(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148281
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】心筋血流の循環指標算出方法、プログラムおよび情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01T1/161 B
G01T1/161 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056215
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】為重 喜行
(72)【発明者】
【氏名】宮村(布村) 梢
(72)【発明者】
【氏名】白井 求
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅博
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF04
4C188KK24
4C188KK33
4C188MM04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便に心筋血流の循環指標を求める技術を提供する。
【解決手段】負荷状態にある被験者にTl製剤を投与してダイナミック収集によるSPECT撮像を行うステップと、負荷状態にある被験者をSPECT撮像して負荷後像を取得するステップと、Tl製剤の再分布時に安静状態にある被験者をSPECT撮像して再分布像を取得するステップと、ダイナミック収集によって得られたダイナミック画像に基づいて時間放射能曲線を求め、sMBFを求めるステップと、負荷後像および再分布像に基づいてTlのWORを求めるステップと、次の関係式(1)に基づき、sMBFとWORからrMBFを求めるステップと、
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
求めたrMBFとsMBFとに基づいてCFRを求めるステップとを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の心筋血流の循環指標を算出する方法であって、
負荷状態の被験者に放射性タリウム製剤(Tl製剤)を投与した後早期に収集された負荷時の心筋SPECT画像データ、および、前記Tl製剤の再分布時に収集された安静時の心筋SPECT画像データを取得するステップと、
前記負荷時の心筋SPECT画像データから負荷時心筋血流量(sMBF)を求めるステップと、
前記負荷時の心筋SPECT画像データおよび前記安静時の心筋SPECT画像データに基づいて放射能の洗い出し率(WOR)を求めるステップと、
次の関係式(1)に基づき、負荷時心筋血流量(sMBF)と洗い出し率(WOR)から安静時心筋血流量(rMBF)を求めるステップと、
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
求めた安静時心筋血流量(rMBF)と負荷時心筋血流量(sMBF)とに基づいて、冠動脈血流予備能(CFR)を含む前記循環指標を求めるステップと、
を備える、循環指標算出方法。
【請求項2】
負荷時心筋血流量(sMBF)を求める前記ステップにおいて、ダイナミック収集によって得られた複数の時間点における前記負荷時の心筋SPECT画像データに基づいて時間放射能曲線を求め、前記時間放射能曲線に基づいて負荷時心筋血流量(sMBF)を求める、請求項1に記載の循環指標算出方法。
【請求項3】
負荷時心筋血流量(sMBF)を求める前記ステップにおいて、前記負荷時の心筋SPECT画像データと前記Tl製剤の投与量と被験者の体重とに基づいてSUV(Standard Uptake Value)を求め、予め取得されたSUVと負荷時心筋血流量(sMBF)との相関関係に基づいて、負荷時心筋血流量(sMBF)を求める、請求項1に記載の循環指標算出方法。
【請求項4】
前記負荷時心筋血流量(sMBF)と、前記冠動脈血流予備能(CFR)とに基づいて、CFC(Coronary Flow Capacity)を算出するステップをさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の循環指標算出方法。
【請求項5】
前記循環指標の少なくとも1つをポーラーマップで表示するステップをさらに備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の循環指標算出方法。
