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特開2023-148580酸化物半導体薄膜トランジスタ装置及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148580
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】酸化物半導体薄膜トランジスタ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231005BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231005BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L29/78 616U
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
G09F9/30 338
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056684
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】521515757
【氏名又は名称】厦門天馬顕示科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹知 和重
【テーマコード(参考)】
5C094
5F110
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA21
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094FB02
5C094FB14
5C094GB10
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5F110HJ13
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5F110HK35
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5F110HL23
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5G435AA16
5G435BB05
5G435CC09
5G435HH13
5G435HH20
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】所望特性の酸化物半導体薄膜トランジスタの実装を容易にする。
【解決手段】第1酸化物半導体薄膜トランジスタは、第1酸化物半導体層と、第1酸化物半導体層の上側に配置された第1トップゲート電極と、第1ソース/ドレイン電極とを含む。第1酸化物半導体層は、平面視において第1トップゲート電極に重なる第1チャネル領域と、第1チャネル領域を挟む二つの第1低抵抗化領域と、を含む。第1ソース/ドレイン電極は、第1トップゲート電極より上層に位置し、平面視において第1低抵抗化領域の一方と重なる絶縁領域を貫通して、第1低抵抗化領域の一方と接触する。二つの第1低抵抗化領域及び第1チャネル領域の各領域は、下側の非晶質層と、非晶質層と同一組成の上側の結晶層とを含む。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
基板と、
前記基板の上側に配置された、1又は複数の酸化物半導体薄膜トランジスタを含み、
前記1又は複数の酸化物半導体薄膜トランジスタは、第1酸化物半導体薄膜トランジスタを含み、
前記第1酸化物半導体薄膜トランジスタは、
第1酸化物半導体層と、
前記第1酸化物半導体層の上側に配置された第1トップゲート電極と、
第1ソース/ドレイン電極と、
を含み、
前記第1酸化物半導体層は、
平面視において前記第1トップゲート電極に重なる、第1チャネル領域と、
前記第1チャネル領域を挟む二つの第1低抵抗化領域と、
を含み、
前記第1ソース/ドレイン電極は、前記第1トップゲート電極より上層に位置し、平面視において前記二つの第1低抵抗化領域の一方と重なる絶縁領域を貫通して、前記二つの第1低抵抗化領域の前記一方と接触し、
前記二つの第1低抵抗化領域及び前記第1チャネル領域の各領域は、下側の非晶質層と、前記非晶質層と同一組成の上側の結晶層とを含む、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
前記結晶層は、電子線回折強度の方位角展開において、強度ピークが見られる層であり、
前記非晶質層は、電子線回折強度の方位角展開において、強度ピークが見られない層である、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
前記二つの第1低抵抗化領域の結晶層の配向度は、前記第1チャネル領域の結晶層の配向度より小さい、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
前記結晶層の配向度は、電子線回折強度の方位角展開における強度ピークの大きさで表される、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
第2酸化物半導体薄膜トランジスタを、さらに含み、
前記第2酸化物半導体薄膜トランジスタは、
第2酸化物半導体層と、
前記第2酸化物半導体層の上側に配置された第2トップゲート電極と、
前記第2酸化物半導体層の下側に配置されたボトムゲート電極と、
第2ソース/ドレイン電極と、
を含み、
前記第2酸化物半導体層は、
前記平面視において前記第2トップゲート電極及び前記ボトムゲート電極に重なる、第2チャネル領域と、
