(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148573
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、マンモグラフィ装置及び医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61B6/00 350D
A61B6/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056677
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 春樹
(72)【発明者】
【氏名】倉富 奈央子
(72)【発明者】
【氏名】池崎 理恵
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA26
4C093CA15
4C093DA06
4C093FF16
4C093FF19
4C093FF28
4C093FG13
4C093FG16
(57)【要約】
【課題】乳腺領域の設定を支援すること。
【解決手段】マンモグラフィ装置1は、画像取得部25bと、参考情報表示部25cとを備える。画像取得部25bは、被検体の乳房Bを表す乳房画像を取得する。参考情報表示部25cは、乳房画像に含まれる乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示する。参考情報表示部25cは、乳房画像に含まれる大胸筋領域内で関心領域を参考情報として表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の乳房を表す乳房画像を取得する画像取得部と、
前記乳房画像に含まれる乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示する参考情報表示部と、を備える、
医用情報処理装置。
【請求項2】
前記参考情報表示部は、前記乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する関心領域を前記参考情報として表示する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記参考情報表示部は、前記乳房画像に含まれる前記被検体の大胸筋領域内で前記関心領域を表示する、
請求項2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記参考情報表示部は、前記乳腺領域とは異なる領域で、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を表すGUI(Graphical User Interface)を前記参考情報として表示する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記画像取得部は、前記乳房画像に前記乳腺領域を設定し、
前記参考情報表示部は、前記乳腺領域が設定された領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記画像取得部は、前記乳房画像に乳腺領域を設定し、
前記参考情報表示部は、前記画像取得部によって前記乳腺領域が設定されたことに応じて、当該乳腺領域が設定された領域とは異なる領域に前記参考情報を設定する、
請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記参考情報表示部は、前記乳腺領域とは異なる領域に参考情報を設定し、
前記画像取得部は、前記参考情報表示部によって前記参考情報が設定されたことに応じて、当該参考情報に対応する画像特徴量を有する乳腺領域を前記乳房画像に設定する、
請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記画像取得部は、ユーザの操作に応じて、表示された前記乳腺領域の位置及び大きさの少なくとも一方を変更し、
前記参考情報表示部は、前記乳腺領域の変更に応じて、前記参考情報の位置及び大きさの少なくとも一方を変更する、
請求項5乃至7の何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記参考情報表示部は、ユーザの操作に応じて、表示された前記参考情報の位置及び大きさの少なくとも一方を変更し、
前記画像取得部は、前記参考情報の変更に応じて、前記乳腺領域の位置及び大きさの少なくとも一方を変更する、
請求項5乃至7の何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記乳腺領域に基づいて乳房構成を評価する評価部を更に備える、
請求項1乃至9の何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記乳房画像は、前記被検体の乳房を表す少なくとも2以上の乳房画像を含み、
前記参考情報取得部は、前記2以上の乳房画像の一の乳房画像に含まれる乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を、当該乳腺領域とは異なる領域としての前記2以上の乳房画像の他の乳房画像に表示する、
請求項1乃至10の何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記画像取得部は、前記一の乳房画像に前記乳腺領域を設定し、
前記参考情報表示部は、前記画像取得部によって前記一の乳房画像に前記乳腺領域が設定されたことに応じて、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を前記他の乳房画像に設定する、
請求項11に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記参考情報表示部は、前記一の乳房画像の乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する第1の参考情報を設定し、当該第1の参考情報に対応する画像特徴量を有する第2の参考情報を前記他の乳房画像に設定する、
請求項11に記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
被検体の乳房が載置される載置台と、
前記載置台との間で前記乳房を圧迫する圧迫板と、
