(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148308
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056254
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】政岡 宥人
(72)【発明者】
【氏名】董 テイ
(72)【発明者】
【氏名】徳永 良平
(72)【発明者】
【氏名】菊川 里奈
(72)【発明者】
【氏名】北林 佑太
(72)【発明者】
【氏名】川崎 広貴
(72)【発明者】
【氏名】藤井 駿策
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA25
2H033BA26
2H033BA29
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB14
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB37
2H033BB39
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】定着に必要な熱エネルギーを抑えつつ、低コストで定着ベルトの表面温度の均一化を図る。
【解決手段】定着装置(30)は、未定着のトナー像をシートに熱定着させている。定着装置には、シートの搬送に伴って回転する無端状の定着ベルト(31)と、定着ベルトを幅方向に亘って加熱するヒーター(34)と、定着ベルトとの間にシートを挟持する押圧ローラー(41)と、が設けられている。定着ベルトの幅方向にシートが通過する通紙領域と当該通紙領域の外側の非通紙領域が並んでおり、定着ベルトからの放熱性が、通紙領域よりも非通紙領域で高くなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着のトナー像をシートに熱定着させる定着装置であって、
シートの搬送に伴って回転する無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトを幅方向に亘って加熱するヒーターと、
前記定着ベルトとの間にシートを挟持する押圧ローラーと、を備え、
前記定着ベルトの幅方向にシートが通過する通紙領域と当該通紙領域の外側の非通紙領域が並んでおり、
前記定着ベルトからの放熱性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で高くなることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ベルトの前記通紙領域よりも前記非通紙領域でうねり及び/又は表面粗さが大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着ベルトの幅方向外側に向かって、前記非通紙領域のうねり及び/又は表面粗さが段階的に大きくなることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ヒーターの前記通紙領域よりも前記非通紙領域でうねり及び/又は表面粗さが大きく形成され、
前記ヒーターから前記定着ベルトへの熱伝達性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で低くなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着ベルトと前記ヒーターの間で、前記非通紙領域には前記通紙領域よりも単位面積当たりで多くの潤滑剤が塗布され、
前記ヒーターから前記定着ベルトへの熱伝達性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で低くなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着ベルトと前記ヒーターの間で、前記非通紙領域には前記通紙領域よりも熱伝導率が低い潤滑剤が塗布され、
前記ヒーターから前記定着ベルトへの熱伝達性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で低くなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
