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特開2023-148436情報処理システム、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148436
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】情報処理システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/03 20230101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q40/02 300
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056449
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100216367
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】山下 智彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】呉 垠
(72)【発明者】
【氏名】オシュ スブラタ
(72)【発明者】
【氏名】河崎 麻里子
(72)【発明者】
【氏名】ジェーン アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】梅田 卓志
(72)【発明者】
【氏名】ミード カイル
(72)【発明者】
【氏名】ポリヤプラム ヴィネーラジュ
(72)【発明者】
【氏名】アガルワル プリンス
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB23
(57)【要約】
【課題】ユーザに係る地理的位置から推測されるコンテキストをユーザの評価に反映するための情報処理を実現することを課題とする。
【解決手段】情報処理システムに、ユーザに係る地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、地理的位置に係る地理的事実属性211を決定する属性決定部21と、決定された地理的事実属性211に基づいて、ユーザにかかる属性データ群221の少なくとも一部を推定する属性推定部22と、推定された属性データ群221に基づいて、ユーザに設定されるユーザスコア231を推定するユーザスコア推定部23と、を備えた。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに係る地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、前記地理的位置に係る地理的事実属性を決定する属性決定手段と、
決定された前記地理的事実属性に基づいて、前記ユーザにかかる属性データ群の少なくとも一部を推定する属性推定手段と、
推定された前記属性データ群に基づいて、前記ユーザに設定されるユーザスコアを推定するユーザスコア推定手段と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記マップデータは、地理的位置に対応する前記地理的事実属性として、該位置の過去の状態を特定可能なデータであり、
前記属性決定手段は、前記ユーザに係る地理的位置に対応する過去の状態に基づいて、前記属性データ群の少なくとも一部を推定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記マップデータは、地理的位置に対応する前記地理的事実属性として、該位置と該位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性を特定可能なデータであり、
前記属性決定手段は、前記ユーザに係る地理的位置と該位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性に基づいて、前記属性データ群の少なくとも一部を推定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記マップデータは、地理的位置に対応する前記地理的事実属性として、該位置を含む地域に係る情報を特定可能なデータであり、
前記属性決定手段は、前記ユーザに係る地理的位置を含む地域に係る情報に基づいて、前記属性データ群の少なくとも一部を推定する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記属性推定手段は、決定された前記地理的事実属性に基づき、前記属性データ群の少なくとも一部として、地理的推定属性を推定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記属性推定手段は、決定された前記地理的事実属性を属性推定モデルに入力して得られた出力値に基づいて、前記属性データ群の少なくとも一部を推定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記属性推定手段は、決定された前記地理的事実属性を入力値とし前記地理的位置に係る地理的スコア又は地理的ラベルを出力値とする教師データを用いて生成された前記属性推定モデルを用いて、前記属性データ群の少なくとも一部を推定する、
請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記属性決定手段は、前記ユーザの行動情報に基づいて該ユーザに係る地理的位置を推定し、推定された前記地理的位置及び所定のマップデータに基づいて前記地理的位置に係る地理的事実属性を決定する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記属性決定手段は、ユーザに係る地理的位置を基準とした所定の範囲内の他の地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、該他の地理的位置に係る前記地理的事実属性を決定し、
前記属性推定手段は、決定された前記他の地理的位置に係る前記地理的事実属性に基づいて、前記属性データ群の少なくとも一部を推定する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項10】
衛星画像を分割し、該衛星画像を画像解析することによって分割された領域毎に対応する地理的事実属性を推定し、前記領域毎に推定された前記地理的事実属性を該領域の識別情報に関連づけることで前記マップデータを作成するマップデータ作成手段を更に備え、
前記属性決定手段は、前記マップデータ作成手段によって作成された前記マップデータに基づいて前記地理的位置に係る前記地理的事実属性を決定する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項11】
マップ上の地点又は地域について何らかの基準に基づいた評価が示された評価マップを分割し、該評価マップを解析することによって分割された領域毎に対応する地理的事実属性を推定し、前記領域毎に推定された前記地理的事実属性を該領域の識別情報に関連づけることで前記マップデータを作成するマップデータ作成手段を更に備え、
