(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148396
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20231005BHJP
G06F 8/65 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
G06F8/65
B60R16/02 660U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056386
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 陽一
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376CA44
5B376GA08
(57)【要約】
【課題】プログラム更新後に制御システムから電源を切り離す。
【解決手段】車両用制御装置は、プログラムが記憶される制御システムと、電源に接続される第1通電経路と、前記制御システムに接続される第2通電経路と、前記第1通電経路と前記第2通電経路とを接続する第3通電経路に設けられる電源リレーと、を有する。前記車両用制御装置は、前記更新端末が接続される端末接続部と、前記第1通電経路および前記第2通電経路に接続される一対の接続端子を備えるヒューズ接続部と、前記第2通電経路とグランドとを接続する放電経路に設けられる放電リレーと、を有する。前記制御システムは、前記更新端末による前記プログラムの更新が終了した後に、前記操作スイッチの操作に基づき前記電源リレーが開放された状態のもとで、前記第2通電経路の電位が閾値を上回る場合に、前記放電リレーを接続状態に制御する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
更新端末を用いてプログラムが更新される車両用制御装置であって、
プロセッサおよびメモリを備え、前記プログラムが記憶される制御システムと、
電源に接続される第1通電経路と、
前記制御システムに接続される第2通電経路と、
前記第1通電経路と前記第2通電経路とを接続する第3通電経路に設けられる電源リレーと、
使用者によって操作され、前記電源リレーを開放する開放信号を前記制御システムに出力する操作スイッチと、
前記制御システムに設けられ、前記プログラムを更新する場合に前記更新端末が接続される端末接続部と、
前記第1通電経路および前記第2通電経路に接続される一対の接続端子を備え、前記プログラムを更新する場合に作業用ヒューズが接続されるヒューズ接続部と、
前記第2通電経路とグランドとを接続する放電経路に設けられる放電リレーと、
を有し、
前記制御システムは、
前記更新端末による前記プログラムの更新が終了した後に、前記操作スイッチの操作に基づき前記電源リレーが開放された状態のもとで、前記第2通電経路の電位が閾値を上回る場合に、前記放電リレーを接続状態に制御する、
車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制御装置において、
前記第1通電経路に設けられる電源ヒューズを有し、
前記電源ヒューズの溶断電流値は、前記作業用ヒューズの溶断電流値よりも大きい、
車両用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用制御装置において、
前記制御システムは、前記プログラムの更新が実行されている状況のもとで、前記操作スイッチから開放信号が出力された場合に、前記電源リレーを開放状態に制御する、
車両用制御装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の車両用制御装置において、
前記更新端末による前記プログラムの更新が終了した後に、前記操作スイッチの操作に基づき前記電源リレーが開放された状態のもとで、前記第2通電経路の電位が閾値を上回る状況とは、前記ヒューズ接続部に前記作業用ヒューズが接続されている状況であり、
前記ヒューズ接続部に前記作業用ヒューズが接続されている状況のもとで、前記放電リレーを接続状態に制御することにより、前記作業用ヒューズは溶断される、
車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更新端末を用いてプログラムが更新される車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、エンジンや電動モータ等を制御するため、複数の電子制御ユニットからなる制御システムが設けられている(特許文献1-4参照)。また、制御対象であるエンジンや電動モータ等の機能改善などを実施するため、制御システムにパーソナルコンピュータ等の更新端末を接続し、更新端末によって制御システムのプログラムを更新することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-95066号公報
【特許文献2】特開2002-285581号公報
【特許文献3】特開2014-177208号公報
