(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148245
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 7/12 20060101AFI20231005BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231005BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H05K7/12 D
H05K7/20 G
H05K5/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056157
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 充希
【テーマコード(参考)】
4E353
4E360
5E322
【Fターム(参考)】
4E353AA06
4E353AA16
4E353BB02
4E353CC02
4E353CC12
4E353CC33
4E353DD03
4E353DD15
4E353DR08
4E353DR17
4E353GG40
4E360AA10
4E360AB09
4E360BB30
4E360CA02
4E360GA26
4E360GB64
4E360GB99
4E360GC02
5E322BA01
5E322BB03
5E322BC02
5E322EA01
(57)【要約】
【課題】メンテナンス性や仕様の変更にも柔軟に対応することができる延焼防止構造を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る電子機器は、筐体と、電子部品を搭載した回路ユニットと、前記筐体に配置され、前記回路ユニットを収容する収容部材と、前記収容部材の一部に対向して配置された延焼防止用のバリア部材と、前記バリア部材を前記筐体の内部で移動可能に支持する支持機構とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
電子部品を搭載した回路ユニットと、
前記筐体に配置され、前記回路ユニットを収容する収容部材と、
前記収容部材の一部に対向して配置された延焼防止用のバリア部材と、
前記バリア部材を前記筐体の内部で移動可能に支持する支持機構と
を備えた電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記バリア部材は、前記収容部材の下方に配置され、前記回路ユニットからの落下物を受ける受け面部を有する
電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記筐体は、前記バリア部材に対向する通風口が設けられた底面部を有し、
前記バリア部材は、前記ケース部材と前記通風口との間に配置される
電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記支持機構は、前記底面部からの高さが第1の高さ以上第2の高さ以下の範囲で前記バリア部材を移動可能に支持する
電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器であって、
前記底面部は、前記通風口を覆うフィルタ部材を有し、
前記バリア部材は、前記第1の高さ位置で前記フィルタ部材に接する脚部を有する
電子機器。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1つに記載の電子機器であって、
前記支持機構は、
前記筐体の底面部に設置され、前記バリア部材の一辺部側を支持する第1支持部材と、
前記筐体の底面部に設置され、前記バリア部材の前記一辺部側に対向する他の一辺部側を支持する第2支持部材と、を有する
電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器であって、
前記第1支持部材は、前記一辺部側に螺合する第1締結具を含み、
前記第2支持部材は、前記他の一辺部側に螺合し、前記第1締結具とは非同軸上に配置された第2締結具を含む
電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器であって、
上下方向を第1の軸方向、前記第1支持部材と前記第2支持部材が対向する方向を第2の軸方向、前記第1の軸方向および前記第2の軸方向に直交する方向を第3の軸方向としたとき、前記支持機構は、前記第1の軸方向、前記第3の軸方向または前記第2の軸まわりに、前記バリア部材を移動可能に支持する
