(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148483
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B23B27/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056530
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 琢真
(72)【発明者】
【氏名】萩原 隆行
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE17
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡単かつ効果的に取付座内から切り屑を除去することが可能な刃先交換式切削工具を提供する。
【解決手段】本発明の刃先交換式切削工具は、切削インサートと、切削インサートが取り付けられるインサート取付座を有する取付部と、取付部に流体を供給するための流体供給流路と、を有するホルダと、を備え、インサート取付座は、切削インサートの着座面を拘束する第1拘束面と、第1拘束面に交差するとともに切削インサートの側面を拘束する第2拘束面と、第1拘束面および第2拘束面に交差する第3拘束面と、第2拘束面と第3拘束面との間に位置する逃げ部と、を有し、流体供給流路は、取付部に連通するとともに第1拘束面に向かって開口する出口を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサートと、
前記切削インサートが取り付けられるインサート取付座を有する取付部と、
前記取付部に流体を供給するための流体供給流路と、を有するホルダと、を備え、
前記インサート取付座は、
前記切削インサートの着座面を拘束する第1拘束面と、前記第1拘束面に交差するとともに前記切削インサートの側面を拘束する第2拘束面と、前記第1拘束面および前記第2拘束面に交差する第3拘束面と、を有し、
前記流体供給流路は、前記取付部に連通するとともに前記第1拘束面に向かって開口する出口を有する、
刃先交換式切削工具。
【請求項2】
前記流体供給流路の前記出口は、前記第2拘束面および前記第3拘束面のうちの少なくとも一方側に向けて開口している、
請求項1に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項3】
前記第2拘束面と前記第3拘束面との間に位置する逃げ部を有し、前記流体供給流路の前記出口は、前記第1拘束面、前記第2拘束面、および前記第3拘束面が交差する前記逃げ部に開口している、
請求項1または2に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項4】
前記出口の中心線に沿う方向から見たとき、前記出口の開口領域の少なくとも一部が前記第1拘束面と重なっている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項5】
前記流体供給流路は、1つの前記取付部に対して前記出口を複数有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の刃先交換式切削工具。
【請求項6】
前記流体供給流路の入口は、前記ホルダの外周面もしくは前記取付部とは長さ方向反対側の基端面に開口している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
刃先交換式切削工具を用いて被切削材を切削すると切り屑が発生する。使用後、その切り屑の一部が切削インサートと工具本体との間に溜まってしまうことがある。切削インサートを交換する際に、新しい切削インサートと工具本体との間に切り屑が噛み込んでしまうと、切削インサートの着座面及び工具本体の拘束面が傷ついてしまう。これを防ぐため、新しい切削インサートを取り付ける前に工具本体のインサートポケット(取付部)内から切り屑を除去しておく必要がある。
【0003】
そこで従来は、作業者が切削工具の外部から拘束面に向かって圧縮エアーなどを吹き付けて切り屑を吹き飛ばして除去していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2019-526458号公報
【特許文献2】特開2010-105084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の場合、インサートポケットのうち、切削インサートの着座面を拘束する拘束面に対向する方向から圧縮エアーなどを吹き付けていたため、インサートポケットの隅に切り屑(例えば、細かい切り屑)が滞納してしまうことがあり、インサートポケットから切り屑を効果的に除去することができないという問題があった。また、インサートポケットから切り屑を効果的に除去しようとすると、インサートポケットに対してあらゆる方向から圧縮エアーを吹き付ける必要があるため手間がかかってしまう。
そのため、この種の刃先交換式切削工具では、簡単かつ効果的にインサートポケット(拘束面上)から切り屑を除去することが可能な構成が望まれている。
【0006】