【請求項6】
前記ポーラーマップで表示するステップにおいて、負荷時心筋血流量(sMBF)および洗い出し率(WOR)の少なくとも1つまたは両方をポーラーマップで表示し、ポーラーマップで表示された前記循環指標と並べて表示することを含む、請求項5に記載の循環指標算出方法。
【請求項7】
被験者の心筋血流の循環指標を算出するためのプログラムであって、コンピュータに、
負荷状態の被験者に放射性タリウム製剤(Tl製剤)を投与した後早期に収集された負荷時の心筋SPECT画像データ、および、前記Tl製剤の再分布時に収集された安静時の心筋SPECT画像データを取得するステップと、
前記負荷時の心筋SPECT画像データから負荷時心筋血流量(sMBF)を求めるステップと、
前記負荷時の心筋SPECT画像データおよび前記安静時の心筋SPECT画像データに基づいて放射能の洗い出し率(WOR)を求めるステップと、
次の関係式(1)に基づき、負荷時心筋血流量(sMBF)と洗い出し率(WOR)から安静時心筋血流量(rMBF)を求めるステップと、
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
求めた安静時心筋血流量(rMBF)と負荷時心筋血流量(sMBF)とに基づいて、冠動脈血流予備能(CFR)を含む前記循環指標を求めるステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項8】
被験者の心筋血流の循環指標を算出するための情報処理装置であって、
負荷状態の被験者に放射性タリウム製剤(Tl製剤)を投与した後早期に収集された負荷時の心筋SPECT画像データ、および、前記Tl製剤の再分布時に収集された安静時の心筋SPECT画像データを取得するデータ取得部と、
前記負荷時の心筋SPECT画像データから負荷時心筋血流量(sMBF)を求めるsMBF算出部と、
前記負荷時の心筋SPECT画像データおよび前記安静時の心筋SPECT画像データに基づいて放射能の洗い出し率(WOR)を求めるWOR算出部と、
次の関係式(1)に基づき、負荷時心筋血流量(sMBF)と洗い出し率(WOR)から安静時心筋血流量(rMBF)を求めるrMBF算出部と、
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
求めた安静時心筋血流量(rMBF)と負荷時心筋血流量(sMBF)とに基づいて、冠動脈血流予備能(CFR)を含む前記循環指標を求める循環指標算出部と、
求めた循環指標を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心筋血流の循環指標を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋血流検査に用いられるTl製剤(塩化タリウム(201Tl))は、虚血の検出や心筋生存能(心筋Viability)の評価に優れている。また、Tl製剤は、再分布現象があるため、1回の投与で負荷時と再分布時の撮像が可能である。運動負荷Tl検査で利用される心筋からの洗い出し率(WOR:Washout rate)は、次の式で計算される。
{(負荷後像カウント)-(再分布像カウント)}/(負荷後像カウント)×100%
【0003】
なお、再分布像は負荷後像より3~4時間後に撮像されるので、その時間分だけカウントが減衰する。この減衰分を補正するために、上式において、再分布像カウントに時間補正係数を乗じることもある。
【0004】
WORは、3枝病変の診断に有用である。正常部位ではWORは40~50%であるが、心筋虚血部位ではWORは低下し、40%以下を異常値とすることが多い。
【0005】
また、心筋血流検査に用いられる指標として、冠動脈血流予備能(CFR:Coronary Flow Reserve)が知られている。CFRは、安静時の心筋血流量(rMBF:rest Myocardial Blood Flow)と負荷時の心筋血流量(sMBF:stress Myocardial Blood Flow)の比である。CFRの低下は、冠微小循環障害や機能的虚血を反映するだけでなく、冠動脈の独立した予後予測因子である。さらに、心筋血流検査に用いられる指標として、Coronary Flow Capacity(CFC)が注目されている。CFCは、sMBFおよびCFRとの組み合わせにより算出される指標であり、rMBF、sMBF又はCFR単独で心筋血流の循環指標を評価するよりも優れた評価が可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shinya Shiraishi他「Prediction of Left Main or 3-Vessel Disease Using Myocardial Perfusion Reserve on Dynamic Thallium-201 Single-Photon Emission Computed Tomography With a Semiconductor Gamma Camera」 Circulation Journal 2015; 79:623-631