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延焼防止構造を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体内に配置された電子部品などが何等かの原因で発火した場合に、筐体外への延焼を防止する構造を備えた電子機器が知られている。
例えば特許文献1には、一次側電源回路を構成する電気部品が組み付けられたプリント基板と、上記プリント基板を収納する収納ケースと、上記収納ケースを覆う外装ケースと、上記電気部品を囲むように一次電源空間を形成する延焼防止壁としての仕切り壁とを備えた制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の延焼防止構造は、筐体内に固定的に配置されている。このため、例えば、機器内部のメンテナンス時において延焼防止構造が原因で作業性に支障をきたす場合がある。また、電子機器の仕様に応じて配線量や配線の引き回しレイアウトの変更に柔軟に対応することができないという問題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、メンテナンス性の向上や仕様変更への柔軟な対応を可能にする延焼防止構造を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子機器は、筐体と、電子部品を搭載した回路ユニットと、前記筐体に配置され、前記回路ユニットを収容する収容部材と、前記収容部材の一部に対向して配置された延焼防止用のバリア部材と、前記バリア部材を前記筐体の内部で移動可能に支持する支持機構とを備える。
【0007】
本発明に係る電子機器は、筐体の内部で延焼防止用のバリア部材を移動可能に支持する支持機構を備えているため、メンテナンス作業に適した位置にバリア部材を移動させることで、メンテナンス性を高めることができる。また、配線量や配線の引き回しレイアウトの変更にもバリア部材の位置の変更で柔軟に対応できる。
【0008】
前記バリア部材は、前記収容部材の下方に配置され、前記回路ユニットからの落下物を受ける受け面部を有してもよい。
これにより、回路ユニットが発火した場合でもバリア部材の受け面部で焼損した落下部品を受け止めて、当該電子機器の設置面などへの延焼を防ぐことができる。
【0009】
前記筐体は、前記バリア部材に対向する通風口が設けられた底面部を有してもよい。前記バリア部材は、前記ケース部材と前記通風口との間に配置されてもよい。
【0010】
前記支持機構は、前記底面部からの高さが第1の高さ以上第2の高さ以下の範囲で前記バリア部材を移動可能に支持してもよい。
前記底面部は、前記通風口を覆うフィルタ部材を有してもよい。
この場合、前記バリア部材は、前記第1の高さ位置で前記フィルタ部材に接する脚部を有してもよい。
【0011】
前記支持機構は、第1支持部材と第2支持部材とを有してもよい。
前記第1支持部材は、前記筐体の底面部に設置され、前記バリア部材の一辺部側を支持する。前記第2支持部材は、前記筐体の底面部に設置され、前記バリア部材の前記一辺部側に対向する他の一辺部側を支持する。
【0012】
前記第1支持部材は、前記一辺部側に螺合する第1締結具を含んでもよい。前記第2支持部材は、前記他の一辺部側に螺合し、前記第1締結具とは非同軸上に配置された第2締結具を含んでもよい。
【0013】
上下方向を第1の軸方向、前記第1支持部材と前記第2支持部材が対向する方向を第2の軸方向、前記第1の軸方向および前記第2の軸方向に直交する方向を第3の軸方向としたとき、前記支持機構は、前記第1の軸方向、前記第3の軸方向または前記第2の軸まわりに、前記バリア部材を移動可能に支持してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メンテナンス性の向上や仕様変更への柔軟に対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器の全体を示す斜視図である。
【
図2】上記電子機器の筐体の一部を取り外して見たときの内部構造を示す斜視図である。
【
図4】上記電子機器において回路ユニットが収容される前の収容部材を示す斜視図である。
【
図5】上記筐体の一部、回路ユニットなどを取り外して見たときの上記電子機器の内部構成を示す斜視図である。
【
図6】上記電子機器におけるバリア部材および支持機構の斜視図である。
【
図7】上記バリア部材および支持機構の側面図である。
