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  • 特開-ダイヤフラムバルブ 図1
  • 特開-ダイヤフラムバルブ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148578
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/16 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F16K7/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056682
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】森崎 和之
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラム押さえの位置決めが容易でシートリークを抑制することができるダイヤフラムバルブを提供すること。
【解決手段】ステム4のダイヤフラム押さえ6と当接する端面は平面であり、ダイヤフラム押さえ6のステム4と当接する端面は円柱の中心が最高部6aとなる曲面であり、押さえアダプタ5の内周面とダイヤフラム押さえ6の外周面が摺接しており、ボンネット7の内周面とダイヤフラム押さえ6の外周面は接しないようにしている。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を形成する弁室及び該弁室と連通する流体流路を備えたバルブボディと、
前記弁座と当接離間することで前記流体流路を開閉するダイヤフラムと、
アクチュエータによって作動するステムと、
前記ステムと前記ダイヤフラムとの間に配置され、前記ステムの作動に伴って前記ダイヤフラムを変形する円柱状のダイヤフラム押さえと、
前記バルブボディに固定され、前記ステム及び前記ダイヤフラム押さえが内部に配置される中空のボンネットと、
前記ボンネットと前記バルブボディとの間に介在し、前記ダイヤフラムの周縁部を押圧して前記バルブボディに前記ダイヤフラムを固定する円環状の押さえアダプタと、
を有するダイヤフラムバルブであって、
前記ステムの前記ダイヤフラム押さえと当接する端面は平面であり、
前記ダイヤフラム押さえの前記ステムと当接する端面は円柱の中心が最高部となる曲面であり、
前記押さえアダプタの内周面と前記ダイヤフラム押さえの外周面が摺接しており、
前記ボンネットの内周面と前記ダイヤフラム押さえの外周面は接しないダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記ダイヤフラム押さえは、側面が前記押えアダプタの内周面と摺接するとともに、一端面が前記ステムと当接する曲面の有底筒状の蓋体と、該蓋体の他端面凹所に嵌合されるダイヤフラム押さえ本体とからなる請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記ダイヤフラム押さえの材質が、インバー材である請求項1又は2に記載のダイヤフラムバルブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブに関し、特に半導体製造用プロセスガスの流量制御に適した、ダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造用プロセスガスの流量制御用として、ダイヤフラムを備えるダイヤフラムバルブが知られている(特許文献1、2等)。この種のダイヤフラムバルブにおいて、ダイヤフラム押さえの中心軸と弁座の中心軸が一直線となるよう位置決めを行う必要があり、軸ずれが生じている場合は、シートリークの発生、パーティクルの発生、耐久性の低下の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/039027号
【特許文献2】国際公開第2021/131631号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の一例に示すように、ダイヤフラム押さえをアクチュエータと一体に設ける場合、ダイヤフラム押さえが軸方向に長くなるため、ダイヤフラム押さえの傾きの原因となる。また、特許文献2の一例に示すように、ダイヤフラム押さえとアクチュエータからの推力をダイヤフラム押さえに伝えるステムを別体に設ける場合、ステムの軸ずれがダイヤフラム押さえの軸ずれに影響を与える。ダイヤフラム押さえの軸ずれによって、ダイヤフラムが変形した状態で押圧され、シート状の弁座に対して、片当たりによるシートリークやパーティクルの発生を誘発することとなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、ダイヤフラム押さえの位置決めが容易でシートリークを抑制することができるダイヤフラムバルブを提供することを目的とする。
【0006】