X線を前記乳房に照射するX線照射部と、
前記乳房を透過したX線に応じた検出信号を出力するX線検出部と、
前記検出信号に基づく前記乳房を表す乳房画像を取得する画像取得部と、
前記乳房画像に含まれる乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示する参考情報表示部と、を備える、
マンモグラフィ装置。
【請求項15】
処理部が、
被検体の乳房を表す乳房画像を取得し、
前記乳房画像に含まれる乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示する、
医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、マンモグラフィ装置及び医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンモグラフィ装置によって撮影された乳房画像について、乳房構成を評価する技術が知られている。乳房構成には、例えば、極めて高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性の区分がある。乳房画像に含まれる病変(石灰化や腫瘤等)の検出感度は、乳房構成の区分に応じて異なるため、乳房構成を正しく評価するには、乳腺領域を適切に設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、乳腺領域の設定を支援することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成に対応する各課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用情報処理装置は、画像取得部と、参考情報表示部と、を備える。画像取得部は、被検体の乳房を表す乳房画像を取得する。参考情報表示部は、乳房画像に含まれる乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、マンモグラフィ装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した処理回路によって実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、乳腺領域が表示された乳房画像の表示例を示す図である。
【
図4】
図4は、乳腺領域の表示に応じて大胸筋領域内に表示される参考情報の表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、乳房構成の評価結果の表示例を示す図である。
【
図6】
図6は、参考情報が表示された乳房画像の表示例を示す図である。
【
図7】
図7は、参考情報の表示に応じて乳房画像上に表示される乳腺領域の表示例を示す図である。
【
図8】
図8は、乳腺領域および参考情報の一方が変更された場合の乳房画像の表示例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の乳腺領域と参考情報とが表示された第1の乳房画像の模式図である。
【
図10】
図10は、第2の乳腺領域が表示された第2の乳房画像の模式図である。
【
図11】
図11は、候補特徴量に対応する乳腺領域及び関心領域が表示された乳房画像の模式図である。
【
図12】
図12は、スライダーが表示された乳房画像の模式図である。
【
図13】
図13は、医用情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して各実施形態に係る医用情報処理装置、マンモグラフィ装置及び医用情報処理方法について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、マンモグラフィ装置1の構成の一例を示すブロック図である。マンモグラフィ装置1は、撮影部10と、コンソール部20とを有する。
【0009】
撮影部10は、被検体の乳房Bを圧迫してX線撮影(マンモグラフィ撮影)を行う。撮影部10は、乳房Bに対してX線を一方向から照射し、乳房Bを透過したX線を検出する。
【0010】
コンソール部20は、撮影部10によって検出されたX線の検出信号を処理することによって乳房BのX線画像(乳房画像)を取得する。コンソール部20は、取得した乳房画像について乳房構成を評価する。
【0011】
撮影部10は、X線照射部11、高電圧発生部12、X線検出器13、載置台14、圧迫板15、X線源支持部16、載置台支持部17及び基台部18を備える。
【0012】
X線照射部11は、載置台14に載置された乳房BにX線を照射する。X線照射部11は、X線源と、X線絞り器とを備える。X線源は、高電圧発生部12によって印加された高電圧に基づいてX線を発生する。X線絞り器は、例えば、上下、左右にそれぞれ一対ずつ(計4枚)の絞り羽根を備える。絞り羽根は、X線を遮蔽する鉛等の材料によって平板状に設けられ、X線源によって発生されたX線の照射野(照射範囲)を絞る開口を形成する。また、絞り羽根は、コンソール部20の制御によって水平方向に移動することにより、照射野の大きさや形状を変更する。被検体の乳房Bには、X線絞り器により形成された開口を通過したX線が照射される。このようにして、X線照射部11は、X線を乳房Bに照射する。X線照射部11は、X線照射部の一例である。
【0013】
高電圧発生部12は、コンソール部20の制御によって高電圧を発生し、発生した高電圧をX線照射部11(X線源)に印加する。X線照射部11に対する高電圧発生部12の印加方式は、例えば、インバータ方式、単圧変圧器方式、三相変圧器方式、コンデンサ方式などがある。
【0014】
X線検出器13は、例えば、平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)等から構成される。X線検出器13は、載置台14の内部に設けられる。X線検出器13は、X線照射部11から照射され、圧迫板15と乳房Bを透過したX線を検出する。X線検出器13は、検出したX線量に応じた検出信号をコンソール部20に供給する。このようにして、X線検出器13は、乳房Bを透過したX線に応じた検出信号を出力する。X線検出器13は、X線検出部の一例である。
【0015】
