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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148365
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20231005BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056342
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大賀 真宏
(72)【発明者】
【氏名】向山 業
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054BB01
3D054CC08
3D054CC30
3D054CC34
3D054CC38
3D054CC42
3D054DD07
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】乗員を適切に保護するエアバッグを提供する。
【解決手段】膨張ガスの供給により展開するエアバッグであって、エアバッグにおいて上部側に配置される上側膨張部と、エアバッグにおいて下部側に配置される下側膨張部と、を備え、下側膨張部は、少なくとも一部に非膨張部が形成され、膨張ガスの供給により上側膨張部と共に展開する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張ガスの供給により展開するエアバッグであって、
前記エアバッグにおいて上部側に配置される上側膨張部と、
前記エアバッグにおいて下部側に配置される下側膨張部と、
を備え、
前記下側膨張部は、少なくとも一部に非膨張部が形成され、前記膨張ガスの供給により前記上側膨張部と共に展開するエアバッグ。
【請求項2】
前記非膨張部は孔部である請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記非膨張部は、前記膨張ガスの流入を防ぐ壁面で囲まれた領域である請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記下側膨張部は、前記非膨張部の周囲を囲むように形成される請求項1~3のいずれか一項に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記下側膨張部は、前記上側膨張部から延びる一対の湾曲部を有し、
前記一対の湾曲部の先端部は、展開前において表面同士、または、裏面同士が互いに重なった状態で少なくとも一部が連結されている請求項4に記載のエアバッグ。
【請求項6】
一方の湾曲部は前記上側膨張部に連結して形成され、他方の湾曲部は前記上側膨張部と一体に形成された請求項5に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば車両の衝突時に展開して車両の乗員を保護するエアバッグが実用化されている。ここで、乗員を安定して保護するエアバッグが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、このようなエアバッグとして、膨張完了時に支持膨張部で保護膨張部を車体側から支持することにより、乗員を安定して受け止めるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-019350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のエアバッグは、円柱状に展開する単純な形状を有するため、乗員をより適切に保護するためにさらなる改良が求められる。
【0006】
本開示は、乗員を適切に保護するエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエアバッグは、膨張ガスの供給により展開するエアバッグであって、エアバッグにおいて上部側に配置される上側膨張部と、エアバッグにおいて下部側に配置される下側膨張部と、を備え、下側膨張部は、少なくとも一部に非膨張部が形成され、膨張ガスの供給により上側膨張部と共に展開するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、乗員を適切に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態に係るエアバッグを備えた車両の構成を示す図である。
図2】エアバッグの構成を示す正面図である。
図3】エアバッグの構成を示す側面図である。
図4】エアバッグを製造する様子を示す図である。
図5】一対の湾曲部の先端部が互いに連結された様子を示す図である。
図6】エアバッグが展開する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に、本開示の実施の形態に係るエアバッグを備えた車両の構成を示す。車両は、ステアリングホイール1と、検知部2と、制御部3と、エアバッグ4とを有する。
【0012】
ステアリングホイール1は、運転席に搭乗した乗員Pが車両を操作するためのもので、例えば円環状に形成されている。
検知部2は、車両の衝突を検知するもので、例えば衝突センサなどから構成される。検知部2は、制御部3に接続され、衝突を検知した検知信号を制御部3に出力する。
【0013】
制御部3は、エアバッグ4の展開を制御するもので、図示しないインフレータに接続されている。制御部3は、検知部2から出力される検知信号に基づいて、インフレータを起動させる。
なお、インフレータは、膨張ガスを噴出してエアバッグ4を膨張させるもので、例えばガス発生器から構成される。
【0014】