本発明は、インサートポケット(拘束面上)から切り屑を効率良く除去することが可能な刃先交換式切削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、切削インサートと、前記切削インサートが取り付けられるインサート取付座を有する取付部と、前記取付部に流体を供給するための流体供給流路と、を有するホルダと、を備え、前記インサート取付座は、前記切削インサートの着座面を拘束する第1拘束面と、前記第1拘束面に交差するとともに前記切削インサートの側面を拘束する第2拘束面と、前記第1拘束面および前記第2拘束面に交差する第3拘束面と、を有し、前記流体供給流路は、前記取付部に連通するとともに前記第1拘束面に向かって開口する出口を有する。
【0008】
本発明によれば、使用後に、切削加工時に生成された切り屑がインサート取付座に残留していた場合であっても、ホルダ内部に形成された流体供給流路を通じてインサート取付座に流体を供給することによって、ホルダの外部へ向かって取付部内における(例えば、第1拘束面上の)切り屑を効率良く除去することが可能である。
【0009】
また、上記刃先交換式切削工具において、前記第2拘束面と前記第3拘束面との間に位置する逃げ部を有し、前記流体供給流路の前記出口は、前記第2拘束面および前記第3拘束面のうちの少なくとも一方側に向けて開口している構成としてもよい。
【0010】
この場合、出口が向く方向へ集中的に流体を供給することができるので切り屑の排出性を高めることができる。
【0011】
また、上記刃先交換式切削工具において、前記流体供給流路の前記出口は、第1拘束面、第2拘束面、及び第3拘束面が交差する隅部に形成された前記逃げ部に開口している構成としてもよい。
【0012】
この場合、3つの拘束面が交差する隅部に形成される逃げ部に、流体供給流路の出口を形成することによって、逃げ部からホルダの外部へ向かって切り屑を効率良く除去することができる。逃げ部側から流体を供給することで、三方が囲まれた逃げ部に切り屑が残留するのを抑制することができる。
【0013】
また、上記刃先交換式切削工具において、前記出口の中心線に沿う方向から見たとき、前記出口の開口領域の少なくとも一部が前記第1拘束面と重なっている構成としてもよい。
【0014】
この場合、第1拘束面上に残留する切り屑を効率良く除去することができる。
【0015】
また、上記刃先交換式切削工具において、前記流体供給流路は、1つの前記取付部に対して前記出口を複数有する構成としてもよい。
【0016】
この場合、複数の出口を有することによって、複数の方向へ気体を供給することができるので、インサート取付座内に分散した切り屑を短時間で効率良く排出させることができる。
【0017】
また、上記刃先交換式切削工具において、前記流体供給流路の入口は、前記ホルダの外周面もしくは前記取付部とは長さ方向反対側の基端面に開口している構成としてもよい。
【0018】
この場合、ホルダの基端側からの作業が可能となる。また、流路経路を湾曲させることなく延在させることができるので、構造が簡単になり流路の形成が容易である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の前記態様の刃先交換式切削工具によれば、インサートポケット内から切り屑を効率良く除去することで、ホルダに対して切削インサートを安定して取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態における刃先交換式切削工具の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における刃先交換式切削工具のホルダの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態におけるホルダのインサートポケットの周囲を部分的に拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態におけるホルダの流体供給流路を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態におけるホルダを第1拘束面側から見た図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態におけるホルダを第2拘束面に対向する側から見た側面図である。
【
図7】
図7は、変形例1におけるホルダの構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例2におけるのホルダの構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る流体供給流路を適用可能なホルダの構成を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の刃先交換式切削工具の構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の刃先交換式切削工具におけるホルダの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る刃先交換式切削工具について、図面を参照して説明する。
各図面において、ホルダの第1拘束面に沿う方向をX方向とし、ホルダの長さ方向をY方向とし、X方向及びY方向に交差する方向をZ方向としている。