シートに対してトナー像を形成する画像形成ユニットと、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の定着装置と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の電子写真式の画像形成装置には、未定着のトナー像を用紙に定着させる定着装置が設けられている。定着装置では、加熱状態の定着ベルトと押圧ローラーの間をシートが通過することでシートにトナー像が熱定着される。シートが定着装置を通過するときに、定着ベルトの通紙領域からシートに熱が奪われ、非通紙領域が過昇温して通紙領域と非通紙領域の温度差が大きくなる場合がある。このため、押圧ローラーの非通紙領域の熱伝導フィラーの含有量を増やして、定着ベルトの非通紙領域から押圧ローラーの心金に熱を逃がす定着装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の定着装置では、押圧ローラーの熱伝導率が上昇して、定着ベルトから押圧ローラーに熱量が逃げるため、定着に必要な熱エネルギーが増加する。また、押圧ローラーに熱伝導フィラーを追加するためにコストが増加するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、定着に必要な熱エネルギーを抑えつつ、低コストで定着ベルトの表面温度の均一化を図ることができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の定着装置は、未定着のトナー像をシートに熱定着させる定着装置であって、シートの搬送に伴って回転する無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトを幅方向に亘って加熱するヒーターと、前記定着ベルトとの間にシートを挟持する押圧ローラーと、を備え、前記定着ベルトの幅方向にシートが通過する通紙領域と当該通紙領域の外側の非通紙領域が並んでおり、前記定着ベルトからの放熱性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で高くなる。
【0007】
前記定着装置では、前記定着ベルトの前記通紙領域よりも前記非通紙領域でうねり及び/又は表面粗さが大きく形成されている。
【0008】
前記定着装置では、前記定着ベルトの幅方向外側に向かって、前記非通紙領域のうねり及び/又は表面粗さが段階的に大きくなる。
【0009】
前記定着装置では、前記ヒーターの前記通紙領域よりも前記非通紙領域でうねり及び/又は表面粗さが大きく形成され、前記ヒーターから前記定着ベルトへの熱伝達性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で低くなる。
【0010】
前記定着装置では、前記定着ベルトと前記ヒーターの間で、前記非通紙領域には前記通紙領域よりも単位面積当たりで多くの潤滑剤が塗布され、前記ヒーターから前記定着ベルトへの熱伝達性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で低くなる。
【0011】
前記定着装置では、前記定着ベルトと前記ヒーターの間で、前記非通紙領域には前記通紙領域よりも熱伝導率が低い潤滑剤が塗布され、前記ヒーターから前記定着ベルトへの熱伝達性が、前記通紙領域よりも前記非通紙領域で低くなる。
【0012】
本発明の一態様の画像形成装置は、シートに対してトナー像を形成する画像形成ユニットと、上記の定着装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、定着ベルトの放熱性が通紙領域よりも非通紙領域で高くなることで、定着ベルトの非通紙領域の過昇温が抑えられて表面温度の均一化が図られる。押圧ローラーに熱を逃がす構造と比較して、定着に必要な熱エネルギーを抑えることができる。また、既存の押圧ローラーを用いることでコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本実施形態の定着ベルトとヒーターの断面模式図である。
【
図4】定着ベルトの表面温度とベルト位置の関係を示すグラフである。
【
図5】定着ベルトの表面温度とベルト位置の関係を示すグラフである。
【
図6】第1の変形例の定着ベルトとヒーターの断面模式図である。
【
図7】第2の変形例の定着ベルトとヒーターの断面模式図である。
【
図8】第3の変形例の定着ベルトとヒーターの断面模式図である。
【
図9】第4の変形例の定着ベルトとヒーターの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の定着装置を備えた画像形成装置について説明する。
図1は、本実施形態の画像形成装置の模式図である。なお、以下の説明では、画像形成装置としてプリンターを例示して説明する。各図に適宜付される矢印L、R、U、Loは、画像形成装置を正面から見たときに左側、右側、上側、下側を示している。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置10は箱型形状のハウジング11を備えている。ハウジング11の右側面にはシート束がセットされる給紙カセット12が配置され、ハウジング11の左側面には画像形成済みのシートが積み重ねられる排紙トレイ13が設けられている。ハウジング11内には、複数のローラー等によって給紙カセット12から排紙トレイ13にシートを搬送する搬送経路が形成されている。給紙カセット12の先端付近には、給紙カセット12のシート束からシートを取り出して、搬送経路の上流端に送り出すピックアップローラー14が配置されている。