【
図8】上記バリア部材および支持機構の平面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る電子機器における筐体内部の要部正面図であって、バリア部材とそれを支持する支持機構を示している。
【
図12】上記バリア部材が最上方位置に固定された状態を示す筐体内部の要部正面図である。
【
図13】上記バリア部材が最上方位置に固定された状態を示す筐体内部の要部正面図である。
【
図14】上記バリア部材が傾斜して固定された状態を示す筐体内部の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子機器100の全体を示す斜視図である。
図2は、電子機器100の筐体10の一部を取り外して見たときの内部構造を示す斜視図、
図3はその側面図である。
図においてX軸、Y軸及びZ軸は相互に直交し、X軸方向は電子機器100の幅方向、Y軸方向は電子機器100の奥行方向、Z軸方向は電子機器100の高さ方向を示している。
本実施形態の電子機器100は、例えば、消防署の指令室に設置される操作盤に接続された指令装置である場合を例に挙げて説明する。
【0018】
[電子機器の構成]
図1および
図2に示すように、本実施形態の電子機器100は、筐体10と、回路ユニット20と、収容部材30と、バリア部材40と、支持機構50とを備える。
【0019】
(筐体)
筐体10は、正面部11、背面部12、右側面部13、左側面部14、底面部15および天面部16を有する直方体形状である。筐体10は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料で形成される。
【0020】
本実施形態において筐体10は、左側面部14、底面部15および天面部16が一体的に形成されており、正面部11、背面部12および右側面部13が個々に分離可能に構成される。
【0021】
(回路ユニット)
回路ユニット20は、電子部品を搭載した複数のプリント基板21の集合体であり、電源回路や演算回路、駆動回路を形成する。電子部品としては、CPU(Control Processing Unit)等の演算素子、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ素子のほか、コネクタ部品、電源回路用のトランジスタやダイオード等のパワー半導体部品、インダクタやキャパシタ等の受動部品などが該当し、これらの電子部品には通電時に発熱を伴う部品が含まれる。各プリント基板21は、部分的に図示する配線ケーブル22を介して上記操作盤や電源などに接続される。
【0022】
(収容部材)
収容部材30は、筐体10の内部に配置され、回路ユニット20を収容する。
図4は、回路ユニット20が収容される前の状態を示す収容部材30の斜視図である。収容部材30は、回路ユニット20を構成する複数のプリント基板21を筐体10の幅方向(X軸方向)に積層した状態で収容する(
図2参照)。
【0023】
図4に示すように、収容部材30は、直方体形状であり、右側面部31および左側面部32が矩形の額縁状の板材で形成され、底面部33および天面部34は右側面部31と左側面部32に挟まれて間隔をおいて配置された複数の板材で形成される。収容部材30は、不燃性材料、例えばステンレス鋼などの鉄系金属材料あるいはアルミニウム合金などの非鉄系金属材料で形成される。回路ユニット20(プリント基板21)は、筐体10の奥行方向(
図4において+Y方向)に沿って収容部材30へ装着され、収容部材30の内部は上下方向(Z軸方向)に空気の流通を可能とする。
【0024】
図5は、筐体10の一部、回路ユニット20、後述するバリア部材40などを取り外して見たときの電子機器100の内部構成を示す斜視図である。本実施形態では、筐体10の底面部15に、複数の通孔がX軸方向に並んで形成される複数列の通孔群hからなる通風口151が設けられ、筐体10の天面部16には回路ユニット20に電気的に接続される送風ファン161が設けられる。
【0025】
通風口151は、収容部材30の底面部33に上下方向(Z軸方向)に対向する筐体10の底面部15に設けられる。送風ファン161は、通風口151を介して筐体10の内部に外気を吸入し、吸入した外気を収容部材30の内部を通して収容部材30の天面部34に対向する筐体10の天面部16から排出する。これにより、収容部材30の内部に収容された回路ユニット20の冷却性が高められる。
【0026】
また
図4~