前記属性決定手段は、前記マップデータ作成手段によって作成された前記マップデータに基づいて前記地理的位置に係る前記地理的事実属性を決定する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記ユーザスコア推定手段は、前記属性データ群をユーザスコア推定モデルに入力することで、該ユーザに設定されるユーザスコアを推定する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記ユーザスコア推定手段は、勾配ブースティング決定木に基づく機械学習フレームワークを用いて生成された前記ユーザスコア推定モデルを用いて、前記ユーザスコアを推定する、
請求項12に記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記ユーザスコア推定手段は、前記属性データ群を入力値とし該ユーザに係る前記ユーザスコアを出力値とする教師データを用いて生成された前記ユーザスコア推定モデルを用いて、前記ユーザに設定されるユーザスコアを推定する、
請求項12又は13に記載の情報処理システム。
【請求項15】
コンピュータが、
ユーザに係る地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、前記地理的位置に係る地理的事実属性を決定する属性決定ステップと、
決定された前記地理的事実属性に基づいて、前記ユーザにかかる属性データ群の少なくとも一部を推定する属性推定ステップと、
推定された前記属性データ群に基づいて、前記ユーザに設定されるユーザスコアを推定するユーザスコア推定ステップと、
を実行する方法。
【請求項16】
コンピュータを、
ユーザに係る地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、前記地理的位置に係る地理的事実属性を決定する属性決定手段と、
決定された前記地理的事実属性に基づいて、前記ユーザにかかる属性データ群の少なくとも一部を推定する属性推定手段と、
推定された前記属性データ群に基づいて、前記ユーザに設定されるユーザスコアを推定するユーザスコア推定手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザに関するスコアの算出等の評価を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの行動を示す行動情報を取得するユーザ情報取得部と、行動情報に基づいて、将来のユーザの融資に対する返済能力に関する信用度を判定する信用度判定部と、を備える判定装置が提案されている(特許文献1を参照)。また、ユーザ端末に表示されるフォーマットに入力されたパラメータの情報を取得する入力情報取得部と、ユーザ端末から継続的に送信されるユーザの行動履歴を取得する行動履歴取得部と、パラメータと行動履歴に基づいて、信用スコアを算出する信用スコア算出部と、を備える信用スコア管理サーバが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-174039号公報
【特許文献2】特開2020-009226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ユーザの行動履歴に基づいてユーザの信用度等を表すユーザスコアを算出する技術が提案されている。また、ユーザの居住地等のユーザに関連する地理的位置を活用してユーザに対して提供されるサービスの利便性を向上させる技術についても、種々提案されている。しかし、ユーザスコアの算出に際しては主として対象ユーザに直接関連する情報が当該ユーザの属性として扱われており、ユーザスコアの正確性を向上させるにあたって改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記した問題に鑑み、ユーザに係る地理的位置から推測されるコンテキストをユーザの評価に反映するための情報処理を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例は、ユーザに係る地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、前記地理的位置に係る地理的事実属性を決定する属性決定手段と、決定された前記地理的事実属性に基づいて、前記ユーザにかかる属性データ群の少なくとも一部を推定する属性推定手段と、推定された前記属性データ群に基づいて、前記ユーザに設定されるユーザスコアを推定するユーザスコア推定手段と、を備える情報処理システムである。
【0007】
本開示は、情報処理装置、システム、コンピュータによって実行される方法又はコンピュータに実行させるプログラムとして把握することが可能である。また、本開示は、そのようなプログラムをコンピュータその他の装置、機械等が読み取り可能な記録媒体に記録したものとしても把握できる。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ユーザに係る地理的位置から推測されるコンテキストをユーザの評価に反映するための情報処理を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る情報処理システムの構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
図3】実施形態に係る地理的推定属性の推定処理の簡略図である。
図4】実施形態に係るユーザスコア推定処理の簡略図である。
図5】実施形態において採用される機械学習モデルの決定木の概念を簡略図である。
図6】実施形態に係る機械学習処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施形態に係るユーザスコア推定処理の流れを示すフローチャートである。
図8】第1バリエーションに係る情報処理装置の機能構成の概略を示す図である。
図9】第2バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。
図10】第3バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。
図11】第4バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。
図12】第5バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る情報処理装置、方法及びプログラムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施の形態は、実施形態を例示するものであって、本開示に係る情報処理装置、方法及びプログラムを以下に説明する具体的構成に限定するものではない。実施にあたっては、実施の態様に応じた具体的構成が適宜採用され、また、種々の改良や変形が行われてよい。本発明は、後述する実施形態、バリエーションの夫々における構成の少なくとも一部を適宜、互いに採用することができる。
【0011】
本実施形態では、本開示に係る技術を、ユーザに関連する何らかの尺度(例えば、信用等)を示すユーザスコアを管理するユーザスコア管理システムのために実施した場合の実施の形態について説明する。但し、本開示に係る技術は、ユーザスコアの推定等のユーザ評価を支援するための技術について広く用いることが可能であり、本開示の適用対象は、実施形態において示した例に限定されない。
【0012】
