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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148197
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】発振装置
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H03B5/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056095
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】末盛 渉
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA24
5J079BA41
5J079EA02
5J079EA18
5J079FA14
5J079FB03
(57)【要約】
【課題】低消費電力化が図れ、かつ、立上り時間の短縮化が図れる、新規な構成の発振装置を提供する。
【解決手段】発振装置11aは、複数の通信装置11,13間の認証によって各通信装置間の通信が許可され、かつ、認証時に定められる周期Tの間の所定区間で情報の送受信が行われる、通信システム10に組み込まれて使用されるものである。そして、前記送受信のための基準クロック信号を以下の第1動作及び第2動作で生成する。周期Tが到来する前の第1時刻t1に、基準クロック信号生成の予備発振を誘起する第1動作と、第1時刻t1の後であって周期Tが到来する前の第2時刻t2に、動作を開始し、前記予備発振を発振元とし基準クロック信号を形成する第2動作。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置間の認証によって前記複数の通信装置のリンクが確立され、かつ、前記認証時に定められる周期Tの間に情報の送受信が行われる通信システムに、組み込まれて使用され、前記送受信のための基準クロック信号を生成する発振装置において、
前記周期Tが到来する前の第1時刻t1に、前記基準クロック信号のレベルより小さい前記基準クロック信号生成の予備発振を誘起する第1動作と、
前記第1時刻t1の後であって前記周期Tが到来する前の第2時刻t2に、動作を開始し、前記予備発振を発振元とし、少なくとも前記周期T到来時に前記基準クロック信号を形成する第2動作と、を行うことを特徴とする発振装置。
【請求項2】
前記認証後の初期動作時は、前記基準クロック信号を出力し、第1回目の前記周期Tの到来前の前記第1時刻t1から、前記第1動作及び第2動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記認証の際に前記第2動作の終了時刻としての第3時刻t3に関する情報を授受し、かつ、時刻t3到来時に前記第2動作を終了することを特徴とする請求項1又は2に記載の発振装置。
【請求項4】
この発明を実施するに当たり、前記通信システムは、ブルートゥース・クラシック(Bluetooth Classic)規格のもの、又は、ブルートゥース・ロウ・エナジー(Bluetooth Low
Energy)規格のものであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の発振装置。
【請求項5】
電源に接続された1段目のC-MOSインバータと、
前記電源にスイッチング素子を介して接続された2段目のC-MOSインバータ回路と、当該スイッチング素子と、
前記の各インバータ回路と帰還ループを構成する水晶振動子とを具える発振部であって、
前記スイッチング素子に対するオン/オフ制御信号Scに応じて、前記2段目のC-MOSインバータ回路を有効/無効にして増幅度が変更される発振部を具えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の発振装置。
【請求項6】
電源にスイッチング素子を介して接続されたC-MOSインバータ回路と、
当該スイッチング素子であって、制御信号に応じて前記C-MOSインバータ回路に対する前記電源からの注入電流を可変するスイッチング素子と、を具える発振部であって、
前記スイッチング素子に対する制御信号Scに応じて、前記注入電流が制御されて増幅度が変更される発振部を具えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の発振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低消費電力化が図れ、かつ、立上り時間が短い発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムでは、信号の授受を所望通りに行うためクロック信号が必須であり、クロック信号を生成する発振装置が必須である。また、発振装置として、低消費電力化が図れ、かつ、立上り時間が短いものが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1に、クロック信号発生回路としての水晶発振回路の、立上り時間を短縮する技術が開示されている。具体的には、1つの水晶振動子を共用する2組の発振回路を有し、一方の発振回路で振動状態にある水晶振動子を、他方の発振回路に切換え接続して動作する、水晶発振回路が開示されている(特許文献1の例えば特許請求の範囲)。この技術では、一方の発振回路で水晶振動子を予備発振の状態にしておき、他方の発振回路への切換時のトリガーも加えることで、他方の発振回路で安定な発振を短時間で得られるという(特許文献1の第2頁左欄第6~10行)
