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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148347
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】タービンおよび過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/22 20060101AFI20231005BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20231005BHJP
   F01D 15/08 20060101ALI20231005BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F02B37/22
F02B39/00 D
F01D15/08 C
F01D25/24 E
F01D25/24 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056310
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村江 祥太
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA45
3G005GB24
3G005GB86
3G005KA07
(57)【要約】
【課題】舌部のうち機械加工面により形成された面の周方向の長さを適切な設計長さに維持する。
【解決手段】タービンは、タービン翼車17の周囲にタービンスクロール流路37a、37bが形成されたタービンハウジングと、タービンハウジングに形成され、タービンスクロール流路37aの内径側の面とタービンスクロール流路37b外径側の面とを区画する舌部43bと、舌部43bのうちタービン翼車17の回転方向RDの上流側に形成され、タービンスクロール流路37bの流路断面積が線形に減少するタービンスクロール流路37bの外径側の面を有する上流側端面51と、舌部43bのうちタービン翼車17の回転方向RDの下流側に形成され、上流側端面51と平行な面を有する下流側端面53と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車の周囲にスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、
前記タービンハウジングに形成され、前記スクロール流路の内径側の面と外径側の面とを区画する舌部と、
前記舌部のうち前記タービン翼車の回転方向の上流側に形成され、前記スクロール流路の流路断面積が線形に減少する前記スクロール流路の外径側の面を有する上流側端面と、
前記舌部のうち前記タービン翼車の回転方向の下流側に形成され、前記上流側端面と平行な面を有する下流側端面と、
を備えるタービン。
【請求項2】
前記タービンハウジングは、
前記タービン翼車が配される収容部
を有し、
前記スクロール流路は、
前記収容部と連通する第1スクロール流路と、
前記タービン翼車の回転方向において、前記第1スクロール流路と異なる位置で前記収容部と連通する第2スクロール流路と、
を有し、
前記舌部は、
前記上流側端面および前記下流側端面を有し、前記第1スクロール流路の内径側の面と前記第2スクロール流路の外径側の面とを区画する第1舌部と、
前記上流側端面および前記下流側端面を有し、前記第2スクロール流路の内径側の面と前記第1スクロール流路の外径側の面とを区画する第2舌部と、
を有する、
請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記舌部は、前記タービンハウジングと別部材により構成される、
請求項1または2に記載のタービン。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタービンを備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンおよび過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金型により鋳造され、金型の内部に配置された中子によりスクロール流路が形成されるハウジングについて開示がある。鋳造後のハウジングの内部には、スクロール流路の内径側の面と外径側の面とを区画する舌部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-208397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金型により鋳造され、中子によりスクロール流路が形成されるハウジングの一例として、タービンハウジングがある。タービンハウジングでは、タービンハウジングの鋳造後、用途によっては、舌部に機械加工を施し、舌部のうちタービン翼車と径方向に対向する面が形成されるものがある。