図6に示すように、筐体10の底面部15は、通風口151を被覆するフィルタ部材152を有する。フィルタ部材152は、通風口151とバリア部材40との間に配置される。フィルタ部材152は、通風口151から筐体10の内部へ導入される外気から異物を除去するためのもので、典型的には、合成繊維や合成樹脂などで形成される。
【0027】
(バリア部材)
図6はバリア部材40および支持機構50の斜視図、
図7はその側面図、
図8はその平面図、
図9はバリア部材40の斜視図である。
【0028】
バリア部材40は、収容部材30の一部(本実施形態では底面部33)に対向して配置された延焼防止用の板部材である。本実施形態においてバリア部材40は、収容部材30の下方に配置される。バリア部材40は、不燃性の材料で形成され、漏電や短絡、サージ等が原因で生じる回路ユニット20の発火に起因する電子機器100内の他の部品や電子機器100の外への延焼を防止する。
【0029】
なお、収容部材30の右側面部31にはその開口部を覆う金属製の板部材35が取り付けられている。この板部材35もまた、回路ユニット20の発火に起因する延焼を防止するためのバリアとして機能する。収容部材30の左側面部32にも板部材35と同様な板部材が取り付けられてもよい。
【0030】
バリア部材40は、例えばステンレス鋼などの鉄系合金あるいは比較的融点の高い非鉄系の金属材料からなる板材を
図9に示すような形態にプレス加工して形成される。バリア部材40は、回路ユニット20からの落下物を受ける受け面部41と、受け面部41の周縁部から収容部材30側に折り返して形成された壁部42とを有する。
【0031】
受け面部41は、バリア部材40の本体部に相当し、
図9に示すように、X軸方向に平行な2つの短辺部41a1,41a2とY軸方向に平行な2つの長辺部41b1,41b2とを有する矩形状に形成される。壁部42は、受け面部41の強度を高めるとともに、受け面部41からの上記落下物の転落を抑える機能を有する。
【0032】
受け面部41は、収容部材30の底面部33の面積と同等あるいはこれよりも大きな面積を有し、筐体10の底面部15から見て収容部材30の底面部33を遮蔽する。受け面部41は、収容部材30に収容された回路ユニット20が発火した場合、回路ユニット20から落下あるいは飛来する焼損部品や火花などを受け止めて、筐体10の底面部15への到達を防止する。これにより、通気口151とバリア部材40との間に配置されたフィルタ部材152への延焼、あるいは、通風口151から筐体10の外部へ燃焼物が漏れ出ることによる当該電子機器100の周囲への延焼が防止される。
【0033】
バリア部材40はさらに、第1脚部43aと、第2脚部43bとを有する。第1脚部43aおよび第2脚部43bはそれぞれ、受け面部41の2つの短辺部41a1,41a2から筐体10の底面部15に向かって上下方向(Z軸方向)に平行に延びる垂直板部431と、垂直板部431の先端(下端)から短辺方向(X軸方向)に平行に延びる水平板部432とを有する。
【0034】
第1脚部43aおよび第2脚部43bの垂直板部431は、それぞれ同一の長さで形成される。第1脚部43aの垂直板部431は、受け面部41の一方の短辺部41a1の中心から一方の長辺41b1側に偏った位置に設けられ、第2脚部43bの垂直板部431は、受け面部41の他方の短辺41a2から他方の長辺41b2側に偏った位置に設けられる(
図9参照)。このため、第1脚部43aおよび第2脚部43bは、バリア部材40の長辺方向(Y軸方向)に対向するが、各々の垂直板部431は、バリア部材40の短辺方向(X軸方向)にオフセットした位置(互いにずれた位置)に配置される。
【0035】
第1脚部43aの垂直板部431には後述する第1締結具B1が螺合するネジ孔433が設けられ、第2脚部43bの垂直板部431には後述する第2締結具B2が螺合するネジ孔433が設けられる(
図9において第1脚部43a側のネジ孔433のみ示す)。
【0036】
一方、第1脚部43aおよび第2脚部43bの水平板部432は、それぞれ同一の長さで互いに逆方向に向かって延びる。すなわち、第1脚部43aの水平板部432は、第1脚部43aの垂直板部431の先端(下端)から受け面部41の長辺部41b2に向かって延び、第2脚部43bの水平板部432は、第2脚部43bの垂直板部431の先端(下端)から受け面部41の長辺部41b1に向かって延びる。各水平板部432は、受け面部41の底面に上下方向(Z軸方向)に対向するように、各垂直板部431の内面側に設けられる。
【0037】
(支持機構)
