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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148575
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】包装袋、及びシート包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/02 20060101AFI20231005BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20231005BHJP
   B65D 33/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B65D30/02
B65D83/08 B
B65D83/08 G
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056679
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 忍
(72)【発明者】
【氏名】藁科 真一
【テーマコード(参考)】
3E014
3E064
【Fターム(参考)】
3E014LB01
3E014MC07
3E064AA09
3E064BA01
3E064BA27
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA12
3E064FA01
3E064GA02
3E064HM01
3E064HP02
(57)【要約】
【課題】開封しやすい紙製の包装袋を提供すること。
【解決手段】複数枚のシートが積層されたシート積層体を収容する包装袋であって、前記シート積層体の密度が、0.09g/cm以上0.50g/cm以下であり、前記包装袋は、紙成分を含む基材で構成され、前記包装袋の内側に配置される前記基材の内面の第1静摩擦係数が、0.25以上0.5以下であり、前記包装袋の外側に配置される前記基材の外面の第2静摩擦係数が、0.3以上0.65以下であり、前記第1静摩擦係数と前記第2静摩擦係数との比が、0.5以上0.9以下である、包装袋。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシートが積層されたシート積層体を収容する包装袋であって、
前記シート積層体の密度が、0.09g/cm以上0.50g/cm以下であり、
前記包装袋は、紙成分を含む基材で構成され、
前記包装袋の内側に配置される前記基材の内面の第1静摩擦係数が、0.25以上0.5以下であり、
前記包装袋の外側に配置される前記基材の外面の第2静摩擦係数が、0.3以上0.65以下であり、
前記第1静摩擦係数と前記第2静摩擦係数との比が、0.5以上0.9以下である、
包装袋。
【請求項2】
前記基材は、
前記紙成分を含む基層と、
前記基層の一方の面に積層され、前記包装袋の内側に配置される内層と、を含み、
前記内層は、熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂は、スリップ剤を含有する、
請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記基材は、
前記紙成分を含む基層と、
前記基層の他方の面に積層され、前記包装袋の外側に配置される外層と、を含み、
前記外層は、グリップ剤を含有する、
請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記第1静摩擦係数および前記第2静摩擦係数は、前記基材のCD方向と前記シートのMD方向との間の静摩擦係数である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記包装袋の天面に、前記基材のMD方向に沿う開裂用切目線が形成されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装袋と、
前記包装袋に収容されたシートと、を有する、
シート包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋、及びシート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパータオルやティシューペーパー等のシートが収容されたシート包装体は、樹脂フィルム製の包装袋に複数枚のシートが収容された状態で流通され、使用される(例えば、特許文献1、2)。近年、CO排出に伴う地球温暖化やマイクロプラスチック等の海洋汚染等の環境負荷を抑制する等の観点から、シート包装体に用いる包装袋を樹脂製から紙製に変更し、包装袋における樹脂の使用量を低減する動きが活発になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-183034号公報
【特許文献2】特開2018-177364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紙製の包装袋は、樹脂製の包装袋に比べて柔軟性がないため、開封用のミシン目を設けた場合に、ミシン目が開裂しづらく開封しにくい。
【0005】
本発明の課題は、開封しやすい紙製の包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の態様は、複数枚のシートが積層されたシート積層体を収容する包装袋であって、前記シート積層体の密度が、0.09g/cm以上0.50g/cm以下であり、前記包装袋は、紙成分を含む基材で構成され、前記包装袋の内側に配置される前記基材の内面の第1静摩擦係数が、0.25以上0.5以下であり、前記包装袋の外側に配置される前記基材の外面の第2静摩擦係数が、0.3以上0.65以下であり、前記第1静摩擦係数と前記第2静摩擦係数との比が、0.5以上0.9以下である、包装袋を提供する。
【0007】
本明細書において、紙成分は、植物繊維を膠着させたものである。シート積層体の密度は、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される密度である。静摩擦係数は、相対運動を行っていない状態で2つの物体の接触面に生じる摩擦力と接触面に直角に作用する力との比を示す。
【0008】
包装袋の外側は、包装袋に収容されたシートに基材が接しない側(すなわち、包装袋にシートが収容される側と反対の側または基材の外層が形成された側)を示す。包装袋の内側は、包装袋に収容されたシートに基材が接する側(すなわち、包装袋にシートが収容される側または基材の内層が形成された側)を示す。
【0009】
第1の態様では、密度が0.09g/cm以上0.50g/cm以下のシート積層体に対して、基材内面の第1静摩擦係数が0.25以上0.5以下、基材外面の第2静摩擦係数が0.3以上0.65以下、第1静摩擦係数と第2静摩擦係数との比が0.5以上0.9以下である。これにより、包装袋を構成する基材の内面に一定の摩擦力が生じ、基材の外面には、基材の内面に生じる摩擦力よりも大きい摩擦力が生じる。
【0010】
