り返される。これにより、教示点の姿勢をより適切に設定できる。制御装置10は、設定した教示点を保存する(ステップS28)。
【0065】
図9は、検出器を示す模式図である。
姿勢は、例えば
図9に示した、検出器22の方向D1に対応する。方向D1は、複数の検出素子22aの配列方向に対して垂直である。傾きは、検出器22の方向D1と、溶接部53の法線方向D2と、の間のX方向まわりの角度θx及びY方向まわりの角度θyによって表される。
【0066】
図8に示した姿勢を表す角度は、教示点の表現に用いられるロボット座標系における角度と異なっていても良い。制御装置10又は処理装置12は、ステップS23において算出された傾きを、ロボット座標系に適宜変換しても良い。制御装置10又は処理装置12は、教示点を設定する際に、検出器22の姿勢を表す角度を、適宜ロボット座標系における角度に変換しても良い。
【0067】
図10(a)~
図10(c)は、検査において得られた画像の一例である。
傾きの算出方法について説明する。
図10(a)は、溶接部53近傍のX-Y面における反射波の強度分布を示す画像である。
図10(b)は、溶接部53近傍のY-Z面における反射波の強度分布を示す画像である。
図10(c)は、溶接部53近傍のX-Z面における反射波の強度分布を示す画像である。
図10(a)~
図10(c)の各画像において、輝度は、反射波の強度に対応する。すなわち、画素の色が明るいほど、その点における反射波強度が高いことを示している。
【0068】
角度θxは、
図10(b)に示したように、Y-Z面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、
図10(c)に示したように、X-Z面での検出結果に基づいて算出される。具体的には、処理装置12は、3次元の輝度勾配の平均を算出する。処理装置12は、X方向まわりの勾配の平均を角度θxとして用いる。処理装置12は、Y方向まわりの勾配の平均を角度θyとして用いる。
【0069】
姿勢教示処理は、位置教示処理の前に行われても良いし、位置教示処理の後に行われても良い。1回の探査の結果に基づいて、位置教示処理と姿勢教示処理が行われても良い。
【0070】
図11(a)及び
図11(b)は、反射波の強度分布を示す模式図である。
好ましくは、姿勢教示処理は、位置教示処理の後に行われる。溶接部53の中心位置が検出器22の位置からずれ、検出器22が溶接部53に対して傾斜している場合、
図11(a)に示すように、溶接部53からの多重反射波が検出器22によって検出されない可能性がある。多重反射波は、Z方向の深い位置で検出される反射波である。多重反射波が検出されないと、算出される検出器22の姿勢の精度が低下しうる。姿勢教示処理の前に位置教示処理が行われることで、
図11(b)に示すように、溶接部53からの多重反射波がより検出され易くなる。これにより、検出器22の姿勢を、より精度良く算出できる。
【0071】
(第2変形例)
図12は、実施形態の第2変形例に係る教示方法を示すフローチャートである。
図13(a)及び
図13(b)は、実施形態の第2変形例に係る教示方法を説明するための模式図である。
第2変形例に係る教示方法は、
図5に示す教示方法と比べると、ステップS1に代えてステップS19を含む。また、第2変形例に係る教示方法は、ステップS15及びS17に代えて、ステップS15a及びS17aを含む。
【0072】
ステップS19において、処理システム1は、検出器22と溶接部53との間のZ方向における距離を、第1距離に設定する。第1距離は、検査処理が実行されるときの検出器22と溶接部53との間のZ方向における第2距離よりも長い。このとき、
図13(a)に示すように、検出器22は、カプラント液55を介して接合体50と接触している。検出器22は、接合体50と直接的には接触していない。
【0073】
その後、処理システム1は、
図5に示す教示方法と同様に、ステップS11~S14を実行する。ステップS15aでは、処理システム1は、第1位置に基づいて教示点を設定する。このとき、制御装置10は、検出器22と溶接部53との間のZ方向における距離を、第2距離に設定する。これにより、検出器22が、溶接部53に接近する。例えば
図13(b)に示すように、検出器22が、接合体50に直接接触する。処理システム1は、X-Y面内における第1位置と、接近後の検出器22のZ方向における位置と、に基づいて教示点を設定する。
【0074】
同様に、ステップS17aでは、処理システム1は、第2位置に基づいて教示点を設定する。このとき、制御装置10は、検出器22と溶接部53との間のZ方向における距離を、第2距離に設定する。処理システム1は、X-Y面内における第2位置と、接近後の検出器22のZ方向における位置と、に基づいて教示点を設定する。
【0075】
第1距離は、探査を実行しながら検出器22を接合体50へ接近させることで、設定できる。検出器22が接合体50及びカプラント液55から離れていると、超音波が減衰し、反射波が検出されない。検出器22がカプラント液55に接触すると、カプラント液55を超音波が伝搬し、反射波が検出される。制御装置10は、検出器22を接合体50へ徐々に接近させつつ、反射波が検出されたタイミングで検出器22を停止させる。これにより、検出器22と接合体50との間の距離が、第1距離に設定される。