支持機構50は、バリア部材40を筐体10の内部で移動可能に支持する。本実施形態において支持機構50は、バリア部材40を上下方向(Z軸方向)に沿って移動可能に支持する(
図7(B)参照)。
【0038】
支持機構50は、第1支持部材51aと、第2支持部材51bとを有する。第1支持部材51aは、バリア部材40の一辺部(本実施形態では一方の短辺部41a)側を支持する。第2支持部材51bは、バリア部材40の上記一辺部に対向する他の一辺部(本実施形態では他方の短辺部41a)側を支持する。第1支持部材51aおよび第2支持部材51bは、通風口151を挟んで対向するように筐体10の底面部15に設置される。
【0039】
第1支持部材51aおよび第2支持部材51bは同様に構成され、筐体10の底面部15に固定される第1固定部511と、収容部材30の底面部33に固定される第2固定部512と、第1固定部511と第2固定部512との間に形成された側面部513とをそれぞれ有する。
【0040】
第1固定部511および第2固定部512はXY平面に平行な平面形状を有し、複数のネジ部材によって筐体10の底面部15および収容部材30の底面部33にそれぞれ固定される。側面部513は、上下方向(Z軸方向)に延びる複数の板部を含む格子状に形成される。各側面部513の中央部には、上下方向(Z軸方向)に延びるガイド孔514が設けられる(
図6において第1支持部材51a側のガイド孔514のみ示す)。ガイド孔514は、側面部513を形成する複数の板部のうち中央に位置する板部に設けられる。
【0041】
第1支持部材51aはさらに、バリア部材40の一方の短辺41a側に螺合する第1締結具B1を有する。第1締結具B1はネジ部材であり、第1支持部材51aの側面部513に形成されたガイド孔514を介してバリア部材40の第1脚部43aのネジ孔433に螺合される軸部B1a(
図7(A)参照)を有する。同様に、第2支持部材51bは、バリア部材40の他方の短辺41b側に螺合する第2締結具B2を有する。第2締結具B2はネジ部材であり、第2支持部材51aの側面部513に形成されたガイド孔514を介してバリア部材40の第2脚部43bのネジ孔433に螺合される軸部B2a(
図7(A)参照)を有する。
【0042】
第1締結具B1の軸部B1aおよび第2締結具B2の軸部B2aは、長辺方向(Y軸方向)において非同軸上に配置される。上述のように、バリア部材40の第1脚部43aおよび第2脚部43b各々の垂直板部431は、バリア部材40の短辺方向(X軸方向)にオフセットした位置(互いにずれた位置)に配置される。このため、第1脚部43aおよび第2脚部43bの垂直壁部431にそれぞれ螺合する第1締結具B1および第2締結具B2は、
図8に示すように、バリア部材40の短辺方向(X軸方向)にΔXの軸間距離をもってオフセット配置(互いにずれて配置)される。ΔXの中心がバリア部材40の短辺方向(X軸方向)の重心位置と一致する位置に、脚部43a,43bがそれぞれ形成される。これにより、2つの締結具B1,B2の間でバリア部材40をY軸まわりに回転させることなく、水平姿勢で安定に保持することができる。ΔXの大きさは、バリア部材40の姿勢を安定に保持できれば特に限定されない。
【0043】
支持機構50は、
図7(B)において白抜き矢印Aで示すように、バリア部材40に対する第1締結具B1および第2締結具B2の締結を緩めることでバリア部材40の上下方向に沿った移動を可能にする。この際、第1締結具B1の軸部B1aは第1支持部材51aのガイド孔514に沿って移動し、第2締結具B2の軸部B2aは第2支持部材51bのガイド孔514に沿って移動する。
【0044】
バリア部材40は、筐体10の内部において、筐体10の底面部15からの高さが第1の高さH1以上第2の高さH2以下の範囲で移動可能に支持機構50に支持される。つまり、これら高さの差ΔH(H2-H1)に相当する量だけ、バリア部材40の高さ位置を調整できる。バリア部材40の高さ位置の調整後は、第1締結具B1および第2締結具B2の締め付け操作によってバリア部材40が調整された高さ位置に固定される。
【0045】
本実施形態において第1の高さH1は、バリア部材40の両脚部43a,43bの水平板部432がフィルタ部材152に接する高さに設定される。これにより、フィルタ部材152は、バリア部材40の両脚部43a,43bからの押圧作用によって筐体10の底面部152に保持される。一方、第2の高さH2は、バリア部材40が第1支持部材51aおよび第2支持部材51bの第2固定部512に当接する位置に相当する。
【0046】