【0022】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の刃先交換式切削工具1について、図面を参照して説明する。本実施形態の刃先交換式切削工具1は、旋削加工(ターニング)に用いられる刃先交換式バイトなどの刃先交換式旋削工具であり、図示しない旋盤などの工作機械の刃物台等に着脱可能に装着される。なお、本実施形態では、刃先交換式切削工具1を単に切削工具や工具などと呼ぶ場合がある。
【0023】
図1は、第1実施形態における刃先交換式切削工具1の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、刃先交換式切削工具1は、ホルダ10と、ホルダ10に取り付けられる切削インサート20と、を備える。本実施形態では、1つの切削インサート20がホルダ10に対して着脱可能に取り付けられている。
【0024】
ホルダ10は、鋼材等の金属材料によって、例えば、円柱形状に形成されている。ホルダ10は、中心軸Oに沿って長さを有し、軸方向(Y方向)の基端側(-Y方向)が工作機械の主軸に装着される。ホルダ10は、軸方向の先端側(+Y方向)にインサートポケット(取付部)11を有する。
【0025】
図2は、第1実施形態における刃先交換式切削工具1のホルダ10の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、インサートポケット11は、ホルダ10の先端側における外周面10aを切り欠いて形成されている。インサートポケット11には、インサート取付座12が形成されている。インサート取付座12は、切削インサート20が取り付けられる台座である。
【0026】
図3は、第1実施形態におけるホルダ10のインサートポケット11の周囲を部分的に拡大して示す斜視図である。
図3に示すように、インサート取付座12は、切削インサート20を拘束可能な第1拘束面12a、第2拘束面12b、第3拘束面12cと、切削インサート20に接触しない壁面14b、14cと、これら壁面14b、14cおよび第1拘束面12aに対して凹む逃げ部15a、15b、15cと、を有する。
【0027】
第1拘束面12aは、ホルダ10の軸回り一方側を向く面である。第1拘束面12aは、切削インサート20の着座面23(
図1)を拘束する面であって、ホルダ10の中心軸回り一方側から見て略正方形状あるいは菱形状に形成されている。第1拘束面12aは、切削インサート20の着座面23と略等しい面積を有する。この第1拘束面12aの中央には、
図1に示す取付螺子6が挿入される螺子孔13が形成されている。
【0028】
第2拘束面12bおよび壁面14bは、第1拘束面12aの中心軸O側に位置する。第2拘束面12bおよび壁面14bは、第1拘束面12aに交差するとともに中心軸Oに沿う面である。第2拘束面12bおよび壁面14bは、ホルダ10の外周側を向く。第2拘束面12bは、切削インサート20の側面24を拘束する面である。壁面14bは、第2拘束面12bよりも第1拘束面12a側に位置し、第2拘束面12bと略同様の大きさを有する。
【0029】
第3拘束面12cおよび壁面14cは、第1拘束面12aの軸方向基端側(-Y方向)に位置する。第3拘束面12cおよび壁面14cは、第1拘束面12a及び第2拘束面12b(壁面14b)に交差し、軸方向先端側(+Y方向)を向く面である。壁面14cは、第3拘束面12cよりも第1拘束面12a側に位置し、第3拘束面12cとほぼ同様の大きさを有する。
第2拘束面12bおよび第3拘束面12cには、切削インサート20の側面が当接する。
【0030】
逃げ部15aは、第2拘束面12b及び壁面14bと、第3拘束面12cおよび壁面14cとが交差する隅部に形成されている。逃げ部15aは、軸方向(Y方向)に沿う断面形状が凹円弧等の凹曲線状をなすように、第2拘束面12b及び壁面14bと、第3拘束面12cおよび壁面14cとに対して、螺子孔13の径方向において、螺子孔13から遠ざかる方向へ凹むように形成されている。逃げ部15aは、第2拘束面12b及び壁面14bと、第3拘束面12cおよび壁面14cとが交差する隅部を大きく切り欠いて凹状に形成されている。逃げ部15aは、インサートポケット11内においてインサート取付座12に隣接する壁面をインサートポケット11まで切り欠いた凹部16の一部にまで形成されている。
【0031】
逃げ部15aは、軸回り一方側を向く第1拘束面12aと、外周側を向く壁面14bとが交差する隅部に形成されている。逃げ部15bは、第1拘束面12aおよび壁面14bに対して凹むように形成されている。逃げ部15bは、第2拘束面12bおよび壁面14bが延びる方向に延在する。
【0032】
逃げ部15cは、上記第1拘束面12aと、軸方向先端側を向く壁面14cとが交差する隅部に形成されている。逃げ部15cは、第1拘束面12aおよび壁面14cに対して凹むように形成されている。逃げ部15cは、第3拘束面12cおよび壁面14cが延びる方向に延在する。
【0033】
図4は、第1実施形態におけるホルダ10の流体供給流路18を示す斜視図である。
図5は、第1実施形態におけるホルダ10を第1拘束面12aに対向する側から見た図である。
図6は、第1実施形態におけるホルダ10を第2拘束面12bに対向する側から見た側面図である。
【0034】
図4、
図5及び
図6に示すように、本実施形態のホルダ10には、流体供給流路18が形成されている。
流体供給流路18は、ホルダ10の内部を貫通して形成され、インサートポケット11に連通している。流体供給流路18は、インサート取付座12に残る切り屑を除去するために、インサート取付座12に向けて気体を供給するための流路である。本実施形態では、例えば、既存の気体供給器を用いて圧縮空気を供給する。
