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2023-148265機械学習モデル生成プログラム、推定プログラム、機械学習モデル生成装置、推定装置、機械学習モデル生成方法及び推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148265
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】機械学習モデル生成プログラム、推定プログラム、機械学習モデル生成装置、推定装置、機械学習モデル生成方法及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20231005BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231005BHJP
   G01N 33/204 20190101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G06T7/00 350B
G01N33/204
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056185
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503378420
【氏名又は名称】日鉄ステンレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】江原 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 祐二
【テーマコード(参考)】
2G055
2G059
5L096
【Fターム(参考)】
2G055AA01
2G055BA04
2G055BA09
2G055FA02
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059KK04
2G059MM02
2G059MM20
5L096AA03
5L096AA06
5L096EA35
5L096FA35
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA04
5L096GA17
5L096GA55
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】二次デンドライトアームの間隔をより簡便かつ適切に推定すること。
【解決手段】機械学習モデル生成プログラムは、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得し、輝度を調整して輝度調整画像を生成し、輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成し、輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成し、学習用断面画像データを問題として含み、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含む教師データを機械学習装置に入力して学習させ、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルを機械学習装置に生成させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得機能と、
前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整機能と、
前記輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、前記学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する学習用断面画像データ生成機能と、
前記学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置に入力して学習させ、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルを前記機械学習装置に生成させる機械学習実行機能と、
をコンピュータに実現させる機械学習モデル生成プログラム。
【請求項2】
前記機械学習実行機能は、所定の第一本数以上の二次デンドライトアームを描出している前記学習用断面画像を示す前記学習用断面画像データを問題として含んでいる前記教師データを前記機械学習装置に入力する、
請求項1に記載の機械学習モデル生成プログラム。
【請求項3】
前記機械学習実行機能は、所定の第二本数以下の二次デンドライトアームを描出している前記学習用断面画像を示す前記学習用断面画像データを問題として含んでいる前記教師データを前記機械学習装置に入力する、
請求項1又は請求項2に記載の機械学習モデル生成プログラム。
【請求項4】
前記機械学習実行機能は、少なくとも二つの前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔の統計量を示す前記学習用間隔データを答えとして含んでいる前記教師データを前記機械学習装置に入力する、
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の機械学習モデル生成プログラム。
【請求項5】
推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得機能と、
前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整機能と、
前記輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、前記推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成する推論用断面画像データ生成機能と、
学習用鋳片の断面を描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを使用して生成された機械学習モデルに前記推論用断面画像データを入力して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を前記機械学習モデルに推定させ、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを前記機械学習モデルに出力させる推定機能と、
をコンピュータに実現させる推定プログラム。
【請求項6】
学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整部と、
前記輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、前記学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する学習用断面画像データ生成部と、
