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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148446
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】車輪及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20231005BHJP
   F16H 1/46 20060101ALI20231005BHJP
   B62D 57/024 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60B19/00 D
F16H1/46
B62D57/024 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056465
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 敏也
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FB02
3J027GB02
3J027GC24
3J027GD02
3J027GD09
3J027GD14
(57)【要約】
【課題】変形の制御が容易であって、平地走行時の安定性を維持しつつ段差を乗り越えること。
【解決手段】車輪1は、車軸Aw回りに回動可能な車輪本体10と、車輪本体10の外周より径方向内側に収容される収容位置と車輪本体10の外周より径方向外側に一部が突出する突出位置との間で車輪本体10に対して車軸Awに平行な爪回転軸Ac回りに回動可能な爪部材20と、車軸Aw回りに回動可能かつ車輪本体10に対する相対回動に伴って爪部材20を爪回転軸Ac回りに回動させる爪作動歯車31と、爪作動歯車31が車輪本体10と同一の回転数で回動するように車輪本体10の回転を爪作動歯車31に伝達する歯車機構40と、通電時には車輪本体10の回転トルクを爪作動歯車31へ伝達させ、非通電時には車輪本体10の回転トルクを爪作動歯車31に伝達させないように、歯車機構40による回転伝達経路を切り替え可能な電磁石70と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部に対して車軸回りに回動可能な車輪本体と、
前記車輪本体の外周より径方向内側に収容される収容位置と前記車輪本体の外周より径方向外側に一部が突出する突出位置との間で前記車輪本体に対して前記車軸に平行な爪回転軸回りに回動可能な爪部材と、
前記車軸回りに回動可能かつ前記車輪本体に対する相対回動に伴って前記爪部材を前記爪回転軸回りに回動させる爪作動歯車と、
前記爪作動歯車が前記車輪本体と同一の回転数で回動するように前記車輪本体の回転を前記爪作動歯車に伝達する歯車機構と、
通電時には前記車輪本体の回転トルクを前記爪作動歯車へ伝達させ、非通電時には前記車輪本体の回転トルクを前記爪作動歯車に伝達させないように、前記歯車機構による回転伝達経路を切り替え可能な電磁石と、
を備える、車輪。
【請求項2】
前記爪作動歯車は、
前記車輪本体に対して一方向に相対回転すると前記爪部材の一部を前記車輪本体の外周より径方向外側に突出させる突出方向に前記爪部材を回転させ、
前記車輪本体に対して一方向とは反対の他方向に相対回転すると前記爪部材を前記車輪本体の外周より径方向内側に収容させる収容方向に前記爪部材を回転させ、
前記車輪本体に対して相対回動しない場合、前記爪部材の突出した状態又は収容された状態を維持する、
請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
歯車機構は、
軸心が前記車軸と一致しかつ前記車輪本体と一体で回動する内歯車と、
軸心が前記車軸と一致しかつ前記内歯車の内周側において前記支持部に固定される第1太陽歯車と、
前記内歯車の内周側と前記第1太陽歯車の外周側との間の環状の空間に配置される第1遊星歯車と、
磁性を有し、前記第1遊星歯車と同芯に配置されかつ前記第1遊星歯車と歯数が同数である第2遊星歯車と、
前記第2遊星歯車と歯数が同数でかつ前記第2遊星歯車と噛み合う第3遊星歯車と、
前記爪作動歯車に同芯で固定されて前記第3遊星歯車と噛み合いかつ歯数が前記内歯車と同数である第2太陽歯車と、
前記第1遊星歯車を支持しかつ前記第2遊星歯車を軸心回りに回動可能に支持し、前記電磁石によって磁化可能であって、磁化すると前記第2遊星歯車と回転が同期する磁性シャフトと、
前記車軸回りに回動可能かつ前記第3遊星歯車及び前記磁性シャフトを軸心回りに回動可能に支持する遊星キャリアと、
を備える、
請求項1に記載の車輪。
【請求項4】
前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車は、前記車軸回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられ、
前記第3遊星歯車は、前記車軸回りに回転対称かつ等間隔に前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車と同数設けられる、
請求項3に記載の車輪。
【請求項5】
前記支持部に支持され前記車輪本体の回動を駆動させる第1回転アクチュエータと、
出力軸が前記車軸に一致するよう前記支持部に支持される第2回転アクチュエータと、
をさらに備え、
歯車機構は、
軸心が前記車軸と一致しかつ前記車輪本体と一体で回動する内歯車と、
前記内歯車の内周側において軸心が前記車軸と一致するよう配置されかつ前記第2回転アクチュエータに回動駆動される第1太陽歯車と、
前記内歯車の内周側と前記第1太陽歯車の外周側との間の環状の空間に配置される第1遊星歯車と、
磁性を有し、前記第1遊星歯車と同芯に配置されかつ前記第1遊星歯車と歯数が同数である第2遊星歯車と、
前記第2遊星歯車と歯数が同数でかつ前記第2遊星歯車と噛み合う第3遊星歯車と、
前記爪作動歯車に同芯で固定されて前記第3遊星歯車と噛み合いかつ歯数が前記内歯車と同数である第2太陽歯車と、
前記第1遊星歯車を支持しかつ前記第2遊星歯車を軸心回りに回動可能に支持し、前記電磁石によって磁化可能であって、磁化すると前記第2遊星歯車と回転が同期する磁性シャフトと、
前記車軸回りに回動可能かつ前記第3遊星歯車及び前記磁性シャフトを軸心回りに回動可能に支持する遊星キャリアと、
を備える、
請求項1に記載の車輪。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の車輪と、
前記車輪本体が前記車軸回りに回動可能であるように前記車輪を支持する車体と、
を備える、車両。
【請求項7】
地面に接地する前記車輪を地面から浮き上がらせ、前記車体を保持することが可能な昇降機構をさらに備える、
請求項6に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行搬送ロボット(AMR;Autonomous Mobile Robot)、無人搬送台車(AGV;Auto Guided Vehicle)、搬送用カート、電動車いす、掃除ロボット、パートナーロボット等の自走車に搭載される駆動輪には、走行路に存在する段差、凹凸、傾斜部、階段等の障害物の乗り越え及び昇降を行う技術が求められている。特許文献1には、閉じ回転位置では転動周面を形成し、展開回転位置では転動周面外へ突出する、周方向所定間隔で設けられる複数の転動爪体を備える車輪の構造が開示されている。また、特許文献2には、走行輪の周方向に分割され走行輪の径方向外側に出退開閉可能に支持された複数の分割部を、選択的に突出展開して段差に係合させることで、段差を乗り越える車輪の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-031796号公報
【特許文献2】特開2010-155520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車輪は、車輪の外輪自体を変形させるため、外輪が完全な円にならず、走行時の安定性に問題がある。また、特許文献2の車輪は、車輪側にそれぞれの分割部に対する変形用のアクチュエータが配置されるため、駆動源から回転するアクチュエータへの伝達部の機構が複雑である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、変形の制御が容易であって、平地走行時の安定性を維持しつつ段差を乗り越えることができる車輪及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車輪は、支持部に対して車軸回りに回動可能な車輪本体と、前記車輪本体の外周より径方向内側に収容される収容位置と前記車輪本体の外周より径方向外側に一部が突出する突出位置との間で前記車輪本体に対して前記車軸に平行な爪回転軸回りに回動可能な爪部材と、前記車軸回りに回動可能かつ前記車輪本体に対する相対回動に伴って前記爪部材を前記爪回転軸回りに回動させる爪作動歯車と、前記爪作動歯車が前記車輪本体と同一の回転数で回動するように前記車輪本体の回転を前記爪作動歯車に伝達する歯車機構と、通電時には前記車輪本体の回転トルクを前記爪作動歯車へ伝達させ、非通電時には前記車輪本体の回転トルクを前記爪作動歯車に伝達させないように、前記歯車機構による回転伝達経路を切り替え可能な電磁石と、を備える。
【0007】
車輪は、平地走行時には、爪部材を車輪本体の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体の外周が全周に亘って転動周面を構成するので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車輪は、段差走行時には、爪部材の一部を車輪本体の外周より径方向外側に突出することによって、爪部材が段差を捉えて走破することができる。車輪は、電磁石の通電及び非通電を切り替えるという単純な制御で、形状の維持と変形動作とを切り替えることができる。また、車輪は、電磁石への非通電時における車輪本体の回転方向によって、爪部材の突出及び収容を切り替えることができる。
【0008】
本発明の一態様に係る車輪において、前記爪作動歯車は、前記車輪本体に対して一方向に相対回転すると前記爪部材の一部を前記車輪本体の外周より径方向外側に突出させる突出方向に前記爪部材を回転させ、前記車輪本体に対して一方向とは反対の他方向に相対回転すると前記爪部材を前記車輪本体の外周より径方向内側に収容させる収容方向に前記爪部材を回転させ、前記車輪本体に対して相対回動しない場合、前記爪部材の突出した状態又は収容された状態を維持する。
【0009】