載置台14は、乳房Bが載置される筐体である。載置台14は、載置台支持部17に支持される。圧迫板15は、例えば、X線を透過させる樹脂等の材料によって形成される。圧迫板15は、載置台14と対向する位置で、載置台支持部17に移動可能に支持される。圧迫板15は、載置台14との間で接離する方向(
図1に示すY軸方向)に移動し、載置台14に載置された乳房Bを圧迫する。このようにして、圧迫板15は、載置台14との間で乳房Bを圧迫する。
【0016】
X線源支持部16は、X線照射部11を支持し、基台部18との間に設けられた軸部(図示しない)を介して基台部18に接続、支持される。軸部は基台部18によって回転可能に設けられ、X線源支持部16は、軸部の回転に応じて、当該軸部の軸心(
図1に示すZ軸方向)を中心に回転する。また、X線源支持部16は、基台部18の動作に応じて、高さ方向(
図1に示すY軸方向)に移動する。
【0017】
載置台支持部17は、載置台14を支持し、基台部18との間に設けられた軸部を介して基台部18に接続、支持される。軸部は基台部18によって回転可能に設けられ、載置台支持部17は、軸部の回転に応じて、当該軸部の軸心(
図1に示すZ軸方向)を中心に回転する。X線源支持部16と載置台支持部17とは、軸部の軸心を中心に、それぞれ独立に回転可能に設けられる。なお、載置台支持部17に接続される軸部は、X線源支持部16に接続される軸部と同一のものでも異なるものでもよい。また、載置台支持部17は、基台部18の動作に応じて、高さ方向(
図1に示すY軸方向)に移動する。
基台部18は、コンソール部20の制御によって高さ方向(
図1に示すY軸方向)に移動する。また、基台部18は、コンソール部20の制御によって、基台部18に接続された軸部を回転させる。
【0018】
一方、コンソール部20は、メモリ21、ディスプレイ22、入力インターフェース23、ネットワークインターフェース24及び処理回路25を備える。
【0019】
メモリ21は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。メモリ21には、処理回路25が行う処理に必要な各種データや、処理回路25が処理を行って得られた各種データが記憶される。メモリ21には、例えば、乳房BのX線画像(乳房画像)や、乳房画像の撮影条件等の各種情報が記憶される。また、メモリ21には、処理回路25の実行によって、処理回路25を、撮影制御部25a、画像取得部25b、参考情報表示部25c、評価部25dとして機能させるプログラムが記憶される。また、メモリ21には、乳房画像内の乳腺領域、大胸筋領域、もともと乳腺が存在していたと想定される領域(元乳腺領域)のそれぞれを抽出する学習済みモデルが記憶される。
【0020】
ディスプレイ22は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって実現される。ディスプレイ22は、処理回路25の制御のもと各種情報を表示する。ディスプレイ22は、例えば、乳房画像や、放射線技師等のユーザからの各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。
【0021】
入力インターフェース23は、例えば、フットスイッチや、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等によって実現される。入力インターフェース23は、ユーザによる各種入力操作を受け付け、受け付けた入力操作に対応する電気信号を処理回路25に出力する。入力インターフェース23は、例えば、X線撮影(乳房撮影)の実行や、圧迫板15の上下動、X線の撮影条件の設定等の操作を受け付ける。
【0022】
ネットワークインターフェース24は、例えば、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。ネットワークインターフェース24は、処理回路25の制御のもと、ネットワークNWを介してPACS(Picture Archiving and Communication Systems)等の外部装置と通信する。ネットワークNWは、電子通信技術を利用した情報通信網全体を意味し、病院基幹LAN(Local Area Network)や、無線LAN、有線LAN等のインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバー通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク、衛星通信ネットワークを含む。
【0023】
処理回路25は、例えば、プロセッサから構成される。処理回路25は、マンモグラフィ装置1の各部を制御することによりマンモグラフィ装置1全体を制御する。また、処理回路25は、メモリ21に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、撮影制御部25a、画像取得部25b、参考情報表示部25c、評価部25dとして機能する。画像取得部25bは、画像取得部の一例である。参考情報表示部25cは、参考情報表示部の一例である。評価部25dは、評価部の一例である。
【0024】
以上のように構成されたマンモグラフィ装置1において、コンソール部20は、撮影部10に乳房BをX線撮影させる処理を行う。また、コンソール部20は、撮影部10によってX線撮影された乳房BのX線画像(乳房画像)を取得し、乳房構成を評価する処理を行う。乳房構成には、例えば、極めて高濃度、不均一高濃度、乳腺散在、脂肪性の区分がある。
【0025】
乳房画像に含まれる病変(石灰化や腫瘤等)の検出感度は、乳房構成の区分に応じて異なるため、乳房構成を正しく評価するには、乳腺領域を適切に設定する必要がある。しかし、乳房画像上に乳腺領域が表示されるだけでは、当該乳腺領域が適切に設定されているか否かの判断が難しい。処理回路25は、乳房画像に含まれる乳腺領域とは異なる領域に、乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示する処理を行う。
【0026】
以下、マンモグラフィ装置1が実行する処理動作を、
図2を参照して説明する。
図2は、
図1の処理回路25にて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0027】
処理回路25は、メモリ21に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これにより、処理回路25は、撮影制御部25a、画像取得部25b、参考情報表示部25c、評価部25dとして機能する。