【0076】
又は、検出器22を接合体50に接触させた後に検出器22を接合体50から少し遠ざけることで、第1距離が設定されても良い。制御装置10は、センサ22dによって検出器22の接合体50への接触が検出されるまで、検出器22を接合体50へ接近させる。接触が検出された後、制御装置10は、検出器22を接合体50から僅かに遠ざける。遠ざける距離は、予め設定される。これにより、検出器22と接合体50との間の距離が、第1距離に設定される。
【0077】
接触が検出された後、探査を実行しながら、検出器22を接合体50から徐々に遠ざけても良い。制御装置10は、反射波が検出されている間、検出器22を接合体50から徐々に遠ざける。反射波が検出されなくなると、制御装置10は、最後に反射波が検出されたZ方向における位置に検出器22を移動させる。これにより、検出器22と接合体50との間の距離が、第1距離に設定される。
【0078】
ステップS16の実行時、検出器22と溶接部53との間のZ方向における距離は、第1距離に設定される。すなわち、ステップS16の実行時、制御装置10は、検出器22を溶接部53から遠ざけずに、検出器22をX-Y面に沿って移動させる。このとき、検出器22は、カプラント液を介して接合体50と接触している。このため、検出器22が移動したときに、検出器22と接合体50との間の摩擦を低減できる。また、検出器22を溶接部53から遠ざける動作が不要となるため、教示方法の実行に必要な時間を短縮できる。
【0079】
第2変形例に係る教示方法において、第1変形例と同様に、姿勢教示処理がさらに実行されても良い。上述した通り、姿勢教示処理は、位置教示処理の後に実行されることが好ましい。
【0080】
図14は、実施形態に係る検査処理を示すフローチャートである。
以上で説明したいずれかの教示方法によって教示点が設定されると、ロボットシステム2は、検査処理(ステップS30)を実行する。制御装置10は、吐出器25から接合体50へ、カプラント液55を吐出させる(ステップS31)。制御装置10は、マニピュレータ21を動作させ、検出器22の位置及び姿勢を、教示点の位置及び姿勢に設定する(ステップS32)。制御装置10は、溶接部53に対する探査を検出器22に実行させる(ステップS33)。処理装置12は、得られた強度データ(第3強度データ)に基づいて、溶接部53を特定する(ステップS34)。処理装置12は、溶接部53を検査する(ステップS35)。検査では、例えば、溶接部53の径が閾値と比較される。処理装置12は、検査結果を保存する(ステップS36)。
【0081】
教示方法及び検査処理を含む処理方法によれば、より簡便に溶接部53の中心位置を教示点として設定でき、設定した教示点を用いて溶接部53を検査できる。
【0082】
図15は、別の検出器の構造を示す模式図である。
以上では、探査の実行時にカプラント液55を用いる例を説明した。溶接部53の形状に応じて変形可能な伝搬部材が検出器に設けられていれば、カプラント液55は省略可能である。
【0083】
図15に示す検出器23は、第1伝搬部材22b1及び第2伝搬部材22b2を含む。第1伝搬部材22b1は、検出器23の筐体22cに取り付けられる。第1伝搬部材22b1は、超音波が伝搬可能である。例えば、第1伝搬部材22b1は、複数の検出素子22aに接触する。又は、第1伝搬部材22b1と複数の検出素子22aとの間に、別の超音波が伝搬可能な部材が設けられても良い。
【0084】
第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1に取り付けられる。第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1に接着されても良いし、図示しない固定具によって第1伝搬部材22b1に対して固定されても良い。第1伝搬部材22b1は、複数の検出素子22aと第2伝搬部材22b2との間に位置する。第2伝搬部材22b2は、超音波が伝搬可能である。第1伝搬部材22b1を伝搬した超音波は、第2伝搬部材22b2を伝搬し、検出器23の外部に送信される。
【0085】
第1伝搬部材22b1は、固体である。第1伝搬部材22b1は、検出器22の動作時にも実質的な変改が生じないように、十分な硬さを有する。第2伝搬部材22b2は、ゲル状であり、液体では無い。第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1よりも軟らかい。すなわち、第2伝搬部材22b2の硬さは、第1伝搬部材22b1の硬さよりも小さい。このため、第2伝搬部材22b2は、第1伝搬部材22b1に比べて、容易に変形する。第1伝搬部材22b1は、探査時に、検査の対象の表面形状に応じて変形できるように、十分な軟らかさを有する。
【0086】
第1伝搬部材22b1及び第2伝搬部材22b2は、樹脂を含む。具体的な一例として、第1伝搬部材22b1は、アクリルを含む。第2伝搬部材22b2は、セグメント化ポリウレタンを含む。接合に用いられる一般的な鋼板の音響インピーダンスは、4.5×107(Pa・s/m)程度である。検出器22と接合体50との間で超音波が十分に伝搬するように、第1伝搬部材22b1及び第2伝搬部材22b2のそれぞれの音響インピーダンスは、1.0×105(Pa・s/m)よりも大きく、1.0×108(Pa・s/m)よりも小さいことが好ましい。音響インピーダンスは、JIS A1405-1(ISO 10534-1)に従って測定できる。
