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特開2023-14849静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014849
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20230124BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20230124BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20230124BHJP
   G03G 9/107 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/08 381
G03G9/087 331
G03G9/097 375
G03G9/097 374
G03G9/097 344
G03G9/107
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119029
(22)【出願日】2021-07-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】504005035
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野上 修
(72)【発明者】
【氏名】中尾 桃子
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA03
2H500AA07
2H500AA08
2H500AA09
2H500BA04
2H500BA05
2H500BA14
2H500BA15
2H500BA30
2H500CA06
2H500CA16
2H500CA30
2H500CB05
2H500CB12
2H500EA13C
2H500EA32C
2H500EA39D
2H500EA42C
2H500EA52A
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】低温定着性を向上させ、また耐オフセット性に優れた静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
【解決手段】結着樹脂と、着色剤と、荷電制御剤と、ワックスと、ジメチルポリシロキサンと、が混合し含有する静電荷像現像用トナーを含む。結着樹脂100重量部に対し、ワックスが1重量部以上13重量部以下含有され、ジメチルポリシロキサンが0.5重量部以上5重量部未満含有される。さらに、外添剤として、アモルファスシリカおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と、着色剤と、ワックスと、内添剤としてジメチルポリシロキサンと、を含有する静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記結着樹脂が100重量部に対し、前記ワックスが1重量部以上13重量部以下含有され、前記ジメチルポリシロキサンが0.5重量部以上5重量部未満含有される、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記ワックスが1重量部に対して、前記ジメチルポリシロキサンが0.1重量部以上1.0重量部以下含有される、請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
さらに、外添剤として、アモルファスシリカおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記ワックスが、エステル系ワックスおよびフィッシャートロプシュワックスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記ワックスの融点が、65℃以上95℃以下であり、前記ワックスの酸価が0.1mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂である、請求項1から6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
結着樹脂と、着色剤と、荷電制御剤と、ワックスと、ジメチルポリシロキサンと、を混錬して混錬物を得る混錬工程と、
前記混錬物を粉砕し平均粒径5μm以上10μm以下の母トナーを得る粉砕工程と、
前記母トナーに、アモルファスシリカまたは酸化チタンを添加する前処理工程と、
前記母トナーを熱処理する熱処理工程と、
を含む静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
結着樹脂と、着色剤と、ワックスと、ジメチルポリシロキサンと、を混錬して混錬物を得る混錬工程と、
前記混錬物を粉砕し平均粒径5μm以上10μm以下の母トナーを得る粉砕工程と、
得られた熱処理母トナーに外添剤として、アモルファスシリカおよび酸化チタンを添加する外添工程と、
前記外添工程で得られたトナーに、磁性粉末を混合するキャリア混合工程と、を含む静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法に関し、例えば、電子写真方式の画像形成方法において使用される静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式に使用される静電荷像現像用トナーは、主に結着樹脂、着色剤および電荷制御剤を含有し、さらに必要に応じて離型剤、無機微粒子などの添加剤を含有する。この各成分は予備混合され、熱溶融によって加熱混練された後、微粉砕され、分級されて母トナーが製造される。この母トナーに外添剤が外添されてトナーが製造される。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2003-98757号公報)には、トナーにおいて流動性、耐熱性、耐久性、保存安定性が良好でトナーによるキャリアスペントによる現像剤寿命の低下及びトナーによる感光体フィルミングによる感光体寿命の低下が起こりにくく、特に定着に要するエネルギーが小さく、熱ローラ定着方式を採用した場合に熱ローラの温度と圧力を低下させることが可能で、オフセット現象が発生し難く、高い剥離強度と擦り強度を持つ現像剤及び電子写真装置が提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の現像剤及び電子写真装置は、少なくとも定着用樹脂、着色剤、及びワックスを含む静電荷像現像用トナーにおいて、該トナーの構成成分として少なくとも数平均分子量が1000以下のワックスを含有し、キャリアは嵩比重が2.0g/cm以下であり、キャリアの総量に対して磁性材料の含有量が30~99wt%である樹脂キャリアからなる電子写真現像剤を用いるものである。
【0005】
特許文献2(特開2000-10337号公報)には、定着性、耐オフセット性、貯蔵安定性を満足でき、廃トナーリサイクルをしても高性能な現像性を維持でき、感光体、現像部材等へのフィルミングが抑えられ、また転写ローラを用いた転写システムを具備する電子写真装置において、転写の中抜けが抑えられ、高効率の転写性を有することができる。また高濃度、低地かぶりで感光体へのフィルミングの発生を防ぐことを可能とするトナーが提案されている。
【0006】
特許文献2に記載のトナーは、特定の融点を有するエステル系ワックスと、疎水性シリカ微粉末と、磁性体微粉末からなり、さらに熱風により表面改質処理を施すトナーである。
【0007】
特許文献3(特開2017-151428号公報)には、低温定着性、耐ブロッキング性を満足しつつ、高温高湿環境下であっても、十分な帯電性を発揮できるトナーが提案されている。
【0008】
特許文献3に記載のトナーは、結着樹脂、着色剤、炭化水素ワックス及びワックス分散剤を含む樹脂組成物を溶融混練して得られた混練物を冷却し、得られた冷却物を粉砕して得られた樹脂粒子を熱処理する工程を経て製造されたトナー粒子を有するトナーであって、ワックス分散剤が、ポリプロピレンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体であり、スチレンアクリル系ポリマーが、シクロアルキル(メタ)アクリレート由来のモノマーユニットを有する重合体であり、ポリプロピレンの融点(℃)をMp(p)とし、炭化水素ワックスの融点(℃)をMp(w)としたときに特定の関係を満足するものである。