【0017】
ピックアップローラー14の下流側には画像形成ユニット15が配置されている。画像形成ユニット15にはシートに転接する感光体ドラム16が回転可能に設けられており、感光体ドラム16の周囲には帯電装置17と、現像装置18と、転写装置19と、クリーニング装置21とが転写のプロセス順に配置されている。現像装置18にはトナーコンテナ(不図示)が接続されており、クリーニング装置21には廃トナーボックス(不図示)が接続されている。画像形成ユニット15の上方には、感光体ドラム16に向けてレーザー光を照射する露光装置22が配置されている。
【0018】
画像形成ユニット15の下流には搬送ベルト23が配置されており、搬送ベルト23の下流には未定着のトナー像をシートに熱定着する定着装置30が配置されている。定着装置30には、搬送経路を挟んで対向する定着ベルト31と押圧ローラー41が設けられている。定着ベルト31にはヒーター34(
図2参照)が内蔵されている。定着装置30の上方には、定着時に発生した排気ガスをハウジング11外に排出する排気装置25が配置されている。排気装置25のダクト26には、定着装置30付近で発生した排気ガスをダクト26内に引き込むファン27が設けられている。
【0019】
画像形成装置10の画像形成時には、帯電装置17によって感光体ドラム16の表面が帯電された後、露光装置22からのレーザー光によって感光体ドラム16の表面に静電潜像が形成される。現像装置18から感光体ドラム16の表面の静電潜像にトナーが付着されてトナー像が形成される。一方で、ピックアップローラー14によって給紙カセット12からシートが取り込まれ、画像形成動作に合わせて転写装置19に向けてシートが搬送されて、転写装置19によって感光体ドラム16の表面からシートの表面にトナー像が転写される。感光体ドラム16に残留した廃トナーはクリーニング装置21によって除去される。
【0020】
転写済みのシートは転写装置19から搬送ベルト23に受け渡され、搬送ベルト23によって定着装置30に向けて搬送される。定着装置30では、定着ベルト31の熱によって未定着のトナー像が溶融されて、定着ベルト31及び押圧ローラー41の圧力によってシートにトナー像が定着される。定着済みのシートは定着ベルト31及び押圧ローラー41によって排紙トレイ13に送り出される。シートの定着時には排気ガスが発生しており、排気装置25のファン27によって排気ガスがダクト26に引き込まれて、ダクト26を通じてハウジング11外に排気ガスが排出される。
【0021】
次に、
図2を参照して、定着装置について説明する。
図2は、本実施形態の定着装置の断面模式図である。
【0022】
図2に示すように、画像形成装置10(
図1参照)には、無端状の定着ベルト31を用いて、未定着のトナー像をシートに熱定着させるベルト定着方式の定着装置30が採用されている。定着装置30はシートの搬送経路を挟んで定着ベルト31と押圧ローラー41とを対向配置させており、定着ベルト31と押圧ローラー41の間に定着ニップNが形成されている。定着ベルト31の内側には、定着ベルト31の幅方向(紙面に対する垂直方向)に沿うように長尺のサポートフレーム32が設けられている。サポートフレーム32は、ステンレス鋼等の金属材料によって断面略角型U字状に形成されている。
【0023】
サポートフレーム32の下部には、定着ベルト31を内側から支持する長尺のパッド33が取り付けられている。パッド33は、耐熱性樹脂によって断面略円弧状に形成されている。パッド33は定着ベルト31を挟んで押圧ローラー41に対向しており、押圧ローラー41によって定着ベルト31がパッド33に押し付けられている。パッド33の支持面には幅方向に沿って凹部が形成されており、パッド33の凹部には定着ベルト31を幅方向に亘って内側から加熱するヒーター34が設けられている。ヒーター34は、基材上に断熱層、発熱層、保護層を積層した面状ヒーターによって構成されている。
【0024】
また、サポートフレーム32の両側面には、定着ベルト31の回転を内側からガイドするガイド板35が支持片36、37を介して取り付けられている。ガイド板35は、ステンレス等の長尺の金属薄板によって断面略円弧状に形成されている。定着ベルト31は、シート幅よりも幅方向(回転軸方向)に長い筒状に形成されており、シートの搬送に伴って回転するように配置されている。定着ベルト31は、例えば径方向内側から外側に向かって積層された基材層、弾性層、離型層によって形成されている。基材層はニッケル又は銅等、弾性層はシリコーンゴム等、離型層はフッ素系樹脂等によってそれぞれ形成されている。
【0025】
押圧ローラー41は、円柱状に形成されており、定着ベルト31との間にシートを挟持している。押圧ローラー41は、例えば回転軸を中心に回転可能な円柱状のコア材42と、コア材42の外周に設けられた弾性層43と、弾性層43の外面を覆う離型層(不図示)とによって形成されている。コア材42はステンレス又はアルミニウム等の金属、弾性層43はシリコーンゴム等、離型層はフッ素系樹脂等によってそれぞれ形成されている。押圧ローラー41にはモーター等の駆動源44が接続されており、駆動源44によって押圧ローラー41が回転駆動される。また、定着ベルト31の内側にはグリス等の潤滑剤が塗布されている。