【0005】
しかし、タービンハウジングの鋳造時に金型内で中子が移動すると、中子の移動に応じて舌部が機械加工面に対してずれる。機械加工面に対し舌部がずれると、舌部のうち機械加工面により形成された面の周方向の長さを適切な設計長さに維持することが困難になる。
【0006】
本開示は、舌部のうち機械加工面により形成された面の周方向の長さを適切な設計長さに維持可能なタービンおよび過給機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のタービンは、タービン翼車の周囲にスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、タービンハウジングに形成され、スクロール流路の内径側の面と外径側の面とを区画する舌部と、舌部のうちタービン翼車の回転方向の上流側に形成され、スクロール流路の流路断面積が線形に減少するスクロール流路の外径側の面を有する上流側端面と、舌部のうちタービン翼車の回転方向の下流側に形成され、上流側端面と平行な面を有する下流側端面と、を備える。
【0008】
タービンハウジングは、タービン翼車が配される収容部を有し、スクロール流路は、収容部と連通する第1スクロール流路と、タービン翼車の回転方向において、第1スクロール流路と異なる位置で前記収容部と連通する第2スクロール流路と、を有し、舌部は、上流側端面および下流側端面を有し、第1スクロール流路の内径側の面と第2スクロール流路の外径側の面とを区画する第1舌部と、上流側端面および下流側端面を有し、第2スクロール流路の内径側の面と第1スクロール流路の外径側の面とを区画する第2舌部と、を有してもよい。
【0009】
舌部は、タービンハウジングと別部材により構成されてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の過給機は、上記のタービンを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、舌部のうち機械加工面により形成された面の周方向の長さを適切な設計長さに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態の過給機を示す概略断面図である。
図2図2は、図1のA-A断面図である。
図3図3は、図2中破線で示す破線部分の部分拡大図である。
図4図4は、図3に示す舌部の機械加工時における状態を説明するための図である。
図5図5は、図4に示す舌部の位置がずれた場合の機械加工時における状態を説明するための図である。
図6図6は、スクロール出口の周方向位置に対するタービンスクロール流路の流路断面積の関係を説明するための図である。
図7図7は、本開示の変形例の舌部の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本開示の実施形態の過給機TCを示す概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。以下、過給機TCの一例として、図1に示す過給機TCの構成について詳細に説明する。図1に示されるように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング3と、タービンハウジング5と、コンプレッサハウジング7とを備える。タービンハウジング5は、ベアリングハウジング3の左側に締結ボルト9によって連結される。コンプレッサハウジング7は、ベアリングハウジング3の右側に締結ボルト11によって連結される。過給機TCは、タービンTおよび遠心圧縮機Cを備える。タービンTは、ベアリングハウジング3およびタービンハウジング5を含む。タービンTは、所謂ダブルスクロール式のタービンである。遠心圧縮機Cは、ベアリングハウジング3およびコンプレッサハウジング7を含む。
【0015】
ベアリングハウジング3には、軸受孔3aが形成される。軸受孔3aは、過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔3aには、セミフローティング軸受13が配される。セミフローティング軸受13は、シャフト15を回転自在に軸支する。シャフト15の左端部には、タービン翼車17が設けられる。タービン翼車17は、タービンハウジング5に回転自在に収容されている。シャフト15の右端部には、コンプレッサインペラ19が設けられる。コンプレッサインペラ19は、コンプレッサハウジング7に回転自在に収容されている。以下、シャフト15の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ単に軸方向、径方向および周方向と呼ぶ。