【0009】
特許文献4(特開2017-54001号公報)には、結晶性材料などの可塑剤を用い、熱球形化を行った場合でも、転写性が良いトナーが提案されている。
【0010】
特許文献4に記載のトナーは、結着樹脂、炭化水素系ワックス、ビニル系樹脂成分と炭化水素化合物が反応した構造を有する重合体及び疎水化処理された無機微粒子を含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕し、得られた粉砕物を熱処理することにより得られるトナー粒子を有するトナーにおいて、該結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含有し、該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性ポリエステル樹脂100.0質量部に対し、1.0質量部以上15.0質量部以下であり、該トナーの、重量平均粒子径(D4)が3.0μm以上10.0μm以下であり、該トナーは表面から0.3μm以上内部の領域に、該無機微粒子を有するものである。
【0011】
特許文献5(特開2017-3901号公報)には、結晶性材料のような可塑剤を用いたトナーにおいても、低温定着性、帯電安定性を同時に満足することができるトナーが提案されている。
【0012】
特許文献5に記載のトナーは、結着樹脂、無機微粒子A及び無機微粒子Bを含有するトナー組成物の溶融混練法により得られるトナー粒子を含むトナーにおいて、該結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含有し、該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、特定の範囲であり、該トナー粒子のD4が3.0μm以上10.0μm以下であり、該トナー粒子は、トナー粒子内部に該無機微粒子A及びBを有し、該トナー粒子は、該非晶性ポリエステル100質量部に対して、特定量の該無機微粒子A及びBを含有し、該無機微粒子AのD1は、80nm以上300nm以下であり、該無機微粒子BのD1は、該無機微粒子AのD1の0.05倍以上0.40倍以下であるトナーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003-98757号公報
【特許文献2】特開2000-10337号公報
【特許文献3】特開2017-151428号公報
【特許文献4】特開2017-54001号公報
【特許文献5】特開2017-3901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一成分現像方式では、現像剤は、トナーのみで構成され、二成分現像方式では、現像剤はトナーと磁性粒子からなるフェライトキャリアとから構成される。
そして、一成分現像方式は、トナーを金属ブレードにより接触帯電させ、現像ローラ上にトナー層を形成し、感光体から紙に転写するシステムである。
二成分現像方式は、フェライトキャリアとトナーとを摩擦帯電させ、マグネットローラから感光体へトナーを移行させ、感光体上のトナーを紙に転写するシステムである。
【0015】
トナーを用いた電子写真においては、定着工程では、トナーが定着ロールで加熱されると、結着樹脂が軟化し、樹脂内に添加されたワックスは熱により融解されて液状となる。
定着ロールから圧力が加わると液状となったワックスは結着樹脂から染み出して定着ロール表面に移行し、ワックスの離型力によってトナーが定着ロールに付着するのを防止する。また液状となったワックスは、結着樹脂を軟化させてトナーの印刷媒体への定着を補助する役割も担う。
従来、トナーとして高軟化点の結着樹脂および高融点のワックスを使用して高温による定着を行っていた。
しかしながら、近年は、省エネルギー化の観点から低温での定着が求められている。そのため、低温で定着可能な低軟化点の結着樹脂および低融点のワックスの使用が提案されている。
【0016】
しかしながら、トナーに含まれる結着樹脂とワックスとは相溶性が悪いため、結着樹脂とワックスとを含む樹脂組成物に混錬シェアを大きくかけてもワックスを分散させることは難しい。そのため、ワックスの一部がトナーの表面に露出し、トナーが金属ブレードへ融着するという問題点があった。さらに、感光体へのフィルミング、さらにキャリア汚染が発生するという問題点があった。
加えて、近年、トナーの低温定着化、高精細化および印刷速度の高速化が進み、トナー処方においては、ワックスを多量に添加することになるため、上記問題点がさらに顕著な問題となりつつある。
【0017】
また、トナーの転写効率、画像濃度等の物性を向上させるためには、粉砕トナーを球形化することも必要である。しかし、粉砕トナーを球形化する工程では、高温(200℃から400℃まで)でトナーを加熱するため、ワックスがトナー表面に露出し易く、上記問題が一層大きくなる。
【0018】
このような問題を解決するため、特許文献1および特許文献2に記載のトナーでは特定のワックスを使用し、特許文献3では特定の結着樹脂およびワックス分散剤を使用し、特許文献4および特許文献5では特定の結着樹脂を使用している。
しかし、従来の方法では、低温定着性を向上させると共に、耐オフセット性に優れ、また感光体へのフィルミング、キャリア汚染の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーを実現することはできていない。
【0019】
本発明者は、ジメチルポリシロキサンを添加することにより、ジメチルポリシロキサンがワックスと相互作用し、上記問題を解決できることを見出し本発明に到達したものである。
本発明の目的は、低温定着性を向上させつつ、トナーからのワックス染み出しによる弊害を防止する静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、トナーの合一化を抑制する静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、低温定着性を向上させ、感光体へのフィルミング、キャリア汚染など染み出しに伴う印刷不良を抑制した静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、トナー濃度が低くキャリア汚染を防止することができる静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、画像濃度が高く、画像均一性に優れた静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
(1)
一局面に従う静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と、着色剤と、荷電制御剤と、ワックスと、内添剤としてジメチルポリシロキサンと、を含有するものである。
【0021】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と、着色剤と、荷電制御剤と、を含有する静電荷像現像用トナーであって、内添剤としてジメチルポリシロキサンを含有するため、ワックスによる弊害を抑制したトナーとすることができる。
すなわち、低温定着を実現するためには、トナーに融点が低いワックスを多く含ませる必要があるが、従来のように結着樹脂とワックスとを混錬粉砕してトナーを得ると、相溶性の悪いワックスがトナーの表面に表出しやすくなり、ワックスの染み出しに伴う印刷不良が発生していた。特に、球形トナーにおいては、熱処理工程においてトナーの表面近傍にワックスが表出しやすくなるため、ワックスの染み出しに伴う印刷不良が発生しやすい。