前記学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置に入力して学習させ、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルを前記機械学習装置に生成させる機械学習実行部と、
を備える機械学習モデル生成装置。
【請求項7】
推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整部と、
前記輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、前記推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成する推論用断面画像データ生成部と、
学習用鋳片の断面を描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを使用して生成された機械学習モデルに前記推論用断面画像データを入力して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を前記機械学習モデルに推定させ、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを前記機械学習モデルに出力させる推定部と、
を備える推定装置。
【請求項8】
学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得し、
前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成し、
前記輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、前記学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成し、
前記学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置に入力して学習させ、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルを前記機械学習装置に生成させる、
機械学習モデル生成方法。
【請求項9】
推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得し、
前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成し、
前記輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、前記推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成し、
学習用鋳片の断面を描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを使用して生成された機械学習モデルに前記推論用断面画像データを入力して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を前記機械学習モデルに推定させ、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを前記機械学習モデルに出力させる、
推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習モデル生成プログラム、推定プログラム、機械学習モデル生成装置、推定装置、機械学習モデル生成方法及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融している金属を凝固させるとデンドライトと呼ばれる樹枝状の形態が発現することが従来から知られている。デンドライトは、比較的長い一次デンドライトアームと、一次デンドライトから概ね垂直に延びている二次デンドライトアームとを含んでいる。二次デンドライトアームの間隔(DAS:Dendrite Arm Spacing)は、凝固する速度が速い程、小さくなる。このため、二次デンドライトアームの間隔は、溶融している金属を凝固させて鋳片を形成させた際の条件を知る手掛かりとなり、鋳片の品質の改善に活用されている。二次デンドライトアームの間隔を測定するためには、試料の断面の金属組織を光学顕微鏡により撮影し、得られた画像を目視にて計測する。これは手作業となるため、多数の測定を行う場合には極めて負荷が高い。そこで、この作業を自動的に実施する技術が検討されており、その一例として、例えば、特許文献1に開示されているデンドライトアーム幅の定量測定法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-248823号公報
【0004】
しかし、金属組織における二次デンドライトアームは、必ずしも一定の方向に整列していないため、幾何学的な解析手法で二次デンドライトアームの間隔を正確に測定することは困難である。このため、特許文献1に開示されているデンドライトアーム幅の定量測定法は、デンドライトアームを垂直に横切るように輝度分布をとることが保証できないことにより、デンドライトアーム幅を適切に測定し得ないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、二次デンドライトアームの間隔をより簡便かつ適切に推定することができる機械学習モデル生成プログラム、推定プログラム、機械学習モデル生成装置、推定装置、機械学習モデル生成方法及び推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得機能と、前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整機能と、前記輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、前記学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する学習用断面画像データ生成機能と、前記学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置に入力して学習させ、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルを前記機械学習装置に生成させる機械学習実行機能と、をコンピュータに実現させる機械学習モデル生成プログラムである。
【0007】
本発明の一態様は、上述した機械学習モデル生成プログラムにおいて、前記機械学習実行機能が、所定の第一本数以上の二次デンドライトアームを描出している前記学習用断面画像を示す前記学習用断面画像データを問題として含んでいる前記教師データを前記機械学習装置に入力する。
【0008】
本発明の一態様は、上述した機械学習モデル生成プログラムにおいて、前記機械学習実行機能が、所定の第二本数以下の二次デンドライトアームを描出している前記学習用断面画像を示す前記学習用断面画像データを問題として含んでいる前記教師データを前記機械学習装置に入力する。
【0009】