【0016】
コンプレッサハウジング7には、吸気口21が形成される。吸気口21は、過給機TCの右側に開口する。吸気口21は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の対向面によって、ディフューザ流路23が形成される。ディフューザ流路23は、空気を昇圧する。ディフューザ流路23は、環状に形成される。ディフューザ流路23は、径方向内側において、コンプレッサインペラ19を介して吸気口21に連通している。
【0017】
コンプレッサハウジング7には、コンプレッサスクロール流路25が形成される。コンプレッサスクロール流路25は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路25は、例えば、ディフューザ流路23よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路23とに連通している。コンプレッサインペラ19が回転すると、吸気口21からコンプレッサハウジング7内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ19の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路23およびコンプレッサスクロール流路25で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0018】
タービンハウジング5には、排出流路27と、収容部29と、排気流路31とが形成される。排出流路27は、過給機TCの左側に開口する。排出流路27は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。排出流路27は、収容部29と連通する。排出流路27は、収容部29に対して、軸方向に連続する。収容部29には、タービン翼車17が配される。収容部29の径方向外側には、排気流路31が形成される。収容部29は、排気流路31と連通する。排気流路31は、不図示のエンジンの排気マニホールドと連通する。不図示のエンジンの排気マニホールドから排出された排気ガスは、排気流路31、および、収容部29を介して排出流路27に導かれる。排気流路31から収容部29を介して排出流路27に導かれる排気ガスは、流通過程においてタービン翼車17を回転させる。
【0019】
タービン翼車17の回転力は、シャフト15を介してコンプレッサインペラ19に伝達される。コンプレッサインペラ19が回転すると、上記のとおりに空気が昇圧される。こうして、空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0020】
図2は、図1のA-A断面図である。図2に示すように、排気流路31は、排気導入口33と、排気導入路35と、タービンスクロール流路37と、スクロール出口39とを備える。
【0021】
排気導入口33は、タービンハウジング5の外部に開口する。排気導入口33には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導入される。
【0022】
排気導入路35は、排気導入口33とタービンスクロール流路37とを接続する。排気導入路35は、例えば、直線状に形成される。排気導入路35は、排気導入口33から導入された排気ガスをタービンスクロール流路37に導く。
【0023】
タービンスクロール流路37は、スクロール出口39を介して収容部29と連通される。タービンスクロール流路37は、タービン翼車17の周囲に形成される。タービンスクロール流路37は、排気導入路35から導入された排気ガスを、スクロール出口39を介して収容部29に導く。
【0024】
タービンハウジング5には、仕切板41が形成される。仕切板41は、排気流路31内に配される。具体的に、仕切板41は、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37内に配される。仕切板41は、排気導入口33、排気導入路35、および、タービンスクロール流路37の内面に対して、軸方向に接続される。仕切板41は、排気流路31に沿って延在する。つまり、仕切板41は、排気ガスの流れ方向に沿って延在する。以下、排気ガスの流れ方向の上流側を単に上流側と呼び、排気ガスの流れ方向の下流側を単に下流側と呼ぶ。
【0025】
排気導入口33は、仕切板41により排気導入口33aと排気導入口33bとに径方向に分割される。排気導入口33aは、排気導入口33bよりも径方向内側に位置する。
【0026】
排気導入路35は、仕切板41により排気導入路35aと、排気導入路35bとに径方向に分割される。排気導入路35aは、排気導入路35bよりも径方向内側に位置する。排気導入路35aは、排気導入口33aと連通する。排気導入路35bは、排気導入口33bと連通する。