一方で、本発明で用いたジメチルポリシロキサンは、ワックスに比べ、潤滑性、離型性、分散性に優れる。そして、ジメチルポリシロキサンとワックスとが内添剤として混合して含有されているため、ワックスと結着樹脂との相溶が向上し、加熱されてもワックスの染み出しが好ましく防止されるので、高い定着率と広範囲なオフセット領域とを両立した静電荷像現像用トナーとすることができる。また、定着する際のヒートローラ(熱ローラー)からの離型性を良くして耐オフセット性を高めることができる。本発明のジメチルポリシロキサンを内添した場合は、ワックスの酸価によらず露出が抑えられるものと考えられる。
【0022】
さらに、ジメチルポリシロキサンの添加によりワックスの分散性を向上させることができるため、現像中にワックスおよび/またはジメチルポリシロキサンがトナーから遊離して感光体に付着(フィルミング)することを抑止することができる。特に、球形化処理をした場合もワックスの染み出しが防止されるので、合一粒子の発生を抑えられ、トナーの粒径増加を好ましく防止することができる。
また、二成分系印刷機の場合には、ワックス露出によるキャリアスペントを防止し、ワックスを多く含む粉砕トナーであってもトナー濃度が低くキャリア汚染を防止することができる。従って、長期に渡って、良質の画像を安定に形成させることができる。
【0023】
特に、球形化処理を行った球形トナーにおいては、熱処理を行う際にワックスが表面に表出しやすくなるため、ワックスの染み出しによる弊害が大きな問題となっていた。しかしながら、本発明の静電荷像現像用トナーによれば、ワックスの染み出しによる弊害を好ましく抑制することができる。
また、球形化処理を行わない、粉砕トナーにおいても、本発明の静電荷像現像用トナーによれば、結着樹脂とワックスとを好ましく相溶することができるため、ワックスの染み出しによる弊害を抑制することができる。また、同様に本発明は、負帯電トナーのほか、正帯電トナーにも適用することができ、非磁性トナーのほか磁性トナーにも適用することができる。本発明により、ワックスを多く含むトナーであっても画像濃度が高く画像均一性に優れたトナーとすることができる。
【0024】
(2)
第2の発明にかかる静電荷像現像用トナーは、一局面に従う静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂100重量部に対し、ワックスが1重量部以上13重量部以下含有され、ジメチルポリシロキサンが0.5重量部以上5重量部未満含有されもよい。
【0025】
結着樹脂、ワックスおよびジメチルポリシロキサンの配合割合が、上記割合の場合、ワックスがトナーに比較的均一に分散して、ワックスがトナー表面に染み出すことが抑えられる。
特にジメチルポリシロキサンの含有量が上記範囲にあることで、耐オフセット性に優れる静電荷像現像用トナーとすることができる。
【0026】
(3)
第3の発明にかかる静電荷像現像用トナーは、一局面または第2の発明にかかる静電荷像現像用トナーにおいて、ワックスが1重量部に対して、ジメチルポリシロキサンが0.1重量部以上1.0重量部以下含有されてもよい。
【0027】
トナー中のワックスとジメチルポリシロキサンとの配合割合が、このような割合であると、ワックスがトナー中に分散し易く、ワックスがトナー表面に染み出すことが抑えられる。
【0028】
(4)
第4の発明にかかる静電荷像現像用トナーは、一局面から第3の発明のいずれかにかかる静電荷像現像用トナーにおいて、さらに、外添剤として、アモルファスシリカおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
【0029】
これにより、トナーの分散性、流動性および帯電性が向上する。特に外添剤としてアモルファスシリカ粒子を用いることが好ましく、トナー100重量部に対し0.1重量部以上5重量部以下含有することにより、トナーの分散性、流動性、帯電性を好ましく向上させることができる。
これまで、小粒径の外添剤を用いると、外添剤の疎水化成分がトナー中のワックス成分と親和性を有し、また添加量の増加に伴いトナー表面の外添被覆率が高くなるため、定着像表面へのワックス成分染み出しが発生するという問題があった。
しかしながら、本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー表面へのワックス成分の染み出しが防止されるため、そのような不具合が抑えられるため、分散性、流動性、帯電性および定着性に優れたトナーとすることができる。
【0030】
(5)
第5の発明にかかる静電荷像現像用トナーは、一局面から第4の発明のいずれかにかかる静電荷像現像用トナーにおいて、ワックスが、エステル系ワックス、およびフィッシャートロプシュワックスからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0031】
これにより、ワックスと結着樹脂との相溶がさらに向上するため、ワックスの染み出しが防止され、より高い定着率と広範囲なオフセット領域とフィルミングの防止とを両立した静電荷像現像用トナーとすることができる。
【0032】
(6)
第6の発明にかかる静電荷像現像用トナーは、一局面から第5の発明のいずれかにかかる静電荷像現像用トナーにおいて、ワックスの融点が、65℃以上95℃以下であり、ワックスの酸価が0.1mgKOH/g以上25mgKOH/g以下であってもよい。
【0033】
酸価が0.1mgKOH/g以上の場合、ワックスの凝集を防止でき、酸価が25mgKOH/g以下の場合、作業効率、吸湿性、印刷画像向上の観点で、より好ましい。これは、ワックスの酸価が高いことによって、トナー表面に存在するカルボン酸等の酸性基がポリエステル樹脂の酸性基と水素結合等をすることにより、ワックスの露出が抑えられる可能性が推測される。
なお、酸価の測定法はJIS K0070-1992に準ずる。
【0034】
(7)
第7の発明にかかる静電荷像現像用トナーは、一局面から第6の発明のいずれかにかかる静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂がポリエステル系樹脂であってもよい。
【0035】
これにより、ワックスと結着樹脂との相溶がさらに向上するため、ワックスの染み出しが防止され、より高い定着率と広範囲なオフセット領域とを両立した静電荷像現像用トナーとすることができる。
【0036】
他の局面に係る静電荷像現像用トナーの製造方法は、結着樹脂と、着色剤と、荷電制御剤と、ワックスと、ジメチルポリシロキサンと、を混錬して混錬物を得る混錬工程と、混錬物を粉砕し平均粒径5μm以上10μm以下の母トナーを得る工程と、母トナーに、アモルファスシリカまたは酸化チタンを添加する前処理工程と、母トナーを熱処理する熱処理工程と、を含むものである。
【0037】
これにより、ワックスと結着樹脂との相溶が向上し、ワックスの染み出しが防止されることで、高い定着率と広範囲なオフセット領域とを両立した静電荷像現像用トナーとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】熱処理された球形トナーのSEM写真の一例である。
図2】金属ブレードに融着したワックスの一例である。
図3】感光体にフィルミングしたワックスの一例である。
図4】実施例1のトナーのSEM写真の一例である。
図5】比較例1のトナーのSEM写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[本実施の形態]
本実施の形態の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と、着色剤と、荷電制御剤と、ワックスと、ジメチルポリシロキサンと、を含有する。
本実施の形態では、後述の熱処理を行って表面を球形に処理したトナーを球形トナーといい、粉砕後に熱処理(球形化処理)を行っていないトナーを粉砕トナーといい、磁性体を含有した粉砕トナーのことを磁性トナーという場合がある。
【0040】
(結着樹脂)
本発明に使用される結着樹脂としては、従来公知の樹脂が全て使用可能である。
例えば、スチレン、ポリ-α-スチルスチレン、スチレン-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジェン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂、スチレンアクリル樹脂等が挙げられるが、これらの樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂と併用してもよく、単独で使用してもよい。また、二種類以上併用してもよい。
