(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148352
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】粘着シート、及び粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/00 20180101AFI20231005BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231005BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231005BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C09J7/00
C09J201/00
C09J7/30
C09J4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056319
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】土山 さやか
(72)【発明者】
【氏名】若山 洋司
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA08
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA06
4J004CB03
4J004CD01
4J004CD08
4J004CD10
4J004DA02
4J004DA03
4J004DA04
4J004DA05
4J004DB02
4J004FA05
4J004FA08
4J040CA001
4J040DD051
4J040DF001
4J040EF001
4J040EK031
4J040FA132
4J040FA141
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA19
4J040PA33
4J040PA42
(57)【要約】
【課題】浮きの発生による外観不良が抑制される粘着シートの提供。
【解決手段】基材(10)と、前記基材(10)の一方の面に設けられた粘着剤層(20)と、前記粘着剤層(20)の前記基材(10)と反対側の面に設けられた剥離フィルム(30)とを備える粘着シート(100)。前記粘着シート(100)は、幅方向に沿った断面視において、下記数式(数1)を満たす。
tanθ=W/T>0.01 ・・・(数1)
(数1中、θは、仮想線A(前記基材最端位置(EB)から、前記剥離フィルム(30)の表面(32)に対して垂直な方向に延びる仮想線)と仮想線B(前記基材最端位置(EB)と前記剥離フィルム最端位置(ES)と結ぶ仮想線)とのなす角度、Tは、前記基材最端位置(EB)から、交点(PI)までの距離、及び、Wは、前記交点(PI)から、前記剥離フィルム最端位置(ES)までの距離、を表す。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材と反対側の面に設けられた剥離フィルムとを備える粘着シートであって、
前記粘着シートは、
長手方向と、前記長手方向に対して垂直な幅方向とを有し、
前記幅方向に沿った断面視において、
前記剥離フィルムの前記粘着剤層とは反対側の外表面における剥離フィルム最端位置が、前記基材の前記粘着剤層とは反対側の外表面における基材最端位置よりも、外側に延びており、
前記基材最端位置から、前記剥離フィルムの表面に対して垂直な方向に延びる仮想線を仮想線A、
前記基材最端位置と前記剥離フィルム最端位置と結ぶ仮想線を仮想線B、
前記仮想線Aと前記仮想線Bとのなす角度をθ、
前記基材最端位置から、前記仮想線Aと前記剥離フィルムの表面との交点までの距離をT、及び、
前記交点から、前記剥離フィルム最端位置までの距離をWとしたとき、
下記数式(数1)を満たす、
粘着シート。
tanθ=W/T>0.01 ・・・(数1)
【請求項2】
請求項1に記載の粘着シートにおいて、
前記粘着剤層と、前記剥離フィルムとの剥離力が、1000mN/100mm以下である、
粘着シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の粘着シートにおいて、
前記粘着シートが、ワーク加工用粘着シートである、
粘着シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の粘着シートにおいて、
前記粘着剤層が、エネルギー線硬化性化合物を含有する、
粘着シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の粘着シートの製造方法であって、
前記粘着シートの原反を準備する工程と、
前記粘着シートの原反における基材側から切り込むことにより、前記粘着シートの原反を前記長手方向に沿って裁断する裁断工程と、
を有する、
粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、及び粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、基材と、基材上に設けられた粘着剤層と、粘着剤層上に設けられた剥離フィルムとを備えている場合がある。当該剥離フィルムは、例えば、粘着シートが使用されるまでの間、粘着剤層の基材と接していない面(以下、粘着面と称する場合がある)を保護するために設けられている。粘着シートを使用するときには、剥離フィルムは剥がされる。
【0003】
従来、粘着シートは、多くの分野において幅広く使用されている。例えば、粘着シートは、半導体部材(半導体ウエハ、及び半導体パッケージ)、及び、透明部材(ガラス基板、及びガラス板等)などのワークの加工に用いられる場合がある。粘着シートがワークの加工に用いられる場合、ワークが、粘着シートの粘着剤層に貼付された状態で、各種の加工が行われる。
【0004】
特許文献1には、基材層と粘着剤層とセパレータとをこの順に備え、該粘着剤層を形成する材料と該基材層を形成する材料とを共押し出しし、少なくとも該共押し出しされた粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で該セパレータと貼り合せて得られるセパレータ付き粘着シートが記載されている。特許文献1に記載されるセパレータ付き粘着シートは、該セパレータが剥離剤層を含み、該剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が10%以上である。そして、特許文献1に記載される粘着シートは、半導体ウエハ加工用として好適に用いられるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材と、粘着剤層と、剥離フィルムとを備えている粘着シートを裁断した場合、裁断済みの粘着シートは、端部において、剥離フィルムと粘着剤層との間で浮きが発生し、外観不良と判定される場合があった。
【0007】
例えば、特許文献1に記載される粘着シートにおいて、例えば、剥離フィルムとしてのセパレータは、140℃プレス後の剥離力が、4.0N/50mm以下であれば、優れた剥離性が得られるとされている。
しかしながら、特許文献1に記載される粘着シートのように、粘着剤層に対するセパレータの剥離力が低く設定されている粘着シートを裁断したとき、裁断済みの粘着シートは、端部において、セパレータと粘着剤層との間で浮きがより発生しやすい傾向がある。
【0008】
本発明の目的は、粘着シートの端部における浮きの発生による外観不良が抑制される粘着シート、及び当該粘着シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、基材と、前記基材の一方の面に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材と反対側の面に設けられた剥離フィルムとを備える粘着シートであって、前記粘着シートは、長手方向と、前記長手方向に対して垂直な幅方向とを有し、前記幅方向に沿った断面視において、前記剥離フィルムの前記粘着剤層とは反対側の外表面における剥離フィルム最端位置が、前記基材の前記粘着剤層とは反対側の外表面における基材最端位置よりも、外側に延びており、前記基材最端位置から、前記剥離フィルムの表面に対して垂直な方向に延びる仮想線を仮想線A、前記基材最端位置と前記剥離フィルム最端位置と結ぶ仮想線を仮想線B、前記仮想線Aと前記仮想線Bとのなす角度をθ、前記基材最端位置から、前記仮想線Aと前記剥離フィルムの表面との交点までの距離をT、及び、前記交点から、前記剥離フィルム最端位置までの距離をWとしたとき、下記数式(数1)を満たす、粘着シートが提供される。
tanθ=W/T>0.01 ・・・(数1)
【0010】
本実施形態の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着剤層と、前記剥離フィルムとの剥離力が、1000mN/100mm以下であることが好ましい。
【0011】
