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  • 特開-建物の空調効率改善構造 図1
  • 特開-建物の空調効率改善構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148465
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】建物の空調効率改善構造
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/60 20110101AFI20231005BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20231005BHJP
   F24F 13/26 20060101ALI20231005BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20231005BHJP
   F24F 1/54 20110101ALI20231005BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20231005BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F24F1/60
F24F13/08 A
F24F13/26
F24F11/46
F24F1/54
F24F7/007 B
F24F13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056500
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 陽一
【テーマコード(参考)】
3L054
3L056
3L080
3L081
3L260
【Fターム(参考)】
3L054BA02
3L054BB01
3L056BD03
3L056BF06
3L080AA03
3L080AC02
3L081AA02
3L081AB01
3L081BA05
3L260AB02
3L260BA12
3L260BA16
3L260BA42
3L260BA46
3L260CA33
3L260FC03
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でありながら、空調機の運転効率を改善することが可能な建物の空調効率改善構造を提供すること。
【解決手段】建物(1)の空調効率改善構造は、屋内空間(1)の空気を空調する空調機(4)の運転効率を改善させるためのものである。建物(1)の空調効率改善構造は、床下空間(21)の空気を屋外空間(10)に送り出す送風機(3)と、送風機(3)から屋外空間(10)に送り出された空気が当たるように配置された室外機(6)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋内空間の空気を空調する空調機の運転効率を改善させるための空調効率改善構造であって、
前記建物の床下空間の空気を屋外空間に送り出す送風機と、
前記送風機から前記屋外空間に送り出された空気が当たるように配置された室外機とを備える、建物の空調効率改善構造。
【請求項2】
前記送風機の吹出口と前記室外機の吸込み口とは、対向して配置されている、請求項1に記載の建物の空調効率改善構造。
【請求項3】
前記送風機と前記床下空間との間には、前記室外機に前記床下空間の空気を導く導風板が設けられている、請求項1または2に記載の建物の空調効率改善構造。
【請求項4】
前記床下空間の湿度を測定する床下湿度センサと、
前記屋外空間の湿度を測定する外気湿度センサと、
前記床下湿度センサで計測した湿度が、前記外気湿度センサで計測した湿度よりも高い場合には、前記送風機を稼働させる制御部とをさらに備える、請求項1~3のいずれかに記載の建物の空調効率改善構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の空調効率改善構造に関し、特に、建物の屋内空間の空気を空調する空調機の運転効率を改善させるための空調効率改善構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な住宅などの建物に用いられる空調機は、屋内に配置される室内機と、屋外に設置される室外機とによって構成されている。室内機は、屋内の空気を吸い込み、冷媒と熱交換して、冷気や暖気を屋内に吹き出している。室外機は、屋外の空気を吸い込み、屋内から運ばれた冷熱や温熱を屋外に吹き出している。室内機は屋内に設置されるが、室外機は常に外気にさらされる屋外に設置され、直射日光が当たるような劣悪な環境に配置される場合もある。