【0041】
これらの樹脂の中でも、結着樹脂としてポリエステル樹脂またはスチレンアクリル樹脂を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂は、一般的に他の樹脂に比べ、耐熱保存性を維持した状態で、かつ低温定着が可能であるため、本発明には好適な結着樹脂となる。
【0042】
ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られる。
使用されるアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1、4-ビス(ヒドロキシメタ)シクロヘキサン、ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他、二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
【0043】
カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1、2、4-ベンゼントリカルボン酸、1、2、5-ベンゼントリカルボン酸、1、2、4-シクロヘキサントリカルボン酸、1、2、4-ナフタレントリカルボン酸、1、2、5-ヘキサントリカルボン酸、1、3-ジカルボキシル-2-メチレンカルボキシプロパン、1、2、7、8-オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は30℃以上70℃以下が好ましく、40℃以上60℃以下がさらに好ましい。
【0044】
(着色剤)
本発明に使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として既知の顔料及び染料の全てを使用することができる。
具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、オイルブラック、アゾオイルブラック等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0045】
着色剤の使用量は、結着樹脂が、100重量部に対し、1重量部以上10重量部以下が好ましく、3重量部以上7重量部以下がさらに好ましい。
【0046】
本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合は、着色剤として、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトなどの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの金属とアルミニウム、銅、マグネシウム、スズ、亜鉛、ベリリウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びそれらの混合物など、磁性体を用いることができる。また、さらに他の着色剤を追加することができる。
【0047】
(荷電制御剤)
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、極性を制御するために、荷電制御剤を配合することができる。特に、一成分現像方式で用いられるトナーは、荷電制御剤によって帯電性を制御することが好ましい。
荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、アミノ基含有のポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸の錯化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の使用量は、一成分現像方式の場合トナーが、100重量部に対し、0.5重量部以上10重量部以下が好ましく、1重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。
【0048】
(ワックス)
本発明のトナーにおいては、定着時の定着部材からの離型性の向上および低温定着性の向上の点から、ワックスをトナーに含有させる。
本発明で使用されるワックスとしては、例えば、ポリエチレン等の低分子量ポリオレフィン類;ステアリン酸ステアリル等のエステルワックス類;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エステルワックス等の鉱物・石油系ワックス;およびそれらの変性物などが挙げられる。これらのワックスは、単独または混合して使用することができる。
特にエステルワックス、フィッシャートロプシュワックスである脂肪族炭化水素系が好ましく用いられる。フィッシャートロプシュワックスは変性フィッシャートロプシュワックスであってもよい。ワックスは、その融点が110℃以下のものが好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましく、65℃以上95℃以下が特に好ましい。
【0049】
また、本発明にかかるワックスの酸価は、0.05mgKOH/g以上30mgKOH/g以下が好ましく、0.1mgKOH/g以上25mgKOH/g以下がさらに好ましい。これにより、良好な印刷画像を得ることができる。なお、酸価の測定法はJIS K0070-1992に準ずる。
【0050】
ワックスの含有量は、結着樹脂が100重量部に対して、1重量部以上13重量部以下であることが好ましく、1.2重量部以上10重量部以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1.5重量部以上8重量部以下である。
【0051】
(ジメチルポリシロキサン)
本発明では、結着樹脂およびワックスにジメチルポリシキロサンを内添して混合することによって、ワックスの染み出しを好ましく防止することができる。したがって、トナー粒子の合一が抑えられ、トナーの粒径増加を好ましく防止することができる。
ジメチルポリシロキサンの含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上5重量部未満とすることが好ましく、より好ましくは1重量部以上4重量部以下であり、さらに好ましくは1.5重量部以上3.0重量部以下である。これにより、印刷される画像を高品質にすることができる。
【0052】
ジメチルポリシロキサンの一般化学構造式は、下記式1の通りである。
(式1)
本実施形態で使用されるジメチルポリシロキサンは、OH基またはアミノ基等に変性されたジメチルポリシロキサンであってもよく、アルカリ性であってもよい。これによって、エステルワックスまたはフィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスと好ましく相溶させることができ、フィルミング等の発生を好ましく防止できると考えられる。
【0053】
上記のとおり、ジメチルポリシロキサンをトナーに添加することにより、ワックスの分散性を向上させることができる。すなわち、ワックスとジメチルポリシロキサンとの混合物は、ワックスのみの場合と比較して、結着樹脂との相溶性を高めることができる。その結果、ワックスの分散性を向上させることができる。
一方、ジメチルポリシロキサンの含有量が上限を超えると、球形トナーにおいて定着性に影響する場合がある。
【0054】
また、ワックスとジメチルポリシロキサンとの配合比率を変えることによって、ワックスの分散性を調節することができる。
上記の結着樹脂が100重量部に対し、ワックスが1重量部以上13重量部以下の範囲で含有することができる。また、結着樹脂が100重量部に対して、ジメチルポリシロキサンが、0.5重量部以上5.0重量部未満の範囲で含有することができ、1重量部以上4重量部以下とすることが好ましい。
ワックスの含有量が、1重量未満である場合は、低温定着性が悪くなる傾向にあり、過剰になるとワックスの分散性が不十分となり、トナー表面にワックスが露出し易くなる。
一方、ジメチルポリシロキサンの含有量が、上記範囲未満である場合は、ワックスの分散性が低下する傾向にあり、上記範囲を超えると、チキソトロピー性が大きくなり定着性を損ない、定着オフセット性に影響する場合がある。