【特許文献4】特開2016-58268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制御システムのプログラムを更新する場合には、更新中に亘って制御システムの電源を確保することが必要である。そこで、プログラム更新中には制御システムに対して直接的に電源を接続するとともに、プログラム更新後には制御システムから電源を切り離すことが考えられる。しかしながら、プログラム更新後に電源の切り離しが忘れられた場合には、制御システムに対して電源電圧が印加され続けることから、その後の車両制御に影響を与えてしまうという問題がある。このため、プログラム更新後においては、制御システムから適切に電源を切り離すことが求められている。
【0005】
本発明の目的は、プログラム更新後に制御システムから電源を切り離すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の車両用制御装置は、更新端末を用いてプログラムが更新される車両用制御装置であって、プロセッサおよびメモリを備え、前記プログラムが記憶される制御システムと、電源に接続される第1通電経路と、前記制御システムに接続される第2通電経路と、前記第1通電経路と前記第2通電経路とを接続する第3通電経路に設けられる電源リレーと、使用者によって操作され、前記電源リレーを開放する開放信号を前記制御システムに出力する操作スイッチと、前記制御システムに設けられ、前記プログラムを更新する場合に前記更新端末が接続される端末接続部と、前記第1通電経路および前記第2通電経路に接続される一対の接続端子を備え、前記プログラムを更新する場合に作業用ヒューズが接続されるヒューズ接続部と、前記第2通電経路とグランドとを接続する放電経路に設けられる放電リレーと、を有し、前記制御システムは、前記更新端末による前記プログラムの更新が終了した後に、前記操作スイッチの操作に基づき前記電源リレーが開放された状態のもとで、前記第2通電経路の電位が閾値を上回る場合に、前記放電リレーを接続状態に制御する。
【発明の効果】
【0007】
制御システムは、更新端末によるプログラムの更新が終了した後に、操作スイッチの操作に基づき電源リレーが開放された状態のもとで、第2通電経路の電位が閾値を上回る場合に、放電リレーを接続状態に制御する。これにより、制御システムから電源を切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の一実施の形態である車両用制御装置を示す図である。
【
図3】各電子制御ユニットの基本構造の一例に示した図である。
【
図4】作業者によるプログラム更新作業の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】プログラム更新作業の実行状況を示す図である。
【
図6】制御システムによるフェイルセーフ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】フェイルセーフ制御の実行状況を示す図である。
【
図8】フェイルセーフ制御の実行状況を示す図である。
【
図9】フェイルセーフ制御の実行状況を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0010】
[プログラム更新の概要]
図1はプログラム更新中の車両10を示す図である。
図1に示すように、車両10には、制御システム11を備えた車両用制御装置12が搭載されている。車両10のインストルメントパネル13やその近傍には、制御システム11に接続されるコネクタ14が設けられるとともに、各種ヒューズが挿入されるヒューズボックス15が設けられている。後述するように、制御システム11に記憶されたプログラムを更新する場合には、コネクタ14に対してパーソナルコンピュータ等の更新端末16が接続されるとともに、図示しないリプロヒューズがヒューズボックス15に対して挿入される。なお、図示する制御システム11は、複数の電子制御ユニットによって構成されている。プログラムの更新作業においては、制御システム11を構成する各電子制御ユニットの1つまたは複数を対象として、対象となる電子制御ユニットに記憶されたプログラムが更新される。また、プログラムの更新については、リプログラミングやリプロとも呼ばれている。
【0011】
[車両用制御装置の構成]
図2は本発明の一実施の形態である車両用制御装置12を示す図である。
図2に示すように、車両用制御装置12には、複数の電子制御ユニットCU1~CU5からなる制御システム11が設けられている。制御システム11を構成する電子制御ユニットとして、電源制御ユニットCU1および溶断制御ユニットCU2がある。また、制御システム11を構成する電子制御ユニットとして、例えば、エンジン制御ユニットCU3、モータ制御ユニットCU4および変速制御ユニットCU5がある。これらの電子制御ユニットCU1~CU5は、CAN(Controller Area Network)等の通信ネットワーク20を介して互いに通信可能に接続されている。また、通信ネットワーク20には、更新端末16を接続するためのコネクタ(端末接続部)14が接続されている。つまり、電子制御ユニットCU1~CU5および通信ネットワーク20からなる制御システム11には、更新端末16を接続するためのコネクタ14が設けられている。
