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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148180
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20231005BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G21/00 510
G03G21/00 500
G03G21/00 398
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056074
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸征
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GB15
2H200HA12
2H200HB03
2H200HB28
2H200HB46
2H200HB48
2H200NA14
2H200NA22
2H200NA23
2H200NA24
2H200NA25
2H200PA03
2H200PA27
2H200PB05
2H200PB22
2H200PB26
2H200PB35
2H200PB38
2H270KA46
2H270LA04
2H270LA70
2H270MA01
2H270MG01
2H270QB08
2H270RA14
2H270RB03
2H270RB09
2H270RC03
2H270RC17
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】帯電ワイヤのクリーニングが実行されたかどうかの判断を行ったときでも、帯電電圧が過大になることを抑制する技術を提供する。
【解決手段】ASIC61は、画像形成時に異常放電検出回路78が異常放電を検出後、各帯電ワイヤ42Y,42M,42Cがクリーニングされたか否かを判断するとき、複数の帯電器41Y,41M,41Cのそれぞれで異常放電が発生しない電圧範囲内の所定の帯電電圧値を生成するように帯電電圧生成回路70を定電圧制御するとともに、複数のグリッド電流検出回路82Y,82M,82Cが検出した各グリッド電流Ig1~Ig3に基づいて、各帯電ワイヤ42Y,42M,42Cがクリーニングされたか否かを判定するワイヤクリーニング判定処理を実行する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の感光体と、
帯電ワイヤ及びグリッドを有し、前記複数の感光体のそれぞれを帯電させる複数の帯電器と、
前記帯電ワイヤに印加する電圧である帯電電圧を生成し、前記複数の帯電器のそれぞれに対して前記帯電電圧を印加する帯電電圧生成回路と、
前記グリッドに印加される電圧であるグリッド電圧を調整する、複数のグリッド電圧調整回路と、
前記グリッドに流れる電流であるグリッド電流を検出する複数のグリッド電流検出回路と、
前記複数の帯電器のそれぞれで発生する異常放電を検出する異常放電検出回路と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
画像形成時に前記異常放電検出回路が異常放電を検出するまでは、前記複数の感光体の各表面電位を一定に保つために、前記複数の帯電器のグリッド毎に所定のグリッド電圧が印加されるように前記複数のグリッド電圧調整回路を制御するとともに、前記複数のグリッド電流検出回路が検出した複数のグリッド電流のうち、最も低い電流値のグリッド電流が一定値となるような帯電電圧を生成するように前記帯電電圧生成回路を制御し、
画像形成時に前記異常放電検出回路が異常放電を検出後、各帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判断するとき、前記複数の帯電器のそれぞれで異常放電が発生しない電圧範囲内の所定の帯電電圧値を生成するように前記帯電電圧生成回路を定電圧制御するとともに、前記複数のグリッド電流検出回路が検出した各グリッド電流に基づいて、各帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判定するワイヤクリーニング判定処理を実行する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定の帯電電圧値は、前記異常放電検出回路が異常放電を検出したときに前記帯電電圧生成回路により生成された帯電電圧値より所定の電圧値だけ低い値である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ワイヤクリーニング判定処理を実行するときには、前記複数の帯電器のグリッド毎に印加されるグリッド電圧を、全グリッドに亘って共通の1つの電圧値であって、異常放電が検出される前のグリッド電圧より低い値に変更して印加する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の感光体とは異なる1つの感光体と、
帯電ワイヤ及びグリッドを有し、前記1つの感光体を帯電させる1つの帯電器と、
前記1つの帯電器内の前記帯電ワイヤに印加する電圧である帯電電圧を生成し、前記1つの帯電器に対して前記帯電電圧を印加する1つの帯電電圧生成回路と、
前記1つの帯電器内の前記グリッドに流れる電流であるグリッド電流を検出する1つのグリッド電流検出回路と、
前記1つの帯電器で発生する異常放電を検出する1つの異常放電検出回路と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
画像形成時に前記1つの異常放電検出回路が異常放電を検出するまでは、前記1つの感光体の表面電位を一定に保つために、前記1つの帯電器のグリッドに所定のグリッド電圧が印加されるように、前記1つの帯電電圧生成回路に対して前記1つのグリッド電流検出回路から検出されるグリッド電流が一定値となる定電流制御を行い、
画像形成時に前記1つの異常放電検出回路が異常放電を検出後、各帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判断するときには、前記1つの帯電電圧生成回路に対して前記1つのグリッド電流検出回路から検出されるグリッド電流が前記一定値より低い他の一定値となる定電流制御を行うとともに、前記1つのグリッド電流検出回路が検出したグリッド電流に基づいて、前記帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判定するワイヤクリーニング判定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記異常放電検出回路が異常放電を検出したときには、異常放電が検出されたことを外部に報知する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記帯電器を内部に配置した筐体と、
前記筐体の内部の空気を排出するファンと、
前記ファンに駆動力を伝達可能なモータと、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記ワイヤクリーニング判定処理を実行するに際して、前記モータに駆動信号を所定時間出力する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記帯電器を内部に配置した筐体と、
前記筐体に対して開閉可能なカバーと、