【0028】
撮影制御部25aは、放射線技師等のユーザの操作に応じて、被検体の乳房BのX線撮影(マンモグラフィ撮影)を行う。
【0029】
具体的には、撮影制御部25aは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、X線源支持部16及び載置台支持部17を、予め定められた内外斜視(MLO:Medio Lateral Oblique)の撮影方向に移動する。X線源支持部16及び載置台支持部17がMLOの撮影方向に移動された後、ユーザは、載置台14に乳房Bを載置し、撮影制御部25aは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、圧迫板15を移動し、載置台14に載置された乳房Bを圧迫板15によって圧迫する。
【0030】
その後、撮影制御部25aは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、高電圧発生部12に高電圧を発生させ、X線照射部11からX線を照射させる。X線照射部11から照射されたX線は、圧迫板15と乳房Bとを透過してX線検出器13で検出される。撮影制御部25aは、X線検出器13で検出されたX線量に応じた検出信号をX線検出器13から受け取り、当該検出信号に画像処理を行うことで、被検体の乳房Bを表す乳房画像を生成する。画像処理は、例えば、X線検出器13におけるチャンネル間の感度不均一の補正や、金属等のX線強吸収体による極端な信号の低下またはデータの脱落に関する補正等がある。
【0031】
画像取得部25bは、撮影制御部25aによって生成された乳房画像を取得し(ステップST11)、当該乳房画像に含まれる乳腺領域を設定する(ステップST12)。また、画像取得部25bは、設定した乳腺領域を乳房画像に表示する。
図3は、乳腺領域が設定された乳房画像の模式図である。
図3に示すように、画像取得部25bは、例えば、設定した乳腺領域Maの輪郭(乳腺と脂肪との境界)を乳房画像MGに表示する。
【0032】
乳腺領域Maを設定する手法として、例えば、画像取得部25bは、乳房画像の入力によって、乳房画像から乳腺領域を抽出する学習済みモデルをメモリ21から読み出す。当該学習済みモデルは、例えば、乳房画像と当該乳房画像に含まれる乳腺領域とのデータセット(乳房画像を入力データ、乳腺領域を教師データとしたデータセット等)に基づき学習されたモデルである。画像取得部25bは、取得した乳房画像MGを当該学習済みモデルに入力し、当該学習済みモデルによって出力された乳腺領域を、乳房画像MGに含まれる乳腺領域Maとして設定する。
【0033】
なお、画像取得部25bは、乳房画像MGで乳腺が存在し得る領域における輝度値のヒストグラムを基に、乳腺と脂肪とを区分する輝度値を求め、当該輝度値に基づき、乳房画像MGに含まれる乳腺領域Maを設定してもよい。また、画像取得部25bは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、乳房画像MGに含まれる乳腺領域Maを設定してもよい。
【0034】
参考情報表示部25cは、画像取得部25bによって表示された乳腺領域Maに対応する画像特徴量を取得する(ステップST13)。乳腺領域Maに対応する画像特徴量は、例えば、乳腺領域Maの輪郭(乳腺と脂肪との境界)を示す輝度値や乳腺領域Ma全体の輝度値の平均値(平均輝度値)、最頻値、中央値等がある。ここでは、参考情報表示部25cは、乳腺領域Maの輪郭を示す輝度値を乳腺領域Maに対応する画像特徴量として取得する。
【0035】
参考情報表示部25cは、乳腺領域Maが設定された領域とは異なる領域に参考情報を表示する(ステップST14)。
図4は、参考情報Rが表示された乳房画像の模式図である。参考情報Rは、予め定められた大きさまたは形状(円形、多角形等)を有する関心領域である。乳腺領域Maが設定された領域とは異なる領域は、例えば、被検体の大胸筋領域Pである。参考情報表示部25cは、大胸筋領域Pに参考情報Rを表示する。
【0036】
大胸筋領域Pを設定する手法として、参考情報表示部25cは、乳房画像MGで大胸筋が存在し得る領域における輝度値のヒストグラムを基に、大胸筋と脂肪とを区分する輝度値を求め、当該輝度値に基づき、乳房画像MGに含まれる大胸筋領域Pを設定する。
【0037】
なお、参考情報取得部25cは、学習済みモデルによって大胸筋領域を抽出してもよい。この場合、参考情報取得部25cは、乳房画像から大胸筋領域を抽出する学習済みモデルをメモリ21から読み出す。当該学習済みモデルは、例えば、乳房画像と当該乳房画像に含まれる大胸筋領域とのデータセット(乳房画像を入力データ、大胸筋領域を教師データとしたデータセット等)に基づき学習されたモデルである。参考情報取得部25cは、取得した乳房画像MGを当該学習済みモデルに入力し、当該学習済みモデルによって出力された大胸筋領域を、乳房画像MGに含まれる大胸筋領域Pとして設定する。
【0038】
参考情報表示部25cは、設定した大胸筋領域Pにおいて、乳腺領域Maに対応する画像特徴量を有する位置に参考情報Rを表示する(ステップST14)。例えば、ここでは、大胸筋領域Pにおいて、関心領域全体の輝度値の平均値(関心領域の平均輝度値)が、乳腺領域Maの輪郭を示す輝度値となる位置(乳腺領域Maに対応する画像特徴量を有する位置)に参考情報Rが表示される。このように、参考情報表示部25cは、画像取得部25bによって乳腺領域Maが設定されたことに応じて、乳腺領域Maが設定された領域とは異なる領域(大胸筋領域P)に参考情報Rを表示する。ユーザは、大胸筋領域Pに表示された参考情報Rを参照することにより、乳房画像MG上に表示された乳腺領域Maが適切に設定されているか否かを判断できる。
【0039】
その後、評価部25dは、乳腺領域Maに基づいて乳房構成を評価する(ステップST15)。
図5は、乳房構成の評価結果が表示された乳房画像の模式図である。評価部25dは、乳房画像MG上で、もともと乳腺が存在していたと想定される領域(元乳腺領域)Mbを設定する。元乳腺領域Mbは、例えば、過去に乳腺だった領域が加齢等の影響によって脂肪に変化した領域と、乳房BのX線撮影時点での乳腺領域Maとを合わせた領域である。なお、明らかな乳腺後隙の脂肪のみの部分は元乳腺領域Mbから除かれる。なお、他の例として、大胸筋領域Pを除いた領域を元乳腺領域として設定してもよい。