【0027】
タービンスクロール流路37は、仕切板41によりタービンスクロール流路(第2スクロール流路)37aと、タービンスクロール流路(第1スクロール流路)37bとに径方向に分割される。タービンスクロール流路37aは、タービンスクロール流路37bよりも径方向内側に位置する。タービンスクロール流路37aは、排気導入路35aと連通する。タービンスクロール流路37bは、排気導入路35bと連通する。2つのタービンスクロール流路37a,37bは、タービン翼車17に対して径方向外側に巻き回される。2つのタービンスクロール流路37a,37bは、タービン翼車17の回転方向RDに進むにつれてタービン翼車17に近づくように、巻き回される。各タービンスクロール流路37の径方向の幅は、上流側から下流側に向かうにつれて小さくなる。
【0028】
2つのタービンスクロール流路37a,37bは、収容部29の外周部における互いに異なる周方向の位置にそれぞれ接続される。タービンスクロール流路37aは、スクロール出口39aを介して収容部29と連通される。タービンスクロール流路37bは、スクロール出口39bを介して収容部29と連通される。2つのスクロール出口39a,39bは、2つのタービンスクロール流路37a,37bの各々と収容部29とをそれぞれ連通する。
【0029】
2つのスクロール出口39a,39bは、周方向に沿って形成される。具体的には、スクロール出口39aは、収容部29の一側の半周(具体的には、図2中の左側の半周)に亘って収容部29と連通される。スクロール出口39bは、収容部29の他側の半周(具体的には、図2中の右側の半周)に亘って収容部29と連通される。2つのスクロール出口39a,39bは、タービン翼車17を挟んで径方向に対向している。このように、タービンスクロール流路37aは、タービン翼車17の回転方向において、タービンスクロール流路37bと異なる位置で収容部29と連通する。
【0030】
タービンハウジング5には、第1舌部43aと、第2舌部43bとが形成される。本実施形態では、第1舌部43aの形状および大きさは、第2舌部43bの形状および大きさと同じである。ここで、同じとは、完全に同じ場合と、許容誤差(加工精度や組付誤差等)の範囲内で完全に同じ場合からずれている場合とを含む意味である。以下、同じ、または、等しいとは、完全に同じ(等しい)場合と、許容誤差(加工精度や組付誤差等)の範囲内で完全に同じ(等しい)場合からずれている場合とを含む意味である。ただし、第1舌部43aの形状および大きさは、第2舌部43bの形状および大きさと異なっていてもよい。なお、以下では、第1舌部43aおよび第2舌部43bを特に区別しない場合、単に舌部43とも呼ぶ。各舌部43は、タービンスクロール流路37aとタービンスクロール流路37bとを区画する。また、各舌部43は、スクロール出口39aとスクロール出口39bとを区画する。
【0031】
第1舌部43aは、仕切板41の下流側の端部に形成される。第1舌部43aは、タービンスクロール流路37bの内径側の面とタービンスクロール流路37aの外径側の面を区画する。第1舌部43aは、スクロール出口39aの下流側の端部E2aとスクロール出口39bの上流側の端部E1bとを区画する。第1舌部43aに対して回転方向RD側にスクロール出口39bの上流側の端部E1bが位置する。第1舌部43aに対して回転方向RDと逆側にスクロール出口39aの下流側の端部E2aが位置する。
【0032】
第2舌部43bは、タービンスクロール流路37bの下流側の端部に面する位置に設けられる。第2舌部43bは、タービンスクロール流路37aの内径側の面とタービンスクロール流路37bの外径側の面を区画する。第2舌部43bは、スクロール出口39bの下流側の端部E2bとスクロール出口39aの上流側の端部E1aとを区画する。第2舌部43bに対して回転方向RD側にスクロール出口39aの上流側の端部E1aが位置する。第2舌部43bに対して回転方向RDと逆側にスクロール出口39bの下流側の端部E2bが位置する。
【0033】
第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、180°ずれている。つまり、第1舌部43aおよび第2舌部43bは、タービン翼車17の中心軸を挟んで径方向に対向している。ただし、第1舌部43aの周方向位置は、第2舌部43bの周方向位置に対して、位相がずれていればよく、180°と異なる角度でずれていてもよい。
【0034】
タービンスクロール流路37a、37bの流路断面積は、タービンスクロール流路37a、37bの上流側から下流側に向かって漸減する。すなわち、タービンスクロール流路37a、37bの流路断面積は、回転方向RDに向かって漸減する。
【0035】