前記第2チャネル領域を挟む二つの第2低抵抗化領域と、
を含み、
前記第2ソース/ドレイン電極は、前記第2トップゲート電極より上層に位置し、平面視において前記二つの第2低抵抗化領域の一方と重なる絶縁領域を貫通して、前記二つの第2低抵抗化領域の前記一方と接触し、
前記二つの第2低抵抗化領域及び前記第2チャネル領域の各領域は、下側の非晶質層と、前記非晶質層と同一組成の上側の結晶層とを含み、
前記第1酸化物半導体薄膜トランジスタは、前記第1トップゲート電極に与えられる制御信号に応じてON/OFFされ、
前記第2酸化物半導体薄膜トランジスタは、前記ボトムゲート電極に与えられる制御信号に応じて、前記第2チャネル領域を流れる電流量を制御する、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
前記二つの第2低抵抗化領域の結晶層の配向度は、前記第2チャネル領域の結晶層の配向度より小さい、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項7】
請求項5に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
前記第1ソース/ドレイン電極は、前記第2酸化物半導体薄膜トランジスタの前記ボトムゲート電極と接続されている、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項8】
請求項5に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
前記第2酸化物半導体薄膜トランジスタの前記第2トップゲート電極は一定電位が与えられる又はフローティング状態である、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項9】
請求項7に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
前記第2トップゲート電極は、前記第2ソース/ドレイン電極の内のより低い電位の電極と接続されている、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項10】
請求項1に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
第3酸化物半導体薄膜トランジスタを、さらに含み、
前記第3酸化物半導体薄膜トランジスタは、
前記第3酸化物半導体薄膜トランジスタは、
第3酸化物半導体層と、
前記第1酸化物半導体層の上側に配置された第3トップゲート電極と、
第3ソース/ドレイン電極と、
を含み、
前記第3酸化物半導体層は、
平面視において前記第3トップゲート電極に重なる、第3チャネル領域と、
前記第3チャネル領域を挟む二つの第3低抵抗化領域と、
を含み、
前記第3ソース/ドレイン電極は、前記第3トップゲート電極より上層に位置し、平面視において前記二つの第3低抵抗化領域の一方と重なる絶縁領域を貫通して、前記二つの第3低抵抗化領域の前記一方と接触し、
前記二つの第3低抵抗化領域及び前記第3チャネル領域の各領域は、下側の非晶質層と、前記非晶質層と同一組成の上側の結晶層とを含み、
前記第1酸化物半導体層及び前記第3酸化物半導体層は同一絶縁層上に配置され、
前記第1低抵抗化領域の他方から延在する低抵抗化された酸化物半導体層が、前記第3低抵抗化領域の他方と繋がっている、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項11】
請求項1に記載の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置であって、
第4酸化物半導体薄膜トランジスタを、さらに含み、
前記第4酸化物半導体薄膜トランジスタは、
第4酸化物半導体層と、
前記第4酸化物半導体層の上側に配置された第4トップゲート電極と、
第4ソース/ドレイン電極と、
を含み、
前記第4酸化物半導体層は、
平面視において前記第4トップゲート電極に重なる、第4チャネル領域と、
前記第4チャネル領域を挟む二つの第4低抵抗化領域と、
を含み、
前記第4ソース/ドレイン電極は、前記第4トップゲート電極より上層に位置し、平面視において前記二つの第4低抵抗化領域の一方と重なる絶縁領域を貫通して、前記二つの第4低抵抗化領域の前記一方と接触し、
前記二つの第4低抵抗化領域及び前記第4チャネル領域の各領域は、下側の非晶質層と、前記非晶質層と同一組成の上側の結晶層とを含み、
前記第1ソース/ドレイン電極は、前記第4トップゲート電極と同電位となるように、前記第4トップゲート電極と接続されている、
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置。
【請求項12】
酸化物半導体薄膜トランジスタ装置の製造方法であって、
酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層の上にゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層の上にトップゲート電極を形成し、
前記トップゲート電極をマスクとして使用して、低抵抗化処理により前記酸化物半導体層に低抵抗化領域を形成し、
前記酸化物半導体層を形成することは、下側の非晶質層を作成した後に上側結晶層を形成する、
製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって、
前記トップゲート電極を形成した後に、前記トップゲート電極の外側において、前記ゲート絶縁層の一部をエッチングにより除去して、前記酸化物半導体層の一部を露出させ、
前記低抵抗化処理は、露出している前記酸化物半導体層の一部をプラズマ処理する、
