(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148246
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】同報無線システムおよび同報無線システム用の親局設備
(51)【国際特許分類】
H04H 20/59 20080101AFI20231005BHJP
【FI】
H04H20/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056158
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亜美
(72)【発明者】
【氏名】中谷 豊
(57)【要約】
【課題】局設備から送信される地区ごとに異なる情報を当該各地区の拡声子局で放送する場合において、各地区での放送の即時性を失うことなく音声情報を伝達することができる同報無線システムおよび同報無線システム用の親局設備を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る同報無線システムは、親局設備と、屋外に設置された複数の拡声子局とを備え、前記親局設備から前記複数の拡声子局へ送信された音声情報を前記複数の拡声子局から放送する同報無線システムであって、前記親局設備は、任意の数の単語を一分割単位としてそれぞれ分割された第1の音声情報と第2の音声情報とを前記一分割単位で交互に送信する送信機を有し、前記複数の拡声子局は、前記第1の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第1の拡声子局と、前記第2の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第2の拡声子局と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局設備と、屋外に設置された複数の拡声子局とを備え、前記親局設備から前記複数の拡声子局へ送信された音声情報を前記複数の拡声子局から放送する同報無線システムであって、
前記親局設備は、任意の数の単語を一分割単位としてそれぞれ分割された第1の音声情報の音声データと第2の音声情報の音声データとを前記一分割単位で交互に送信する送信機を有し、
前記複数の拡声子局は、前記第1の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第1の拡声子局と、前記第2の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第2の拡声子局とを含む
同報無線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の同報無線システムであって、
前記親局設備は、前記第1の音声情報の音声データである第1の音声データと前記第2の音声情報の音声データである第2の音声データとを生成する音声情報生成部と、前記第1の音声データと前記第2の音声データとを前記一分割単位で前記送信機から交互に送信させる制御部と、をさらに有する
同報無線システム。
【請求項3】
請求項2に記載の同報無線システムであって、
前記音声情報生成部は、前記第1の音声情報および前記第2の音声情報を文節単位で分割することで、前記第1の音声データおよび前記第2の音声データを生成する
同報無線システム。
【請求項4】
請求項3に記載の同報無線システムであって、
前記親局設備は、前記第1の音声情報および前記第2の音声情報のテキストデータを生成する入力部をさらに有し、
前記音声情報生成部は、前記テキストデータに含まれる所定の記号を基準に前記第1の音声情報および前記第2の音声情報を分割する
同報無線システム。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1つに記載の同報無線システムであって、
前記送信機は、前記一分割単位の前記第1の音声データおよび前記一分割単位の前記第2の音声データをそれぞれ所定のデータ単位で送信し、
前記制御部は、前記第1の音声データの各データ単位に付加され前記第1の拡声子局を吹鳴させる第1の制御データと、前記第2の音声データの各データ単位に付加され前記第2の拡声子局を吹鳴させる第2の制御データとを生成する
同報無線システム。
【請求項6】
請求項5に記載の同報無線システムであって、
前記第1の拡声子局は、前記第1の制御データに基づいて前記第1の音声データを再生し、
前記第2の拡声子局は、前記第2の制御データに基づいて前記第2の音声データを再生する
同報無線システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の同報無線システムであって、
前記第2の音声情報は、前記第1の音声情報とは異なる内容の音声情報である
同報無線システム。
【請求項8】
請求項1に記載の同報無線システムであって、
前記送信機は、任意の数の単語を一分割単位としてそれぞれ分割された第1の音声情報の音声データと第2の音声情報の音声データと第3の音声情報の音声データとを順に送信し、
前記複数の拡声子局は、前記第3の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第3の拡声子局をさらに含む
同報無線システム。
【請求項9】
第1の拡声子局と第2の拡声子局とを含む屋外に設置された複数の拡声子局へ音声情報を送信する同報無線システム用の親局設備であって、