【0012】
また、車両用制御装置12は、バッテリ(電源)21の正極端子に接続される第1通電経路31と、制御システム11の各電源ライン22に接続される第2通電経路32と、第1通電経路31と第2通電経路32とを互いに接続する第3通電経路33と、を有している。第1通電経路31には、IGヒューズ(電源ヒューズ)23が設けられている。第3通電経路33には、接続状態と開放状態とに作動するIGリレー(電源リレー)24が設けられている。また、電源制御ユニットCU1には、使用者によって操作されるパワースイッチ(操作スイッチ)25が接続されている。IGリレー24が開放された状態のもとでパワースイッチ25が押されると(以下、パワースイッチ25のON操作と記載する。)、パワースイッチ25から電源制御ユニットCU1に対して接続信号が出力され、電源制御ユニットCU1はIGリレー24を接続状態に制御する。一方、IGリレー24が接続された状態のもとでパワースイッチ25が押されると(以下、パワースイッチ25のOFF操作と記載する。)、パワースイッチ25から電源制御ユニットCU1に対して開放信号が出力され、電源制御ユニットCU1はIGリレー24を開放状態に制御する。なお、バッテリ21の負極端子は、負極ライン26を介してシャーシグランド27に接続されている。
【0013】
また、車両用制御装置12はヒューズボックス15を有しており、このヒューズボックス15には一対の接続端子41,42を備えたスロット(ヒューズ接続部)43が設けられている。つまり、車両用制御装置12には、一対の接続端子41,42を備えたスロット43が設けられている。一方の接続端子41は通電ライン41aを介して第1通電経路31に接続されており、他方の接続端子42は通電ライン42aを介して第2通電経路32に接続されている。後述するように、プログラムの更新作業においては、ヒューズボックス15のスロット43にリプロヒューズ(作業用ヒューズ)44が挿入され、一対の接続端子41,42がリプロヒューズ44を介して接続される。また、車両用制御装置12は、第2通電経路32とシャーシグランド(グランド)27とを互いに接続する放電経路45を有している。放電経路45には、放電抵抗器46が設けられるとともに、接続状態と開放状態とに作動するブローリレー(放電リレー)47が設けられている。なお、ブローリレー47および放電抵抗器46は、溶断制御ユニットCU2に設けられている。
【0014】
[電子制御ユニットの構成]
図3は各電子制御ユニットCU1~CU5の基本構造の一例に示した図である。
図3に示すように、各電子制御ユニットCU1~CU5の回路部50には、プロセッサ51およびメインメモリ(メモリ)52等が組み込まれたマイクロコントローラ53が設けられている。メインメモリ52には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ51によってプログラムが実行される。プロセッサ51とメインメモリ52とは、互いに通信可能に接続されている。なお、図示する例では、マイクロコントローラ53に1つのプロセッサ51と1つのメインメモリ52とが組み込まれているが、これに限られることはなく、マイクロコントローラ53に複数のプロセッサ51を組み込んでも良く、マイクロコントローラ53に複数のメインメモリ52を組み込んでも良い。
【0015】
また、各電子制御ユニットCU1~CU5の回路部50には、入力回路54、駆動回路55、通信回路56、外部メモリ(メモリ)57および電源回路58等が設けられている。入力回路54は、各種センサから入力される信号を、マイクロコントローラ53に入力可能な信号に変換する。駆動回路55は、マイクロコントローラ53から出力される信号に基づき、図示しないアクチュエータ等に対する駆動信号を生成する。通信回路56は、マイクロコントローラ53から出力される信号を、他の電子制御ユニットに向けた通信信号に変換する。また、通信回路56は、他の電子制御ユニットから受信した通信信号を、マイクロコントローラ53に入力可能な信号に変換する。さらに、不揮発性メモリ等の外部メモリ57には、プログラムおよび各種データ等が記憶される。さらに、電源回路58は、マイクロコントローラ53、入力回路54、駆動回路55、通信回路56および外部メモリ57等に対し、安定した電源電圧を供給する。
【0016】
[プログラム更新作業]
図4は作業者によるプログラム更新作業の実行手順の一例を示すフローチャートであり、
図5はプログラム更新作業の実行状況を示す図である。
図4に示すように、ステップS10では、作業者によってパワースイッチ25がON操作され、電源制御ユニットCU1によってIGリレー24が接続状態に切り替えられる。ステップS11では、作業者によって更新端末16がコネクタ14に接続され、ステップS12では、作業者によってリプロヒューズ44がスロット43に挿入される。続くステップS13では、作業者によって更新端末16が所定手順に従って操作され、制御システム11に記憶されているプログラムが更新端末16によって更新される。そして、ステップS14において、更新端末16によるプログラム更新が完了すると、ステップS15に進み、作業者によってスロット43からリプロヒューズ44が取り外され、ステップS16に進み、作業者によってコネクタ14から更新端末16が取り外される。続くステップS17では、作業者によってパワースイッチ25がOFF操作され、電源制御ユニットCU1によってIGリレー24が開放状態に切り替えられる。これにより、更新端末16を用いたプログラムの更新作業が完了する。
