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  • 特開-気泡緩衝シートの製造方法 図1
  • 特開-気泡緩衝シートの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148476
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】気泡緩衝シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/15 20190101AFI20231005BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20231005BHJP
   B29C 48/90 20190101ALI20231005BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20231005BHJP
   B29C 51/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B29C48/15
B29C48/305
B29C48/90
B29C51/10
B29C51/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056520
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】舟久保 知輝
(72)【発明者】
【氏名】角井 大士
【テーマコード(参考)】
4F207
4F208
【Fターム(参考)】
4F207AB11
4F207AB16
4F207AD05
4F207AD08
4F207AD20
4F207AD24
4F207AG03
4F207AG18
4F207AH81
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KK65
4F207KM16
4F208AC03
4F208AD05
4F208AD08
4F208AG03
4F208AG18
4F208AR12
4F208MA01
4F208MB02
4F208MB22
4F208MB29
4F208MC01
4F208MD02
4F208MG22
4F208MJ09
(57)【要約】
【課題】分別の手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易でありながらも、ペーパーライクな風合いの気泡緩衝シートを製造する。
【解決手段】
フラットダイ20からフィルム状に押し出してなる樹脂フィルム2fを、多数の吸引キャビティー51が設けられた成形ロール50の外周面に密着させ、中空状に膨出する突起部2aを真空成形してキャップフィルム2を成形し、フラットダイ30からフィルム状に押し出してなるバックフィルム3を突起部2aの開口側に積層して、突起部2a内に空気を封入し、卵殻を粉砕して粉末状にした卵殻由来の充填剤、及び生石灰を樹脂材料中に添加して製膜された外装フィルム4をバックフィルム3に積層することによって、気泡緩衝シート1を製造する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットダイからフィルム状に押し出してなる樹脂フィルムを、多数の吸引キャビティーが設けられた成形ロールの外周面に密着させ、中空状に膨出する突起部を真空成形してキャップフィルムを成形し、
フラットダイからフィルム状に押し出してなるバックフィルムを前記突起部の開口側に積層して、前記突起部内に空気を封入し、
卵殻を粉砕して粉末状にした卵殻由来の充填剤、及び生石灰を樹脂材料中に添加して製膜された外装フィルムを前記バックフィルムに積層することを特徴とする気泡緩衝シートの製造方法。
【請求項2】
前記外装フィルムに用いる樹脂材料100重量部に対し、前記充填剤を7~70重量部、前記生石灰を0.5~20重量部添加する請求項1に記載の気泡緩衝シートの製造方法。
【請求項3】
前記充填剤と前記生石灰との重量比が、70:5~70:20である請求項2に記載の気泡緩衝シートの製造方法。
【請求項4】
前記外装フィルムを、前記バックフィルムに積層された状態で、60~120μmの厚みとなるように製膜する請求項1~3のいずれか一項に記載の気泡緩衝シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡緩衝シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する多数の突起部が成形されたキャップフィルムに、突起部内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって製造された、独立した多数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