エアバッグ4は、ステアリングホイール1に配置され、膨張ガスの供給によりステアリングホイール1と乗員Pとの間に展開するように形成されている。図2に示すように、エアバッグ4は、正面から見てステアリングホイール1に応じた円形状の外形を有するように形成されている。ここで、エアバッグ4は、上部側に配置される上側膨張部4aと、下部側に配置される下側膨張部4bとを有する。上側膨張部4aは、乗員Pの頭部の位置に対応するように配置され、下側膨張部4bは、乗員Pの胸部および腹部の位置に対応するように配置されている。そして、上側膨張部4aと下側膨張部4bは、膨張ガスが供給される内部空間が一体に繋がるように形成されている。すなわち、膨張ガスが上側膨張部4aと下側膨張部4bに供給された場合に、上側膨張部4aと共に下側膨張部4bが展開するように形成されている。
【0015】
ここで、下側膨張部4bは、非膨張部5が形成されている。この非膨張部5は、膨張ガスが供給されない部分、すなわち膨張ガスで膨張しない部分であり、例えば下側膨張部4bを貫通する孔部から構成することができる。また、非膨張部5は、例えば、エアバッグ4の中心部より下側において中心部近傍に配置、すなわち乗員Pの胸部の中心部分に対応して配置される。これにより、下側膨張部4bは、非膨張部5の周囲を囲むように形成されることになる。そして、エアバッグ4は、互いに連結された上側膨張部4aと下側膨張部4bにより、正面から見て円環状に展開するように形成される。
【0016】
具体的には、下側膨張部4bは、車幅方向D1に非膨張部5を挟む両側を上側膨張部4aから下方に延びる一対の湾曲部6aおよび6bを有し、その先端部7aおよび7bが互いに連結されて形成されている。湾曲部6aおよび6bの先端部7aおよび7bは、膨張ガスの流路を遮断するようにそれぞれ閉じられて、互いに連結されている。このとき、先端部7aおよび7bは、乗員Pの腹部に対応する位置、例えばエアバッグ4の最下部近傍の位置で互いに連結されている。すなわち、先端部7aおよび7bは、非膨張部5を囲むように形成される膨張ガスの流路を最下部近傍で遮断するように配置されている。
【0017】
このような構成により、下側膨張部4bは、図3に示すように、非膨張部5により厚み方向D2の展開(展開長)が制限されて、車幅方向D1にわたって全体的に展開する上側膨張部4aと比較して、薄い厚みで展開することになる。これにより、図1に示すように、下側膨張部4bは、上側膨張部4aと同様に、乗員P1の胸部に対して所定の距離を維持するように展開される。
【0018】
次に、エアバッグ4の製造方法について説明する。
【0019】
まず、図4に示すように、エアバッグ4の上側膨張部4aと湾曲部6bに対応する基布11と、湾曲部6aに対応する基布12とをそれぞれ形成する。そして、基布11の縁部11aと基布12の縁部12aとを連結する。このとき、縁部11aと縁部12aは、例えば、縫製や接着剤などの接合により連結してもよい。これにより、エアバッグ4の正面側を構成する基布11および12が互いに連結されることになる。
【0020】
このように、別々に形成された基布11と基布12が互いに連結されることにより、湾曲部6aが上側膨張部4aに連結されることになる。また、湾曲部6bと上側膨張部4aに対応する基布11を形成することにより、湾曲部6bが上側膨張部4aと一体に形成されることになる。ここで、湾曲部6aと湾曲部6bは、先端部7aと先端部7bが厚み方向D2に互いに重なる長さで形成されている。
湾曲部6aが上側膨張部4aに連結され、湾曲部6bが上側膨張部4aと一体に形成されることにより、湾曲部6aと湾曲部6bを厚み方向D2に互いに重なる長さで容易に形成することができる。
【0021】
また、エアバッグ4の背面側を構成する基布を同様の手順で作成する。そして、正面側の基布11および12と背面側の基布とを互いに連結する。なお、正面側と背面側の基布は、例えば、縫製や接着剤などの接合により連結してもよい。
【0022】
続いて、湾曲部6aと湾曲部6bは、図5に示すように、展開前において先端部7aと先端部7bを正面側に引き上げたときに対向する先端部7aと先端部7bの表面同士を連結部13で互いに連結して形成される。このとき、先端部7aと先端部7bは、互いに対向する表面のうち少なくとも一部を連結してもよい。例えば、先端部7aおよび7bの縁部の一部のみを連結部13で連結することができる。
【0023】
なお、連結部13は、例えば、接着剤などから構成されてもよい。また、湾曲部6aの先端部7aと湾曲部6bの先端部7bは、展開前において背面側に引き上げたときに対向する裏面同士を連結部13で互いに連結して形成されてもよい。このとき、先端部7aと先端部7bは、互いに対向する裏面のうち少なくとも一部を連結することができる。
【0024】
このようにして、エアバッグ4が製造される。このとき、エアバッグ4は、テザーベルトなどの他の部品を用いることなく、湾曲部6aおよび6bを設けるだけで所定の形状に容易に形成することができる。また、エアバッグ4は、正面から見て円形の形状を有するため、既存の折り機などを用いて容易に製造することができる。
【0025】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0026】
まず、図1に示す検知部2が、車両の衝突を検知する。このとき、エアバッグ4は、例えば、ステアリングホイール1に設けられた収容部に収容されているものとする。検知部2は、衝突を検知すると、検知信号を制御部3に出力する。制御部3は、検知部2から検知信号を受信すると、図示しないインフレータを起動させる。これにより、インフレータからエアバッグ4内に膨張ガスが供給されることになる。
【0027】
図6に示すように、エアバッグ4は、膨張ガスの供給に応じて、ステアリングホイール1の外側に露出して展開を開始する。このとき、湾曲部6aおよび6bの先端部7aおよび7bは、表面で連結されているため、車幅方向D1に互いに押圧しつつ展開されることになる。
【0028】
ここで、先端部7aと先端部7bは、図4に示すように、車幅方向D1を向いた表面の全てが連結されずに、表面の一部で連結されている。このため、湾曲部6aおよび6bは、先端部7aおよび7bの姿勢を変えつつスムーズに展開することができる。