【非特許文献2】Robert M Bober他「The impact of revascularization on myocardial blood flow as assessed by positron emission tomography」 Eur J Nucl Med Mol Imaging 2019;46(6):1226-1239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、CFRは、sMBFとrMBFの比であるので、CFRを算出するためには、負荷時と安静時の両方において、Tl,Tc等の心筋SPECT製剤を被験者に投与する必要があり、患者の負担が大きいと共に算出手順も煩雑であった(非特許文献1)。また、CFCは心筋血流の循環指標の包括的な評価指標であり、CFRとsMBFの組み合わせから算出されるため、CFCの算出手順も煩雑であった(非特許文献2)。
【0008】
そこで、本発明は、上記背景に鑑み、簡便にCFRを始めとする心筋血流の循環指標を定量する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の心筋血流の循環指標算出方法は、被験者の心筋血流の循環指標を算出する方法であって、負荷状態の被験者に放射性タリウム製剤(Tl製剤)を投与した後早期に収集された負荷時の心筋SPECT画像データ、および、前記Tl製剤の再分布時に収集された安静時の心筋SPECT画像データを取得するステップと、前記負荷時の心筋SPECT画像データから負荷時心筋血流量(sMBF)を求めるステップと、前記負荷時の心筋SPECT画像データおよび前記安静時の心筋SPECT画像データに基づいて放射能の洗い出し率(WOR)を求めるステップと、次の関係式(1)に基づき、負荷時心筋血流量(sMBF)と洗い出し率(WOR)から安静時心筋血流量(rMBF)を求めるステップと、
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
求めた安静時心筋血流量(rMBF)と負荷時心筋血流量(sMBF)とに基づいて、冠動脈血流予備能(CFR)を含む前記循環指標を求めるステップとを備える。
【0010】
本発明のプログラムは、被験者の心筋血流の循環指標を算出するためのプログラムであって、コンピュータに、負荷状態の被験者に放射性タリウム製剤(Tl製剤)を投与した後早期に収集された負荷時の心筋SPECT画像データ、および、前記Tl製剤の再分布時に収集された安静時の心筋SPECT画像データを取得するステップと、前記負荷時の心筋SPECT画像データから負荷時心筋血流量(sMBF)を求めるステップと、前記負荷時の心筋SPECT画像データおよび前記安静時の心筋SPECT画像データに基づいて放射能の洗い出し率(WOR)を求めるステップと、次の関係式(1)に基づき、負荷時心筋血流量(sMBF)と洗い出し率(WOR)から安静時心筋血流量(rMBF)を求めるステップと、
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
求めた安静時心筋血流量(rMBF)と負荷時心筋血流量(sMBF)とに基づいて、冠動脈血流予備能(CFR)を含む前記循環指標を求めるステップと、を実行させる。
【0011】
本発明の情報処理装置は、被験者の心筋血流の循環指標を算出するための情報処理装置であって、負荷状態の被験者に放射性タリウム製剤(Tl製剤)を投与した後早期に収集された負荷時の心筋SPECT画像データ、および、前記Tl製剤の再分布時に収集された安静時の心筋SPECT画像データを取得するデータ取得部と、前記負荷時の心筋SPECT画像データから負荷時心筋血流量(sMBF)を求めるsMBF算出部と、前記負荷時の心筋SPECT画像データおよび前記安静時の心筋SPECT画像データに基づいて放射能の洗い出し率(WOR)を求めるWOR算出部と、次の関係式(1)に基づき、負荷時心筋血流量(sMBF)と洗い出し率(WOR)から安静時心筋血流量(rMBF)を求めるrMBF算出部と、
