(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148198
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】水晶振動片および水晶デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H03H9/19 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056096
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有路 巧
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108FF09
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG16
(57)【要約】
【課題】小型化が進んでも、容器への実装精度を高めることができる新規な構造の水晶振動片と、これを用いた水晶デバイスを提供すること。
【解決手段】水晶振動片10は、平面視矩形形状の水晶片10aと、水晶片の対向する主面に設けた第1励振用電極10b及び第2励振用電極10cと、第1励振用電極から水晶片の1つの辺10aaの一端側に及ぶ第1引出電極10dと、第2励振用電極から前記1つの辺の他端側に及ぶ第2引出電極10eと、を備えている。そして、第1引出電極及び第2引出電極の、第1の辺に沿う部分であって、水晶片の同一主面上に在る部分10da、10eaそれぞれの平面形状を、当該水晶振動片を容器に実装する際に用いる実装装置が持つ画像認識部が、所望の認識パターンを取得できるよう、互いに違えてある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で四角形状の水晶片と、前記水晶片の第1主面に設けた第1励振用電極と、前記第1主面に対向する第2主面に設けた第2励振用電極と、前記第1励振用電極から前記水晶片の第1の辺の一端側に及ぶ第1引出電極と、前記第2励振用電極から前記水晶片の前記第1の辺の他端側に及ぶ第2引出電極と、を備える水晶振動片において、
前記第1引出電極及び前記第2引出電極の、前記第1の辺に沿う部分であって、前記水晶片の同一主面上に在る部分それぞれの平面形状を、当該水晶振動片を容器に実装する際に用いる実装装置が持つ画像認識部が、所望の認識パターンを取得できるよう、互いに違えてあることを特徴とする水晶振動片。
【請求項2】
前記第1引出電極の前記第1の辺に沿う部分の、前記第1の辺に平行な方向の長さをL1と定義し、前記第2引出電極の前記第1の辺に沿う部分の、前記第1の辺に平行な長さをL2と定義し、前記第1の辺の長さをL0と定義し、前記第1の辺の長さをL0と定義したとき、
前記L1及び前記L2は、L1>L2であり、かつ、前記L1は、L1=0.25L0~0.5L0の範囲から選ばれる寸法であり、前記L2は、L2=0.1L0~0.2L0の範囲から選ばれる寸法であることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動片。
【請求項3】
前記第1引出電極の前記第1の辺に沿う部分を、
前記第1の辺に平行でかつ前記励振用電極側に位置する第1部分と、
前記第1部分に平行でかつ前記第1の辺側に位置しかつ前記第1部分より長さが短い第2部分と、からなる段付き形状を有したものとし、
前記第2の部分の長さは、当該水腫振動片を容器に固定する際に用いる導電性接着剤の前記第1の辺での周り込みによる前記第1の励振用電極と前記第2の励振用電極との短絡を防止できる寸法だけ、前記第1の部分に対し、短くしてあることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動片。
【請求項4】
前記第1部分の前記第1の辺に平行な方向の長さをL3と定義し、前記第2部分の前記第1の辺に平行な方向の長さをL4と定義し、前記第1の辺の長さをL0と定義したとき、
前記L3は、L3=0.5L0~0.7L0の範囲から選ばれる寸法であり、前記L4は、前記L3に対し、L4=0.1L3~0.5L3の範囲から選ばれる寸法であることを特徴とする請求項3に記載の水晶振動片。
【請求項5】
前記水晶片はATカットの水晶片であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の水晶振動片。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水晶振動片と、
前記水晶振動片を実装する容器と、
前記水晶振動片を前記容器に接続固定する固定手段と
