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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148377
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1335 20060101AFI20231005BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231005BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G02F1/1335
G02F1/1335 505
G02B5/30
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056357
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 修一
(72)【発明者】
【氏名】今関 佳克
(72)【発明者】
【氏名】上條 陽一
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 光一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 義史
【テーマコード(参考)】
2H149
2H249
2H291
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB13
2H149AB16
2H149BA02
2H149FC08
2H149FC09
2H249AA03
2H249AA18
2H249AA23
2H249AA60
2H249AA64
2H249AA66
2H249AA68
2H291FA02Y
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA48Z
2H291FA81Z
2H291FA95Z
2H291FB13
2H291FD04
2H291FD13
2H291FD15
2H291FD35
2H291GA19
2H291GA23
2H291LA34
(57)【要約】
【課題】 高温環境下の信頼性試験の実施後も、色分離素子基板と液晶パネルとの接着位置を初期位置に維持する。
【解決手段】 実施形態の表示装置は、光源からのバックライトを入射して表示映像に合わせてカラーフィルタで指定色成分を吸収する液晶パネルと、前記液晶パネルと前記光源との間に配置され、透明素材基板の一方面に色分離素子が形成される色分離素子基板とを備える。前記色分離素子基板には、前記液晶パネルに対向する面の周縁部に一定幅の接合領域が設けられ、前記接合領域の内側の有効表示領域に色分離素子となる色分離溝が形成される。前記液晶パネルには、前記バックライトの入射面側の透明素材基板の周縁部に一定幅の接合領域が設けられ、前記接合領域の内側に偏光板が配置される。前記色分離素子基板の接合領域と前記液晶パネルの接合領域とは、シール材を塗布し硬化させたシール材層を介して接合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からのバックライトを入射して表示映像に合わせてカラーフィルタで指定色成分を吸収する液晶パネルと、
前記液晶パネルと前記光源との間に配置され、透明素材基板の一方面に色分離素子が形成される色分離素子基板と
を具備し、
前記色分離素子基板には、前記液晶パネルに対向する面の周縁部に一定幅の接合領域が設けられ、前記接合領域の内側の有効表示領域に色分離素子となる色分離溝が形成され、
前記液晶パネルには、前記バックライトの入射面側の透明素材基板の周縁部に一定幅の接合領域が設けられ、前記接合領域の内側に偏光板が配置され、
前記色分離素子基板の接合領域と前記液晶パネルの接合領域とは、シール材を塗布し硬化させたシール材層を介して接合される表示装置。
【請求項2】
前記色分離素子基板の接合領域の中央部には、前記有効表示領域に形成される色分離溝と同様の第1の溝が形成される請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記色分離素子基板の接合領域の中央部に形成される色分離溝の少なくとも有効表示領域側の、前記第1の溝の形成方向に対して垂直な方向に、前記シール材のはみ出しを阻止する第2の溝が形成される請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記色分離素子基板の有効表示領域の周囲に、前記シール材のはみ出しを阻止する第3の溝が形成される請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記シール材層は、一部に空気穴となる切り欠き部が形成される請求項1記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、色分離素子技術を用いる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示モジュールに用いられるカラーフィルタ(CF:Color Filter)方式の表示装置は、画素単位でRGBのCFを形成した液晶パネル(TFT(thin-film-transistor:薄膜トランジスタ)基板にCF基板を積層したパネル)に対して、光源からの白色のバックライトを表示映像に合わせてRGB画素それぞれのフィルタに入射することで、CF色の波長光を透過させ、CF以外の波長光を吸収する。このため、光の利用効率が低い。そこで、光の利用効率を高める目的で、光分離素子技術が提案されている。
【0003】