本実施形態の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着シートが、ワーク加工用粘着シートであることが好ましい。
【0012】
本実施形態の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着剤層が、エネルギー線硬化性化合物を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様によれば、本実施形態の一態様に係る粘着シートの製造方法であって、前記粘着シートの原反を準備する工程と、前記粘着シートの原反における基材側から切り込むことにより、前記粘着シートの原反を前記長手方向に沿って裁断する裁断工程と、
を有する、粘着シートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粘着シートの端部における浮きの発生による外観不良が抑制される粘着シート、及び当該粘着シートの製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る粘着シートの一例を表す概略断面図である。
【
図2】本実施形態に係る粘着シートの製造方法の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態の一例について例に挙げて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。
【0017】
[粘着シート]
本実施形態に係る粘着シートは、基材と、前記基材の一方の面に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材と反対側の面に設けられた剥離フィルムとを備える。
前記粘着シートは、長手方向と、前記長手方向に対して垂直な幅方向とを有し、前記幅方向に沿った断面視において、前記剥離フィルムの前記粘着剤層とは反対側の外表面における剥離フィルム最端位置が、前記基材の前記粘着剤層とは反対側の外表面における基材最端位置よりも、外側に延びている。
そして、前記粘着シートは、前記基材最端位置から、前記剥離フィルムの表面に対して垂直な方向に延びる仮想線を仮想線A、前記基材最端位置と前記剥離フィルム最端位置と結ぶ仮想線を仮想線B、前記仮想線Aと前記仮想線Bとのなす角度をθ、前記基材最端位置から、前記仮想線Aと前記剥離フィルムの表面との交点までの距離をT、及び、前記交点から、前記剥離フィルム最端位置までの距離をWとしたとき、下記数式(数1)を満たす。
tanθ=W/T>0.01 ・・・(数1)
【0018】
本実施形態に係る粘着シートは、上記構成を備えることで、例えば、粘着剤層に対する剥離フィルムの剥離力を低くした場合であっても、粘着シートの端部における浮きの発生が抑制される。このため、本実施形態に係る粘着シートによれば、粘着シートの端部に発生する浮きに起因する外観不良が抑制される。
【0019】
ここで、本実施形態に係る粘着シートについて図面を参照して説明する。図面においては、説明を容易にするために、拡大、又は縮小して図示した部分がある。
図1は、本実施形態に係る粘着シートにおける長手方向(
図1に示されるX軸に沿う方向)に垂直な幅方向(
図1に示されるY軸に沿う方向)に切断した断面を模式的に表した図である。具体的には、
図1に示される断面図は、本実施形態に係る粘着シートを幅方向に沿って断面視したときの幅方向における一方の端部の概略を表している。
【0020】
図1に示されるように、粘着シート100は、基材10と、粘着剤層20と、剥離フィルム30とを備えている。粘着シート100において、基材10の外表面12とは反対側の面に、粘着剤層20が、直接、接して積層されており、粘着剤層20の基材10側とは反対側の面に、剥離フィルム30が、直接、接して積層されている。つまり、粘着シート100は、基材10の片面に、粘着剤層20、及び剥離フィルム30が設けられており、基材10の外表面12から、剥離フィルム30の外表面32に向かって、基材10、粘着剤層20、及び剥離フィルム30が、この順で、厚さ方向(
図1に示されるZ軸に沿う方向)に積層されている。粘着シート100において、剥離フィルム30は、例えば、粘着シート100が使用されるまでの間、粘着剤層20の粘着面(基材10側と反対側の面)に積層されている。
【0021】
粘着シート100の端部は、基材10の外表面12の端縁に位置する基材最端位置EBと、剥離フィルム30の外表面32の端縁に位置する剥離フィルム最端位置ESとを備えている。粘着シート100の端部は、基材最端位置EBから剥離フィルム最端位置ESに向かって傾斜する傾斜面を備えており、剥離フィルム最端位置ESは、基材最端位置EBよりも外側に突き出ている。すなわち、剥離フィルム最端位置ESは、基材最端位置EBよりも外側に延びている。粘着シート100を幅方向に沿って断面視したときの傾斜面の形状は、直線状であるか、直線に近い形状をなしている。
【0022】
図1に示される仮想線Aは、基材最端位置EBから、剥離フィルム30の外表面32に対して垂直な方向(
図1に示されるZ軸に沿う方向)に延びる仮想線を表している。仮想線Bは、基材最端位置EBと剥離フィルム最端位置ESとを結ぶ仮想線を表している。
図1に示される交点PIは、仮想線Aと剥離フィルム30の外表面32との交点を表している。
図1に示される距離Tは、基材最端位置EBから、交点PIまでの最短距離を表している。つまり、距離Tは、粘着シート100の厚さに相当する。
図1に示される距離Wは、交点PIから、剥離フィルム最端位置ESまでの距離を表す。つまり、距離Wは、剥離フィルム最端位置ESが、基材最端位置EBよりも外側に延びている(突き出している)部分の距離に相当する。
【0023】
粘着シート100は、下記数式(数1)の関係を満たしている。
tanθ=W/T>0.01 ・・・(数1)
数式(数1)中、θは、仮想線Aと仮想線Bとのなす角度を表す。数式(数1)中、T及びWは、前述のとおりである。
【0024】
本実施形態に係る粘着シート100において、tanθ(すなわち、W/Tの値)は、粘着シート100の端部における浮きの発生による外観不良がより抑制されやすくなる観点で、0.012以上であることが好ましく、0.015以上であることがより好ましく、0.02以上であることがさらに好ましく、0.03以上であることがよりさらに好ましい。
tanθの上限は、本実施形態に係る粘着シート100の製造が可能であれば、特に限定されない。tanθは、例えば、粘着シート100の端部におけるつぶれの発生を抑制する観点で、0.5未満であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.4以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本実施形態に係る粘着シート100において、距離Tは、16μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることがよりさらに好ましく、70μm以上であることがさらになお好ましい。
距離Tは、850μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることがよりさらに好ましく、400μm以下であることがよりさらに好ましく、300μm以下であることがさらになお好ましい。
【0026】
本実施形態に係る粘着シート100において、距離Wは、前述のtanθと、距離Tとの関係において調整すればよい。
【0027】
上記の数式(数1)を調整する方法は特に限定さない。上記の数式(数1)を調整する方法は、例えば、後述の粘着シートの製造方法において説明する方法を採用することが好ましい。
【0028】
以上、図面を参照して説明したが、本発明は、
図1に示される形態に限定されない。例えば、本実施形態に係る粘着シート100は、基材10と粘着剤層20との間に粘着剤層20以外の層を設けてもよい。
図1に示される粘着シート100において、前述の傾斜面は、直線状、又は直線状に近い形状をなしているが、この形状に限られず、曲面となる部分を有していてもよいし、曲面となる部分を有していなくてもよい。
【0029】
図1では、粘着シート100の一端部を示している。これに限られず、粘着シート100は、一方の端部だけでなく、他方の端部も、上述の傾斜面を有していることが好ましい。つまり、本実施形態に係る粘着シートの幅方向(
図1に示されるY軸に沿う方向)における両端部(不図示)において、剥離フィルム最端位置が、基材最端位置よりも、外側に延びていることが好ましい。
【0030】
図示しないが、粘着シート100の幅方向の寸法(粘着シート100の両端部間の距離)は、200mm以上であることが好ましく、220mm以上であることがより好ましく、240mm以上であることがさらに好ましい。
粘着シート100の幅方向の寸法は、500mm以下であることが好ましく、400mm以下であることがより好ましく、360mm以下であることがさらに好ましい。
粘着シート100の幅方向の寸法は、一方の端部における剥離フィルム最端位置ESから、図示しない他方の端部における剥離フィルム最端位置までの距離を表す。
【0031】
以下、本実施形態に係る粘着シートを構成する各層の具体例について説明する。以下の説明において、符号は省略して説明する。