【0087】
処理システム1は、検出器22に代えて検出器23を含むロボット20に対して、上述した教示方法を実行しても良い。ただし、いずれかの教示方法におけるステップS16において、検出器23をX-Y面に沿って移動させる場合、制御装置10は、検出器23を接合体50から遠ざけることが好ましい。第2伝搬部材22b2はゲル状であるため、第2伝搬部材22b2と接合体50との間の摩擦が大きい。第2伝搬部材22b2が接合体50に接触した状態で検出器22を移動させると、第2伝搬部材22b2が損傷しうる。検出器23を接合体50から遠ざけた後に、検出器23をX-Y面に沿って移動させることで、第2伝搬部材22b2の損傷を抑えることができる。
【0088】
図16は、ハードウェア構成を示す模式図である。
制御装置10、操作端末11、及び処理装置12は、例えば
図16に示すコンピュータ90の構成をそれぞれ含む。コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0089】
ROM92は、コンピュータ90の動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータ90に実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0090】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0091】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。
【0092】
入力インタフェース(I/F)95は、コンピュータ90と入力装置95aとを接続する。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。
【0093】
出力インタフェース(I/F)96は、コンピュータ90と出力装置96aとを接続する。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HDMI(登録商標))等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aにデータを送信し、出力装置96aに画像を表示させることができる。
【0094】
通信インタフェース(I/F)97は、コンピュータ90外部のサーバ97aと、コンピュータ90と、を接続する。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0095】
記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。出力装置96aは、モニタ及びプロジェクタから選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0096】
制御装置10及び処理装置12のそれぞれの機能は、3台以上のコンピュータの協働により実現されても良い。制御装置10及び処理装置12のそれぞれの機能が、1台のコンピュータによって実現されても良い。上述した各種処理の主体は、制御装置10及び処理装置12の間で、適宜変更可能である。
【0097】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又は、他の非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0098】
例えば、記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0099】
以上で説明した、処理システム、ロボットシステム、制御装置、教示方法、又は処理方法によれば、より簡便に、溶接部の中心位置を教示点として設定できる。コンピュータに、教示方法又は処理方法を実行させるプログラムを用いることで、より簡便に、溶接部の中心位置を教示点として設定できる。
【0100】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
1:処理システム、 2:ロボットシステム、 10:制御装置、 11:操作端末、 12:処理装置、 20:ロボット、 21:マニピュレータ、 22:検出器、 22a:検出素子、 22b:伝搬部、 22b1:第1伝搬部材、 22b2:第2伝搬部材、 22c:筐体、 22d:センサ、 23:検出器、 25:吐出器、 50:接合体、 51:金属板、 51a:上面、 51b:下面、 52:金属板、 53:溶接部、 53a:上面、 53b:下面、 54:凝固部、 55:カプラント液、 90:コンピュータ、 91:CPU、 92:ROM、 93:RAM、 94:記憶装置、 95:入力インタフェース、 95a:入力装置、 96:出力インタフェース、 96a:出力装置、 97:通信インタフェース、 97a:サーバ、 98:システムバス、 Pe10~Pe14:ピーク、 RW:反射波、 US:超音波