【0017】
図5に示すように、プログラム更新作業においては、スロット43にリプロヒューズ44が挿入されることから、リプロヒューズ44を介して第1通電経路31と第2通電経路32とを互いに接続することが可能である。つまり、スロット43に対してリプロヒューズ44を挿入することにより、IGリレー24を迂回するリプロヒューズ44を介して第1通電経路31および第2通電経路32が互いに接続される。これにより、プログラム更新作業中に誤ってパワースイッチ25がOFF操作され、IGリレー24が開放状態に制御された場合であっても、制御システム11に対するバッテリ21の接続を継続することができる。つまり、プログラムの更新作業中に、制御システム11の電源を落としてしまうことがなく、プログラムの更新作業を適切に完了させることができる。
【0018】
[フェイルセーフ制御(フローチャート)]
前述したように、プログラム更新作業を行う際には、スロット43にリプロヒューズ44が挿入され、プログラム更新作業が完了すると、スロット43からリプロヒューズ44が取り外される。ところで、プログラム更新作業が完了した後に、作業者によるリプロヒューズ44の取り外しが忘れられた場合には、制御システム11に対して電源電圧が印加され続けられることから、制御システム11を適切に機能させることが困難となる。そこで、制御システム11は、更新端末16によるプログラム更新が終了すると、以下のフェイルセーフ制御を実行する。
【0019】
図6は制御システム11によるフェイルセーフ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。また、
図7および
図8はフェイルセーフ制御の実行状況を示す図である。
図6のフローチャートに示される各ステップには、制御システム11を構成する電源制御ユニットCU1および溶断制御ユニットCU2によって実行される処理が示されている。なお、電源制御ユニットCU1および溶断制御ユニットCU2によるフェイルセーフ制御の実行に限られることはなく、制御システム11を構成する他の電子制御ユニットによってフェイルセーフ制御を実行しても良い。
【0020】
図6に示すように、ステップS20では、更新端末16によるプログラム更新が終了したか否かが判定される。ステップS20において、プログラム更新が終了したと判定された場合には、ステップS21に進み、プログラム更新完了からカウントされる第1待機時間Taが、所定の時間閾値Xaを上回るか否かが判定される。ステップS21において、第1待機時間Taが時間閾値Xaを上回ると判定された場合には、ステップS22に進み、作業者によってパワースイッチ25がOFF操作されているか否かが判定される。ステップS22において、パワースイッチ25がOFF操作されていると判定された場合には、ステップS23に進み、IGリレー24が接続状態から開放状態に制御される。
【0021】
続いて、ステップS24に進み、IGリレー24の制御開始からカウントされる第2待機時間Tbが、所定の時間閾値Xbを上回るか否かが判定される。ステップS24において、第2待機時間Tbが時間閾値Xbを上回ると判定された場合には、ステップS25に進み、制御システム11に印加される電源電圧が、所定の電圧閾値Vaを上回るか否かが判定される。つまり、ステップS25においては、IGリレー24が開放された状態のもとで、第2通電経路32の電位が所定の電圧閾値(閾値)Vaを上回るか否かが判定される。ステップS25において、電源電圧が電圧閾値Vaを上回ると判定された場合には、ステップS26に進み、ブローリレー47が開放状態から接続状態に制御される。これにより、バッテリ21からリプロヒューズ44を介して放電経路45に電流を供給することができ、リプロヒューズ44を溶断させることができる。
【0022】
つまり、
図7に示すように、スロット43にリプロヒューズ44が残されていた場合には、パワースイッチ25のOFF操作によってIGリレー24が開放されたとしても、制御システム11にバッテリ21の電源電圧が印加されることになる。すなわち、第1通電経路31と第2通電経路32とは、リプロヒューズ44を介して接続されることから、バッテリ21の電源電圧が制御システム11に対して印加される。このように、IGリレー24が開放された状態のもとで、制御システム11に電源電圧が印加されている場合には、電源制御ユニットCU1から溶断制御ユニットCU2にブローリレー47の接続信号が出力され、
図8に示すように、溶断制御ユニットCU2によってブローリレー47が接続状態に制御される。
【0023】