なお、バリア部材40は、フィルタ部材152が無い状態では両脚部43a,43bを筐体10の底面部152により近づけることができるため、第1の高さH1よりも低い高さ位置に移動可能であってもよい。例えば、バリア部材40の両脚部43a,43bが筐体10の底面部152に接する位置までバリア部材40が下降可能に、ガイド孔514が形成されてもよい。
【0047】
[電子機器の作用]
以上のように構成される本実施形態の電子機器100は、回路ユニット20を収容する収容部材30の底面部33に対向して配置されたバリア部材40を備えているため、例えば漏電や短絡、サージ、電子部品の劣化等を原因とする回路ユニット20の発火が生じたとしても、バリア部材40によって収容部材30の周囲への延焼を防止することができる。特に本実施形態では、バリア部材40が収容部材30の下方に配置されているため、回路ユニット20からの落下物や回路ユニット20からの火花等をバリア部材40の受け面部41で適切に受け止めることができる。これにより落下物や回路ユニット20からの火花等がバリア部材40の下方に配置されたフィルタ部材152やその下の通風口151の外側の構造物、さらには配線ケーブル22等へ接触することを防ぐことができる。
【0048】
また本実施形態によれば、筐体10の内部でバリア部材40を移動可能に支持する支持機構50を備えているため、電子機器100の使用/非使用時に応じてバリア部材40を任意の高さ位置に調整することができる。
【0049】
すなわち、電子機器100の使用時においては、バリア部材40は、
図7(B)に実線で示す第1の高さH1の位置で支持機構50に支持される。この状態では、フィルタ部材152は、バリア部材40の両脚部43a,43bと筐体10の底面部15との間で挟持される。
【0050】
一方、例えば電子機器100のメンテナンス時においては、バリア部材40は、
図7(B)に二点鎖線で示す第2の高さH2の位置で支持機構50に支持される。電子機器100のメンテナンス作業は、例えば
図2に示すように、正面部11、背面部12および右側面部13がそれぞれ取り外された状態で行われる。
【0051】
バリア部材40が第2の高さH2の位置に支持された状態では、受け面部41の位置が電子機器100の使用時よりも高い位置にあるため、受け面部41と筐体10の底面部15との間の空間が広くなる。これにより、配線ケーブル22の引き回し作業が容易となり、メンテナンス作業性の向上を図ることができる。また、フィルタ部材152の交換や通風口151の清掃なども容易に行うことができる。さらに、仕様の変更等によりプリント基板21の増設に伴う配線ケーブル22の本数の増加や配線ケーブル22の引き回しレイアウトの変更にも柔軟に対応できる。
【0052】
また本実施形態によれば、バリア部材40が第1の高さ位置H1でフィルタ部材152に接する第1脚部43aおよび第2脚部43bを有するため、フィルタ部材152を筐体10の底面部152へ固定するための別途の固定手段を必要とすることなく、フィルタ部材152を、通風口151を被覆する位置に安定に保持できる。
【0053】
また本実施形態によれば、支持機構50がバリア部材40の対向する2辺をそれぞれ支持する第1支持部材51aおよび第2支持部材51bを有するため、簡素な構成でバリア部材40を任意の高さ位置に調整可能に支持することができる。特に、第1締結具B1および第2締結具B2の締め付け量の調整のみでバリア部材40の高さ位置を可変に設定できるので、バリア部材40の位置の変更を容易に行うことができる。さらに、これら第1締結具B1および第2締結具B2各々の軸部B1,B2aが長辺方向(Y軸方向)において非同軸上に配置されるため、2本の締結具B1,B2のみでバリア部材40をその長辺に平行な軸(Y軸)まわりに傾動させることなく安定した姿勢に保持できる。
【0054】
<第2の実施形態>
図10は本発明の第2の実施形態に係る電子機器200における筐体10内部の要部正面図であって、バリア部材240とそれを支持する支持機構250を示している。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0055】
バリア部材240は、その両短辺部41a1,41a2に設けられた壁部42のうち、一方の長辺部41b1側に位置する壁部42に上方側へ突出する突出片44が形成されている点で、第1の実施形態のバリア部材40と異なる。各短辺部41a1,41a2の突出片44は、バリア部材240の長辺方向(Y軸方向)に対向し、後述する軸部材B3aが貫通する貫通孔を有する。
【0056】