本発明の一態様は、上述した機械学習モデル生成プログラムにおいて、前記機械学習実行機能が、少なくとも二つの前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔の統計量を示す前記学習用間隔データを答えとして含んでいる前記教師データを前記機械学習装置に入力する。
【0010】
本発明の一態様は、推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得機能と、前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整機能と、前記輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、前記推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成する推論用断面画像データ生成機能と、学習用鋳片の断面を描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを使用して生成された機械学習モデルに前記推論用断面画像データを入力して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を前記機械学習モデルに推定させ、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを前記機械学習モデルに出力させる推定機能と、をコンピュータに実現させる推定プログラムである。
【0011】
本発明の一態様は、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整部と、前記輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、前記学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する学習用断面画像データ生成部と、前記学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置に入力して学習させ、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルを前記機械学習装置に生成させる機械学習実行部と、を備える機械学習モデル生成装置である。
【0012】
本発明の一態様は、推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する画像データ取得部と、前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する輝度調整部と、前記輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、前記推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成する推論用断面画像データ生成部と、学習用鋳片の断面を描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを使用して生成された機械学習モデルに前記推論用断面画像データを入力して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を前記機械学習モデルに推定させ、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを前記機械学習モデルに出力させる推定部と、を備える推定装置である。
【0013】
本発明の一態様は、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得し、前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成し、前記輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、前記学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成し、前記学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置に入力して学習させ、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルを前記機械学習装置に生成させる、機械学習モデル生成方法である。
【0014】
本発明の一態様は、推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得し、前記画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、前記輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成し、前記輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、前記推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成し、学習用鋳片の断面を描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでおり、前記学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを使用して生成された機械学習モデルに前記推論用断面画像データを入力して、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を前記機械学習モデルに推定させ、前記推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを前記機械学習モデルに出力させる、推定方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二次デンドライトアームの間隔をより簡便かつ適切に推定することができる機械学習モデル生成プログラム、推定プログラム、機械学習モデル生成装置、推定装置、機械学習モデル生成方法及び推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により実行される処理の概要を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により輝度が調整される前の画像の一例を示す図である。
図5図4に示した画像にヒストグラム平坦化を施すことにより輝度が調整された画像の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により輝度が調整される前の画像の一例を示す図である。
図7図6に示した画像にヒストグラム平坦化を施すことにより輝度が調整された画像の一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により輝度が調整された後の画像から学習用断面画像を切り出す処理の一例を説明するための図である。