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
求めた安静時心筋血流量(rMBF)と負荷時心筋血流量(sMBF)とに基づいて、冠動脈血流予備能(CFR)を含む前記循環指標を求める循環指標算出部と、求めた循環指標を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Tl製剤を1回投与して得られた心筋SPECT画像に基づいて、簡便にCFRを始めとする心筋血流の循環指標を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態の情報処理装置の構成を示す図である。
【
図2】検査プロトコルおよび情報処理装置に入力されるSPECTデータを説明するための図である。
【
図3】CFCのステージを求める方法の一例を示す図である。
【
図4】(a)sMBFとCFRのデータをポーラーマップ表示した例を示す図である。(b)sMBFとCFRのデータを3D表示した例を示す図である。
【
図5】実施の形態の循環指標算出方法の例を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態の循環指標算出方法の別の例を示すフローチャートである。
【
図7】Tl製剤を2回投与する従来の方式について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態に係る心筋血流の循環指標の算出方法および情報処理装置について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも好ましい態様の一例を示したものであり、特許請求の範囲に記載された発明を限定する意図ではない。
【0015】
図1は、実施の形態の情報処理装置1の構成を示す図である。情報処理装置1は、心筋SPECT画像データを取得するデータ取得部10と、心筋SPECT画像データに基づいてCFRやCFCといった心筋血流の循環指標を求める演算部11と、求めた心筋血流の循環指標を出力する出力部12とを有している。
【0016】
図2は、情報処理装置1で処理するデータを取得するための検査プロトコルおよび取得する心筋SPECT画像データについて説明する図である。まず、被験者に対して負荷薬剤を投与し、心臓に負荷をかける。ここで用いられる負荷薬剤は、アデノシン(adenosine)やジピリダモール(Dipyridamole)等である。なお、本実施の形態では、負荷薬剤により心臓に負荷をかけているが、被験者に運動をさせることで心臓に負荷をかけてもよい。
【0017】
続いて、被験者にTl製剤(塩化タリウム(201Tl))を投与し、プレダイナミック収集により心臓の位置を確認した後、ダイナミック収集によるSPECT撮像を行い、ダイナミック画像を取得する。続いて、心電図同期SPECTにより負荷後像(負荷時の心筋SPECT画像データ)を取得する。ダイナミック収集の時間は一例として、Tl製剤の投与から約6分間であり、心電図同期SPECTの時間は、一例として7分間である。
【0018】
次に、Tl製剤の投与から3~4時間後に、心電図同期SPECTにより再分布像を取得する。ここで、心電図同期SPECTの時間は一例として7分間である。
図2に示す手順で取得したダイナミック画像と負荷後像と再分布像のデータを情報処理装置1に入力する。
【0019】
図1に戻って、情報処理装置1の構成について説明する。演算部11は、sMBF算出部20と、WOR算出部21と、rMBF算出部22と、CFR算出部23と、CFC算出部24とを有している。sMBF算出部20は、ダイナミック画像から、時間放射能曲線(TAC:Time activity curve)を求め、時間放射能曲線に基づいてsMBFを求める機能を有する。
【0020】
なお、本実施の形態では、sMBFを求めるためにダイナミック画像を用いる例を取り上げて説明しているが、ダイナミック画像を用いない方法でsMBFを求めてもよい。一例として、SUV(standardized uptake value)とsMBFとの相関関係を予め求め、その相関関係のデータを記憶部に記憶しておく。被験者へのTl製剤の投与量、Tl製剤の心筋カウントおよび被験者の体重からSUVを算出し、Stage分類図によりsMBFを求めることとしてもよい。この場合、
図2で説明した検査プロトコルにおいて、ダイナミック収集は不要である。
【0021】
WOR算出部21は、データ取得部10にて取得した負荷後像と再分布像に基づいて、TlのWORを算出する機能を有する。WORは上述した公知の算出式に基づいて、算出することができる。