このようにして、図3に示すように、エアバッグ4は、完全に展開される。
【0029】
ここで、下側膨張部4bは、非膨張部5が形成されている。これにより、エアバッグ4は、図1に示すように、上側膨張部4aが乗員Pの頭部に向かって大きく展開する一方、下側膨張部4bが乗員Pの胸部に向かって小さく展開する。このとき、下側膨張部4bは、展開直後において、乗員Pの胸部に接触しておらず、乗員Pの胸部に対して所定の距離を維持するように展開される。
【0030】
従来、下側膨張部が、上側膨張部と同様の厚みで展開すると、展開直後に乗員Pの胸部と接触して、乗員Pの胸部を大きく押し返す場合があった。そこで、本開示では、エアバッグ4の下側膨張部4bが、展開直後において、乗員Pの胸部に対して所定の距離を維持するように展開される。このとき、下側膨張部4bは、乗員の胸部に対して面状に広がるように展開される。これにより、エアバッグ4は、乗員Pの頭部と胸部をほぼ同時に拘束することができ、乗員Pの胸部の押し返しを抑制して、乗員Pを適切に保護することができる。
【0031】
また、非膨張部5は、孔部から構成されている。このため、下側膨張部4bの厚みを容易に低減することができる。
【0032】
また、下側膨張部4bは、非膨張部5の周囲を囲むように形成される。これにより、下側膨張部4bにおいて乗員Pの胸部に対応する部分が確実に小さく展開されるため、乗員をより適切に保護することができる。
【0033】
また、下側膨張部4bは、上側膨張部4aから延びる湾曲部6aおよび6bの先端部7aおよび7bが互いに連結されて形成されている。これにより、先端部7aおよび7bが、車幅方向D1に互いに押圧しつつ展開されるため、エアバッグ4の下部、すなわち乗員Pの腹部に対応する位置を厚み方向D2に大きく展開させることができる。すなわち、下側膨張部4bは、乗員Pの胸部の位置に対応する部分を厚み方向D2に小さく展開させる一方、乗員Pの腹部の位置に対応する部分を厚み方向D2に大きく展開させる。このように、先端部7aおよび7bを大きく展開させることにより、乗員Pの腹部がステアリングホイール1などに接触することを抑制することができる。
【0034】
また、湾曲部6aおよび6bは、図4に示すように、展開前において表面同士または裏面同士が互いに連結されている。これにより、先端部7aおよび7bは、より大きな押圧力で互いに押圧しつつ展開するため、エアバッグ4の下部をより大きく展開させることができる。
【0035】
本実施の形態によれば、エアバッグ4において下部側に配置される下側膨張部4bは、非膨張部5が形成されている。これにより、上側膨張部4aが乗員Pの頭部に向かって大きく展開する一方、下側膨張部4bが乗員Pの胸部に向かって小さく展開するため、エアバッグ4で乗員Pを適切に保護することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、下側膨張部4bは、上側膨張部4aから延びる湾曲部6aおよび6bの先端部7aおよび7bが互いに連結されたが、非膨張部5が形成されていればよく、これに限られるものではない。
例えば、下側膨張部4bは、湾曲部6aおよび6bの先端部7aおよび7bが互いに連通、すなわち膨張ガスの流路が先端部7aおよび7bで遮断されることなく非膨張部5を囲むように形成されてもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、非膨張部5は、孔部から構成されたが、膨張ガスで膨張しないように形成されていればよく、これに限られるものではない。例えば、非膨張部5は、膨張ガスの流入を防ぐ壁面で囲まれた領域から構成されてもよい。例えば、膨張ガスの流入を防ぐ壁面で囲まれた非膨張室を下側膨張部4bに形成し、この非膨張室を非膨張部5としてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、下側膨張部4bに1つの非膨張部5が形成されたが、少なくとも一部に非膨張部5が形成されていればよく、これに限られるものではない。例えば、下側膨張部4bは、複数の非膨張部5が形成されてもよい。
【0039】
次に、実際にエアバッグ4でダミーの乗員Pを拘束した時の乗員Pの胸部の変位量を測定した結果を示す。
【0040】
(実施例)
ダミーの乗員Pにシートベルトをした状態で衝突試験(SLED試験)したときに、エアバッグ4の展開による乗員Pの胸部の変位量(車両後方への移動距離)を測定した。
【0041】
(比較例)
ダミーの乗員Pにシートベルトをした状態で衝突試験したときに、従来のエアバッグの展開による乗員Pの胸部の変位量を測定した。ここで、従来のエアバッグには、上側膨張部4aと下側膨張部が同様の厚みで円柱状に展開する円形エアバッグを用いた。
【0042】
(変位量の評価)
ダミーの乗員Pにシートベルトをした状態で衝突試験したときに、エアバッグなしで、乗員Pの胸部の基準変位量を測定し、この基準変位量に対する実施例および比較例の変位量をそれぞれ算出した。その結果、基準変位量に対する比較例の変位量を100%とした場合に、基準変位量に対する実施例の変位量は約30%の低下を示すことがわかった。すなわち、エアバッグ4は、従来の円形エアバッグと比べて、乗員Pの胸部の変位量を約30%低下させることがわかった。
【0043】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示に係るエアバッグは、膨張ガスの供給により展開するエアバッグに利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ステアリングホイール
2 検知部
3 制御部
4 エアバッグ
5 非膨張部
6a,6b 湾曲部
7a,7b 先端部
11,12 基布
11a,12a 縁部
13 連結部
D1 車幅方向
D2 厚み方向
H1 上半部
H2 下半部
P 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6