そのため、基材の内面に生じる摩擦力は、同じシート積層体を基準にした場合、基材内面では相対的に小さくなり、基材外面では相対的に大きくなる。このような構成では、基材に触れた手指が基材に対して滑りにくくなるため、紙製の包装袋にミシン目を設けた場合、ミシン目が開裂しやすくなり、紙製の包装袋であっても開封が容易になる。
【0011】
本発明に係る第2の態様は、前記基材は、前記紙成分を含む基層と、前記基層の一方の面に積層され、前記包装袋の内側に配置される内層と、を含み、前記内層は、熱可塑性樹脂を含み、前記熱可塑性樹脂は、スリップ剤を含有する、包装袋を提供する。本明細書において、スリップ剤は、摩擦係数を低下させる添加剤である。
【0012】
第2の態様では、包装袋の基材が、紙成分を含む基層と、該基層の一方の面に積層され、包装袋の内側に配置される内層とを含み、該内層がスリップ剤を含有する熱可塑性樹脂を含むことで、基材内面とシート積層体との間の静摩擦係数を小さくすることができる。これにより、基材内面がシートに対して滑りやすくなるため、紙製の包装袋にミシン目を設けた場合、ミシン目が開裂しやすくなり、紙製の包装袋でも開封が容易になる。
【0013】
本発明に係る第3の態様は、前記基材は、前記紙成分を含む基層と、前記基層の他方の面に積層され、前記包装袋の外側に配置される外層と、を含み、前記外層は、グリップ剤を含有する、包装袋を提供する。本明細書において、グリップ剤は、摩擦係数を増加させる添加剤である。
【0014】
第3の態様では、包装袋の基材が、紙成分を含む基層と、該基層の他方の面に積層され、包装袋の外側に配置される外層とを含み、該外層がグリップ剤を含むことで、基材の外層と基材の外層に触れる人の手指(以下、手指という)との間に生じる摩擦力を大きくすることができる。これにより、基材に触れた手指が基材に対して滑りにくくなるため、紙製の包装袋にミシン目を設けた場合、ミシン目が開裂しやすくなり、紙製の包装袋でも開封が容易になる。
【0015】
本発明に係る第4の態様は、前記第1静摩擦係数および前記第2静摩擦係数は、前記基材のCD方向と前記シートのMD方向との間の静摩擦係数である、包装袋を提供する。
【0016】
第4の態様では、基材内面のCD方向とシートのMD方向との間の静摩擦係数を第1静摩擦係数とすることで、基材内面のCD方向がシートのMD方向に対して滑りやすくなる。また、基材外面のCD方向とシートのMD方向の間の静摩擦係数を第2静摩擦係数とすることで、基材外面のCD方向がシートのMD方向に対して滑りやすくなる。
【0017】
これにより、シートのMD方向が基材のCD方向に沿うようにシートを包装袋に収容し、ミシン目を基材のMD方向に形成した場合、包装袋のミシン目が形成された面を両手の親指で押さえ、基材のCD方向に各親指が離れるように移動させると、ミシン目が開裂する。このとき、ミシン目は少ない力で簡単に開裂するため、包装袋の開封がさらに容易になる。
【0018】
本発明に係る第5の態様は、前記包装袋の天面に、前記基材のMD方向に沿う開裂用切目線が形成されている、包装袋を提供する。本明細書において、開裂用切目線は、カットとタイ(2つのカット間のカットされていない部分)が交互に配置され、タイが破断すると両隣のカットが連続したカットになる切目線(例えば、ミシン目)を示す。
【0019】
第5の態様では、基材のMD方向に沿う開裂用切目線を包装袋の天面に形成することで、包装袋の天面を両手の親指で押さえ、基材のCD方向に各親指が離れるように移動させるだけで、開裂用切目線が開裂するため、包装袋を簡単に開封することができる。また、開裂した開裂用切目線は、包装袋の天面に形成された、シートの取出口を構成することができる。
【0020】
本発明に係る第6の態様は、第1乃至第7の態様に係る包装袋と、前記包装袋に収容されたシートと、を有する、シート包装体を提供する。第6の態様では、上述の包装袋にシートが収容されたシート包装体を構成することで、上述の包装袋と同様の効果が得られる。すなわち、第6の態様によれば、シート包装体を構成する包装袋を紙製にした場合でも、紙製の包装袋が開封しやすいシート包装体を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、開封しやすい紙製の包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】包装袋にシートが収容されたシート包装体を示す図である。
図2】包装袋に収容されるシートを示す図である。
図3図1のシート包装体を天面側から見た図である。
図4図1のシート包装体を底面側から見た図である。
図5図1のシート包装体を正面側から見た図である。
図6図1のシート包装体を背面側から見た図である。
図7図1のシート包装体を左側面側から見た図である。
図8図1のシート包装体を右側面側から見た図である。
図9】包装袋の基材の断面の一例を示す図である。
図10】シート包装体の包装袋を開封した状態を示す図である。
図11】シート包装体の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<包装体>
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、各図において、各部の縮尺は実際とは異なる場合がある。なお、各図では、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の3次元直交座標系を用い、包装袋の長手方向をX方向とし、幅方向をY方向とし、高さ方向(上下方向または厚み方向)をZ方向とする。
【0024】
図1は、実施形態の包装袋にシートが収容されたシート包装体を示す図である。図2は、実施形態の包装袋に収容されるシートを示す図である。図3図4図5図6図7図8は、図1のシート包装体を天面側、底面側、正面側、背面側、左側面側、右側面側からそれぞれ見た図である。
【0025】
シート包装体100は、図1に示すように、包装袋10、シート積層体20(複数枚のシートS)を有する。シート包装体100は、本実施形態に係るシート包装体の一例である。また、包装袋10は、本実施形態に係るシート包装体を構成する包装袋の一例である。シート積層体20は、本実施形態に係る包装袋に収容されるシートの一例である。
【0026】
包装袋10には、図2に示すように、積層された複数枚(または複数組)のシートS(シート積層体20)が収容される。シート積層体20は、シートSの積層方向(SD方向)が高さ方向(Z方向)となるように包装袋10に収容されている。シート積層体20は、包装袋10に形成された後述の取出口(開口OP)を通してシートSが1組ずつ引き出せるようになっている(図11参照)。
【0027】
シート積層体20の形態は、特に限定されず、例えば、シートSが折りたたまれた状態で積層されたもの、各シートSが折り込まれた状態で互い違いに積層されたもの(いわゆるポップアップ式のシート積層体)、複数枚のシートSが単に積層されたもの等を採用することができる。
【0028】
また、シートS(シート積層体20)の寸法は、包装袋10の長手方向(X方向)の長さL2を150~250mm程度、包装袋10の長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)の幅W2を70~150mm程度、高さ方向(Z方向)の高さH2を20~100mm程度とすることができる(図2図3参照)。このような薄葉紙の積層体は、例えば、ロータリー式又はマルチスタンド式インタフォルダによって製造することができる。