【0040】
評価部25dは、乳房画像MG上で乳房が存在し得る領域(乳房領域M)における画素の輝度値のヒストグラムを基に、元乳腺領域Mbとそれ以外の領域とを区分する輝度値である閾値を求め、当該閾値に基づき、乳房画像MGに含まれる元乳腺領域Mbを設定する。
【0041】
なお、評価部25dは、学習済みモデルによって、乳房画像MGに含まれる元乳腺領域Mbを抽出してもよい。この場合、評価部25dは、乳房画像内の元乳腺領域を抽出する学習済みモデルをメモリ21から読み出す。当該学習済みモデルは、例えば、乳房画像と当該乳房画像に含まれる元乳腺領域とのデータセット(乳房画像を入力データ、元乳腺領域を教師データとしたデータセット等)に基づき学習されたモデルである。評価部25dは、取得した乳房画像MGを当該学習済みモデルに入力し、当該学習済みモデルによって抽出された元乳腺領域Mbを設定する。
【0042】
そして、評価部25dは、乳腺領域Maと元乳腺領域Mbとに基づいて、乳房Bの乳腺比率を算出する。例えば、乳腺比率は、以下の式(1)により求められる。
乳腺比率[%]=(乳腺領域Maの画素数/元乳腺領域Mbの画素数)×100・・・・・・・・・式(1)
【0043】
評価部25dは、例えば、乳腺比率が80%以上未満を「極めて高濃度」、50%以上80%未満を「不均一高濃度」、10%以上50%未満を「乳腺散在」、10%未満を「脂肪性」と評価する。評価部25dは、例えば、「極めて高濃度」及び「不均一高濃度」の代わりに、乳腺比率が50%以上を「高濃度」と評価してもよい。
図5は、乳房構成の評価結果が表示された乳房画像の模式図である。評価部25dは、
図5に示すように、乳房構成の評価結果及び乳腺比率を評価表示領域B1に表示する。
【0044】
以上、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置1によれば、乳房画像MGに含まれる大胸筋領域P(乳腺領域Maとは異なる領域)に、乳腺領域Maに対応する画像特徴量(ここでは、乳腺領域Maの輪郭を示す輝度値)を有する参考情報Rを表示する。ユーザは、大胸筋領域Pに表示された参考情報Rを参照することにより、乳房画像MGに表示された乳腺領域Maが適切に設定されているか否かを判断できる。これにより、マンモグラフィ装置1は、乳腺領域の決定を支援することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、乳腺領域Maの輪郭を示す輝度値を乳腺領域Maに対応する画像特徴量として取得する例を説明したが、参考情報表示部25cは、乳腺領域Maの輪郭を示す輝度値の代わりに、乳腺領域Ma全体の輝度値の平均値(乳腺領域Maの平均輝度値)、乳腺領域Maにおける最頻値、中央値等を乳腺領域Maに対応する画像特徴量として取得してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、大胸筋領域Pにおいて、関心領域全体の輝度値の平均(関心領域の平均輝度値)が、乳腺領域Maの輪郭を示す輝度値となる位置(乳腺領域Maに対応する画像特徴量を有する位置)に参考情報Rを表示する例を説明したが、参考情報表示部25cは、関心領域の平均輝度値の代わりに、関心領域における最頻値、中央値等が乳腺領域Maに対応する画像特徴量を有する位置に参考情報Rを表示してもよい。
【0047】
また、参考情報表示部25cは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、ディスプレイ22への参考情報Rの表示と非表示とを切り替えてもよい。これにより、ユーザは、参考情報Rを確認したい場合に、ディスプレイ22に参考情報Rを表示できる。なお、処理回路25は、乳腺領域Ma、元乳腺領域Mb、評価表示領域B1のそれぞれについて、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、ディスプレイ22への表示と非表示とを切り替えてもよい。これにより、ユーザは乳房画像MG上において確認したい情報をディスプレイ22に選択的に表示できる。
【0048】
また、評価部25dは、参考情報Rや乳房構成の評価結果を含む乳房画像MGを、メモリ21、またはネットワークインターフェース24を介して接続された外部サーバ(PACS等のサーバ)に記憶してもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、乳腺領域Maの設定を行った後に、大胸筋領域Pに参考情報Rを設定する例を説明したが、これに限定されない。参考情報Rを設定する手法として、例えば、
図6に示すように、参考情報表示部25cは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、大胸筋領域Pに参考情報Rを設定する。参考情報Rは、関心領域であり、大きさまたは形状(円形、多角形等)が予め定められたものであっても、任意のものであってもよい。
【0050】
また、参考情報表示部25cは、参考情報Pをユーザの操作に応じて設定する代わりに、例えば、学習済みモデルによって乳房画像MGから抽出された大胸筋領域Pの平均輝度値に基づいて参考情報Rを設定してもよい。具体的には、参考情報表示部25cは、大胸筋領域Pにおいて、参考情報Rにより表される関心領域の平均輝度値が、大胸筋領域Pの平均輝度値となる位置に参考情報Rを設定する。
【0051】
そして、画像取得部25bは、
図7に示すように、乳房画像MGに乳腺領域Maを設定する。例えば、画像取得部25bは、参考情報Rにより表される関心領域の平均輝度値(ここでは大胸筋領域Pの平均輝度値)に基づいて乳腺領域Maを設定する。具体的には、画像取得部25bは、参考情報Rにより表される関心領域の平均輝度値を、乳腺領域Maの輪郭(乳腺と脂肪との境界)を示す輝度値とし、当該輝度値に基づき、乳房画像MGに乳腺領域Maを設定する。このように、参考情報表示部25cによって参考情報Rが設定されたことに応じて、画像取得部25bは、乳房画像MGに乳腺領域Maを設定、表示してもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
本実施形態では、乳房画像MGに設定された乳腺領域Ma及び参考情報Rを変更する場合について説明する。
【0053】
例えば、