前記第1の拡声子局から放送される第1の音声情報と前記第2の拡声子局から放送される第2の音声情報とをそれぞれ、任意の数の単語を一分割単位として複数の音声データに分割して、前記第1の音声情報の音声データと前記第2の音声情報の音声データとを一分割単位で交互に送信する送信機を備える
同報無線システム用の親局設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、屋外に設置された複数のスピーカを用いて防災情報等の放送を行う同報無線システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
市町村などにおける防災無線放送には、同報無線システムが広く運用されている。同報無線システムは、親局設備から屋外の各所に設置された複数の無線拡声子局へ同時配信された音声情報を、各無線拡声子局から防災地点や住民宅へ放送する情報伝達手段の一つである。このような目的から、同報無線システムには、各無線拡声子局がカバーするエリアの住民に放送内容が明確かつ正確に伝達されることが望まれる。このような目的を達成するための技術として、例えば特許文献1に記載の防災無線システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状の防災無線では、同報装置である特性上音声を親局設備から各拡声子局へ一斉に放送するので、同時刻に異なる内容の放送ができない。したがって従来は、複数地区(例えば、A地区、B地区)にそれぞれ異なる放送を行う場合、A地区への放送後に、B地区への放送を順次実施していた。しかしながら、B地区の拡声子局での放送は即時性が失われてしまうので、例えば緊急避難情報等の緊急性のある放送内容の場合には不都合が生じることになる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、親局設備から送信される地区ごとに異なる情報を当該各地区の拡声子局で放送する場合において、各地区での放送の即時性を失うことなく音声情報を伝達することができる同報無線システムおよび同報無線システム用の親局設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る同報無線システムは、親局設備と、屋外に設置された複数の拡声子局とを備え、前記親局設備から前記複数の拡声子局へ送信された音声情報を前記複数の拡声子局から放送する同報無線システムであって、
前記親局設備は、任意の数の単語を一分割単位としてそれぞれ分割された第1の音声情報と第2の音声情報とを前記一分割単位で交互に送信する送信機を有し、
前記複数の拡声子局は、前記第1の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第1の拡声子局と、前記第2の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第2の拡声子局とを含む。
【0007】
この同報無線システムにおいては、親局設備が第1の音声情報および第2の音声情報を一分割単位で交互に送信することで、第1の拡声子局および第2の拡声子局はこれら第1の音声情報および第2の音声情報を一分割単位で交互に放送する。これにより、親局設備から送信される地区ごとに異なる情報を当該各地区の拡声子局で放送する場合においても、各地区での放送の即時性を失うことなく音声情報を伝達することができる。
【0008】
前記親局設備は、前記第1の音声情報の音声データである第1の音声データと前記第2の音声情報の音声データである第2の音声データとを生成する音声情報生成部と、前記第1の音声データと前記第2の音声データとを前記一分割単位で前記送信機から交互に送信させる制御部と、をさらに有してもよい。
【0009】
前記音声情報生成部は、前記第1の音声情報および前記第2の音声情報を文節単位で分割することで、前記第1の音声データおよび前記第2の音声データを生成してもよい。
【0010】
前記親局設備は、前記第1の音声情報および前記第2の音声情報のテキストデータを生成する入力部をさらに有し、前記音声情報生成部は、前記テキストデータに含まれる所定の記号を基準に前記第1の音声情報および前記第2の音声情報を分割してもよい。
【0011】
前記送信機は、前記一分割単位の前記第1の音声データおよび前記一分割単位の前記第2の音声データをそれぞれ所定のデータ単位で送信し、
前記音声情報生成部は、前記第1の音声データの各データ単位に付加され前記第1の拡声子局を吹鳴させる第1の制御データと、前記第2の音声データの各データ単位に付加され前記第2の拡声子局を吹鳴させる第2の制御データとをさらに生成してもよい。
【0012】
前記第1の拡声子局は、前記第1の制御データに基づいて前記第1の音声データを再生し、前記第2の拡声子局は、前記第2の制御データに基づいて前記第2の音声データを再生してもよい。
【0013】
前記第2の音声情報は、前記第1の音声情報とは異なる内容の音声情報であってもよい。
【0014】
前記送信機は、任意の数の単語を一分割単位としてそれぞれ分割された第1の音声情報の音声データと第2の音声情報の音声データと第3の音声情報の音声データとを順に送信し、前記複数の拡声子局は、前記第3の音声情報の音声データを前記一分割単位で放送する第3の拡声子局をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明の一形態に係る同報無線システム用の親局設備は、第1の拡声子局と第2の拡声子局とを含む屋外に設置された複数の拡声子局へ音声情報を送信する同報無線システム用の親局設備であって、