【0004】
また、特許文献2に、VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator)の起動時間を短縮する技術が開示されている。具体的には、発振器が起動されると、高速起動回路が動作して、発振器内のバラクタダイオードのキャパシタンスを最小化して、発振回路の起動時間の短縮を図っている(特許文献2の例えば段落13、図3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5-6362号公報
【特許文献2】特表2008-507894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通信システムの一種として、通信を行う複数の通信機間で認証をしてリンクを確立し、そして、認証時に決めた周期Tの間の所定区間に、情報を送受信する通信システムがある。その典型例として、ブルートゥース(Bluetooth:Bluetoothは、
Bluetooth Special Interest Group の登録商標)がある。
ブルートゥース(登録商標)は、消費電力が小さい等の利点を有しているが、さらなる低消費電力化が望まれている。従って、ブルートゥース(登録商標)においても、クロック信号を生成するための発振装置に対し、さらなる低消費電力化が図れ、かつ、立上り時間も短い発振装置が望まれる。
上記した従来技術各々は、発振回路の立上り時間の改善を図れるが、通信システムの通信アルゴリズムを考慮した、低電力化及び立上り時間の短縮化を図るものではなかった。
この出願はこのような点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、所定の通信システムの通信アルゴリズムの中での動作を考慮した、低消費電力化が図れ、かつ、立上り時間の短縮化が図れる、新規な発振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的の達成を図るため、この発明によれば、複数の通信装置間の認証によって各通信装置のリンクが確立され、かつ、前記認証時に定められる周期Tの間に情報の送受信が行われる通信システムに、組み込まれて使用され、前記送受信のための基準クロック信号を生成する発振装置において、
前記周期Tが到来する前の第1時刻t1に、前記基準クロック信号のレベルより小さい前記基準クロック信号生成の予備発振を誘起する第1動作と、
前記第1時刻t1の後であって前記周期Tが到来する前の第2時刻t2に、動作を開始し、前記予備発振を発振元とし、少なくとも前記周期T到来時に前記基準クロック信号を形成する第2動作と、を行うことを特徴とする。
【0008】
この発明を実施するに当たり、発振装置は、前記認証後の初期動作時は、基準クロック信号を出力し、第1回目の周期Tの到来前の第1時刻t1から、第1動作及び第2動作を行うものであることが好ましい。
【0009】
この発明を実施するに当たり、発振装置は、前記認証の際に前記第2動作の終了時刻としての第3時刻t3に関する情報を授受し、かつ、時刻t3到来時に発振動作を終了するものであることが好ましい。
【0010】
この発明を実施するに当たり、前記通信システムは、ブルートゥース・クラシック(Bluetooth Classic)規格のもの、又は、ブルートゥース・ロウ・エナジー(Bluetooth Low
Energy)規格のものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の発振装置によれば、周期Tが到来する前の第1時刻から周期Tが到来するまでの時間を利用して、第1動作及び第2動作による段階的な発振動作を行える。ここで、第1動作は、予備的な発振動作であるため、使用する電力は、小さくて済む。しかも、第1動作時の予備発振が、第2動作を誘起するトリガとして寄与するため、基準クロックの立上り時間の短縮化も図れる。従って、所定の通信システムの通信アルゴリズムの中での動作を考慮した、低消費電力化が図れ、かつ、立上り時間の短縮化が図れる、新規な発振装置を提供できる。
また、通信システムの動作を開始するための認証時に、第3時刻t3に関する情報を受信し、この第3時刻に基準クロック信号の出力を停止する好適例の構成の場合、基準クロック信号を必要最小限の時間だけ形成できるから、基準クロック信号を形成する発振装置のさらなる低電力化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)図、(B)図は、実施形態の発振装置を説明するための図である。