【0055】
また、ワックスの含有量とジメチルポリシロキサンの含有量との比は、ワックスが1重量部に対し、ジメチルポリシロキサンが0.1重量部以上1.0重量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは、ワックスが1重量部に対し、ジメチルポリシロキサンが0.2重量部以上0.8重量部以下の範囲内である。
トナー中におけるワックスの含有量が、上記範囲未満である場合は、低温定着性が悪くなる傾向にあり、上記範囲を超えると、トナー中におけるワックスの分散性が不十分となり、トナー表面にワックスが露出し易くなる。
同様に、トナー中におけるジメチルポリシロキサンの含有量が、上記範囲未満である場合は、ワックスの分散性が低下する傾向にあり、上記範囲を超えると、チキソトロピー性が大きくなり定着性に影響する場合がある。
【0056】
(添加剤)
本発明のトナーにおいては、前処理工程の添加剤として、アモルファスシリカおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含有することができる。
トナーに高流動性を付与するために、添加剤は、平均一次粒径が0.001μm以上1μm以下、好ましくは0.005μm以上0.1μm以下の範囲のものから選択することができる。具体的には、トナー表面積に対して、BET法による比表面積が30m/g以上300m/g以下のアモルファスシリカ粒子とすることが好ましい。
添加剤は、トナーが100重量部に対し0.1重量部以上5重量部以下の範囲内で添加することが好ましく、0.1重量部以上3重量部以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.2重量部以上2重量部以下の範囲内である。この上限値を超えた場合は、十分に溶けきれず定着オフセット性に影響する場合がある。
さらに、アモルファスシリカ、酸化チタン微粉末以外の無機微粉末も併用可能である。使用可能な無機微粉末としては、酸化アルミニウム類、脂肪族金属塩等が挙げられる。
【0057】
(外添剤)
本発明においては、流動性を付与する外添剤として、アモルファスシリカおよび酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、有機微粒子、シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも1種を含有することができる。このうち、シリカまたは酸化チタンを用いることが好ましい。これらの外添剤を添加する外添工程は、球形トナー、粉砕トナーおよび磁性トナーのいずれにも行うことができる。
外添剤として用いるシリカまたは酸化チタンは、粒径として0.001μm以上1.0μm以下の範囲内のものを用いることができる。このシリカまたは酸化チタンは、表面をシランカップリング剤、シリコーンオイルなどにより、予め疎水化したものを用いることができる。
【0058】
本発明に用いるシリカまたは酸化チタンは、トナー粒子100重量部に対し、0.1重量部以上4.0重量部以下の範囲で含まれるのが好ましい。
外添剤としてシリカを外添することにより、帯電性を向上させて画像均質性等を向上し、また流動性を向上させることができる。シリカの添加量が多量になると、帯電が増加してかぶり飛散等がなくなる一方で、画像が低濃度になる場合がある。
また、外添剤として酸化チタンを外添することで過剰帯電を防止し均一性が向上する。一方で、酸化チタンの添加量が多量になると、低帯電となり画像が高濃度となる場合がある。
なお、外添剤のシリカおよび酸化チタンは、粒子径および表面処理によってこれらの不具合を緩和できる場合がある。例えば、大粒径のシリカを用いることで他の外添剤の埋没防止剤として使用することもできる。
【0059】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は、従来公知の方法でよく、結着樹脂、ワックス、着色剤、荷電制御剤、その他をミキサー等を用いて混合し、ヒートロール(熱ロール)、エクストルーダー等の混練機を用い混練した後、冷却固化し、これらをジェットミル等の粉砕機で粉砕し、その後、分級することによって得ることができる。
【0060】
本実施形態のトナーは、次のようにして製造することができる。
(混錬工程)
まず、結着樹脂、低軟化点物質であるワックス、ジメチルポリシロキサン、着色剤としての顔料または染料、荷電制御剤、その他の添加剤を、ヘンシェルミキサー、ボールミルなどの混合機により十分に混合し、得られた混合物を過熱ロールニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、樹脂成分を互いに相溶させた中に、必要に応じて、低軟化点物質、顔料、染料、磁性体を分散または溶解し、得られた混練物を冷却固化後、粉砕および分級を行なって粉砕トナーを得ることができる。
【0061】
(前処理工程)
球形化処理(熱処理)を行う場合、流動化処理のために、シリカまたは酸化チタンなどの添加剤を添加することが好ましい。本実施の形態においては、上記母トナーに、アモルファスシリカを添加する。
従来のトナーにおいては、ワックスの露出に伴う合一化を防止するため、添加剤を多量に添加する必要があった。本発明の結着樹脂とワックスおよびジメチルポリシロキサンとを用いた場合には、合一粒子の発生が抑えられるので、アモルファスシリカ等の流動化剤の添加量を好ましく減らすことができる。
本実施形態の前処理工程における添加剤の添加量は、粉砕工程で得られた母トナー100重量部に対して、0.2重量部以上3重量部以下が好ましく、0.5重量部以上2重量部以下がより好ましく、0.8重量部以上1.5重量部以下がより好ましい。これにより、粒子の合一化を防止しつつフィルミング等の発生を好ましく防止することができる。
【0062】
(熱処理工程)
次に、粉砕工程を経た粉砕トナーに対し、結着樹脂のガラス転移点およびワックスの融点よりも高い温度の熱風により、気相中処理を施す。こうすることにより、混練―粉砕法で得られた母トナー粒子の形状を、より均一な球形状に制御し、またトナー表面の平滑性を上げ、付着応力を低減することができる。
【0063】
本発明においては、トナーの製造工程において、粉砕工程に、結着樹脂のガラス転移点およびワックスの融点より高い温度熱風により、気相中において母トナー粒子を処理する工程を加えることによって、図1に示すように、粒子をより均一な形状に整え、またトナー粒子表面の平滑性を高め、付着応力を低減させる。これによって、製造するトナーの帯電の均一性を高めることができ、画像性能に優れるトナーを製造することができる。
特に、本発明においては、ジメチルポリシロキサンとワックスとが内添剤として混合して含有されているため、ワックスの染み出しが好ましく防止される。したがって、熱処理を行ってもワックスがトナー表面に露出しにくくなるため、トナー粉末の合一を好ましく防止することができる。
【0064】
(外添工程)
流動化処理として、シリカまたは酸化チタンなどの外添剤を添加することができる。
これに対し、本発明の結着樹脂とワックスおよびジメチルポリシロキサンとを用いた場合には、合一粒子の発生が抑えられるので、シリカ等の流動化剤の添加量を好ましく減らすことができる。これにより、外添剤によるフィルミングの発生を好ましく防止することができる。
本実施形態の外添工程における外添剤の添加量は、粉砕工程で得られた母トナー100重量部に対して、0.2重量部以上3重量部以下が好ましく、0.5重量部以上2重量部以下がより好ましく、0.8重量部以上1.5重量部以下がより好ましい。これにより、粒子の合一化を防止しつつフィルミング等の発生を好ましく防止ることができる。なお、外添剤は複数種類を組み合わせることができる。
【0065】
<一成分現像剤>
上記のようにして得られたトナーは、一成分系現像剤に用いることができる。
一成分系現像剤は、磁性材料を含むキャリアを用いないため、フルカラー印刷等に適している。また、キャリアおよびトナー濃度の制御が不要であるため、小型の装置に適している。
【0066】