爪作動歯車は、電磁石に通電されず車輪本体の回転が伝達されない状態において、車軸回りのいずれかの方向に回転する。そして、爪部材は、爪作動歯車が車輪本体に対して車軸回りに相対的に回転すると、回転方向及び回転量に応じて、爪回転軸回りのいずれかの方向に所定量回転する。したがって、電磁石に通電しない状態における車輪本体の回転方向の制御によって、爪部材を突出方向に回転させる変形と、爪部材を収容方向に回転させる変形と、を行うことができる。また、爪作動歯車は、電磁石に通電されて車輪本体の回転が伝達される状態において、車軸回りに車輪本体の回転方向及び回転数と同じ回転方向及び回転数で回転する。したがって、電磁石への通電又は非通電の制御によって、爪部材の変形と、爪部材20が収容された状態又は爪部材の一部が突出した状態の維持と、を行うことができる。また、爪部材の各維持することができるので、車輪の意図しない変形を抑制でき、安定的な平地走行及び段差走行が可能である。
【0010】
本発明の一態様に係る車輪において、歯車機構は、軸心が前記車軸と一致しかつ前記車輪本体と一体で回動する内歯車と、軸心が前記車軸と一致しかつ前記内歯車の内周側において前記支持部に固定される第1太陽歯車と、前記内歯車の内周側と前記第1太陽歯車の外周側との間の環状の空間に配置される第1遊星歯車と、磁性を有し、前記第1遊星歯車と同芯に配置されかつ前記第1遊星歯車と歯数が同数である第2遊星歯車と、前記第2遊星歯車と歯数が同数でかつ前記第2遊星歯車と噛み合う第3遊星歯車と、前記爪作動歯車に同芯で固定されて前記第3遊星歯車と噛み合いかつ歯数が前記内歯車と同数である第2太陽歯車と、前記第1遊星歯車を支持しかつ前記第2遊星歯車を軸心回りに回動可能に支持し、前記電磁石によって磁化可能であって、磁化すると前記第2遊星歯車と回転が同期する磁性シャフトと、前記車軸回りに回動可能かつ前記第3遊星歯車及び前記磁性シャフトを軸心回りに回動可能に支持する遊星キャリアと、を備える。
【0011】
これにより、車輪は、車輪本体が回動すると、第1遊星歯車が、車輪本体の回転方向と同方向に公転しながら車輪本体の回転方向と同方向に自転する。電磁石に通電されると、磁性シャフトが磁化し、磁性シャフト及び磁性シャフトに支持される第1遊星歯車と第2遊星歯車との回動が同期される。これにより、第1遊星歯車の自転による回転トルクが、第2遊星歯車、第2遊星歯車及び第2太陽歯車を介して爪作動歯車に伝達される。一方、電磁石に通電されないと、磁性シャフトが磁化されず、磁性シャフト及び磁性シャフトに支持される第1遊星歯車と第2遊星歯車との回動が同期されない。これにより、第1遊星歯車の自転による回転トルクが、第2遊星歯車以降の歯車機構に伝達されない。車輪本体の回転トルクは、歯車機構によって伝達されるため、電磁石への通電時には力の損失を抑制し、爪作動歯車を車輪本体に対して相対回動させないように維持しつつ、電磁石への非通電時には回転トルクを伝達しないように切り替えることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る車輪において、前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車は、前記車軸回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられ、前記第3遊星歯車は、前記車軸回りに回転対称かつ等間隔に前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車と同数設けられる。
【0013】
車輪は、周方向に均等になるので、走行時の安定性を向上させることができる。また、車輪は、爪部材の一部を車輪本体の外周より径方向外側に突出した状態で段差に到達した際に、爪部材が段差に引っ掛かるまでに空転する量を抑制することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る車輪は、前記支持部に支持され前記車輪本体の回動を駆動させる第1回転アクチュエータと、出力軸が前記車軸に一致するよう前記支持部に支持される第2回転アクチュエータと、をさらに備え、歯車機構は、軸心が前記車軸と一致しかつ前記車輪本体と一体で回動する内歯車と、前記内歯車の内周側において軸心が前記車軸と一致するよう配置されかつ前記第2回転アクチュエータに回動駆動される第1太陽歯車と、前記内歯車の内周側と前記第1太陽歯車の外周側との間の環状の空間に配置される第1遊星歯車と、磁性を有し、前記第1遊星歯車と同芯に配置されかつ前記第1遊星歯車と歯数が同数である第2遊星歯車と、前記第2遊星歯車と歯数が同数でかつ前記第2遊星歯車と噛み合う第3遊星歯車と、前記爪作動歯車に同芯で固定されて前記第3遊星歯車と噛み合いかつ歯数が前記内歯車と同数である第2太陽歯車と、前記第1遊星歯車を支持しかつ前記第2遊星歯車を軸心回りに回動可能に支持し、前記電磁石によって磁化可能であって、磁化すると前記第2遊星歯車と回転が同期する磁性シャフトと、前記車軸回りに回動可能かつ前記第3遊星歯車及び前記磁性シャフトを軸心回りに回動可能に支持する遊星キャリアと、を備える。
【0015】
車輪は、車輪本体が停止している状態において、第1太陽歯車が回動すると、第1遊星歯車は、第1太陽歯車の回転方向と同方向に公転しながら、第1太陽歯車の回転方向と逆回転に自転する。さらに、電磁石に通電されると、磁性シャフトが磁化し、磁性シャフト及び磁性シャフトに支持される第1遊星歯車と第2遊星歯車との回動が同期される。これにより、第1遊星歯車の自転による回転トルクが、第2遊星歯車、第2遊星歯車及び第2太陽歯車を介して爪作動歯車に伝達される。すなわち、爪作動歯車が車輪本体に対して相対的に回動する。したがって、車輪本体を停止した状態においても、爪部材による車輪の変形と、爪部材が収容された状態又は爪部材の一部が突出した状態の維持と、を行うことができるので、状況に応じて、爪部材を変形させるための制御方法を選択することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る車両は、前記車輪と、前記車輪本体が前記車軸回りに回動可能であるように前記車輪を支持する車体と、を備える。
【0017】
車両は、平地走行時には、車輪の爪部材を車輪本体の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体の外周が全周に亘って転動周面を構成するので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車両は、段差走行時には、車輪の爪部材の一部を車輪本体の外周より径方向外側に突出することによって、爪部材が段差を捉えて走破することができる。車両は、電磁石の通電及び非通電を切り替えるという単純な制御で、車輪の形状の維持と変形動作とを切り替えることができる。また、車両は、電磁石への非通電時における車輪本体の回転方向によって、爪部材の突出及び収容を切り替えることができる。
【0018】
本発明の一態様に係る車両は、地面に接地する前記車輪を地面から浮き上がらせ、前記車体を保持することが可能な昇降機構をさらに備える。
【0019】
車両は、車輪が地面に接地した状態で爪部材を突出又は収容させると、変形中、爪部材の地面との接地点を支点にして車体が前後方向及び上下方向に揺れる。車両は、昇降機構を備えることにより、車輪を地面から浮き上がらせた状態で、爪部材を突出及び収容することができる。車輪が地面から浮き上がった状態で、爪部材を突出及び収容することにより、爪部材が地面に接地して車体を揺らすことがないので、安定的に爪部材を変形させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、変形の制御が容易であって、平地走行時の安定性を維持しつつ段差を乗り越えることができる車輪及び車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態に係る車輪を示す側面図である。
図2図2は、図1に示す車輪の車軸を通る断面図である。
図3図3は、図1に示す車輪の爪歯車周りの構成を示す斜視図である。
図4図4は、図1に示す車輪の歯車機構を示す斜視図である。
図5図5は、図1に示す車輪の歯車機構を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態に係る車輪を搭載する適用例としての車両の構成例を模式的に示す側面図である。
図7図7は、図6に示す車両において車輪の変形時の一状態を示す側面図である。
図8図8は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図9図9は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図10図10は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図11図11は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図12図12は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図13図13は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図14図14は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図15図15は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図16図16は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図17図17は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図18図18は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図19図19は、図6に示す車両による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。
図20図20は、変形例に係る車輪の車軸を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
[実施形態]
まず、実施形態に係る車輪1の構成について、図1から図5までを参照して説明する。図1は、実施形態に係る車輪1を示す側面図である。図2は、図1に示す車輪1の車軸Awを通る断面図である。図3は、図1に示す車輪1の爪歯車23周りの構成を示す斜視図である。図4は、図1に示す車輪1の歯車機構40を示す斜視図である。図5は、図1に示す車輪1の歯車機構40を示す斜視図である。
【0024】
以下の説明において、車輪1が段差の走破が可能な方向への回転方向を正回転方向R1といい、正回転方向R1とは反対側の回転方向を逆回転方向R2という。車輪1が段差の走破が可能な方向へ回転する場合の進行方向は、図1において、左方向である。正回転方向R1は、図1において、反時計方向である。逆回転方向R2は、図1において、時計方向である。