【0003】
一方で、一般的な戸建て住宅などの建物には、床下空間が設けられる。床下空間は、一年を通して温度が一定であり、湿度が高い環境であり、この劣悪な環境を改善するための技術が提案されている。
【0004】
たとえば、特開平8-61712号公報(特許文献1)には、空調機の室外機を家屋の土台に形成された通気用の排気口の近傍に設置して、室外機の熱交換ファンによって床下の空気を屋外に放出することが開示されている。
【0005】
また、特開2018-146205号公報(特許文献2)には、床下空間の空気環境を改善するために、各居室と床下空間とをつなぐ空気の供給経路を設け、各居室の空気が床下空間に供給されることが開示されている。さらに、床下空間の空気自体は、基礎に設けられた送風手段を通じて屋外に排出されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-61712号公報
【特許文献2】特開2018-146205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術は、室外機の大きさが床下の高さよりも大きい場合は、土間下げが必要となる。さらに、室外機を床下に設置するため、室外機の空調音が屋内に籠る可能性がある。また、屋内の空調が必要なタイミングと、床下の換気が必要なタイミングが異なるため、たとえば雨天時に室外機が稼働すれば、高湿な外気を床下に導入するおそれがある。
【0008】
また、特許文献2には、床下空間に送風手段を設置する構成が開示されているだけで、室外機との関係については言及されていない。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構造でありながら、空調機の運転効率を改善することが可能な建物の空調効率改善構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面による建物の空調効率改善構造は、建物の屋内空間の空気を空調する空調機の運転効率を改善させるための空調効率改善構造であって、建物の床下空間の空気を屋外空間に送り出す送風機と、送風機から屋外空間に送り出された空気が当たるように配置された室外機とを備える。
【0011】
好ましくは、送風機の吹出口と前記室外機の吸込み口とは、対向して配置されている。
【0012】
好ましくは、送風機と床下空間との間には、前記室外機に前記床下空間の空気を導く導風板が設けられている。
【0013】
好ましくは、床下空間の湿度を測定する床下湿度センサと、屋外空間の湿度を測定する外気湿度センタと、床下湿度センサで計測した湿度が、外気湿度センサで計測した湿度よりも高い場合には、送風機を稼働させる制御部とをさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建物の空調効率改善構造によれば、簡易な構造でありながら、空調機の運転効率を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係る建物の空調効率改善構造の模式図であり、(A)は晴れの場合を示し、(B)は雨の場合を示している。
図2図1(A)の部分拡大図である。
図3】空調機の冷房時の空調効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
図1図3を参照して、本実施の形態に係る空調効率改善構造が設けられた建物1について説明する。本実施の形態に係る空調効率改善構造が対象とする建物1は、典型的には戸建て住宅であるが、たとえば集合住宅、ビルなど床下空間21が形成される建物であればよい。
【0018】
図1(A)に示すように、建物1は、建物本体11と、地盤に打設され、建物本体11を下方から支持する基礎12とを備える。建物本体11と基礎12との間は、床部16によって仕切られている。建物本体11の内部には、屋内空間20が形成され、基礎12の内部には、床下空間21が形成されている。
【0019】
屋内空間20は、屋根部13と、屋根部13を下方から支える第1側壁14および第2側壁15と、第1,2側壁14,15の内方に位置する床部16とによって、屋外空間10と区画されている。屋内空間20内には、屋内空間20の空気を空調する空調機4の室内機5が配置される。空調機4については、後述する。
【0020】