<システムの構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの構成を示す概略図である。本実施形態に係るシステムでは、情報処理装置1と、1又は複数のサービス提供システム5と、が互いに通信可能に接続されている。ユーザは、サービス提供システム5によって提供されるサービスの利用者であり、ユーザ端末からサービス提供システム5にアクセスすることでサービスの提供を受ける。
【0013】
情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置14、NIC(Network Interface Card)等の通信ユニット15、等を備えるコンピュータである。但し、情報処理装置1の具体的なハードウェア構成に関しては、実施の態様に応じて適宜省略や置換、追加が可能である。また、情報処理装置1は、単一の筐体からなる装置に限定されない。情報処理装置1は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0014】
情報処理装置1は、ユーザ毎にユーザスコアを管理し、サービス提供システム5に対してユーザスコアを提供する。サービス提供システム5は、情報処理装置1から提供されたユーザスコアに応じて、対象ユーザに対するサービスをカスタマイズすることが可能である。
【0015】
サービス提供システム5は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、通信ユニット、入力装置、出力装置等(図示は省略する)を備えるコンピュータである。また、これらのシステム及び端末は、いずれも、単一の筐体からなる装置に限定されない。これらのシステム及び端末は、所謂クラウドや分散コンピューティングの技術等を用いた、複数の装置によって実現されてよい。
【0016】
サービス提供システム5によって提供されるサービスは、例えば、地図情報サービスやクレジットカード/後払い決済サービス、電子マネー決済サービス、オンラインショッピングサービス、オンライン予約サービス、オペレーションセンターサービス等である。なお、「後払い決済」には、所謂Buy Now Pay Later(BNPL)等と称されるサービスに限定されず、あらゆる後払いによる商品/サービスの購入が含まれるものとする。サービス提供システム5によって提供されるサービスは本実施形態における例示に限定されない。そして、サービス提供システム5は、サービスの提供に際してユーザから取得された当該ユーザの属性データ群221を情報処理装置1に通知する。ここで、ユーザの属性データ群221には当該ユーザによるサービスの利用履歴データが含まれる。サービスの利用履歴データの内容はサービスの内容に応じて様々であり、例えば、ユーザの位置情報の履歴データ、クレジットカード利用額/後払い決済利用額の支払履歴データ、電子マネー利用履歴データ、取引履歴データ、予約履歴データ、オペレーションセンターからのユーザに対するオペレーション履歴データ等が含まれてよい。
【0017】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能構成の概略を示す図である。情報処理装置1は、記憶装置14に記録されているプログラムが、RAM13に読み出され、CPU11によって実行されて、情報処理装置1に備えられた各ハードウェアが制御されることで、属性決定部21、属性推定部22、ユーザスコア推定部23、及び機械学習部24を備える情報処理装置として機能する。なお、本実施形態及び後述する他の実施形態では、情報処理装置1の備える各機能は、汎用プロセッサであるCPU11によって実行されるが、これらの機能の一部又は全部は、1又は複数の専用プロセッサによって実行されてもよい。
【0018】
属性決定部21は、ユーザに係る地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、ユーザの地理的位置に係る地理的事実属性211を決定する。ユーザに係る地理的位置としては、例えば、ユーザの居住地、勤務地、就学地等が挙げられる。その他、ユーザに係る地理的位置としては、例えばユーザが頻繁に訪れる商業地や行楽地、観光地等が含まれてもよく、ユーザに係る地理的位置の種類は本実施形態における例示に限定されない。本実施形態において、属性決定部21は、ユーザの行動情報(行動履歴)に基づいて当該ユーザに係る地理的位置を推定し、推定されたユーザの地理的位置及び所定のマップデータに基づいて地理的位置に係る地理的事実属性211を決定する。ここで、ユーザの行動情報(行動履歴)として用いられる情報には、例えば、サービス提供システム5等から取得可能なユーザの位置情報の履歴データ等が用いられる。ここで、サービス提供システム5等によるユーザの位置情報を取得するための技術及び位置情報の種類は限定されず、GPS等のGNSSによって得られたユーザ端末の位置情報や、携帯電話基地局、衛星基地局、等の基地局とユーザ端末との信号の送受信や、Wi-Fiアクセスポイント等のビーコン発信源からのビーコンに基づいて推定されたユーザ端末の位置情報等を用いることが出来る。ここで、ビーコンとは、例として、物理ビーコンであってよく、仮想ビーコンであってよく、屋内のビーコン発信源から受信可能なビーコンであってよく、屋外のビーコン発信源から受信可能なビーコンであってよく、その組み合わせであってよい。
【0019】
本実施形態において、属性決定部21は、ユーザの行動情報(行動履歴)に基づき、当該ユーザに係る地理的位置を推定する。例えば、属性決定部21は、対象ユーザについて蓄積された位置情報の履歴データを集計し、ユーザが滞在していた時間の長さやユーザが滞在していた時間帯に基づいて、ユーザに係る地理的位置を推定することが出来る。より具体的には、ユーザに係る地理的位置としてユーザの居住地を推定したい場合、属性決定部21は、ユーザが一般的に在宅している可能性が高いと考えられる所定の時間帯(例えば、18時から8時の夜間帯)にユーザの位置情報が集中している位置を、ユーザの居住地として推定することが出来る。また、ユーザに係る地理的位置としてユーザの勤務地や就学地等を推定したい場合、属性決定部21は、ユーザが一般的に就業又は就学している可能性が高いと考えられる所定の時間帯(例えば、8時から18時の昼間帯)にユーザの位置情報が集中している位置を、ユーザの勤務地等として推定することが出来る。なお、ここでは、夜間帯にユーザが滞在している位置を居住地、昼間帯にユーザが滞在している位置を勤務地等として推定する例を説明しているが、ユーザの居住地及び/又は勤務地等を推定するために参照する時間帯は、特定の時間帯に限定されない。ユーザの居住地及び/又は勤務地等を推定するために参照する時間帯は、他の属性データを参照することで得られるユーザの職種や勤務時間帯に応じて変更されてよい。
【0020】
また、属性決定部21は、ユーザの滞在する場所の地理的事実属性211に応じて当該ユーザに係る地理的位置及び当該地理的位置の種類を推定してもよい。即ち、対象ユーザが所定時間以上滞在する位置が住宅街としての地理的事実属性211を有している場合には、当該位置をユーザの居住地として推定し、対象ユーザが所定時間以上滞在する位置がオフィス街としての地理的事実属性211を有している場合には、当該位置をユーザの勤務地等として推定してもよい。この際、属性決定部21は、指定された位置が住宅街であるかオフィス街であるか等の地理的事実属性211の種類を判定可能なマップデータを参照することで、ユーザに係る地理的位置の種類を推定することが出来る。