前記第1の拡声子局から放送される第1の音声情報と前記第2の拡声子局から放送される第2の音声情報とをそれぞれ、任意の数の単語を一分割単位として複数の音声データに分割して、前記第1の音声情報の音声データと前記第2の音声情報の音声データとを一分割単位で交互に送信する送信機を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、親局設備から送信される地区ごとに異なる情報を当該各地区の拡声子局で放送する場合において、各地区での放送の即時性を失うことなく正確に音声情報を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る同報無線システムの概略構成図である。
【
図2】従来の同報無線システムの動作手順を示す図である。
【
図3】
図1の同報無線システムにおける親局設備において作成される音声ファイルの一例を示す図である。
【
図4】上記親局設備から送信されるデータの構造を示す概念図である。
【
図5】拡声子局を制御するための制御データの一例を示す図である。
【
図6】
図1の同報無線システムの動作例を示すシーケンス図である。
【
図7】従来の同報無線システムの動作例を示す説明図である。
【
図8】
図1の同報無線システムの動作例を示す説明図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る同報無線システムの概略構成図である。
【
図10】
図9の同報無線システムの親局設備において実行される音声ファイルの作成手順を示す説明図である。
【
図11】拡声子局を制御するための制御データの一例を示す図である。
【
図12】
図9の同報無線システムの動作例を示す説明図である。
【
図13】
図9の同報無線システムの他の動作例を示す説明図である。
【
図14】
図9の同報無線システムのさらに他の動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
<第1の実施形態>
[基本構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る同報無線システムの概略構成図である。
本実施形態の同報無線システム100は、親局設備10と、屋外に設置された複数の拡声子局20(20A,20B)を備える。同報無線システム100は、親局設備10から各拡声子局20へ音声データを一斉配信し、配信された音声データの再生音である音声情報を拡声子局20から放送する。同報無線システム100は、例えば、地域住民へ防災情報や行政情報を伝達する防災行政無線システムとして運用される。
【0020】
親局設備10は、例えば、市役所等の行政機関、あるいは、学校や公民館等の公共施設に設置される。拡声子局20は、市区町村が管轄する地域ごとに少なくとも1つずつ設置される。1つの拡声子局20が音声を伝達できる範囲である音達範囲あるいはサービスエリアは、各拡声子局20において異なっていてもよいし、一部が重複していてもよい。
【0021】
なお、上記構成に加えて、親局設備10からの通信を拡声子局20へ中継する中継局が設置されてもよい。また、拡声子局20の設置数は複数であれば特に限定されず、本実施形態では2機(第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20B)を例に挙げて説明するが、勿論、3機以上であってもよい。以下の説明では、個別に説明する場合を除き、第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bを拡声子局20と総称する。
【0022】
親局設備10は、操作卓11と、送信機12と、親局制御装置13とを有する。
【0023】
操作卓11は、入力部111と、表示部112とを有する。操作卓11は、送信機12が設置される施設と同一の施設に配置される場合に限られず、送信機12が設置される施設とは異なる施設に配置されてもよい。
【0024】
入力部111は、オペレータの入力操作により、各拡声子局20で放送される音声情報のテキストデータを生成する。入力部111は、タッチパネルやマウス、キーボードのほか、音声入力用のマイクロフォンなどを含む。表示部112は、入力部111で生成された各種情報を表示する画面を含む。
【0025】
送信機12は、親局制御装置13から制御指令を受けて、親局制御装置13において生成された音声データを各拡声子局20へ無線送信する通信装置である。送信機12は、上記音声データを所定の音声コーデックに符号化する変調器などを含む。
【0026】
親局制御装置13は、親局設備10の動作を統括的に制御する。例えば親局制御装置13は、入力部111で生成された音声情報のテキストデータを基に、音声合成エンジンを用いて生成した音声データ(音声信号)を含む音声ファイルを作成する。親局制御装置13はまた、生成した音声データを各拡声子局20へ送信するための制御指令を送信機12へ出力する。この制御指令には、各拡声子局20に対して、吹鳴またはミュート(消音)を個別に指示する制御データが含まれる。
【0027】
なお親局制御装置13は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のコンピュータに用いられるハードウェア要素および必要なソフトウェアにより実現され得る。親局制御装置13の詳細については、後述する。親局制御装置12は、操作卓11の一部であってもよい。
【0028】