前記カバーの開閉状態に応じた検出信号を出力するセンサと、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記異常放電検出回路が異常放電を検出したときには、前記センサから入力する前記検出信号が、前記カバーが開いた状態を示す第1信号から前記カバーが閉じた状態を示す第2信号に変化するまで待機する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、感光体を帯電させる帯電器に異常放電が発生したときの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、帯電ワイヤ及びグリッドを有するコロナ帯電器によって感光体を帯電させる画像形成装置が記載されている。この画像形成装置では、コロナ帯電器の異常放電を検出してエラー表示を行い、コロナ帯電器を有する筐体を覆うカバーの開閉後、ユーザによって帯電ワイヤのクリーニングが実行されたかどうかを確認する処理を実行する。そして、帯電ワイヤのクリーニングが実行されたかどうかは、グリッド電流が一定になるように帯電ワイヤ電圧を変更する定電流制御を行い、帯電ワイヤ電圧の値が判断基準電圧以下で定電流制御を行えたかどうかによって判断し、行えた場合は帯電ワイヤのクリーニングが実行されたと判断し、行えなかった場合は、帯電ワイヤのクリーニングが実行されていないと判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-12232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像形成装置とは異なる構成の画像形成装置として、複数のコロナ帯電器を有し、複数のコロナ帯電器のそれぞれに対して、1つの帯電電圧生成回路から同じ帯電電圧を印加し、1つのコロナ帯電器に対しては、別の1つの帯電電圧生成回路から帯電電圧を印加するようにした画像形成装置がある。
【0005】
この画像形成装置に対して、特許文献1に記載の画像形成装置で行っている、帯電ワイヤのクリーニングが実行されたかどうかの上記判断を適用した場合、複数のコロナ帯電器のそれぞれのグリッド電流のうち、最も低い電流値のグリッド電流が所定の目標電流値になるように定電流制御を行うことになるので、どれか1つでも帯電ワイヤのクリーニングが実行されていないものがあった場合、帯電電圧が過大になる虞があった。
【0006】
本願は、帯電ワイヤのクリーニングが実行されたかどうかの判断を行ったときでも、帯電電圧が過大になることを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願の画像形成装置は、複数の感光体と、帯電ワイヤ及びグリッドを有し、複数の感光体のそれぞれを帯電させる複数の帯電器と、帯電ワイヤに印加する電圧である帯電電圧を生成し、複数の帯電器のそれぞれに対して帯電電圧を印加する帯電電圧生成回路と、グリッドに印加される電圧であるグリッド電圧を調整する、複数のグリッド電圧調整回路と、グリッドに流れる電流であるグリッド電流を検出する複数のグリッド電流検出回路と、複数の帯電器のそれぞれで発生する異常放電を検出する異常放電検出回路と、制御装置と、を備え、制御装置は、画像形成時に異常放電検出回路が異常放電を検出するまでは、複数の感光体の各表面電位を一定に保つために、複数の帯電器のグリッド毎に所定のグリッド電圧が印加されるように複数のグリッド電圧調整回路を制御するとともに、複数のグリッド電流検出回路が検出した複数のグリッド電流のうち、最も低い電流値のグリッド電流が一定値となるような帯電電圧を生成するように帯電電圧生成回路を制御し、画像形成時に異常放電検出回路が異常放電を検出後、各帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判断するとき、複数の帯電器のそれぞれで異常放電が発生しない電圧範囲内の所定の帯電電圧値を生成するように帯電電圧生成回路を定電圧制御するとともに、複数のグリッド電流検出回路が検出した各グリッド電流に基づいて、各帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判定するワイヤクリーニング判定処理を実行する、ことを特徴とする。
【0008】
これにより、帯電ワイヤのクリーニングが実行されたかどうかの判断を行ったときでも、帯電電圧が過大になることを抑制することが可能となる。
【0009】
また、所定の帯電電圧値は、異常放電検出回路が異常放電を検出したときに帯電電圧生成回路により生成された帯電電圧値より所定の電圧値だけ低い値である、ことを特徴とする。
【0010】
これにより、帯電電圧が過大になることを抑制する効果をさらに高めることが可能となる。
【0011】
また、制御装置は、ワイヤクリーニング判定処理を実行するときには、複数の帯電器のグリッド毎に印加されるグリッド電圧を、全グリッドに亘って共通の1つの電圧値であって、異常放電が検出される前のグリッド電圧より低い値に変更して印加する、ことを特徴とする。
【0012】
これにより、帯電電圧が過大になることを抑制する効果をさらに高めることが可能となる。
【0013】
また、本願の画像形成装置は、複数の感光体とは異なる1つの感光体と、帯電ワイヤ及びグリッドを有し、1つの感光体を帯電させる1つの帯電器と、1つの帯電器内の帯電ワイヤに印加する電圧である帯電電圧を生成し、1つの帯電器に対して帯電電圧を印加する1つの帯電電圧生成回路と、1つの帯電器内のグリッドに流れる電流であるグリッド電流を検出する1つのグリッド電流検出回路と、1つの帯電器で発生する異常放電を検出する1つの異常放電検出回路と、をさらに備え、制御装置は、画像形成時に1つの異常放電検出回路が異常放電を検出するまでは、1つの感光体の表面電位を一定に保つために、1つの帯電器のグリッドに所定のグリッド電圧が印加されるように、1つの帯電電圧生成回路に対して1つのグリッド電流検出回路から検出されるグリッド電流が一定値となる定電流制御を行い、画像形成時に1つの異常放電検出回路が異常放電を検出後、各帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判断するときには、1つの帯電電圧生成回路に対して1つのグリッド電流検出回路から検出されるグリッド電流が一定値より低い他の一定値となる定電流制御を行うとともに、1つのグリッド電流検出回路が検出したグリッド電流に基づいて、帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判定するワイヤクリーニング判定処理を実行する、ことを特徴とする。
【0014】
これにより、1つの帯電器内の帯電ワイヤのクリーニングが実行されたかどうかの判断を行ったときでも、帯電電圧が過大になることを抑制することが可能となる。
【0015】
また、制御装置は、異常放電検出回路が異常放電を検出したときには、異常放電が検出されたことを外部に報知する、ことを特徴とする。
【0016】
これにより、ユーザは異常放電が検出されたことを知ることができる。
【0017】
また、本願の画像形成装置は、帯電器を内部に配置した筐体と、筐体の内部の空気を排出するファンと、ファンに駆動力を伝達可能なモータと、をさらに備え、制御装置は、ワイヤクリーニング判定処理を実行するに際して、モータに駆動信号を所定時間出力する、ことを特徴とする。
【0018】
これにより、ワイヤクリーニング判定処理を実行する前に筐体内にガスが滞留していたとしても、そのガスを筐体の外部に排出することができる。
【0019】
また、本願の画像形成装置は、帯電器を内部に配置した筐体と、筐体に対して開閉可能なカバーと、カバーの開閉状態に応じた検出信号を出力するセンサと、をさらに備え、制御装置は、異常放電検出回路が異常放電を検出したときには、センサから入力する検出信号が、カバーが開いた状態を示す第1信号からカバーが閉じた状態を示す第2信号に変化するまで待機する、ことを特徴とする。
【0020】
これにより、異常放電検出回路が異常放電を検出したときには、カバーの開閉がなされるまで処理が止まるので、帯電ワイヤのクリーニングをユーザに促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願の一実施形態に係るカラーレーザプリンタの概略構成を示す断面図である。
図2図1のプリンタの高圧電源装置に係る概略的なブロック図である。
図3】黒色に対応する高圧電源装置に係る概略的なブロック図である。
図4】異常放電検出回路及びその周りの回路構成を示す図である。
図5図2のASICが実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。
図6図5の制御処理内のワイヤクリーニング判定処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本願の一実施形態に係るレーザプリンタ1は、図1に示すように、電子写真方式により用紙P等にカラー画像を形成するカラーレーザプリンタであり、4色のトナーを用いる所謂タンデム方式のレーザプリンタである。以下、レーザプリンタ1を、単にプリンタ1という。なお、以下の説明では、図1に示すように、同図の紙面右側をレーザプリンタ1の前面側と規定し、紙面左側を後面側と規定する。また、図1の紙面手前側をプリンタ1の前面側から見た左側と規定し、紙面奥側を右側と規定する。さらに、図1の紙面上側をプリンタ1の上側と規定し、紙面下側を下側と規定する。