床下空間21は、床部16と、床部16の下方に位置し、第1,2側壁14,15の下方を支持する第1,2立ち上がり部17,18と、第1,2立ち上がり部17,18の内方に位置する地面19とによって区画されている。床下空間21の温度は、年中を通して外気温と比べてほぼ一定の温度に保たれている。具体的には、床下空間21は、夏は外気温よりも低温であり、冬は外気温よりも高温である。また、床下空間21の湿度は、雨天の場合などを除き、一般的に屋外空間10よりは高いとされている。そのため、床下空間21の湿度を低くすることが望まれている。
【0021】
第1立ち上がり部17には、第1開口17aが設けられ、第2立ち上がり部18には、第2開口18aが設けられる。第1,2開口17a,18aは、屋外空間10と床下空間21とを貫通する貫通孔である。そのため、床下空間21は、屋外空間10との通気が確保されている。第1,2開口17a,18aは、対向する位置に設けられることが好ましい。
【0022】
第1開口17aには、たとえばガラリなどが設けられていることが好ましい。これにより、通気は確保しつつ、外部からの異物の侵入を抑制することができる。第2開口18aには、送風機3が取り付けられている。送風機3は、床下空間21の空気を屋外空間10に送り出すためのものである。送風機3を稼働させることで、第1開口17aは、屋外空間10の空気を床下空間21に向かって送り出す給気口となり、第2開口18aは、床下空間21の空気を屋外空間10に向かって送り出す排気口となる。
【0023】
上述のように、送風機3は、床下空間21の空気を屋外空間10に送り出すための排気手段である。送風機3は、たとえば床下換気扇であり、ファンと、ファンを駆動させるためのモータとを含む。送風機3は、一般的な給排型の換気扇であるが、たとえば拡散型の換気扇などであってもよい。
【0024】
送風機3は、建物1の管理制御部に接続されており、管理制御部によって、駆動制御が行われる。送風機3が稼働すると、床下空間21の空気が屋外空間10に送り出され、床下空間21内の圧力が低下して、屋外空間10の空気が第1開口17aから床下空間21内に引き込まれる。送風機3から送り出された空気が当たるように空調機4の室外機6が配置されている。以下、空調機4の構成について説明する。
【0025】
空調機4は、屋内空間20に配置される室内機5と、屋外空間10に設置される室外機6と、室内機5と室外機6とを連結するパイプ7とによって構成されている。具体的には、冷房時において、室内機5は、屋内空間20の空気を吸い込み、冷媒と熱交換して、冷気を屋内空間20に吹き出している。奪われた熱は、パイプ7を流れる冷媒ガスによって、室外機6に運ばれる。
【0026】
室外機6は、屋外空間10の空気を吸い込み、屋内空間20から運ばれた熱とともに屋外空間10に吹き出している。このように、室内機5が屋内空間20の熱を奪い、冷媒ガスが室外機6へと運び、室外機6が熱を放出するというサイクルを繰り返すことで、屋内空間20を冷房することができる。
【0027】
室内機5は、屋内空間20に設置される。それに対し、室外機6は、屋外空間10に設置される。室外機6は、常に外気にさらされるとともに、場合によっては直射日光も当たるため、室外機6の設置場所は、夏は暑さが厳しく、冬は寒さが厳しい環境となる。
【0028】
一方で、空調機4は、室内機5と室外機6とはそれぞれ別の働きをしているが、室内機5と室外機6の2つで屋内空間20の空気を空調している。そのため、室外機6の周囲の温度を、屋外空間10へ放熱しやすい温度にすることで、空調機4の空調効率を改善することができる。
【0029】
図2に示すように、室外機6は、箱形状であり、正面に設けられる排気口61と、背面に設けられる吸気口62とを含む。送風機3によって送り出された床下空間21の空気は、室外機6の吸気口62に当たるように設けられることが好ましい。たとえば、夏などでは、床下空間21の温度は、屋外空間10の温度よりも低いため、床下空間21から送り出された空気を室外機6に当てることで、室外機6内に吸引される空気の温度が低くなる。そのため、室外機6で冷媒を液化させる際に発生する液化熱を屋外空間10に除去しやすくなり、空調機4の運転効率を向上させることができる。
【0030】
送風機3と床下空間21との間には、導風板30が設けられている。導風板30は、室外機6に向かって床下空間21の空気を導くものである。具体的には、導風板30は、上方に設けられる第1板31と、下方に設けられる第2板32とを含む。第1板31は、送風機3の上端から室外機6の上端に向かって斜め上方に傾斜する部材である。第2板32は、送風機3の下端から送風機3の下端に向かって斜め下方に傾斜する部材である。送風機3の両側方においても、同様な導風板が設けられてもよい。これにより、送風機3から送り出される床下空間21の空気を室外機6に効率よく送り出すことができる。