【0021】
なお、本実施形態では、ユーザに係る地理的位置をユーザの行動情報(行動履歴)に基づいて推定する方法を採用しているが、ユーザに係る地理的位置はその他の方法で取得されてもよい。例えば、ユーザに係る地理的位置として、ユーザ自身によって登録された住所情報や勤務先情報、就学先情報が用いられてもよい。また、ユーザの行動履歴は、所定の場所に設置されたログイン端末やカメラを用いて得られたユーザの行動履歴であってもよく、所定の場所でユーザ識別子と対応付けられたポイントカードの提示等をともなって行われたユーザによる決済処理にともない更新されるユーザの行動履歴であってもよく、所定の場所でユーザが携帯するユーザ端末によって行われた決済処理にともない更新されるユーザの行動履歴であってよく、ユーザが外出時に携帯するユーザ端末による所定の場所に設置されたコード画像の読取処理にともない更新されるユーザの行動履歴であってもよく、所定の場所に設置された非接触リーダとユーザが外出時に携帯するユーザ端末との間で行われる近距離無線通信(NFC)にともない更新されるユーザの行動履歴であってよい。
【0022】
ユーザに係る地理的位置が推定されると、属性決定部21は、所定のマップデータに基づいて当該地理的位置に係る地理的事実属性211を決定する。ここで、地理的事実属性211は、ある地理的位置が何らかの属性を有しているか否か(属性、属性値の有無)、を示す情報である。地理的事実属性211は、地理的位置に対して所定の属性(地理的推定属性)が適用される蓋然性を示す地理的スコアの推定の用に適宜、供される。このため、マップデータは、地理的位置を指定することで当該位置に対応する地理的事実属性211が取得可能なデータであればよく、一般的な地図データに限定されない。また、地理的位置の指定方法についても、一般的には緯度経度等が用いられるが、市区町村を示す住所や郵便番号等が用いられてもよく、具体的な指定方法や指定のフォーマットは限定されない。マップデータとしては、以下に例示するようなデータを用いることが可能である。
【0023】
(1)過去の状態を特定可能なマップデータ
マップデータは、地理的位置に対応する地理的事実属性211として、当該位置の過去の状態を特定可能なデータであってよい。この場合、属性決定部21は、対象ユーザに係る地理的位置に対応する過去の状態に基づいて、対象ユーザが所在し得る地理的位置にかかる地理的事実属性211を決定する。例えば、地理的位置に対応する過去の状態として旧河川や旧三業地等が挙げられ、これらの過去の状態は今後の地価等に関連する可能性があるため、何らかの推定処理等のための地理的事実属性211として扱い得る。また、例えば、地理的位置に対応する過去の状態として埋め立て前の海等が挙げられ、これらの過去の状態は今後の地価等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。
【0024】
(2)周辺に存在する他の地理的位置との関係性を特定可能なマップデータ
マップデータは、地理的位置に対応する地理的事実属性211として、当該位置と当該位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性を特定可能なデータであってよい。この場合、属性決定部21は、対象ユーザに係る地理的位置と当該地理的位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性に基づいて、対象ユーザが所在し得る地理的位置にかかる地理的事実属性211を決定する。例えば、地理的位置と当該位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性として、周囲と比べた標高差(高い/低い)や、表層地盤増幅率/表層地盤増幅率の高低、一級河川からの距離、設立400年以上の神社・寺社からの距離、1km以内に設立400年以上の神社・寺社の有無、等が挙げられ、これらの関係性は今後の地価や災害リスク等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。また、例えば、地理的位置と当該位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性として、地理的位置の周辺における駅、病院、公園、役所、図書館等の有無、等が挙げられ、これらの関係性は今後の地価や不動産価格等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。また、例えば、地理的位置と当該位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性として、地理的位置の周辺における社屋、工場、製造拠点等の企業拠点の有無、等が挙げられ、これらの関係性は今後の地価や税収等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。また、例えば、地理的位置と当該位置周辺に存在する他の地理的位置との関係性として、地理的位置およびその近傍におけるパチンコ店や、競馬場、競艇場、競輪場、オートレース会場等の公営競技場、等が挙げられ、これらの関係性は今後の地価等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。
【0025】
(3)地域に係る情報を特定可能なマップデータ
マップデータは、地理的位置に対応する地理的事実属性211として、当該位置を含む地域に係る情報を特定可能なデータであってよい。この場合、属性決定部21は、対象ユーザに係る地理的位置を含む地域に係る情報に基づいて、対象ユーザが所在し得る地理的位置にかかる地理的事実属性211を決定する。例えば、地理的位置を含む地域に係る情報として、治安に関する統計情報や経済指標等が挙げられ、これらの地域情報は今後の地価等に関連する可能性があるため、何らかの推定処理等のための地理的事実属性211として扱い得る。また、例えば、地理的位置を含む地域に係る情報として、全域人口、人口増減、将来人口推計、年齢別人口、配偶関係別人口、日本人・外国人別人口、世帯の状況(家族類型別割合、家族類型別一般世帯数の推移)、住居の状況(住宅の建て方別住宅に住む一般世帯数の推移)、国籍別外国人人口等の国勢調査により明らかとなる人口等基本集計結果、等が挙げられ、これらの地域情報は今後の地価等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。また、例えば、地理的位置を含む地域に係る情報として、人口の労働力状態、夫婦、子供のいる世帯等の産業・職業大分類別構成等の国勢調査により明らかとなる就業状態等基本集計結果、等が挙げられ、これらの地域情報は今後の地価等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。また、例えば、地理的位置を含む地域に係る情報として、人流データ等の国土情報等が挙げられ、これらの地域情報は今後の地価等に関連する可能性があるため、地理的事実属性211として扱い得る。
【0026】