【0025】
また、「正面」とは、車輪1が段差の走破が可能な方向へ回転する場合の進行方向側の面を示し、「外側面」とは、車輪1が自走車(例えば、後述の図6から図19までに示す車両100)に搭載される際に車体(車体110)の外側寄りの面を示し、「内側面」とは、車輪1が自走車に搭載される際に車体の内側寄りの面を示す。「外側」は、図1において紙面の手前方向であり、図2において紙面の左方向であり、図3から図5までにおいて紙面の右手前方向である。また、「内側」は、図1において紙面の奥方向であり、図2において紙面の右方向であり、図3から図5までにおいて紙面の左奥方向である。
【0026】
実施形態の車輪1は、自律走行搬送ロボット、無人搬送台車、搬送用カート、電動車いす、掃除ロボット、パートナーロボット等の自走車に搭載される駆動輪である。自走車は、例えば、左右対称に車輪1が配置される四輪車両が想定されるが、本発明ではこれに限定されない。車輪1は、車輪本体10と、爪部材20と、中心軸部材30と、歯車機構40と、電磁石70と、本体駆動機構80と、ブラケット90(支持部)と、を備える。
【0027】
車輪本体10は、後述のブラケット90に支持される。車輪本体10は、車輪1の車軸Aw回りに回動可能に設けられる。車輪本体10は、後述のブラケット90の板状部91より外側面側に設けられる。車輪本体10は、筒状部11と、第1円板状部12と、外輪部13と、第2円板状部14と、カバー部15と、規制部16と、歯車収容部17と、を含む。
【0028】
筒状部11は、軸心が車軸Awに一致する円筒体である。筒状部11は、内側面側の端部が開口し、外側面側の端部が第1円板状部12の内側面に連続して設けられる。筒状部11は、内周面側に軸受B1が設けられる。軸受B1は、実施形態において、転がり軸受を含む。軸受B1は、外輪が筒状部11の内周面側に固定される。軸受B1は、後述のブラケット90の板状部91から内側面側に延びて形成される筒状の本体支持部92の外周面側に、内輪が固定される。これにより、車輪本体10は、筒状部11において、軸受B1を介して、ブラケット90に対して車軸Aw回りに回動可能に支持される。
【0029】
第1円板状部12は、軸心が車軸Awと一致し、中心に円形状の孔を有する、筒状部11より大径の円板体である。第1円板状部12は、筒状部11の外側面側の端部が、内側面に連続して設けられる。第1円板状部12の中心の孔は、歯車収容部17の内周側に連通する。第1円板状部12の内周縁、すなわち、中心の孔の内周面には、後述の軸受B4の外輪が固定される。第1円板状部12の外周縁は、外輪部13の内周側に接続する。第1円板状部12は、車軸Aw方向の厚みが、外輪部13の車軸Aw方向の長さより小さい。
【0030】
外輪部13は、軸心が車軸Awに一致する円筒体である。外輪部13は、車軸Awに対して、第1円板状部12の径方向外側に設けられる。外輪部13は、車輪本体10の外周縁に沿って設けられる。すなわち、外輪部13は、車輪本体10において、最も径方向外側の部分を構成する。外輪部13は、車軸Aw方向の厚みが、第1円板状部12の車軸Aw方向の厚みよりも大きい。外輪部13は、外周面が、全周に亘って車輪1の転動周面を構成する。外輪部13は、外周面の周方向に沿って取り付けられる環状のタイヤ部を有していてもよい。タイヤ部は、例えば、ゴム等で形成され、走行時における接地面から受ける車輪本体10への衝撃を吸収する。
【0031】
第2円板状部14は、軸心が車軸Awと一致し、第1円板状部12より車輪1の外側面側に離隔した位置に設けられる円板体である。第1円板状部12は、中心に円形状の孔を有する。第2円板状部14の内周縁、すなわち、中心の孔の内周面には、後述の軸受B2の外輪が固定される。第2円板状部14の外周縁は、外輪部13の内周側に接続する。第2円板状部14は、外輪部13を介して、第1円板状部12及び筒状部11に固定される。
【0032】
カバー部15は、最も車輪1の外側面側に位置する。カバー部15は、実施形態において、軸心が車軸Awと一致し、第2円板状部14より車輪1の外側面側に離隔した位置に設けられる円板体である。カバー部15の直径は、車輪本体10の直径より小さい。カバー部15は、例えば、第2円板状部14に固定される。
【0033】
第1円板状部12、第2円板状部14及びカバー部15には、車軸Awに平行な爪回転軸Acに沿って、後述の爪部材20の爪支持軸部21が挿通する軸孔が形成される。第1円板状部12、第2円板状部14及びカバー部15にそれぞれ形成された軸孔は、不図示の軸受を介して爪支持軸部21を爪回転軸Ac回りに回動可能に支持する。
【0034】
爪回転軸Acは、実施形態において、1つの車輪1に対して3つ設けられる。3つの爪回転軸Acは、車軸Awとの距離が全て等しい。また、3つの爪回転軸Acは、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に設けられる。第1円板状部12、第2円板状部14及びカバー部15には、それぞれの爪回転軸Acに沿って軸孔が形成される。すなわち、爪支持軸部21が挿通する軸孔は、実施形態において、第1円板状部12、第2円板状部14及びカバー部15に、各々3つずつ設けられる。爪回転軸Acは、実施形態では3つ設けられるが、1つ、2つ、又は4つ以上設けられてもよい。爪回転軸Acは、後述の爪部材20が設けられる数に対応して、1つの爪部材20に対して1つずつ設けられる。
【0035】
規制部16は、後述の爪部材20の爪回転軸Ac回りの一方向への回転範囲を規制するストッパ部材である。それぞれの規制部16は、第2円板状部14の外側面側に固定して設けられる。規制部16は、爪部材20に接触することによって、爪部材20の一方向への回転範囲を規制する。なお、一方向は、後述する突出方向Rpである。
【0036】
規制部16は、実施形態において、1つの車輪1に対して3つ設けられる。3つの規制部16は、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に設けられる。すなわち、3つの規制部16は、対応する後述の爪部材20を、同一の回転角度で規制する。なお、規制部16は、第2円板状部14と一体成形されてもよい。規制部16は、実施形態では3つ設けられるが、後述の爪部材20が設けられる数に対応して、1つの爪部材20に対して1つずつ設けられる。
【0037】
歯車収容部17は、後述のブラケット90の本体支持部92の内周側に設けられる筒体である。歯車収容部17は、実施形態において、軸心が車軸Awと一致し、筒状部11及び本体支持部92より小径の円筒体である。歯車収容部17は、内側面側の端部が開口し、外側面側の端部が第1円板状部12の内側面に連続して設けられる。歯車収容部17の内周側には、後述の歯車機構40が配置される。
【0038】
爪部材20は、図1及び図3に示すように、実施形態において、1つの車輪1に対して3つ設けられる。それぞれの爪部材20は、車輪本体10に対して、対応する爪回転軸Ac回りに回動可能に支持される。爪部材20は、車輪本体10の外周より径方向内側に収容される位置(図1の実線で描写された位置、以下の説明では「収容位置」と称する)と、一部が車輪本体10の外周より径方向外側に突出する位置(図1の二点鎖線で描写された位置、以下の説明では「突出位置」と称する)との間で、爪回転軸Ac回りに回動可能である。
【0039】
爪部材20は、突出方向Rpに回転することにより、収容位置から突出位置に車輪本体10に対して相対的に移動する。突出方向Rpは、爪回転軸Ac回りかつ逆回転方向R2と同方向の回転方向である。突出方向Rpは、図1において、爪回転軸Acを中心とした時計方向である。爪部材20は、突出位置にある場合、車輪本体10の外周より径方向外側に一部が突出する。
【0040】
爪部材20は、収容方向Rsに回転することにより、突出位置から収容位置に車輪本体10に対して相対的に移動する。収容方向Rsは、爪回転軸Ac回りかつ正回転方向R1と同方向の回転方向である。収容方向Rsは、図1において、爪回転軸Acを中心とした反時計方向である。爪部材20は、収容位置にある場合、車輪本体10の外周より径方向内側に収容される。
【0041】
なお、実施形態では、部分的な突出も「突出」に含まれるものとする。より詳しくは、収容位置から突出位置へ向かう方向に爪部材20が車輪本体10に対して相対的に移動して、車輪本体10の外周より径方向外側に少しでも突出した場合、突出位置まで完全に突出しなかったとしても爪部材20が突出したものとする。また、実施形態では、部分的な収容も「収容」に含まれるものとする。より詳しくは、突出位置から収容位置へ向かう方向に爪部材20が車輪本体10に対して相対的に移動して、突出した部分が少しでも収容された場合、収容位置まで完全に収容しなかったとしても、爪部材20が収容されたものとする。
【0042】
それぞれの爪部材20は、爪支持軸部21と、爪本体22と、爪歯車23と、を含む。爪支持軸部21、爪本体22及び爪歯車23は、互いに固定される。爪支持軸部21、爪本体22及び爪歯車23は、一体成形されてもよい。
【0043】
爪支持軸部21は、爪回転軸Acに沿って、形成される円柱状の軸部である。爪支持軸部21は、第1円板状部12、第2円板状部14及びカバー部15に各々形成された軸孔に挿通する。爪支持軸部21は、不図示の軸受を介して、第1円板状部12、第2円板状部14及びカバー部15の軸孔に対して、爪回転軸Ac回りに回動可能であるように支持される。すなわち、爪支持軸部21は、軸心である爪回転軸Ac回りに回動可能であるように車輪本体10に支持されているため、車輪本体10と共に車軸Aw回りに回動する。
【0044】
爪本体22は、図2に示すように、車軸Aw方向における第2円板状部14とカバー部15との間の空間に設けられる。図1及び図3に示すように、爪本体22は、爪支持軸部21に固定して設けられる。爪本体22は、車軸Aw方向視において、長手方向の一方の端部側から他方の端部側へ向かって、正回転方向R1に湾曲する略三日月形状を有する。爪本体22は、略三日月形状の長手方向の一方の端部側が、爪支持軸部21に固定される。
【0045】
爪本体22は、爪支持軸部21の爪回転軸Ac回りの回動に伴って、車輪本体10に対して爪回転軸Ac回りに回動する。爪本体22が爪回転軸Ac回りに回動可能な範囲は、車軸Aw方向視において、爪本体22が車輪本体10の外周より径方向内側に収容されている位置(図1の実線で描写された位置)と、爪本体22の略三日月形状の長手方向の他方の端部側を含む一部が車輪本体10の外周より径方向外側に突出する位置(図1の二点鎖線で描写された位置)と、を含む。爪本体22は、外周面に、凸状円弧壁部22aと、凹状円弧壁部22bと、被規制壁部22cと、先端部22dと、を含む。