図2】(A)図は、実施形態の発振装置の通信システムとの関係を説明するためのブロック図、(B)図は実施形態の発振装置の具体例を説明するためのブロック図である。
図3】(A)図、(B)図各々は、実施形態の発振装置に具わる発振部の具体例を説明するための図である。
図4】((A)図、(B)図は、発振を説明するための図であって、特に予備発振を説明するための図である。
図5】実施形態の発振装置に具わる制御部の動作を説明するための図であり、特にデバイス1(マスタ)の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】実施形態の発振装置に具わる制御部の動作を説明するための図であり、特にデバイス2(スレーブ)の動作を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明の発振装置の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる回路構成、使用部材等は、この発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
1. 発振装置の構成の説明
先ず、図1図2及び図3を参照して、実施形態の発振装置の構成を説明する。ここで、図1(A)は、本発明の発振装置の要点を説明するためのブロック図、図1(B)は、本発明の発振装置の動作のイメージを説明するための図である、また、図2(A)は、本発明の発振装置の、通信システムとの関係の一例を説明するためのブロック図、図2(B)は、発振装置の具体的な構成例を説明するための図である。また、図3(A)、(B)は発振装置に備わる発振回路例を示した図である。
【0015】
この発明の発振装置は、所定の通信システムに組み込まれて使用されるものである。所定の通信システムとは、複数の通信装置間の認証によって各通信装置間の通信が許可され、かつ、認証時に定められる周期Tの間の所定区間で情報の送受信が行われる、通信システムである。そして、この送受信は、基準クロック信号の下で行われ、本発明の発振装置は、この基準クロックの生成を行うものである。
図1(A)、(B)の例では、デバイス1及びデバイス2の2つの通信装置で構成される通信システムに、本発明の発振装置を組み込んで使用する例を示してある。しかも、図1(A)の例では、マスタとしてのデバイス1と、スレーブとしてのデバイス2とによる例を示してある。スレーブであるデバイス2が、マスタであるデバイス1に接続要求を送ると、マスタであるデバイス1は、デバイス2を認証するか否かを判断し、認証した場合は、デバイス1は、デバイス2に通信システムの仕様を送信する。これにより、デバイス1及びデバイス2の間のリンクが確立する。
【0016】
この発明の理解を深めるため、図1中のデバイス1、デバイス2の具体例を挙げると、デバイス1は、例えばブルートゥース(登録商標)規格対応のパソコン、タブレット、スマートフォン等であり、デバイス2は、例えばブルートゥース(登録商標)規格対応のイヤホン、プリンタ、スピーカー等の種々の機器である。
また、通信の仕様とは、例えば、送受信するデータサイズ、通信回数(例えばパケット数)、通信を行う周期T等である。この通信の仕様の中に、周期Tの間ごとに行われる情報の送受信を終了する時刻(本発明でいう第3時刻t3)が含まれていても良い。この実施形態では、第3時刻t3も送信する例を後に示している。なお、第3時刻t3は、周期Tの間に送受信される情報量を送受信するために必要な時間を考慮して決める時刻であり、通信システムに応じて決められる固定値でも良いし、周期T毎で送受信の情報量に応じて決められる別々の時刻でも良い。特に、後者の場合、基準クロックを必要最低限で形成できるので、低消費電力化の観点では好ましい。なお、第3時刻t3は、次の周期Tのための第1時刻t1を超える時刻とはならない。
【0017】
そして、この発明の発振装置は、上記のようにリンクが確立されると、第1動作と第2動作との2つの連続する動作によって基準クロックを生成する。すなわち、図1(B)に示すように、周期Tが到来する前の所定の第1時刻t1に、基準クロック信号のレベルより小さい基準クロック信号生成の予備発振を誘起する第1動作と、第1時刻t1の後であって周期Tが到来する前の第2時刻t2に、動作を開始し、前記予備発振を発振元とし少なくとも周期T到来時に基準クロック信号を形成する第2動作と、を行う発振装置である。
【0018】
ただし、リンクが確立された直後、すなわち通信システムの初期の発振装置の動作は、第1時刻t1や第2時刻t2が未定の動作である(図1(B)の初期動作の区間)。従って、クロック信号が不定であると通信自体を実施できないので、この実施形態の発振装置の場合、初期動作では、基準クロックを発生する動作(図1(B)の「基準クロック動作」)をすることとしている。そして、初期動作である基準クロックを形成する動作をした後の、第1回目の周期Tが到来する直前の第1時刻t1以降は、本発明の第1動作及び第2動作を繰り返し行う。なお、第1時刻t1や第2時刻t2の検出は、例えば本発明の発振装置に備わるタイマ(図2参照)によって行える。具体的には、タイマは、上記リンク確立時を開始時刻として、時間計測を開始し、第1時刻t1、第2時刻t2、周期T及び第3時刻t3を監視する。