本実施形態では、スクロール出口39aに面するタービンスクロール流路37aの流路形状および大きさは、スクロール出口39bに面するタービンスクロール流路37bの流路形状および大きさと同じである。ただし、スクロール出口39aに面するタービンスクロール流路37aの流路形状および大きさは、スクロール出口39bに面するタービンスクロール流路37bの流路形状および大きさと異なっていてもよい。
【0036】
不図示のエンジンの排気マニホールドは、2以上の複数の分割路を備える。複数の分割路のうちの一部の分割路は、排気導入口33aに接続される。複数の分割路のうちの他の分割路は、排気導入口33bに接続される。不図示のエンジンから排出される排気ガスは、分割路を流通し、排気導入口33aまたは排気導入口33bに導入される。一方の排気導入口33に排気ガスが導入されるタイミングでは、基本的に、他方の排気導入口33には排気ガスが導入されない。排気導入口33aへの排気ガスの導入と、排気導入口33bへの排気ガスの導入とが、交互に繰り返される。
【0037】
排気導入口33aへ導入された排気ガスは、排気導入路35aおよびタービンスクロール流路37aを通って、スクロール出口39aから収容部29に流れる。排気導入口33bへ導入された排気ガスは、排気導入路35bおよびタービンスクロール流路37bを通って、スクロール出口39bから収容部29に流れる。一方のタービンスクロール流路37に排気ガスが流れるタイミングでは、基本的に、他方のタービンスクロール流路37には排気ガスが流れない。ゆえに、タービンスクロール流路37aとタービンスクロール流路37bとの間で圧力差が生じ、2つのタービンスクロール流路37間での排気ガスの漏れ流れが生じる。上記の漏れ流れでは、排気ガスが、一方のタービンスクロール流路37から他方のタービンスクロール流路37へ、舌部43の近傍を通って漏れ流れる。
【0038】
この2つのタービンスクロール流路37間での排気ガスの漏れ流れを抑制することで、タービン性能の低下を抑制することができる。2つのタービンスクロール流路37間での排気ガスの漏れ流れを抑制するためには、舌部43の周方向の長さを適切な設計長さにする必要がある。舌部43の周方向の長さが設計長さより短いと、舌部43が区画する2つのタービンスクロール流路37間で排気ガスが漏れやすくなる。
【0039】
一方、舌部43の周方向の長さが設計長さより長いと、タービン翼車17と舌部43の間で排気ガスがほとんど流れない領域が発生する。タービン翼車17の翼がこの領域を通過すると、タービン翼車17の翼が振動する。そのため、舌部43の周方向の長さを予め設計された適切な設計長さとし、可能な限り設計長さに対するずれを小さくする必要がある。
【0040】
本実施形態では、タービンハウジング5は、金型により鋳造される。2つのタービンスクロール流路37は、金型の内部に配置された中子により形成される。このとき、2つのタービンスクロール流路37を区画する舌部43も金型の内部に配置された中子により形成される。舌部43は、タービンハウジング5の鋳造後の機械加工により切削され、切削面により舌部43の周方向の長さが決定される。
【0041】
ここで、タービンハウジング5の鋳造時において、金型内で中子がわずかに移動する場合がある。金型内で中子が移動すると、タービンハウジング5内を機械加工する際の機械加工面に対し舌部43の位置がずれる。このように、舌部43が機械加工面からずれると、舌部43の周方向の長さが適切な設計長さからずれてしまう場合がある。換言すれば、舌部43が機械加工面からずれると、切削面における舌部43の断面積が適切な設計断面積からずれてしまう場合がある。
【0042】
そこで、本実施形態のタービンハウジング5では、舌部43の形状を工夫することによって、中子が金型内で移動し、舌部43が機械加工面からずれた場合においても、舌部43の周方向の長さを適切な設計長さに維持できるようにしている。
【0043】
図3は、図2中破線で示す破線部分の部分拡大図である。図3に示すように、舌部43bは、上流側端面51、および、下流側端面53を有する。上流側端面51は、スクロール出口39bの下流側の端部E2bを含む。下流側端面53は、スクロール出口39aの上流側の端部E1aを含む。なお、舌部43a(図2参照)は、舌部43bと同様に、上流側端面51および下流側端面53を有する。舌部43aの形状は、舌部43bの形状と同様であるため、以下では、舌部43bの上流側端面51および下流側端面53について詳細に説明し、舌部43aの上流側端面51および下流側端面53については説明を省略する。
【0044】