【0032】
<基材>
基材は、特に限定されず、樹脂から構成されることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。
【0033】
基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートなど)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂、及びエチレン共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等)など)、ポリ塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、及び塩化ビニル共重合体など)、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、及びアイオノマーなどが挙げられる。基材は、上記の樹脂の単層フィルムでもよく、2層以上積層された積層フィルムであってもよい。基材が積層フィルムである場合、各層の樹脂は、同種の樹脂であってよく、異種の樹脂であってもよい。
【0034】
粘着シートの端部における浮きの発生による外観不良がより抑制されやすくなる観点で、基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のエチレン共重合体であることが好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のエチレン共重合体であることがより好ましい。
【0035】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0036】
基材の少なくとも一方の面には、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、及びアンカーコーティング処理などの易接着処理が施されていてもよい。基材に接して他の層が設けられる側の面(例えば、粘着剤層と接する面)に、易接着処理が施されていれば、他の層(例えば、粘着剤層)との密着性が向上する。
【0037】
基材は、必要に応じて、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、及びフィラー等の各種添加剤を含有してもよい。また、粘着剤層が、後述するエネルギー線硬化性化合物を含む場合、基材はエネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
【0038】
基材の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、50μm以上であることがよりさらに好ましい。
基材の厚さは、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、250μm以下であることがよりさらに好ましく、200μm以下であることがさらになお好ましい。
【0039】
基材の厚さが5μm以上であれば、適度な強度を備えやすくなる。このため、例えば、粘着シートが、ワークを加工するために使用される粘着シートとして適用された場合、ワークの加工を行うために適した厚さとなるため、ワークを支持しやすくなる。
また、粘着シートが、ワークを加工するために使用される粘着シートとして適用された場合、基材の厚さが5μm以上であれば、例えば、ワークのダイシングを行いやすくなり、基材の厚さが500μm以下であれば、例えば、エキスパンドが行いやすくなる。
以下、ワークを加工するために使用される粘着シートを、ワーク加工用粘着シートと称する場合がある。
【0040】
基材は、公知の方法によって得られる。例えば、基材は、樹脂と必要に応じて添加される添加剤を含む樹脂組成物を、キャスティング法、カレンダー法、Tダイ押出法、及びインフレーション法などにより成形することによって作製することができる。
【0041】
<粘着剤層>
粘着剤層は、特に限定されず、様々な種類の粘着剤を含む粘着剤組成物から形成される。粘着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系、ポリエステル系、及びポリビニルエーテル系等の粘着剤が挙げられる。粘着剤は、用途等によって、選択されることがよい。粘着シートの端部における浮きの発生による外観不良がより抑制されやすくなる観点で、粘着剤は、アクリル系の粘着剤であることが好ましい。また、本実施形態に係る粘着シートが、ワーク加工用粘着シートとして適用された場合、粘着剤は、貼付されるワークの種類等も考慮して選択される。ワークとの粘着力を発揮しやすい観点から、粘着剤は、アクリル系の粘着剤であることが好ましい。
【0042】
粘着剤は、エネルギー線硬化性を有しない非エネルギー線硬化性の粘着剤であってもよく、エネルギー線硬化性を有する粘着剤であってもよい。エネルギー線としては、例えば、紫外線、及び電子線等が挙げられる。
【0043】
粘着剤は、エネルギー線硬化性であれば、エネルギー線の照射により、粘着剤が硬化した粘着剤層が形成される。粘着剤が硬化した粘着剤層が形成されることにより、粘着剤層の粘着性が低下する。このため、粘着シートをワーク加工用粘着シートとして適用した場合、ワーク加工用粘着シートのワークに対する粘着力を低下させることができる。この観点で、粘着剤は、エネルギー線硬化性の粘着剤であることが好ましく、紫外線硬化性の粘着剤であることがより好ましい。
【0044】
(エネルギー線硬化性を有する粘着剤)
粘着剤組成物がエネルギー線硬化性を有する場合、粘着剤組成物は、下記の(I)から(III)に例示する成分を含有する態様が挙げられ、(I)、(II)、又は(III)のいずれかの態様であることが好ましい。以下、エネルギー線硬化性を有する粘着剤組成物に含まれる上記(I)から(III)に例示した成分を総称して、粘着性樹脂と称する場合がある。
【0045】
(I):非エネルギー線硬化性の重合体と、エネルギー線硬化性化合物とを含有する成分。
(II):エネルギー線硬化性化合物を含有せず、非エネルギー線硬化性の重合体の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の重合体を含有する成分。
(III):エネルギー線硬化性の重合体と、非エネルギー線硬化性の重合体の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の重合体とを含有する成分。
【0046】
粘着性樹脂において、非エネルギー線硬化性の重合体は、(メタ)アクリル系共重合体であることが好ましい。粘着剤組成物は、エネルギー線硬化性化合物を含有することが好ましい。
【0047】
〔エネルギー線硬化性化合物〕
エネルギー線硬化性化合物は、分子内に、エネルギー線硬化性の二重結合を有する。エネルギー線硬化性化合物は、エネルギー線(例えば、紫外線)の照射を受けると重合硬化する化合物である。
【0048】
エネルギー線硬化性化合物は、(メタ)アクリル系化合物であることが好ましい。エネルギー線硬化性化合物は、紫外線硬化性化合物であることが好ましい。エネルギー線硬化性化合物は、紫外線硬化性の(メタ)アクリル系化合物であることがより好ましい。
【0049】
エネルギー線硬化性化合物の例としては、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物(単官能のモノマー、多官能のモノマー、単官能のオリゴマー、及び多官能のオリゴマー)が挙げられる。エネルギー線硬化性化合物は、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等のアクリレート;ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、及びイソボルニルアクリレート等の環状脂肪族骨格含有アクリレート;、並びに、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、及びイタコン酸オリゴマー等のアクリレート系化合物が用いられる。
エネルギー線硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
エネルギー線硬化性化合物の分子量は、通常、100以上、50000以下であり、300以上、10000以下程度であることが好ましい。
【0051】
〔(メタ)アクリル系共重合体〕
粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体をさらに含んでいることも好ましい。(メタ)アクリル系共重合体は、前述したエネルギー線硬化性化合物とは異なる。
【0052】
(メタ)アクリル系共重合体は、エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合を有することが好ましい。すなわち、粘着剤は、エネルギー線硬化性化合物と、エネルギー線硬化性の(メタ)アクリル系共重合体とを含有することが好ましい。
【0053】
粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、エネルギー線硬化性化合物を10質量部以上の割合で含有することが好ましく、20質量部以上の割合で含有することがより好ましく、25質量部以上の割合で含有することがさらに好ましい。
粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対し、エネルギー線硬化性化合物を200質量部以下の割合で含有することが好ましく、160質量部以下の割合で含有することがより好ましく、120質量部以下の割合で含有することがさらに好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、50000(5万)以上であることが好ましく、100000(10万)以上であることがより好ましく、300000(30万)以上であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、2000000(200万)以下であることが好ましく、1500000(150万)以下であることがより好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0055】
(メタ)アクリル系共重合体は、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体(以下「エネルギー線硬化性重合体」という場合がある。)であることが好ましい。
【0056】
・エネルギー線硬化性重合体
エネルギー線硬化性重合体は、官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体と、当該(メタ)アクリル系共重合体が持つ官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られる共重合体であることが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル系共重合体は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、又は(メタ)アクリル酸エステルモノマーの誘導体から導かれる構成単位とを含むことが好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル系共重合体の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、官能基と、を分子内に有するモノマーであることが好ましい。官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、及びエポキシ基等からなる群から選択される少なくともいずれかの官能基であることが好ましい。
【0059】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
アミノ基含有モノマー又は置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、及びn-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アミノ基含有モノマー又は置換アミノ基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(メタ)アクリル系共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が、1以上、20以下であるアルキル(メタ)アクリレートの他、例えば、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)が好ましく用いられる。
【0063】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が、1以上、18以下であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
脂環式構造含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が好ましく用いられる。脂環式構造含有モノマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、(メタ)アクリル系共重合体は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、1質量%以上の割合で含有することが好ましく、5質量%以上の割合で含有することがより好ましく、10質量%以上の割合で含有することがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、35質量%以下の割合で含有することが好ましく、30質量%以下の割合で含有することがより好ましく、25質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
【0066】
さらに、(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体から導かれる構成単位を、50質量%以上の割合で含有することが好ましく、60質量%以上の割合で含有することがより好ましく、70質量%以上の割合で含有することがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体から導かれる構成単位を、99質量%以下の割合で含有することが好ましく、95質量%以下の割合で含有することがより好ましく、90質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル系共重合体は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体とを常法で共重合することにより得られる。
(メタ)アクリル系共重合体は、上述のモノマーの他にも、ジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、及びスチレン等からなる群から選択される少なくともいずれかの構成単位を含有していてもよい。
【0068】
上記官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物と反応させることにより、エネルギー線硬化性重合体が得られる。
【0069】
不飽和基含有化合物が有する官能基は、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基又は置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物が有する官能基としてはイソシアネート基又はエポキシ基が好ましく、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基又はアジリジニル基が好ましい。
【0070】
不飽和基含有化合物は、エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合を、1分子中に少なくとも1個含み、1個以上、6個以下含むことが好ましく、1個以上、4個以下含むことがより好ましい。
【0071】
不飽和基含有化合物としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、及びアリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(1-アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2-ビニル-2-オキサゾリン、及び2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0072】
不飽和基含有化合物は、(メタ)アクリル系共重合体の官能基含有モノマーのモル数に対して、50モル%以上の割合(付加率)で用いられることが好ましく、60モル%以上の割合で用いられることがより好ましく、70モル%以上の割合で用いられることが更に好ましい。
不飽和基含有化合物は、(メタ)アクリル系共重合体の官能基含有モノマーのモル数に対して、95モル%以下の割合(付加率)で用いられることが好ましく、93モル%以下の割合で用いられることがより好ましく、90モル%以下の割合で用いられることがさらに好ましい。
【0073】
(メタ)アクリル系共重合体と不飽和基含有化合物との反応においては、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基と不飽和基含有化合物が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、及び触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基と、不飽和基含有化合物が有する官能基とが反応し、不飽和基が(メタ)アクリル系共重合体の側鎖に導入され、エネルギー線硬化性重合体が得られる。
【0074】
エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量(Mw)は、50000(5万)以上であることが好ましく、100000(10万)以上であることがより好ましく、300000(30万)以上であることがさらに好ましい。
エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量(Mw)は、2000000(200万)以下であることが好ましく、1500000(150万)以下であることがより好ましい。
【0075】
〔光重合開始剤〕
粘着剤組成物が、光硬化性の化合物、具体的には、紫外線硬化性の化合物(例えば、紫外線硬化性樹脂)を含有する場合、粘着剤組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
粘着剤組成物が、光重合開始剤を含有することにより、重合硬化時間、及び光線照射量を低減することができる。
【0076】
光重合開始剤の具体例は、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、及びパーオキサイド化合物が挙げられる。さらには、光重合開始剤としては、例えば、アミン、又はキノン等の光増感剤等が挙げられる。
【0077】
より具体的な光重合開始剤の例としては、例えば、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
光重合開始剤は、上記(I)、上記(II)、又は上記(III)のいずれかの態様である粘着性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上の量で用いられることが好ましく、0.03質量部以上の量で用いられることがより好ましく、0.05質量部以上の量で用いられることがより好ましい。
光重合開始剤は、上記(I)、上記(II)、又は上記(III)のいずれかの態様である粘着性樹脂100質量部に対して、10質量部以下の量で用いられることが好ましく、5質量部以下の量で用いられることがより好ましい。
【0079】
光重合開始剤は、粘着性樹脂として、(メタ)アクリル系共重合体と、エネルギー線硬化性化合物とを含有する場合、エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上の量で用いられることが好ましく、0.5質量部以上の量で用いられることがより好ましい。
光重合開始剤は、粘着性樹脂として、(メタ)アクリル系共重合体と、エネルギー線硬化性化合物とを含有する場合、エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、10質量部以下の量で用いられることが好ましく、6質量部以下の量で用いられることがより好ましい。
【0080】
〔架橋剤〕
粘着剤組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、(メタ)アクリル系共重合体等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。粘着剤組成物における多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、及び反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0081】
上記(I)の態様である粘着性樹脂の場合、架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。
上記(I)の態様である粘着性樹脂の場合、架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。
【0082】
上記(II)の態様である粘着性樹脂の場合、架橋剤の配合量は、非エネルギー線硬化性の重合体の側鎖に不飽和基が導入された重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。
上記(II)の態様である粘着性樹脂の場合、架橋剤の配合量は、非エネルギー線硬化性の重合体の側鎖に不飽和基が導入された重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0083】
上記(III)の態様である粘着性樹脂の場合、架橋剤の配合量は、非エネルギー線硬化性の重合体の側鎖に不飽和基が導入された重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。
上記(III)の態様である粘着性樹脂の場合、架橋剤の配合量は、非エネルギー線硬化性の重合体の側鎖に不飽和基が導入された重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0084】
粘着剤組成物は、上記成分以外にも、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、及び染料等の他の成分を含んでいてもよい。
【0085】
粘着剤層の厚さは、例えば、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。
粘着剤層の厚さは、例えば、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましく、50μm以下であることがよりさらに好ましく、30μm以下であることがさらになお好ましい。
【0086】
<剥離フィルム>
剥離フィルムは、粘着剤層に貼り付けられた後、粘着剤層から剥離することが可能であれば、特に限定されない。剥離フィルムは、例えば、剥離基材と、剥離基材上に設けられた剥離剤層とを備える剥離フィルムであることが好ましい。剥離フィルムが、剥離基材上に設けられた剥離剤層を備える場合、剥離剤層の剥離基材側と反対側の面(つまり、剥離フィルムの剥離処理面)が、粘着剤層の粘着面と接する面である。
【0087】
剥離基材は、樹脂を含むことが好ましい。剥離基材に含まれる樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂、及びエチレン共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、及びエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体など))、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレートなど)、ポリ塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、及び塩化ビニル共重合体など)、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、及びフッ素樹脂等が挙げられる。これらの中でも、剥離基材を構成する樹脂は、粘着シートの端部における浮きの発生による外観不良がより抑制されやすくなる観点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。また、耐熱性の観点から、剥離基材を構成する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。
【0088】
剥離基材は、樹脂の他に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐電防止剤、無機又は有機のフィラー、及び可塑剤等の各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0089】
剥離基材は、公知の方法によって得られる。例えば、剥離基材は、樹脂と、必要に応じて添加される添加剤を含む樹脂組成物を、キャスティング法、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法などにより成形することによって作製することができる。具体的には、例えば、剥離基材は、樹脂を含む樹脂組成物を溶融押出して、未延伸フィルムを成形し、次いで、成形した未延伸フィルムを逐次二軸延伸法、又は、同時二軸延伸法等によって得られる。
【0090】
剥離剤層に含まれる剥離剤としては、例えば、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、長鎖アルキル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びワックス等ンの剥離剤が挙げられる。これらの中でも、剥離剤層は、剥離剤としてシリコーン樹脂を用いることが好ましい。シリコーン樹脂としては、ジメチルポリシロキサンを基本骨格とするシリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂としては、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、及び電子線硬化型等が挙げられる。剥離剤として、付加反応型シリコーン樹脂を用いる場合、架橋剤、及び触媒を併用することが好ましい。架橋剤としては、例えば1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。触媒としては、白金、パラジウム、及びロジウム等の白金属の金属系化合物などが挙げられる。