【0029】
シート積層体の密度は、0.09g/cm以上0.50g/cm以下であり、好ましくは0.13g/cm以上0.40g/cm以下、より好ましくは0.15g/cm以上0.30g/cm以下である。シート積層体の密度は、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0030】
シートSの態様は、特に限定されず、例えば、ペーパータオル、キッチンペーパー、ティシューペーパー、トイレットペーパー等の衛生薄葉紙に適用可能である。これらの衛生薄葉紙には、保湿成分を含んだ衛生薄葉紙(例えば、ローションティシュー等)も含まれる。
【0031】
また、シートSの用途は、特に限定されず、産業用、家庭用、携帯用のいずれも適用できる。なお、本実施形態におけるシートとしては、これらの中でも、家庭用、携帯用のペーパータオルが好適に用いられる。
【0032】
シートSのプライ数は、特に限定されないが、1プライ以上にすることができ、好ましくは1プライまたは2プライ(2枚重ね)である。また、シートSの形状は、特に限定されないが、例えば、2プライのシートが折りたたまれた状態で輪郭形状が四角形(長方形、正方形等)のものであることが好ましい。
【0033】
シートSの材質は、特に限定されないが、例えば、紙、不織布または布等のシートを用いることができ、好ましくは紙(紙シート)である。なお、シートSが紙シートの場合、パルプを主原料とする原紙が用いられる。パルプ組成は、紙シートにおける公知の組成を用いることができる。例えば、パルプの配合割合を、50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%とすることができる。
【0034】
また、シートS(紙シート)におけるパルプ組成は、特に限定されない。例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプとを、任意の比率で使用することができる。
【0035】
なお、シートS(紙シート)において、広葉樹パルプと針葉樹パルプの比は、限定されないが、好ましくは10:90~80:20であり、より好ましくは広葉樹パルプに対して針葉樹パルプの比率がより多いパルプ組成である。また、シートS(紙シート)に含まれるパルプには、古紙パルプを用いても良い。
【0036】
シートSの坪量は、特に限定されないが、プライ数に応じて、紙の場合は5g/m以上80g/m以下であり、好ましくは10g/m以上60g/m以下、より好ましくは10g/m以上45g/m以下である。また、不織布の場合は20g/m以上100g/m以下のものが望ましい。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0037】
また、シートS(紙シート)の厚みは、特に限定されず、JIS P 8111(1998)の環境下で測定された紙厚を採用することができる。例えば、シートSが紙の場合、紙厚は、2プライあたり、50μm以上600μm以下であり、好ましくは60μm以上500μm以下、より好ましくは130μm以上400μm以下である。
【0038】
また、シートS(紙シート)には、エンボス加工が施されていてもよい。このようなエンボス加工は、公知のエンボス付与方法により実施することができる。
【0039】
包装袋10の形態は、特に限定されない。本実施形態では、天面11、底面12、側面13、側面14、妻面15、妻面16を有する。なお、包装袋10では、天面11と底面12が上下方向(Z方向)に対向し、側面13と側面14が幅方向(Y方向)に対向し、妻面15と妻面16が長手方向(X方向)に対向する。また、妻面15、16は、天面11、底面12、側面13、および側面14のいずれにも連続する(図1図3図8)。
【0040】
包装袋10の寸法は、特に限定されない。例えば、包装袋10の長手方向(X方向)の長さL1は150~250mm程度、包装袋10の長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)の幅W1は70~150mm程度、高さ方向(Z方向)の高さH1は20~100mm程度とすることができる(図1図3)。なお、包装袋10の寸法は、包装袋10にシート積層体20が収容された状態での寸法を示す(図1図2)。
【0041】
包装袋10の天面11、妻面15の天面11側、妻面16の天面11側には、包装袋10の長手方向(X方向)に延びる取出口が形成されている。具体的には、取出口は、開裂用切目線30が形成されている。開裂用切目線30は、カットCとタイT(2つのカットC、C間のカットされていない部分)が交互に配置され、タイTが破断すると両隣のカットCが連続したカットになる切目線である(図1図3図7図8)。
【0042】
本実施形態では、開裂用切目線30は、カットCとタイTが交互に配置された直線状のミシン目Mを構成する(図1図3図7図8)。開裂用切目線30(ミシン目)のタイTとカットCの比は、任意であるが、例えば、1:1~1:7とすることができ、好ましくは1:1.3~1:5、より好ましくは1:1.5~3である。
【0043】
本実施形態の包装袋10では、この開裂用切目線30(ミシン目M)が開裂することで、包装袋10の天面11にシートSが引き出される取出口(開口OP)が形成される(図1図10)。
【0044】
なお、開裂用切目線30の作製方法は、任意である。例えば、図示しないが、針部と台部の間に、後述する包装袋10の基材BSを配置し、針部の先端を台部の受溝に向けて刺すことで、開裂用切目線30を形成することができる。
【0045】
包装袋10では、通気孔(図示せず)を形成してもよい。通気孔は、包装袋10の空気穴として機能することができる。通気孔の位置は、特に限定されず、本実施形態では、包装袋10の側面13、側面14、妻面15、16に、通気孔を設けることができる。通気孔の数は限定されない。また、通気孔の形状は、限定されず、例えば、平面視で円形である。さらに、通気孔の寸法は、限定されず、例えば、約2mmの径寸法である。
【0046】
なお、通気孔の作製方法は、任意であり、例えば、上述の開裂用切目線30と同様に、針部と台部の間に包装袋10の基材BSを配置し、針部の先端を台部の受溝に向けて刺すことで、通気孔を形成することができる。なお、通気孔を形成する場合は、台部に受溝が設けられていないものを用いてもよい。
【0047】
このような通気孔を包装袋10に設けることで、シート包装体100の保管時や輸送時に包装袋が破裂しにくくなる。
【0048】
包装袋10の包装形態は、特に限定されず、例えば、包装袋10の基材BSが筒状に加工され、該筒状の基材BSの開口端部がシール(封止)されたもの(ピロー包装袋)、筒状の包装袋10用シートの両端部が折りたたまれてシール(封止)されたもの(キャラメル包装袋)、または、これらを組み合わせたもの等を採用することができる。なお、ピロー包装袋の場合、筒状の基材BSは、ガセット状に折り込まれていてもよい。
【0049】
本実施形態では、包装袋10が少なくとも1つのシール部を有するピロー包装袋で構成されている。具体的には、包装袋10の妻面15、16にシール部(エンドシール)40、50が形成され、包装袋10の底面12にシール部(ボトムシール)60が形成されて、シートS(シート積層体20)がピロー包装されている。
【0050】