拡声子局20は、受信機21と、拡声器22と、イコライザ23と、子局制御装置24とを有する。
【0029】
受信機21は、親局設備10から送信される音声データを受信する通信装置である。受信機21は、受信した音声データをデコードする復調器を有する。なお、上記復調器は、拡声器22あるいは子局制御装置24が備えていてもよい。
【0030】
拡声器22は、受信機21で受信した音声データを再生するスピーカである。拡声器22は、各拡声子局20に少なくとも1つ設置される。拡声器22は、音声データの再生音(音声情報)の音圧レベルを増幅させる増幅器を含む。拡声器22は、あらかじめ設定された音達範囲にわたって音声情報を伝達できる音圧レベルで音声データを再生する。
【0031】
拡声器22の数や種類は特に限定されず、単一の点音源あるいは線音源スピーカであってもよいし、複数の点音源あるいは線音源スピーカであってもよいし、点音源および線音源を同時に含む複数のスピーカであってもよい。なお、点音源とは、例えばストレートホーン型のような一般的な特性を有するスピーカをいい、線音源とは、例えばラインアレイ型のような点音源よりも高音域を強調した特性を有するスピーカをいう。
【0032】
イコライザ23は、子局制御装置24からの制御指令に基づき、拡声器22で再生される音声データの周波数特性を変更する音響機器である。イコライザ23は、音声データの特定の周波数帯域を強調し、あるいは減衰させることで、拡声器22の音達範囲にわたって音声の可聴性が向上するように音声情報の伝達特性を改善する。なお、イコライザ23は必要に応じて省略されてもよい。
【0033】
子局制御装置24は、拡声子局20全体の動作を統括的に制御する。子局制御装置24は、後述するように、親局設備10の送信機12から送信される音声データに含まれる制御データに基づいて、拡声器22の吹鳴およびミュート(消音)の切り替え制御を実行する。
【0034】
なお子局制御装置24は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のコンピュータに用いられるハードウェア要素および必要なソフトウェアにより実現され得る。
【0035】
現状の防災無線では、同報装置である特性上音声データを親局設備から各拡声子局へ一斉に送信するので、同時刻に異なる内容の放送ができない。したがって従来は、複数地区(例えば、A地区、B地区)にそれぞれ異なる放送を行う場合、
図2に示すように、A地区への放送後に、B地区への放送を順次実施していた。この場合、A地区への放送開始から終了までに5分を要する場合、B地区への放送開始がA地区の放送開始から5分遅れることになる。このためB地区の拡声子局での放送は即時性を失い、例えば緊急避難情報等の緊急性のある放送内容の場合には不都合が生じることがある。
なおその回避策として、拡声子局や戸別受信機にそれぞれ放送内容を事前に録音させておき、同時刻に再生指示を行うことで、複数地区へ異なる放送を実施することも可能である。しかしながらこの方法では、すべての拡声子局あるいは戸別受信機に録音機能を搭載する必要があるだけでなく、事前録音が必要なため即時放送には対応できず(突発的に発生する事象に対応しきれない)、予約放送(時報など)だけ対応が可能、といった問題がある。
【0036】
このような現状を踏まえて、本実施形態の同報無線システムは、親局設備から送信される地区ごとに異なる情報を当該各地区の拡声子局で放送する場合において、各地区での放送の即時性を失うことなく音声情報を伝達することを目的とする。
【0037】
[同報無線システム]
続いて、本実施形態の同報無線システムの詳細について説明する。ここでは、第1の拡声子局20Aと第2の拡声子局20Bとの間で放送内容が異なる音声データを、親局設備10から第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bへ一斉送信する場合を例に挙げて説明する。
【0038】
以下、第1の拡声子局20Aで放送される音声情報を第1の音声情報ともいい、第2の拡声子局20Bで放送される音声情報を第2の音声情報ともいう。第2の音声情報は、第1の音声情報とは異なる音声情報を含む。
【0039】
本実施形態では、以下詳細に説明するように、親局設備10は、第1拡声子局20Aが放送する第1の音声情報と、拡声子局20Bが放送する第2の音声情報とをそれぞれ、任意の数の単語で分割し、分割された音声情報を1つの単位(以下、一分割単位ともいう)として、第1の音声情報の音声データと第2の音声情報の音声データとを交互に送信する。第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bは、一分割単位で交互に送信される第1の音声情報および第2の音声情報の音声データをそれぞれ受信するが、第1の拡声子局20Aは第1の音声情報のみを一分割単位で順次放送し、第2の拡声子局20Bは第2の音声情報のみを一分割単位で順次放送する。これにより、第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bによって、ほぼ同時刻に異なる放送を実現する。
【0040】
(親局設備)
図1に示すように、親局制御装置13は、音声情報生成部131と、制御部132とを有する。
【0041】
音声情報生成部131は、第1の音声情報の音声データである第1の音声データと、第2の音声情報の音声データである第2の音声データとを生成する。より具体的に、音声情報生成部131は、操作卓11の入力装置111を用いて生成されたテキストデータを基に、音声合成エンジンを用いて音声ファイルを作成する。音声ファイルは任意のファイル形式が採用可能である。