図9】本発明の実施形態に係る機械学習モデルにより使用されるフィルタの一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る学習用断面画像の一部の輝度の一例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係るプーリングが施される前の学習用断面画像の一例を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係るプーリングが施された後の学習用断面画像の一例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係るプーリングが施された後の学習用断面画像の一例を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施形態に係る推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る推定装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。
図17】本発明の実施形態に係る推定装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図18】本発明の実施形態に係る推論用断面画像の一例を示す図である。
図19図18に示した推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を本発明の実施形態に係る推定装置により推定した結果と、検査員により測定した結果との一例を示すための図である。
図20図18に示した推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を本発明の実施形態に係る推定装置により推定した結果と、検査員により測定した結果との関係の一例を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態]
図1から図14を参照しながら実施形態に係る機械学習モデル生成装置、機械学習モデル生成プログラム及び機械学習モデル生成方法について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図1に示すように、機械学習モデル生成装置10は、プロセッサ11と、主記憶装置12と、通信インターフェース13と、補助記憶装置14と、入出力装置15と、バス16とを備える。
【0019】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、後述する機械学習モデル生成プログラム100を読み出して実行し、機械学習モデル生成装置10が有する各機能を実現させる。また、プロセッサ11は、機械学習モデル生成プログラム100以外のプログラムを読み出して実行し、機械学習モデル生成装置10が有する各機能を実現させる上で必要な機能を実現させてもよい。
【0020】
主記憶装置12は、例えば、RAM(Random Access Memory)であり、プロセッサ11により読み出されて実行される機械学習モデル生成プログラム100その他のプログラムを予め記憶している。
【0021】
通信インターフェース13は、ネットワークを介して機械学習装置900等の機器と通信を実行するためのインターフェース回路である。また、ネットワークは、例えば、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、インターネット、イントラネットである。
【0022】
補助記憶装置14は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、ROM(Read Only Memory)である。
【0023】
入出力装置15は、例えば、入出力ポート(Input/Output Port)である。入出力装置15は、例えば、入力装置、出力装置が接続されている。入力装置は、例えば、ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、マウス、キーボードであり、機械学習モデル生成装置10の操作、機械学習モデル生成装置10へのデータの入力に使用される。出力装置は、例えば、ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、スピーカであり、機械学習モデル生成装置10がユーザに情報を提示するために使用される。
【0024】
バス46は、プロセッサ11、主記憶装置12、通信インターフェース13、補助記憶装置14及び入出力装置15を互いにデータの送受信が可能なように接続している。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、機械学習モデル生成装置10は、画像データ取得機能101と、輝度調整機能102と、学習用断面画像データ生成機能103と、機械学習実行機能104とを備える。画像データ取得機能101、輝度調整機能102、学習用断面画像データ生成機能103及び機械学習実行機能104は、いずれもプロセッサ11が主記憶装置12に格納されている機械学習モデル生成プログラム100を読み出して実行することにより実現される。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により実行される処理の概要を説明するための図である。例えば、図3に示すように、機械学習モデル900Mは、畳み込みニューラルネットワークである。機械学習モデル900Mは、プーリング層のノードを800個含んでおり、隠れ層のノードを1024個含んでいる。
【0027】
機械学習モデル生成装置10は、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データに基づいて学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する。次に、機械学習モデル生成装置10は、学習用断面画像データを機械学習モデル900Mに入力し、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定させ、当該間隔を示す間隔データを出力させる。そして、機械学習モデル生成装置10は、当該間隔と、検査員により測定された当該二次デンドライトアームの間隔との差を含む損失関数を出来る限り小さくするように、畳み込みニューラルネットワークの各パラメータを調整していく。これらの処理の具体例の詳細を以下に説明する。
【0028】
画像データ取得機能101は、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを少なくとも一つ取得する。画像データは、例えば、鏡面研磨及びエッチングが施されている学習用鋳片の断面を光学顕微鏡で撮影した画像を示すデータである。学習用鋳片は、例えば、連続鋳造機を使用して製造された鋳片、鋳型を使用して鋳造された鋳片である。また、学習用鋳片は、二次デンドライトアームが発現する金属である限り特に限定されない。例えば、ステンレス、アルミニウム及び銅を主成分とする合金が挙げられる。鏡面研磨は、学習用鋳片の断面を鑢、研磨用の布、研磨剤等を使用して研磨する作業である。エッチングは、鏡面研磨が施された断面を腐食液により腐食させて金属の組織を現出させる作業である。