本実施形態の包装袋10では、シール部40、50、60が熱溶着されている。ここで、熱溶着は、基材BSの一部を加熱して包装袋用シートの一部同士を溶着することを示す
具体的には、後述する基材BSの内層(樹脂層)10Bが包装袋10の内側に配置された状態で、シール部40、50、60が熱溶着されている。
【0051】
包装袋10では、シール部40の接合ピッチ、シール部50の接合ピッチ、シール部60の接合ピッチが、それぞれ好ましくは0.5mm以上2mm以下であり、より好ましくは0.8mm以上1.8mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上1.5mm以下である。
【0052】
ここで、接合ピッチは、シール部40、50、60の一方の側(例えば、包装袋10の底面12側)から見たときに凸状に接着される部分(図示せず)の所定方向(シール部40、50については包装袋10の幅方向(Y方向)、シール部60については包装袋10の長手方向(X方向))における間隔を示す。
【0053】
本実施形態では、上述のように、シール部(シール部40、50、60)の接合ピッチを0.5mm以上2mm以下にすることで、後述する基層(紙層)10Aに設けられた内層(樹脂層10B)の接着機能を高めることができ、よりシール性の高い包装袋10(ピロー包装袋)が得られる。
【0054】
包装袋10は、紙成分を含む基材BSで構成されている。ここで、紙成分は、植物繊維を膠着させたもの(パルプ)である。紙成分におけるパルプ組成は、限定されず、例えば、広葉樹パルプと針葉樹パルプの比が0:100~70:30であり、好ましくは広葉樹パルプに対して針葉樹パルプの比率がより多いパルプ組成である。また、パルプには、古紙パルプを用いても良い。
【0055】
第1実施形態の包装袋10を構成する基材BSは、基層10A、内層10B、外層10Cで構成されている。第1実施形態における基材BSは、紙層10Aの各面に内層10B、外層10Cが積層された3層構造を構成する(図9)。
【0056】
基層10Aは、基材BSの基部を構成する。また、基層10Aは、上述の紙成分を含む紙層を構成する。すなわち、基材BSは、紙成分を含む基層10Aを含む。
【0057】
基層(紙層)10Aに含まれる紙成分の材質は、特に限定されないが、例えば、クラフト紙またはレーヨン紙で形成することができる。
【0058】
ここで、クラフト紙は、クラフトパルプを原料とする紙である。また、レーヨン紙は、木材パルプなどから化学合成して作られたレーヨン繊維をクラフトパルプに配合させたものである。なお、レーヨン紙は、包装袋10の柔らかさと強度を両立させる観点から、レーヨン繊維の配合率が質量比で20%以下のものが好ましい。
【0059】
基層(紙層)10Aの坪量は、限定されないが、好ましくは10g/m以上70g/m以下であり、より好ましくは15g/m以上60g/m以下、さらに好ましくは20g/m以上50g/m以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0060】
基層(紙層)10Aの厚みは、限定されないが、例えば、好ましくは20μm以上300μm以下であり、より好ましくは30μm以上200μm以下、さらに好ましくは40μm以上180μm以下である。なお、厚みは、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0061】
基層(紙層)10Aの引張強度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(流れ方向またはMD方向)に500cN/m以上20000cN/m以下、好ましくは1000cN/m以上15000cN/m以下より好ましくは1500cN/m以上12000cN/m以下である。
【0062】
また、繊維の横方向(流れ方向と直交する方向またはCD方向)に100cN/m以上10000cN/m以下、好ましくは300cN/m以上7000cN/m以下より好ましくは500cN/m以上4000cN/m以下である。なお、引張強度は、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定される。
【0063】
基層(紙層)10Aの伸びは、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(MD方向)に0.5%以上%30%以下、好ましくは1%以上25%以下、より好ましくは2%以上20%以下である。また、繊維の横方向(CD方向)に0.5%以上%20%以下、1%以上10%以下、2%以上5%以下である。なお、伸びは、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定される。
【0064】
基層(紙層)10Aの引裂強度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(MD方向)に50mN以上500mN以下、好ましくは80mN以上480mN以下より好ましくは100mN以上450mN以下である。
【0065】
また、繊維の横方向(CD方向)に50mN以上1000mN以下、好ましくは80mN以上900mN以下より好ましくは100mN以上800mN以下である。なお、引裂強度は、JIS P 8116(2000)の規定に準拠して測定される。
【0066】
内層10Bは、基層(紙層)10Aの一方の面に積層され、熱可塑性樹脂を含む樹脂層を構成する。内層(樹脂層)10Bは、包装袋10の内側に配置されている。ここで、包装袋10の内側は、包装袋10に収容されたシートSに基材BSが接する側(すなわち、包装袋10にシートSが収容される側または基材BSの内層10Bが形成された側)を示す。
【0067】
内層10Bには、包装袋10の内側(包装袋10にシートSが収容される側)に配置される基材BSの内面ISが構成される。なお、包装袋10の内側に配置される基材BSの内面ISは、包装袋10に収容されたシートSに基材BSが接する側の面(すなわち、基材BSの内層10Bが形成された側または基材BSの外層が形成された側の面と反対側の面)に対応する。
【0068】
内層(樹脂層)10Bに含まれる熱可塑性樹脂の材質は、特に限定されないが、好ましくは低密度ポリエチレンである。なお、低密度ポリエチレンとしては高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)のいずれでもよい。
【0069】
内層(樹脂層)10Bの厚みは、限定されないが、好ましくは5μm以上40μm以下であり、より好ましくは7μm以上35μm以下であり、さらに好ましくは9μm以上30μm以下である。なお、紙厚は、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0070】
内層(樹脂層)10Bに含まれる熱可塑性樹脂には、スリップ剤が含まれている。ここで、スリップ剤は、内層10Bの表面(内面)の摩擦係数を低下させる添加剤である。スリップ剤は、本実施形態では、内層(樹脂層)10Bに含まれる熱可塑性樹脂に添加されているが、基材BSの内面ISに塗工されていてもよい。
【0071】
スリップ剤の成分は、特に限定されないが、例えば、エチレンホモポリマー、脂肪酸アミド、植物性油等を主成分として用いることができる。なお、熱可塑性樹脂に対するスリップ剤の含有量は、特に限定されない。また、スリップ剤には、主成分の他に、スリップ剤の安定性を維持する等の目的に応じて添加剤が含まれていてもよい。