すなわち、更新端末16によるプログラムの更新が終了した後に、パワースイッチ25のOFF操作に基づきIGリレー24が開放された状態のもとで、第2通電経路32の電位が電圧閾値Vaを上回る場合には、ブローリレー47が接続状態に制御される。これにより、
図8に矢印αで示すように、バッテリ21からリプロヒューズ44に電流を流すことができ、リプロヒューズ44を溶断して制御システム11からバッテリ21を切り離すことができる。また、IGヒューズ23の溶断電流値は、リプロヒューズ44の溶断電流値よりも大きく設定されている。これにより、ブローリレー47が接続された場合であっても、IGヒューズ23の溶断を回避することができる。また、ブローリレー47の接続によってIGヒューズ23に電流が流れる場合であっても、その電流値がIGヒューズ23の溶断電流値を超えないように、放電経路45に設けられる放電抵抗器46の抵抗値が設定されている。
【0024】
[フェイルセーフ制御(タイミングチャート)]
続いて、前述したフェイルセーフ制御をタイミングチャートに沿って説明する。
図9はフェイルセーフ制御の実行状況を示すタイミングチャートである。なお、
図9において、「ON」とはIGリレー24やブローリレー47の接続状態であり、「OFF」とはIGリレー24やブローリレー47の開放状態である。また、「Close」とはリプロヒューズ44の導通状態であり、「Open」とはリプロヒューズ44の溶断状態である。
【0025】
図9に時刻t1で示すように、プログラム更新が終了すると(符号a1)、第1待機時間Taがカウントされ始める(符号b1)。そして、時刻t2で示すように、第1待機時間Taが時間閾値Xaに到達すると(符号b2)、パワースイッチ25のOFF操作の有無が判定される。つまり、時刻t3で示すように、作業者によってパワースイッチ25が押し込まれ、パワースイッチ25の出力電圧がハイレベルに変化すると(符号c1)、パワースイッチ25がOFF操作されたと判定される。このように、電源制御ユニットCU1によってパワースイッチ25のOFF操作が判定されると、時刻t4で示すように、電源制御ユニットCU1によってIGリレー24が開放状態に制御される(符号d1)。
【0026】
このように、IGリレー24が開放状態に制御されると(符号d1)、第2待機時間Tbがカウントされ始める(符号e1)。そして、時刻t5で示すように、第2待機時間Tbが時間閾値Xbに到達すると(符号e2)、制御システム11の電源電圧VBつまり第2通電経路32の電位が判定される。そして、時刻t5で示すように、電源電圧VBが電圧閾値Vaを上回るハイレベルである場合には(符号f1)、溶断制御ユニットCU2によってブローリレー47が接続状態に制御される(符号g1)。このブローリレー47の接続により、時刻t6で示すように、過大な通電電流によってリプロヒューズ44が溶断される(符号h1)。これにより、リプロヒューズ44の取り外しが忘れられていた場合であっても、リプロヒューズ44を溶断させて制御システム11からバッテリ21を切り離すことができ、制御システム11を適切に機能させることができる。なお、ブローリレー47については、所定時間が経過したことに基づき開放状態に制御しても良く、電源電圧VBがローレベルに低下したことに基づき開放状態に制御しても良い。
【0027】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、複数の電子制御ユニットCU1~CU5によって制御システム11を構成しているが、これに限られることはない。例えば、1つの電子制御ユニットによって制御システム11を構成しても良い。また、前述の説明では、溶断制御ユニットCU2に、ブローリレー47および放電抵抗器46を組み込んでいるが、これに限られることはなく、電子制御ユニットの外にブローリレー47および放電抵抗器46を設けても良い。
【0028】
図示する例では、通信ネットワーク20のコネクタ14に通信ケーブル60を介して更新端末16を接続しているが、これに限られることはない。例えば、制御システム11に無線通信部(端末接続部)を設けることにより、制御システム11に対して更新端末16を無線接続しても良い。また、前述の説明では、ヒューズボックス15にリプロヒューズ44を挿入するためのスロット43を設けているが、これに限られることはなく、ヒューズボックス15以外にリプロヒューズ44の挿入部位を設けても良い。また、IGリレー24やブローリレー47については、電磁力によって接点を開閉するリレーであっても良く、半導体素子によって構成されるリレーであっても良い。
【符号の説明】
【0029】
11 制御システム
12 車両用制御装置
14 コネクタ(端末接続部)
16 更新端末
21 バッテリ(電源)
23 IGヒューズ(電源ヒューズ)
24 IGリレー(電源リレー)
25 パワースイッチ(操作スイッチ)
27 シャーシグランド(グランド)
31 第1通電経路
32 第2通電経路
33 第3通電経路
41,42 接続端子
43 スロット(ヒューズ接続部)
44 リプロヒューズ(作業用ヒューズ)
47 ブローリレー(放電リレー)
51 プロセッサ
52 メインメモリ(メモリ)
57 外部メモリ(メモリ)
Va 電圧閾値(閾値)
VB 電源電圧(電位)