【0023】
図1に示すように、プリンタ1は、略箱状の装置本体2を有しており、装置本体2の内部に、給紙部10、画像形成部20等を収納している。装置本体2の上面には、画像が形成された用紙Pを積層状態で収納する排出トレイ5が設けられている。装置本体2は、上方に開口する筐体3と、筐体3の開口部を塞ぐように筐体3にヒンジ部4を介して回動可能に連結されるカバー7とを有する。筐体3の内壁には、カバー7の開閉状態を検出するための開閉検出センサ8が取り付けられている。後述するプリンタ1のASIC61(図2参照)は、開閉検出センサ8の開閉信号Sg(図2参照)に基づいて、カバー7の開閉状態を検出可能となっている。開閉検出センサ8は、例えば、カバー7を開けた状態では、ハイレベルの開閉信号SgをASIC61へ出力する。また、開閉検出センサ8は、例えば、カバー7を閉じた状態では、ローレベルの開閉信号SgをASIC61へ出力する。これにより、ASIC61は、開閉信号Sgの信号レベルを判定することで、カバー7の開閉状態を判定できる。
【0024】
また、カバー7の後方側の上部には、表示部6が設けられている。表示部6は、例えば、タッチパネルであり、液晶パネル、液晶パネルの背面側から光を照射するLED等の光源、液晶パネルの表面に貼り合わされた接触感知膜等を備えている。プリンタ1のASIC61(図2参照)は、プリンタ1に関する各種情報を表示部6に表示する。本実施形態のASIC61は、図5及び図6を用いて後述する制御処理において、グリッド43をクリーニングする旨を表示部6に表示する。
【0025】
また、装置本体2には、排気ファン9が設けられている。排気ファン9は、例えば、装置本体2の後方側に設けられている。排気ファン9は、後述するプリンタ1のASIC61(図2参照)の制御に基づいて回転し、装置本体2内部の空気を、装置本体2の外部に排出する。装置本体2内には、排気ファン9に駆動力を伝達可能なモータ67(図2参照)が設けられている。ASIC61は、モータ67に駆動信号DSを出力することで、モータ67の駆動の開始、駆動の停止、回転方向、回転速度等を制御可能となっている。
【0026】
給紙部10は、用紙Pが収容された給紙トレイ11及び各種ローラを有しており、各種ローラを駆動して用紙Pを画像形成部20に給紙する。また、給紙トレイ11は、装置本体2の下部に対して着脱可能に構成されている。
【0027】
画像形成部20は、搬送ユニット21、4つのプロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30K、露光部35、及び定着部50を有している。搬送ユニット21は、給紙部10とプロセスカートリッジ30C等との上下方向の間に設けられており、搬送ベルト23及び4つの転写ローラ25等を有している。搬送ベルト23は、ベルトを環状にして構成された無端ベルトであり、画像形成部20の後端側下方に位置する駆動ローラ27及び前端側下方に位置する従動ローラ29に巻き付けられている。搬送ベルト23の上側の面は、プロセスカートリッジ30C等の直下において略水平に延在しており、給紙部10より供給された用紙Pの裏面と当接する。駆動ローラ27は、搬送ベルト23を所定方向に回転させる。また、搬送ベルト23は、各転写ローラ25に転写バイアスが印加されることにより負帯電し静電気力で用紙Pを上側の面に吸着させつつ、吸着した用紙Pを搬送経路Rに沿って排出トレイ5へ向かって搬送する。
【0028】
プロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色に対応している。プロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30Kの各々には、対応する色(C、M、Y、K)のトナーが収容されている。また、4つのプロセスカートリッジ30C,30M,30Y,30Kは、プリンタ1の前方から後方に向かって、プロセスカートリッジ30K,30Y,30M,30Cの順に設けられている。
【0029】
プロセスカートリッジ30Cは、ドラム形状の感光体31、帯電器41、及びトナーカートリッジ33等を有している。なお、他のプロセスカートリッジ30M,30Y,30Kの構成は、プロセスカートリッジ30Cの構成と、異なるトナー色のトナーが収容されていること以外は同様である。このため、以下の説明では、代表してプロセスカートリッジ30Cについて説明し、他のプロセスカートリッジ30M,30Y,30Kについての説明を適宜省略する。
【0030】
感光体31は、転写ローラ25の上方に位置し、転写ローラ25との上下方向の間に搬送ベルト23を挟んでいる。帯電器41は、例えば、帯電ワイヤ42及びグリッド43をシールドケース45に収容したスコロトロン型の帯電器である。帯電ワイヤ42は、金属、例えば、金メッキされたタングステン、又はタングステン単体で形成されている。シールドケース45は、左右方向に沿って長尺となる略角筒型に形成されている。シールドケース45の感光体31に面した部分には、開口が形成されている。グリッド43は、このシールドケース45の開口において、導電性の線材をメッシュ状に張設して構成されている。また、帯電ワイヤ42は、シールドケース45内において左右方向に沿って張設され、感光体31に対して後方側の上部の位置に間隔を隔てて配置されている。したがって、グリッド43は、感光体31と帯電ワイヤ42との間に配置されている。
【0031】
帯電器41は、画像形成に際し、感光体31の表面を一様に正帯電させる。具体的には、帯電ワイヤ42及びグリッド43に電圧が印加されることで、帯電ワイヤ42と感光体31との間には、電場が形成されコロナ放電が発生する。帯電ワイヤ42とグリッド43との間に電場が形成される際、グリッド43には帯電ワイヤ42とは異なる電圧が印加されており、これにより電場の強さが制御され感光体31の帯電量が制御される。
【0032】
露光部35は、装置本体2の内部の最上方に設けられており、帯電された各感光体31の表面に画像データに基づく静電潜像を形成する。トナーカートリッジ33は、収容しているトナーを現像ローラ47の表面に担持させることによって、感光体31の表面にトナーを供給する。これにより、感光体31の表面にはトナー像が形成(現像)される。搬送ユニット21は、用紙Pを定着部50へ向けて搬送しつつ、転写ローラ25に転写バイアスを印加することで感光体31の表面に現像されたトナー像を用紙Pに転写させる。
【0033】
また、クリーニングローラ26は、感光体31の後方側に近接して設けられている。クリーニングローラ26は、クリーニング電圧を印加されることで、感光体31の表面に担持されたトナーを回収する。
【0034】
定着部50は、搬送ユニット21に比べて搬送経路Rの下流側に設けられている。定着部50は、加熱ローラ51と加圧ローラ52とを有している。加熱ローラ51は、用紙Pの画像形成面側に配設されており、搬送ベルト23等と同期して回転し、用紙Pに転写されたトナーを加熱しつつ、用紙Pを搬送する。加圧ローラ52は、加熱ローラ51との間に用紙Pを挟んで、用紙Pを加熱ローラ51側に押圧しながら従動回転する。これにより、定着部50は、用紙Pに転写されたトナーを加熱溶融させて用紙Pに定着させつつ、用紙Pを搬送経路Rに沿って搬送する。
【0035】
次に、図2及び図3を参照して、プリンタ1の本願に関連する電気的構成を説明する。図2及び図3は、プリンタ1に内蔵される回路基板(図示せず)に実装される高圧電源装置60の概略的なブロック図及び高圧電源装置60に関連する接続構成を示している。なお、以下の説明では、各構成要素について、色毎に区別する場合は、各部の符号にY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の添え字、又は「1~4」などの添え字(例えば、グリッド電圧GRID1~GRID4など)を付し、区別しない場合は添え字を省略(例えば、グリッド電圧GRIDと表記)する。
【0036】
高圧電源装置60は、ASIC(特定用途向けIC)61、ASIC61に接続された高圧電源回路62、ROM63、及びRAM64を有している。ASIC61は、高圧電源回路62の制御の他に、プリンタ1全体を統括制御する。ROM63は、ASIC61が実行する各種の動作プログラム等を記憶する記憶媒体である。本実施形態のROM63には、制御処理(図5及び図6参照)を実現するためのプログラムPGが保存されている。RAM64は、各種処理における一時データや印刷処理に用いる画像データ等を記憶する。