本発明のトナーを、通常の一成分トナーとして用いる場合には、ブレードまたはローラを用い、現像スリーブにて強制的に摩擦帯電し、スリーブ上にトナーを付着させることにより搬送させる方法を用いることができる。
【0067】
<二成分現像剤>
二成分現像方式は、トナーに電荷を付与するために磁性粉末を含むキャリアを混合した現像剤を用いる。磁性粉末としては、酸化鉄、マグネタイト、フェライト等を用いることができる。
二成分現像方式では、キャリアとトナーとが摩擦することによって、トナーに高い帯電量を与えて、トナーを感光体に静電的に付着させることができる。したがって、二成分系現像剤は、高速の印刷をすることができる。
【0068】
本発明のトナーを二成分系現像剤に用いる場合、混合して使用するキャリアとしては、ガラス、鉄、フェライト、ニッケル、ジルコン、シリカ等を主成分とする粒径30μm以上50μm以下の程度の粉末、または、この該粉末を芯材として、スチレン-アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等をコーティングしたものから適宜選択して使用可能である。また、近年は、キャリアとしてフェライトキャリアが用いられ、フェライトキャリアのコアとしては、Cu-Zn、Mn-Mg-Sr等が用いられる。この場合、キャリアの粒子径は、30μm以上40μm以下が好ましい。
なお、二成分の場合は、熱処理を行わない粉砕トナーを用いる場合がある。さらに近年は、キャリアとして磁性粉が内添された、磁性粉内添樹脂キャリアが用いられる場合もある。
本明細書では、区別のために必要な場合は、熱処理を行って表面を球形に処理したトナーを球形トナーといい、粉砕後に熱処理(球形化処理)を行っていないトナーを粉砕トナーといい、磁性体を含有した粉砕トナーのことを磁性トナーという。単にトナーという場合は、特段区別しない場合である。
【0069】
本発明のトナーを二成分系現像剤として用いる場合には、トナーとキャリアとの混合比は、トナー濃度として0.1重量%以上50重量%以下で用いられ、より好ましくは0.5重量%以上20重量%以下で用いられ、より好ましくは2重量%以上13重量%以下、さらに好ましくは3重量%以上10重量%以下で用いられる。トナー濃度が低すぎると画像濃度が低くなり、高すぎるとカブリ、機内飛散を増加させ、現像剤の耐用寿命を低下する場合がある。
【0070】
このキャリアコア材料としては、例えば、表面酸化した鉄または未酸化の鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、マンガン、クロム、希土類の金属、それらの合金、化合物、酸化物、磁性フェライトなどが用いられる。中でもフェライトキャリアを98重量%以上含有するものが好ましく用いられる。
【0071】
粉砕工程で得られた母トナーに対して、外添工程によりシリカまたは酸化チタンなどの外添剤を添加して、粉砕トナーとした。すなわち、前処理工程および熱処理工程を行わないことで、球形化処理を行わない粉砕トナーを得た。
このようにして得られた粉砕トナーに、キャリアとして磁性粉末を混合し、二成分現像用のトナーとした。
具体的には、本実施形態の二成分現像においては、トリクル現像として、トナーカートリッジにトナーおよびキャリアを混合して投入し、トナーおよびキャリアが現像機へ入るシステムを採用した。これにより、キャリアが常にリフレッシュされ、キャリアスペント等を防止することができる。トナーカートリッジ内のトナーとキャリアの割合は、トナー:キャリアが80~90:20~10(%)となるように調整した。
なお、トリクル現像の場合も通常の二成分現像の場合も、現像器内部のトナーとキャリアの混合比は、透磁率センサー等で制御して、トナー:キャリア=10~20:80~90(%)に制御することが好ましい。
【0072】
(実施例1)
[混錬工程]
ポリエステル樹脂からなる結着樹脂100重量部、着色剤として顔料4重量部、荷電制御剤(オリエント化学工業社製E-84)2重量部、エステルワックス(クラリアントジャパン製RBW 101PVITA)5重量部、およびジメチルポリシロキサン2重量部を混合し、二軸押し出し機(池貝製PCM)で混錬した。
なお、実施例1で使用したエステルワックス(クラリアントジャパン製RBW 101PVITA)は、融点78℃、酸価20mgKOH/gであり、ジメチルポリシロキサンは、個数粒子径2.5μ、pH11、メタノールウェッタビリティM値70%である。
[粉砕工程]
その後、得られた混錬物をジェット粉砕機(日本ニューマチック社製I-5)により、平均粒径7μmになるよう粉砕調整し、母トナーを得た。
[前処理工程]
得られた母トナーに対し、添加剤としてアモルファスシリカ(日本アエロジル社製RY300)を1重量部添加し、熱処理工程の前処理とした。
[熱処理工程]
続いて、熱処理器(日本ニューマチック社製MR-3)の熱風温度を300℃に調整し、母トナーを攪拌しながら熱風風量1.1m/Lで供給量10Kg/hで処理を行った。
[外添工程]
得られた熱処理母トナー100重量部に対して、外添剤として、アモルファスシリカを1重量部、および酸化チタンを0.2重量部加えて外添の処理を行い、目的の球形トナーを得た。
【0073】
(実施例2)
混錬工程において、エステルワックス(クラリアントジャパン製)に替えて、エステルワックス(日油社製WEP-9)を5重量部使用した以外は、実施例1と同様の工程を実施して、球形トナーを得た。
なお、実施例2で使用したエステルワックス(日油社製WEP-9)は、融点67℃、酸価0.1mgKOH/gである。
【0074】
(実施例3)
混錬工程において、エステルワックスに替えて、変性フィッシャートロプシュワックスを5重量部使用した以外は、実施例1と同様にして球形トナーを得た。
なお、実施例3で使用した変性フィッシャートロプシュワックスは、融点90℃、酸価3mgKOH/gである。
【0075】
(実施例4)
混錬工程において、ジメチルポリシロキサンを5重量部添加した以外は、実施例1と同様にして、球形トナーを得た。
【0076】
(実施例5)
実施例1における混錬工程において、ワックスを炭化水素ワックス(パラフィンワックス)とした以外は、実施例1と同様にして、球形トナーを得た。
なお、実施例5で使用した炭化水素ワックスは、融点99℃である。
【0077】
(実施例6)
実施例1の混錬工程において、エステルワックスに替えて、変性フィッシャートロプシュワックスを5重量部使用し、前処理工程および熱処理工程を行わずに、外添工程を行った。
また、外添工程においては、大粒径アモルファスシリカ(80m/g)を1重量部、小粒径アモルファスシリカ(260m/g)を0.5重量部、酸化チタン(50m/g)を0.3重量部加えて、外添処理を行った。その他は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
これにより、球形化処理を行わない粉砕トナーを得た。
【0078】
(実施例7)
実施例6の混錬工程において、さらにアモルファスシリカ(日本アエロジル社製RY300)を5重量部添加した。それ以外は実施例6と同様にして、粉砕トナーを得た。
【0079】
(実施例8)
実施例6の混錬工程において、さらにコロイダルシリカを5重量部添加した。それ以外は実施例6と同様にして、粉砕トナーを得た。
【0080】
(実施例9)
実施例1の混錬工程において、ポリエステル樹脂に替えて、スチレンアクリル樹脂とし、顔料4重量部に替えて、マグネタイト70重量部(チタン工業社製BL-11)とし、荷電制御剤を2重量部(オリエント化学社製E-84)、エステルワックス(融点74℃、酸価1mgKOH/g以下)を10重量部とした。
また、粉砕工程において、ターボ粉砕機(ターボ工業社製T400-4RS110JP)により、平均粒径7μmになるよう粉砕し、母トナーを得た。
そして、前処理工程および熱処理工程を行わずに、実施例1と同様に外添工程を行った。
これにより、球形化処理を行わない磁性トナーを得た。
【0081】
(比較例1)
実施例1における混錬工程において、ジメチルポリシロキサンを含まない以外は、実施例1と同様にして、球形トナーを得た。
【0082】
(比較例2)
実施例1における混錬工程において、ジメチルポリシロキサンにかえてアモルファスシリカ(日本アエロジル社製RY300)を2重量部添加した以外は、実施例1と同様にして、球形トナーを得た。