【0035】
なお、供給する気体の種類は特に問わず、供給する気体の流速、圧力、比重、温度、粘度等は、工具の使用環境や被削材の種類などに応じて適宜設定される。また、流体供給流路18を通じて供給するのは気体だけではなく、例えば、切削油材などの液体を供給してもよい。
【0036】
流体供給流路18は、流路部18Aと複数の分岐流路部18Bとを有する。
流路部18Aは、長さ方向の一端側にホルダ10の外周面に開口する入口18aを有する。この入口18aに気体供給器が接続されて、流路部18A内に気体が供給される。入口18aは、ホルダ10の外周面10aから中心軸O側に凹むようにして凹状に形成された溝部19内に開口している。
【0037】
本実施形態の流体供給流路18は、長さ方向の他端側が複数に分岐されている。
複数の分岐流路部18Bは、流路部18Aよりも細く、長さ方向に交差する断面積が流路部18Aよりも小さい流路である。3つの分岐流路部18Bは、各々異なる方向に湾曲しながら延在し、いずれもインサートポケット11に連通する。本実施形態では、2つの分岐流路部18Bがインサート取付座12の逃げ部15aに開口している。残り1つの分岐流路部18Bは、インサートポケット11に連通する凹部16のうち逃げ部15aの近傍に開口している。
【0038】
インサート取付座12における本実施形態の逃げ部15aには、流体供給流路18の複数の出口18b1,18b2が開口している。これら2つの分岐流路部18Bの各出口18b1,18b2は、例えば、逃げ部15a内における互いの位置および開口方向がそれぞれ異なっている。各出口18b1,18b2は、第1拘束面12aに向けて開口しており、各出口18b1,18b2のそれぞれの中心線(不図示)に沿う方向から見たとき、各開口領域の少なくとも一部が第1拘束面12aと重なっていればよい。これにより、第1拘束面12a上に残留する切り屑を効率良く除去することができる。
【0039】
さらに、各出口18b1,18b2の各中心線上に第1拘束面12aが存在していることがより好ましい。すなわち、各出口18b1,18b2の各中心線と第1拘束面12aとが交差していることがより好ましい。
【0040】
出口18b1は、逃げ部15aのうち、出口18b2よりも第1拘束面12aに近い側に形成されている。出口18b1は、逃げ部15aのうち、壁面14bと壁面14cとの交差付近に位置する。
出口18b1は、第2拘束面12b側に向けて開口している。本実施形態の出口18b1は、例えば、第1拘束面12aと壁面14bとの交差部分に向けて開口している。これにより、出口18b1から、第2拘束面12b側における第1拘束面12aおよび逃げ部15bを含む領域に向かって気体を供給することが可能である。
【0041】
また、出口18b1は、例えば、第1拘束面12aの中央に形成された螺子孔13側に向けて開口していてもよい。この場合、出口18b1は、第1拘束面12aの対角線に沿う方向に向けて開口する。これにより、第1拘束面12aの略全体に向かって気体を供給することが可能である。
【0042】
出口18b2は、逃げ部15aのうち、上記出口18b1よりも第1拘束面12aから離れる側に形成されている。出口18b2は、逃げ部15aのうち、第2拘束面12bと第3拘束面12cとの交差付近に位置する。出口18b2は、第3拘束面12c側へ向けて開口している。本実施形態の出口18b2は、例えば、第1拘束面12aと壁面14cとの交差部分に向けて開口している。これにより、出口18b2から、第3拘束面12c側の第1拘束面12aおよび逃げ部15cを含む領域に向かって気体を供給することが可能である。
【0043】
出口18b3は、インサート取付座12の外側であってインサート取付座12よりも軸方向基端側外側に形成された凹部16に開口している。出口18b3は、インサートポケット11の軸方向基端側からインサート取付座12に向けて気体を供給することが可能である。出口18b3は、第1拘束面12aの外周側に向けて気体を供給することが可能である。また、出口18b3は、逃げ部15a内に形成された出口18b1,18b2よりも、第1拘束面12aから法線方向(Z方向)に離れた凹部16に形成されていることから、第1拘束面12aの周縁部に向けて気体を供給しやすい。
このように、3つの分岐流路部18Bによって気体が供給される方向はそれぞれ異なっている。
【0044】
図1に示すように、切削インサート20は、インサート中心軸方向から見た形状が、正方形状もしくは菱形状をなす。切削インサート20は、すくい面22と、すくい面22に対向する着座面23と、すくい面22と着座面23とを接続する側面24と、すくい面22と着座面23との交差稜線部に形成される切刃25と、を有する。切削インサート20は、ホルダ10の先端側に形成されたインサートポケット11内に収容され、インサート取付座12に対して着脱可能に取り付けられる。
【0045】
本実施形態の構成によれば、ホルダ10の内部に形成された流体供給流路18を利用して、ホルダ10の外部から供給される圧縮空気をインサート取付座12へ供給することによって、インサート取付座12内に滞留している切り屑をその大きさに関わらず除去することが可能である。流体供給流路18からインサート取付座12内に供給される気体は、その少なくとも一部が第1拘束面12aに向かって吐出されるため、第1拘束面12a上の切り屑を吹き飛ばして効果的に除去することができる。切り屑の排出性が高まるためメンテナンス作業に要する時間の短縮や作業負担の軽減が可能となり、効率良く切削インサート20を交換することができる。