【0037】
高圧電源回路62は、帯電電圧生成回路70と、グリッド電流検出回路82を備えるグリッド電圧調整回路81とを有している。帯電電圧生成回路70には、電源線PLが接続されている。電源線PLには、各帯電器41(41Y~41C)が並列に接続されている。帯電電圧生成回路70は、電源線PLを介して各帯電器41に帯電電圧CHGを印加する。また、グリッド電圧調整回路81Y~81C及びグリッド電流検出回路82Y~82Cは、各帯電器41Y~41Cに対応して設けられる。
【0038】
帯電電圧生成回路70は、例えば、PWM信号制御回路71、トランスドライブ回路72、昇圧回路73、及び異常放電検出回路78を有している。帯電電圧生成回路70は、各帯電器41Y~41Cの帯電ワイヤ42Y~42Cに印加する帯電電圧CHGを生成する。また、グリッド43Y~43Cに印加されるグリッド電圧GRID1~GRID3は、各グリッド電圧調整回路81Y~81Cによって調整される。帯電電圧CHGは、例えば、約5.5kV~7kVである。また、グリッド電圧GRIDは、例えば、約700Vである。
【0039】
PWM信号制御回路71は、例えば、抵抗及びコンデンサ(図示略)を含み、ASIC61のポートPWM1からのPWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)信号Sp1を平滑化し、平滑化したPWM信号Sp1をトランスドライブ回路72に供給する。トランスドライブ回路72は、例えば、PWM信号制御回路71から供給された平滑化後のPWM信号Sp1をドライブ用のトランジスタ(図示略)に供給し、昇圧回路73に発振電流を供給する。
【0040】
昇圧回路73のトランス74は、1次側巻線74a及び2次側巻線74bを備えている。トランスドライブ回路72は、ドライブ用のトランジスタからトランス74の1次側巻線74aに発振電流を供給する。トランス74は、発振電流のデューティ比に応じて、2次側巻線74bから出力される出力電圧(帯電電圧CHG)の電圧値を変更する。例えば、トランス74は、PWM信号Sp1のデューティ比が大きくなればなるほど電圧値の大きな帯電電圧CHGを生成する。2次側巻線74bには、整流ダイオード75、平滑コンデンサ76、及び出力抵抗77が接続されている。これにより、昇圧回路73は、トランス74の1次側巻線74aに発生する電圧を昇圧及び整流し、各帯電器41Y~41Cの帯電ワイヤ42Y~42Cに帯電電圧CHGとして印加する。
【0041】
異常放電検出回路78は、昇圧回路73の低圧側出力端部T2とグランドとの間に設けられている。低圧側出力端部T2は、トランス74の2次側巻線74bの低電圧側に接続されている。異常放電検出回路78は、帯電器41で発生する異常放電に起因してグリッド43やグランドを介して瞬間的に流れる異常放電電流に基づいて、異常放電の発生の有無を検出する。なお、異常放電とは、例えば、コロナ放電とは異なり、トナーや紙粉による帯電ワイヤの汚れ等によって生じる火花放電やアーク放電である。
【0042】
通常動作の場合、トランス74の2次側巻線74bの高電圧側から帯電器41に帯電電圧CHGが印加されると、グリッド43を流れるグリッド電流Igは、例えば、グリッド電流検出回路82を介してグランドに流れる。一方、帯電器41に異常放電が発生した場合、異常放電電流の一部は、例えば、グリッド電流検出回路82からグランドを介して異常放電検出回路78へと流れ、低圧側出力端部T2からトランス74の2次側巻線74bの低電圧側に戻る。このようなグランドを介して戻ってくる異常放電電流が所定の電流値以上となると、異常放電検出回路78は、異常放電の発生を示す異常放電検出信号Sv1を出力する。
【0043】
また、グリッド電圧調整回路81の各々は、電圧検出回路83及び演算増幅器OP1を有している。なお、グリッド電圧調整回路81Y~81Cの各々の回路構成は同様であるため、以下の説明では、Y(イエロー)色に対応するグリッド電圧調整回路81Yについて説明し、他のグリッド電圧調整回路81Y~81Cについての説明を適宜省略する。電圧検出回路83Yは、直列接続された2つの分圧抵抗R7,R8を有する。分圧抵抗R7,R8には、グリッド43Yに流れるグリッド電流Ig1の分流電流Id1が流れる。電圧検出回路83Yは、2つの分圧抵抗R7,R8の接続点からグリッド43Yに印加されるグリッド電圧GRID1に応じた検出電圧Vgr1を出力する。電圧検出回路83Yは、検出電圧Vgr1を、出力抵抗R6を介して分圧検出信号Sid1として演算増幅器OP1の非反転入力(+)に供給する。コンデンサC3は、分圧抵抗R8と並列に接続されることによって、RCフィルタを構成している。
【0044】
また、演算増幅器OP1の反転入力(-)には、出力抵抗R9を介してASIC61のポートPWM2が接続されている。出力抵抗R9の出力側は、コンデンサC4を介してGNDに接地されている。ASIC61は、ポートPWM2からPWM信号Spp1を供給し、出力抵抗R9を介して演算増幅器OP1にPWM信号Spp1を供給する。したがって、ASIC61は、演算増幅器OP1の基準電圧等を変更可能に構成されている。
【0045】
演算増幅器OP1の出力端子には、分圧抵抗R4及びコンデンサC2を含む平滑回路が接続されている。分圧抵抗R4のグリッド43Y側(演算増幅器OP1の出力端子と反対側)の接続点は、コンデンサC2を介してGNDに接地されている。また、分圧抵抗R4のグリッド43Y側の接続点には、グリッド電圧GRID1を定電圧化するためのトランジスタQ1のベースが接続されている。また、トランジスタQ1は、分圧抵抗R7とグリッド43Yとの間の接続点に接続された電圧制御ラインLn1に接続されている。トランジスタQ1は、例えば、NPNトランジスタであり、コレクタをグリッド43Y側の接続点(電圧制御ラインLn1)に接続され、エミッタをグリッド電流検出回路82Y(抵抗R3)に接続されている。なお、トランジスタQ1はバイポーラトランジスタに限られず、例えば、FET(電界効果トランジスタ)であってもよい。
【0046】
トランジスタQ1のベース電流は、演算増幅器OP1の出力によってその大きさが制御される。そして、トランジスタQ1のコレクタ抵抗の値は、ベース電流の大きさによって変化するので、トランジスタQ1は、可変抵抗として機能する。ここでいうコレクタ抵抗とは、コレクタ-エミッタ間電圧をコレクタ電流で割った抵抗値である。例えば、ベース電流を大きくすることで抵抗値が下がり、反対にベース電流を小さくすることで、抵抗値が上がる。これにより、コレクタ・エミッタ間電圧が変更される。
【0047】
演算増幅器OP1は、電圧検出回路83Yによって検出された検出電圧Vgr1(分圧検出信号Sid1)と、ASIC61からのPWM信号Spp1との差分に基づいてトランジスタQ1のベース電圧を変更させ、グリッド電圧GRID1を変更する。したがって、ASIC61は、PWM信号Spp1のデューティ比を変更することによって、グリッド電圧GRID1の電圧値を所定の目標電圧値に変更することが可能となっている。なお、電圧制御ラインLn1とグリッド43Yとの間には、グリッド電圧GRIDが充電されるコンデンサC1が設けられている。
【0048】
また、電圧制御ラインLn1には、グリッド43Yを流れるグリッド電流Ig1に応じたライン電流Ir1を検出するグリッド電流検出回路82Yが接続されている。グリッド電流検出回路82Yの抵抗R3は、トランジスタQ1のエミッタとGNDとの間に接続されている。グリッド電流検出回路82Yは、抵抗R3の正側の端子電圧をライン電圧検出信号Sir1としてASIC61のポートA/D2に供給する。
【0049】
本実施形態のASIC61は、グリッド電流Igの電流値に基づいて帯電電圧生成回路70から供給される帯電電圧CHGの電圧値を制御する。ASIC61は、例えば、3つのグリッド電流Ig1~Ig3のうち、最も電流値の小さいグリッド電流Igに基づいて帯電電圧CHGを制御する。例えば、帯電ワイヤ42へのトナーの付着によって、グリッド電流Ig1~Ig3の電流値の増大にばらつきが生じる。そこで、電流値の増大の最も小さいグリッド電流Igを基準として帯電電圧CHGの制御を実行する。これにより、グリッド電流Ig1~Ig3の変化量にばらつきがある場合に、全てのグリッド電流Ig1~Ig3の電流値を目標電流値以上の大きさにより確実に増大させることができる。