【0083】
(比較例3)
実施例1における混錬工程において、ジメチルポリシロキサンにかえてコロイダルシリカを2重量部添加した以外は、実施例1と同様にして、球形トナーを得た。
【0084】
(比較例4)
実施例1における混錬工程において、ジメチルポリシロキサンを添加せず、前処理工程において、アモルファスシリカ(日本アエロジル社製RY300)を1重量部、ジメチルポリシロキサンを2重量部添加した。それ以外は、実施例1と同様にして、球形トナーを得た。
【0085】
(比較例5)
実施例6における混錬工程において、ジメチルポリシロキサンを添加しなかった以外は、実施例6と同様にして、粉砕トナーを得た。
【0086】
(比較例6)
実施例9における混錬工程において、ジメチルポリシロキサンを添加しなかった以外は、実施例9と同様にして、磁性トナーを得た。
【0087】
<トナーの物性測定>
得られた各トナーの物性を以下の通り測定した。
(1)平均粒径測定
コールター式によってトナーの平均粒径を測定した。測定装置として、スペクトリス社製CDX-1000を用い、電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、1%NaCl水溶液を調整した。電解液としては、スペクトリス社のセルパックPK-30Lが使用できる。粒径測定法としては、この電解水溶液100mL以上150mL以下中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1mL以上5mL以下を加え、さらに測定試料を、2mg以上20mg以下を加えた。
【0088】
試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間分散処理を行ない、上記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用い、256チャンネルモードにて、2.007μm以上のトナーの体積、個数を測定し、重量分布を計算した。
【0089】
(2)円形度測定
トナーの円形度は、FPIA(登録商標)-3000(スペクトリス株式会社製)を用いて測定した値を用いた。具体的には、市販されている専用シース液に界面活性剤を溶液させたものに試料をなじませ、超音波分散を1分行い分散した後、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000個の適正濃度で測定を行った。この範囲であれば、再現性のある同一測定値が得られる。下記式にて定義した円形度を測定した。
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、全粒子数で割り算して算出した値である。
【0090】
(3)軟化点測定
軟化点は、島津製作所フローテスターCFP-500Dを用いて測定した。70℃に予熱した層内に上記実施例および比較例のトナーを1.3g投入し、15kgfの荷重をかけて直径/長さ=0.5/1.0mm、押出し基点から4mm降下した温度を軟化点とした。
【0091】
(4)残存ワックス量測定
マックサイエンス社製DSC3100を用いて純ワックスを6℃/minの速度で昇温して熱量(J/g)を測定した。その後、同様にしてトナーのDSC測定を行い、トナーに含まれるワックスの熱量を測定し、トナー中の残存ワックス量を算出した。
すなわち、ワックス融点温度において、トナーが吸収した熱量(J/g)を純ワックスの吸収熱量(J/g)で除して算出した。
・残存ワックス量=(トナー中ワックス吸熱量/純ワックス吸熱量)×100
【0092】
実施例1乃至実施例5、および、比較例1乃至比較例4で得られた球形トナーの諸物性を以下に表す。
【表1】
【0093】
次に、実施例6乃至実施例8、および、比較例5で得られた粉砕トナーの諸物性を以下に表す。
【表2】
【0094】
次に、実施例9および比較例6で得られた磁性トナーの諸物性を以下に表す。
【表3】
【0095】
球形トナー、粉砕トナーおよび磁性トナーのいずれにおいても、結着樹脂およびワックスにジメチルポリシキロサンを内添して混錬したとしても、諸物性において悪影響等がない事が確認された。
また、球形トナーの実施例においては、熱処理前後における粒径差δ(μm)が、ほとんど変化していないことが確認された。すなわち、本発明のトナーは、ワックスの染み出しが好ましく防止された結果、熱処理後もトナー粉末の合一が好ましく防止されたため、粒径に変化が生じなかったと考えられる。
【0096】
<SEM写真撮影>
図4は、実施例1のトナーのSEM(走査電子顕微鏡)写真の一例であり、図5は、比較例1のトナーのSEM写真の一例である。
【0097】
図4に示すように、実施例1のトナーは、ジメチルポリシロキサンを用いた熱処理により、ワックスの界面凹凸がトナー表面にないことが確認され、図5に示すように、ジメチルポリシロキサンを用いない場合、ワックスの界面凹凸がトナー表面に表れることがわかった。
【0098】
<画像品質評価>
本発明に係る静電荷像現像用トナーおよび静電荷像現像用トナーの製造方法の評価として、得られたトナーを用いた印刷画像の品質評価を行った。
印刷画像の評価方法は以下の通りである。
【0099】
(1)ブレード融着:
5%印字率にてA4縦方向で8,000枚連続印刷しベタ印字上(ベタ印字)及びドクターブレード上を目視にて観察し融着有無を確認した。
図2のように、ドクターブレード上に融着が確認された場合に、×と評価した。融着が認められるものの程度が軽い場合に、△と評価した。
(2)フィルミング:
5%印字率にてA4縦方向で8,000枚連続印刷しベタ印字上(ベタ印字、非印字部)及び感光体上を目視にて観察しフィルミングの有無を確認した。図3のように、感光体にトナーが付着した場合に、×と評価した。
フィルミングが発生すると、画像欠陥が発生し、感光体表面の平滑性が損なわれて経時品質が不安定になる。
(3)トナー漏れ:
5%印字率にてA4縦方向で8,000枚印刷し現像ローラとドクターブレードとの間のトナー漏れ有無を確認した。
(4)定着率:
黒ベタ(印字濃度100%)の印字領域においてテープ剥離を行ない、テープ剥離前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、下記計算式により算出できる。
定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分に粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810-3-18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、分光光度計(日本電色株式会社製NF333)を用いて測定した。
【0100】
(5)オフセット
温度20~25℃・湿度50~60%の環境で、1,000枚連続印字毎に特定の定着パターンで定着ローラー周期に汚れがあるかを目視で確認した。
(6)かぶり濃度(キャリア汚染)
本評価においては、印字不良(画像汚れ)を基準とした。印刷物の非印字部を分光光度計日本電色株式会社製NF333により測定した。かぶり数値として0.7を基準として、0.7を超えると目視で非画像部が汚れていることが確認できた。
(7)帯電量
一成分現像の場合、現像ローラ上の帯電量をトレック社製吸引式帯電量測定器においてトナーを吸引し内部コンデンサーにより電荷量を測定した。
二成分現像の場合、マグネットローラ上のトナーキャリア混合物(以下デベロッパー)を適量採取し635メッシュの上からトナーを吸引し電荷量を測定した。
(8)トナー濃度
二成分現像のマグネットローラ上のデベロッパーを印刷後採取し、635メッシュの上からトナーを吸引し残存キャリア量からトナー濃度を算出した。
(9)画像濃度・画像均一性
磁性一成分現像プリンターにより黒ベタ(印字濃度100%)で印刷し、分光色差計(日本電色製NF333)を用いて印刷領域の反射濃度Dを測定し、画像濃度とした。
また、印刷された黒ベタ画像を目視し、カスレがあった場合に均一性「×」とし、カスレがなかった場合に均一性「〇」とした。
【0101】
・一成分現像トナー(非磁性)の評価