【0072】
本実施形態では、包装袋10の基材BSが、紙成分を含む基層10Aと、該基層10Aの一方の面に積層され、包装袋10の内側に配置される内層10Bとを含み、該内層10Bがスリップ剤を含有する熱可塑性樹脂を含むことで、基材BSとシートSとの間の摩擦力を小さくすることができる。これにより、基材BSがシートSに対して滑りやすくなるため、紙製の包装袋10にミシン目Mを設けた場合、ミシン目Mが開裂しやすくなり、紙製の包装袋10であっても開封が容易になる(図1図10)。
【0073】
外層(印刷層)10Cは、紙層10Aの他方の面に設けられ、包装袋の表面に印刷される印刷層を構成する。外層(印刷層)10Cは、包装袋10の外側に配置されている。ここで、包装袋10の外側は、包装袋10に収容されたシートSに基材BSが接しない側(すなわち、包装袋10にシートSが収容される側と反対の側または基材BSの内層10Bが形成された側)を示す。
【0074】
外層(印刷層)10Cには、包装袋10の外側(包装袋10にシートSが収容される側と反対の側)に配置される基材BSの外面OSが構成される。なお、包装袋10の外側に配置される基材BSの外面OSは、包装袋10に収容されたシートSに接しない側の面(すなわち、基材BSの外層10Cが形成された側の面または基材BSの内層10Bが形成された側と反対側の面)に対応する。
【0075】
外層(印刷層)10Cには、グリップ剤が含まれている。ここで、グリップ剤は、外層10Cの表面(外面)の摩擦係数を増加させる添加剤である。グリップ剤は、本実施形態では、基材BSの外面OSに塗工されているが、外層(印刷層)10Cに含まれていてもよい。
【0076】
グリップ剤の成分は、特に限定されないが、例えば、メジュームインキ(合成樹脂)、油性ニス等を主成分として用いることができる。なお、外層(印刷層)10Cに対するグリップ剤の使用量は、特に限定されない。また、グリップ剤には、主成分の他に、グリップ剤の安定性を維持する等の目的に応じて助剤、溶剤が含まれていてもよい。
【0077】
本実施形態では、包装袋10の基材BSが、紙成分を含む基層10Aと、該基層10Aの他方の面に積層され、包装袋10の外側に配置される外層10Cとを含み、該外層10Cがグリップ剤を含むことで、基材BSの外層10Cと基材BSの外層10Cに触れる人の手指(以下、手指という)との間に生じる摩擦力を大きくすることができる。これにより、基材BSに触れた手指が基材BSに対して滑りにくくなるため、紙製の包装袋10にシートSを設けた場合、シートSが開裂しやすくなり、紙製の包装袋10であっても開封が容易になる(図1図10)。
【0078】
本実施形態では、包装袋10(基材BS)における紙成分の比率は、50%以上となっている。
【0079】
包装袋10(基材BS)の坪量は、限定されないが、好ましくは20g/m以上100g/m以下であり、より好ましくは25g/m以上70g/m以下、さらに好ましくは30g/m以上60g/m以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0080】
包装袋10(基材BS)の厚み(紙厚)は、限定されないが、例えば、25μm以上350μm以下であり、好ましくは30μm以上250μm以下、より好ましくは45μm以上200μm以下である。なお、厚みは、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定された厚みを採用することができる。
【0081】
包装袋10(基材BS)の引張強度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(MD方向)に1000cN/m以上20000cN/m以下、好ましくは1500cN/m以上18000cN/m以下より好ましくは2000cN/m以上15000cN/m以下である。
【0082】
また、繊維の横方向(CD方向)に500cN/m以上10000cN/m以下、好ましくは1000cN/m以上8000cN/m以下より好ましくは1500cN/m以上5000cN/m以下である。なお、引張強度は、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定される。
【0083】
包装袋10(基材BS)の伸びは、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(MD方向)に0.5%以上%30%以下、好ましくは1%以上25%以下、より好ましくは2%以上20%以下である。また、繊維の横方向(CD方向)に0.5%以上%20%以下、1%以上10%以下、1.5%以上5%以下である。なお、伸びは、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定される。
【0084】
包装袋10の引裂強度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(MD方向)に50mN以上500mN以下、好ましくは80mN以上450mN以下より好ましくは100mN以上400mN以下である。
【0085】
また、繊維の横方向(CD方向)に200mN以上1000mN以下、好ましくは250mN以上900mN以下より好ましくは300mN以上800mN以下である。なお、引裂強度は、JIS P 8116(2000)の規定に準拠して測定される。
【0086】
包装袋10(基材BS)のテーバー剛度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(MD方向)に0.01mN/m以上0.2mN/m以下、好ましくは0.02mN/m以上0.17以下、より好ましくは0.03mN/m以上0.15mN/m以下である。
【0087】
また、繊維の横方向(CD方向)に0.001mN/m以上0.2mN/m以下、好ましくは0.01mN/m以上0.15mN/m以下、より好ましくは0.02mN/m以上0.13mN/m以下である。なお、テーバー剛度は、JIS P 8125(2000)の規定に準拠して測定される。
【0088】
本実施形態の包装袋10では、包装袋10の内側に配置される基材BSの内面IS(基材BSの内層10Bが形成された側の内面IS)が第1静摩擦係数Aを有する。第1静摩擦係数Aは、0.25以上0.5以下であり、好ましくは0.27以上0.48以下、より好ましくは0.3以上0.45以下である。
【0089】
本明細書において、静摩擦係数は、相対運動を行っていない状態で2つの物体の接触面に生じる摩擦力と接触面に直角に作用する力との比を示す。静摩擦係数は、JIS P 8147(2010)水平法の規定に準拠して測定される。
【0090】
第1静摩擦係数Aは、基材BSの内面ISとシートS(坪量33g/mのペーパータオル)との間に生じる静摩擦係数A1として規定することができる。この場合、静摩擦係数A1は、0.3以上0.5以下であり、好ましくは0.33以上0.48以下、より好ましくは0.35以上0.45以下である。
【0091】
また、第1静摩擦係数Aは、基材BSの内面ISとアルミニウム箔(厚み20μm)との間に生じる静摩擦係数A2として規定することができる。この場合、静摩擦係数A2は、0.25以上0.5以下であり、好ましくは0.27以上0.48以下、より好ましくは0.3以上0.45以下である。