【0050】
例えば、グリッド電流Ig1が最小の電流値(制御対象の電流)である場合について説明する。ASIC61は、例えば、抵抗R3の抵抗値と、ライン電圧検出信号Sir1の電圧値からライン電流Ir1(グリッド電流Ig1)を算出する。ASIC61は、算出したグリッド電流Ig1の電流値に基づいて帯電電圧生成回路70を制御し、グリッド電流Ig1の電流値を所望の目標電流値に一致させる。ASIC61は、ポートPWM1から出力するPWM信号Sp1のデューティ比を変更し、グリッド電流Ig1の電流値を所望の目標電流値に一致させる。これにより、全てのグリッド電流Ig1~Ig3の電流値を目標電流値以上の大きさにより確実に増大することができる。
【0051】
図3は、K専用に設けられた帯電電圧生成回路70Kの概略的なブロック図及び帯電電圧生成回路70Kに関連する接続構成を示している。図3の構成は本来、図2の構成に含まれるものであるが、それを便宜上別図にしたものであるので、図3中、図2の構成と同様の構成には、同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0052】
帯電電圧生成回路70Kは、図2中の帯電電圧生成回路70と同様の構成であるので、その構成の説明は省略する。帯電電圧生成回路70Kには、電源線PLKが接続されている。電源線PLKには、帯電器41Kのみが接続されている。帯電電圧生成回路70Kは、電源線PLKを介して帯電器41Kに帯電電圧CHGKを印加する。
【0053】
電圧制御ラインLn4には、抵抗R11を介して、グリッド43Kを流れるグリッド電流Ig4に応じたライン電流Ir4を検出するグリッド電流検出回路82Kが接続されている。抵抗R11は、グリッド電流検出回路82Kに含まれる抵抗R3とともに、ライン電流Ir4が流れることによって、グリッド電圧GRID4を生成する。グリッド電圧GRID4も、上記グリッド電圧GRID1~3と同様に、例えば、約700Vであるが、ライン電流Ir4は、他のライン電流Ir1~3と異なり、所望の目標値に一致させることができる。つまり、他のライン電流Ir1~3は、そのうちのいずれか1つのライン電流を所望の目標値に一致させることはできるが、全てのライン電流Ir1~3を各目標値に一致させることは困難である。これは、上述のように、1つの帯電電圧生成回路70によって複数の帯電器41に帯電電圧CHGを印加するようにしているからである。このため、グリッド電圧調整回路81を設けて、各グリッド電圧GRID1~3を定電圧制御するようにしている。これに対して、ライン電流Ir4は所望の目標値に一致させることができるので、抵抗R11として所定の抵抗値のものを設けるだけで、所望のグリッド電圧GRID4を得ることができる。したがって、K用のグリッド電圧調整回路81は不要となっている。
【0054】
なお、ASIC61は、グリッド電流Ig4の電流値に基づいて帯電電圧生成回路70Kから供給される帯電電圧CHGKの電圧値を制御する。ASIC61は、グリッド電流検出回路82Kに含まれる抵抗R3の抵抗値と、ライン電圧検出信号Sir4の電圧値からライン電流Ir4(グリッド電流Ig4)を算出する。ASIC61は、算出したグリッド電流Ig4の電流値に基づいて帯電電圧生成回路70Kを制御し、グリッド電流Ig4の電流値を所望の目標電流値に一致させる。ASIC61は、ポートPWM5から出力するPWM信号Sp2のデューティ比を変更し、グリッド電流Ig4の電流値を所望の目標電流値に一致させる。これにより、グリッド電圧GRID4を所望の電圧値にすることができる。
【0055】
図4は、異常放電検出回路78,78K及びその周りの回路構成を示している。異常放電検出回路78,78Kは、例えば、ツェナーダイオード91、検出抵抗92、コンデンサ93、トランジスタTr1、抵抗94,95及びコンデンサ96を含む。検出抵抗92及びコンデンサ93の正側の端子は、昇圧回路73の低圧側出力端部T2に接続されている。検出抵抗92及びコンデンサ93の負側の端子は、グランドに接地されている。検出抵抗92及びコンデンサ93は、グランドを介して戻ってくる異常放電電流を平滑化する。検出抵抗92及びコンデンサ93の正側の端子は、ツェナーダイオード91のアノードに接続されている。
【0056】
トランジスタTr1は、例えば、PNPトランジスタであり、エミッタには直流電源Vcc1が接続されている。直流電源Vcc1の電圧は、例えば、5.0Vである。トランジスタTr1のベースには、抵抗94を介してツェナーダイオード91のカソードが接続されている。また、抵抗95は、トランジスタTr1のエミッタと、抵抗94のベース側の端子との間に接続されている。同様に、コンデンサ96は、トランジスタTr1のエミッタと、抵抗94のベース側の端子との間に接続されている。なお、本実施形態の異常放電検出回路78,78Kの回路構成は、一例であり、適宜変更可能である。例えば、異常放電検出回路78,78Kは、コンデンサ96を備えなくともよい。また、トランジスタTr1はバイポーラトランジスタに限らず、例えば、FET(電界効果トランジスタ)であってもよい。
【0057】
例えば、帯電ワイヤ42Yとグリッド43Yとの間で火花放電が発生すると、グリッド43Kに流れる異常放電電流は、断続的に大きく変動する。異常放電電流の一部がグランドを介して検出抵抗92に流れ、検出抵抗92の正側の端子の電圧が低下する。検出抵抗92の正側の端子の電圧がツェナーダイオード91のツェナー電圧(降伏電圧)まで低下すると、トランジスタTr1のベースに急激にベース電流が流れる。そして、所定の電流値以上の異常放電電流(火花放電)が発生すると、トランジスタTr1はオン状態となる。トランジスタTr1がオン状態となることで、トランジスタTr1のエミッタ・コレクタ間に電流が流れ、コレクタから直流電源Vcc1の電圧値に応じた異常放電検出信号Sv1が出力される。
【0058】
図4に示すように、2つの異常放電検出回路78,78Kの各々は、共通の信号線である共通信号線SLに接続されている。各異常放電検出回路78,78KにおけるトランジスタTr1のコレクタは、共通信号線SLを介してASIC61のポートA/D1に接続されている。したがって、帯電電圧生成回路70を各色に対応させて設けているものの、帯電電圧生成回路70,70K(異常放電検出回路78,78K)から出力される異常放電検出信号Sv1,Sv2の信号経路の共通化を図っている。
【0059】
本実施形態のASIC61は、2つ異常放電検出回路78,78Kと接続されるポートA/D1を有し、各異常放電検出回路78の各々からポートA/D1に異常放電検出信号Sv1,Sv2を入力する構成となっている。そして、異常放電検出回路78,78Kの各々は、互いに異なる昇圧回路73,73Kに接続されている。
【0060】
共通信号線SLとASIC61との間には、異常放電検出信号Svを検出するための検出抵抗101が接続されている。検出抵抗101のASIC61側の端子には、抵抗103、コンデンサ104が接続されている。抵抗103及びコンデンサ104は、一端を検出抵抗101(ASIC61のポートA/D1)に接続され、他端をグランドに接地されている。抵抗103及びコンデンサ104は、検出抵抗101で検出された異常放電検出信号Svを平滑化する。
【0061】
通常時においてトランジスタTr1はオフ状態となる。異常放電検出信号Svは、トランジスタTr1のコレクタから出力されない。また、異常放電が発生すると、トランジスタTr1はオン状態となる。異常放電検出信号Svは、トランジスタTr1からASIC61へと入力される。ASIC61は、ポートA/D1から入力した異常放電検出信号Svに基づいて、異常放電の発生の有無を検出することができる。ASIC61は、例えば、異常放電を検出すると、その旨をユーザに報知し、帯電ワイヤ42のクリーニングを促すなどの処理を行う。
【0062】
ここで、異常放電検出回路78のトランジスタTr1のオン・オフ特性、即ち、異常放電(異常放電電流)の大きさに対して異常放電検出信号Svを出力する特性(感度)は、異常放電検出回路78の回路定数などを変更することによって変更できる。例えば、ツェナーダイオード91を、ツェナー電圧(降伏電圧)の異なるものに変更する。抵抗94,95やコンデンサ96を、抵抗値や静電容量値の異なるものに変更する。あるいはトランジスタTr1をI-V特性の異なるものに変更するなどである。
【0063】