を備えことを特徴とする水晶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器への実装精度を高めることができる水晶振動片及びこれを用いた水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶デバイスの一種である水晶振動子の一種に、厚み滑り振動モードで振動する水晶振動片と、これを内包する容器と、を備えるものがある。水晶振動片は、水晶片と、水晶片の表裏の面に設けた励振用電極と、励振用電極から引き出された引出電極とを備えている。
このような水晶振動子に対する小型化の要求が、益々高まっている。そのため、水晶振動片や容器も益々小型になっている。従って、水晶振動片を容器に実装する際の実装精度を高めないと、水晶振動片の容器に対する位置ずれが発生し、水晶振動子の電気的特性や耐衝撃特性等を低下させる不具合を招く。
【0003】
上記不具合を低減するため、例えば、特許文献1に、水晶片上に、励振用電極とは別に、水晶振動片の容器に対する位置決め用パターンを設け、この位置決め用パターンを利用して、水晶振動片を容器に実装する技術が記載されている(特許文献1の要約、
図5、
図7等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水晶振動子の小型化に伴い水晶片の小型化がさらに進むと、水晶片の面積は益々狭くなるため、水晶片上に励振用電極とは別に位置決め用パターンを設けることが、困難になる。
これに対し、励振用電極自体を位置決め用パターンとして利用することも考えられる。しかしその場合は、水晶振動子の小型化に伴う問題が、やはり起こる。すなわち、水晶振動子の小型化が進むと、水晶振動片を容器に実装する実装装置の水晶振動片を吸着するノズルが、励振用電極の平面形状より大きくなり、水晶振動片の位置を確認するための励振用電極の画像に、吸着ノズルの一部が入り込んでしまい(
図3参照)、正確な画像情報が得られない。
また、水晶片に励振用電極と一体に設けられ水晶片の端部に至っている引出電極を、位置決め用パターンとして利用して、水晶振動片を容器に実装することも考えられる。しかしその場合は、詳細は後述する第1比較例(
図5参照)において説明するが、引出電極の形状が単純なものでは、誤認識が生じてしまい、実装精度を高めることが出来ない。
【0006】
また、水晶片の外形自体を認識して水晶振動片の容器への位置決めを行うことも考えられる。しかしその場合、詳細は後述する第2比較例において説明するが、次のような問題が起こる。すなわち、水晶片の小型化に対応するため、水晶片の製法としてウエハ工法かつフォトリソグラフィ技術を用いた製法が主流になっている。そのため、水晶ウエハに多数の水晶振動片をマトリクス状に形成し、この水晶ウエハから各水晶振動片を折り取って個片化して使用する方法がとられる。すると、水晶振動片の折り取り部分に不定形な形状部分が生じ(
図6参照)、これが水晶振動片を容器に位置決めする精度を低下させる。
【0007】
一方、水晶振動片を容器に実装する実装装置の画像認識部として、分解能が高いものを導入する等の別の改善策も考えられるが、装置導入コストが問題になる。
上記の各問題点は、水晶振動子の小型化が進むに従い益々顕著になる。具体的には、水晶振動子のパッケージサイズで言って、1008サイズ(長辺寸法が約1mm、短辺寸法が約0.8mm)、0806サイズ(長辺寸法が約0.8mm、短辺寸法が約0.6mm)及びこれより小型の水晶振動子を製造する際に、益々顕著になる。
この出願は、上述の点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、水晶振動子の小型化が進んでも、容器への実装精度を高めることができる新規な構造の水晶振動片と、これを用いた水晶デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的の達成を図るため、この発明によれば、平面視で四角形状の水晶片と、前記水晶片の第1主面に設けた第1励振用電極と、前記第1主面に対向する第2主面に設けた第2励振用電極と、前記第1励振用電極から前記水晶片の第1の辺の一端側に及ぶ第1引出電極と、前記第2励振用電極から前記水晶片の前記第1の辺の他端側に及ぶ第2引出電極と、を備える水晶振動片において、
前記第1引出電極及び前記第2引出電極の、前記第1の辺に沿う部分であって、前記水晶片の同一主面上に在る部分それぞれの平面形状を、当該水晶振動片を容器に実装する際に用いる実装装置が持つ画像認識部が、所望の認識パターンを取得できるよう、互いに違えてあることを特徴とする。
【0009】
この発明を実施するに当たり、前記第1引出電極の前記第1の辺に沿う部分の、第1の辺に平行な方向の長さをL1と定義し、前記第2引出電極の前記第1の辺に沿う部分の、第1の辺に平行な長さをL2と定義し、前記第1の辺の長さをL0と定義したとき(