【0046】
また、上述した流体供給流路18の出口側(インサート取付座12側)は、複数に分岐されており、各々の出口18b1,18b2,18b3からインサート取付座12内の異なる方向へ向かって気体を供給することが可能である。そのため、例えば、分岐流路部18Bの出口18b1から第1拘束面12aおよび逃げ部15bへ向かって気体が供給されることで、逃げ部15b、すなわち第1拘束面12aと壁面14bとの交差部分およびその付近に溜まった切り屑を軸方向先端側へ積極的に排出することが可能である。
【0047】
また、例えば、分岐流路部18Bの出口18b2から第1拘束面12aおよび逃げ部15cへ向かって気体が供給されることで、逃げ部15c、すなわち第1拘束面12aと壁面14cとの交差部分およびその付近に溜まった切り屑をホルダ10の径方向外側へ積極的に排出することが可能である。さらに、例えば、分岐流路部18Bの出口18b3から第1拘束面12aの周縁部へ向かって気体が供給されることで、出口18b1,18b2から供給された気体とともに第1拘束面12a上から切り屑を押し出して、ホルダ10の外部へより効率よく切り屑を除去することが可能である。
【0048】
本実施形態では、流体供給流路18の3つの出口のうち、2つの出口18b1、18b2がインサート取付座12の逃げ部15aに形成されている。逃げ部15aに少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の出口を形成することで、逃げ部15a側からホルダ10の外部へ向かって切り屑を効率よく気体を供給することが可能である。また、逃げ部15a側からホルダ10の外部へ向かって気体を供給することによって、第1拘束面12a、第2拘束面12b、第3拘束面12cが交差して三方が囲まれた逃げ部15aに切り屑が残留するのを抑制することができる。
【0049】
また、逃げ部15aに複数の出口を形成することによって、異なる方向へ向かって気体を供給することが可能である。逃げ部15a側から第1拘束面12aへ向かって複数の方向へ気体を供給することで、第1拘束面12a上に分散した切り屑を効率良く除去することができ、切り屑を短時間で効率良く排出させることができる。
【0050】
本実施形態では、第1拘束面12aに対する各出口18b1,18b2,18b3の各中心線の角度が90°以下の鋭角であり、第1拘束面12aに沿ってホルダ10の外部へと気体がスムーズに流動する。第2拘束面12bおよび壁面14bや、第3拘束面12cおよび壁面14cに向かって気体が流動するのを抑えることができるため、微小な切り屑であっても、各逃げ部15a、15b、15cやその付近の第1拘束面12a上に残留するのを防ぐことが可能である。
【0051】
このように、ホルダ10の内部に流体供給流路18を形成する構成とすることで、インサート取付座12からホルダ10の外部へ向かって気体を供給でき、切り屑の排出性を高めることができる。これにより、切削インサート20とインサート取付座12との間に切り屑が噛み込むのを防ぐことができるので、インサート取付座12に対して、切削インサート20を正しい位置に安定して取り付けることができ、切削インサート20による加工精度を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態では、気体供給器をホルダ10の外周面10aに形成された入口18aに接続するだけで、インサート取付座12の他方面へ一度に気体を供給することが可能なため、作業性が良く、切削インサート20の交換を短時間で行うことができる。
【0053】
なお、分岐流路部18Bの数は3つに限らず、2つ以下でもよいし、4つ以上でもよい。また、分岐流路部18Bを複数設ける場合、気体の供給方向も複数であることが好ましい。すなわち、同じ方向に気体を供給する分岐流路部18Bが複数あってもよい。
【0054】
また、流体供給流路18の流路部18A及び各分岐流路部18Bの経路は図示した経路に限らず適宜変更が可能である。例えば、流路部18Aの入口18aが、ホルダ10のインサートポケット11とは長さ方向反対側(-Y方向)の基端面10bに開口していてもよい。これにより、ホルダ10の軸方向基端側(-Y方向)からの作業が可能となる。また、流路経路を湾曲させることなく延在させることができるので、構造が簡単になり流路の形成が容易となる。
【0055】
また、各流路部18A、18Bにおいては、なだらかに形状が変化する経路であることが好ましい。
【0056】
また、本実施形態における流体供給流路18の入口18aおよび出口18b1,18b2,18b3の開口形状は、円形もしくは楕円形であるが、これに限られず、多角形状などに適宜変更が可能である。
【0057】
また、本実施形態では、流路部18Aの流路径(断面積)が延在方向で一定であるが、これに限られず、例えば、入口18a1,18b2,18b3側へ行くにしたがって漸次拡径した形状であってもよい。同じく、分岐流路部18Bにおいて流路径が延在方向で一定であるが、これに限られず、例えば、出口18b側へ行くにしたがって漸次縮径もしくは拡径した形状であってもよい。また、3つの分岐流路部18Bはいずれも同じ流路径を有するが、これに限られず、少なくとも1つの分岐流路部18Bが他の分岐流路部18Bと異なっていてもよいし、3つの分岐流路部18Bの流路径が互いに異なっていてもよい。流路部の延在方向において流路径を異ならせる場合には、なだらかに形状変化させることが好ましい。