【0091】
剥離剤を含む剥離剤組成物は、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機又は有機のフィラー、帯電防止剤、及び界面活性剤等の各種添加剤を含ませてもよい。
【0092】
剥離フィルムは、例えば、剥離剤組成物に、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、及びヘプタン等の有機溶剤を混合した塗布液を調製し、当該塗布液を、公知の塗布方法によって、上記の剥離基材に塗布して、乾燥、加熱することによって得られる。
【0093】
剥離フィルムの厚さは、特に限定されない。例えば、剥離フィルムの厚さは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、25μm以上であることがさらに好ましい。
剥離フィルムの厚さは、例えば、250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0094】
<剥離力>
本実施形態に係る粘着シートにおいて、粘着剤層と、剥離フィルムとの剥離力(粘着剤層に対する剥離フィルムの剥離力)が1000mN/100mm以下であることが好ましい。
粘着剤層と、剥離フィルムとの剥離力が、1000mN/100mm以下であれば、剥離フィルムを粘着剤層から剥離するときに、剥離不良が生じることが抑制されやすくなる。粘着剤層と、剥離フィルムとの剥離力が、1000mN/100mm以下の場合、粘着シート端部の浮きが発生する可能性が高まる。しかし、本実施形態に係る粘着シートであれば、粘着シートの端部における浮きの発生が抑制できる。
【0095】
粘着剤層と、剥離フィルムとの剥離力は、950mN/100mm以下であることがより好ましく、900mN/100mm以下であることがさらに好ましく、850mN/100mm以下であることがよりさらに好ましい。
粘着剤層と、剥離フィルムとの剥離力の下限は、意図しない剥がれが抑制される範囲であれば、特に限定されない。粘着剤層と、剥離フィルムとの剥離力の下限は、例えば、10mN/100mm以上であることが好ましく、15mN/100mm以上であることがより好ましく、20mN/100mm以上であることがさらに好ましく、25mN/100mm以上であることがよりさらに好ましく、30mN/100mm以上であることがよりさらに好ましい。
【0096】
粘着剤層と、剥離フィルムとの剥離力は、100mm×100mmの寸法の粘着シートを90°方向に、引張速度を300mm/minとして測定できる。具体的には、引張試験機が備える硬質の支持体に、粘着シートにおける剥離フィルムを全面固定して、粘着シートにおける基材及び粘着剤層を備える部分のみを90°方向に、300mm/minの引張速度で、粘着剤層から剥離フィルムを引き剥がすことで測定できる。
【0097】
[粘着シートの使用方法]
本実施形態に係る粘着シートの形状は、基材と、基材の表面に設けられた粘着剤層と、粘着剤層の基材と反対側の面に設けられた剥離フィルムとを備えていれば、特に限定されない。粘着シートは、テープ状、ラベル状などのあらゆる形状をとり得る。本実施形態に係る粘着シートは、ワーク加工用粘着シートとして適用されることが好ましい。以下、本実施形態に係る粘着シートが、ワーク加工用粘着シートとして適用された場合の具体例について説明する。
【0098】
ワークとしては、具体的には、半導体ウエハ、及び半導体パッケージ等の半導体部材、並びに、ガラス基板、及びガラス板等の透明部材が挙げられる。半導体ウエハは、例えば、シリコンウエハであってもよく、ガリウム・砒素等の化合物半導体ウエハであってもよい。透明部材は、ガラスに限られず、光線を透過する透明部材を含む概念であり、例えば、可視光透過率が50%以上の透過率である状態を示す透明部材を含む。ワークが透明部材である場合、ワークはガラス(ガラス基板、及びガラス板等)であることが好ましい。
【0099】
本実施形態におけるワーク加工用粘着シートの使用方法は、例えば、ワークをワーク加工用粘着シートの粘着剤層に貼付する工程と、粘着剤層に貼付された状態のワークに対して各種の加工を施す工程と、各種の加工が施されたワーク(加工済みワーク)をワーク加工用粘着シートから剥離する工程とを含む。
【0100】
本実施形態に係る製造方法によって得られたワーク加工用粘着シートは、具体的には、例えば、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシート、及びピックアップシートからなる群から選ばれる少なくともいずれかとして適用される。ワーク加工用粘着シートは、例えば、剥離フィルムを剥離した後の粘着剤層に、ワークを貼付し、粘着剤層に貼付された状態で、ワークがダイシングされることにより個別化され、個別化されたワークを、粘着剤層から剥離される工程に用いられることが好ましい。これらの中でも、ワーク加工用粘着シートは、例えば、ダイシングシートであることが好ましい。
【0101】
ワーク加工用粘着シートが、例えば、ダイシングシートとして適用される場合、ワーク加工用粘着シートの粘着剤層にワーク(例えば、半導体ウエハ、半導体パッケージ、ガラス基板、又はガラス板などのワーク)が保持された状態で、ダイシング加工が施される。ダイシング加工では、ワークが、予め定められた形状、及び寸法に切断され、複数のチップ状の加工済みワークが得られる。ダイシング加工が施された加工済みのワークは、ワーク加工用粘着シートが備える粘着剤層から、ピックアップされる。当該粘着剤層が、エネルギー線硬化性粘着剤を含む場合、加工済みワークに貼付されているワーク加工用粘着シートの粘着剤層に対し、エネルギー線(例えば紫外線)を照射して粘着剤層を硬化させた後、硬化後の粘着剤層から、加工済みワークをピックアップしてもよい。
【0102】
[粘着シートの製造方法]
本実施形態に係る粘着シートは、前述の数式(数1)を満たすことができれば、製造方法は特に限定されない。本実施形態に係る粘着シートは、以下で説明する製造方法で製造されることが好ましい。
【0103】
本実施形態に係る粘着シートの好ましい製造方法の一例について説明する。本実施形態に係る粘着シートの製造方法は、粘着シートの原反を準備する工程(以下、工程S1と称する場合がある)と、前記粘着シートの原反における基材側から切り込むことにより、前記粘着シートの原反を前記長手方向に沿って裁断する裁断工程(以下、工程S2と称する場合がある)と、を有する。なお、本実施形態に係る粘着シートの製造方法において、「基材側から切り込む」とは、上刃と下刃との一対の切断刃によって、粘着シートの原反を裁断する場合、上刃と下刃との一対の切断刃の上刃を、粘着シートの原反における基材側に接触させ、上刃を基材の外表面から侵入させることで、粘着シートの原反が切り込まれることを意味する。つまり、この場合、工程S2は、例えば、上刃と下刃との一対の切断刃により、前記粘着シートの原反を裁断する工程であって、前記上刃を、前記粘着シートの原反における基材側に接触させることで、前記粘着シートの原反における基材側から切り込むことにより、前記粘着シートの原反を前記長手方向に沿って裁断する工程であってもよい。上刃と下刃との一対の切断刃は、上刃の刃先における角度が下刃の刃先における角度よりも小さくてもよい。
【0104】
<工程S1>
工程S1は、基材と、基材の表面に設けられた粘着剤層と、粘着剤層の基材と反対側の面に設けられた剥離フィルムとを備えた粘着シートの原反を準備する工程である。
【0105】
粘着シートの原反は、例えば、基材、粘着剤組成物、及び剥離フィルムを準備する工程(以下、工程S1-Aと称する場合がある)と、前記剥離フィルムの剥離性を有する面(剥離処理面)に、前記粘着剤組成物を塗布して、前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設ける工程(以下、工程S1-Bと称する場合がある)と、前記粘着剤層の剥離フィルム側と反対側の面に、前記基材を積層する工程(以下、工程S1-Cと称する場合がある)とを経ることによって得られる。
【0106】
基材、粘着剤組成物、及び剥離フィルムの具体例は、それぞれ、既に説明したとおりである。工程S1-Aにおいて、基材、粘着剤組成物、及び剥離フィルムは、それぞれ、既に説明した具体例から選択して準備すればよい。
【0107】
工程S1-Bにおいて、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、準備した粘着剤組成物と、必要に応じて、溶媒、又は分散媒とを含有する塗布液を調製し、当該塗布液を剥離フィルムの剥離処理面に塗布する方法が挙げられる。塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法等の塗布方法が挙げられる。
【0108】
上記の溶媒、又は分散媒としては、例えば、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、及びトルエン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、及び酢酸ブチル等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(n-ペンタン、n-ヘキサン、及びn-ヘプタン等)、及び脂環式炭化水素系溶媒(シクロペンタン、及びシクロヘキサン等)が挙げられる。これらの溶媒、又は分散媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