例えば、グランドを介した検出抵抗92とコロナ帯電器41との接続経路が長く、コロナ帯電器41から検出抵抗92に至るまでの異常放電電流の減衰が大きい異常放電検出回路78では、他の異常放電検出回路78に比べて感度を上げる必要が生じる。感度を上げたい場合、例えば、ツェナーダイオード91のツェナー電圧(降伏電圧)の絶対値を小さくし、トランジスタTr1をオンし易く(より小さい電流値の異常放電電流でオンするように)して異常放電検出回路78の感度を上げる。逆に、感度を下げたい場合、例えば、ツェナーダイオード91のツェナー電圧の絶対値を大きくし、トランジスタTr1をオンし難く(より大きい電流値の異常放電電流でオンするように)して異常放電検出回路78の感度を下げる。このように個々の異常放電検出回路78の感度を調整することで、異常放電の感度の平均化や、検出精度の向上を図ることができる。なお、感度の高い異常放電検出回路78の感度を下げて調整することは、全体の感度を下げることとなる。このため、感度調整は、感度の低い異常放電検出回路78の感度を上げることが好ましい。
【0064】
一方で、本実施形態の2つの異常放電検出回路78は、同一の回路構成となっている。異常放電検出回路78は、回路構成を同一としながらも、回路定数などを変更することで感度を調整することができる。このため、製造コストの低減を図りながら、各異常放電検出回路78の感度を個別に変更することが可能となっている。
【0065】
以上のように構成されたプリンタ1が実行する制御処理を、図5及び図6に基づいて詳細に説明する。図5は、ASIC61が実行する制御処理の手順を示している。制御処理は、例えば、プリンタ1の電源をオンしたときなどに開始される。以降、各処理の手順の説明において、ステップを「S」と表記する。
【0066】
図5において、まずASIC61は、帯電開始が指示されるまで待機し(S10:NO)、帯電開始が指示されると(S10:YES)、ASIC61は、目標グリッド電流値を設定する(S12)。帯電開始の指示は、例えば、印刷指示を受け付けたときやプリンタ1がウォーミングアップ動作を行うときなどになされる。目標グリッド電流値は、例えば、250μAであるが、これに限らない。目標グリッド電流値は、本実施形態では、KとK以外とで共通の値としているが、別々の値を設定するようにしてもよい。なお、目標グリッド電流値は、例えば、予め決定され、上記ROM63に記憶されたものを読み出して設定する。
【0067】
次にASIC61は、各目標グリッド電圧値(K以外)を設定する(S14)。各目標グリッド電圧値としては、グリッド電圧調整回路81Y~81Cに対してそれぞれ、例えば650V,700V,680Vが設定されるが、この具体的な数値は、これに限らない。なお、各目標グリッド電圧値も、例えば、予め決定され、ROM63に記憶されたものを読み出して設定する。
【0068】
次にASIC61は、グリッド定電流制御を開始する(S16)。具体的には、ASIC61は、帯電電圧生成回路70に対しては、グリッド電流Ig1~Ig3のうち、最も電流値の小さいグリッド電流Igが上記目標グリッド電流値に一致するように、ポートPWM1から出力するPWM信号Sp1のデューティ比を変更する。さらにASIC61は、帯電電圧生成回路70Kに対しては、グリッド電流Ig4が上記目標グリッド電流値に一致するように、ポートPWM5から出力するPWM信号Sp2のデューティ比を変更する。
【0069】
次にASIC61は、グリッド定電圧制御(K以外)を開始する(S18)。具体的には、ASIC61は、グリッド電圧調整回路81Y~81Cに対して、グリッド電圧GRID1~GRID3の各電圧値が上記各目標グリッド電圧値に一致するように、PWM信号Spp1~Spp3の各デューティ比を変更する。
【0070】
次にASIC61は、帯電電圧の保存を開始する(S20)。保存対象の帯電電圧は、具体的には、帯電電圧生成回路70が生成する帯電電圧CHGである。帯電電圧の保存処理は、例えば、1msec毎に発生するタイマ割込処理により行うようにすればよいが、この場合、S20では、ASIC61はタイマ割込処理を許可する。なお、帯電電圧は、上記RAM64に保存すればよいが、後述するS32の処理で、所定時間前に保存された帯電電圧を読み出しているので、少なくとも、所定時間前までの帯電電圧を保存しておく必要がある。
【0071】
次にASIC61は、異常放電が発生したか否かを判断する(S22)。具体的には、ASIC61は、上述のように、ポートA/D1から入力した異常放電検出信号Svに基づいて、異常放電が発生したか否かを判断する。この判断において、異常放電が発生しなかった場合(S22:NO)、ASIC61は、帯電終了の指示があるまで(S24:NO)継続して、上記S22の処理を実行し、帯電終了の指示があると(S24:YES)、ASIC61は、上記グリッド定電流制御及び上記グリッド定電圧制御(K以外)を停止させた(S26)後、制御処理を終了する。
【0072】
一方、上記S22の判断において、異常放電が発生した場合(S22:YES)、ASIC61は、上記S16で開始したグリッド定電流制御を停止する(S28)とともに、上記S18で開始したグリッド定電圧制御(K以外)停止し(S29)、さらに異常放電エラー表示を開始する(S30)。異常放電エラー表示では、ASIC61は、例えば、帯電ワイヤ42に付着したトナーをクリーニングする旨を表示部6(図1参照)に表示する。これにより、表示部6の表示を見たユーザに帯電ワイヤ42のクリーニングを促すことができる。
【0073】
次にASIC61は、S22で検出した異常放電が発生する前に保存された帯電電圧CHGの値を、RAM64から読み出す(S32)。異常放電が発生する前は、例えば、S22で“NO”と判断された時点から120msec前の時点であるが、異常放電が発生する前(直前が好ましい)の時点であれば、これに限らない。
【0074】
次にASIC61は、読み出した帯電電圧CHGの電圧値が閾値TH1以上であるか否かを判定する(S34)。ここで、帯電ワイヤ42にトナーが付着することで異常放電が発生した場合、帯電ワイヤ42の抵抗値の低下によって異常放電の発生前における帯電電圧CHGが増大する。一方で、帯電ワイヤ42に導電性の異物が付着した場合など、帯電ワイヤ42とグリッド43間の特定箇所の絶縁距離が一時的に短くなって異常放電が発生した場合、帯電ワイヤ42の抵抗値の低下が生じず、異常放電の発生前における帯電電圧CHGは、トナーの付着時に比べて増大しない可能性が高い。そこで、S34において、ASIC61は、異常放電の前に帯電電圧CHGが増大していたか否かを、閾値TH1を用いて判断する。このため、S34で用いる閾値TH1は、トナー付着に起因して異常放電前に増大した帯電電圧CHGと、異物等に起因した異常放電前の帯電電圧CHGとを識別できる値である。閾値TH1は、例えば、トナー付着に起因した異常放電前の帯電電圧CHGの電圧値(高電圧)と、異物等に起因した異常放電前の帯電電圧CHGの電圧値の中間値を用いることができる。これにより、ASIC61は、トナーの付着によって異常放電が発生したか否かを判断できる。
【0075】
S34の判断において、読み出した帯電電圧CHGの電圧値が閾値TH1未満である場合(S34:NO)、トナー付着に起因した異常放電ではなく、導電性の異物等の付着に起因した一時的な異常放電である可能性が高くなる。この場合、帯電ワイヤ42をクリーニングしたとしても、異常放電時の帯電電圧CHGに比べて、クリーニング後の通常動作時(定電流制御時)における帯電電圧CHGの低減が少ない。このため、本実施形態のASIC61は、帯電電圧CHGの電圧値が閾値TH1未満である場合(S34:NO)、ワイヤクリーニング判定処理を実行しない。なお、ワイヤクリーニング判定処理の詳細は、図6を用いて後述する。
【0076】
カバー7が開けられていない、又は開けられたものの閉じられていない場合(S36:NO)、帯電ワイヤ42のクリーニング等を実施していないか、クリーニングの途中であると考えられる。このため、ASIC61は、カバー7を開けた後に閉じられたことを検出するまで(S36:NO)、S36の処理を繰り返し実行する。
【0077】
また、カバー7が開けられた後に閉じられたことに応じて(S36:YES)、ASIC61は、S30で開始した異常放電エラー表示を停止させる(S38)。具体的には、ASIC61は、S30において帯電ワイヤ42に付着したトナーをクリーニングする旨を表示部6(図1参照)にした表示を消す。そして、ASIC61は、制御処理を終了する。