【0046】
凸状円弧壁部22aは、爪本体22の外周面の一部であって、車軸Aw方向視で凸状の円弧形状の面である。凸状円弧壁部22aにおいて、爪回転軸Acに対する遠心側の端部は、爪本体22の先端部22dである。凸状円弧壁部22aは、爪本体22が車輪本体10の外周より径方向内側に収容されている状態(図1の実線で描写された状態)で、車軸Awに対して径方向外側を向く。凸状円弧壁部22aは、爪本体22の一部が車輪本体10の外周より径方向外側に突出している状態(図1の二点鎖線で描写された状態)で、爪本体22の逆回転方向R2側を向く。
【0047】
実施形態の凸状円弧壁部22aは、爪本体22が車輪本体10の外周より径方向内側に収容されている状態で、車軸Aw方向視において、車輪本体10の外周より径方向内側にオフセットした位置にあるが、曲率半径及び曲率中心が車輪本体10と同一であってもよい。この場合、凸状円弧壁部22aは、車輪1の転動周面の一部を構成する。
【0048】
凹状円弧壁部22bは、爪部材20の外周面の一部であって、車軸Aw方向視で凹状の円弧形状の面である。凹状円弧壁部22bにおいて、爪回転軸Acに対する遠心側の端部は、爪本体22の先端部22dである。凹状円弧壁部22bは、爪本体22が車輪本体10の外周より径方向内側に収容されている状態で、正回転方向R1側に隣接する爪部材20の爪回転軸Ac側を向く。凹状円弧壁部22bは、爪本体22の一部が車輪本体10の外周より径方向外側に突出している状態で、爪本体22の正回転方向R1側を向く。
【0049】
被規制壁部22cは、爪部材20の外周面の一部であって、凸状円弧壁部22aの先端部22dとは反対側の爪回転軸Ac側に位置する面である。被規制壁部22cは、爪本体22の一部が車輪本体10の外周より径方向外側に突出している状態で、爪本体22の逆回転方向R2側を向き、車輪本体10の規制部16と対向する。被規制壁部22cは、爪部材20の爪回転軸Ac回りの一方向への回転範囲を規制するストッパとしての機能を有する。被規制壁部22cは、規制部16に接触することによって、爪部材20の一方向への回転範囲を規制する。一方向は、後述の突出方向Rpである。
【0050】
先端部22dは、爪本体22の略三日月形状の長手方向において、爪回転軸Ac側と反対側の端部側に位置する面である。先端部22dは、爪本体22の一部が車輪本体10の外周より径方向外側に突出している状態で、段差の上面に引っ掛ける部分である。先端部22dは、丸みを帯びた形状であることが好ましい。
【0051】
爪歯車23は、図2に示すように、車軸Aw方向における第1円板状部12と第2円板状部14との間の空間に設けられる。図3に示すように、爪歯車23は、軸心に沿って軸孔が形成され、外周面に歯が形成される中空の外歯車である。爪歯車23は、軸心が爪回転軸Acに一致するように、軸孔の内周面が爪支持軸部21の外周面に固定して設けられる。爪歯車23は、後述の中心軸部材30の爪作動歯車31と噛み合って、爪作動歯車31の回転方向と逆方向に回転する。爪部材20は、後述の中心軸部材30の爪作動歯車31が車輪本体10に対して相対的に回動し、爪作動歯車31に噛み合う爪歯車23が車輪本体10に対して爪歯車23とは逆方向に相対的に回動することによって、爪歯車23と一体的に爪回転軸Ac回りに回動する。
【0052】
中心軸部材30は、軸心が車軸Awに一致する円柱状の軸部材である。中心軸部材30は、車輪本体10の第1円板状部12及び第2円板状部14の各々の中心に形成された孔に挿通する。中心軸部材30は、車軸Aw方向の一部分に爪作動歯車31を含む。
【0053】
爪作動歯車31は、軸心が車軸Awに一致し、外周面に歯が形成される外歯車である。爪作動歯車31は、車軸Aw方向における第1円板状部12と第2円板状部14との間の空間に設けられる。爪作動歯車31は、中心軸部材30と一体成形されてもよいし、軸心に沿って軸孔を有する中空に設けられて、軸孔が中心軸部材30の外周面に固定されてもよい。爪作動歯車31は、爪部材20の爪歯車23と噛み合う。
【0054】
中心軸部材30は、外側面側の端部が、軸受B2を介して、第2円板状部14の孔の内周面に支持される。軸受B2は、実施形態において、転がり軸受を含む。軸受B2は、外輪が第2円板状部14の孔の内周面側に固定される。軸受B2は、中心軸部材30の外周面側に、内輪が固定される。中心軸部材30は、内側面側の端部が、軸受B3を介して、第1円板状部12の孔の内周面に支持される。軸受B3は、実施形態において、転がり軸受を含む。軸受B3は、外輪が第1円板状部12の孔の内周面側に固定される。軸受B3は、中心軸部材30の外周面側に、内輪が固定される。これにより、中心軸部材30は、軸受B2及び軸受B3を介して、車輪本体10に対して車軸Aw回りに回動可能に支持される。
【0055】
中心軸部材30は、後述の歯車機構40の第2太陽歯車53と同芯かつ車軸Aw回りに相対回動しないように、内側面側の端部に第2太陽歯車53が固定される。なお、中心軸部材30の車軸Aw方向における爪作動歯車31と内側面側の端部との間に軸受B3の内輪が装着可能であれば、中心軸部材30と第2太陽歯車53とが一体成形されてもよい。爪作動歯車31を含む中心軸部材30は、第2太陽歯車53と一体で車軸Aw回りに回動する。
【0056】
図2図4及び図5に示す歯車機構40は、車輪本体10の第1円板状部12より内側面側において、歯車収容部17の内部に配置される。歯車機構40は、爪作動歯車31が車輪本体10と同一の回転数で回動するように車輪本体10の回転を爪作動歯車31に伝達する。歯車機構40は、具体的には、内歯車41と、第1太陽歯車42と、第1遊星歯車43と、第2遊星歯車51と、第3遊星歯車52と、第2太陽歯車53と、磁性シャフト61を有する遊星キャリア60と、を備える。
【0057】
内歯車41は、軸心が車軸Awと一致するように、車輪本体10に固定して設けられる。内歯車41は、車輪本体10と共に車軸Aw回りに回動する。内歯車41は、実施形態において、歯車収容部17の内側面側の端部の開口の内周面に外周面が固定される環形状であるが、歯車収容部17の開口の内周面に直接歯が形成されることで歯車収容部17と一体成形されてもよい。内歯車41は、第1遊星歯車43と噛み合う。
【0058】
第1太陽歯車42は、内歯車41の内周側に、内歯車41と同芯になるように配置される。すなわち、第1太陽歯車42は、軸心が車軸Awと一致する。第1太陽歯車42は、後述のブラケット90の被固定部93に固定して支持される。
【0059】
第1遊星歯車43は、内歯車41と第1太陽歯車42との間の環状の空間に配置される。第1遊星歯車43は、複数設けられてもよく、実施形態では3つ、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に設けられる。第1遊星歯車43は、磁性シャフト61と同芯になるように支持される。
【0060】
第2遊星歯車51は、第1遊星歯車43と同芯であるように、第1遊星歯車43の外側面側に隣接して配置される。第1遊星歯車43が複数設けられる場合、第2遊星歯車51は、第1遊星歯車43に対応して第1遊星歯車43と同数設けられる。第2遊星歯車51は、第1遊星歯車43と歯数が同数である。第2遊星歯車51は、軸心が一致するように磁性シャフト61に支持される。
【0061】
第2遊星歯車51は、磁性を有する磁性体である。第2遊星歯車51は、磁性シャフト61が後述の電磁石70によって磁化すると、磁性シャフト61と引き合って磁性シャフト61の遊星自転軸Ap回りの回動に同期する。すなわち、磁性シャフト61が磁化している状態において、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51とは、遊星自転軸Ap回りの回動が同期される。第2遊星歯車51は、磁性シャフト61が磁化していない状態において、磁性シャフト61に対して遊星自転軸Ap回りに回動可能である。すなわち、磁性シャフト61が磁化していない状態において、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51とは、遊星自転軸Ap回りの回動が同期されない。
【0062】
第3遊星歯車52は、第2遊星歯車51の周方向に隣接して配置される。第3遊星歯車52は、第2遊星歯車51と噛み合う歯を有し、第2遊星歯車51の回転方向を逆方向にして第2太陽歯車53に伝達する。第1遊星歯車43が複数設けられる場合、第3遊星歯車52は、第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51に対応して第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51と同数設けられる。第3遊星歯車52は、第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51と歯数が同数である。遊星自転軸Apに平行な軸心回りに回動可能であるように、遊星キャリア60の不図示の遊星シャフトに支持される。
【0063】
第2太陽歯車53は、軸心が車軸Awに一致するように、中心軸部材30の内側面側の端部に固定して設けられる。第2太陽歯車53は、第3遊星歯車52と噛み合う歯を有する。第2太陽歯車53は、内歯車41と歯数が同一である。
【0064】
遊星キャリア60は、軸心が車軸Awに一致する円環状の本体を含む。遊星キャリア60の本体は、内周面側に軸受B3が設けられ、外周面側に軸受B4が設けられる。軸受B3は、外輪が遊星キャリア60の本体の内周面側に固定される。軸受B3は、内輪が中心軸部材30の外周面側に固定される。軸受B4は、実施形態において、転がり軸受を含む。軸受B4は、外輪が車輪本体10の第1円板状部12の内周面側に固定される。軸受B4は、内輪が遊星キャリア60の本体の外周面側に固定される。これにより、遊星キャリア60は、軸受B4と、軸受B3、中心軸部材30及び軸受B2とを介して、車輪本体10に対して車軸Aw回りに回動可能に支持される。遊星キャリア60は、第1遊星歯車43(又は第2遊星歯車51)と同数の磁性シャフト61と、第3遊星歯車52と同数の不図示の遊星シャフトと、を有する。
【0065】
磁性シャフト61は、車軸Aw回りに回動可能な遊星キャリア60に対して、車軸Awと平行な遊星自転軸Ap回りに回動可能に支持される。磁性シャフト61は、第1遊星歯車43を同芯で支持する。磁性シャフト61は、第1遊星歯車43と一体成形されてもよい。これにより、第1遊星歯車43は、内歯車41の車軸Aw回りの回動に伴って、車軸Aw回りに公転可能、かつ遊星自転軸Ap回りに自転可能である。
【0066】
磁性シャフト61は、第2遊星歯車51を遊星自転軸Ap回りに回動可能に支持する。第2遊星歯車51は、第1遊星歯車43と同一の磁性シャフト61を有するので、内歯車41の車軸Aw回りの回動に伴って、第1遊星歯車43と共に車軸Aw回りに公転する。