【0029】
また、画像データにより示される画像は、特定のサイズの画像に揃える処理が施されている。ここで言う特定のサイズの画像は、例えば、横方向のピクセルの数及び縦方向のピクセルの数が400個の正方形の画像である。また、これらの画像の各ピクセルの輝度は、例えば、I1(x,y)=0~1と表現される。各ピクセルの色は、256階調のグレースケールである。ピクセルの輝度が最小であり、当該ピクセルの色が黒である場合、I1(x,y)=0となる。一方、ピクセルの輝度が最大であり、当該ピクセルの色が白である場合、I1(x,y)=1となる。xは、横方向におけるピクセルの座標を表しており、0から399までのいずれかの整数をとる。yは、縦方向におけるピクセルの座標を表しており、0から399までのいずれかの整数をとる。
【0030】
輝度調整機能102は、画像データにより示される画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する。輝度調整機能102は、例えば、特定のサイズに揃えられた画像の輝度を調整し、全ての画像の輝度の基準を統一するために、全ての画像にヒストグラム平坦化を適用する。ヒストグラム平坦化は、ヒストグラム平坦化を施す前の画像の各ピクセルの輝度I1(x,y)、画像が取り得る輝度の最大値Imax、当該画像に含まれているピクセルの総数S、ヒストグラム平坦化を施した後の各ピクセルの輝度I2(x,y)及び度数H(x,y)を含む次の式(1)で表される処理である。
【0031】
【数1】
【0032】
図4は、本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により輝度が調整される前の画像の一例を示す図である。図5は、図4に示した画像にヒストグラム平坦化を施すことにより輝度が調整された画像の一例を示す図である。図4及び図5を参照すると、図4に示した比較的暗い画像がヒストグラム平坦化により図5に示した画像に変換されていることが分かる。図6は、本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により輝度が調整される前の画像の一例を示す図である。図7は、図6に示した画像にヒストグラム平坦化を施すことにより輝度が調整された画像の一例を示す図である。図6及び図7を参照すると、図6に示した比較的明るい画像がヒストグラム平坦化により図7に示した画像に変換されていることが分かる。また、図5及び図7を参照すると、図4に示した画像及び図6に示した画像の輝度が同程度となっていることが分かる。
【0033】
図8は、本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により輝度が調整された後の画像から学習用断面画像を切り出す処理の一例を説明するための図である。図8に示した画像は、横方向のピクセルの数が293個及び縦方向のピクセルの数が195個の画像である。また、図8に示した黒い枠は、横方向及び縦方向に40個のピクセルを含めるサイズを有する。
【0034】
学習用断面画像データ生成機能103は、輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する。学習用断面画像データ生成機能103は、例えば、図8に示した画像から黒い枠に囲まれた領域を学習用断面画像として切り出す。黒い枠に囲まれた領域の位置は、任意の位置でよく、無作為に決定されてもよい。また、黒い枠に囲まれた領域の角度は、任意の角度でよく、無作為に決定されてもよい。これらの学習用断面画像は、横方向のピクセルの数及び縦方向のピクセルの数が40個の正方形の画像である。また、これらの画像の各ピクセルの輝度は、例えば、I3(x,y)=0~1と表現される。各ピクセルの色は、256階調のグレースケールである。ピクセルの輝度が最小であり、当該ピクセルの色が黒である場合、I3(x,y)=0となる。一方、ピクセルの輝度が最大であり、当該ピクセルの色が白である場合、I3(x,y)=1となる。xは、横方向におけるピクセルの座標を表しており、0から39までのいずれかの整数をとる。yは、縦方向におけるピクセルの座標を表しており、0から39までのいずれかの整数をとる。
【0035】
また、学習用断面画像は、所定の第一本数以上の二次デンドライトアームを描出していることが好ましい。これは、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームが少な過ぎると、後述する学習用間隔データにより示されている二次デンドライトアームの間隔が学習用断面画像ごとに大きく変動してしまうことにより、当該間隔を精度良く推定することが困難になるからである。また、仮に、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームが一本である場合、当該間隔を推定することができないからである。
【0036】
また、学習用断面画像は、所定の第二本数以下の二次デンドライトアームを描出していることが好ましい。これは、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームが多過ぎると二次デンドライトアームの間隔が学習用断面画像の中で潰れてしまうことにより、当該間隔を精度良く推定することが困難になるからである。
【0037】
機械学習実行機能104は、教師データを機械学習装置900に入力して学習させ、機械学習モデル900Mを機械学習装置900に生成させる。つまり、機械学習実行機能104は、教師データを機械学習装置900に入力し、機械学習装置900に教師有り学習を実行させる。
【0038】
教師データは、学習用断面画像データを問題として含んでおり、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる。学習用間隔データにより示されている二次デンドライトアームの間隔は、例えば、上述した画像に描出されている一次デンドライトの長さを測定し、当該一次デンドライトから概ね垂直に延びている二次デンドライトアームの本数を数え、一次デンドライトの長さを二次デンドライトアームの本数で除算して見積もられた間隔である。また、学習用間隔データにより示されている間隔は、例えば、学習用断面画像を切り出す元となっている一つの画像について同一の値となっていてもよいし、学習用断面画像ごとに異なっていてもよい。さらに、学習用間隔データにより示されている間隔は、少なくとも二つの学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔の統計量であってもよい。
【0039】
機械学習モデル900Mは、推論用断面画像データを使用して、推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、当該間隔を示す推論用間隔データを出力する機械学習モデルである。推論用断面画像データは、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示すデータである。推論用鋳片は、学習用鋳片と同様、例えば、連続鋳造機を使用して製造された鋳片、鋳型を使用して鋳造された鋳片である。また、推論用鋳片は、二次デンドライトアームが発現する金属である限り特に限定されない。