【0022】
rMBF算出部22は、sMBFとWORからrMBFを求める機能を有する。本実施の形態では、次の関係式が成り立つと仮定する。
WOR=(sMBF-rMBF)/rMBF・・・(1)
sMBF算出部20およびWOR算出部21にて、sMBFとWORが求められているので、rMBF算出部22は、上記の関係式(1)に基づいて、rMBFの値を求める。
【0023】
CFR算出部23は、求めたrMBFとsMBFとに基づいてCFRを求める機能を有する。CFC算出部24は、CFC(Coronary Flow Capacity)を求める機能を有する。
図3は、CFCのステージを求める方法の一例を説明するための図である。
図3は、心筋血流PET検査で予め求めたsMBFとCFRの相関関係からStage分類図としてそれぞれのカットオフ値を決められた図表である。情報処理装置1は、
図3に示すテーブルを記憶部に記憶している。情報処理装置1は、
図3に示すテーブルを参照し、心臓の各部位について求めたsMBFとCFRの値に対応するCFCのステージを求める。
【0024】
出力部12は、演算部11にて求めたCFRおよびCFCのデータを出力する機能を有する。出力部12は、CFRおよびCFCだけでなく、sMBFのデータを出力してもよく、本実施の形態では、sMBFとCFRとCFCを並べて表示する。
【0025】
図4(a)および
図4(b)は、出力画面の例を示す図である。
図4(a)は、算出されたsMBFとCFRとCFCのデータをポーラーマップ表示した例を示し、
図4(b)は3D表示した例を示す。
図4は白黒で記載しているが、実際の画面では、血流量に応じた色が付与されている。このようにポーラーマップあるいは3D表示によりCFR、CFCを表示することにより、診断に役立てることができる。
【0026】
本実施の形態の情報処理装置1のハードウェアの例は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、ディスプレイ、キーボード、マウス、通信インターフェース等を備えたコンピュータである。上記した各機能を実現するモジュールを有するプログラムをRAMまたはROMに格納しておき、CPUによって当該プログラムを実行することによって、上記した情報処理装置1が実現される。このようなプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0027】
図5は、本実施の形態の循環指標算出方法を示すフローチャートである。循環指標算出方法は、SPECT撮像を行う段階(S10~S13)と、SPECTデータに基づく演算処理を行う段階(S14~S20)とに分けられる。演算処理は、上述した情報処理装置1によって行われる。
【0028】
SPECT撮像を行う段階では、まず、被験者に対して、アデノシンやジピリダモール等の負荷薬剤を投与し、心臓に負荷をかける(S10)。被験者にTl製剤を静注し、ダイナミック収集によるSPECT撮像を行い(S11)、続いて、負荷後像のSPECT撮像を行う(S12)。その後、しばらく時間をおいて(例えば3時間程度)、再分布像のSPECT撮像を行う(S13)。以上のようにして、1回のTl製剤の投与により、ダイナミック画像と、負荷後像および再分布像を取得する。
【0029】
情報処理装置1は、上述の手順により取得されたSPECTデータを取得する(S14)。情報処理装置1は、ダイナミック画像に基づいてsMBFを求め(S15)、負荷後像と再分布像とに基づいてWORを算出する(S16)。
【0030】
続いて、情報処理装置1は、上述した関係式(1)にsMBFとWORを代入して、rMBFを算出し(S17)、算出されたrMBFとsMBFとに基づいてCFRを算出する(S18)。次に、情報処理装置1は、sMBFとCFRとに基づいて、CFCを算出する(S19)。情報処理装置1は、求めたsMBFとCFRとCFCのデータを出力する(S20)。なお、S17とS18の工程を省略し、sMBFとWORから直接CFCを算出してもよい。
【0031】
図6は、sMBFをSUVから求めてCFRおよびCFCを算出する方法を示すフローチャートである。循環指標算出方法は、SPECT撮像を行う段階(S30~S32)と、SPECTデータに基づく演算処理を行う段階(S33~S40)とに分けられる。演算処理は、上述した情報処理装置1によって行われる。
【0032】
SPECT撮像を行う段階では、まず、被験者に対して、アデノシンやジピリダモール等の負荷薬剤を投与し、心臓に負荷をかける(S30)。被験者にTl製剤を静注し、負荷後像のSPECT撮像を行う(S31)。その後、しばらく時間をおいて(例えば3~4時間程度)、再分布像のSPECT撮像を行う(S32)。以上のようにして、1回のTl製剤の投与により、負荷後像および再分布像を取得する。