製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の製造方法であって、
前記低抵抗化処理は、前記ゲート絶縁層越しにイオン注入処理して前記低抵抗化領域を形成する、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の分野において、OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子の利用が広がっている。OLED素子は、電流駆動型の発光素子であるため、バックライトが不要となる上に、低消費電力、広視野角、高コントラスト比が得られるなどのメリットがある。
【0003】
アクティブマトリクスタイプのOLED表示装置は、画素(副画素)を選択するスイッチ薄膜トランジスタ(TFT)と、その画素のOLED素子に電流を供給する駆動TFTを含む画素回路を含む。画素回路において、アモルファスシリコンTFT、ポリシリコンTFT又は酸化物半導体TFT等が利用される。
【0004】
酸化物半導体TFTは、低いリーク電流と比較的高い電子移動度の特性等から、表示装置の画素回路において利用されることが多くなっている。また、酸化物半導体TFTは、表示装置と異なる様々な分野においても利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0175077号
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0288079号
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0202540号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回路内の酸化物半導体TFTは、その機能に応じて、異なる特性が要求される。例えば、電流駆動型の発光素子を制御する回路において、発光素子を選択するスイッチTFTは、ドレイン電流のゲート電圧に対する鋭い立ち上がり特性(低いS値)を有することが要求される。反対に、駆動TFTは、緩やかな上がり特性(高いS値)を有することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置は、基板と、前記基板の上側に配置された、1又は複数の酸化物半導体薄膜トランジスタを含む。前記1又は複数の酸化物半導体薄膜トランジスタは、第1酸化物半導体薄膜トランジスタを含む。前記第1酸化物半導体薄膜トランジスタは、第1酸化物半導体層と、前記第1酸化物半導体層の上側に配置された第1トップゲート電極と、第1ソース/ドレイン電極とを含む。前記第1酸化物半導体層は、平面視において前記第1トップゲート電極に重なる第1チャネル領域と、前記第1チャネル領域を挟む二つの第1低抵抗化領域と、を含む。前記第1ソース/ドレイン電極は、前記第1トップゲート電極より上層に位置し、平面視において前記第1低抵抗化領域の一方と重なる絶縁領域を貫通して、前記第1低抵抗化領域の前記一方と接触する。前記二つの第1低抵抗化領域及び前記第1チャネル領域の各領域は、下側の非晶質層と、前記非晶質層と同一組成の上側の結晶層とを含む。
【0008】
本開示の一態様の酸化物半導体薄膜トランジスタ装置の製造方法は、酸化物半導体層を形成し、前記酸化物半導体層の上にゲート絶縁層を形成し、前記ゲート絶縁層の上にトップゲート電極を形成し、前記トップゲート電極をマスクとして使用して、低抵抗化処理により前記酸化物半導体層に低抵抗化領域を形成する。前記酸化物半導体層を形成することは、下側の非晶質層を作成した後に上側結晶層を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、所望特性の酸化物半導体TFTを容易に回路に実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】OLED表示装置の構成例を模式的に示す。
図2A】画素回路の構成例を示す。
図2B】画素回路の他の構成例を示す。
図2C】画素回路の他の構成例を示す。
図3】本明細書の一実施形態に係る酸化物半導体TFTの構成例を模式的に示す。
図4図3に示す酸化物半導体TFTの上面構造を模式的に示す平面図である。
図5】本明細書の一実施形態に係る酸化物半導体TFTの構成例を模式的に示す。
図6図3に示す構成を有する酸化物半導体TFTのトップゲート特性及びボトムゲート特性を測定した結果を示す。
図7A図3に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図7B図3に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図7C図3に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図7D図3に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図8A図5に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図8B図5に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図8C図5に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図8D図5に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例の工程を示す。
図9A】上側結晶層の(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。
図9B】下側非晶質の(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。