図4や
図7に示したように、乳腺領域Maと参考情報Rとが表示された後、画像取得部25bは、ディスプレイ22に表示された乳腺領域Maを変更する操作を受け付ける。画像取得部25bは、例えば、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、乳腺領域Maの位置及び大きさの少なくとも一方を変更する。例えば、
図8に示すように、画像取得部25bは、ユーザの操作に応じて、乳腺領域Maを乳腺領域Ma’に変更する。
【0054】
参考情報取得部25cは、乳腺領域Maの変更に応じて、参考情報Rの位置及び大きさの少なくとも一方を変更する。参考情報取得部25cは、例えば、画像取得部25bによって乳腺領域Maが乳腺領域Ma’に変更されたことに応じて、参考情報Rを参考情報R’に変更する。つまり、参考情報取得部25cは、乳腺領域Maが乳腺領域Ma’に変更された場合、変更後の乳腺領域Ma’に対応する参考情報R’を、大胸筋領域Pに新たに設定、表示する。
【0055】
具体的には、参考情報表示部25cは、画像取得部25bによって変更された乳腺領域Ma’に対応する画像特徴量を取得する。画像特徴量は、例えば、乳腺領域Ma’の輪郭を示す輝度値や乳腺領域Ma’の平均輝度値、最頻値、中央値等がある。ここでは、第1の実施形態と同様、参考情報表示部25cは、乳腺領域Ma’の輪郭を示す輝度値を乳腺領域Ma’に対応する画像特徴量として取得する。
【0056】
参考情報表示部25cは、乳腺領域Ma’に対応する画像特徴量を有する参考情報R’を大胸筋領域Pに設定する。具体的には、参考情報表示部25cは、第1の実施形態と同様、大胸筋領域Pにおいて、関心領域の平均輝度値が、乳腺領域Ma’の輪郭を示す輝度値となる位置(乳腺領域Ma’に対応する画像特徴量を有する位置)に参考情報R’を表示する。なお、参考情報表示部25cは、関心領域の平均輝度値の代わりに、関心領域における最頻値、中央値等が乳腺領域Maに対応する画像特徴量を有する位置に参考情報Rを表示してもよい。このように、乳房画像MGに設定された乳腺領域Maが乳腺領域Ma’に変更されたことに応じて、大胸筋領域Pに表示された参考情報Rは参考情報R’に自動的に変更される。
【0057】
なお、本実施形態においては、乳腺領域Maを変更する操作を受け付けた場合の例を説明したが、参考情報Rを変更する操作を受け付けてもよい。この場合、参考情報表示部25cは、例えば、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、参考情報Rの位置及び大きさの少なくとも一方を変更する。この場合、例えば、
図8に示したように、参考情報表示部25cは、参考情報Rを参考情報R’に変更する。
【0058】
画像取得部25bは、参考情報Rの変更に応じて、乳腺領域Maの位置及び大きさの少なくとも一方を変更する。このように、大胸筋領域Pに設定された参考情報Rが参考情報R’に変更されたことに応じて、乳房画像MGに表示された乳腺領域Maは、乳腺領域Ma’に自動的に変更される。
【0059】
以上、第2の実施形態に係るマンモグラフィ装置1によれば、乳房画像MG上に表示された乳腺領域Ma及び参考情報Rの一方が変更されたことに応じて、乳腺領域Ma及び参考情報Rの他方が自動的に変更される。これにより、ユーザは、変更後の参考情報R’を参照することにより、変更後の乳腺領域Ma’が適切に設定されているか否かを判断できる。
【0060】
(第3の実施形態)
本実施形態では、一の乳房画像に含まれる乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を、他の乳房画像に表示する例を説明する。
【0061】
撮影制御部25aは、ユーザの操作に応じて、被検体の乳房Bのトモシンセシス撮影を行う。具体的には、撮影制御部25aは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、X線源支持部16及び載置台支持部17を、予め定められたMLOの撮影方向に移動する。X線源支持部16及び載置台支持部17がMLOの撮影方向に移動された後、ユーザは、載置台14に乳房Bを載置し、撮影制御部25aは、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、圧迫板15を移動し、載置台14に載置された乳房Bを圧迫板15によって圧迫する。
【0062】
その後、入力インターフェース23を介したユーザの操作に応じて、撮影制御部25aは、高電圧発生部12及びX線源支持部16を制御し、予め定められた角度の間隔及び範囲で、X線照射部11にX線を複数回にわたって照射させる。X線照射部11から照射されたX線は、圧迫板15と乳房Bとを透過してX線検出器13で順次検出される。撮影制御部25aは、X線検出器13で検出されたX線量に応じた検出信号をX線検出器13から順次受け取り、当該検出信号に画像処理を行うことでトモシンセシス画像を生成する。トモシンセシス画像は、被検体の乳房Bを表す少なくとも2以上の乳房画像を含む。
【0063】
画像取得部25bは、撮影制御部25aによって生成されたトモシンセシス画像を取得する。また、画像取得部25bは、
図9に示すように、トモシンセシス画像に含まれる2以上の乳房画像の一の乳房画像MG1に乳腺領域Ma1を設定する。
【0064】
参考情報表示部25cは、第1の実施形態と同様、乳房画像MG1に乳腺領域Ma1が設定されたことに応じて、乳房画像MG1に含まれる大胸筋領域P(乳腺領域とは異なる領域)に参考情報R1を設定する。
【0065】
また、参考情報表示部25cは、乳房画像MG1に乳腺領域Maが設定されたことに応じて、
図10に示すように、トモシンセシス画像に含まれる2以上の乳房画像の他の乳房画像MG2に参考情報R2を表示する。参考情報R2は、乳腺領域Maに対応する画像特徴量を有する。他の乳房画像MG2は、乳腺領域Maとは異なる領域としての乳房画像である。当該乳房画像は、トモシンセシス画像に含まれる乳房画像MG1以外の全ての乳房画像でもよいし、予め定められた乳房画像でもよい。
【0066】
以上、第3の実施形態に係るマンモグラフィ装置1によれば、トモシンセシス画像(少なくとも2以上の乳房画像を含む画像)について、一の乳房画像MG1で設定された乳腺領域Maに対応する画像特徴量を有する参考情報R2を他の乳房画像MG2に設定、表示できる。これにより、ユーザは、乳房画像MG2に表示された参考情報R2を参照することにより、乳房画像MG1における乳腺領域Maが適切に設定されているか否かを判断できる。