【0033】
情報処理装置1は、まず、被験者に投与したTl製剤の投与量と被験者の体重のデータの入力を受け付ける(S33)。続いて、情報処理装置1は、上述の手順により取得されたSPECTデータを取得する(S34)。情報処理装置1は、負荷後像とTl製剤の投与量と被験者の体重とに基づいてSUVを求め、SUVとsMBFとの相関関係からsMBFを求める(S35)。また、情報処理装置1は、負荷後像と再分布像とに基づいてWORを算出する(S36)。
【0034】
続いて、情報処理装置1は、上述した関係式(1)にsMBFとWORを代入して、rMBFを算出し(S37)、算出されたrMBFとsMBFとに基づいてCFRを算出する(S38)。次に、情報処理装置1は、sMBFとCFRとに基づいて、CFCを算出する(S39)。情報処理装置1は、求めたsMBFとCFRとCFCのデータを出力する(S40)。なお、S37とS38の工程を省略し、sMBFとWORから直接CFCを算出してもよい。
【0035】
本実施の形態の循環指標算出方法によれば、1回のTl製剤の投与によって取得したSPECTデータに基づいてCFRを求めることができる。
図7は、従来のSPECTデータの取得方法を示す図である。従来は、安静時のダイナミック収集を行うために、2回目のTl投与を行う必要があったが、本実施の形態によれば、2回目のTl投与が要らなくなり、簡便にCFRを算出することができる。
【0036】
上記した実施の形態では、循環指標としてCFR,CFCを求める例を挙げたが、本発明の循環指標算出方法は、実施の形態で示した指標以外の指標を用いることができる。例えば、循環指標として、SSS(Summed Stress Score)とSRS(Summed Rest Score)との差分であるSDS(Summed Difference Score)を求めてもよい。
【0037】
上記した実施の形態では、算出されたsMBFとCFRとCFCのデータをポーラーマップ表示する例を挙げたが、虚血心筋量と負荷心筋量と左室駆出率(Ejection Fraction、EF)の指標を同時に表示してもよい。
【0038】
3つの指標を同時に表示し、予後の良さを表すStageで分類してもよい。Stageは、虚血心筋量と負荷心筋量とEFのそれぞれのカットオフ値によって決まる。負荷心筋量(Stress flow)と虚血心筋量(CFR)にEFを加えることにより予後層別化でき、予後評価を適切に行うことができる。
【実施例0039】
1.SPECTデータの取得
複数の被験者に対し、アデノシン等を投与して薬剤負荷をかける。
被験者に塩化タリウム(201Tl)注NMP(商品名、日本メジフィジックス株式会社製)を静注して、SPECT撮像により、被験者の心筋のダイナミック画像を取得し、続いて、心電図同期SPECT画像(負荷後像)を取得する。薬剤負荷の影響がなくなるまで待ち、再び心電図同期SPECT画像(再分布像)を取得する。
【0040】
さらに、安静状態にある被験者に対して2回目の塩化タリウム(201Tl)注NMPを静注して、SPECT撮像により、被験者の心筋のダイナミック画像を取得する。
【0041】
2.従来法によるCFRの算出
負荷時のダイナミック画像からsMBFを算出すると共に、安静時のダイナミック画像からrMBFを算出し、求めたsMBFとrMBFの比によりCFRを算出する。これは従来法によるCFRの算出方法であり、この方法で求めたCFRの値を比較例とする。また、sMBFとCFRとに基づいてCFCの値を求め、比較例とする。
【0042】
3.本実施例によるCFRの算出
上記1.で求めたSPECTデータのうち、2回目のダイナミック画像を用いないで、1回目のダイナミック画像と、負荷時画像と、再分布画像とを用いて本実施例の方法によりCFRを算出する。すなわち、ダイナミック画像からsMBFを算出し、負荷時画像と再分布画像に基づいてWORを算出する。続いて、上述した関係式(1)にsMBFとWORを代入して、rMBFを算出し、算出されたrMBFとsMBFとに基づいてCFRを算出する。また、sMBFとCFRとに基づいてCFCの値を求め、比較例とする。
【0043】
4.本実施例により算出されるCFRおよびCFCと比較例との比較
本実施例により算出されるCFRと比較例とを比較すると、本実施例により算出されるCFRは比較例のCFRと精度良く一致する。また、CFCについても、比較例と本実施例の結果は精度良く一致する。