支持機構250は、第1支持部材251aと、第2支持部材251bとを有する。第1支持部材251aおよび第2支持部材251bは、バリア部材240を挟んでY軸方向に対向して筐体10の底面部15に設置される。第1支持部材251aの側面部513には、バリア部材240の第1脚部43aに螺合する第1締結具B1の軸部B1aが貫通するガイド孔514aが形成される。第2支持部材251bの側面部513には、バリア部材240の第2脚部43bに螺合する第2締結具B2の軸部B2aが貫通するガイド孔514bが形成される。第1締結具B1および第2締結具B2は、第1の実施形態と同様に、互いにX軸方向にオフセットした位置(互いにずれた位置)に配置され、このため第1支持部材251aおよび第2支持部材251bの両側面部513に形成されたガイド孔514a,514bもX軸方向にオフセットした位置(互いにずれた位置)に配置される(
図10参照)。
【0057】
第1支持部材251aおよび第2支持部材251bはさらに、Y軸方向に延びる軸部材B3aが貫通するガイド孔514cを有する。軸部材B3aは、バリア部材240の各短辺部41a1,41a2に形成された突出片44を貫通する。軸部材B3aの両端部は、第1支持部材251aの側面部513に形成されたガイド孔514cと、第2支持部材251bの側面部513に形成されたガイド孔514cにそれぞれ支持される。各ガイド孔514cは、Y軸方向に対向し、Y軸方向から見たときにそれぞれ同一の形状に形成される。
【0058】
図11は、支持機構250のY軸方向から見た正面図である。
第1支持部材251aに形成されるガイド孔514aは、第1孔部71aと、第2孔部72aと、第3孔部73aとを有し、第1締結具B1の軸部B1aが第1孔部71a、第2孔部72aおよび第3孔部73cに沿って移動可能に形成される。第1孔部71aは、上下方向(Z軸方向)に沿って延び、第2孔部72aは、第1孔部71aの上端から図中左方側(筐体10の左側面部14側)に幅方向(X軸方向)に沿って延び、第3孔部73aは、第2孔部72aの先端から図中左下方向に斜めに傾斜する。
【0059】
第2支持部材251bに形成されるガイド孔514bは、第1孔部71bと、第2孔部72bと、第3孔部73bとを有し、第2締結具B2の軸部B2aが第1孔部71b、第2孔部72bおよび第3孔部73bに沿って移動可能に形成される。第1孔部71bは、上下方向(Z軸方向)に沿って延び、第2孔部72bは、第1孔部71bの上端から図中左方側(筐体10の左側面部14側)に幅方向(X軸方向)に沿って延び、第3孔部73bは、第2孔部72bの先端から図中左下方向に斜めに傾斜する。第3孔部73bは、ガイド孔514aの第3孔部73aと比較して長く、かつ、上下方向に対する傾斜角がやや小さく形成される。つまり、これら第3孔部73a,73bは、バリア部材240が所定位置において軸部材B3aを中心に所定角度傾斜させることができる長さおよび角度でそれぞれ形成される(
図14参照)。
【0060】
第1支持部材251aおよび第2支持部材251bの双方に形成されるガイド孔514cは、第1孔部71cと、第2孔部72cとを有し、軸部材B3aが第1孔部71cおよび第2孔部72cに沿って移動可能に形成される。第1孔部71cは、上下方向(Z軸方向)に沿って延び、第2孔部72cは、第1孔部71cの上端から図中左方側(筐体10の左側面部14側)に幅方向(X軸方向)に沿って延びる。
【0061】
本実施形態の電子機器200において、支持機構250は、バリア部材240を筐体10の上下方向(Z軸方向、第1の軸方向)と幅方向(X軸方向、第3の軸方向)への移動、および、その奥行方向(Y軸方向、第2の軸方向)に平行な軸まわりの移動(回動)が可能にバリア部材240を支持する。バリア部材240は、第1締結具B1および第2締結具B2の締め付けを緩めることでガイド孔514a,514b,514cに沿って移動可能である。バリア部材240の高さ位置の調整後は、第1締結具B1および第2締結具B2の締め付け操作によってバリア部材240が調整された高さ位置に固定される。
【0062】
図10は、バリア部材240が最下方位置(上記第1の高さH1の位置に相当)に固定された状態を示している。このとき、第1締結具B1の軸部B1aはガイド孔514aの第1孔部71aの下端に位置し、第2締結具B2の軸部B2aはガイド孔514bの第1孔部71bの下端に位置し、軸部材B3aはガイド孔514cの第1孔部71cの下端に位置する。電子機器200の使用時は、この位置にバリア部材240が固定される。このとき、バリア部材240の両脚部43a,43bで筐体10の底面部15上に配置されたフィルタ部材(図示略)が保持される。