本出願人は、特許文献1において、このような気泡シートに、外装シートとして紙を貼り付けた緩衝封筒を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6193164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案する緩衝封筒にあっては、使用後に、気泡シートと紙とを容易に分別できるものの、分別の手間が依然としてあることに鑑みて、本出願人は、近年の循環型社会形成の要請に応えるべく、プラスチック材料の循環資源として再利用や、廃棄物系バイオマスの利活用、特に、従来は多量に廃棄されてきた鶏卵などの卵殻の利活用を図ることを念頭に置きながら、分別の手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易でありながらも、ペーパーライクな風合いの気泡緩衝シートを製造するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る気泡緩衝シートの製造方法は、フラットダイからフィルム状に押し出してなる樹脂フィルムを、多数の吸引キャビティーが設けられた成形ロールの外周面に密着させ、中空状に膨出する突起部を真空成形してキャップフィルムを成形し、フラットダイからフィルム状に押し出してなるバックフィルムを前記突起部の開口側に積層して、前記突起部内に空気を封入し、卵殻を粉砕して粉末状にした卵殻由来の充填剤、及び生石灰を樹脂材料中に添加して製膜された外装フィルムを前記バックフィルムに積層する方法としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分別の手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易でありながらも、ペーパーライクな風合いの気泡緩衝シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る気泡緩衝シートの製造方法を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態において製造される気泡緩衝シートの要部を斜視して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る気泡緩衝シートの製造方法を示す説明図であり、図2は、気泡緩衝シート1の要部を斜視して示す説明図である。
【0010】
図1に示すように、気泡緩衝シート1を製造するには、まず、図示しない押し出し機に取り付けられたれたフラットダイ20から、樹脂材料をフィルム状に押し出すことによって樹脂フィルム2fを製膜しつつ、成形ロール50の外周面に接触させる。
【0011】
成形ロール50の外周面には、概ね円柱状又は円錐台状などとされた多数の吸引キャビティー51が設けられている。特に図示しないが、吸引キャビティー51のそれぞれは真空ポンプにつながっており、吸引キャビティー51内を真空吸引することによって真空成形がなされるようになっている。これにより、成形ロール50の外周面に樹脂フィルム2fが密着して、中空状に膨出する多数の突起部2aが成形されて、キャップフィルム2に成形される。
【0012】
真空成形によって多数の突起部2aが成形されたキャップフィルム2には、成形ロール50に密着した状態のまま、突起部2aの開口側にバックフィルム3が積層される。バックフィルム3は、図示しない押し出し機に取り付けられたれたフラットダイ30からフィルム状に押し出され、成形ロール50に密着するキャップフィルム2と押圧ロール60との間に溶融状態で供給されて、熱融着によってキャップフィルム2と積層される。これにより、キャップフィルム2に成形された突起部2a内に空気が封入される。
【0013】
キャップフィルム2とバックフィルム3とが熱融着によって積層されると、これらは剥離ロール70によって成形ロール50から剥離されて、必要に応じて図示しない搬送ロールを介してニップロール80に搬送される。その際、バックフィルム3側には、外装フィルム4が供給され、ニップロール80により押圧されながら、熱融着によってバックフィルム3に積層される。
【0014】
このような工程を経ることによって、図2に示すような三層構造の気泡緩衝シート1を製造することができ、製造された気泡緩衝シート1は、図示しない巻き取りロールに巻き取られる。
【0015】
以上のようにして気泡緩衝シート1を製造するにあたり、キャップフィルム2、バックフィルム3、外装フィルム4のそれぞれに用いる樹脂材料としては、これらを熱融着によって積層できるように適宜選択することができる。好ましくは、分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、プロピレンーエチレンーブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体などのポリオレフィン系樹脂が用いられ、これらのポリオレフィン系樹脂は、単独又は二種以上混合して用いてもよい。さらに、バージン原料にリサイクル材料を混合して用いてもよく、リサイクル材料だけで用いてもよい。リサイクル材料としては、本実施形態に係る気泡緩衝シート1のような、この種の気泡緩衝シートを回収して再生したものを用いる外、例えば、PETボトルのキャップ、牛乳瓶の飲み口を覆うキャップのような、ポリオレフィン系樹脂製の飲料用容器のキャップを回収して再生したものなど、食品容器に由来するリサイクル材料を用いるのが品質面から好ましい。