【0042】
本実施形態では、第1の音声情報および第2の音声情報が、それぞれ以下の単文である場合を例に挙げて説明する。なお説明の便宜上、括弧(『』)内の符号「♪」に続く文が、再生される音声の内容であることを示す。
【0043】
第1の音声情報:
『♪本日は、市議会選挙の、投票日です。』
第2の音声情報:
『♪正午より、追悼式のため、サイレンを流します。』
【0044】
音声情報生成部131は、第1の音声情報および第2の音声情報をそれぞれ任意の数の単語で分割する。
図3(A)に第1の音声情報の分割例を示し、
図3(B)に第2の音声情報の分割例を示す。
【0045】
音声情報生成部131は、
図3(A)に示すように第1の音声情報を形成する音声データを3つの音声ファイル(A-1,A-2,A-3)に分割する。音声ファイルA-1は、『♪本日は』という発声内容の音声データである。音声ファイルA-2は、『♪市議会選挙の』という発声内容の音声データである。そして音声ファイルA-3は、『♪投票日です』という発声内容の音声データである。各音声ファイルA-1,A-2,A-3はそれぞれ、第1の音声情報の音声データである第1の音声データの一分割単位に相当する。
【0046】
同様に、音声情報生成部131は、
図3(B)に示すように第2の音声情報を形成する音声データを3つの音声ファイル(B-1,B-2,B-3)に分割する。音声ファイルB-1は、『♪正午より』という発声内容の音声データである。音声ファイルB-2は、『♪追悼式のため』という発声内容の音声データである。そして音声ファイルB-3は、『♪サイレンを流します』という発声内容の音声データである。各音声ファイルB-1,B-2,B-3はそれぞれ、第2の音声情報の音声データである第2の音声データの一分割単位に相当する。
【0047】
音声情報の一分割単位は、任意の数の単語で形成される。ここで、単語とは、一つのまとまりのある意味を表し、独立した形で文法的働きをもつ言葉の最小単位である。単語には、自立語と付属語に大別され、例えば、音声ファイルA-1の発声内容である『本日は』においては、『本日』が自立語、『は』が付属語に相当する。
【0048】
一分割単位としては、意味の通じる範囲で分割されるのが好ましく、本実施形態では、2以上の単語からなる文節を単位として音声情報が分割される。一分割単位を形成する文節は1つの文節である場合に限られず、例えば音声ファイルB-3『♪サイレンを流します』のように2つ以上の文節の集まりであってもよい。なお、1つの単語で形成された一分割単位が一部に含まれてもよい。
【0049】
一方、拡声子局で放送される音声情報は、音声の反響があるため、語間を大きく空けてゆっくり再生されるという特徴がある。このため、音声情報には、個々の一分割単位の間に無音期間を入れる必要がある。そこで本実施形態では、音声情報のテキストデータに含まれる所定の記号を基準にして音声情報を分割するとともに、当該所定の記号を無音期間と定める。所定の記号としては、コンピュータが識別可能な記号であれば特に限定されず、例えば、句読点(「、」および「。」)が採用可能であり、これ以外にも、例えば「スペース」等の他の記号が採用されてもよい。
【0050】
音声情報生成部131は、以上のような態様で、音声情報のテキストデータにおける句読点(「、」、「。」)を基準に音声情報を分割するとともに、無音期間を設定する。この場合、第1の音声情報の音声ファイルおよび第2の音声情報の音声ファイルは、以下のように表される。
【0051】
第1の音声情報:
『♪本日は(無音期間)市議会選挙の(無音期間)投票日です。』
第2の音声情報:
『♪正午より(無音期間)追悼式のため(無音期間)サイレンを流します。』
【0052】
無音期間は特に限定されないが、一分割単位分の音声情報の再生時間以上であることが好ましい。例えば、第1の音声情報の無音期間内に第2の音声情報の一分割単位の放送が終了するようにすれば、双方の音声情報の同時放送による音声の重なり合い(干渉)を回避できるため、同時放送により音声が聞き取りにくくなることを防ぐことができる。一例として、無音期間は3秒以上の長さに設定される。無音期間は常に一定である場合に限られず、一の拡声子局の無音期間と他の拡声子局の放送時間との関係等を考慮して、無音期間の挿入位置によって異なる期間が設定されてもよい。
【0053】
一方、制御部132は、第1の音声データと第2の音声データとを一分割単位で送信機12から交互に送信させる制御指令を生成する。本実施形態では、
図3(A),(B)に示した音声ファイルを、「A-1」、「B-1」、「A-2」、「B-2」、「A-3」および「B-3」の順序で、送信機12から送信させる制御指令を生成する。発声内容で表すと、以下のとおりである。
『本日は』『正午より』『市議会選挙の』『追悼式のため』『投票日です』『サイレンを流します』
【0054】
送信機12から各拡声子局20への音声情報の送信方式は特に限定されないが、典型的には、所定周期で音声データを間欠的に送信する方式(パケット通信方式)が採用される。本実施形態では、80ミリ秒の送信周期で音声データが所定のデータ単位で送信され、例えば放送時間が1.6秒分の音声データを送信する場合は、当該音声データが20回に分けて送信される。
【0055】