なお、第1時刻t1及び第2時刻t2は、例えば、発振装置に備わる発振回路の特性に応じて予め定める等、設計に応じて決めることが出来る。
【0019】
次に、本発明をより具体的に説明する。図2(A)は、本発明を、具体例により示した図である。通信システム10は、2台の装置であるマスタ11とスレーブ13とを備えている。マスタ11は、本発明に係る発振装置11aと、通信機11bとを具え、スレーブ13は、本発明に係る発振装置13aと、通信機13bとを具えている。そして、各発振装置11a、13a各々は、発振部15と、制御部17とを備えている。
発振部15は、図2(B)に示したように、発振子15aとしての水晶振動子15aと、本発明で言う第1動作15b及び第2動作15cを可能とする回路手段を備えている。第1動作15b及び第2動作15cを可能とする回路手段は、例えば図3(A)、(B)に示し、以下に説明する独特の発振回路によって構成できる。
【0020】
図3(A)に示した発振部15は、1段目のC-MOSインバータ19aと、2段目のC-MOSインバータ19bと、スイッチング素子SWと、水晶振動子19cと、帰還抵抗19dと、入力コンデンサCd及び出力コンデンサCgsとを備えている。1段目のC-MOSインバータ19aには電源Vddが接続してあるが、2段目のC-MOSインバータ19bには、スイッチング素子SWを介して電源Vddを接続してある。スイッチング素子SWは、制御部17からの制御信号Scが例えばオン状態になるとオン状態になり、その結果、2段目のC-MOSインバータ19bに電源を供給できる。従って、制御信号Scが、オン状態になるか、オフ状態になるかによって、2段目のC-MOSインバータがオン又はオフされて、C-MOSインバータの段数が変化するので、発振部の増幅度を変更できる。すなわち、1段目のC-MOSインバータ19aのみが動作している場合は、本発明で言う第1動作を実現でき、1段目のC-MOSインバータ19a及び2段目のC-MOSインバータ19b双方が動作している場合は、本発明で言う第2動作を実現できる。
【0021】
また、図3(B)に示した発振部15は、C-MOSインバータ21aと、スイッチング素子SWと、水晶振動子19cと、帰還抵抗19dと、入力コンデンサCd及び出力コンデンサCgsとを備えている。C-MOSインバータ21aは、スイッチング素子SWを介して、電源Vddに接続してある。ただし、この例の場合のスイッチング素子SWは、制御部17からの制御信号Scによって、電源VddからC-MOSインバータ21aに注入される電流量を可変できるゲート的機能を有するものとしてある。従って、電源VddからC-MOSインバータ21aに注入される電流量を変えることによって、本発明で言う第1動作又は第2動作を実現できる。
【0022】
2.第1動作(予備発振)について
本発明で言う第1動作すなわち予備発振とは、正規の発振である所望の基準クロック相当の発振に至る前の、ノイズレベルの発振状態をいう。以下詳述する。
基準クロックを生成する発振装置として使用される装置は、現状ではほとんど、水晶発振器である。水晶発振器はQ値が高いため高安定な発振源であるが、その反面、発振の立上りが遅いという欠点を持つ。水晶発振器の場合、ノイズレベルの発振状態が、ある程度続き、その後に本来の発振状態になる。
【0023】
このノイズレベルの発振の必要時間、すなわち予備発振である第1動作の必要時間を、発明者が考察したところ、例えば以下となる。図4(A)、(B)はそのための説明図であり、図4(A)はインバータ回路を用いた水晶発振器のモデル図、図4(B)はその等価回路である。
第1動作に必要な時間は、実際は、図4(B)に示した水晶発振器における相互コンダクタンスや増幅度等によって左右されるが、それでも、大体の目安として3τ~6τ程度と言える。ここで、τは下記の数1に示した式で与えられるものであり、然も、数1中のr′は、r′=r/((ω・Cds・r)2+1)で与えられるものであり、さらに、ωは発振周波数の角周波数であり、rは図4(A)に示した増幅器の抵抗値であり、Cds,R1,L1はそれぞれ図4(B)に示した等価回路定数である。
また、第2動作に必要な時間は、実際は、図4(B)に示した水晶発振器における相互コンダクタンスや増幅度等によって左右されるが、それでも、大体の目安として3τ程度である。
【数1】
【0024】
一方、水晶発振器の発振の立上りを早める方法として、水晶発振回路を駆動する際の発振回路の増幅度をその回路の極大としておき、発振振幅をモニタし、所望の振幅になったら、増幅度を下げるという方法、又は、増幅度が発振回路の極大となる区間を予め定めておき、一定時間経過後に増幅度を下げる方法等の、いわゆるAGC(Auto Gain Control)による方法がある。これらの方法は、ノイズレベルの発振状態や発振成長に要する時間を短縮できるが、その反面、消費電力が大きくなるという欠点がある。