【0067】
磁性シャフト61は、後述の電磁石70が通電することによって磁化する。磁性シャフト61は、磁化することにより、第2遊星歯車51と引き合って、第2遊星歯車51を遊星自転軸Ap回りの回動に同期させる。これにより、第1遊星歯車43、第2遊星歯車51及び磁性シャフト61は、車輪本体10及び内歯車41の車軸Aw回りの回動に伴って、第1遊星歯車43と共に遊星自転軸Ap回りに内歯車41の回転と同方向に自転しながら、車軸Aw回りに公転する。
【0068】
不図示の遊星シャフトは、第3遊星歯車52を同芯で支持する。遊星キャリア60に対して第3遊星歯車52が軸心回りで回動可能であれば、遊星シャフトが第3遊星歯車52に固定されると共に遊星キャリア60の本体に対して軸心回りに回動可能でもよいし、遊星シャフトが遊星キャリア60の本体に固定されると共に第3遊星歯車52を軸心回りに回動可能に支持してもよい。遊星シャフトは、車輪本体10及び内歯車41の車軸Aw回りの回動に伴って、磁性シャフト61と共に車軸Aw回りに公転する。
【0069】
電磁石70は、実施形態において、後述のブラケット90の被固定部93の内周面側に固定される円環状である。電磁石70は、円環状に磁性材料で形成されたコア材と、コア材に巻回されたコイルと、を含み、コイルに通電されることにより、遊星キャリア60の磁性シャフト61を磁化させる。これにより、磁性シャフト61が第2遊星歯車51と遊星自転軸Ap回りの回動が同期されるため、磁性シャフト61を介して、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との遊星自転軸Ap回りの回動が同期される。
【0070】
電磁石70は、歯車機構40による車輪本体10から爪作動歯車31への回転の伝達経路を切り替え可能である。電磁石70に通電され磁性シャフト61が磁化している状態では、車輪本体10の車軸Awの回りの回動が、内歯車41を介して、第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51の遊星自転軸Ap回りの自転と、第1遊星歯車43、第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52の車軸Aw回りの公転と、に伝達される。そして、第2遊星歯車51の遊星自転軸Ap回りの自転が、第3遊星歯車52の自転を介して、第2太陽歯車53に伝達され、すなわち、第2太陽歯車53が固定される中心軸部材30の爪作動歯車31に伝達される。
【0071】
電磁石70に通電されず磁性シャフト61が磁化していない状態では、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との間で自転が同期されない。この場合、第1遊星歯車43の公転のみが、第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52に伝達される。第3遊星歯車52は、第2太陽歯車53を車輪本体10に対して相対的に回転させず、第2太陽歯車53の外周を転動する。
【0072】
前述のとおり、第1遊星歯車43、第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52は、歯数が同一であり、内歯車41と第2太陽歯車53は、歯数が同一である。すなわち、内歯車41から第2太陽歯車53への減速比は1となるため、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との遊星自転軸Ap回りの回動が同期されている状態において、第2太陽歯車53及び爪作動歯車31は、車輪本体10と同一の回転数で回動する。
【0073】
したがって、爪作動歯車31は、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との遊星自転軸Ap回りの回動が同期されている状態では、車輪本体10に対して相対的に回動しないので、爪部材20を爪歯車23において車輪本体10に対して爪回転軸Ac回りに回動させない。また、爪作動歯車31は、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との遊星自転軸Ap回りの回動が同期されていない状態では、車輪本体10に対して相対的に回動するので、爪部材20を爪歯車23において車輪本体10に対して爪回転軸Ac回りに回動させる。
【0074】
本体駆動機構80は、後述のブラケット90に対して車輪本体10を車軸Aw回りに回動させる。本体駆動機構80は、アクチュエータ81と、歯車列を含む減速機82と、を含む。減速機82は、実施形態において、小歯車83と、大歯車84と、を含む。
【0075】
アクチュエータ81は、車輪本体10の回転駆動源である。アクチュエータ81は、例えば、インナーロータ式のモータである。アクチュエータ81は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸81aと、を含む。ステータを含むアクチュエータ81の筐体は、後述のブラケット90に固定して設けられる。アクチュエータ81の筐体は、実施形態において、後述のブラケット90の板状部91において、内側面側に取り付けられる。
【0076】
アクチュエータ81は、車輪1が搭載される自走車の車体側に設けられた電源(不図示)から電力が供給される。アクチュエータ81は、電力が供給されることによって、出力軸81aが回転する。出力軸81aから出力された回転トルクは、減速機82を介して減速されると共にトルクが増加されて車輪本体10に伝達される。アクチュエータ81の出力軸81aの回転方向及び回転速度は、車輪1が搭載される自走車の車体側に設けられた制御部によって制御される。
【0077】
小歯車83は、軸心がアクチュエータ81の出力軸81aと一致するように、出力軸81aに固定して設けられる。小歯車83は、大歯車84と噛み合う歯を有する外歯車を含む。小歯車83の歯数は、大歯車84の歯数より少ない。小歯車83は、アクチュエータ81の出力軸81aから出力された回転トルクを、大歯車84に伝達する。
【0078】
大歯車84は、軸心が車軸Awに一致し、小歯車83と噛み合う歯を有する外歯車である。大歯車84は、実施形態において、車輪本体10の第1円板状部12の内側面側に固定して設けられる。車輪本体10には、アクチュエータ81の出力軸81aから出力された回転トルクが、減速機82の小歯車83及び大歯車84によって減速されると共にトルクが増加されて伝達される。
【0079】
ブラケット90は、車輪本体10、歯車機構40の第1太陽歯車42、電磁石70、及び本体駆動機構80を支持する。ブラケット90は、実施形態において、板状部91と、本体支持部92と、被固定部93と、を有する。
【0080】
板状部91は、車軸Aw方向に厚みを有し、車輪1を搭載する自走車の車体に取り付けられる部分である。板状部91には、出力軸挿通孔91aが形成される。出力軸挿通孔91aは、アクチュエータ81の取り付け位置に設けられる。出力軸挿通孔91aには、アクチュエータ81の出力軸81aが挿通する。
【0081】
本体支持部92は、軸心が車軸Awと一致する円筒体である。本体支持部92は、内側面側の端部が板状部91の外側面に連続して設けられ、外側面側の端部が開口する。本体支持部92の内周面側には、車輪本体10の歯車収容部17が挿通される。本体支持部92は、外周面側に軸受B1が設けられる。本体支持部92は、軸受B1を介して、車輪本体10の筒状部11を車軸Aw回りに回動可能であるように支持する。
【0082】
被固定部93は、軸心が車軸Awと一致する円筒体である。被固定部93は、外側面側の端部が板状部91の内側面に連続して設けられ、板状部91の外側面側に開口する。被固定部93は、内側面側の端部が閉塞する。被固定部93は、内周面側に、第1太陽歯車42の一部及び電磁石70が配置される。被固定部93は、閉塞する内側面側で、第1太陽歯車42を固定して支持する。被固定部93は、内周面で電磁石70の外周面を固定して支持する。
【0083】
ブラケット90は、例えば、車輪1が搭載される自走車(例えば、後述の図6から図19までに示す車両100)の車体(車体110)に固定される。ブラケット90が車体に固定されることによって、車体に対して、車輪1の車軸Awが固定される。なお、ブラケット90は、車体110と一体で設けられてもよい。
【0084】
次に、車輪1における爪部材20の収容位置(図1の実線で描写される位置)と突出位置(図1の二点鎖線で描写される位置)との間の変形動作について説明する。車輪1は、本体駆動機構80のアクチュエータ81に電力が供給され、アクチュエータ81の出力軸81aから減速機82を介して回転トルクが伝達されることによって、車軸Aw回りに回動する。車輪1の回転方向及び回転速度は、アクチュエータ81の出力軸81aの回転方向及び回転速度、及び減速機82の減速比によって決まる。
【0085】
車輪1は、車輪本体10が逆回転方向R2に回転すると、歯車機構40の内歯車41が車輪本体10と共に逆回転方向R2に回転する。この際、第1太陽歯車42はブラケット90の被固定部93に固定されているので、第1遊星歯車43は、内歯車41の逆回転方向R2への回転により、逆回転方向R2に公転しながら、第1太陽歯車42の外周を転動するように自転する。
【0086】
車輪1は、電磁石70に電力が供給されず、磁性シャフト61が磁化しないと、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期されない。第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52は、遊星キャリア60を介して、第1遊星歯車43の公転に伴って車軸Aw回りに逆回転方向R2に公転する。この際、第3遊星歯車52は、第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51側から回転トルクが伝達されないため、第2太陽歯車53の外周を、歯に沿って転動する。
【0087】
同様に、第2太陽歯車53及び爪作動歯車31は、第3遊星歯車52側から回転トルクが伝達されないため回転せず、逆回転方向R2に回転する車輪本体10に対して、相対的に正回転方向R1に回転する。すると、爪歯車23は、車輪本体10に対して逆回転方向R2と同方向である突出方向Rpに回転する。すなわち、車輪1は、電磁石70が通電されない状態で車輪本体10が正回転方向R1に回転するよう制御されると、爪部材20が突出方向Rpに回転する。
【0088】
車輪1は、車輪本体10が正回転方向R1に回転すると、歯車機構40の内歯車41が車輪本体10と共に正回転方向R1に回転する。この際、第1太陽歯車42はブラケット90の被固定部93に固定されているので、第1遊星歯車43は、内歯車41の正回転方向R1への回転により、正回転方向R1に公転しながら、第1太陽歯車42の外周を転動するように自転する。