図3は、実施形態に係る地理的推定属性の推定処理の簡略図である。属性推定部22は、ユーザにかかる属性データ群221を推定する。ユーザにかかる属性データ群221には、サービス提供システム5から取得された利用履歴データを含む属性データが含まれるが、この際、属性推定部22は、属性決定部21によって決定された地理的事実属性211に基づいて、地理的推定属性222を、ユーザにかかる属性データ群221の少なくとも一部として推定する。なお、属性推定部22は、1又は複数の決定された地理的事実属性211に基づいて、地理的推定属性222を推定し、地理的推定属性222をユーザに係る属性データ群221の少なくとも一部として決定してよい。なお、本実施形態において、属性推定部22は、地理的推定属性222をそのままユーザにかかる属性データ群221の一部として決定し、属性データ群221として用いる。属性推定部22は、決定された地理的事実属性211に対して何らかの加工(正規化やランク化、ラベル化等)を施して属性データ群221の一部としてもよいし、決定された地理的事実属性211を用いて算出された他の種類のスコア又はラベルを属性データとしてもよい。ここで、他の種類のスコア又はラベルの算出には、他の機械学習モデルが介在してもよい。例えば、属性推定部22は、決定された地理的事実属性211を入力値とし地理的スコア222A又は地理的ラベル222Bを出力値とする教師データを用いて生成された属性推定モデル220を用いて、ユーザにかかる属性データ群221の少なくとも一部を決定してもよい。ここで、地理的スコア222Aとは、所定の属性、属性値(地理的推定属性)が適用され得る度合いを示すスコアであり、地理的ラベル222Bとは、所定の属性、属性値の種別を示す情報である。
【0027】
地理的推定属性222に含まれる地理的スコア222Aは、例えば、所定の状況にある他のユーザが所定時間を超えて所在する地域であるという地理的ラベル222Bを、ユーザにかかる地理的位置が示す地域に対して適用することに関する妥当性(蓋然性)を示すスコアである。また、地理的スコア222Aは、例えば、所定の状況にある他のユーザが在住者として占める割合が所定の割合を超過する地域であるという地理的ラベル222Bを、ユーザにかかる地理的位置が示す地域に対して適用することに関する妥当性を示すスコアである。なお、ここでの所定の状況とは、例として、ライフステージ、ライフスタイル等に基づく生活状況であってよく、収入、資産等に基づく経済状況であってよい。また、地理的推定属性222に含まれる地理的スコア222Aは、例えば、他のユーザが所定の状況に置かれる可能性がある地域であるという地理的ラベル222Bを、ユーザにかかる地理的位置が示す地域に対して適用することに関する妥当性(蓋然性)を示すスコアである。ここでの所定の状況とは、被災等により資産が被害を受ける等の状況であってよい。地理的推定属性222に含まれる地理的スコア222Aは、例えば、地理的動向と対応する地理的ラベル222Bを、ユーザにかかる地理的位置が示す地域に対して適用することに関する妥当性(蓋然性)を示すスコアである。ここでの地理的動向とは、再開発等により資産価値が向上する等の状況であってよく、物価の高騰等により生活水準が高くなる等の状況であってよく、人流の集中等により物やサービスの消費が活発化する等の状況であってよい。
【0028】
ここで、属性推定部22によって推定される属性データ群221には、デモグラフィック属性223、ビヘイビオラル属性224、又はサイコグラフィック属性225が含まれてよい。デモグラフィック属性223は、例えば、ユーザの性別(ジェンダー)、家族構成、年齢等であり、ビヘイビオラル属性224は、サービスの利用履歴データに基づいてよく、例えば、キャッシング利用有無、リボ払い利用有無、所定の口座に係る入出金履歴、賭博又はくじを含む何らかの商品に係る商取引履歴(オンラインマーケットプレイス等におけるオンライン取引履歴を含んでよい)等であり、サイコグラフィック属性225は、例えば、賭博又はくじに係る趣向等である。但し、利用可能なユーザの属性は、本実施形態における例示に限定されない。例えば、オペレーションセンターサービス等からの「オペレーション(架電等)に要する時間」、「クレジットカード利用額/後払い決済利用額」も、属性として用いられてよい。
【0029】
そして、属性データ群221には、上記した属性に加えて更に、属性決定部21によって決定された地理的事実属性211に基づいて推定された地理的推定属性222が含まれる。地理的事実属性211に基づいて決定された地理的推定属性222には、例えば、地理的スコア222A(例えば、0以上1以下の連続的な値)又は地理的ラベル222B(例えば、有無や是非に応じた二値)等のデータ形式で表される居住地属性データ、勤務地属性データ、及び/又は就学地属性データ等が含まれてよい。
【0030】
図4は、実施形態に係るユーザスコア推定処理の簡略図である。ユーザスコア推定部23は、属性データ群221に基づいて、ユーザに設定されるユーザスコア231を推定する。本実施形態において、ユーザスコア推定部23は、ユーザの属性データ群221をユーザスコア推定モデル230に入力することで、当該ユーザに設定されるユーザスコア231を推定(算出)する。ここで、ユーザスコア推定モデル230の出力値は、例として、0を最小値、1を最大値として正規化/規格化されたユーザスコアである。
【0031】
機械学習部24は、ユーザスコア推定部23によるユーザスコア推定に用いられるユーザスコア推定モデル230を生成及び/又は更新する。ユーザスコア推定用機械学習モデルは、対象ユーザに係る1又は複数の属性データ(属性データ群221)が入力された場合に、ユーザに関連する何らかの尺度(例えば、信用等)を示すユーザスコア231を出力する機械学習モデルである。
【0032】
ユーザスコア推定モデル230の生成及び/又は更新にあたって、機械学習部24は、サービス提供システム5から取得したデータに基づいて、ユーザ毎に、当該ユーザのデモグラフィック属性を含む属性データ群221を入力値とし当該ユーザに係るユーザスコア231を出力値として定義した教師データを作成する。そして、機械学習部24は、当該教師データに基づいて、ユーザスコア推定モデル230を作成する。上述の通り、ユーザスコア推定モデル230に入力される属性データ群221には、属性決定部21によって決定された地理的事実属性211に基づいて推定された属性データが含まれ、対応するユーザのユーザスコア231と組み合わせられて、教師データとして機械学習部24に入力される。教師データに設定されるユーザスコア231は、ルールベースで決定されたユーザスコア231であってよく、マニュアルで設定された(アノテーションがなされた)ユーザスコア231であってもよい。また、ユーザスコア推定モデル230によって過去に出力された後で、管理者等によって修正されたユーザスコア231であってもよい。
【0033】
本開示に係る技術を実装するにあたりユーザスコア推定モデル230等として採用可能な機械学習モデル生成のフレームワークは、例として、アンサンブル学習アルゴリズムに基づく。当該フレームワークには、例えば、勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree:GBDT)に基づく機械学習フレームワーク(例えば、LightGBM)が採用されてよい。換言すると、当該フレームワークは、前後の弱学習器(弱分類器)間で正解と予測値との誤差を引き継がせるような決定木モデルに基づく機械学習フレームワークが採用されてよい。ここでの予測値とは、例として、ユーザスコア231の予測値を指す。なお、当該フレームワークは、LightGBMの他、XGBoostやCatBoost等のブースティング手法を採用してよい。決定木を用いるフレームワークによれば、ニューラルネットワークを用いるフレームワークと比較して少ないパラメータ調整の手間で、比較的高い性能を有する機械学習モデルを生成することが出来る。但し、本開示に係る技術を実装するにあたり採用可能な機械学習モデル生成のフレームワークは、本実施形態における例示に限定されない。例えば、学習器として勾配ブースティング決定木に代えてランダムフォレスト等の他の学習器が採用されてよいし、ニューラルネットワーク等の所謂弱学習器とは称されない学習器が採用されてもよい。また、特にニューラルネットワーク等の所謂弱学習器とは称されない学習器が採用される場合には、アンサンブル学習が採用されなくてもよい。