ここで、80ミリ秒間隔で送信されるデータ量の音声データを「一データ単位」という。一データ単位は、上記のように文節単位で分割された音声情報の「一分割単位」とは異なる概念である。したがって上記の例では、1番目の音声ファイルである『本日は』の全音声データが80ミリ秒周期で(一データ単位ずつ)複数回に分けて送信された後、2番目の音声ファイルである『正午より』の全音声データが同じく80ミリ秒周期で(一データ単位ずつ)複数回に分けて送信される。3番目以後の音声ファイルについても同様である。
【0056】
図4は、上記一データ単位の構造を示す概念図である。同図に示すように、各一データ単位には、後述する制御データ(ヘッダ)および音声データ(ペイロード)が含まれる。制御データおよび音声データのデータ量は、例えば数オクテット~数十オクテットである(1オクテット=8ビット)。
【0057】
制御部132は、第1拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bの吹鳴および消音を制御するための制御データを生成する。制御データは、第1の制御データと第2の制御データとを含む。第1の制御データは、第1の拡声子局20Aのみを吹鳴させる制御データであり、第2の制御データは、第2の拡声子局20Bのみを吹鳴させる制御データである。
【0058】
図5は、制御データの制御情報とその内容を一覧で示す図である。制御データは、「0」、「1」、「2」の3つの制御情報に大別される。制御情報「0」は、全拡声子局(第1の拡声子局20A,第2の拡声子局20B)を吹鳴させる制御データである。この制御データは、第1の音声情報および第2の音声情報が同一の音声情報である場合に適用される。制御情報「1」は、第1の拡声子局20Aを吹鳴させ、第2の拡声子局20Bを消音させる制御データであり、上記第1の制御データに相当する。制御情報「2」は、第1の拡声子局20Aを消音させ、第2の拡声子局20Bを吹鳴させる制御データであり、上記第2の制御データに相当する。
【0059】
制御データは、一分割単位分の音声ファイルA-1,A-2,A-3,B-1、B-2,B-3にそれぞれ付加される。本実施形態では、音声ファイルA-1,A-2,A-3の各々に第1の制御データが付加され、音声ファイルB-1、B-2,B-3の各々に第2の制御データが付加される。上記各音声ファイルが所定のデータ単位(80ミリ秒周期で送信されるデータ量(一データ単位))で送信される場合には、各データ単位のヘッダ部に、対応する制御データが設定される。
【0060】
(拡声子局)
子局制御装置24は、親局設備10から送信される音声データに付加された制御データに基づき、拡声器22の吹鳴と消音(ミュート)を制御する。各拡声子局20は、受信した音声データを再生する際、自局の制御情報が付加された音声データについては音を出して放送し(吹鳴)、自局の制御情報が付加されていない音声データについてはミュートをかける(消音)。つまり、自局の制御情報が付加されていない音声データについては、外形的には放送されていないことになる。
【0061】
したがって、第1の拡声子局20Aにおける子局制御装置24は、第1の制御データが付加された第1の音声情報(第1の音声データ)を受信したときは、当該第1の音声情報を拡声器22で再生し、第2の制御データが付加された第2の音声情報(第2の音声データ)を受信したときは拡声器22を消音させる。一方、第2の拡声子局20Bにおける子局制御装置24は、第2の制御データが付加された第2の音声情報(第2の音声データ)を受信したときは、当該第2の音声情報を拡声器22で再生し、第1の制御データが付加された第1の音声情報(第1の音声データ)を受信したときは拡声器22を消音させる。
【0062】
[同報無線システムの動作]
続いて、以上のように構成される本実施形態の同報無線システム100の動作について説明する。
【0063】
図6は、同報無線システム100の動作例を示すシーケンス図である。以下の説明では、第1の拡声子局20AのサービスエリアをA地区といい、第2の拡声子局20BのサービスエリアをB地区という。
【0064】
親局設備10は、A地区に放送する第1の音声情報のテキストデータとB地区に放送する第2の音声情報のテキストデータから、
図3(A),(B)に示すように分節単位で分割された第1の音声情報および第2の音声情報の音声ファイルをそれぞれ作成する。そして、親局設備10は、
図6に示すように、3つの音声ファイルA-1,A-2,A-3からなる第1の音声情報と、3つの音声ファイルB-1,B-2,B-3からなる第2の音声情報とを交互に送信する。
【0065】
第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bは、親局設備10から一分割単位で交互に送信される第1の音声情報と第2の音声情報とを受信する。第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bは、受信した各音声情報の一データ単位に含まれる制御データに基づいて吹鳴と消音を切り替える。
【0066】
より具体的に、第1の制御データが付加された音声ファイルA-1を受信したとき、第1の拡声子局20Aは、当該音声ファイルA-1を形成する音声データを再生(吹鳴)し、第2の拡声子局20Bは、ミュートをかけて当該音声ファイルA-1を形成する音声データを再生(消音)する。これにより、A地区にのみ音声ファイルA-1の音声情報(『♪本日は』)が伝達される。
続いて、第2の制御データが付加された音声ファイルB-1を受信したとき、第1の拡声子局20Aは、ミュートをかけて当該音声ファイルB-1を形成する音声データを再生(消音)し、第2の拡声子局20Bは、当該音声ファイルB-1を形成する音声データを再生(吹鳴)する。これにより、B地区にのみ音声ファイルB-1の音声情報(『♪正午より』)が伝達される。