上流側端面51は、舌部43bのうちタービン翼車17の回転方向RDの上流側に形成される。上流側端面51は、タービンスクロール流路37bの外径側の外径端の面によって構成される。下流側端面53は、舌部43bのうちタービン翼車17の回転方向RDの下流側に形成される。下流側端面53は、タービンスクロール流路37aの内径側の内径端の面によって構成される。下流側端面53は、タービンスクロール流路37bの上流側端面51に倣った面形状を有する。具体的に、下流側端面53は、上流側端面51と平行な面である。
【0045】
図4は、図3に示す舌部43bの機械加工時における状態を説明するための図である。図5は、図4に示す舌部43bの位置がずれた場合の機械加工時における状態を説明するための図である。図4および図5に示すように、タービンハウジング5の鋳造後、タービンハウジング5内に形成される舌部43bの一部は、機械加工により切削される。図4および図5中、機械加工により切削される舌部43bの一部を破線で示す。なお、図4中の機械加工面55の位置は、図5中の機械加工面55の位置と等しい位置である。
【0046】
図4に示すように、舌部43bの一部は、機械加工面55に沿って切削され、舌部43bの機械加工面55に対応する位置には、切削面55aが形成される。同様に、図5に示すように、舌部43bの一部は、機械加工面55により切削され、舌部43bの機械加工面55に対応する位置には、切削面55a1が形成される。
【0047】
ここで、図5に示す舌部43bは、図4に示す舌部43bに対し、収容部29側にずれた位置にある。この位置ずれは、例えば、タービンハウジング5の鋳造時において金型内で中子がわずかに移動した場合に発生する。図5に示す舌部43bの切削面55a1は、図4に示す舌部43bの切削面55aと異なる位置にある。
【0048】
上述したように、下流側端面53は、上流側端面51と平行な面であり、舌部43bの上流側端面51と下流側端面53の間には、平行部PAが形成される。舌部43bの機械加工時において、機械加工面55に沿って舌部43bのうち平行部PAが切削される。舌部43bのうち平行部PAが切削されることにより、舌部43bが機械加工面55からずれた場合においても、切削面55a、55a1の周方向の長さを適切な設計長さに維持することができる。換言すれば、舌部43bのうち平行部PAが切削されることにより、舌部43bが機械加工面55からずれた場合においても、切削面55a、55a1の断面積を適切な設計断面積に維持することができる。
【0049】
ここで、舌部43が機械加工面からずれた場合、切削面55a、55a1の断面積の変化を抑制するため、舌部43を径方向に延在させるように形成することも考えられる。換言すれば、切削面55a、55a1の断面積の変化を抑制するために、舌部43をタービン翼車17の回転中心軸に向かって延在させるように形成することも考えられる。しかし、そのような場合、舌部43の上流側端面51および下流側端面53が径方向に延在することとなり、タービンスクロール流路37a、37bの流路断面積が舌部43付近で急激に変化し、タービン性能悪化の要因となり得る。
【0050】
そこで、本実施形態では、中子ズレに起因した切削面55a、55a1における舌部43の断面積の変化と、タービンスクロール流路37a、37bの流路断面積の変化の双方を抑制することを目的としている。そのため、本実施形態では、舌部43の上流側端面51と下流側端面53を平行な面としつつ、タービンスクロール流路37a、37bの流路断面積を上流側から下流側に向かって線形に減少するように形成している。
【0051】
図6は、スクロール出口39a、39bの周方向位置θに対するタービンスクロール流路37a、37bの流路断面積Aの関係を説明するための図である。ここで、スクロール出口39の周方向位置θは、スクロール出口39の上流側の端部E1a、E1bに対するずれ角θを用いて表される。図6に示されるように、例えば、スクロール出口39aの上流側の端部E1aでθ=0°とすると、スクロール出口39aの下流側の端部E2aではθ=180°となる。また、スクロール出口39bの上流側の端部E1bでθ=0°とすると、スクロール出口39bの下流側の端部E2bではθ=180°となる。
【0052】
図6に示すように、タービンスクロール流路37aの流路断面積Aは、スクロール出口39aの上流側の端部E1a(θ=0°)から下流側の端部E2a(θ=180°)に向かって線形に減少する。具体的に、タービンスクロール流路37aは、スクロール出口39aの上流側の端部E1aにおいて流路断面積A1を有し、下流側の端部E2aにおいて流路断面積A2を有する。流路断面積A2は、流路断面積A1よりも小さい。タービンスクロール流路37aの流路断面積Aは、スクロール出口39aの上流側の端部E1aにおける流路断面積A1から下流側の端部E2aにおける流路断面積A2まで線形に減少する。
【0053】