【0092】
また、包装袋10の外側に配置される基材BSの外面OS(基材BSの外層10Cが形成された側の外面OS)が第2静摩擦係数Bを有する。第2静摩擦係数Bは、0.3以上0.65以下であり、好ましくは0.35以上0.63以下であり、より好ましくは0.4以上0.6以下である。
【0093】
第2静摩擦係数Bは、基材BSの外面OSとシートS(坪量33g/mのペーパータオル)との間に生じる静摩擦係数B1として規定することができる。この場合、静摩擦係数B1は、0.5以上0.65以下であり、好ましくは0.52以上0.6以下、より好ましくは0.54以上0.57以下である。
【0094】
また、第2静摩擦係数Bは、基材BSの外面OSとアルミニウム箔(厚み20μm)との間に生じる静摩擦係数B2として規定することができる。この場合、静摩擦係数B2は、0.3以上0.54以下であり、好ましくは0.35以上0.53以下、より好ましくは0.4以上0.52以下である。
【0095】
本実施形態の包装袋10では、第1静摩擦係数Aと第2静摩擦係数Bとの比が0.5以上0.9以下であり、好ましくは0.55以上0.89以下、より好ましくは0.6以上0.87以下である。ここで、第1静摩擦係数Aと第2静摩擦係数Bとの比は、第2静摩擦係数に対する第1静摩擦係数Aの比率を示す。
【0096】
なお、第1静摩擦係数Aが静摩擦係数A1、第2静摩擦係数Bが静摩擦係数B1のとき、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比は、0.6以上0.85以下であり、好ましくは0.65以上0.83以下、より好ましくは0.7以上0.8以下である。
【0097】
また、第1静摩擦係数Aが静摩擦係数A2、第2静摩擦係数Bが静摩擦係数B2のとき、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比は、0.5以上0.9以下であり、好ましくは0.55以上0.89以下、より好ましくは0.6以上0.87以下である。
【0098】
なお、このような静摩擦係数を有する基材BSは、包装袋10の全面にわたって形成してもよいし、ミシン目Mが形成された面(例えば、包装袋の天面11)のみに形成してもよい。
【0099】
本実施形態では、このように、密度が0.09g/cm以上0.50g/cm以下のシート積層体20に対して、基材内面ISの第1静摩擦係数Aが0.25以上0.5以下、基材外面OSの第2静摩擦係数Bが0.3以上0.65以下、第1静摩擦係数Aと前記第2静摩擦係数との比が0.5以上0.9以下となっている。これにより、包装袋10を構成する基材BSの内面ISに一定の摩擦力が生じ、基材BSの外面OSには、基材BSの内面ISに生じる摩擦力よりも大きい摩擦力が生じる。
【0100】
そのため、基材BSの内面ISに生じる摩擦力は、同じシート積層体20を基準にした場合、基材内面ISでは相対的に小さくなり、基材外面OSでは相対的に大きくなる(図9)。このような構成では、基材BSに触れた手指が基材BSに対して滑りにくくなるため、紙製の包装袋10にミシン目Mを設けた場合、ミシン目Mが開裂しやすくなり、紙製の包装袋10であっても開封が容易になる(図1図10)。
【0101】
なお、本実施形態では、包装袋10の内側に配置される基材BSの内面ISの第1静摩擦係数Aが0.25以上0.5以下であることで、紙成分を含む基材BSの内面ISがシートSに対して滑りやすい状態になっている。そのため、紙製の包装袋10に設けられたミシン目Mがさらに開裂しやすくなり、包装袋10の開封がさらに容易になる(図1図10)。
【0102】
また、第1静摩擦係数Aと第2静摩擦係数Bとの比を0.5以上0.9以下にすることで、包装袋10に収容されるシートSに対する基材BSの内面IS側の摩擦係数と、基材BSの外面OS側の摩擦係数との差が大きくなる。そのため、紙製の包装袋10に設けられたミシン目Mがより開裂しやすくなるため、包装袋10の開封が容易になる。
【0103】
なお、紙製の包装袋では、開封性を向上させる点で、第1静摩擦係数Aと第2静摩擦係数Bとの差はできるだけ大きい方がよい。一方、第1静摩擦係数Aに対して第2静摩擦係数Bが大きくなりすぎると、紙製の包装袋10に設けられたミシン目Mが包装袋10を開封する前(例えば、包装袋10を用いたシート包装体100の製造時、流通時、保管時等)に開裂するおそれがある。
【0104】
そこで、本実施形態では、第2静摩擦係数Bを0.3以上0.65以下にすることで、基材BSの外面OSが滑りにくくなりすぎずないように第2静摩擦係数Bが調整されるため、包装袋10の開封性を低下させずに、包装袋10の予期せぬ開裂を防ぐことができる。
【0105】
本実施形態の包装袋10では、第1静摩擦係数Aおよび第2静摩擦係数Bは、基材BSのCD方向とシートSのMD方向との間の静摩擦係数に対応する。
【0106】
なお、本実施形態では、基材BSのMD方向は、包装袋10の長手方向(X方向)に対応し、基材BSのCD方向は、包装袋10の幅方向(Y方向)に対応する(図1図3図8)。また、シートSのMD方向は、包装袋10またはシート積層体20の幅方向(Y方向)に対応し、シートSのCD方向は、包装袋10またはシート積層体20の長手方向(X方向)に対応する(図1図2)。
【0107】
本実施形態では、基材内面ISのCD方向とシートのMD方向との間の静摩擦係数を第1静摩擦係数とすることで、基材内面のCD方向がシートのMD方向に対して滑りやすくなる。また、基材外面OSのCD方向とシートのMD方向との間の静摩擦係数を第2静摩擦係数とすることで、基材外面OSのCD方向がシートのMD方向に対して滑りやすくなる。
【0108】
これにより、シートのMD方向が基材のCD方向に沿うようにシートSを包装袋10に収容し、ミシン目Mを基材のMD方向に形成した場合、包装袋のミシン目Mが形成された面を両手の親指で押さえ、基材のCD方向に各親指が離れるように移動させると、ミシン目Mが開裂する。このとき、ミシン目Mは少ない力で簡単に開裂するため、包装袋10の開封がさらに容易になる。
【0109】
本実施形態の包装袋10では、上述のように、包装袋10の天面11に、基材BSのMD方向に沿う開裂用切目線30(ミシン目M)が形成されている。
【0110】
本実施形態では、基材BSのMD方向に沿う開裂用切目線30(ミシン目M)を包装袋10の天面11に形成することで、包装袋10の天面11を両手の親指で押さえ、基材BSのCD方向に各親指が離れるように移動させるだけで、開裂用切目線30(ミシン目M)が開裂するため、包装袋10を簡単に開封することができる。
【0111】
また、本実施形態では、開裂した開裂用切目線30(ミシン目M)は、包装袋10の天面11に形成された、シートSの取出口(開口OP)を構成することができる(図1図10)。そのため、包装袋10の天面11からのシートSの取り出しが可能になる。
【0112】
なお、本実施形態では、開裂用切目線30(ミシン目M)を基材BSのMD方向およびシートSのCD方向に沿って形成し、ミシン目Mが延びる方向と直交方向(基材BSのCD方向およびシートSのMD方向)に静摩擦係数を測定しているが、静摩擦係数を測定するシートS、基材BSの向きは限定されない。例えば、開裂用切目線30(ミシン目M)を基材BSのCD方向およびシートSのMD方向に沿って形成し、ミシン目Mが延びる方向と直交方向(基材BSのMD方向およびシートSのCD方向)に静摩擦係数を測定してもよい。