色分離素子技術は、ガラス基板の表面に所定のパターンの凹凸による色分離溝を形成した色分離素子により、白色のバックライトを入射してRGBそれぞれの波長成分ごとに特定の方向に回折させ分離するものである。この技術によれば、CF方式の表示装置において、上記色分離素子を形成したガラス基板(以下、色分離素子基板)をバックライトの光源とTFT基板と間に対向配置させ、色分離素子によって、バックライトをRGBのCFそれぞれに対応する波長に分離し、所定の方向に回折して、CFに対応する波長の光のみを、TFT基板を介してRGB画素それぞれのフィルタに入射させる。これによって、CFに対応する波長以外の光の吸収を低減し、光(輝度)の利用効率の向上を図っている。
【0004】
ただし、色分離素子基板とTFT基板との間には、色ごとに回折された光を空間的に分離するための間隙(Air-GAP)が必要である。そこで、TFT基板の縁面部と色分離素子基板の周縁部とを略ロの字に整形した両面テープによって接着し、両面テープの厚みによって間隙を形成する手法が検討されている。
【0005】
しかしながら、両面テープで接着した場合、高温環境下を想定した信頼性試験の実施に際して、TFT基板にそりが生じて接着位置が初期位置からずれてしまう問題が生じる。原因は試験でTFT基板に貼り付けている偏光板が収縮し、TFT基板が撓むことで両面テープが変形して、位置ずれが生じるためである。その結果、高温環境下での信頼性試験に支障をきたし、表示装置に対する狭額縁化への対応も困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-146750号公報
【特許文献2】特開2020-158358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来のCF方式の表示装置では、光分離素子技術の採用に際して、色分離素子基板と液晶パネルとを両面テープによって接着する手法が検討されているが、両面テープで接着した場合、高温環境下を想定した信頼性試験の実施に際して、液晶パネルのそりによって接着位置が初期位置からずれてしまう問題が生じる。
【0008】
そこで、本実施形態は、高温環境下を想定した信頼性試験の実施後も、色分離素子基板と液晶パネルとの接着位置を初期位置に維持することのできる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る表示装置は、光源からのバックライトを入射して表示映像に合わせてカラーフィルタで指定色成分を吸収する液晶パネルと、前記液晶パネルと前記光源との間に配置され、透明素材基板の一方面に色分離素子が形成される色分離素子基板とを備える。前記色分離素子基板には、前記液晶パネルに対向する面の周縁部に一定幅の接合領域が設けられ、前記接合領域の内側の有効表示領域に色分離素子となる色分離溝が形成される。前記液晶パネルには、前記バックライトの入射面側の透明素材基板の周縁部に一定幅の接合領域が設けられ、前記接合領域の内側に偏光板が配置される。前記色分離素子基板の接合領域と前記液晶パネルの接合領域とは、シール材を塗布し硬化させたシール材層を介して接合される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る表示装置の基本的な構成を示す分解斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る表示装置の積層構成を示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係る表示装置の色分離素子基板の構造を示す正面図である。
図4図4は、実施形態に係る表示装置に高温環境下の信頼性試験を行った場合のそり状況を示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係る表示装置の色分離素子基板の他の構造を示す正面図である。
図6図6は、本実施形態に適用される色分離素子の具体的な構造を示す断面図である。
図7図7は、図6に示す色分離素子の具体的な処理例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に実施の形態と称する)について詳細に説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
まず、本実施形態に適用される色分離素子について、図6及び図7を参照して説明する。
【0013】
図6は色分離素子の具体的な構造を示す断面図、図7図6に示す色分離素子によるバックライト光の色分離例を示す断面図である。
【0014】
すなわち、色分離素子は、図6に示すように、ガラス基板に最小構造幅1μm~3μm、最大深さ3μm~4μmの溝をRGBに対応する所定のパターンで形成したものである。以下、上記溝を色分離溝111と称する。また、色分離溝111を形成したガラス基板を色分離素子基板11と称する。
【0015】
光源から照射されるバックライト(白色光)をそのままカラーフィルタに入射すると、図7(a)に示すように、R、G、BのフィルタでそれぞれR、G、B以外の光が吸収されてしまう。これに対して、バックライト(白色光)を、色分離素子基板11を介してカラーフィルタに入射すると、図7(b)に示すように、R、G、Bの光がそれぞれ異なる方向に回折され、各色のフィルタに集光される。これにより、カラーフィルタでの光吸収が低減されるため、光(輝度)の利用効率を向上させることができる。
【0016】
以下、上記色分離素子基板11を用いた表示装置の実施形態を説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る表示装置の基本的な構成を示す分解斜視図、図2は、実施形態に係る表示装置の積層構成を示す断面図、図3は、実施形態に係る表示装置の色分離素子基板の構造を示す正面図である。図1及び図2に示す表示装置は、色分離素子基板11と液晶パネル21とをシール材層31を介して接合した積層構造となっている。