【0067】
なお、上記実施形態では、一の乳房画像MG1で乳腺領域Maが設定されたことに応じて、他の乳房画像MG2に参考情報R2を表示する例を説明したが、これに限定されない。例えば、参考情報表示部25cは、乳房画像MG1の乳腺領域とは異なる領域(大胸筋領域P)に参考情報R1を設定し、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報R2を乳房画像MG2に設定してもよい。この場合、画像取得部25bは、第1の実施形態と同様、参考情報R1が設定されたことに応じて、乳房画像MG1に乳腺領域Maを設定してもよい。これにより、ユーザは、乳房画像MG2に表示された参考情報R2を参照することにより、乳房画像MG1における乳腺領域Maが適切に設定されているか否かを判断できる。
【0068】
また、上記実施形態では、一の乳房画像と他の乳房画像を含む画像としてトモシンセシス画像を例に説明したが、これに限定されない。例えば、一の乳房画像と他の乳房画像とは、異なる撮影方向によってX線撮影されたものでもよい。具体的には、一方がMLOの撮影方向でX線撮影された乳房画像、他方が頭尾(CC:Cranio-Caudal)の撮影方向でX線撮影された乳房画像でもよい。なお、一の乳房画像MG1と他の乳房画像MG2とで階調が異なる場合、一の乳腺領域Maの画像特徴量を補正した値により参考情報R2を設定する。この場合、画像取得部25bは、例えば、一の乳房画像MG1の階調を他の乳房画像MG2の階調に揃える階調変換の関係式を求める。その後、画像取得部25bは、当該関係式により、第1の乳腺領域Maの画像特徴量を補正した値に対応する参考情報R2を設定する。
【0069】
上述した各実施形態と各変形例において、乳腺領域の画像特徴量の候補(候補特徴量)をユーザが選択することで、当該候補特徴量を表す参考情報を表示させてもよい。当該候補特徴量は、例えば、大胸筋領域Pの各画素の輝度値の平均値、中央値、最大値、最小値、最頻値等の統計量や、当該統計量を組み合わせた値である。
【0070】
図11は、複数の候補特徴量に応じた乳腺領域及び参考情報が表示された乳房画像の模式図である。画像表示部25bは、選択領域B2のチェックボックスを介して、ユーザが候補特徴量1及び候補特徴量2を選択したか否かの情報を取得する。画像取得部25bは、乳房画像MG上の大胸胸筋領域Pを特定して、候補特徴量1と候補特徴量2とのそれぞれに対応する大胸筋領域Pの各画素の輝度値の統計量を算出する。
【0071】
画像取得部25bは、ユーザが候補特徴量1を選択した情報を取得すると、候補特徴量1に対応した統計量以上の輝度値を有する乳房画像MG上の画素を乳腺領域Ma1として表示する。画像取得部25bは、同様に、乳腺領域Ma2を表示する。参考情報表示部25cは、ユーザが候補特徴量1を選択した情報を取得すると、候補特徴量1に対応した統計量を表す参考情報R1を表示する。参考情報R1は、例えば、予め大きさと形状とが決められた関心領域である。参考情報表示部25cは、関心領域内の各画素の平均輝度値が、候補特徴量1に対応した統計量を表す位置に参考情報R1を表示する。参考情報表示部25cは、同様に、参考情報R2を表示する。
【0072】
これにより、ユーザは事前に用意した複数の候補特徴量のそれぞれに対応した参考情報を参照することで、当該候補特徴量のそれぞれに対応した乳腺領域が適切に設定されているか判断することができる。これにより、ユーザは、複数の候補特徴量の内、乳腺領域の設定に適した候補特徴量を選択することができる。
【0073】
(第4の実施形態)
上記実施形態では、参考情報Rが関心領域である場合を説明したが、参考情報Rの表示形態は、これに限定されない。例えば、参考情報Rは、スライダーによるGUIでもよい。この場合、例えば、
図12に示すように、参考情報表示部25cは、大胸筋領域Pではなく、乳房画像MGの直接線領域に参考情報Rを表示する。直接線領域は、被検体を透過しないX線が検出された領域であり、乳腺領域Maとは異なる。なお、GUIを参考情報Rとする場合、参考情報Rは、直接線領域のほか、ディスプレイ22において、乳房画像MGが表示される領域(ウィンドウ)とは異なる領域に表示されてもよい。
【0074】
また、スライダーを参考情報Rとする場合、参考情報Rは、輝度値表示部S1と可動部S2とを有する。輝度値表示部S1は、例えば、大胸筋領域Pの輝度値の範囲を表すカラーバーである。輝度値表示部S1の上端は大胸筋領域Pの最大輝度値を表し、輝度値表示部S1の下端は大胸筋領域Pの最小輝度値を表す。可動部S2は、輝度値表示部S1において、乳腺領域Maに対応する画像特徴量(例えば、乳腺領域Maの輪郭を示す輝度値や乳腺領域Maの平均輝度値、最頻値、中央値等)を表す位置に表示される。これにより、ユーザは、乳腺領域Maに対応する画像特徴量を視覚的に把握できる。なお、輝度値表示部S1は、輝度値を目盛りで表してもよい。
【0075】
また、スライダーを参考情報Rとする場合においても、参考情報Rと乳房画像MGに表示された乳腺領域Maとは相互に連動させてもよい。具体的には、第2の実施形態で説明したように、入力インターフェース23を介したユーザの操作によって、乳腺領域Maの位置及び大きさの少なくとも一方が変更された場合、参考情報取得部25cは、変更後の乳腺領域Maに対応する画像特徴量を表す位置に、参考情報R(スライダー)の可動部S2を移動してもよい。また、入力インターフェース23を介したユーザの操作によって、参考情報R(スライダー)の可動部S2が移動された場合、画像取得部25bは、可動部S2の移動後の位置に基づいて、新たに乳腺領域Maを設定してもよい。
【0076】
なお、GUIによる参考情報Rは、例えば、ユーザから数値入力を受け付けるEdit Box等、入力インターフェース23を介したユーザの操作を受け付け、乳腺領域Maに対応する画像特徴量を変化させるものでもよい。
【0077】