【0058】
(変形例1)
次に、変形例1におけるホルダ40の構成について述べる。
図7は、変形例1におけるホルダ40の構成を示す斜視図である。
図7に示すように、本変形例のホルダ40は流体供給流路48を有する。
流体供給流路48は、出口側が2つに分岐した流路である。流体供給流路48は、第1流路部48Aと、第1流路部48Aの先端側に接続される第2流路部48Bと、第2流路部48Bの先端側に接続される2つの分岐流路部48Cと、を有する。流体供給流路48の入口48aはホルダ40の外周部40aに開口し、2つの出口48b1、48b2は逃げ部15aに開口する。
【0059】
本変形例において、例えば、入口48aおよび出口48b1,48b2は、それぞれ円形状をなす。
第1流路部48Aは、ホルダ40の径方向に沿って延在する。第1流路部48Aは、入口48aの形状に倣って、流路断面が円形状をなす流路である。
第2流路部48Bは、ホルダ40の軸方向(Y方向)に沿って延在する。第2流路部48Bは、流路断面が矩形状をなす平たい形状の流路である。
【0060】
2つの分岐流路部48Cは、第2流路部48Bの先端側から異なる方向に分岐して、互いに異なる経路を描くように逃げ部15aまで延在している。各分岐流路部48Cは、出口48b1,48b2の形状に倣って、流路断面が円形状をなす流路である。また、各分岐流路部48Cは、出口48b1,48b2側の断面形状と、第2流路部48B側の断面形状とが異なっていてもよい。この場合、例えば、出口48b1,48b2の形状が円形状となるように、延在方向に沿って断面形状が漸次変化した流路であってもよい。
【0061】
出口48b1は、インサート取付座12の第1拘束面12aと第2拘束面12b及び壁面14bとの交差部分に向けて開口し、同方向へ気体を供給する。
出口48b2は、インサート取付座12の第1拘束面12aと第3拘束面12c及び壁面14cとの交差部分に向けて開口し、同方向へ気体を供給する。
【0062】
本変形例において、逃げ部15aに開口する出口48b1,48b2は、第1拘束面12aからZ方向への高さ位置が略同じであるがこれに限られない。例えば、上記実施形態のように、逃げ部15aに対して、第1拘束面12aからの高さ(Z方向)が互いに異なる位置に形成されていてもよい。これにより、各出口48b1,48b2から供給される気体が干渉して乱流が生じるのを抑制でき、各出口48b1,48b2からそれぞれ異なる方向へ気体を互いに干渉させることなく供給することが可能である。
【0063】
先の実施形態では3つの出口を有していたが、本変形例のように少なくとも2つの出口を有する構成であってもよい。第1拘束面12aと、インサート取付座12の側壁を構成する第2拘束面12bおよび第3拘束面12cとがそれぞれ交差する各隅部に向かって、2つの出口48b1,48b2から気体を供給する構成とすることで、インサート取付座12の隅部に溜まりやすい切り屑を効率良く排出することが可能である。
【0064】
(変形例2)
次に、変形例2におけるホルダ50の構成について述べる。
図8は、変形例2におけるのホルダ50の構成を示す斜視図である。
図8に示すように、本変形例のホルダ50は、流体供給流路58を有する。
流体供給流路58は、出口側が分岐しない流路である。流体供給流路58は、第1流路部58Aと、第1流路部58Aの先端側に接続される第2流路部58Bと、を有する。
【0065】
第1流路部58Aの入口58aはホルダ50の外周面50aに開口し、出口58bは逃げ部15aに開口する。出口58bは、第1拘束面12aに向かって開口する。出口18b2は、第2拘束面12bおよび第3拘束面12cのうちの少なくとも一方に向けて開口していることが好ましい。ここでは、例えば、第2拘束面12b側へ向けて開口している。本変形例の出口58bの形状は円形状ではない。
図8に示すように、第2流路部58Bの内壁面の一部が、出口58bを通じて第1拘束面12aと面一に形成されているため、出口58bは円形状以外の形状をなす。
【0066】
逃げ部15aは、出口58bの両側、あるいは片側(第2拘束面12b側)において第
1拘束面12aと接続されているが、逃げ部15aの第1拘束面12a側全体に出口58bが形成されていてもよい。すなわち、逃げ部15aと第1拘束面12aとの間に出口58bが存在していてもよい。
【0067】
本変形例の構成によれば、出口58bの開口面積を大きくすることが可能である。そのため、出口58bが向く方向を中心に、逃げ部15a側からインサート取付座12の第1拘束面12aの広範囲に満遍なく気体を供給することが可能である。
【0068】
また、本変形例の出口58bは、第2拘束面12bに向けて開口しているので、第2拘束面12b側へ向かって集中的に気体を供給することが可能である。出口58bの開口方向は、第2拘束面b側に限られず、第3拘束面12c側であってもよく、切り屑が溜まりやすい領域に向けることによって切り屑の排出性を高めることができる。
【0069】
なお、流体供給流路58の出口58bの形状は、上記各実施形態と同様に円形状であってもよい。
【0070】