【0089】
車輪1は、電磁石70に電力が供給されず、磁性シャフト61が磁化しないと、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期されない。第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52は、遊星キャリア60を介して、第1遊星歯車43の公転に伴って車軸Aw回りに正回転方向R1に公転する。この際、第3遊星歯車52は、第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51側から回転トルクが伝達されないため、第2太陽歯車53の外周を、歯に沿って転動する。
【0090】
同様に、第2太陽歯車53及び爪作動歯車31は、第3遊星歯車52側から回転トルクが伝達されないため回転せず、正回転方向R1に回転する車輪本体10に対して、相対的に逆回転方向R2に回転する。すると、爪歯車23は、車輪本体10に対して正回転方向R1と同方向である収容方向Rsに回転する。すなわち、車輪1は、電磁石70が通電されない状態で車輪本体10が正回転方向R1に回転するよう制御されると、爪部材20が収容方向Rsに回転する。
【0091】
車輪1は、電磁石70に電力が供給され、磁性シャフト61が磁化すると、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期される。第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52は、遊星キャリア60を介して、第1遊星歯車43の公転に伴って車軸Aw回りに車輪本体10と同方向に公転する。これと共に、第2遊星歯車51は、第1遊星歯車43と同方向に遊星自転軸Ap回りに自転する。
【0092】
第2遊星歯車51の自転は、第3遊星歯車52を介して第2太陽歯車53の車軸Aw回りの同方向の回転に伝達される。ここで、内歯車41から第2太陽歯車53への減速比は1となるため、第2太陽歯車53及び爪作動歯車31は、車輪本体10と同一の回転数で回動する。車輪本体10と共に車軸Aw回りに回動する爪回転軸Acの爪作動歯車31に対する相対的な位置が変化しないので、爪歯車23は、車輪本体10に対して爪回転軸Ac回りに回動しない。すなわち、車輪1は、電磁石70に通電している状態で車輪本体10が正回転方向R1又は逆回転方向R2に回転するよう制御されると、爪部材20が車輪本体10と共に車軸Aw回りに回動し、車輪本体10に対する相対的な位置を維持する。
【0093】
車輪1は、爪部材20が収容位置を維持している状態において、円形を保ち、通常の車輪と同様な走行が可能である。すなわち、平地走行時においては、爪部材20が収容位置にある状態において、アクチュエータ81を駆動させ、電磁石70に通電させるように制御することにより、爪部材20の収容位置を維持させる。
【0094】
車輪1は、爪部材20が突出位置を維持し正回転方向R1に回転している状態において、爪部材20の爪本体22の先端部22d及び凹状円弧壁部22bを段差に引っ掛けることにより、段差の走破が可能である。すなわち、段差走行時においては、爪部材20が突出位置にある状態において、アクチュエータ81を駆動させ、電磁石70に通電させるように制御することにより、爪部材20の突出位置を維持させる。
【0095】
以上説明したように、実施形態の車輪1は、ブラケット90(支持部)に対して車軸Aw回りに回動可能な車輪本体10と、車輪本体10の外周より径方向内側に収容される収容位置と車輪本体10の外周より径方向外側に一部が突出する突出位置との間で車輪本体10に対して車軸Awに平行な爪回転軸Ac回りに回動可能な爪部材20と、車軸Aw回りに回動可能かつ車輪本体10に対する相対回動に伴って爪部材20を爪回転軸Ac回りに回動させる爪作動歯車31と、爪作動歯車31が車輪本体10と同一の回転数で回動するように車輪本体10の回転を爪作動歯車31に伝達する歯車機構40と、通電時には車輪本体10の回転トルクを爪作動歯車31へ伝達させ、非通電時には車輪本体10の回転トルクを爪作動歯車31に伝達させないように、歯車機構40による回転伝達経路を切り替え可能な電磁石70と、を備える。
【0096】
車輪1は、平地走行時には、爪部材20を車輪本体10の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体10の外周が全周に亘って転動周面を構成するので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車輪1は、段差走行時には、爪部材20の一部を車輪本体10の外周より径方向外側に突出することによって、爪部材20が段差を捉えて走破することができる。車輪1は、電磁石70の通電及び非通電を切り替えるという単純な制御で、形状の維持と変形動作とを切り替えることができる。また、車輪1は、電磁石70への非通電時における車輪本体10の回転方向によって、爪部材20の突出及び収容を切り替えることができる。
【0097】
また、実施形態の車輪1において、爪作動歯車31は、車輪本体10に対して一方向(実施形態では正回転方向R1)に相対回転すると爪部材20の一部を車輪本体10の外周より径方向外側に突出させる突出方向Rpに爪部材20を回転させ、車輪本体10に対して一方向とは反対の他方向(実施形態では逆回転方向R2)に相対回転すると爪部材20を車輪本体10の外周より径方向内側に収容させる収容方向Rsに爪部材20を回転させ、車輪本体10に対して相対回動しない場合、爪部材20の突出した状態又は収容された状態を維持する。
【0098】
爪作動歯車31は、電磁石70に通電されず車輪本体10の回転が伝達されない状態において、車軸Aw回りのいずれかの方向に回転する。そして、爪部材20は、爪作動歯車31が車輪本体10に対して車軸Aw回りに相対的に回転すると、回転方向及び回転量に応じて、爪回転軸Ac回りのいずれかの方向に所定量回転する。したがって、電磁石70に通電しない状態における車輪本体10の回転方向の制御によって、爪部材20を突出方向Rpに回転させる変形と、爪部材20を収容方向Rsに回転させる変形と、を行うことができる。また、爪作動歯車31は、電磁石70に通電されて車輪本体10の回転が伝達される状態において、車軸Aw回りに車輪本体10の回転方向及び回転数と同じ回転方向及び回転数で回転する。したがって、電磁石70への通電又は非通電の制御によって、爪部材20の変形と、爪部材20が収容された状態又は爪部材20の一部が突出した状態の維持と、を行うことができる。また、爪部材20の各維持することができるので、車輪1の意図しない変形を抑制でき、安定的な平地走行及び段差走行が可能である。
【0099】
また、実施形態の車輪1において、歯車機構40は、軸心が車軸Awと一致しかつ車輪本体10と一体で回動する内歯車41と、軸心が車軸Awと一致しかつ内歯車41の内周側においてブラケット90(支持部)に固定される第1太陽歯車42と、内歯車41の内周側と第1太陽歯車42の外周側との間の環状の空間に配置される第1遊星歯車43と、磁性を有し、第1遊星歯車43と同芯に配置されかつ第1遊星歯車43と歯数が同数である第2遊星歯車51と、第2遊星歯車51と歯数が同数でかつ第2遊星歯車51と噛み合う第3遊星歯車52と、爪作動歯車31に同芯で固定されて第3遊星歯車52と噛み合いかつ歯数が内歯車41と同数である第2太陽歯車53と、第1遊星歯車43を支持しかつ第2遊星歯車51を軸心回りに回動可能に支持し、電磁石70によって磁化可能であって、磁化すると第2遊星歯車51と回転が同期する磁性シャフト61と、車軸Aw回りに回動可能かつ第3遊星歯車52及び磁性シャフト61を軸心回りに回動可能に支持する遊星キャリア60と、を備える。
【0100】
車輪1は、車輪本体10が回動すると、第1遊星歯車43が、車輪本体10の回転方向と同方向に公転しながら車輪本体10の回転方向と同方向に自転する。電磁石70に通電されると、磁性シャフト61が磁化し、磁性シャフト61及び磁性シャフト61に支持される第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期される。これにより、第1遊星歯車43の自転による回転トルクが、第2遊星歯車51、第3遊星歯車52及び第2太陽歯車53を介して爪作動歯車31に伝達される。一方、電磁石70に通電されないと、磁性シャフト61が磁化されず、磁性シャフト61及び磁性シャフト61に支持される第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期されない。これにより、第1遊星歯車43の自転による回転トルクが、第2遊星歯車51以降の歯車機構40に伝達されない。車輪本体10の回転トルクは、歯車機構40によって伝達されるため、電磁石70への通電時には力の損失を抑制し、爪作動歯車31を車輪本体10に対して相対回動させないように維持しつつ、電磁石70への非通電時には回転トルクを伝達しないように切り替えることができる。
【0101】
また、実施形態の車輪1において、第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51は、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に複数設けられ、第3遊星歯車52は、車軸Aw回りに回転対称かつ等間隔に第1遊星歯車43及び第2遊星歯車51と同数設けられる。
【0102】
これにより、車輪1は、周方向に均等になるので、走行時の安定性を向上させることができる。また、車輪1は、爪部材20の一部を車輪本体10の外周より径方向外側に突出した状態で段差に到達した際に、爪部材20が段差に引っ掛かるまでに空転する量を抑制することができる。
【0103】
[適用形態]
次に、車輪1の適用例としての車両100の構成について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、実施形態に係る車輪1を搭載する適用例としての車両100の構成例を模式的に示す斜視図である。図7は、図6に示す車両100において車輪1の変形時の一状態を示す側面図である。図6及び図7において、車輪1が段差の走破が可能な方向へ回転する場合の車両100の進行方向が、車両100の前方である。すなわち、車両100の前方は、図6及び図7において紙面の左方である。また、図6及び図7は、車両100を左方から視た側面図である。
【0104】