図1参照)、L1>L2であることが好ましく、かつ、L1=0.25L0~0.5L0の範囲が好ましく、より好ましくは0.35L0~0.5L0であることが良い。また、L2=0.1L0~0.2L0の範囲であることが好ましい。
【0010】
また、この発明を実施するに当たり、次のような構成としても良い。すなわち、前記第1引出電極の前記第1の辺に沿う部分を、第1の辺に平行でかつ励振用電極の側に位置する第1部分と、この第1部分に平行でかつ第1の辺の側に位置しかつ前記第1部分より長さが短い第2部分とからなる、段付き形状を有したものとしても良い(
図4参照)。
この場合、第1部分の第1の辺に平行な方向の長さをL3と定義し、第2部分の第1の辺に平行な方向の長さをL4と定義したとき、L3は,第1の辺の長さL0に対し、L3=0.4L0~0.65L0の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5L0~0.7L0の範囲であることが良い。また、前記L4は、L3に対して、L4=0.1L3~0.5L3の範囲であることが好ましい(
図4参照)。
段付き形状を有する構成の場合、水晶振動片を容器に導電性接着剤によって接続固定するときに、導電性接着剤が水晶片の第1の辺の側面から水晶片の表面側に周り込んだ場合でも、2つの引出電極間を短絡することを回避し易い。
【0011】
また、この出願の他の発明に係る水晶デバイスは、上記した本発明に係る水晶振動片と、この水晶振動片を内包する容器と、前記水晶振動片を前記容器に接続固定する固定手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の水晶振動片によれば、第1引出電極及び第2引出電極それぞれの、水晶片の第1辺に沿う部分、すなわち第1及び第2引出電極の末端側に相当する所定の部分を、上記の通り、互いに異なる所定形状にしてあるため、そうしない場合に比べ、水晶振動片を容器に実装する実装装置の画像認識部は、水晶振動片を容器に実装する際の位置決めパターンとして良好なパターンを抽出し易くなる。従って、容器への実装精度を高めることができる新規な構造の水晶振動片を実現できる。
また、この発明の水晶振動子によれば、第1引出電極及び第2引出電極それぞれの末端側に相当する所定部分を、互いに異なる所定形状とした水晶振動片を容器に実装したものであるため、水晶振動片が容器に対して所定の位置関係で実装された水晶振動子が得られる。従って、所望の電気的特性を有し、かつ、耐衝撃耐性を有した水晶振動子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)は、第1実施形態の水晶振動片10を説明するための平面図、
図1(B)はその断面図である。
【
図2】水晶振動片を容器に実装するための実装装置20の概要を説明するための図である。
【
図3】第1実施形態の水晶振動片10を、実装装置の画像認識部で認識した場合の画像を示した図である。
【
図4】第2実施形態の水晶振動片30を説明するための平面図である。
【
図5】第1比較例の説明図であって、(A)図は第1比較例の水晶振動片100の構造を説明するための平面図、(B)図は第1比較例の水晶振動片100を実装装置の画像認識部で認識した画像を示した図である。
【
図6】第2比較例の説明図であって、(A)図は第2比較例の水晶振動片200の構造を説明するための平面図、(B)図は第2比較例の水晶振動片200を実装装置の画像認識部で認識した画像を示した図である。
【
図7】実施形態の水晶振動子50を説明するための平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の水晶振動片および水晶振動子の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこれら発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる形状、寸法等は、この発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
1. 水晶振動片の実施形態の説明
本発明の水晶振動片は、平面視で四角形状の水晶片と、この水晶片の第1主面に設けた第1励振用電極と、第1主面に対向する第2主面に設けた第2励振用電極と、第1励振用電極から前記水晶片の第1の辺の近傍でかつその辺の一端側に及ぶ第1引出電極と、第2励振用電極から前記水晶片の前記1つの辺の近傍でかつその辺の他端側に及ぶ第2引出電極と、を備える水晶振動片に関するものである。
そして、本発明の水晶振動片は、第1引出電極及び第2引出電極の、前記水晶片の第1の辺に沿う部分であって、水晶片の同一主面上に在る部分(以下、所定部分と略称することもある)それぞれの平面形状を、当該水晶振動片を容器に実装する際に用いる実装装置が持つ画像認識部が、所望の認識パターンを取得できるよう、互いに違えてあることを特徴とするものである。