【0018】
まず、色分離素子基板11には、周縁部に一定幅の接合領域が確保され、その内側上面の表示有効領域に色分離溝111が形成される。また、接合領域の中央部には、図3に示すように、別途、接合領域より小幅の色分離溝112が、長手方向とは垂直に形成される。
【0019】
一方、液晶パネル21は、光源41から照射されるバックライトの入射側から順に、下偏光板211、TFT基板212、液晶層213、CF層214、CFガラス基板215、上偏光板216を積層した構造となっている。TFT基板212には、バックライトの入射面側に、周縁から一定幅で接合領域が確保されている。その接合領域の内側の表示有効領域には、下偏光板211が装着される。
【0020】
また、詳述しないが、TFT基板212には、ガラス基板上に複数の画素毎に設けられる画素TFTが形成されている。CF層214を含むCFガラス基板215をCF基板とする。TFT基板212とCF基板はシール材層によって接着されており、シール材層により液晶層213がTFT基板212とCF基板との間に封止されることになる。
【0021】
上記構成による表示装置の組み立ては、色分離素子基板11の周縁部の接合領域に、フィラーが含有された液状のシール材31を基板11の接着面に塗布する。シール材31の塗布は、例えばディスペンサで枠状に描画する。シール材31を塗布した後、TFT基板212の周縁部の接合領域と接合し、熱硬化または紫外線硬化により固定する。ここで、色分離素子基板11の接合領域には色分離溝112が形成されているので、液状のシール材31を塗布する際にシール材31が溝に浸透する。これによって、接着力を向上させることができる。ここで、シール材31は熱硬化または紫外線硬化の前の状態であり、熱硬化または紫外線硬化後のシール材31をシール材層31とする。
【0022】
なお、上記シール材層31の一部には、空気穴32となる切り欠き部が形成されている。空気穴32は、表示装置の外部と色分離素子基板11と下偏光板211との間の部分に温度差が生じて、内部が曇る(結露)するのを防ぐ、内部空間の結露防止策として機能する。
【0023】
上記構成による表示装置において、従来の場合と比較して、その作用効果について説明する。
【0024】
従来の両面テープ接着構造では、色分離素子基板11とTFT基板212とを両面テープで接着しているため、信頼性試験(高温環境化)投入後に色分離素子基板11とTFT基板212との位置ずれが生じて、初期と異なるRGB表示領域が現れる。その原因は、高温環境化での信頼性試験で偏光板が収縮し、液晶パネルが撓むことで両面テープが変形し、位置ずれが生じるためである。
【0025】
これに対して、接合材料としてシール材31を用い、熱硬化または紫外線硬化を行ってシール材層31を形成すると、テープと違って変形し難い。そこで、本実施形態では、偏光板収縮による液晶パネルの撓みで接着部材が変形し、位置ずれが生じたことを踏まえ、接着部材の剛性を高くして、変形を防ぐことを目的に、シール材接着構造を採用した。この構造にした結果、高温環境化による信頼性試験を投入した後でも、位置ずれは確認されなかった。また、接合領域に形成した色分離溝の部分にシール材が接触すると、毛細管現象で広がることが確認できた。これにより、接合面積が増大するため、接着が強固になって、位置ずれが生じ難くなっている。
【0026】
図5は、実施形態に係る表示装置の色分離素子基板の他の構造を示す正面図である。上記実施形態では、色分離素子基板11の接合領域に色分離溝112を形成するようにしたが、さらに図5に示すように、基板11の長辺に沿って色分離溝112の内側と外側に、それぞれ内側溝113、114、外側溝115、116を形成するとよい。すなわち、色分離素子基板11は、長手方向と垂直な方向に色分離溝111、112が形成されているが、外周に形成した色分離溝112の長手方向の上下辺に横方向の溝を2本ずつ追加する。この溝113~116は、色分離溝112より広くかつ深さを有するものとする。これにより、シール材を塗布した際のはみ出しを抑制することができる。特に、有効表示領域へのはみ出しを抑制し、色分離性能の劣化を防止することができる。
【0027】
さらに、図5に示すように、有効表示領域の全周囲において、溝113~116と色分離溝112との間に、色分離溝112より広くかつ深さを有するロ字状の溝117を設けるとよい。これにより、シール材の有効表示領域内への侵入を確実に防ぐことができる。
【0028】
なお、図5では、内側溝113、114、外側溝115、116を形成するようにしたが、内側溝113、114のみでもよい。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、色分離素子基板11と液晶パネル21とを、均一な間隙で、かつずれを生じることなく強固に一体化することができる。本実施形態では、接合に別部材を利用するため、接合回数が増えてしまうが、シール材を用いるため、両面テープの場合と比較してずれのリスクを十分に低減することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、色分離素子基板、TFT基板を、いずれもガラス材の加工品としたが、樹脂等の透明素材を用いてもよい。
【0031】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0032】
11…色分離素子基板、111、112…色分離溝、113、114…内側溝、115、116…外側溝、117…ロ字状溝、21…液晶パネル、211…下偏光板、212…TFT基板、213…液晶層、214…CF層、215…CFガラス基板、216…上偏光板、31…シール材層、32…空気穴、41…光源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7