【0040】
機械学習モデル900Mは、学習用断面画像の特徴を抽出するために、学習用断面画像にフィルタを使用して畳込みを施す。畳込みは、畳込みを施す前の学習用断面画像の各ピクセルの輝度I3(x+i,y+j)(i=-fx~+fx,j=-fy~+fy)、(fx×2+1)×(fy×2+1)行列のフィルタFn(0~fx×2,0~fy×2)、畳込みを施した後の学習用断面画像の各ピクセルの輝度I4(x,y)を含む次の式(2)で表される処理である。
【0041】
【数2】
【0042】
図9は、本発明の実施形態に係る機械学習モデルにより使用されるフィルタの一例を示す図である。図9に示したフィルタは、3×3行列のフィルタである。図9に示した数字は、当該フィルタの行列要素である。図10は、本発明の実施形態に係る学習用断面画像の一部の輝度の一例を示す図である。図10に示した数字は、輝度を表している。機械学習モデル900Mは、例えば、学習用断面画像のうち図10に示した部分に図9に示したフィルタを使用して畳込みを施す。この処理は、次の式(3)で表される。
【0043】
【数3】
【0044】
機械学習モデル900Mは、例えば、フィルタF1(5,5)、フィルタF2(5,5)、フィルタF3(5,5)、フィルタF4(5,5)、フィルタF5(5,5)、フィルタF6(5,5)、フィルタF7(5,5)及びフィルタF8(5,5)各々を学習用断面画像に適用する。
【0045】
これら八つのフィルタのいずれかが適用された学習用断面画像の各ピクセルの輝度は、例えば、I4(x,y)=0~1と表現される。各ピクセルの色は、256階調のグレースケールである。ピクセルの輝度が最小であり、当該ピクセルの色が黒である場合、I4(x,y)=0となる。一方、ピクセルの輝度が最大であり、当該ピクセルの色が白である場合、I4(x,y)=1となる。xは、横方向におけるピクセルの座標を表しており、0から39までのいずれかの整数をとる。yは、縦方向におけるピクセルの座標を表しており、0から39までのいずれかの整数をとる。
【0046】
機械学習モデル900Mは、学習用断面画像の解像度を低下させて単純化し、学習用断面画像の特徴を抽出するために、学習用断面画像にプーリングを施す。プーリングは、例えば、横方向及び縦方向に2ピクセル、合計4ピクセルの中で輝度が最も小さなピクセルの輝度で残り3つのピクセルの輝度を置き換える処理である。このようなプーリングは、学習用断面画像データのデータ量を四分の一に圧縮する処理と理解することもできる。
【0047】
図11は、本発明の実施形態に係るプーリングが施される前の学習用断面画像の一例を示す図である。図11に示した学習用断面画像は、横方向のピクセルの数及び縦方向のピクセルの数が40個の正方形の画像である。図12は、本発明の実施形態に係るプーリングが施された後の学習用断面画像の一例を示す図である。図12に示した学習用断面画像は、横方向のピクセルの数及び縦方向のピクセルの数が20個の正方形の画像である。図13は、本発明の実施形態に係るプーリングが施された後の学習用断面画像の一例を示す図である。図13に示した学習用断面画像は、横方向のピクセルの数及び縦方向のピクセルの数が10個の正方形の画像である。
【0048】
機械学習モデル900Mは、例えば、図11に示した学習用断面画像にプーリングを一回施し、図12に示した学習用断面画像を生成する。さらに、機械学習モデル900Mは、例えば、図12に示した学習用断面画像にプーリングを一回施し、図13に示した学習用断面画像を生成する。
【0049】
図13に示した学習用断面画像の輝度は、例えば、I5(x,y)=0~1と表現される。各ピクセルの色は、256階調のグレースケールである。ピクセルの輝度が最小であり、当該ピクセルの色が黒である場合、I5(x,y)=0となる。一方、ピクセルの輝度が最大であり、当該ピクセルの色が白である場合、I5(x,y)=1となる。xは、横方向におけるピクセルの座標を表しており、0から9までのいずれかの整数をとる。yは、縦方向におけるピクセルの座標を表しており、0から9までのいずれかの整数をとる。
【0050】
機械学習モデル900Mは、図3に示した隠れ層及び出力層を使用した演算を実行し、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定し、当該間隔を推定した結果を示す間隔データを出力する。
【0051】
隠れ層を使用した演算は、次の式(4)及び式(5)で表される。式(4)は、プーリング層のノードと隠れ層のノードとを結ぶシナプスに割り当てられている800個×1024個の重みW(k,j)(k=0~1023,j=0~799)及び隠れ層のノードに割り当てられている重みb(k)(k=0~1023)を含んでいる。式(5)は、シグモイド関数を表している。隠れ層を使用した演算の出力値は実数となる。
【0052】
【数4】
【0053】
【数5】
【0054】
出力層を使用した演算は、次の式(6)及び式(7)で表される。式(6)は、機械学習モデル900Mにより推定された二次デンドライトアームの間隔を表している。当該間隔は、上述した間隔データにより示される。式(7)は、活性化関数の一種であるRELU(Rectified Linear Unit)関数を表している。
【0055】
【数6】
【0056】
【数7】
【0057】
機械学習モデル900Mは、式(6)で表される二次デンドライトアームの間隔Pと、教師データに含まれている学習用間隔データにより示されている間隔Tとの差を含む損失関数を出来る限り小さくするように、上述した重みW(k,j)及び重みb(k)及びフィルターの数値を調整する。この場合、損失関数は、次の式(8)で表される。式(8)は、機械学習モデル900Mに入力された教師データの総数nを含んでおり、これら全ての教師データに関する二次デンドライトアームの間隔Pと学習用間隔データにより示されている間隔Tとの差の総和を表している。
【0058】
【数8】
【0059】
機械学習実行機能104は、機械学習装置900に上述した処理を少なくとも一回実行させることにより、機械学習装置900に機械学習モデル900Mを生成させる。
【0060】
次に、図14を参照しながら機械学習モデル生成装置10により実行される処理の一例を説明する。図14は、本発明の実施形態に係る機械学習モデル生成装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS11において、画像データ取得機能101は、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する。
【0062】
ステップS12において、輝度調整機能102は、画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する。
【0063】
ステップS13において、学習用断面画像データ生成機能103は、輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する。
【0064】