【0113】
また、本実施形態では、上述のように、シートSのMD方向が基材BSのCD方向に沿うようにシートSを包装袋10に収容した場合について説明したが、シートSのMD方向と基材BSのCD方向との関係に限定されない。すなわち、シートSが包装袋10に収容される方向は、限定されない。例えば、シートSのMD方向が基材BSのMD方向に沿うようにシートSを包装袋10に収容してもよい。
【0114】
本実施形態のシート包装体100は、上述の包装袋10を用いることができる。具体的には、シート包装体100は、包装袋(第1実施形態の包装袋)10と、包装袋10に収容されたシートSと、を有する(図1図2)。
【0115】
本実施形態のシート包装体100は、上述の包装袋10にシートSが収容されたシート包装体として構成されることで、上述の包装袋10と同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態のシート包装体100では、シート包装体100を構成する包装袋10を紙製にした場合でも、紙製の包装袋10に設けられたミシン目Mが開裂しやすくなり、紙製の包装袋であっても開封が容易になる(図1図10)。
【0116】
本実施形態の包装袋10では、上述のように、紙成分を含む基層(紙層)10Aの一方の面に熱可塑性樹脂を含む内層(樹脂層)10Bが設けられていることで、包装袋10の質感が柔らかくなる。これにより、包装袋10のごわごわ感が抑制され、包装袋10に追従性を付与することができる。そのため、包装袋の材質を樹脂製から紙製に変更した場合でも、製造時や輸送時に破断しにくい包装袋10を提供することができる。
【0117】
さらに、本実施形態では、基層(紙層)10Aに内層(樹脂層)10Bが積層されていることで追従性が付与された包装袋10に開裂用切目線30が設けられているため、開裂用切目線30の開裂が容易である。
【0118】
また、本実施形態では、基層(紙層)10Aの一方の面に設けられた内層(樹脂層)10Bが熱可塑性樹脂を含むことで、包装袋10をシール(または封止)する際に内層(樹脂層)10Bを加熱することで、溶けた内層(樹脂層)10Bが接着剤として機能し得る(接着機能を有する)ため、包装袋10のシールが容易である。
【0119】
さらに、本実施形態では、包装袋10における紙成分の比率が50%以上であるため、環境負荷を抑制することができる。
【0120】
本実施形態では、上述のように、内層(樹脂層)10Bの厚みを5μm以上40μm以下にすることで、包装袋における紙成分の比率を50%以上に維持しやすくなる。また、包装袋のごわごわ感を抑制しながら、包装袋のシール時における内層(樹脂層)10Bの接着機能を維持することができる。
【0121】
本実施形態では、上述のように、内層(樹脂層)10Bに含まれる熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを用いることにより、包装袋10のごわごわ感をさらに抑制しながら、包装袋10のシール時における内層(樹脂層)10Bの接着機能を向上させることができる。
【0122】
本実施形態では、上述のように、包装袋10がピロー包装袋であり、内層(樹脂層)10Bが包装袋10の内側に配置された状態で、少なくとも1つのシール部が熱溶着されることで、樹脂層同士を接着することができる。これにより、内層(樹脂層)10Bの接着機能を有効に利用することができるので、シール性の高い包装袋10が得られる。
【実施例0123】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて具体的に説明する。実施例、比較例の評価は、以下の試験により行った。
【0124】
[試験体]
試験体として、複数枚のシートS(シート積層体20)が紙製の包装袋10にピロー包装されたシート包装体100を用意した(図1図8)。
【0125】
包装袋10は、基材BSで構成され、基材BSは、基層10A、内層10B、外層10Cで構成した(図9)。内層10Bの材質は低密度ポリエチレン(PE)とした。外層10Cは、グラビアによる印刷層とした。包装袋10の天面11に、包装袋10の長手方向(MD方向)にシール部40から天面11を通ってシール部50まで延びる開裂用切目線30(ミシン目M)を形成した。ミシン目MのタイTとカットCの比は、実施例、比較例では1:2とした。
【0126】
シートSのシート積層体20は、ペーパータオル1(商品名「エリエール ペーパータオル ダブル(中判)」、大王製紙株式会社製、ダブル(2プライ)、200組(400枚)、高さH1:70mm、長さL1:210mm、幅(奥行)W1:115mm、坪量23g/m、密度0.293g/cm)、ペーパータオル2(商品名「エルヴェール ペーパータオル エコドライ(中判)、大王製紙株式会社製、シングル(1プライ)、200枚、高さH1:67mm、長さL1:210mm、幅(奥行)W1:115mm、坪量33g/m、密度0.194g/cm)、およびティシューペーパー(商品名「エリエール i:na(イーナ)ティシュー ソフトパック」、大王製紙株式会社製、ダブル(2プライ)、150組(300枚)、高さH1:43mm、長さL1:181mm、幅(奥行)W1:103mm、坪量10.7g/m、密度0.171g/cm)を用いた。
【0127】
[米坪]
試験体(シート包装体100)における包装袋10の基材(全層)BS及び基層10Aの米坪(坪量)を、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定した。米坪の単位は、g/mである。
【0128】
[紙厚]
試験体(シート包装体100)における包装袋10の基材(全層)BS及び基層10Aの紙厚(厚み)を、JIS P 8118(2014)の規定に準拠した、ISO紙厚計(CITIZEN社製、MEI-11)を用いて測定した。厚みの単位は、μmである。
【0129】
[引張強度]
試験体(シート包装体100)における包装袋10の基材(全層)BS及び基層10Aについて、JIS P 8113(2006)の規定に準拠した、テンシロン万能試験機(A&D社製、RTG-1210)を用いて、縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)の引張強度(mN)を測定した。
【0130】
[伸び]
試験体(シート包装体100)における包装袋10の基材(全層)BS及び基層10Aについて、JIS P 8113(2006)の規定に準拠した、テンシロン万能試験機(A&D社製、RTG-1210)を用いて、縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)の伸び(%)を測定した。
【0131】
[引裂強度]
試験体(シート包装体100)における包装袋10の基材(全層)BS及び基層10Aについて、JIS P 8116(2000)の規定に準拠して、引裂強度試験機(熊谷理機工業社製、エルメンドルフ引裂度試験機(デジタル表示式))を用いて、繊維の縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)の引裂強度を測定した。