本発明に係るダイヤフラムバルブは、弁座を形成する弁室及び該弁室と連通する流体流路を備えたバルブボディと、前記弁座と当接離間することで前記流体流路を開閉するダイヤフラムと、アクチュエータによって作動するステムと、前記ステムと前記ダイヤフラムとの間に配置され、前記ステムの移動に伴い移動して前記ダイヤフラムを変形する円柱状のダイヤフラム押さえと、前記バルブボディに固定され、前記ステムおよび前記ダイヤフラム押さえが内部に配置される中空のボンネットと、前記ボンネットと前記バルブボディとの間に介在し、前記ダイヤフラムの周縁部を押圧して前記バルブボディに前記ダイヤフラムを固定する円環状の押さえアダプタと、を有するダイヤフラムバルブであって、前記ステムの前記ダイヤフラム押さえと当接する端面は平面であり、前記ダイヤフラム押さえの前記ステムと当接する端面は円柱の中心が最高部となる曲面であり、前記押さえアダプタの内周面と前記ダイヤフラム押さえの外周面が摺接しており、前記ボンネットの内周面と前記ダイヤフラム押さえの外周面は接しない。
【0007】
前記ダイヤフラム押さえは、側面が前記押えアダプタの内周面と摺接するとともに、一端面が前記ステムと当接する曲面の有底筒状の蓋体と、この蓋体の他端面凹所に嵌合されるダイヤフラム押さえ本体とからなってもよい。
【0008】
前記ダイヤフラム押さえの材質は、一実施形態においてインバー材とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押さえアダプタの内周面とダイヤフラム押さえの外周面が摺接することで、ダイヤフラム押さえの中心軸と弁座の中心軸が一直線となり、シートリークの発生を防ぐことができる。
【0010】
また、ステムのダイヤフラム押さえと当接する端面を平面とし、ダイヤフラム押さえのステムと当接する端面を円柱の中心が最高部となる曲面とすることで、ステムからダイヤフラム押さえにかかる力が軸方向のみとなり、ダイヤフラム押さえの押さえアダプタに対する摺動を阻害せず、耐久性の低下やパーティクルの発生を防ぐことができる。
【0011】
さらに、ボンネットの内周面とダイヤフラム押さえの外周面が接しないことで、ボンネットの軸のずれによりダイヤフラム押さえに周方向の力がかかりダイヤフラム押さえが捻じれることで発生する耐久性の低下やパーティクルの発生の原因となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るバルブの内部構造を示した一部切り欠きの断面図である。
図2】同バルブの内部構造の要部を拡大した部分断面図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
ダイヤフラムバルブ1は、弁室21および流体流路20が形成されたバルブボディ2と、弁室21に形成された弁座22と、弁室21に配置され弁座22に対して当接又は離反することにより流体流路20を開閉するダイヤフラム3と、ステム4を移動させることでダイヤフラム3を弁座22に対して当接又は離間させるアクチュエータと、ステム4の上下方向への移動に伴いダイヤフラム3を変形させる円柱状のダイヤフラム押さえ6と、ステム4やダイヤフラム押さえ6が内部に配置されるボンネットと、ボンネット7によりバルブボディ2に対して押圧されダイヤフラム3の周縁部をバルブボディとの間に挟持することでダイヤフラム3をバルブボディ2に固定する押さえアダプタ5とを備えている。
【0015】
バルブボディ2は、例えば、ステンレス鋼等の金属で形成され、バルブボディ2に形成された円柱状の凹部である弁室21が形成される。円柱状凹部の底面には円柱状凹部と中心軸を同じくする円環状の突起である弁座22が形成されており、弁座22の内側および外側において入口側流体流路、出口側流体流路が開口している。なお、入口側流体流路および出口側流体流路の開口位置は逆であっても良い。
【0016】
ダイヤフラム3は、極薄金属板により円形の皿状に形成されている。ダイヤフラム3の母材は、特に限定するものではないが、本実施形態では、スプロン等の金属(合金を含む。)で形成されている。ダイヤフラム35の大きさも特に限定するものではないが、例えば、直径5~50mm、厚さ20~400μmとすることができる。
【0017】
アクチュエータは、ステム4を上下に作動することができるものであれば、特に限定するものではなく、ソレノイドアクチュエータ等を採用することもできるが、本実施形態ではピエゾアクチュエータを採用している。ピエゾアクチュエータは、ピエゾ素子に電圧を印加することによりピエゾ素子が伸長し、ステム4及びダイヤフラム押さえ6を図例上下に作動させることでダイヤフラム3を変形させる。本実施例はノーマルクローズタイプのダイヤフラムバルブであり、定常状態ではコイルバネによりステム4が下方に押圧されダイヤフラム3が弁座22に当接して流体流路20が閉止されている。ピエゾ素子に電圧を印加することでステム4はコイルバネの付勢力に抗して上方に移動させられ、流体流路20が開放される。なお、ダイヤフラムバルブはノーマルクローズタイプに限るものではなく、定常状態において流体流路が開放されているノーマルオープンタイプでもよい。