適用形態の車両100は、車両100の車体110と、4つの車輪1(右側に配置される車輪1は不図示)と、車体110及び4つの車輪1を地面から浮かせるための昇降機構120と、を備える台車である。車体110には、例えば、電磁石70及びアクチュエータ81(図2参照)に供給する電力の電源、電磁石70への通電とアクチュエータ81の回転方向及び回転速度とを制御する制御部、進行方向の段差を検出する検出装置等が搭載される。検出装置は、例えば、段差までの距離を検出する赤外線センサ等のセンサを含んでもよい。検出装置は、例えば、段差を撮像する撮像部を含み、撮像画像に基づいて段差を検出してもよい。
【0105】
4つの車輪1は、ブラケット90を介して車体110に固定される。4つの車輪1は、車体110の左右前後に配置される。これにより、車輪1の車軸Awが車体110に固定される。車輪1は、適用形態において、ブラケット90の板状部91が、車体110の側面に取り付けられる。車両100は、適用形態において、4つの車輪1が左右前後に配置されるが、車輪1を自走車に適用する場合、3つ以上の車輪1を備えればよい。車両100の左右方向への旋回は、操舵にステアリング装置を用いるのではなく、右側の車輪1と左側の車輪1との回転速度差を用いる。
【0106】
昇降機構120は、鉛直方向に伸縮可能な支持部を有する。支持部は、伸長した際に、爪部材20が突出状態にある場合の車軸Aw回りの軌道の最下端より下方に底面が位置する。支持部は、収縮した際に、爪部材20が収容状態にある場合の車輪本体10の下端より上方に底面が位置する。支持部は、伸長して地面に接地した際、4つの車輪1を地面から浮き上がらせた状態で車体110を保持可能である。
【0107】
次に、車両100の動作について、図8から図19までを参照して説明する。図8から図19までは、図6に示す車両100による段差乗り越え動作を説明するための説明図である。車両100は、車輪1が正回転方向R1に回転する方向に移動しているものとし、進行方向に段差があるものとする。また、1段の段差は、車輪1の半径より高く車輪1の直径より低いものを想定する。
【0108】
図8のステップS1において、車両100は、段差に到達せず、平地走行中である。この場合、車輪1は、爪部材20が収容位置にある状態において、車輪本体10と爪作動歯車31とが相対的に回転しないよう、アクチュエータ81(図2参照)を駆動させ、電磁石70に通電させるように制御する。これにより、爪部材20が収容位置を維持する、すなわち、車輪1が円形を維持するので、車輪本体10の外輪部13(図1参照)の外周面が全周に亘って転動周面を構成する。
【0109】
図9のステップS2において、車両100は、段差に接近したことにより、車輪1の変形を開始する。車両100は、まず、昇降機構120を制御して、支持部を伸長させる。これにより、支持部は、底面が地面に接地すると共に、車体110及び車輪1を地面から浮き上がらせる。なお、車輪1の変形を開始するために昇降機構120を作動させる前に、車両100は、予め停止するか減速することが好ましい。
【0110】
図10のステップS3において、車両100は、爪部材20を突出位置まで変形させる。より詳しくは、車輪1は、爪作動歯車31を車輪本体10に対して正回転方向R1に相対回転させることによって、爪歯車23を介して爪部材20を突出方向Rpに回転させる。具体的には、車輪1は、車輪本体10を逆回転方向R2に回転させるよう、アクチュエータ81の駆動を制御すると共に、電磁石70への通電を停止するよう制御する。
【0111】
電磁石70への通電が停止されると、磁性シャフト61の磁化が解除され、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との同期が解除される。すると、第2太陽歯車53及び爪作動歯車31に対して車輪本体10からの回転トルクが伝達されないため、爪作動歯車31は、静止する。この際、爪作動歯車31は、車輪本体10に対して相対的に正回転方向R1に回転して、爪歯車23を介して爪部材20を突出方向Rpに回転させる。これにより、車輪1は、爪部材20の一部(爪本体22の先端部22d)が車輪本体10の外周より径方向外側に突出することによって変形する。
【0112】
車輪1は、爪部材20が突出位置まで達すると、アクチュエータ81の駆動を解除するように制御して、爪部材20を収容位置から突出位置まで回転させる変形動作を終了する。車輪1は、車輪本体10が正回転方向R1の回転を継続するよう、アクチュエータ81の駆動を継続させると共に、電磁石70への通電を作動させるように制御することにより、爪部材20の突出位置を維持させてもよい。
【0113】
図11のステップS4において、昇降機構120を制御して、支持部を収縮させる。これにより、支持部は、底面が地面から離隔すると共に、車体110及び車輪1を地面へ降ろす。ステップS3において、車輪本体10の回転を停止させている場合、車輪1は、車輪本体10と爪作動歯車31が同回転方向かつ同回転速度で回転するよう、アクチュエータ81を駆動させ、電磁石70に通電させるように制御する。これにより、爪部材20が突出位置を維持した状態で、再び走行を開始する。
【0114】
図12のステップS5において、車両100は、車輪1が正回転方向R1に回転して、前輪側の車輪1が段差に到達する。具体的には、前輪側の車輪1は、車輪本体10が段差の前面にぶつかると共に、前方に位置する爪部材20の先端部22dが段差の上面に接触する。
【0115】
なお、車軸Awに対する爪部材20の位置によって、爪部材20の先端部22dが段差に引っ掛からないことがある。このような場合は、車輪1が段差の手前で正回転方向R1に空転することによって、逆回転方向R2側に隣接する爪部材20の先端部22dが段差に引っ掛かる。
【0116】
図13のステップS6において、車輪1がさらに正回転方向R1に回転すると、前輪側の車輪1は、爪部材20が突出位置を維持しながら、段差に引っ掛けた爪部材20の先端部22dの接地点を支点として、車輪本体10が段差下の走行面から浮き上がる。この際、後輪側の車輪1が段差下の地面上にあるため、車体110が後方に傾く。
【0117】
図14のステップS7において、車輪1がさらに正回転方向R1に回転すると、前輪側の車輪1は、段差の上面に接地する爪部材20が突出位置を維持しながら、段差に乗り上げる。この際、後輪側の車輪1は、段差に接近する。
【0118】
図15のステップS8において、車輪1がさらに正回転方向R1に回転すると、後輪側の車輪1は、前方に位置する爪部材20が段差の前面にぶつかり、所定量空転した後、車輪本体10が段差の前面にぶつかると共に、逆回転方向R2側に隣接する爪部材20の先端部22dが段差の上面に接触する。
【0119】
その後、後輪側の車輪1は、前輪側の車輪1と同様に、爪部材20が突出位置を維持しながら、段差に引っ掛けた爪部材20の先端部22dの接地点を支点として、車輪本体10を段差下の走行面から浮き上がらせ、図16のステップS9において、段差に乗り上げる。これにより、前輪側の車輪1と後輪側の車輪1とが共に段差に乗り上がるので、車体110の傾きは解消される。
【0120】
前輪側の車輪1及び後輪側の車輪1が段差を走破すると、図17のステップS10において、車両100は、車輪1の変形を開始する。車両100は、まず、アクチュエータ81を制御して、車輪本体10の正回転方向R1への回転を停止させる。車両100は、次に、昇降機構120を制御して、支持部を伸長させる。これにより、支持部は、底面が地面に接地すると共に、車体110及び車輪1を地面から浮き上がらせる。
【0121】
図18のステップS11において、車両100は、爪部材20を収容位置まで変形させる。より詳しくは、車輪1は、爪作動歯車31を車輪本体10に対して逆回転方向R2に相対回転させることによって、爪歯車23を介して爪部材20を収容方向Rsに回転させる。具体的には、車輪1は、車輪本体10を正回転方向R1に回転させるよう、アクチュエータ81の駆動を制御すると共に、電磁石70への通電を停止するよう制御する。
【0122】
電磁石70への通電が停止されると、磁性シャフト61の磁化が解除され、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との同期が解除される。すると、第2太陽歯車53及び爪作動歯車31に対して車輪本体10からの回転トルクが伝達されないため、爪作動歯車31は、静止する。この際、爪作動歯車31は、車輪本体10に対して相対的に逆回転方向R2に回転して、爪歯車23を介して爪部材20を収容方向Rsに回転させる。これにより、車輪1は、爪部材20が車輪本体10の外周より径方向内側に収容されることによって変形する。
【0123】
車輪1は、爪部材20が収容位置まで達すると、アクチュエータ81の駆動を解除するように制御して、爪部材20を突出位置から収容位置まで回転させる変形動作を終了する。これにより、爪部材20が収容位置を維持する、すなわち、車輪1が再び円形を維持するので、車輪本体10の外輪部13の外周面が全周に亘って転動周面を構成する。
【0124】
図19のステップS12において、昇降機構120を制御して、支持部を収縮させる。これにより、支持部は、底面が地面から離隔すると共に、車体110及び車輪1を地面へ降ろす。車輪1は、車輪本体10と爪作動歯車31が同回転方向かつ同回転速度で回転するよう、アクチュエータ81を駆動させ、電磁石70に通電させるように制御する。これにより、爪部材20が収容位置を維持した状態で、再び走行を開始する。
【0125】
以上説明したように、適用形態の車両100は、車輪1と、車輪本体10が車軸Aw回りに回動可能であるように車輪1を支持する車体110と、を備える。
【0126】
車両100は、平地走行時には、車輪1の爪部材20を車輪本体10の外周より径方向内側に収容することによって車輪本体10の外周が全周に亘って転動周面を構成するので、平地走行時の安定性を維持することができる。また、車両100は、段差走行時には、車輪1の爪部材20の一部を車輪本体10の外周より径方向外側に突出することによって、爪部材20が段差を捉えて走破することができる。爪部材20は、電磁石70の通電及び非通電を切り替えるという単純な制御で、突出及び収容することができる。
【0127】
また、適用形態の車両100は、地面に接地する車輪1を地面から浮き上がらせ、車体110を保持することが可能な昇降機構120をさらに備える。
【0128】
車両100は、車輪1が地面に接地した状態で爪部材20を突出又は収容させると、変形中、爪部材20の地面との接地点を支点にして車体110が前後方向及び上下方向に揺れる。車両100は、昇降機構120を備えることにより、車輪1を地面から浮き上がらせた状態で、爪部材20を突出及び収容することができる。車輪1が地面から浮き上がった状態で、爪部材20を突出及び収容することにより、爪部材20が地面に接地して車体110を揺らすことがないので、安定的に爪部材20を変形させることができる。
【0129】
[変形例]