また、タービンスクロール流路37bの流路断面積Aは、スクロール出口39bの上流側の端部E1b(θ=0°)から下流側の端部E2b(θ=180°)に向かって線形に減少する。具体的に、タービンスクロール流路37bは、スクロール出口39bの上流側の端部E1bにおいて流路断面積A1を有し、下流側の端部E2bにおいて流路断面積A2を有する。流路断面積A2は、流路断面積A1よりも小さい。タービンスクロール流路37bの流路断面積Aは、スクロール出口39bの上流側の端部E1bにおける流路断面積A1から下流側の端部E2bにおける流路断面積A2まで線形に減少する。
【0054】
このように、タービンスクロール流路37a、37bは、スクロール出口39a、39bの上流側から下流側に向かって流路断面積が線形に減少する。ここで、スクロール出口39a、39bの形状は、図2に示すように、例えば円形状である。一方、タービンスクロール流路37a、37bの外径側の外径端形状は、スクロール出口39a、39bの円形状と異なり、曲率が変化する曲線形状である。タービンスクロール流路37a、37bの外径端における曲線形状の曲率は、上流側から下流側に向かって漸増する。
【0055】
つまり、タービンスクロール流路37a、37bの外径端の曲線形状は、スクロール出口39a、39bの上流側から下流側に向かって流路断面積が線形に減少するように曲率が変化する。例えば、タービンスクロール流路37a、37bの外径端とスクロール出口39a、39bとの径方向の幅は、上流側から下流側に向かって線形に減少する。これにより、スクロール出口39a、39bからタービン翼車17に向かって径方向に流れる排気ガスの流速をタービン翼車17の回転方向において一定にすることができる。
【0056】
以上、本実施形態によれば、舌部43の上流側端面51は、流路断面積が線形に減少するタービンスクロール流路37の外径側の面を有する。これにより、スクロール出口39a、39bからタービン翼車17に向かって流れる排気ガスの流速をタービン翼車17の回転方向において一定にすることができる。
【0057】
また、舌部43の下流側端面53は、上流側端面51と平行な面であるため、中子が金型内で移動し、舌部43が機械加工面からずれた場合においても舌部43の周方向の長さを適切な設計長さに維持することができる。
【0058】
図7は、本開示の変形例の舌部143bの構成を説明するための図である。図7に示すように、舌部143bは、タービンハウジング5とは別部材により構成され、タービンハウジング5の鋳造後に取り付けられる。上記実施形態と同様に、舌部143bは、互いに平行な上流側端面51および下流側端面53を有し、また、上流側端面51は、流路断面積が線形に減少するタービンスクロール流路37の外径側の面を有する。これにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、上記実施形態に対し舌部143bの周方向の長さをより設計長さに近づけることができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
上記では、タービンTが過給機TCに搭載される例を説明したが、タービンTは、過給機TC以外の装置(例えば、発電機等)に搭載されてもよい。
【0061】
上記では、排気導入口33a、排気導入路35aおよびタービンスクロール流路37aと、排気導入口33b、排気導入路35bおよびタービンスクロール流路37bとが径方向に並んで形成される例を説明したが、排気流路31における各構成要素間の位置関係は、この例に限定されない。例えば、排気導入口33a、排気導入路35aおよびタービンスクロール流路37aと、排気導入口33b、排気導入路35bおよびタービンスクロール流路37bとが、軸方向に並んで形成されていてもよい。また、タービンスクロール流路37a、37bの数は、複数に限定されず、1つのシングルスクロールであってもよい。その場合、タービンハウジング5には、上流側端面51および下流側端面53を有する1つの舌部43が形成される。また、タービンスクロール流路37a、37bの数は、2つに限定されず、タービンTのさらなる高性能化を狙って、トリプル(3流路)、クワトロ(4流路)であってもよい。上記の舌部43の構成は、タービンスクロール流路の流路数によらず適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
5 タービンハウジング
17 タービン翼車
29 収容部
37a タービンスクロール流路(第2スクロール流路)
37b タービンスクロール流路(第1スクロール流路)
39a スクロール出口
39b スクロール出口
43a 第1舌部
43b 第2舌部
51 上流側端面
53 下流側端面
E1a 上流側の端部
E1b 上流側の端部
E2a 下流側の端部
E2b 下流側の端部
T タービン
TC 過給機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7