【0034】
図5は、本実施形態においてユーザスコア推定モデル230等として採用される機械学習モデルの決定木の概念を簡略図である。決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークを採用する場合、決定木の各ノードの分岐条件の最適化が行われる。具体的には、決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークでは、一つの親のノードから分岐した二つの子のノードの夫々が示す属性を有するユーザ群についてユーザスコア231を夫々算出し、このユーザスコア231の差分が大きくなるように(例えば、差分が最大になるように、又は所定の閾値以上になるように)、即ち、二つの子のノードがきれいに分岐するように、親のノードの分岐条件が最適化される。例えば、ノードの分岐条件として示される属性が地理的スコアである場合、分岐の閾値に設定される所定のスコアを変更したり、分岐条件を地理的スコア以外に変更したりしてよい。また、例えば、ノードの分岐条件として示される属性が年齢である場合、分岐の閾値に設定される年齢を変更したり、分岐条件を年齢以外の属性に変更したりしてもよい。このようにして、決定木の全ノードの分岐条件を再帰的に最適化することで、属性データ群221に基づくユーザスコア231の推定精度を向上させることができる。
【0035】
また、属性推定部22が属性推定モデル220を用いて属性データ群221の少なくとも一部を推定する場合、機械学習部24は更に、属性推定部22による、地理的事実属性211に基づく地理的推定属性222の決定に用いられる属性推定モデル220を生成及び/又は更新する。属性推定モデル220は、対象ユーザに係る1又は複数の地理的事実属性211が入力された場合に、当該ユーザが所在する地理的位置に係る地理的推定属性222を出力する機械学習モデルである。
【0036】
属性推定モデル220の生成及び/又は更新にあたって、機械学習部24は、サービス提供システム5から取得したデータに基づいて、1又は複数の地理的事実属性211を入力値とし1の地理的推定属性222を出力値として定義した教師データを作成する。そして、機械学習部24は、当該教師データに基づいて、属性推定モデル220を生成又は更新する。1又は複数の地理的推定属性222は、対応する属性データ(地理的事実属性211)と組み合わせて、教師データとして機械学習部24に入力される。また、属性推定モデル220の生成又は更新においても、採用可能な機械学習モデル生成のフレームワークは限定されないが、決定木アルゴリズムに基づいた勾配ブースティングの機械学習フレームワークが採用されてよいことは、上記説明したユーザスコア推定モデル230と同様である。このようにして、属性推定モデル220を用いて1又は複数の地理的事実属性211に基づく出力値(地理的推定属性222)を得ることで、当該出力値には、ユーザの居住地、勤務地、就学地等にかかるコンテキストが暗黙知的に反映される。ここで、属性推定モデル220は、地理的スコア222Aの多寡でラベリングされたデータでトレーニングされてよく、別途、所定の地理的ラベル222Bの有無等でラベリングされたデータでトレーニングされてもよい。
【0037】
<処理の流れ>
次に、本実施形態に係る情報処理システムによって実行される処理の流れを説明する。なお、以下に説明する処理の具体的な内容及び処理順序は、本開示を実施するための一例である。具体的な処理内容及び処理順序は、本開示の実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0038】
図6は、本実施形態に係る機械学習処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、管理者によって指定されたタイミングで実行される。
【0039】
本実施形態において、機械学習処理では、ユーザスコア推定モデル230が生成及び/又は更新される。機械学習部24は、サービス提供システム5において過去に蓄積されたユーザ毎の属性データ群221と、対応するユーザについて予め決定されたユーザスコア231と、の組み合わせを含む教師データを作成する(ステップS101)。そして、機械学習部24は、作成された教師データをユーザスコア推定モデル230に入力し、ユーザスコア推定部23によるユーザスコア推定に用いられるユーザスコア推定モデル230を生成又は更新する(ステップS102)。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。なお、属性推定部22が属性推定のために属性推定モデル220を用いる場合、属性推定モデル220の生成及び/又は更新も、同様の処理の流れで行われてよい。
【0040】
図7は、本実施形態に係るユーザスコア推定処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、管理者によって指定されたタイミングで、対象となるユーザ毎に実行される。
【0041】
ステップS201及びステップS202では、地理的事実属性211が決定される。属性決定部21は、対象ユーザの行動情報(行動履歴)に基づいて対象ユーザに係る地理的位置を推定し(ステップS201)、推定されたユーザの地理的位置及び所定のマップデータに基づいて地理的位置に係る地理的事実属性211を決定する(ステップS202)。その後、処理はステップS203へ進む。
【0042】
ステップS203及びステップS204では、ユーザスコア231が決定され、出力される。属性推定部22は、決定された地理的事実属性211に基づき地理的推定属性222を、ユーザにかかる属性データ群221として推定する(ステップS203)。なお、本実施形態では、地理的推定属性222がそのまま属性データ群221の少なくとも一部として推定されるため、属性推定部22は、対象ユーザについてサービス提供システム5から取得される等して予め保持されている属性データ群221に地理的推定属性222を追加することで、当該ユーザの属性データ群221を得てよい。そして、ユーザスコア推定部23は、ステップS203で決定された、対象ユーザの地理的推定属性222を含む属性データ群221をユーザスコア推定モデル230に入力し、出力された値を当該ユーザに設定されるユーザスコア231として取得する(ステップS204)。但し、ユーザスコア231の推定方法は、本実施形態における例示に限定されない。例えば、ユーザスコア231は、属性データ群221を機械学習モデルではない所定の関数や統計モデル等に入力して算出された値を含むものであってもよい。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0043】