ステップS14において、機械学習実行機能104は、学習用断面画像データを問題として含んでおり、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置900に入力して学習させ、機械学習モデル900Mを生成させる。
【0065】
以上、実施形態に係る機械学習モデル生成装置10について説明した。機械学習モデル生成装置10は、画像データ取得機能101と、輝度調整機能102と、学習用断面画像データ生成機能103と、機械学習実行機能104とを備える。
【0066】
画像データ取得機能101は、学習用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する。輝度調整機能102は、画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する。学習用断面画像データ生成機能103は、輝度調整画像から学習用断面画像を切り出し、学習用断面画像を示す学習用断面画像データを生成する。
【0067】
機械学習実行機能104は、教師データを機械学習装置900に入力して学習させ、機械学習モデル900Mを機械学習装置900に生成させる。機械学習モデル900Mは、推論用鋳片の断面を描出している推論用断面画像を示す推論用断面画像データを使用して、推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定する。教師データは、学習用鋳片の断面を描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでおり、学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる。これにより、機械学習モデル生成装置10は、二次デンドライトアームの間隔をより適切に推定可能な機械学習モデル900Mを生成することができる。
【0068】
また、機械学習モデル生成装置10は、所定の第一本数以上の二次デンドライトアームを描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでいる教師データを取得する。これにより、機械学習モデル生成装置10は、教師データの質を向上させ、二次デンドライトアームの間隔を更に適切に推定可能な機械学習モデル900Mを生成することができる。
【0069】
また、機械学習モデル生成装置10は、所定の第二本数以下の二次デンドライトアームを描出している学習用断面画像を示す学習用断面画像データを問題として含んでいる教師データを取得する。これにより、機械学習モデル生成装置10は、教師データの質を向上させ、二次デンドライトアームの間隔を更に適切に推定可能な機械学習モデル900Mを生成することができる。
【0070】
また、機械学習モデル生成装置10は、少なくとも二つの学習用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔の統計量を示す学習用間隔データを答えとして含んでいる教師データを機械学習装置に入力してもよい。これにより、機械学習モデル生成装置10は、更に信ぴょう性が高い二次デンドライトアームの間隔を推定可能な機械学習モデル900Mを生成することができる。
【0071】
なお、上記の説明では、プロセッサ11が機械学習モデル生成プログラム100を読み出して実行することにより、図2に示した画像データ取得機能201、輝度調整機能202、推論用断面画像データ生成機能203及び推定機能204が実現される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0072】
図2に示した機械学習モデル生成装置10が有する機能の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等の回路部(circuitry)を含むハードウェアにより実現されてもよい。或いは、図2に示した機械学習モデル生成装置10が有する機能の少なくとも一部は、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現されてもよい。また、これらのハードウェアは、一つに統合されていてもよいし、複数に分かれていてもよい。
【0073】
図15から図20を参照しながら実施形態に係る推定装置、推定プログラム及び推定方法について説明する。
【0074】
図15は、本発明の実施形態に係る推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図15に示すように、推定装置20は、プロセッサ21と、主記憶装置22と、通信インターフェース23と、補助記憶装置24と、入出力装置25と、バス26とを備える。
【0075】
プロセッサ21は、例えば、CPUであり、後述する推定プログラム200を読み出して実行し、推定装置20が有する各機能を実現させる。また、プロセッサ21は、推定プログラム200以外のプログラムを読み出して実行し、推定装置20が有する各機能を実現させる上で必要な機能を実現させてもよい。
【0076】
主記憶装置22は、例えば、RAMであり、プロセッサ21により読み出されて実行される推定プログラム200その他のプログラムを予め記憶している。
【0077】
通信インターフェース23は、ネットワークを介して他の機器と通信を実行するためのインターフェース回路である。また、ネットワークは、例えば、WAN、LAN、インターネット、イントラネットである。
【0078】
補助記憶装置24は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ、ROMである。
【0079】
入出力装置25は、例えば、入出力ポートである。入出力装置25は、例えば、入力装置、出力装置が接続されている。入力装置は、例えば、ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、マウス、キーボードであり、推定装置20の操作、推定装置20へのデータの入力に使用される。出力装置は、例えば、ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、スピーカであり、推定装置20がユーザに情報を提示するために使用される。
【0080】
バス26は、プロセッサ21、主記憶装置22、通信インターフェース23、補助記憶装置24及び入出力装置25を互いにデータの送受信が可能なように接続している。
【0081】
次に、図16を参照しながら推定装置のソフトウェア構成について説明する。図16は、本発明の実施形態に係る推定装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。図16に示すように、推定装置20は、画像データ取得機能201と、輝度調整機能202と、推論用断面画像データ生成機能203と、推定機能204とを備える。画像データ取得機能201、輝度調整機能202、推論用断面画像データ生成機能203及び推定機能204は、いずれもプロセッサ21が主記憶装置22に格納されている推定プログラム200を読み出して実行することにより実現される。
【0082】