次に、変形例に係る車輪1Aの構成について、図20を参照して説明する。図20は、変形例に係る車輪1Aの車軸Awを通る断面図である。図20に示す変形例の車輪1Aの構成について、実施形態の車輪1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。変形例の車輪1Aは、実施形態の車輪1と比較して、サブアクチュエータ85をさらに備える点が異なる。また、変形例では、サブアクチュエータ85を備えるに当たって、ブラケット90Aの被固定部93A、及び歯車機構40Aの第1太陽歯車42Aが、実施形態のブラケット90の被固定部93、及び歯車機構40の第1太陽歯車42と比較して構成が一部異なる。
【0130】
サブアクチュエータ85は、第1太陽歯車42の回転駆動源である。サブアクチュエータ85は、例えば、インナーロータ式のモータである。サブアクチュエータ85は、例えば、ステータと、電力が供給されることによってステータに対して回転するロータと、ロータと共に回転する出力軸85aと、を含む。出力軸85aの軸心は、車軸Awに一致する。ステータを含むサブアクチュエータ85の筐体は、変形例のブラケット90Aの被固定部93Aにおいて、内側面側に取り付けられる。
【0131】
サブアクチュエータ85は、車輪1Aが搭載される自走車の車体側に設けられた電源(不図示)から電力が供給される。サブアクチュエータ85は、電力が供給されることによって、出力軸85aが回転する。出力軸85aから出力された回転トルクは、第1太陽歯車42Aに伝達される。サブアクチュエータ85の出力軸85aの回転方向及び回転速度は、車輪1Aが搭載される自走車の車体側に設けられた制御部によって制御される。
【0132】
被固定部93Aは、軸心が車軸Awと一致する円筒体である。被固定部93Aは、外側面側の端部が板状部91の内側面に連続して設けられ、板状部91の外側面側及び内側面側に開口する。すなわち、被固定部93Aは、実施形態の被固定部93の内側面側の端部が閉塞するのに対し、内側面側の端部が開口する点で異なる。被固定部93Aは、内側面側にサブアクチュエータ85が固定され、内側面側の開口からサブアクチュエータ85の出力軸85aが挿通される。被固定部93Aは、内周面側に、第1太陽歯車42Aの一部及び電磁石70が配置される。被固定部93Aは、実施形態の被固定部93が第1太陽歯車42を固定して支持するのに対し、第1太陽歯車42Aを固定も支持もしない。被固定部93Aは、内周面で電磁石70の外周面を固定して支持する。
【0133】
第1太陽歯車42Aは、実施形態の第1太陽歯車42と同様に、内歯車41の内周側に、内歯車41と同芯になるように配置される。すなわち、第1太陽歯車42Aは、軸心が車軸Awと一致する。第1太陽歯車42Aは、実施形態の第1太陽歯車42がブラケット90の被固定部93に固定して支持されるのに対し、サブアクチュエータ85の出力軸85aに固定して支持される。
【0134】
次に、変形例における車輪1Aの動作について説明する。サブアクチュエータ85が駆動せず出力軸85aが回動していない状態において、車輪1Aの動作は実施形態の車輪1の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0135】
車輪1Aは、アクチュエータ81を駆動させず車輪本体10を停止させている状態において、サブアクチュエータ85を駆動させるように制御すると、第1太陽歯車42Aが出力軸85aと共に回動する。この際、内歯車41は、車輪本体10と共に停止しているので、第1遊星歯車43は、第1太陽歯車42Aの回転方向と同方向に公転しながら、第1太陽歯車42Aの回転方向と逆回転に自転して、内歯車41の内周を転動する。車輪1Aは、電磁石70に電力が供給され、磁性シャフト61が磁化すると、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期される。
【0136】
車輪1Aは、第1太陽歯車42Aが逆回転方向R2に回転している状態において、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期されると、第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52は、遊星キャリア60を介して、第1遊星歯車43の公転に伴って逆回転方向R2に公転する。これと共に、第2遊星歯車51は、第1遊星歯車43と同方向に遊星自転軸Ap回りに正回転方向R1と同方向に自転する。第2遊星歯車51の自転は、第3遊星歯車52を介して第2太陽歯車53の車軸Aw回りの同方向、すなわち正回転方向R1の回転に伝達される。
【0137】
第2太陽歯車53及び爪作動歯車31が正回転方向R1に回転すると、停止している車輪本体10に対して、相対的に正回転方向R1に回転する。すると、爪歯車23は、車輪本体10に対して逆回転方向R2と同方向である突出方向Rpに回転する。すなわち、車輪1Aは、電磁石70に通電した状態で第1太陽歯車42Aが逆回転方向R2に回転するよう制御されると、爪部材20が突出方向Rpに回転する。
【0138】
車輪1Aは、第1太陽歯車42Aが正回転方向R1に回転している状態において、第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期されると、第2遊星歯車51及び第3遊星歯車52は、遊星キャリア60を介して、第1遊星歯車43の公転に伴って正回転方向R1に公転する。これと共に、第2遊星歯車51は、第1遊星歯車43と同方向に遊星自転軸Ap回りに逆回転方向R2と同方向に自転する。第2遊星歯車51の自転は、第3遊星歯車52を介して第2太陽歯車53の車軸Aw回りの同方向、すなわち逆回転方向R2の回転に伝達される。
【0139】
第2太陽歯車53及び爪作動歯車31が逆回転方向R2に回転すると、停止している車輪本体10に対して、相対的に逆回転方向R2に回転する。すると、爪歯車23は、車輪本体10に対して正回転方向R1と同方向である収容方向Rsに回転する。すなわち、車輪1Aは、電磁石70に通電した状態で第1太陽歯車42Aが正回転方向R1に回転するよう制御されると、爪部材20が収容方向Rsに回転する。
【0140】
以上説明したように、変形例の車輪1Aは、ブラケット90A(支持部)に支持され車輪本体10の回動を駆動させるアクチュエータ81(第1回転アクチュエータ)と、出力軸85aが車軸Awに一致するようブラケット90Aに支持されるサブアクチュエータ85(第2回転アクチュエータ)と、をさらに備え、歯車機構40Aは、軸心が車軸Awと一致しかつ車輪本体10と一体で回動する内歯車41と、内歯車41の内周側において軸心が車軸Awと一致するよう配置されかつサブアクチュエータ85に回動駆動される第1太陽歯車42Aと、内歯車41の内周側と第1太陽歯車42Aの外周側との間の環状の空間に配置される第1遊星歯車43と、磁性を有し、第1遊星歯車43と同芯に配置されかつ第1遊星歯車43と歯数が同数である第2遊星歯車51と、第2遊星歯車51と歯数が同数でかつ第2遊星歯車51と噛み合う第3遊星歯車52と、爪作動歯車31に同芯で固定されて第3遊星歯車52と噛み合いかつ歯数が内歯車41と同数である第2太陽歯車53と、第1遊星歯車43を支持しかつ第2遊星歯車51を軸心回りに回動可能に支持し、電磁石70によって磁化可能であって、磁化すると第2遊星歯車51と回転が同期する磁性シャフト61と、車軸Aw回りに回動可能かつ第3遊星歯車52及び磁性シャフト61を軸心回りに回動可能に支持する遊星キャリア60と、を備える。
【0141】
車輪1Aは、車輪本体10が停止している状態において、第1太陽歯車42Aが回動すると、第1遊星歯車43は、第1太陽歯車42Aの回転方向と同方向に公転しながら、第1太陽歯車42Aの回転方向と逆回転に自転する。さらに、電磁石70に通電されると、磁性シャフト61が磁化し、磁性シャフト61及び磁性シャフト61に支持される第1遊星歯車43と第2遊星歯車51との回動が同期される。これにより、第1遊星歯車43の自転による回転トルクが、第2遊星歯車51、第3遊星歯車52及び第2太陽歯車53を介して爪作動歯車31に伝達される。すなわち、爪作動歯車31が車輪本体10に対して相対的に回動する。したがって、車輪本体10を停止した状態においても、爪部材20による車輪1Aの変形と、爪部材20が収容された状態又は爪部材20の一部が突出した状態の維持と、を行うことができるので、状況に応じて、爪部材20を変形させるための制御方法を選択することができる。
【0142】
なお、実施形態の車輪1、変形例の車輪1A、及び車両100は、一部の構成を適宜変更してもよい。例えば、爪部材20の数及び形状は、実施形態に限定されない。また、爪部材20は、車輪本体10の規制部16によって突出方向Rp側への回転量に制限を設けているが、別途設けるリミッタ部品によるものでもよい。
【0143】
また、第1遊星歯車43は、磁性を有し、磁性シャフト61に対して遊星自転軸Ap回りに回動可能に支持されてもよい。
【0144】
また、車輪本体10は、実施形態ではブラケット90の内側面側に設けられるが、実施形態の構成に限定されず、外側面側に設けられてもよい。爪部材20は、実施形態では、車輪本体10の外側面側に設けられるが、実施形態の構成に限定されず、内側面側に設けられてもよい。また、歯車機構40は、実施形態の構成に限定されず、電磁石70が通電されている状態では車輪本体10の回転を爪作動歯車31に伝達すると共に爪作動歯車31を車輪本体10と同方向かつ同回転数で回転させ、通電されていない状態で車輪本体10の回転を爪作動歯車31に伝達させないものであればどのようなものでもよい。
【0145】
また、減速機82は、実施形態の構成に限定されず、車輪1、1Aの用途に対応して適宜変更されてよい。
【符号の説明】
【0146】
1、1A 車輪
10 車輪本体
11 筒状部
12 第1円板状部
13 外輪部
14 第2円板状部
15 カバー部
16 規制部
17 歯車収容部
20 爪部材
21 爪支持軸部
22 爪本体
22a 凸状円弧壁部
22b 凹状円弧壁部
22c 被規制壁部
22d 先端部
23 爪歯車
30 中心軸部材
31 爪作動歯車
40、40A 歯車機構
41 内歯車
42、42A 第1太陽歯車
43 第1遊星歯車
51 第2遊星歯車
52 第3遊星歯車
53 第2太陽歯車
60 遊星キャリア
61 磁性シャフト
70 電磁石
80 本体駆動機構
81 アクチュエータ
81a 出力軸
82 減速機
83 小歯車
84 大歯車
85 サブアクチュエータ
85a 出力軸
90、90A ブラケット(支持部)
91 板状部
91a 出力軸挿通孔
92 本体支持部
93、93A 被固定部
100 車両
110 車体
120 昇降機構
B1、B2、B3、B4 軸受
Aw 車軸
Ac 爪回転軸
Ap 遊星自転軸
R1 正回転方向
R2 逆回転方向
Rp 突出方向
Rs 収容方向
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図20