【0026】
ところで、定着装置30には、シートが通過する通紙領域A1と通紙領域A1の外側の非通紙領域A2が定着ベルト31の幅方向に並んでいる(
図3参照)。シートが定着装置30を通過するときには、定着ベルト31の幅方向中央の通紙領域A1からシートに熱が奪われて、定着ベルト31の幅方向両端側の非通紙領域A2の温度が通紙領域A1の温度よりも相対的に高くなる。このため、定着ベルト31の非通紙領域A2が過昇温するおそれがある。このような場合、定着ベルト31の非通紙領域A2の熱を押圧ローラー41等の他部材に逃がして過昇温を抑える構造が一般的である。
【0027】
しかしながら、定着ベルト31の熱を押圧ローラー41等の他部材に逃がす構造では、定着に必要なエネルギーが増加して、定着装置30のウォームアップ時間が長くなるという不具合がある。そこで、本実施形態の定着装置30は、非通紙領域A2で定着ベルト31から熱を逃がして過昇温を抑える代わりに、定着ベルト31の通紙領域A1よりも非通紙領域A2で放熱し易くすることによって過昇温を抑える構造を採用している。これにより、エネルギー消費を増やすことなく、定着ベルト31の通紙領域A1と非通紙領域A2の温度分布を均一に近づけている。
【0028】
以下、
図3から
図5を参照して、ヒーターと定着ベルトの間の熱伝達性について説明する。
図3は、本実施形態の定着ベルトとヒーターの断面模式図である。
図4及び
図5は、定着ベルトの表面温度とベルト位置の関係を示すグラフである。なお、
図4及び
図5において縦軸は定着ベルトの表面温度、横軸はベルトの幅方向の位置をそれぞれ示している。なお、以下の説明では、うねりとは比較的大きな周期の起伏を示し、表面粗さとはうねりよりも細かな周期の起伏を示している。
【0029】
図3に示すように、定着ベルト31の幅方向にて、ヒーター34はシート全体を加熱できるように通紙領域A1よりも長く形成されている。このため、定着ベルト31の通紙領域A1だけでなく非通紙領域A2にもヒーター34から熱が伝えられている。このとき、定着ベルト31の通紙領域A1よりも非通紙領域A2でうねりが大きく形成されている。すなわち、定着ベルト31の非通紙領域A2の波状の起伏が、定着ベルト31の通紙領域A1の波状の起伏よりも大きい。
【0030】
定着ベルト31のうねりは、放熱フィンとして機能している。定着ベルト31の非通紙領域A2の表面積がうねりによって大きくなって、定着ベルト31から空気中に逃げる熱が増えて定着ベルト31の非通紙領域A2の過昇温が抑えられている。このように、定着ベルト31の通紙領域A1と非通紙領域A2でうねりの大きさを変えることで、通紙領域A1よりも非通紙領域A2でヒーター34から定着ベルト31への熱伝達性が低く調整されている。
【0031】
なお、本実施形態の定着ベルト31にはうねりによって起伏が形成されているが、定着ベルトには表面粗さによって細かな起伏が形成されていてもよい。すなわち、定着ベルトの通紙領域A1よりも非通紙領域A2で表面粗さが大きく形成されていてもよいし、定着ベルトの通紙領域A1よりも非通紙領域A2でうねり及び表面粗さが大きく形成されていてもよい。これらの定着ベルトであっても、通紙領域A1よりも非通紙領域A2で放熱性が高く調整されて、定着ベルトの温度分布が幅方向で均一に近づけられる。
【0032】
図4及び
図5に示すように、2種類の定着ベルトを用意して、室温23℃及び湿度50%の通常環境にて、プリンターの連続印字の飽和点になった時点で各定着ベルトの通紙領域A1及び非通紙領域A2の温度を測定した。この結果、
図4に示すように、うねりが無い一般的な定着ベルトが定着装置に用いられた場合には、定着ベルトの非通紙領域A2が過昇温されている。この場合には、定着ベルトの非通紙領域A2の最大温度が異常温度T1よりも高くなると共に、定着ベルトの通紙領域A1と非通紙領域A2の温度差が大きくなっている。
【0033】
一方で、
図5に示すように、通紙領域A1よりも非通紙領域A2のうねりが大きい定着ベルトが定着装置に用いられた場合には、定着ベルトの非通紙領域A2が過昇温されていない。この場合には、定着ベルトの非通紙領域A2の最大温度が異常温度T1以下に抑えられると共に、定着ベルトの通紙領域A1と非通紙領域A2の温度差が均一に近づけられている。このように、定着ベルトの非通紙領域A2のうねりが大きく形成されることで、定着ベルトの非通紙領域A2の表面温度は高くなるものの、異常温度T1よりも高くなることがない。
【0034】
以上、本実施形態によれば、定着ベルト31の放熱性が通紙領域A1よりも非通紙領域A2で高くなることで、定着ベルト31の非通紙領域A2の過昇温が抑えられて表面温度の均一化が図られる。押圧ローラー41に熱を逃がす構造と比較して、定着に必要な熱エネルギーを抑えることができる。また、既存の押圧ローラー41を用いることでコストを低減することができる。