【0132】
[テーバー剛度]
試験体(シート包装体100)における包装袋10の基材(全層)BSのテーバー剛度を、JIS P 8125(2000)の規定に準拠して測定した。テーバー剛度の測定には、テーバー剛度試験機(東洋精機製作所社製)を用いた。
【0133】
[静摩擦係数]
静摩擦係数は、JIS P 8147(2010)水平法の規定に準拠して測定した。静摩擦係数の測定には、ロードセル引張試験機(島津製作所社製、AGS-500B)を用いた。
【0134】
具体的には、包装袋10の基材BSの内面IS(内層10B)のCD方向とシートSのMD方向との間の静摩擦係数A1、及び、基材BSの内面IS(内層10B)のCD方向とシートSのMD方向との間の静摩擦係数A2を測定した。
【0135】
なお、シートSは、坪量33g/mのペーパータオル(商品名「エルヴェールペーパータオル エコドライ シングル(中判)」、大王製紙株式会社製、200枚、高さH1:65mm、長さL1:210mm、幅(奥行)W1:115mm)を用いた。
【0136】
また、包装袋10の基材BSの外面OS(外層10C)のCD方向とシートSのMD方向との間の静摩擦係数B1、及び、包装袋10の基材BSの外面OS(外層10C)のCD方向とアルミニウム箔(アルミ箔ともいう)の光沢面との間の静摩擦係数B2を測定した。
【0137】
なお、アルミニウム箔は、サイズ幅30cm、長さ7m、厚さ20μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製箔製、マイホイル(登録商標))を用いた。
【0138】
静摩擦係数A1、A2、B1、B2の測定では、摩擦試験機の水平版側に基材BSの内面(内層10B)のCD方向が表側になるように基材BSを固定し、摩擦試験機のおもり側にシートSの表のMD方向が表側になるようにシートSを固定した。
【0139】
また、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比を算出した。
【0140】
[ミシン目の開けやすさ]
試験体(シート包装体100)における包装袋10の天面11に形成されたミシン目M(開裂用切目線30)の開けやすさを確認した。試験は、包装袋10にシートS(ウェブ)としてシングルタイプを収容した場合とダブルタイプのペーパータオルシートを収容した場合のそれぞれについて行った。シート包装体100にミシン目の開けやすさの評価は、ユーザー10人が包装袋10のミシン目Mが形成された面(天面11)を両手の親指で押さえ、基材BSのCD方向に各親指が離れるように移動させたとき、開封しづらいと回答した人数が0~2人の場合は5(良好)、3~4人の場合は4、5~6人の場合は3、7~8人の場合は2、9~10人の場合は1、と評価した。評価基準は、以下の通りである。
5:とても開封しやすい
4:開封しやすい
3:開封できる
2:開封できるが開封しにくい
1:開封できない
【0141】
以下、実施例及び比較例について、説明する。
【0142】
[実施例1]
包装袋10の基材BSの内層10Bにスリップ剤を添加したPEを用い、外層10Cにグリップ剤(ニス)を塗工し、静摩擦係数A1が0.44、静摩擦係数A2が0.31、静摩擦係数B1が0.56、静摩擦係数B2が0.42、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比が0.786、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比が0.738であった。包装袋10の条件、シート(ウェブ)の条件、及び評価結果を表1に示す。
【0143】
[実施例2]
静摩擦係数A1が0.45、静摩擦係数A2が0.44、静摩擦係数B1が0.56、静摩擦係数B2が0.51、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比が0.804、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比が0.863であった以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。包装袋10の条件、シート(ウェブ)の条件、及び評価結果を、表1に示す。
【0144】
[実施例3]
摩擦係数A1が0.38、静摩擦係数A2が0.31、静摩擦係数B1が0.55、静摩擦係数B2が0.51、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比が0.691、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比が0.608であった以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。包装袋10の条件、シート(ウェブ)の条件、及び評価結果を、表1に示す。
【0145】
[比較例1]
摩擦係数A1が0.53、静摩擦係数A2が0.47、静摩擦係数B1が0.51、静摩擦係数B2が0.50、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比が1.039、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比が0.940であった以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、評価した。包装袋10の条件、シート(ウェブ)の条件、及び評価結果を、表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
表1より、シート積層体の密度が0.171~0.293g/cm以下であり、静摩擦係数A1が0.38~0.45、静摩擦係数A2が0.31~0.44、静摩擦係数B1が0.55~0.56、静摩擦係数B2が0.42~0.51、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比が0.691~0.804、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比が0.608~0.863の試験体は、ミシン目の開けやすさが良好であった(実施例1~3)。
【0148】
これに対して、摩擦係数A1が0.53、静摩擦係数A2が0.47、静摩擦係数B1が0.51、静摩擦係数B2が0.50、静摩擦係数A1と静摩擦係数B1との比が1.039、静摩擦係数A2と静摩擦係数B2との比が0.940の試験体は、ミシン目の開けやすさが不良であった(比較例1)。
【0149】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0150】
100 シート包装体
10 包装袋
BS 基材
IS 内面
OS 外面
10A 基層(紙層)
10B 内層(樹脂層)
10C 外層(印刷層)
11 天面
12 底面
13、14 側面
15、16 妻面
20 シート積層体
S シート
30 開裂用切目線
M ミシン目
OP 取出口(開口)
40、50 シール部(エンドシール)
60 シール部(ボトムシール)
L1、L2 長さ
W1、W2 幅
H1、H2 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11