これに対し、本発明では、所定通信システムでの通信アルゴリズムにおいて、所定の第1時刻で第1動作としての必要最低限の予備発振を例えば3τ~6τ等の回路に応じた好適な時間にし、この予備発振を元にして次の第2時刻で必要最低限の電力による本発振を誘起して所定周期Tの到来時に、基準クロックを完成させる。このため、低消費電力化が図れ、かつ、立上り時間が短い、新規な構成の発振装置を提供できる。
【0025】
3.本発明の発振装置の動作例(制御部17の動作例)
次に、この発明の理解を深めるために、実施形態の発振装置の動作例について説明する。その説明を図5及び図6を参照して行う。ここで、図5は、図2(A)に示したマスタ11の動作を示すフローチャート、図6は、図2(A)に示したスレーブ13の動作を示すフローチャートである。
【0026】
マスタは待ち受けをし(図5のステップS1)、かつ、基準クロックを起動する(図5のステップS2)と共に、スレーブからの接続要求(図6のステップS52)を監視する(図5のステップS3)。一方、スレーブも、基準クロックを起動し(図6のステップS51)、そして、接続要求をしたいときに、接続要求をマスタに送る(図6のステップS52)。
スレーブから接続要求が来ると、マスタは認証動作をし、認証が合格の場合、スレーブに対し、通信に関する仕様として、例えば、送受信するデータサイズ、通信回数(例えばパケット数)、通信を行う周期T、さらに送受信を終了する時刻である第3時刻t3等を送信する(図5のステップS4)。これにより、マスタ及びスレーブの間でリンクが確立する(図5のステップS5、図6のステップS53)
【0027】
リンクが確立したら、マスタ及びスレーブ各々は、初期動作として実行していた基準クロックを停止する(図5のステップS6、図6のステップS54)。また、リンクが確立したら、制御部17(図2(B)参照)のタイマ17aは、時間監視を開始する(図5のステップS7、図6のステップS55)
次に、タイマ17aは、第1時刻t1の到来を監視し(図5のステップS8、図6のステップS56)、第1時刻t1が到来したら、制御部17は発振部15に対し第1動作での動作をする旨の制御信号Scを出力する。この制御信号Scに応じ、例えば図3(A)又は(B)に示した発振部15は、予備発振に対応する第1動作をする(図5のステップS9、図6のステップS57)。
【0028】
次にタイマ17aは、第2時刻t2の到来を監視し(図5のステップS10、図6のステップS58)、第2時刻t2が到来したら、制御部17は発振部15に対し第2動作での動作をする旨の制御信号Scを出力する。この制御信号Scに応じ、例えば図3(A)又は(B)に示した発振部15は、基準クロック信号に対応する第2動作、すなわち基準クロックを立ちげる動作を開始する(図5のステップS11、図6のステップS59)。
次にタイマ17aは、周期Tの到来を監視し(図5のステップS12、図6のステップS60)、周期Tが到来したら、マスタ及びスレーブは目的の送受信を行う(図5のステップS13、図6のステップS61)。
次にタイマ17aは、第3時刻t3の到来を監視し(図5のステップS14、図6のステップS62)、第3時刻t3が到来したら、マスタ及びスレーブは基準クロックを停止する(図5のステップS15、図6のステップS63)。
なお、周期Tの監視において、周期Tが到来したら、タイマ17aは、次の送受信のための第1時刻t1の監視、第2時刻t2の監視、周期Tの監視、第3時刻t3の監視を平行して行う。
上記の一連の動作によって、本発明の第1動作及び第2動作や、信号授受を行う。これにより、基準クロック信号を、低消費電力で、かつ、短い立上り時間で形成できる。
【0029】
なお、上述においては、図2(A)、(B)を参照して説明したように、2台のデバイス1、デバイス2を用いた例であって、各々のデバイスが本発明の発振装置を備えた例を説明したが、この発明は上記の例に限られない。
例えば、図7(A)に示したように、3台以上のデバイス31~31Nを用いる通信システム30に対しても本発明は適用できる。具体的には、ブルートゥース(登録商標)規格におけるマルチペアリングに対しても本発明は適用できる。また、例えば図7(B)に示したように、複数台のデバイス41~41Nに対し、本発明の発振装置11aを1台共用する通信システム40に対しても本発明は適用できる。
また、上述においては、ブルートゥース(登録商標)規格の通信システムに本発明を適用する例を示したが、本発明を適用できる通信システムは、ブルートゥース(登録商標)規格の通信システムに限られず、本発明の前提条件としての通信アルゴリズムを実施している種々の通信システムで良い。
【符号の説明】
【0030】
10、30、40:実施形態の通信システム
11、13、31,31N、41,41N:デバイス(通信システムで使用のデバイス)
11a、13a:実施形態の発振装置
15:発振部
17:制御部
17a:タイマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7