ここで、第1引出電極及び第2引出電極の所定部分を、実装装置が持つ画像認識部が所望の認識パターンを取得できるよう、互いに違えてあるとは、水晶振動子の位置を画像認識装置が正確に判断できるような認識パターンを与えられるように違えてある趣旨である。従って、上記思想を達成できるものであれば、種々の違え方で良いが、その理解を深めるため、以下にいくつかの実施形態を、比較例と共に、説明する。
【0016】
1-1.第1実施形態の水晶振動片
図1(A)は、第1実施形態の水晶振動片10を説明するための平面図、
図1(B)は、
図1(A)のP-P線に沿った断面図である。
この水晶振動片10は、平面視で四角形状の水晶片10aと、水晶片10aの第1主面に設けた第1励振用電極10bと、第1主面に対向する第2主面に設けた第2励振用電極10cと、第1励振用電極10bから水晶片10aの第1の辺10aaの近傍でかつこの第1の辺10aaの一端側に及ぶ第1引出電極10dと、第2励振用電極10cから前記第1の辺10aaの近傍でかつこの第1の辺10aaの他端側に及ぶ第2引出電極10eと、を備える水晶振動片である。
なお、第1引出電極10d及び第2引出電極10e各々の末端は、水晶片10aのこれら末端が形成されている主面から、第1の辺10aaの側面を経由し、水晶片10aの反対側の主面に、引き回してある。そのため、第1引出電極10d及び第2引出電極10eの末端は、水晶片10aの2つの主面に、それぞれ同様な形状および配置で存在する構造になっている。こうしておくと、水晶振動片10の表裏を気にせずに、水晶振動片10を容器に実装できるからである。
【0017】
そして、第1実施形態の場合、第1引出電極10d及び第2引出電極10eの、水晶片10aの第1の辺10aaに沿う部分であって、水晶片10aの同一主面上に在る所定部分10da、10ea(以下、所定部分と略称することもある)それぞれの平面形状を、以下のように違えてある。
すなわち、水晶片10aの同一主面上に在る第1引出電極10dの所定部分10daの、第1の辺10aaに沿う部分の長さをL1と定義し、第2引出電極10eの所定部分10eaの第1の辺10aaに沿う部分の長さをL2と定義し、第1の辺10aaの長さをL0と定義したとき(
図1(A)参照)、L1>L2であって、かつ、L1=0.25L0~0.5L0から選ばれた寸法、より好ましくは0.35L0~0.5L0から選ばれた寸法としてあり、かつ、L2=0.1L0~0.2L0から選ばれた寸法としてある。L1が0.5L0を超えてしまうと、第1励振用電極10bと第2励振用電極10cとが、水晶片10aを容器に接続固定するための導電性接着剤によって短絡する危険性が生じ、また、第1励振用電極10bと第2励振用電極10cとが、引出電極の箇所で対向することが起きて、不要な容量が生じるため、好ましくない。L1が0.2L0より小さいと、所定部分10daと所定部分10eaとの違いが生じにくいため、好ましくない。L2が0.1L0より小さいと導電性接着剤との接着に面積必要な面積が得られず、L2が0.2L0より大きいと、所定部分10daと所定部分10eaとの違いが生じにくいため、好ましくない。
ここで、水晶片10aは、厚み滑りモードで振動するものであり、典型的には、ATカット水晶片であるが、SCカットに代表される2回転カットの水晶片でも良い。
【0018】
第1実施形態の効果は次の通りである。
本発明を適用して好適な水晶片10aは小さいものである。具体的には、水晶振動子の容器の外形寸法で言っていわゆる1008サイズの水晶振動子の場合、水晶片10aの長辺寸法は0.7mm程度、短辺寸法(上記のL0は0.5mm程度であり、いわゆる0806サイズの水晶振動子の場合、水晶片10aの長辺寸法は0.6mm程度、短辺寸法は0.4mm程度というように、水晶片は小さい。このように水晶片10aが小型であるため、水晶振動片10を容器に所望の位置で実装することが容易でないため、本発明の構造が重要になる。
すなわち、L1及びL2を上記のように設定すると、直線部分が長いL1部分があるため、この水晶振動片10を画像認識装置で認識すると、L1及びL2を上記のように設定しない場合に比べて、例えばL1=L2の場合等に比べて、水晶片10aの姿勢状態を正確に把握できる。以下、実験結果によって、本発明の効果を説明する。
【0019】
<画像認識結果の説明>
次に、本発明の理解を深めるため、実装装置の画像認識部で、第1実施形態の水晶振動片10を画像認識した実験結果を説明する。