以後、音声ファイルA-2,B-2,A-3,B-3,A-4,B-4の順に、各音声ファイルの音声情報が第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bにより交互に放送される。
その結果、A地区には、
「本日は」(無音期間)「市議会選挙の」(無音期間)「投票日です」
の順で音声が放送され、同時にB地区には、
(無音期間)「正午より」(無音期間)「追悼式のため」(無音期間)「サイレンを流します」
の順で音声が放送される。
【0067】
このように本実施形態の同報無線システム100によれば、親局設備10から送信される地区ごとに異なる情報を当該各地区の拡声子局20A,20Bで放送する場合において、各地区での放送の即時性を失うことなく音声情報を伝達することができる。
【0068】
比較例として、A地区への放送後にB地区への放送を実施する場合の放送手順を
図7に示す。同図に示すように、A地区への放送開始から放送終了までに必要な時間を経過した後、B地区への放送が開始されることになる。例えば、放送開始に必要な時間(放送開始の合図となるチャイム等の吹鳴時間を含む起動時間)を15秒、放送終了に必要な時間(放送終了の合図となるチャイム等の吹鳴時間を含む終話時間)を5秒、放送時間および無音期間をそれぞれ2秒とすると、A地区の放送開始から30秒経過後にB地区への放送が開始されることになる。このため、B地区の拡声子局での放送は即時性が失われてしまう。また、A地区およびB地区へ放送を実施する際の親局設備と拡声子局との間の無線占有時間は、60秒(30秒×2)になる。
【0069】
これに対して本実施形態によれば、
図8に示すように、無音期間を利用してA地区とB地区への放送を交互に行うようにしているため、A地区の最初の放送からB地区の最初の放送までの時間の遅れを2秒に大幅に短縮でき、A地区およびB地区への放送の即時性を確保することができる。また、A地区およびB地区における放送開始のための起動時間および放送終了のための終話時間を同時刻に行うことができるため、A地区およびB地区へ放送を実施する際の親局設備と拡声子局との間の無線占有時間を32秒と大幅に短縮することができる(
図8参照)。
【0070】
また本実施形態によれば、無音期間を利用してA地区とB地区への放送を交互に行うようにしているため、A地区およびB地区で同時に音声が放送されることはなく、したがって各地区で音声が同時に放送されることによる放送内容の可聴性の低下を極力排除することができる。
【0071】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第1の実施形態に係る同報無線システムの概略構成図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0072】
本実施形態の同報無線システム200は、親局設備10と、屋外に設置された複数の拡声子局20を備える。本実施形態では拡声子局20が3機(第1の拡声子局20A、第2の拡声子局20Bおよび第3の拡声子局20C)である場合を例に挙げて説明する。
【0073】
第1の拡声子局20A、第2の拡声子局20Bおよび第3の拡声子局20Cは、それぞれ第1の実施形態と同様に構成される。本実施形態では、第1の拡声子局20Aは東地区に設置され、第2の拡声子局20Bは西地区に設置され、第3の拡声子局は南地区に設置される。
【0074】
親局設備10は、東地区へ放送する音声情報である第1の音声情報と、西地区へ放送する音声情報である第2の音声情報と、南地区へ放送する音声情報である第3の音声情報を生成し、これらを各拡声子局20A,20B,20Cへ送信する。第1の音声情報、第2の音声情報および第3の音声情報はそれぞれ異なる放送内容を有し、これらの音声情報は、親局制御装置13において生成される。ここでは、第1~第3の音声情報が緊急避難情報である場合を例に挙げて説明する。
【0075】
本実施形態では、第1の音声情報、第2の音声情報および第3の音声情報が、それぞれ以下の単文である場合を例に挙げて説明する。
【0076】
第1の音声情報:
『♪直ちに避難してください、避難場所は東第一小学校です。』
第2の音声情報:
『♪直ちに避難してください、避難場所は西第二小学校です。』
第3の音声情報:
『♪直ちに避難してください、避難場所は南第三小学校です。』
【0077】
以下、上記各音声情報の作成方法について説明する。
【0078】
まず、親局設備10において操作卓11で放送したい内容の種別を選択する(避難:海岸、あるいは避難:山)。表示部112に地区選択画面が表示され、そこから放送する地区を選択する(本実施形態では東地区、西地区、南地区)。選択された地区に基づいて、「避難所情報」が自動で入力される。続いて、表示部112に放送する文面候補が表示され、その中から放送した文面を選択する。これにより例えば
図10(A)に示すように、以下の文面が作成される(
図10(A))。
「直ちに避難してください。[避難所情報]」
【0079】
上記文面において、括弧([])内は可変情報部である。親局制御装置13(音声情報生成部131)は、上記可変情報部に、放送地区に対応する適切な語句を自動挿入し放送文言(音声情報)を作成する。親局制御装置13は、例えば
図10(B)に示すように放送対象地区の直近で開設している避難所情報を記憶する。本実施形態では、放送対象地区に紐づいた避難所が可変情報部に自動入力される。