【0031】
図3は、空調機の冷房時の空調効率を示すグラフである。図3を参照して、縦軸(Y軸)には、エネルギー消費効率(COP)が示されており、横軸(X軸)には、外気温(℃)が示されており、実線で一般的な空調機の冷房時の効率曲線が示されている。
【0032】
冷房時の効率曲線をみると、外気温29℃を境に、外気温が高くなるにつれて急激にCOPが減少することがわかる。つまり、外気温が29℃を超えると、冷房効率が急激に低下する。これは、外気温が高くなりすぎると室外機6で発生する液化熱を冷やしにくくなり熱交換効率が低下するためである。上述のように、室外機6は、屋外空間10に設置されるため、外気温の影響を直接受ける。
【0033】
本実施の形態の室外機6は、低温な床下空間21の空気が当たるように設けられている。たとえば真夏などで外気温が35℃などになる場合であっても、床下空間21の空気は大体15℃ぐらいである。図3の矢印で示すように、外気温が35℃ぐらいの場合であっても、15℃ぐらいの床下空間21の空気を室外機6に当てることで、室外機6の周りの温度をたとえば29℃ぐらいまで下げることができれば、エネルギー消費効率を上げることができる。このように、外気温が高い場合であっても、室外機6の周りの温度を下げることで、空調機4の空調効率を上げることができる。
【0034】
図1(A)に示すように、建物1は、外気湿度センサ8と、床下湿度センサ9と、送風機の稼働を制御する制御部(図示せず)とを備える。
【0035】
外気湿度センサ8は、屋外空間10の湿度を測定するものである。外気湿度センサ8は、第2側壁15に設置されている。床下湿度センサ9は、床下空間21の湿度を測定するものである。床下湿度センサ9は、床部16の裏面に設置されている。なお、外気湿度センサ8および床下湿度センサ9の設置箇所は特に限定されない。
【0036】
制御部は、床下湿度センサ9で計測した湿度が、外気湿度センサ8で計測した湿度よりも高い場合には、送風機3を稼働させる。床下空間21の湿度が高いと、床下空間21に結露が発生し、たとえばカビやシロアリなどが発生する原因となる。そのため、床下空間21の湿度が屋外空間10の湿度よりも高い場合は、送風機3を稼働させて、低湿な屋外空間10の空気を床下空間21に取り込むようにしている。これにより、床下空間21の環境を改善することができる。なお、図1(A)では、晴れた状態を示しており、一般的には晴れていると屋外空間10が低湿であり、床下空間21が高湿である。そのため、送風機3を稼働させて、屋外空間10の低湿な空気を床下空間21に送り込んでいる。
【0037】
一方で、制御部は、床下湿度センサ9で計測した湿度が、外気湿度センサ8で計測した湿度よりも低い場合には、送風機3を停止させる。送風機3を稼働させると、床下空間21に高湿な空気を送り込むことになり、かえって床下空間21に結露が発生してしまうからである。そのため、屋外空間10の湿度が床下空間21の湿度よりも高い場合は、送風機3の稼働を停止させる。これにより、床下空間21の環境を悪化させないことができる。なお、図1(B)では、雨が降っている状態を示しており、一般的には雨が降っていると屋外空間10が高湿であり、床下空間21が低湿である。そのため、床下空間21内に高湿な屋外空間10の空気を導入させないために送風機3の稼働を停止させている。
【0038】
このように、外気湿度センサ8および床下湿度センサ9で計測した湿度を比較して、制御部で送風機3の稼働を制御しているため、湿度によって送風機3の稼働および停止を自動で行うことができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、特に夏に稼働させる冷房について説明したが、冬に稼働させる暖房についても適用できる。床下空間21の温度は、年中を通して安定しておりほぼ一定温度であり、夏は外気温よりも低温であり、冬は外気温よりも高温である。そのため、冬の場合は、送風機3を稼働させることで、床下空間21の高温の空気を室外機6に当てることができるため、暖房時の室外機6で冷媒を気化させるための気化熱を得やすくなり、暖房を行う際の空調機4の運転効率を向上させることが可能である。
【0040】
今回開示した上記各実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した各実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 建物、3 送風機、4 空調機、5 室内機、6 室外機、8 外気湿度センサ、9 床下湿度センサ、10 屋外空間、20 屋内空間、21 床下空間、30 導風板。
図1
図2
図3