図9は、本発明に係る流体供給流路を適用可能なホルダの構成を示す斜視図である。
また、
図9に示すホルダ60は、第1実施形態とは異なる形状の切削インサートが取り付けられる。ホルダ60に適用される切削インサート(不図示)は、インサート中心軸に沿う方向から見た形状が略三角形状をなす。
ホルダ60は、軸方向先端側(+Y方向)のインサートポケット(取付部)61に、略三角形状をなす上記切削インサートの形状に合わせて形成されたインサート取付座62を有する。
【0071】
インサート取付座62は、4つの拘束面(第1拘束面62a、第2拘束面62b、第3拘束面62c、第4拘束面62d)と、3つの逃げ面63b、63c、63dと、少なくとも2つの逃げ部64a、64bと、を有する。4つの拘束面のうち、切削インサートの側面を拘束する3つの第2拘束面62b、第3拘束面62c、第4拘束面62dは、ホルダ70の中心軸に対していずれも所定の角度で交差している。
【0072】
インサート取付座62は、ホルダ60の中心軸Oの軸回り一方側から見た形状が略三角形状をなす第1拘束面62aを有する。第1拘束面62aは、切削インサートの着座面に当接して拘束する面である。
第2拘束面62b及び第3拘束面62cは、切削インサートの3つの側面のうちの少なくとも1つの側面にそれぞれ当接して拘束する面である。第4拘束面62dは、切削インサートの残り2つの側面のうちの一方の側面に当接して拘束する。インサート取付座62では、切削インサートを4方向から拘束することが可能である。
【0073】
2つの逃げ部64a、64bのうち、一方の逃げ部64aは、第2拘束面62bおよび逃げ面63bと、第3拘束面62cおよび逃げ面63cとの間に形成され、他方の逃げ部64bは、第3拘束面62cおよび逃げ面63cと、第4拘束面62dおよび逃げ面63dと、の間に形成されている。
このようなインサート取付座62を有するホルダ60に対して、本発明に係る上記流体供給流路を形成することが可能である。
【0074】
ホルダ60に適用可能な流体供給流路の形状は、上述した第1実施形態、変形例1、2のうちの何れであってもよい。また、流体供給流路の出口は、逃げ部64a、64bのうちのいずれか一方または両方に形成されることが好ましい。凹状に凹んだ逃げ部64a、64bから第1拘束面62a上へ向かって気体を供給することによって、上記実施形態と同様に、インサート取付座62内に滞留した切り屑を効果的に除去することが可能である。
【0075】
前述の実施形態では、ターニング加工に用いられる刃先交換式バイトなどの刃先交換式旋削工具として述べたが、ミーニング加工に用いられる工具であってもよい。
【0076】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の刃先交換式切削工具2について述べる。
図10は、第2実施形態の刃先交換式切削工具2の構成を示す斜視図である。
図11は、第2実施形態の刃先交換式切削工具におけるホルダの構成を示す斜視図である。
【0077】
図10および
図11に示すように、本実施形態の刃先交換式切削工具2は、ホルダ70と、複数の切削インサート80と、を備える。本実施形態では、2つの切削インサート80を備える構成となっているが、3つ以上の切削インサート80を備える構成であってもよい。刃先交換式切削工具2は、切削インサート80が取り付けられたホルダ70が回転軸COを中心として、回転方向Tに回転することで被削材に対して加工を行う。
【0078】
ホルダ70は、軸方向(Y方向)に延びる円筒形状をなし、回転軸COの軸回りに回転可能である。切削インサート80は、ホルダ70の先端に形成された2つのインサートポケット(取付部)71A,71B内の各インサート取付座72にそれぞれ取り付けられる。
【0079】
ホルダ70には、インサートポケット71に向けて気体を供給することが可能な流体供給流路78が形成されている。ホルダ70の流体供給流路78は、2つのインサートポケット71(インサート取付座72)を有することから、それぞれに気体を供給可能な流路形状とされている。
【0080】
例えば、2つのインサートポケット71に個別に対応するように、ホルダ70内に2つの流体供給流路78を形成してもよい。あるいは、2つのインサートポケット71に連通する1つの流体供給流路78を形成してもよい。2つのインサートポケット71に連通する1つの流体供給流路78を形成することによって、一度に2つのインサートポケット71内の切り屑を除去することが可能である。
【0081】
図11に示す流体供給流路78の形状は一例であって適宜変更が可能である。
ここでは、
図11を用いて、ホルダ70に適用可能な流体供給流路78の形状例について説明する。
図11に示すホルダ70は、例えば、2つのインサートポケット71に連通する1つの流体供給流路78を有している。以下の説明では、流体供給流路78の全体のうち、一方のインサートポケット(取付部)71Aに連通する一部の流路構成(後述の流路78A)について詳しく説明し、他方のインサートポケット(取付部)71Bに連通する流路構成(後述の流路78B)については説明を省略する。
【0082】
本実施形態において、ホルダ70のインサートポケット71内に形成されたインサート取付座72は、3つの(第1拘束面72a、第2拘束面72bおよび第3拘束面72c)と、2つの(第2逃げ面73bおよび第3逃げ面73c)と、上記第2拘束面72bと第3拘束面72cとの交差付近の隅部に形成された逃げ部75と、を有する。