【0078】
一方、上記S34の判断において、読み出した帯電電圧CHGの電圧値が閾値TH1以上である場合(S34:YES)、ASIC61は、ワイヤクリーニング判定処理を実行した(S40)後、制御処理を終了する。
【0079】
図6は、ワイヤクリーニング判定処理の詳細な手順を示している。図6において、まずASIC61は、判定時目標帯電電圧値(K以外)を設定する(S50)。判定時目標帯電電圧値(K以外)は、上記S32で読み出した帯電電圧から所定電圧低い電圧値である。具体的には、読み出した帯電電圧が6.9kVとし、所定電圧が1kVとすると、判定時目標帯電電圧値(K以外)は、5.9kVである。この具体的な数値は、これに限らないが、各帯電器41Y~41Cで異常放電が発生しない電圧範囲内の電圧値である必要がある。
【0080】
次にASIC61は、判定時目標グリッド電圧値(K以外)を設定する(S52)。判定時目標グリッド電圧値(K以外)としては、グリッド電圧調整回路81Y~81Cのそれぞれに対して、例えば400Vが設定される。画像形成時には、上述のように、650V,700V,680Vが設定されていたのに対して、判定時には、それより低い400Vであって、さらに共通の電圧値が設定される。その理由は、各帯電器41Y~41Cで異常放電が発生しない電圧範囲内で、ワイヤクリーニング判定可能な電圧値を設定したいからであり、さらに、共通な電圧値を設定したとしても、ワイヤクリーニング判定を行うことができるからである。
【0081】
次にASIC61は、判定時目標グリッド電流値(K)を設定する(S54)。判定時目標グリッド電流値(K)としては、上記S12で目標グリッド電流値として設定した、例えば250μAより低い値、例えば200μAが設定される。このように、判定時に、画像形成時に設定される目標グリッド電流値より低い値を設定するのは、帯電器41Kで異常放電が発生しないようにするためである。
【0082】
次にASIC61は、上記S36(図5)と同様に、カバー7を開閉されたか否かに基づいて、帯電ワイヤ42のクリーニングがなされたか否かを判定する(S56)。カバー7が開けられていない、又は開けられたものの閉じられていない場合(S56:NO)、ASIC61は、S56の処理を繰り返し実行する。この間は、帯電ワイヤ42のクリーニングが未完了と考えられる。
【0083】
一方、カバー7が開けられた後に閉じられたことに応じて(S56:YES)、ASIC61は、排気ファン9の全速動作を開始させる(S58)。これは、装置本体2の内部の空気を排出させるためである。例えば、トナーのクリーニングの作業やトナーのクリーニングのついでに実施した作業で、ユーザがスプレー等によって装置本体2内をメンテナンスする可能性がある。この場合、メンテナンス直後にカバー7を閉じると装置本体2内にガスが滞留する可能性がある。滞留したガスは、プリンタ1に不具合(異常放電など)を発生させる虞がある。そこで、ASIC61は、通常の動作状態に戻るのに先立って、駆動信号DS(図2参照)を出力しモータ67を制御して排気ファン9を全速で回転させ、装置本体2内の空気を排出する。なお、ASIC61は、排気ファン9を全速で回転させなくともよい。
【0084】
次にASIC61は、帯電電圧生成回路70及びグリッド電圧調整回路81Y~81Cに対してそれぞれ、帯電電圧CHG及びグリッド電圧GRID1~GRID3の定電圧制御を開始する(S60)。具体的には、ASIC61は、帯電電圧生成回路70に対しては、帯電電圧CHGが上記判定時目標帯電電圧値(K以外)に一致するように、ポートPWM1から出力するPWM信号Sp1のデューティ比を変更する。さらにASIC61は、グリッド電圧調整回路81Y~81Cに対して、グリッド電圧GRID1~GRID3の各電圧値が上記判定時目標グリッド電圧値(K以外)に一致するように、PWM信号Spp1~Spp3の各デューティ比を変更する。
【0085】
次にASIC61は、グリッド電流(K)の定電流制御を開始する(S62)。具体的には、ASIC61は、帯電電圧生成回路70Kに対して、グリッド電流Ig4が上記判定時目標グリッド電流値(K)に一致するように、ポートPWM5から出力するPWM信号Sp2のデューティ比を変更する。
【0086】
次にASIC61は、帯電ワイヤ42Y~42Kに対してクリーニングが実施されたか否かを判断する(S64)。この判断は、具体的には、グリッド電流Ig1~Ig3がいずれも閾値Th2以上であり、かつ(&)帯電電圧CHGKが閾値Th3未満であるときに、クリーニングが実施されたとし、それ以外のときに、クリーニングが実施されていないとする。これは、帯電ワイヤ42Y~42Kのクリーニングを実施すると、帯電ワイヤ42Y~42Kのインピーダンスが下がるため、グリッド電流Ig1~Ig3の電流値は増大し、また、グリッド電流Ig4の電流値も増大することにより、帯電電圧CHGKが低下するからである。このため、異常放電時のグリッド電流Ig1~Ig3の電流値と帯電ワイヤ42Y~42Cのクリーニング後のグリッド電流Ig1~Ig3の電流値との相関関係に基づいて、閾値Th2を予め決定することができる。同様に、閾値Th3も、異常放電時の帯電電圧CHGKと帯電ワイヤ42Kのクリーニング後の帯電電圧CHGKとの相関関係に基づいて決定することができる。
【0087】
上記S64の判断において、クリーニングが実施された場合(S64:YES)、ASIC61は、上記S30(図5)で開始した異常放電エラー表示を停止させ(S66)、上記S58で開始した排気ファン9の全速動作を停止させた(S68)後、ワイヤクリーニング判定処理を終了する。
【0088】
一方、上記S64の判断において、クリーニングが実施されなかった場合(S64:NO)、ASIC61は、S64にてクリーニングが実施されなかったという判断が3回目であるか否かを判断する(S70)。この判断において、3回目でない場合(S70:NO)、ASIC61は、異常放電エラー表示を維持する(S80)。そして、ASIC61は、カバー7が開けられるまで待機し(S81:NO)、カバー7が開けられると(S81:YES)、上記S60で開始した定電圧制御を停止する(S82)とともに、上記S62で開始した定電流制御を停止し(S83)、さらに上記S68と同様にして、排気ファン9の全速動作を停止させる(S84)。さらにASIC61は、カバー7が閉じられるまで待機し(S85:NO)、カバー7が閉じられると(S85:YES)、上記S58と同様にして、排気ファン9の全速動作を開始させ(S86)、上記S82で停止した定電圧制御を再開する(S87)とともに、上記S83で停止した定電流制御を再開した(S88)後、処理を上記S64に戻す。
【0089】
一方、上記S70の判断において、3回目である場合(S70:YES)、ASIC61は、上記S82と同様にして、定電圧制御を停止する(S71)とともに、上記S83と同様にして、定電流制御を停止し(S72)、さらに上記S80と同様にして、異常放電エラー表示を維持する(S73)。そして、ASIC61は、所定時間経過するまで待機し(S74:NO)、所定時間経過すると(S74:YES)、処理を上記S66に進める。所定時間は、例えば、120secであるが、これに限らない。また、3回も、他の回数であってもよい。
【0090】
以上説明したように、本実施形態のプリンタ1は、複数の感光体31Y,31M,31Cと、帯電ワイヤ42Y,42M,42C及びグリッド43Y,43M,43Cを有し、複数の感光体31Y,31M,31Cのそれぞれを帯電させる複数の帯電器41Y,41M,41Cと、帯電ワイヤ42Y,42M,42Cに印加する電圧である帯電電圧CHGを生成し、複数の帯電器41Y,41M,41Cのそれぞれに対して帯電電圧CHGを印加する帯電電圧生成回路70と、グリッド43Y,43M,43Cに印加される電圧であるグリッド電圧GRID1~GRID3を調整する、複数のグリッド電圧調整回路81Y,81M,81Cと、グリッド43Y,43M,43Cに流れる電流であるグリッド電流Ig1~Ig3を検出する複数のグリッド電流検出回路82Y,82M,82Cと、複数の帯電器41Y,41M,41Cのそれぞれで発生する異常放電を検出する異常放電検出回路78と、ASIC61と、を備えている。
【0091】