【0035】
さらに、画像形成装置10(
図1参照)に本実施形態の定着装置30を適用することで、定着ベルト31の破損を抑えてシートに対して未定着のトナー像を良好に定着させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、定着ベルトの非通紙領域では定着ベルトの通紙領域よりもうねりが大きく形成されているが、ヒーターから定着ベルトへの熱伝達性が通紙領域よりも非通紙領域で低くされていてもよい。以下、
図6から
図9を参照して、定着装置の変形例について説明する。
図6から
図9は、第1-第4の変形例の定着ベルトとヒーターの断面模式図である。
【0037】
図6の第1の変形例に示すように、ヒーター52の通紙領域A1よりも非通紙領域A2でうねりが大きく形成されてもよい。より詳細には、ヒーター52の表面の保護層にうねりが形成されており、保護層の非通紙領域A2のうねりが保護層の通紙領域A1のうねりよりも大きい。ヒーター52の非通紙領域A2のうねりが大きくなることで、ヒーター52の非通紙領域A2から定着ベルト51の非通紙領域A2が受け取る熱が放熱し易くなって定着ベルト51の非通紙領域A2の過昇温が抑えられる。なお、ヒーターの通紙領域A1よりも非通紙領域A2で表面粗さが大きく形成されていてもよいし、ヒーターの通紙領域A1よりも非通紙領域A2でうねり及び表面粗さが大きく形成されていてもよい。
【0038】
図7の第2の変形例に示すように、定着ベルト55の幅方向外側に向かって、定着ベルト55の非通紙領域A2のうねりが段階的に大きく形成されてもよい。この場合、定着ベルト55の非通紙領域A2の放熱性が幅方向外側に向かって高くなるとともに、シートへの熱伝達性が幅方向外側に向かって低くなり、シートサイズが異なる複数種類のシートの搬送に対応させることができる。例えば、通紙領域A1よりもシート幅が大きな他のシートが搬送される場合でも、定着ベルト55の非通紙領域A2と通紙領域A1の境界付近の温度が極端に低下することがない。よって、非通紙領域A2をシートの幅方向の両側部が通過しても、この定着ベルトの非通紙領域A2の温度が極端に低下することがなく、通紙領域A1の両側部に対するトナー像の定着性が悪化することが防止される。なお、定着ベルトの幅方向外側に向かって、定着ベルトの非通紙領域A2の表面粗さが段階的に大きく形成されてもよい。また、定着ベルトの幅方向外側に向かって、ヒーターの非通紙領域A2のうねり及び/又は表面粗さが段階的に大きく形成されてもよい。
【0039】
図8の第3の変形例に示すように、定着ベルト61とヒーター62の間で、非通紙領域A2には通紙領域A1よりも単位面積当たりで多くの潤滑剤63が塗布されていてもよい。この場合、定着ベルト61とヒーター62の間隔が通紙領域A1よりも非通紙領域A2で大きくなっている。非通紙領域A2では、定着ベルト61とヒーター62の間にグリス等の熱伝導率が低い潤滑剤63が厚く介在されているため、ヒーター62の非通紙領域A2から定着ベルト61の非通紙領域A2に熱が伝わり難くなって定着ベルト61の非通紙領域の過昇温が抑えられる。
【0040】
図9の第4の変形例に示すように、定着ベルト65とヒーター66の間で、非通紙領域A2には通紙領域A1の潤滑剤67よりも熱伝導率が低い潤滑剤68が塗布されていてもよい。定着ベルト65とヒーター66の間の非通紙領域A2に熱伝導率が低い潤滑剤68が塗布されることで、ヒーター66の非通紙領域A2から定着ベルト65の非通紙領域A2に熱が伝わり難くなって定着ベルト65の非通紙領域A2の過昇温が抑えられる。
【0041】
なお、本実施形態において、シートは、画像の形成対象となるシート状のものであればよく、例えば、普通紙、コート紙、トレーシングペーパー、OHP(Over Head Projector)シートでもよい。
【0042】
また、本実施形態では、画像形成装置として、プリンターを例示したが、この構成に限定されない。画像形成装置は、コピー機及びファクシミリの他、プリント機能、コピー機能及びファックス機能等を複合的に備えた複合機でもよい。
【0043】
なお、本実施形態を説明したが、他の実施形態として、上記実施形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0044】
また、本発明の技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方によって実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0045】
10 :画像形成装置
15 :画像形成ユニット
30 :定着装置
41 :押圧ローラー
63、67、68 :潤滑剤
34、52、62、66 :ヒーター
31、51、55、61、65:定着ベルト
A1 :通紙領域
A2 :非通紙領域