【0016】
また、本実施形態にあっては、外装フィルム4に用いる樹脂材料中に、鶏卵などの卵殻を粉砕して粉末状にした卵殻由来の充填剤を添加して、外装フィルム4を製膜する。このような卵殻由来の充填剤を添加することで、外装フィルム4のバイオマス度が高められるとともに、廃棄物系バイオマスの利活用を図ることができる。これに加えて、外装フィルム4に用いる樹脂材料中に卵殻の粉末を添加することで、外装フィルム4の表面が適度に荒れた面となり、そのアンカー効果によって、バックフィルム3に対する熱融着性が向上する。したがって、製膜された外装フィルム4の一方の主面と他方の主面とで荒さの程度に差が認められる場合には、より荒れた面側をバックフィルム3に積層するのが好ましい。
【0017】
さらに、本実施形態にあっては、樹脂材料中に分散する卵殻の粉末が、ペーパーライクな風合いを醸し出すため、例えば、顔料を添加せずとも、若しくは必要に応じて白色系の顔料を添加することで、和紙のような風合いを付与することができ、又は茶系統の顔料を添加することで、クラフト紙のような風合いを付与することができる。
【0018】
一方、卵殻の主成分である炭酸カルシウムは吸湿性が高く、卵殻由来の充填剤が十分に乾燥されないまま樹脂材料中に添加されると、充填剤に吸着された水分が、外装フィルム4の製膜時に蒸気となって散逸し、製膜された外装フィルム4に薄肉部が斑状に生じてしまう。このため、薄肉部での破断を避けるために、外装フィルム4は比較的厚肉に製膜しなければならず、薄肉に製膜することを困難にしてしまう。
【0019】
本実施形態では、このような不具合を避けるために、卵殻由来の充填剤とともに、充填剤に吸着された水分を除去する除湿剤として、生石灰(CaO)を添加している。これによって、外装フィルム4をより薄肉に製膜することが可能となり、外装フィルム4をより薄肉に製膜することによって、ペーパーライクな風合いをより引き立たせることができる。ペーパーライクな風合いをより引き立たせる上で、外装フィルム4は、バックフィルム3に積層された状態で、60~120μmの厚みとなるように製膜されるのが好ましい。
【0020】
外装フィルム4に用いる樹脂材料中に、卵殻由来の充填剤、及び生石灰を添加するにあたり、その添加量は、これらを添加することによって期待される効果が、有効に奏されるよう適宜調整できる。例えば、樹脂材料100重量部に対し、卵殻由来の充填剤を7~70重量部、生石灰を0.5~20重量部添加するのが好ましい。卵殻由来の充填剤と生石灰との重量比は、70:5~70:20であるのが好ましい。
【0021】
また、卵殻の主成分である炭酸カルシウムからは、加熱処理を施すことによって、生石灰を得ることができることから、本実施形態において、卵殻由来の充填剤とともに、樹脂材料中に添加する生石灰には、廃棄物系バイオマスの利活用を図る上で、卵殻を加熱処理することによって得られた生石灰を用いるのが好ましい。
【0022】
以上のように、本実施形態によって製造される気泡緩衝シート1は、キャップフィルム2、バックフィルム3、外装フィルム4のいずれも樹脂製であるため、分別の手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易である。さらに、卵殻を粉砕して粉末状にした卵殻由来の充填剤、及び生石灰を樹脂材料中に添加して製膜された外装フィルム4が積層されることによって、ペーパーライクな風合いを備えたものとすることができる。
【0023】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0024】
例えば、図1には、予め製膜された外装フィルム4をバックフィルム3に積層する例を示しているが、これに限定されない。特に図示しないが、卵殻を粉砕して粉末状にした卵殻由来の充填剤、及び生石灰が添加された樹脂材料をフラットダイからフィルム状に押し出して、これによって製膜される外装フィルム4を溶融状態でバックフィルム3側に供給しつつ、ニップロール80で押圧することで、熱融着によってバックフィルム3に積層されるようにしてもよい。
【0025】
また、キャップフィルム2に成形された突起部2aの頂面側には、フラットダイからフィルム状に押し出されたライナーフィルムを溶融状態で供給し、熱融着によって突起部2aの頂面側に積層することで、キャップフィルム2の凹凸を隠すようにしてもよい。
【0026】
また、気泡緩衝シート1の使用態様も限定されず、任意の大きさに切断して被包装物を包むなどする外、任意の大きさに製袋して使用するなどの使用態様を例示することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 気泡緩衝シート
2 キャップフィルム
2a 突起部
2f 樹脂フィルム
3 バックフィルム
4 外装フィルム
50 成形ロール
51 吸引キャビティー
図1
図2