そして、ASIC61は、画像形成時に異常放電検出回路78が異常放電を検出するまでは、複数の感光体31Y,31M,31Cの各表面電位を一定に保つために、複数の帯電器41Y,41M,41Cのグリッド43Y,43M,43C毎に所定のグリッド電圧が印加されるように複数のグリッド電圧調整回路81Y,81M,81Cを制御するとともに、複数のグリッド電流検出回路82Y,82M,82Cが検出した複数のグリッド電流Ig1~Ig3のうち、最も低い電流値のグリッド電流が一定値となるような帯電電圧を生成するように帯電電圧生成回路70を制御し、画像形成時に異常放電検出回路78が異常放電を検出後、各帯電ワイヤ42Y,42M,42Cがクリーニングされたか否かを判断するとき、複数の帯電器41Y,41M,41Cのそれぞれで異常放電が発生しない電圧範囲内の所定の帯電電圧値を生成するように帯電電圧生成回路70を定電圧制御するとともに、複数のグリッド電流検出回路82Y,82M,82Cが検出した各グリッド電流Ig1~Ig3に基づいて、各帯電ワイヤ42Y,42M,42Cがクリーニングされたか否かを判定するワイヤクリーニング判定処理を実行する。ちなみに、本実施形態において、ASIC61は、「制御装置」の一例である。
【0092】
このように、本実施形態のプリンタ1では、ワイヤクリーニング判定処理を実行するときには、複数の帯電器41Y,41M,41Cのそれぞれで異常放電が発生しない電圧範囲内の所定の帯電電圧値を生成するように帯電電圧生成回路70を定電圧制御するとともに、複数のグリッド電流検出回路82Y,82M,82Cが検出した各グリッド電流Ig1~Ig3に基づいて、各帯電ワイヤ42Y,42M,42Cがクリーニングされたか否かを判定するので、帯電ワイヤ42Y,42M,42Cのクリーニングが実行されたかどうかの判断を行ったときでも、帯電電圧CHGが過大になることを抑制することが可能となる。
【0093】
また、所定の帯電電圧値は、異常放電検出回路78,78Kが異常放電を検出したときに帯電電圧生成回路70,70Kにより生成された帯電電圧値より1kVだけ低い値である。1kVは、「所定の電圧値」の一例である。
【0094】
これにより、帯電電圧CHGが過大になることを抑制する効果をさらに高めることが可能となる。
【0095】
また、ASIC61は、ワイヤクリーニング判定処理を実行するときには、複数の帯電器41Y,41M,41Cのグリッド43Y,43M,43C毎に印加されるグリッド電圧GRID1~GRID3を、全グリッド43Y,43M,43Cに亘って共通の1つの判定時目標グリッド電圧値(K以外)であって、異常放電が検出される前のグリッド電圧GRID1~GRID3より低い値に変更して印加する。
【0096】
これにより、帯電電圧CHGが過大になることを抑制する効果をさらに高めることが可能となる。
【0097】
また、プリンタ1は、複数の感光体31Y,31M,31Cとは異なる1つの感光体31Kと、帯電ワイヤ42K及びグリッド43Kを有し、1つの感光体31Kを帯電させる1つの帯電器41Kと、1つの帯電器41K内の帯電ワイヤ42Kに印加する電圧である帯電電圧CHGKを生成し、1つの帯電器41Kに対して帯電電圧CHGKを印加する1つの帯電電圧生成回路70Kと、1つの帯電器41K内のグリッド43Kに流れる電流であるグリッド電流Ig4を検出する1つのグリッド電流検出回路82Kと、1つの帯電器41Kで発生する異常放電を検出する1つの異常放電検出回路78Kと、をさらに備えている。
【0098】
そして、ASIC61は、画像形成時に1つの異常放電検出回路78Kが異常放電を検出するまでは、1つの感光体31Kの表面電位を一定に保つために、1つの帯電器41Kのグリッド43Kに所定のグリッド電圧が印加されるように、1つの帯電電圧生成回路70Kに対して1つのグリッド電流検出回路82Kから検出されるグリッド電流が一定値となる定電流制御を行い、画像形成時に1つの異常放電検出回路78Kが異常放電を検出後、各帯電ワイヤがクリーニングされたか否かを判断するときには、1つの帯電電圧生成回路70Kに対して1つのグリッド電流検出回路82Kから検出されるグリッド電流が一定値より低い他の一定値となる定電流制御を行うとともに、1つのグリッド電流検出回路82Kが検出したグリッド電流に基づいて、帯電ワイヤ42Kがクリーニングされたか否かを判定するワイヤクリーニング判定処理を実行する。
【0099】
このように、本実施形態のプリンタ1では、ワイヤクリーニング判定処理を実行するときには、1つの帯電電圧生成回路70Kに対して1つのグリッド電流検出回路82Kから検出されるグリッド電流が一定値より低い他の一定値となる定電流制御を行うとともに、1つのグリッド電流検出回路82Kが検出したグリッド電流に基づいて、帯電ワイヤ42Kがクリーニングされたか否かを判定するので、帯電ワイヤ42Kのクリーニングが実行されたかどうかの判断を行ったときでも、帯電電圧CHGKが過大になることを抑制することが可能となる。
【0100】
また、ASIC61は、異常放電検出回路78,78Kが異常放電を検出したときには、異常放電が検出されたことを表示部6に表示する。ちなみに、表示は、「報知」の一例である。これにより、ユーザは異常放電が検出されたことを知ることができる。
【0101】
また、プリンタ1は、帯電器41Y,41M,41C,41Kを内部に配置した筐体3と、筐体3の内部の空気を排出する排気ファン9と、排気ファン9に駆動力を伝達可能なモータ67と、をさらに備え、ASIC61は、ワイヤクリーニング判定処理を実行するに際して、モータ67に駆動信号を所定時間出力する。ちなみに、排気ファン9は、「ファン」の一例である。これにより、ワイヤクリーニング判定処理を実行する前に筐体3内にガスが滞留していたとしても、そのガスを筐体3の外部に排出することができる。
【0102】
また、プリンタ1は、帯電器41Y,41M,41C,41Kを内部に配置した筐体3と、筐体3に対して開閉可能なカバー7と、カバー7の開閉状態に応じた開閉信号Sgを出力する開閉検出センサ8と、をさらに備え、ASIC61は、異常放電検出回路78,78Kが異常放電を検出したときには、開閉検出センサ8から入力する開閉信号Sgが、カバー7が開いた状態を示すハイレベルの開閉信号Sgからカバー7が閉じた状態を示すローレベルの開閉信号Sgに変化するまで待機する。ちなみに、開閉検出センサ8は、「センサ」の一例である。開閉信号Sgは、「検出信号」の一例である。ハイレベルの開閉信号Sgは、「第1信号」の一例である。ローレベルの開閉信号Sgは、「第2信号」の一例である。このように、異常放電検出回路78,78Kが異常放電を検出したときには、カバー7の開閉がなされるまで処理が止まるので、帯電ワイヤ42のクリーニングをユーザに促すことが可能となる。
【0103】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0104】
(1)上記実施形態では、K以外のY,M,Cの3色に対応する帯電器41Y~41Cに印加する帯電電圧CHGを1つの帯電電圧生成回路70により生成し、Kの色に対応する帯電器41Kに印加する帯電電圧CHGKを帯電電圧生成回路70と独立した帯電電圧生成回路70Kにより生成するようにしたが、これに限らず、Kを含めた4色に対応する帯電器41Y~41Kに印加する帯電電圧CHGを1つの帯電電圧生成回路70により生成するようにしてもよい。また、色の数は、4色に限らない。
【0105】
(2)上記実施形態では、1つの感光体31に1つの帯電器41を対応させたものを例示して説明したが、これに限定されない。本願は、1つの感光体31に対して複数のコロナ帯電器41を対応させた構成、例えば、1つの感光体31上に各色のトナー像を重ねた後、用紙Pに一括転写するプリンタ(画像形成装置)にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1…プリンタ、3…筐体、7…カバー、8…開閉検出センサ、9…排気ファン、20…画像形成部、25…転写ローラ、31…感光体、41…帯電器、42…帯電ワイヤ、43…グリッド、47…現像ローラ、61…ASIC、65…転写出力回路、66…現像出力回路、67…モータ、71…帯電電圧出力回路、72…異常放電検出回路、78…帯電電圧検出回路、81…グリッド電圧調整回路、82…グリッド電流検出回路、83…電圧検出回路、CHG…帯電電圧、Sv…異常放電検出信号、A/D1,A/D2,A/D4,A/D6,A/D8…ポート、Th1~Th3…閾値、Ig…グリッド電流、GRID…グリッド電圧、DS…駆動信号、Sg…開閉信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6