画像データ取得機能201は、推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを少なくとも一つ取得する。画像データは、例えば、鏡面研磨及びエッチングが施されている学習用鋳片の断面を光学顕微鏡で撮影した画像を示すデータである。
【0083】
輝度調整機能202は、画像データにより示される画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する。輝度調整機能202は、例えば、上述した輝度調整機能102により使用される方法と同じ方法により画像データにより示される画像の輝度を調整する。
【0084】
推論用断面画像データ生成機能203は、輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成する。推論用断面画像データ生成機能203は、例えば、上述した学習用断面画像データ生成機能103により使用される方法と同じ方法により推論用断面画像データを生成する。
【0085】
推定機能204は、上述した教師データを使用して学習した機械学習モデル900Mに推論用断面画像データを入力して、推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定させ、当該間隔を推定した結果を示す推論用間隔データを出力させる。
【0086】
次に、図17を参照しながら推定装置20により実行される処理の一例を説明する。図17は、本発明の実施形態に係る推定装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0087】
ステップS21において、画像データ取得機能201は、推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する。
【0088】
ステップS22において、輝度調整機能202は、画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する。
【0089】
ステップS23において、推論用断面画像データ生成機能203は、輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成する。
【0090】
ステップS24において、推定機能204は、機械学習モデル900Mに推論用断面画像データを入力して、推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を機械学習モデル900Mに推定させ、推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を示す推論用間隔データを機械学習モデル900Mに出力させる。
【0091】
以上、実施形態に係る推定装置20について説明した。推定装置20は、画像データ取得機能201と、輝度調整機能202と、推論用断面画像データ生成機能203と、推定機能204とを備える。
【0092】
画像データ取得機能201は、推論用鋳片の断面を描出している画像を示す画像データを取得する。輝度調整機能202は、画像の輝度を調整して輝度調整画像を生成し、輝度調整画像を示す輝度調整画像データを生成する。推論用断面画像データ生成機能203は、輝度調整画像から推論用断面画像を切り出し、推論用断面画像を示す推論用断面画像データを生成する。推定機能204は、機械学習モデル生成装置10により生成された機械学習モデル900Mに推論用断面画像データを入力して、推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を推定させる。
【0093】
これにより、推定装置20は、二次デンドライトアームの間隔をより適切に推定することができる。また、推定装置20は、検査員が推論用断面画像等を参照し、二次デンドライトアームを特定し、二次デンドライトアームの間隔を測定する作業を省略することができる。
【0094】
次に、図18から図20を参照しながら推定装置20により予測された二次デンドライトアームの間隔の具体例について説明する。図18は、本発明の実施形態に係る推論用断面画像の一例を示す図である。図18は、(1)から(6)の六つの推論用断面画像を示している。図19は、図18に示した推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を本発明の実施形態に係る推定装置により推定した結果と、検査員により測定した結果との一例を示すための図である。図20は、図18に示した推論用断面画像に描出されている二次デンドライトアームの間隔を本発明の実施形態に係る推定装置により推定した結果と、検査員により測定した結果との関係の一例を示すための図である。図19及び図20を参照すると、推定装置20により推定された二次デンドライトアームの間隔は、検査員により測定された二次デンドライトアームの間隔と比較的高い精度で一致していることが分かる。
【0095】
なお、上記の説明では、プロセッサ21が推定プログラム200を読み出して実行することにより、図16に示した画像データ取得機能201、輝度調整機能202、推論用断面画像データ生成機能203及び推定機能204が実現される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0096】
図16に示した推定装置20が有する機能の少なくとも一部は、LSI、ASIC、FPGA、GPU等の回路部を含むハードウェアにより実現されてもよい。或いは、図16に示した推定装置20が有する機能の少なくとも一部は、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現されてもよい。また、これらのハードウェアは、一つに統合されていてもよいし、複数に分かれていてもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明した。ただし、機械学習モデル生成プログラム、推定プログラム、機械学習モデル生成装置、推定装置、機械学習モデル生成方法及び推定方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換、組み合わせ及び設計変更の少なくとも一つを加えることができる。
【0098】
また、上述した本発明の実施形態の効果は、一例として説明した効果である。したがって、本発明の実施形態は、上述した効果以外にも上述した実施形態の記載から当業者が認識し得る他の効果も奏し得る。
【符号の説明】
【0099】
10…機械学習モデル生成装置、100…機械学習モデル生成プログラム、101…画像データ取得機能、102…輝度調整機能、103…学習用断面画像データ生成機能、104…機械学習実行機能、20…推定装置、200…推定プログラム、201…画像データ取得機能、202…輝度調整機能、203…推論用断面画像データ生成機能、204…推定機能、900…機械学習装置、900M…機械学習モデル、11,21…プロセッサ、12,22…主記憶装置、13,23…通信インターフェース、14,24…補助記憶装置、15,25…入出力装置、16,26…バス
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