【0083】
流体供給流路78は、2つのインサートポケット71へ気体を同時に供給可能な構成となっている。 流体供給流路78は、一方のインサートポケット71に連通する流路78Aと、他方のインサートポケット71に連通する流路78Bと、これら流路78A,78Bが接続する共通流路78Cと、を有する。
図11においては、一方のインサートポケット71に連通する流路78Aのみ一点鎖線で示し、他方のインサートポケット71に連通する流路78Bは図示を省略し符号のみで示している。
本実施形態では、共通流路78Cによって、上記一対の流路78A,78Bの入口が共通した構成なっている。すなわち、流体供給流路78の入口78aは1つであって、この入口78aに、共通流路78Cを介して流路78A及び流路78Bの双方が連通している。これにより、入口78aから供給された気体を各流路78A,78Bを通じて2つのインサートポケット71へ同時に供給することが可能である。
【0084】
流体供給流路78の具体的な構成について説明する。
共通流路78Cは、一端側が入口78aに接続されており、径方向に沿って延びている。共通流路78Cの他端側は2つの系統(流路78A,78B)に分かれている。ここでは、一方の系統(流路78A)を例に述べる。
流路78Aは、一対の流路77を有している。一対の流路77は、基端側が共通流路78Cの他端側に連通し、先端側が互いに異なる方向に延びて逃げ部75に形成された一対の出口78b1,78b2に接続されている。逃げ部75に開口する各出口78b1,78b2は、いずれも第1拘束面72aに向かって形成されている。一方の出口78b1は、例えば、第1拘束面72aのうち第3拘束面72c側に向かって形成されている。他方の出口78b2は、例えば、第1拘束面72aのうち第2拘束面72b側に向かって形成されている。
【0085】
これにより、本実施形態においても、インサート取付座72の隅部に位置する逃げ部75に流体供給流路78の2つの出口78b1,78b2を形成した構成とし、これら2つの出口78b1,78b2から第1拘束面72aに向かって異なる方向から気体を供給することによって、第1拘束面72a上から切り屑を効率良く除去することが可能である。
【0086】
また、本実施形態の流体供給流路78は、一方のインサートポケット71Aに連通する流路78A(
図11中の一点鎖線で示す流路77,77を有する)と、他方のインサートポケット71Bに連通する流路78B(
図11では図示を省略した流路77,77を有する)と、を有した形状となっているため、入口78aから供給された圧縮空気が、2つの流路78A,78Bを通じて各インサート取付座72に供給される。このため、一度の作業で複数のインサート取付座72から切り屑を除去することができるため、切り屑の排出性が高く、作業時間を短縮することが可能である。
【0087】
なお、本実施形態では、2つのインサート取付座72に対して1つの流体供給流路78を備え、2つのインサート取付座72に対して、一度の作業で同時に気体を供給可能な流路構成となっているが、この構成に限らない。例えば、インサート取付座72の数に応じて流体供給流路78を形成し、インサート取付座72と流体供給流路78とが1対1の関係をなす構成であってもよい。インサート取付座72の数に応じて流体供給流路78の経路(流路構成)を適宜変更することが好ましい。
【0088】
なお、本実施形態では、各インサート取付座72に対して、2つずつ出口78b1,78b2を形成したが、出口の数は適宜変更が可能である。各インサート取付座72に対して、流体供給流路78の出口が1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
ホルダ70に設けられるインサート取付座72の数などに応じて、流体供給流路78の形状も適宜変更が可能である。
【0089】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0090】
例えば、上記各実施形態および各変形例では、流体供給流路の出口を、主に逃げ部に形成した構成について述べたが、逃げ部以外に形成してもよい。流体供給流路の出口が、例えば、切削インサートの着座面や側面に対向する各拘束面や各逃げ面のうちの少なくともいずれか1つに形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の刃先交換式切削工具によれば、ホルダ(インサート取付座)内に残留した切り屑の排出性がよい。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0092】
1,2…刃先交換式切削工具
10,40,50,60,70…ホルダ
10a,50a…ホルダの外周面
10b…基端面
11、61,71,71A,71B…インサートポケット(取付部)
12,62,72…インサート取付座
12a…第1拘束面
12b…第2拘束面
12c…第3拘束面
15a,75…逃げ部
15b,15c,64a,64b…逃げ部
18,48,58,78…流体供給流路
18a,48a,58a,78a…入口
18b1,18b2,18b3,48b1,48b2,58b,78b1,78b2…出口
20,80…切削インサート
23…着座面
24…側面
62a,72a…第1拘束面
62b,72b…第2拘束面
62c,72c…第3拘束面
77,78A,78B…流路