【0080】
音声情報生成部131は、作成された放送文面を以下のように結合する。
『♪直ちに避難してください、避難場所は東第一小学校です、避難板書は西第二小学校です、避難場所は南第三小学校です』
文中の句読点は、第1の実施形態と同様、無音期間に設定される。音声情報生成部131は、
図10(C)に示すように、結合した放送文面を無音期間ごとに区切った4つの音声ファイルに分割する。
【0081】
図10(C)において、ファイル番号1の音声ファイル『♪直ちに避難してください』は、第1~第3の音声情報にそれぞれ共通の一分割単位である。
ファイル番号2の音声ファイル『♪避難場所は東第一小学校です』は、第1の音声情報に固有の一分割単位である。
ファイル番号3の音声ファイル『♪避難場所は西第二小学校です』は、第2の音声情報に固有の一分割単位である。
ファイル番号4の音声ファイル『♪避難場所は南第三小学校です』は、第3の音声情報に固有の一分割単位である。
【0082】
親局制御装置13(制御部132)は、第1拡声子局20A、第2の拡声子局20Bおよび第3の拡声子局20Cの吹鳴および消音を制御するための制御データを生成する。制御データは、第1の制御データと、第2の制御データと、第3の制御データとを含む。第1の制御データは、第1の拡声子局20Aのみを吹鳴させる制御データであり、第2の制御データは、第2の拡声子局20Bのみを吹鳴させる制御データであり、第3の制御データは、第3の拡声子局20Cのみを吹鳴させる制御データである。
【0083】
図11は、制御データの制御情報とその内容を一覧で示す図である。
制御データは、「0」、「1」、「2」、「3」の3つの制御情報に大別される。制御情報「0」は、全拡声子局(第1の拡声子局20A,第2の拡声子局20B、第3の拡声子局20C)を吹鳴させる制御データである。この制御データは、
図10(C)に示すファイル番号1の音声ファイルに付加される。
制御情報「1」は、第1の拡声子局20Aを吹鳴させ、第2の拡声子局20Bおよび第3の拡声子局20Cを消音させる制御データであり、上記第1の制御データに相当する。この制御データは、
図10(C)に示すファイル番号2の音声ファイルに付加される。
制御情報「2」は、第2の拡声子局20Bを吹鳴させ、第1の拡声子局20Aおよび第3の拡声子局20Cを消音させる制御データであり、上記第2の制御データに相当する。この制御データは、
図10(C)に示すファイル番号3の音声ファイルに付加される。
制御情報「3」は、第3の拡声子局20Cを吹鳴させ、第1の拡声子局20Aおよび第2の拡声子局20Bを消音させる制御データであり、上記第3の制御データに相当する。この制御データは、
図10(C)に示すファイル番号4の音声ファイルに付加される。
【0084】
親局設備10の送信機は、連続する任意の数の単語を一分割単位としてそれぞれ分割された第1の音声情報の音声データと第2の音声情報の音声データと第3の音声情報の音声データとを順に送信する。本実施形態では、ファイル番号1~4の音声ファイルを順に送信される。
【0085】
図12は、本実施形態の同報無線システム200の動作例を示す説明図である。放送開始直後の同一時刻に第1の拡声子局20A、第2の拡声子局20Bおよび第3の拡声子局20Cにおいてファイル番号1の音声ファイル『♪直ちに避難してください』が再生される。
続いて、無音期間を挟んで、第1の拡声子局20Aにおいてファイル番号2の音声ファイル『♪避難場所は東第一小学校です』が再生される。
続いて、無音期間を挟んで、第2の拡声子局20Bにおいてファイル番号3の音声ファイル『♪避難場所は西第二小学校です』が再生される。
続いて、無音期間を挟んで、第3の拡声子局20Cにおいてファイル番号4の音声ファイル『♪避難場所は南第三小学校です』が再生される。
【0086】
以上のように本実施形態によれば、複数の地区(A地区、B地区、C地区)へ緊急避難情報の放送を同時刻に開始することができるため、各地区の住民へほぼ同時刻に注意を喚起することができる。これにより、この後に地区ごとに放送される避難場所へ住民を誘導しやすくなる。したがって本実施形態においても、各地区での放送の即時性を失うことなく、複数の地区へ避難情報を伝達することができる。
【0087】
図13は、本実施形態の他の変形例に係る同報無線システム200の動作例を示す図である。この変形例は、
図10(C)に示すファイル番号2~4の音声ファイルを文節ごとに分割し(一分割単位に相当)、これらの分割した音声情報を、各地区における無音期間を利用して順に放送する例を示している。
同様に
図14は、本実施形態の変形例に係る同報無線システム200の動作例を示す図である。この変形例は、第1~第3の音声情報の共通の一分割単位として、『♪直ちに避難してください』および『♪避難場所は』の2つの音声ファイルを作成し、これら2つの音声ファイルを、無音期間を挟んで順に各地区へ同時に放送する例を示している。
図13および
図14に示す変形例によれば、『♪直ちに避難してください』の後に続く各地区での放送時間を短くすることができるため、地区間での避難場所に関する放送開始の時間差を短くすることができる。
【符号の説明】
【0088】
10…親局設備
11…操作卓
12…送信機
13…親局制御装置
20…拡声子局
20A…第1の拡声子局
20B…第2の拡声子局
20C…第3の拡声子局
21…受信機
22…拡声器
24…子局制御装置
100,200…同報無線システム
131…音声情報生成部
132…制御部