図2は、実装装置の概要図である。実装装置20は、水晶振動片10を吸着し搬送する吸着・搬送機構部20aと、水晶振動片10の姿勢状態を把握する画像認識部20bとを備えている。吸着・搬送機構部20aは鉛直方向の上側に位置し、画像認識部20bは鉛直方向の下側に位置する構造になっている。そして、吸着・搬送機構部20aが、水晶振動片10を吸着して画像認識部20bの上方に搬送すると、画像認識部20bが水晶振動片10を認識して水晶振動片10の姿勢状態を把握する。そして、その姿勢状態に応じて、吸着・搬送機構部20a自体が、図示しない水晶振動子用の容器に対し水晶振動片10が所定位置になるように面内回転する等し、そして、水晶振動片10を当該容器に置く。容器の所定位置には、導電性接着剤が予め塗布してあるため、水晶振動片10の第1の辺10aa部分が、導電性接着剤を介して容器に接着される。
【0020】
図3は、水晶振動片10を
図2に示した画像認識部で認識した画像を示した図である。認識した画像において、第1励振用電極10bの上側及び下側に生じた凸状部20xは、
図2に示した実装装置20の吸着・搬送機構部20aの吸着ノズルの画像である。すなわち、吸着ノズルが、励振用電極10bより大きいために、吸着ノズルの一部の画像が励振用電極10bの画像に入り込んでしまったものである。励振用電極自体を位置決め画像にすると、画像中にこのように吸着ノズルの画像が入り込んでしまうため、水晶振動片10の姿勢を正確に把握できないことが理解できる。これに対し、本発明の場合は、水晶振動片10の容器への位置決めパターンとして、引出電極の所定部分10daの画像領域20yを用いて、姿勢修正のための基準線20zを抽出するため、正確な姿勢情報を得ることが出来る。
【0021】
1-2.第2実施形態の水晶振動片
次に、水晶振動片の発明の第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態の水晶振動片30を説明するための平面図である。
第2実施形態の水晶振動片30の、第1実施形態の水晶振動片10と相違する点は、以下の構造部分である。
すなわち、第1引出電極の第1の辺30aaに沿う部分を、第1の辺30aaに平行でかつ励振用電極10bの側に位置する第1部分30x1と、この第1部分30x1に平行でかつ第1の辺30aaの側に位置しかつ第1部分30x1より長さが短い第2部分30x2と、からなる段付き形状部30xを有したものとしたことである。
この場合、第1部分30x1の第1の辺30aaに平行な方向の長さをL3と定義し、第2部分30X2の第1の辺に平行な方向の長さをL4と定義したとき、L3は,第1の辺の長さL0に対し、L3=0.5L0~0.7L0の範囲から選ばれる寸法とし、より好ましくは0.4L0~0.65L0の範囲から選ばれる寸法とするのが良い。また、L4は、L3に対して、L4=0.1L3~0.5L3の範囲から選ばれる寸法としてある。なお、L4をL3に対してどの程度短くするかは、後述する導電性接着剤の周り込みに起因する短絡の防止効果を考慮して決めるのが良い。
また、第1部分30x1の第1の辺30aaに直交する方向の長さをL5と定義し、第2部分30X2の第1の辺に直交する方向の長さをL6と定義したとき、L6=0.2L5~0.8L5の範囲から選ばれる寸法とすることが好ましい。このように寸法を違えておくと、水晶片10aの第1の辺10aa付近で導電性接着剤の周り込みがあっても、電極間の短絡を防止し易い。なお、L6をL5に対してどの程度短くするかは、導電性接着剤の周り込み量等を考慮して決めるのが良い。
【0022】
第2実施形態の水晶振動片30の場合、段付き形状部30xにおける第2部分30x2の長さが短いため、第1の辺30aaに沿う部分に電極が無い領域30yが生じる。そのため、水晶振動片を容器に導電性接着剤によって接続固定するときに、導電性接着剤が水晶片の第1の辺30aaの側面から水晶片10aの表面側に周り込んでも、電極が無い領域30yの作用によって、2つの引出電極間が短絡することを回避し易い。また、段付き形状であるため、画像認識の際の特徴抽出を行い易いという利点も得られる。
なお、第1実施形態の水晶振動片10及び第2実施形態の水晶振動片30の場合いずれも、励振用電極や引出電極は、周知の成膜技術及びフォトリソグラフィ技術を用いて形成できるので、第1引出電極及び第2引出電極各々の所定部分の形状は、所望の形状に容易に形成できる。
【0023】
3.比較例の説明
次に、いくつかの比較例について説明し、本発明の効果を明確にする。
(第1比較例)
図5(A)は、第1比較例の水晶振動片100の平面図、
図5(B)は第1比較例の水晶振動片100を画像認識部20b(
図2参照)で認識した際の画像を示した図である。
第1比較例の水晶振動片100は、第1引出電極の、水晶片の第1の辺100aに沿う所定部分101と、第2引出電極の、水晶片の第1の辺100aに沿う所定部分103とが、同一の平面形状および大きさを有していて、かつ、これら所定部分101,103各々の第1の辺100aに沿う方向の寸法La、Lbが,La≒Lbであって、かつ、第1の辺100aの寸法L0に対し、La≒0.3L0、Lb≒0.3L0となっているものである。