ユーザ毎に設定されたユーザスコア231は、サービス提供システム5等の他のシステムに対して提供され、サービス提供システム5等の他のシステムによって対象ユーザに対して提供されるサービスのカスタマイズ等に活用される。
【0044】
<効果>
本実施形態によれば、ユーザに係る地理的位置から推測されるコンテキストをユーザスコア231に反映することが可能となる。即ち、本実施形態によれば、ユーザに係る地理的位置に基づいて、明示的な属性データからは得られない、ユーザスコアに影響し得る地理的コンテキストを、ユーザスコア231に反映することが可能となる。また、様々なユーザ属性データを用いることで、対象ユーザについて一部の属性データが存在しない場合であっても、精度の高いユーザスコア231を算出することが可能となる。
【0045】
<第1バリエーション>
上記説明した実施形態では、マップデータとして予め準備されたデータを用いる例について説明したが、マップデータは、属性決定部21で用いるために新たに作成されてもよい。この際、マップデータは、例えば、以下のような方法によっても作成することができる。
【0046】
図8は、第1バリエーションに係る情報処理装置1bの機能構成の概略を示す図である。情報処理装置1bは、記憶装置14に記録されているプログラムが、RAM13に読み出され、CPU11によって実行されて、情報処理装置1に備えられた各ハードウェアが制御されることで、属性決定部21、属性推定部22、ユーザスコア推定部23、機械学習部24、及びマップデータ作成部25を備える情報処理装置として機能する。なお、本実施形態及び後述する他の実施形態では、情報処理装置1の備える各機能は、汎用プロセッサであるCPU11によって実行されるが、これらの機能の一部又は全部は、1又は複数の専用プロセッサによって実行されてもよい。また、本バリエーションにおいて、属性決定部21、属性推定部22、ユーザスコア推定部23、及び機械学習部24による処理の内容については、上記説明した実施形態と概略同様であるため、説明を省略する。
【0047】
マップデータ作成部25は、衛星画像の入力を受け付け、入力された衛星画像を所定の大きさのグリッドに分割する。ここで、「グリッド」とは衛星画像を何らかの形状を用いて分割したものである。グリッドの形状としては例えば矩形があるが、グリッドの形状は限定されない。グリッドの形状には、三角形や六角形等、その他の形状が採用されてもよい。そして、マップデータ作成部25は、衛星画像を画像解析することによって各グリッドに含まれる各領域がどのような地理的事実属性211に対応しているかを推定し、各グリッドの識別情報に、当該グリッドに対応する領域について推定された地理的事実属性211を関連付けることで、マップデータを作成する。ここで、衛星画像の解析によって推定される地理的事実属性211としては、例えば、市街地、住宅地、水田、山、河川、高台、傾斜、曲面、植生範囲、等がある。画像解析に用いられる技術については従来提案されているAIや機械学習モデルを用いてよいため詳細については省略するが、画像中の色情報や画像解析によって検出される形状、特徴等に基づいて、上記に例示したような地理的事実属性211を推定することが可能である。
【0048】
また、マップデータ作成部25は、予め用意された評価マップ(例えば、ハザードマップ等のリスク評価マップ)の入力を受け付け、入力された評価マップを所定の大きさのグリッドに分割する。そして、マップデータ作成部25は、評価マップを解析することによって各グリッドに含まれる各領域がどのような地理的事実属性211に対応しているかを推定し、各グリッドの識別情報に、当該グリッドに対応する領域について推定された地理的事実属性211を関連付けることで、マップデータを作成する。ここで、評価マップの解析によって推定される地理的事実属性211としては、例えば、高洪水リスク、高土砂災害リスク、等がある。なお、本実施形態では、評価マップの例としてハザードマップを挙げているが、採用可能な評価マップの種類はハザードマップに限定されない。評価マップとしては、マップ上の地点又は地域について何らかの基準に基づいた評価が示されたマップであれば、様々な種類の評価マップを用いることが可能である。
【0049】
このような作成方法を採用することで、マップデータ作成処理の全部又は一部を自動化することが可能となる。そして、グリッド毎に地理的事実属性211が付されたマップデータを作成して用いることで、属性決定部21は、ユーザの地理的位置に係るグリッドを特定し、当該グリッドに関連づけられた地理的事実属性211をマップデータから取得することで、当該ユーザに係る地理的事実属性211を決定することが出来る。
【0050】
また、作成されたマップデータは、上記実施形態においても説明したように、属性決定部21がユーザの行動情報(行動履歴)に基づいて当該ユーザに係る地理的位置を推定する際に、当該地理的位置がユーザの居住地、勤務地、就学地等のいずれ種類の地理的位置に相当するかの判定に用いられてもよい。即ち、ユーザに係る地理的位置が相当するグリッドの地理的事実属性211が住宅地である場合、属性決定部21は、当該地理的位置がユーザの居住地を示し、ユーザに係る地理的位置が相当するグリッドの地理的事実属性211が市街地である場合、属性決定部21は、当該地理的位置がユーザの勤務地を示す、等の判断を行うことが出来る。
【0051】
<第2バリエーション>
上記説明した実施形態では、ユーザスコア推定部23が、地理的推定属性222、デモグラフィック属性223、ビヘイビオラル属性224、サイコグラフィック属性225を含む属性データ群221に基づき、ユーザスコア231を推定する例について説明したが、ユーザスコア推定処理のための属性データ群221は、以下のような構成であってもよい。なお、上記説明した実施形態と概略同様の構成については、説明を省略する。
【0052】
図9は、第2バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。本バリエーションにおいて、属性データ群221は、地理的推定属性222に代えて地理的事実属性211を含んでよい。また、属性データ群221は、ユーザにかかる地理的位置と対応する地理的事実属性211に加えて、当該地理的位置と隣接する他の地理的位置と対応する地理的事実属性211を含んでよく、当該地理的位置から所定距離内の他の地理的位置と対応する地理的事実属性211を含んでよく、当該地理的位置から何らかの交通手段で所定時間以内に到達可能な他の地理的位置と対応する地理的事実属性211を含んでよい。ここで、ユーザスコア推定モデル230は、属性データ群221を構成するデータの種別に応じて適宜、構築された教師データを用いてトレーニング(学習処理)がなされる。
【0053】
<第3バリエーション>
また、ユーザスコア推定処理のための属性データ群221は、以下のような構成であってもよい。なお、上記説明した実施形態と概略同様である構成については、説明を省略する。
【0054】