ラインスピード30枚/分の一成分現像システム採用のプリンターに、実施例1乃至実施例5、および、比較例1乃至比較例4で得られた球形トナーを充填し、印刷画像の品質を評価した。
評価結果を表3に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
・二成分現像トナー(非磁性)の評価
上記実施例6乃至実施例8、および、比較例5で得られた粉砕トナーを二成分現像機に投入して、印刷を行った。トリクル現像方式では、トナー100重量部とフェライトキャリア10~20重量部をDR混合機(200rpm×10分)で混合してデベロッパーを作成した。
【0104】
そして、ラインスピード35枚/分の二成分現像プリンターに、上記作成した二成分トナーを充填し、印刷画像の品質を評価した。評価は、A4用紙に5%印字率とし、キャリア汚染によるかぶりが発生するまで(約10,000枚)連続印字を行い下記項目を確認した。トナー濃度は、かぶりが発生した時点でのマグネットローラ上の値とした。
評価結果を以下に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
・磁性トナー(一成分現像)の評価
ラインスピード38枚/分の磁性一成分現像システムのプリンターに、実施例9および比較例6で得られた磁性トナーを充填し、印刷画像の品質を評価した。評価結果を表6に示す。
【0107】
【表6】
【0108】
実施例1~3においては、ブレード融着、フィルミング、トナー漏れ、定着率、オフセットのいずれにおいても良好な結果となり、優れた画質を得ることができた。
炭化水素ワックスを一成分現像システム用いるとフィルミング等が発生する場合があるが(実施例5)、実施例3においては、炭化水素ワックスを変性させた変性フィッシャートロプシュを用いることで良好な画像品質が得られた。すなわち、単純な炭化水素ワックスの場合は、反応点がないため(酸価:0)、フィルミングに影響した可能性が考えられる。したがって、ワックスの酸価が0mgKOH/g超とすることで画像を良好にすることができ、0.05mgKOH/g以上とすることがより好ましい。
【0109】
実施例4においては、フィルミングおよびトナー漏れの評価は○であったが、ブレード融着が△で、オフセットは×であり、実施例4よりジメチルポリシロキサンの含有量を少なくすると、ブレード融着およびオフセットが○となった。
比較例5においては、キャリア汚染があり、マグネットローラ上のトナーの濃度が高くなっていた。一方で、実施例6~8のトナーは、マグネットローラのトナー濃度の上昇が抑えられており、キャリア汚染が生じていなかった。
実施例6~8においては、ジメチルポリシロキサンを内添剤として添加しても、オフセットに影響がないことが確認された。
【0110】
実施例9においては、ジメチルポリシロキサンを添加しない比較例6よりも画像濃度が高く、画像均一性も優れていた。
実施例のトナーは、ワックスの染み出しが抑制されるので、ワックス過多による流動性不足、帯電不良等によりかすれ、および不均一性が防止されたと考えられる。したがって、低温定着性を高めるためワックスを多量に添加した場合も、画像の品質が高いトナーとすることができる。
【0111】
以上のように、実施例のトナーにおいては、加熱しても粒径がほとんど変化せず、トナー粉末の合一化が好ましく防止された。そして、一成分現像システムで用いる球形トナー、および二成分現像システムで用いる粉砕トナーのいずれにおいても、ワックスの染み出しに伴う印刷不良を好ましく防止することができた。
また、本発明のトナーを用いることで、低温定着の場合も高い耐オフセット性を有し、感光体へのフィルミング、キャリア汚染の発生等を好ましく抑制することができた。
また、本発明のトナーを用いることで、ワックスの物性に依存することなく、ブレード融着、感光体フィルミング等を好ましく防止することができた。特に、粉砕トナーのみならず熱処理工程を行う球形トナーにおいてもワックスの染み出しに伴う印刷不良を好ましく防止することができた。
【0112】
さらに、一成分現像および二成分現像システム採用のプリンター等におけるトナーとして、結着樹脂100重量部に対し、ワックスが1重量部以上13重量部以下、ジメチルポリシキロサンが0.5重量部以上5重量部未満の範囲で混錬することにより、ワックスの染み出しに伴う印刷不良を好ましく防止し、低温定着においても定着性などを好ましく向上させることができた。
【0113】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と、着色剤と、ワックスと、内添剤としてジメチルポリシロキサン粒子と、を含有し、
前記結着樹脂が100重量部に対し、前記ワックスが1重量部以上13重量部以下含有され、前記ジメチルポリシロキサン粒子が1.5重量部以上3.0重量部以下含有され、
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂であり、
前記ワックスが、エステル系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびパラフィンワックスからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ワックスが1重量部に対し、前記ジメチルポリシロキサン粒子が0.2重量部以上0.8重量部以下である、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記ジメチルポリシロキサン粒子は、アルカリ性である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
300℃の熱処理をした場合の粒径と、前記熱処理前の粒径との差δが、0.1μm以下である、請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記ワックスの融点が、65℃以上95℃以下であり、前記ワックスの酸価が0.1mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である、請求項1からのいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
結着樹脂と、着色剤と、荷電制御剤と、ワックスと、ジメチルポリシロキサン粒子と、を混錬して混錬物を得る混錬工程と、
前記混錬物を粉砕し平均粒径5μm以上10μm以下の母トナーを得る粉砕工程と、
前記母トナーに、アモルファスシリカまたは酸化チタンを添加する前処理工程と、
前記母トナーを熱処理する熱処理工程と、
を含み、
前記結着樹脂が100重量部に対し、前記ワックスが1重量部以上13重量部以下含有され、前記ジメチルポリシロキサン粒子が1.5重量部以上3.0重量部以下含有され、
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂であり、
前記ワックスが、エステル系ワックスおよびフィッシャートロプシュワックスからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ワックスが1重量部に対し、前記ジメチルポリシロキサン粒子が0.1重量部以上1.0重量部以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項6】
結着樹脂と、着色剤と、ワックスと、ジメチルポリシロキサン粒子と、を混錬して混錬物を得る混錬工程と、
前記混錬物を粉砕し平均粒径5μm以上10μm以下の母トナーを得る粉砕工程と、
得られた母トナーに外添剤として、アモルファスシリカおよび酸化チタンを添加する外添工程と、をみ、
前記結着樹脂が100重量部に対し、前記ワックスが1重量部以上13重量部以下含有され、前記ジメチルポリシロキサン粒子が1.5重量部以上3.0重量部以下含有され、
前記結着樹脂がポリエステル系樹脂であり、
前記ワックスが、エステル系ワックスおよびフィッシャートロプシュワックスからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記ワックスが1重量部に対し、前記ジメチルポリシロキサン粒子が0.1重量部以上1.0重量部以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法。