この第1比較例の水晶振動片100を画像認識部20b(
図2参照)で認識すると、認識した画像の特徴線105は、所定部分101,103の好ましくない形状に影響されて、水晶振動片100の姿勢を正確に示さないものとなってしまう。すなわち、位置決めするための基準線105が、水晶振動片100の姿勢を正確に示さないものとなってしまう。その結果、実装装置20(
図2参照)で、この水晶振動片100を容器に実装すると、位置ずれした実装となってしまう。
【0024】
(第2比較例)
図6(A)は、第2比較例の水晶振動片200の平面図、
図6(B)は第2比較例の水晶振動片200を画像認識部20b(
図2参照)で認識した際の画像を示した図である。
第2比較例の水晶振動片200は、第1の辺200aの両端付近各々に、水晶振動片200を水晶ウエハ(図示せず)から折り取った際に生じる不定形な形状部分201が、生じているものである。なお、第2比較例の水晶振動片200が、引出電極の中間部分が、励振用電極から斜め方向に引き出した状態のものとしているが、これは実験に用いた試料の都合であり、第2比較例の本質な部分ではないので、無視して良い。
この第2比較例の水晶振動片200を画像認識部20b(
図2参照)で認識すると、認識した画像の特徴203は、不定形な形状部分201の形状に影響されて、水晶振動片200の姿勢を正確に示さないものとなってしまう。その結果、実装装置20(
図2参照)で、この水晶振動片200を容器に実装すると、位置ずれした実装となってしまう。
【0025】
4.実施形態の水晶デバイスの説明
次に、本出願の他の発明である水晶デバイスの実施形態について説明する。この説明を、
図7を参照して行う。
図7(A)はこの発明の水晶デバイスの一例としての水晶振動子50の平面図、
図7(B)は実施形態の水晶振動子50の、
図7(A)中のQ-Q線に沿って切った断面図である。
実施形態の水晶振動子50は、第1実施形態の水晶振動片10を、容器51内に実装し、固定手段としての例えば導電性接着剤60によって容器51に接続固定したものである。
具体的には、容器51は、水晶振動片10を内包する平面視矩形状の凹部51aと、凹部51aを囲っている土手部51bと、凹部51aの底面の凹部51aの所定位置に設けられた接続パッド51cと、容器51の裏側底面に設けられ外部装置と接続するための外部接続端子51dと、備えたものである。容器51は、例えばセラミックパッケージによって構成できる。
【0026】
そして、容器51の凹部内に、水晶振動片10を、引出電極の所定部分10da、10eaと、接続パッド51cとが対応する位置関係で、導電性接着剤60によって固定してある。ただし、水晶振動子50を製造する際、水晶振動片10の容器51への実装は、引出電極の所定部分10daを利用して行う。そのため、引出電極の所定部分10daを利用しない場合に比べ、水晶振動片10の容器51への実装を、精度良く行える。
容器51の土手部51bに、蓋部材53(
図7(B)参照)を、封止方式に応じた方法で接合してあり、これによって、水晶振動片10を、容器51内に気密封止してある。
実施形態の水晶振動子50は、水晶振動片10を容器51に精度良く実装したものであるため、水晶振動子50が小型化された場合でも、所望の電気的特性および耐衝撃特性を得られるものである。
【0027】
なお、上記した水晶デバイスの実施形態の説明では、容器として凹部を有するものを用いた例を説明したが、容器として、接続パッドを有した平面状のベースと、水晶振動片10を内包できる空間を有したキャップ状の蓋部材とで構成した構造の容器を用いても良い。
また、上記した水晶デバイスの実施形態の説明では、単純な水晶振動子の例を挙げたが、この発明で言う水晶デバイスは、温度センサを内包する水晶デバイス等、他の構造のものも含まれる。
【符号の説明】
【0028】
10:第1実施形態の水晶振動片 10a:水晶片
10aa:水晶片の第1の辺 10b:第1励振用電極
10c:第2励振用電極 10d:第1引出電極
10da:第1引出電極の所定部分 10e:第2引出電極
10ea:第2引出電極の所定部分
L0:水晶片の第1の辺の長さ L1:第1引出電極の所定ブブの長さ
L2:第2引出電極の所定部分の長さ
20:実装装置 20a:吸着・搬送機構部
20b:画像認識部
30:第2実施形態の水晶振動片 30aa:水晶片の第1の辺
30x:段付き形状部 30x1:段付き形状部の第1部分
30x2:段付き形状部の第2部分 30y:電極が無い領域
50:実施形態の水晶デバイス(水晶振動子)
51:容器 53:蓋部材
60:導電性接着剤