また、参考情報の他の例としては、Pixel LabelやBounding Boxがあってもよい。Pixel Labelは、画素毎に指定されるTrueかFalseのいずれかのラベルである。この場合、参考情報表示部25cは、例えば、大胸筋領域Pのうち、大胸筋領域Pの平均輝度値を有する画素にTrueのラベルを付けて、大胸筋領域Pの平均輝度値と異なる輝度値を有する画素にFalseのラベルを付ける。その後、参考情報表示部25cは、Falseのラベルが付けられた画素を特定の表示色にする。当該特定の表示色は、例えば、大胸筋領域Pの輝度値の最小値や、乳房画像MGの輝度値の最小値などである。これにより、大胸筋領域Pのうち、Trueのラベルが付けられた画素が相対的に強調されて表示される。または、Trueのラベルが付けられた画素だけ半透明に色塗りしてもよい。これにより、ユーザは、Trueのラベルが付けられた画素が分布する領域を把握することができる。また、Bounding Boxは、例えば、当該Pixel Labelにて、Trueのラベルが付けられた画素を囲む長方形の領域である。
【0078】
(第5の実施形態)
これまでの各実施形態においては、マンモグラフィ装置1によって医用情報処理を実施する例を説明したが、マンモグラフィ装置1以外の装置で当該医用情報処理を実施してもよい。換言すると、マンモグラフィ装置1によって医用情報処理装置を実現する場合に限らず、マンモグラフィ装置1以外のワークステーション等の装置によって医用情報処理装置を実現してもよい。
【0079】
図13は、第5の実施形態に係る医用情報処理装置2の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る医用情報処理装置2は、第1の実施形態に係るメモリ21、ディスプレイ22、入力インターフェース23、ネットワークインターフェース24、処理回路25それぞれに相当するメモリ51、ディスプレイ52、入力インターフェース53、ネットワークインターフェース54、処理回路55を備える。
【0080】
処理回路55は、メモリ51に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、画像取得部55a、参考情報表示部55b、評価部55cとして機能する。画像取得部55aは、画像取得部の一例である。参考情報表示部55bは、参考情報表示部の一例である。評価部55cは、評価部の一例である。
【0081】
画像取得部55aは、ネットワークインターフェース54を介して通信可能に接続されたマンモグラフィ装置1やPACS3から、被検体の乳房Bを表す乳房画像を取得する。PACS3は、マンモグラフィ装置1により生成された乳房画像を含む種々の医用画像ファイルを管理するシステムである。なお、参考情報表示部55b、評価部55cは、それぞれ上述した各実施形態と各変形例とにおける参考情報表示部25c、評価部25dの機能を有する。このように、医用情報処理装置2は、上述した各実施形態と各変形例に係るマンモグラフィ装置1に相当する機能を有する。
【0082】
医用情報処理装置2によれば、第1の実施形態で説明した例のように、乳腺領域とは異なる領域に、当該乳腺領域に対応する画像特徴量を有する参考情報を表示することができる。
【0083】
医用情報処理装置2によれば、第2の実施形態で説明した例のように、ユーザの操作に応じて、表示された前記乳腺領域の位置及び大きさの少なくとも一方を変更する。その後、更に、乳腺領域の変更に応じて、参考情報の位置及び大きさの少なくとも一方を変更することができる。
【0084】
医用情報処理装置2によれば、第3の実施形態で説明した例のように、複数の乳房画像が取得されて、1つ乳房画像上に乳腺領域が表示されることに応じて、当該1つ乳房画像と異なる乳房画像上に乳腺領域を表示させることができる。更に、当該1つ乳房画像上に乳腺領域が設定されることに応じて、乳腺領域とは異なる領域に参考情報を表示することができる。
【0085】
医用情報処理装置2によれば、第4の実施形態で説明した例のように、参考情報Rの表示形態は、関心領域に限定されない。
【0086】
各実施形態と各変形例とにおいて、各種データは、メモリ(メモリ21、55)ではなく(あるいはメモリに加えて)、装置(マンモグラフィ装置1、医用情報処理装置2)が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0087】
各実施形態と各変形例とにおいて、処理回路(処理回路25、55)は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成されて、各プロセッサがプログラムを実行することにより処理回路の各機能を実現するものとしても構わない。また、
図1や
図12においては単一のメモリ(メモリ21、メモリ51)が処理回路の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数のメモリを分散して配置して、処理回路は個別のメモリから対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0088】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは特定用途向けの集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、プログラムブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD: Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサが、例えば、CPUである場合、プロセッサはメモリ(メモリ21、メモリ51)に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリにプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。
【0089】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、乳腺領域の決定を支援することができる。
【0090】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 マンモグラフィ装置
2 医用情報処理装置
11 X線照射部
13 X線検出器
14 載置台
15 圧迫板
25a 撮影制御部
25b 画像取得部
25c 参考情報表示部
25d 評価部
55a 画像取得部
55b 参考情報表示部
55c 評価部
MG 乳房画像
MG1 一の乳房画像
MG2 他の乳房画像
Ma、Ma’、Ma1、Ma2 乳腺領域
P 大胸筋領域
R、R’、R1、R2 参考情報