粘着剤層は、粘着剤組成物を含む塗布液を塗布して塗膜を形成した後、塗膜を加熱、乾燥することで、粘着剤層を形成することができる。
【0110】
工程S1-Cにおいて、剥離フィルムの上に粘着剤層が形成された後、粘着剤層の剥離フィルム側と反対側の面に基材を積層する。基材を積層する方法としては特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0111】
工程S1は、上記の工程S1-Aから工程S1-Cの各工程を経ることによって粘着シートの原反を準備する工程に限られない。別の工程としては、例えば、基材、粘着剤組成物、及び剥離フィルムを準備する工程と、前記基材の上に、前記粘着剤組成物を塗布して、前記粘着剤組成物から形成される粘着剤層を設ける工程と、前記粘着剤層の前記基材側と反対側の面に、前記剥離フィルムの剥離性を有する面(剥離処理面)を積層する工程と、を経ることによって粘着シートの原反を準備する工程であってもよい。
【0112】
粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、例えば、粘着剤組成物を含む塗布液を塗布した塗膜の乾燥条件(温度、及び時間等)の変更、又は乾燥以外の加熱処理を設けることにより、粘着剤層に架橋構造を形成させることが好ましい。上記の工程によって得られた粘着シートをシーズニングする工程を有していてもよい。シーズニングの条件は、例えば、20℃以上、50℃以下の温度(例えば、23℃)で、20%RH以上、50%RH以下の相対湿度(例えば、50%RH)の環境下に、3日以上、14日以下の期間(例えば、7日間)で静置する条件が挙げられる。
【0113】
工程S1で得られる粘着シートの原反の形態は、特に限定されない。粘着シートの原反の形態は、ロール状であることが好ましい。以下、ロール状の形態である粘着シートの原反を原反ロールと称する。
【0114】
<工程S2>
工程S1で得られた粘着シートの原反を、長手方向に沿って、基材側から裁断することにより、本実施形態に係る粘着シートが得られる。粘着シートの原反を裁断する方法は、前述の数式(数1)を満たす粘着シートが得られるのであれば、特に限定されない。工程S1で得られた原反が、原反ロールであれば、ロール・トゥー・ロール(Roll to Roll)方式によって、原反ロールを裁断することができる。
【0115】
以下、ロール・トゥー・ロール方式によって、原反ロールから繰り出された粘着シートの原反を裁断する方法について説明する。以下の説明において、ロール状の粘着シートの原反を原反ロール、裁断済みの粘着シートのロールを粘着シートロールと称して、両者のロールを区別する。
【0116】
ロール・トゥー・ロール方式による裁断方法では、例えば、原反ロールから粘着シートの原反を繰り出す繰り出し部と、繰り出し部の下流側に設けられ、粘着シートの原反を長手方向に沿って、基材側から裁断する裁断部と、裁断部の下流側に設けられ、裁断部で裁断された粘着シートを粘着シートロールとして巻き取る巻取部とを備える裁断装置が用いられる。
【0117】
裁断部における裁断方法は、特に限定されない。裁断方法は、例えば、シャーカット方式、レザーカット方式、及びスコアカット方式などの裁断方式による裁断方法が挙げられる。本実施形態に係る粘着シートの製造方法においては、目的とするtanθが得られやすくなる点から、シャーカット方式による裁断方法を採用することが好ましい。
【0118】
シャーカット方式による裁断方法は、例えば、上刃と下刃との一対の切断刃の間に、被裁断物を通してせん断されることにより裁断される方式である。被裁断物は、本実施形態に係る製造方法おいては、原反ロールから繰り出される粘着シートの原反である。そして、粘着シートの原反における基材側に上刃が接触し、粘着シートの原反における剥離フィルム側に下刃が接触して、粘着シートの原反の長手方向に沿ってせん断されることにより、裁断される。工程S2において、粘着シートの原反の基材側に対して、上刃を押し当てる角度を調整して裁断することにより、tanθの値を調整することが容易になり、前述の数式(数1)を満たす粘着シートが得られる。
【0119】
原反ロールから繰り出された粘着シートの原反が裁断されることにより、予め定められた幅寸法(幅方向の寸法)に裁断された粘着シートが得られ、1つ、又は2つ以上の粘着シートロールとして巻取部で巻き取られる。具体的には、原反ロールの両端部が裁断され、1個の粘着シートロールとして巻き取られてもよく、原反ロールが、予め定められた幅寸法に裁断され、複数個に分割された粘着シートロールとして巻き取られてもよい。
【0120】
裁断された後の粘着シートの幅寸法は、200mm以上であることが好ましく、220mm以上であることがより好ましく、240mm以上であることがさらに好ましい。
裁断された後の粘着シートの幅寸法は、500mm以下であることが好ましく、400mm以下であることがより好ましく、360mm以下であることがさらに好ましい。
なお、裁断された後の粘着シートの長手方向(長尺方向)の長さは、目的とする長さに応じた長さであればよい。
【0121】
ここで、工程S2について、
図2を参照して説明する。
図2には、裁断後の粘着シートを幅方向に沿って断面視したときの状態を模式的に表した図が示されている。具体的には、シャーカット方式によって、粘着シートの原反102が裁断された状態を表している。
【0122】
図2に示される上刃UBは、図示しないローラの外周に設けられており、下刃LBは、図示しないローラの外周に設けられている。上刃UBは、片刃である。
上刃UBの刃先は、平坦部UB1と、平坦部UB1に対向する傾斜部UB2と、を有しており、刃先の先端に行くにしたがって鋭くなっている。上刃UBの刃先において、平坦部UB1と傾斜部UB2との成す角度は、例えば、30°以上、60°以下の範囲であることが挙げられる。上刃UBの刃先の角度(つまり、平坦部UB1と傾斜部UB2との成す角度)は、具体的には、例えば、約45°程度であることが挙げられる。
下刃LBの刃先は、上刃UB側に配置される上部LB2と、粘着シートの原反102を裁断するときにおいて、上刃UBの平坦部UB1と対向する下刃LBの側面である側部LB1と、を備えている。下刃LBの刃先において、上部LB2と、下刃LBの側部LB1とのなす角度は、例えば、80°以上、90°以下の範囲であることが挙げられる。下刃LBの刃先の角度(つまり、上部LB2と、下刃LBの側部LB1とのなす角度)は、具体的には、例えば、約90°程度であることが挙げられる。
【0123】
上刃UBの平坦部UB1と、下刃LBの側部LB1とを互いに接触させた状態で、上刃UBと下刃LBとを回転させながら、粘着シートの原反102(原反ロール)を通過させることで、粘着シートの原反102(原反ロール)を長手方向に沿って裁断することができる。粘着シートの原反102は、基材10の外表面12に上刃UBを接触させ、剥離フィルム30の外表面32に下刃LBを接触させ、基材10側から上刃UBが押し当られる。そして、上刃UBと下刃LBとのせん断によって、粘着シートの原反102が切断される。基材10側に上刃UBを押し当てるときに、基材10の外表面12と、上刃UBの平坦部UB1とのなす角度αを調整することによって、目的とするtanθを有する粘着シート100が得られる。
【0124】
以上、図面を参照して説明したが、本発明は、
図2に示される形態に限定されない。例えば、
図2では、上刃UBが片刃である態様を示したが、上刃UBは、片刃である場合に限られず、両刃でもよい。また、裁断方法は、シャーカット方式による裁断方法に限られず、他の方式による裁断方法を採用してもよい。また、
図2では、粘着シート100の一端部を示している。これに限られず、粘着シート100において、粘着シート100の幅方向(
図2に示されるY軸に沿う方向)における両端部は、剥離フィルム最端位置が、基材最端位置よりも、外側に延びているように切断されることが好ましい。
【0125】
[実施形態の変形]
本発明は、上述の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲で、上述の実施形態を変形した態様等を含む。
【実施例0126】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
【0127】
以下の実施例及び比較例における測定又は評価は、以下に示す方法により行った。
【0128】
[外観評価]
実施例及び比較例で得られた裁断後のロール端部に浮きの発生具合について、断裁後のロール端部に相当する箇所を切り出して、キーエンス社製デジタル顕微鏡(VHX-7000)を用いて観察することで確認し、下記の評価基準にしたがって評価した。
【0129】
<評価基準>
A(〇):浮きが観察されない。又は、浮きが観察されるが、浮きの状態が10μm以下である。