【0018】
ボンネット7は、アクチュエータとバルブボディ2との間に介された中空円筒状の部材であり、ステム4やダイヤフラム押さえ6を内部に配置する。ボンネット7の下部は弁室21内に挿入されバルブボディ2に対して固定される、図においてはボンネット7のフランジとバルブボディ2の間をボルトにより固定しているが、ボンネット7の下部外周にネジ切りを行いバルブボディ2に対して螺合させることで固定しても良い。ボンネット7の下端には押さえアダプタ5が設けられ、ダイヤフラム3の周縁部が押さえアダプタ5とバルブボディ2の間に挟持される。ここで、押さえアダプタ5の外径はバルブボディ2の円柱状凹部の内径と略同径又は若干小径であり、押さえアダプタ5は周方向への移動が規制され、ボンネット7により上方から押圧されることによりバルブボディ2と一体となっている。
【0019】
ダイヤフラム押さえ6は円柱状の部材であり、ステム4の移動に伴い移動してダイヤフラム3を押圧する。ダイヤフラム押さえ6の外周面は押さえアダプタ5の内周面と摺接している。ダイヤフラム押さえ6の外径および押さえアダプタの内径は、特に限定するものではないが、本実施形態においては、いずれも約11mm程度に設計され、ダイヤフラム押さえと押さえアダプタとの間には、0.03mm~0.2mmの隙間が設けられ、所謂、摺動可能な状態となっている。ダイヤフラム押さえ6の材質としては、温度変化による影響を抑えるため、熱膨張係数の小さい材質、例えば、インバー材を用いることが望ましい。
【0020】
また、ステム4と当接する曲面の有底筒状の蓋体61と、蓋体の他端面凹所に嵌合されるダイヤフラム押さえ本体60が組み合わさっている。これは、ダイヤフラム押さえ6の摺動時における固着を防ぐ必要がある側面とダイヤフラム3に対する応力集中を緩和したい下面において材質を変更するためであり、蓋体61にはインバー材を、ダイヤフラム押さえ本体60には樹脂材料を用いることもできるが、同じインバー材の組み合わせでもよく、また、同じ材料で一体に形成されていても良い。
【0021】
ダイヤフラム押さえ6の下面は曲面となっており、ダイヤフラム押圧時においてダイヤフラム3と点接触から面接触に拡大するようになっている。ダイヤフラム押さえ6の上部は押さえアダプタ5から突出しており、ボンネット7の内周面と対向しているが、ボンネット7とダイヤフラム押さえ6の間には隙間が設けられボンネット7とダイヤフラム押さえ6は接することはない。ボンネット7とダイヤフラム押さえ6の間に隙間が設けられることにより、ボンネット7の軸がダイヤフラム押さえ6の軸とずれた場合においても、ボンネット7とダイヤフラム押さえ6は接触せず、ダイヤフラム押さえの動作を阻害しない。本実施形態においては、ダイヤフラム押さえ6の外径が11mm程度に対して、ボンネット7の内径との間に0.5mm~1.5mm程度の隙間を設け、摺接することがないようになっている。
【0022】
ステム4は、アクチュエータに接続されてアクチュエータの移動に伴い移動し、ダイヤフラム押さえ6を押圧する円柱部を持つ。ステム4の外径はダイヤフラム押さえ6の外径より大きく、ボンネット7により軸がとられている。ステム4の下端面は平面となっており、ダイヤフラム押さえ6の上端面と対向して押圧される。
【0023】
ダイヤフラム押さえ6の上端面は、円柱の中心が最高部6aとなる曲面となっており、軸方向と垂直なステム4の下端面と対向している。そのため、ダイヤフラム押さえ6は常にステム4と最高部6aにおいて接触し、ダイヤフラム押さえ6には中心軸方向に沿って力がかかる。なお、ダイヤフラム押さえ6の上端面を平面、ステム4の下端面を円柱の中心が最高部となる曲面とすると、ステム4とボンネット7の間に隙間が設けられているため、ステム4とダイヤフラム押さえ6の接触位置がダイヤフラム押さえ6の中心からずれることがある。ステム4とダイヤフラム3の接触位置がダイヤフラム押さえ6の中心からずれると、押さえアダプタ5やダイヤフラム3に対して力が偏って加えられることとなり、耐久性の低下やパーティクルの発生の原因となるため、ダイヤフラム押さえ6側に曲面を設けることが望ましく、ダイヤフラム3が変形した状態で押圧され、シート状の弁座22に対して、片当たりによるシートリークの発生を有効に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の実施形態によるダイヤフラムバルブは、ダイヤフラム押さえの軸ずれを防止し、シートリークやパーティクルの発生を防止することができるから、半導体製造装置用の流量制御装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ダイヤフラムバルブ
2 バルブボディ
20 流体流路
21 弁室
22 弁座
3 ダイヤフラム
4 ステム
5 押さえアダプタ
6 ダイヤフラム押さえ
60 ダイヤフラム押さえ本体
61 蓋体
6a 最高部
7 ボンネット

図1
図2