図10は、第3バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。本バリエーションにおいて、属性データ群221は、地理的推定属性222に加えて地理的事実属性211を含んでよい。ここで、第2バリエーションと同様、属性データ群221は、ユーザにかかる地理的位置と対応する地理的事実属性211および地理的推定属性222に加えて、当該地理的位置と隣接する他の地理的位置と対応する地理的事実属性211および/または地理的推定属性222を含んでよく、当該地理的位置から所定距離内の他の地理的位置と対応する地理的事実属性211および/または地理的推定属性222を含んでよく、当該地理的位置から何らかの交通手段で所定時間以内に到達可能な他の地理的位置と対応する地理的事実属性211および/または地理的推定属性222を含んでよい。ここで、ユーザスコア推定モデル230は、属性データ群221を構成するデータの種別に応じて適宜、構築された教師データを用いてトレーニング(学習処理)がなされる。
【0055】
<第4バリエーション>
ユーザスコア推定部23は、以下の態様で、ユーザスコア231の推定(算出)を行ってもよい。なお、上記説明した実施形態と概略同様である構成については、説明を省略する。
【0056】
図11は、第4バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。ユーザスコア推定部23は、地理的推定属性222に応じて、複数のユーザスコア推定モデル(第1ユーザスコア推定モデル230A、第2ユーザスコア推定モデル230B、第3ユーザスコア推定モデル230C、・・・第nユーザスコア推定モデル230N(nは整数))から1のユーザスコア推定モデル230を選択し決定し、属性データ群221に基づきユーザスコア231(ユーザスコア231A、ユーザスコア231B、ユーザスコア231C、・・・ユーザスコア231N)を推定する。ここで、n>1であってよく、n=2であってよく、n=3であってよく、nが示すユーザスコア推定モデル230の数量に制限はない。また、各ユーザスコア推定モデル230は、地理的推定属性222の少なくとも一部が共通または類似する教師データでトレーニングがなされている。スコア推定対象のユーザにかかる地理的推定属性222が所定の地理的推定属性222を示す場合、当該所定の地理的推定属性222に応じて予めトレーニングされたユーザスコア推定モデル230を用いて、ユーザスコア231を推定する。なお、地理的推定属性222の少なくとも一部が共通または類似するとは、例として、地理的スコア222Aが所定の範囲内を示すことであってよく、地理的ラベル222Bが共通することであってよい。なお、本バリエーションにおいて、属性データ群221は、デモグラフィック属性223、ビヘイビオラル属性224、サイコグラフィック属性225等に加えて、スコア推定対象のユーザが所在する地理的位置に係る地理的事実属性211および/または地理的推定属性222をさらに含んでもよい。
【0057】
<第5バリエーション>
ユーザスコア推定部23は、以下の態様で、ユーザスコア231の推定(算出)を行ってもよい。なお、上記説明した実施形態と概略同様である構成については、説明を省略する。
【0058】
図12は、第5バリエーションに係るユーザスコア推定処理の簡略図である。ユーザスコア推定部23は、属性データ群221をユーザスコア推定モデル230に入力することで得られたユーザスコア231を、スコア推定対象のユーザが所在する地理的位置にかかる地理的推定属性222に基づき調整、修正、補正、変更等してユーザスコア231Dを決定してよい。ここで、ユーザスコア推定部23は、地理的推定属性222が所定の閾値を超過する地理的スコア222Aを示す場合、ユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231の上方修正を行い、ユーザスコア231Dを決定してよい。一方、ユーザスコア推定部23は、地理的推定属性222が所定の閾値を下回る地理的スコア222Aを示す場合、ユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231の下方修正を行い、ユーザスコア231Dを決定してよい。ユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231の修正等に際し、出力されたユーザスコア231に適用する係数、付加されるスコア等は、地理的スコア222Aと所定の閾値との差分等によって適宜、決定されてよい。なお、ユーザスコア推定部23は、地理的推定属性222の代わりに地理的事実属性211に応じてユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231の修正等を行い、ユーザスコア231Dを決定してもよい。このとき、ユーザスコア推定部23は、所定の地理的事実属性211であるか否かに応じて、ユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231の修正等を行い、ユーザスコア231Dを決定してよい。
【0059】
ユーザスコア推定部23は、地理的推定属性222における地理的スコア222Aと所定の閾値との差分が別の所定の閾値を超過する場合、ユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231を無効と判定してもよい。ここで、ユーザスコア推定部23は、地理的推定属性222における地理的スコア222Aの所定の閾値に対する超過量が別の所定の閾値を超過する正の値である場合、ユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231を無効と判定してもよい。また、ここで、ユーザスコア推定部23は、地理的推定属性222における地理的スコア222Aの所定の閾値に対する超過量が別の所定の閾値を超過する負の値である場合、ユーザスコア推定モデル230が出力したユーザスコア231の修正等を行ってよい。なお、当該所定の閾値、当該別の所定の閾値等は、ユーザスコア231の多寡に応じ予め設定されていてよく、所定の範囲内のユーザスコア231が出力されたユーザの夫々にかかる地理的スコア222Aの統計的指標に基づき設定されてよい。
【0060】
<その他のバリエーション>
上記説明した実施形態では、ユーザに係る地理的位置又は当該地理的位置を含む領域の地理的事実属性211が取得される例について説明したが、属性決定部21によって決定される地理的事実属性211は、このような態様に限定されない。例えば、属性決定部21は、ユーザに係る地理的位置又は当該地理的位置を含む領域とは異なる位置又は領域についての地理的事実属性211を取得してもよい。例えば、属性決定部21は、ユーザに係る地理的位置を基準とした所定の範囲内の他の地理的位置及び所定のマップデータに基づいて、当該他の地理的位置に係る地理的事実属性211を決定してもよい。この場合、属性推定部22は、決定された他の地理的位置に係る地理的事実属性211に基づいて、地理的推定属性222を、ユーザにかかる属性データ群221の少なくとも一部として、推定する。また、例えば、属性決定部21は、ユーザの居住地等を含むエリアに隣接する他のエリアの地理的事実属性211に従って、ユーザの地理的位置に係る地理的事実属性211を決定してもよい。このようにすることで、属性推定部22は、ユーザの居住地や勤務地等のみならず、これらの所在地に隣接するエリアの地理的事実属性211に基づいて、ユーザの属性データ群221を推定することが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 情報処理装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12