F(×):浮きが観察され、浮きの状態が10μm超である。
【0130】
[tanθの測定]
実施例及び比較例で得られた裁断後のロール(粘着シートロール)において、粘着シートの長手方向(長尺方向)に垂直になるように幅方向に切断した。幅方向に切断した切断面の両端部のうちの一方の端部を切り出し、粘着シートの幅方向に沿った断面について、キーエンス社製デジタル顕微鏡(VHX-7000)を用いて観察した。デジタル顕微鏡の画像を解析することで、tanθを求めた。
【0131】
[実施例1]
<粘着剤組成物A1の調製>
アクリル酸2-エチルヘキシル38質量部と、酢酸ビニル37質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部とを、溶液重合法により重合させて、アクリル酸エステル重合体を得た。このアクリル酸エステル重合体と、当該アクリル酸エステル重合体100質量部に対して30質量部(アクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当する。)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、60万であった。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。測定条件は以下のとおりである。
【0132】
<測定条件>
測定装置:東ソー社製,HLC-8320
GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSKgelsuperH-H
TSKgelsuperHM-H
TSKgelsuperH2000
測定溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
【0133】
上記で得られた、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部(固形分換算、以下同じ)と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Resins社製,製品名「オムニラッド184」)7質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)0.2質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物の塗布液を得た。
【0134】
<粘着シートの作製>
幅380mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)の片面に、軽剥離型のシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製、SP-PET3801)を用意した。また、幅380mmのエチレン・メタアクリル酸共重合樹脂フィルム(厚さ:80μm)を用意した。表1中、用意した剥離フィルムを「a」と表記する。また、用意した基材を「EMAA1」と表記する。
【0135】
上記で得られた粘着剤組成物の塗布液を、コンマコーター(登録商標)によって、軽剥離型剥離フィルムの剥離処理面に塗布して、90℃で、1分間乾燥させ、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層の表面に、基材であるエチレン・メタアクリル酸共重合樹脂フィルムを貼り合わせて、ロール状の形態である粘着シートの原反(原反ロール)を作製した。表1中、粘着剤組成物A1で形成した粘着剤層を「A1」と表記する。
【0136】
<粘着シートの裁断>
上記で得られた380mm幅の原反ロールの両端部を、原反ロールの長手方向に沿って、基材側から切り込むことにより、300mm幅に裁断し、巻長さ200mの裁断済みの粘着シートのロール(粘着シートロール)を得た。原反ロールの裁断には、ロール裁断用の刃を用い、シャーカット方式により原反ロールを裁断した。ロール裁断用の上刃は片刃であり、刃先の角度は約45°であった。基材の表面に対して上刃を当てる角度α(
図2を参照)は、約45°とし、tanθ=0.039となるように角度αを微調整した。表2中、基材側から裁断することを「BM」と表記する。
【0137】
実施例1で得られた粘着シートロールから、剥離力測定用の試験片を採取し、剥離力を測定した。剥離力(単位:N/100mm)は、万能型引張試験機(島津製作所製,製品名「オートグラフAG-IS」)を用いて、粘着シートの試験片における剥離フィルムの全面を万能型引張試験機が備える硬質の支持体に固定し、剥離する方向の角度90°及び剥離速度300mm/minの条件で、粘着シートの試験片における基材と粘着剤層とからなる部分を、粘着シートの試験片における剥離フィルムから引き剥がすことにより測定した。実施例1の粘着シートにおける剥離力の測定結果は、25mN/100mmであった。
【0138】
[実施例2]
基材の表面に対して上刃を当てる角度αを微調整して、tanθ=0.078となるように粘着シートロールを作製すること以外は、実施例1と同様にして、粘着シートロールを作製した。
【0139】
[実施例3]
基材の表面に対して上刃を当てる角度αを微調整して、tanθ=0.273となるように粘着シートロールを作製すること以外は、実施例1と同様にして、粘着シートロールを作製した。
【0140】
[実施例4]
実施例1で用意した基材の厚みを140μmに変更し、基材の表面に対して上刃を当てる角度αを微調整して、tanθ=0.016となるように粘着シートロールを作製すること以外は、実施例1と同様にして、粘着シートロールを作製した。用意した基材を、表1中、「EMAA2」と表記する。
【0141】
[実施例5]
実施例1で調製した粘着剤組成物A1の塗布液を、下記に示す粘着剤組成物A2の塗布液に変更し、基材の表面に対して上刃を当てる角度αを微調整して、tanθ=0.094となるように、粘着シートロールを作製する以外は、実施例1と同様にして、粘着シートロールを作製した。表1中、粘着剤組成物A2で形成した粘着剤層を「A2」と表記する。
【0142】
<粘着剤組成物A2の調製>
アクリル酸ブチル75質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体と、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して30質量部(アクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当する。)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を測定したところ、60万であった。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。測定条件は以下のとおりである。
【0143】
上記で得られた、側鎖にエネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Resins社製,製品名「オムニラッド184」)7質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)0.2質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物の塗布液を得た。
【0144】
実施例5で得られた粘着シートロールから、剥離力測定用の試験片を採取し、上述の実施例1と同様の測定方法によって剥離力を測定した。実施例5の粘着シートにおける剥離力の測定結果は、15mN/100mmであった。
【0145】
[比較例1]
基材の表面に対して上刃を当てる角度αを微調整して、tanθ=0.008となるように、粘着シートロールを作製する以外は実施例1と同様にして、粘着シートロールを作製した。
【0146】
[比較例2]
実施例1の粘着シートの裁断において、剥離フィルム側から切り込むことにより裁断したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着シートロールを作製した。表2中、剥離フィルム側から裁断することを「SP」と表記する。
【0147】
なお、比較例2の場合、tanθをマイナスの値として示している。比較例2の粘着シートの端部において、剥離フィルムの粘着剤層とは反対側の外表面における剥離フィルム最端位置が、基材の粘着剤層とは反対側の外表面における基材最端位置よりも、内側に配置されている形状になった。つまり、
図1を参照すると、比較例2では、粘着シートの端部は、
図1に示す形状にならず、剥離フィルム最端位置ESが、基材最端位置EBよりも、内側になった。このため、
図1に示す交点PIを基準として、Wの値をマイナスの値として測定した。
【0148】
【0149】
【0150】
各実施例は、各比較例に比べ、外観評価の結果が良好であった。以上から、本実施形態に係る粘着シートは、粘着シートの端部における浮きの発生による外観不良が抑制されていることが分かる。
10…基材、12…外表面、20…粘着剤層、30…剥離フィルム、32…外表面、100…粘着シート、102…原反、UB…上刃、UB1…平坦部、UB2…傾斜部、LB…下刃、LB1…側部、LB2…上部。