【0063】
図12は、バリア部材240が最上方位置(上記第2の高さH2の位置に相当)に固定された状態を示している。このとき、第1締結具B1の軸部B1aはガイド孔514aの第1孔部71aの上端に位置し、第2締結具B2の軸部B2aはガイド孔514bの第1孔部71bの上端に位置し、軸部材B3aはガイド孔514cの第1孔部71cの上端に位置する。
【0064】
図13は、バリア部材240を
図12に示す位置からX軸方向に沿って筐体10の左側面部14側に移動させたときの状態を示している。このとき、第1締結具B1の軸部B1aはガイド孔514aの第2孔部72aの同図において左端に位置し、第2締結具B2の軸部B2aはガイド孔514bの第2孔部72bの同図において左端に位置し、軸部材B3aはガイド孔514cの第2孔部72cの同図において左端に位置する。
【0065】
図12および
図13に示すように、バリア部材240は第2の高さH2の位置において筐体10の幅方向(X軸方向)に移動できる。このため、電子機器200のメンテナンス時や仕様変更時において、バリア部材240を筐体10の左側面部14側に移動させることで、配線ケーブル22の直上の作業空間を確保し、これにより配線の引き回し作業性を向上させることができる。なお、仕様変更の態様によってはバリア部材の両脚部43a,43bがフィルタ部材152を保持する機能を果たせない場合があるが、この場合は、フィルタ部材152を保持するための部材を別途用意すればよい。
【0066】
図14はさらに、バリア部材240を
図13に示す位置から軸部材B3aを中心として同図において時計まわりに傾斜させたときの状態を示している。このとき、第1締結具B1の軸部B1aはガイド孔514aの第3孔部73aの同図において下端に位置し、第2締結具B2の軸部B2aはガイド孔514bの第3孔部73bの同図において左端に位置し、軸部材B3aはガイド孔514cの第2孔部72cの同図において左端に位置する。バリア部材240の水平方向に対する最大傾斜角度は特に限定されず、例えば10°~20°である。
【0067】
図14に示すように、バリア部材240はその長辺方向(Y軸方向)のまわりに傾斜する方向へ移動させることができるため、バリア部材240の受け面部41に溜まった異物を容易に除去することができる。これにより、電子機器200のメンテナンス作業性を向上させることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
例えば以上の実施形態では、電子機器100,200として、消防用の指令室に設置される操作盤に接続されたコントローラを例に挙げて説明したが、勿論これに限られず、延焼防止構造を備えた電子機器全般において本発明は適用可能である。
【0070】
また以上の実施形態では、バリア部材40,240が収容部材30の下方に配置されたが、これに限られず、収容部材30の側方などの位置に配置されてもよい。また、バリア部材40,240が矩形の板状に形成されたが、これに限られず、円形や台形など、配置場所に応じて任意の形状に形成されてもよい。例えば、収容部材30に配置される複数のプリント基板21のうち、バリア部材で被覆する必要がない基板がある場合には、当該基板を外部へ露出させる切り欠きや開口を有する形状にバリア部材が形成されてもよい。
【0071】
また以上の実施形態では、通風口151が筐体10の底面部15に設けられたが、これに限られず、筐体10の正面部11、背面部12、右側面部13、左側面部14あるいは天面部16に設けられてもよい。送風ファン161についても同様に、天面部16以外の筐体10の他の面に設けられてもよい。
【0072】
さらに以上の実施形態では、支持機構50,250においてバリア部材40,240が2つの締結具B1,B2で支持あるいは固定されたが、3つ以上の締結具が用いられてもよい。また、バリア部材20,240を支持、固定する第1締結具B1および第2締結具B2としてネジ部材を用いたが、これに限られず、例えばクリップ部材やマグネットなどの他の締結具が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…筐体
20…回路ユニット
22…配線ケーブル
30…収容部材
40,240…バリア部材
41…受け面部
43a,43b…脚部
50…支持機構
51…第1支持部材
52…第2支持部材
514,514a,514b,514c…ガイド孔
100,200…電子機器
152…フィルタ部材
B1…第1締結具
B2…第2締結具
B3a…軸部材