図9C】上側結晶層のTEM像及びフーリエ変換像を示す。
図9D】下側非晶質のTEM像及びフーリエ変換像を示す。
図10A】チャネル領域の(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。
図10B】ソース/ドレイン領域の(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。
図11】異なるS値を有するスイッチ酸化物半導体TFTと駆動酸化物半導体TFTを含む画素回路の構造例を示す。
図12】異なるS値を有するスイッチTFTと駆動TFTを含む画素回路の構造例を示す。
図13】二つのTFTを含む回路の構造例を示す。
図14】二つのTFTを含む回路の構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0012】
[概略]
以下において、酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)装置の例として、OLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置を説明する。本開示のOLED表示装置は、例えば画素回路内に、酸化物半導体TFTを含む。酸化物半導体TFTの酸化物半導体層(活性層)は、下側非晶質層と上側結晶層とを含む。酸化物半導体TFTのこの構造は、所望特性の酸化物半導体TFTを容易に回路に実装することを可能とする。本明細書において、基板から遠い側を上側、基板に近い側を下側と呼ぶ。
【0013】
また、酸化物半導体層の下側にボトムゲート電極を付加することで、下側の非晶質層をチャネルとするボトムゲートTFTと上側の結晶層をチャネルとするトップゲートTFTとを作り分け、それぞれのTFT特性を生かした回路を実現することが可能である。なお、以下に開示する酸化物半導体TFTを含む回路の特徴構成は、表示装置内の画素回路やドライバ内の回路の他、表示装置と異なる装置の回路に適用することができる。
【0014】
[表示装置構成]
図1は、OLED表示装置1の構成例を模式的に示す。OLED表示装置1は、OLED素子が形成されるTFT(Thin Film Transistor)基板10と、有機発光素子を封止する封止基板20と、TFT基板10と封止基板20とを接合する接合部(ガラスフリットシール部)30を含んで構成されている。TFT基板10と封止基板20との間には、例えば、乾燥窒素が封入されており、接合部30により封止されている。封止基板20及び接合部30は封止構造部の一つであり、他の例として、封止構造部は、例えば薄膜封止構造(TFE:Thin Film Encapsulation)を有してもよい。
【0015】
TFT基板10の表示領域25の外側のカソード電極形成領域14の周囲に、走査ドライバ31、エミッションドライバ32、ドライバIC34、デマルチプレクサ36が配置されている。ドライバIC34は、FPC(Flexible Printed Circuit)35を介して外部の機器と接続される。走査ドライバ31、エミッションドライバ32は、TFT基板10に形成された周辺回路である。
【0016】
走査ドライバ31はTFT基板10の走査線を駆動する。エミッションドライバ32は、エミッション制御線を駆動して、各画素の発光期間を制御する。ドライバIC34は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。
【0017】
ドライバIC34は、走査ドライバ31及びエミッションドライバ32に電源及びタイミング信号(制御信号)を与える。さらに、ドライバIC34は、デマルチプレクサ36に、電源及びデータ信号を与える。
【0018】
デマルチプレクサ36は、ドライバIC34の一つのピンの出力を、d本(dは2以上の整数)のデータ線に順次出力する。デマルチプレクサ36は、ドライバIC34からのデータ信号の出力先データ線を、走査期間内にd回切り替えることで、ドライバIC34の出力ピン数のd倍のデータ線を駆動する。
【0019】
[画素回路構成]
TFT基板10上には、複数の副画素(単に画素とも呼ぶ)のアノード電極にそれぞれ供給する電流を制御する複数の画素回路が形成されている。図2Aは、画素回路の構成例を示す。各画素回路は、駆動トランジスタT1と、選択トランジスタT2と、エミッショントランジスタT3と、駆動トランジスタT1のゲートへの信号電圧を保持する保持容量C1とを含む。画素回路は、OLED素子E1の発光を制御する。
【0020】
選択トランジスタT2は副画素を選択するスイッチ(スイッチトランジスタ)である。選択トランジスタT2はnチャネル型酸化物半導体TFTであり、ゲートは、走査線16に接続されている。一方のソース/ドレインは、データ線15に接続されている。他方のソース/ドレインは、駆動トランジスタT1のゲートに接続されている。
【0021】
駆動トランジスタT1はOLED素子E1の駆動用のトランジスタ(駆動TFT)である。駆動トランジスタT1はnチャネル型酸化物半導体TFTであり、そのゲートは選択トランジスタT2のソース/ドレインに接続されている。駆動トランジスタT1の一方のソース/ドレインはエミッショントランジスタT3のソース/ドレインに接続されている。他方のソース/ドレインは、OLED素子E1及び保持容量C1に接続されている。駆動トランジスタT1のゲートとソース/ドレイン(ソース)との間に保持容量C1が形成されている。ここで、ソース/ドレインは、ソースまたはドレインのいずれかを指し、酸化物半導体薄膜トランジスタの動作状況に応じて、より電位の高い方がドレイン、より電位の低い方がソースとなる。
【0022】
エミッショントランジスタT3は、OLED素子E1への駆動電流の供給と停止を制御するスイッチである。エミッショントランジスタT3はnチャネル型酸化物半導体TFTであり、ゲートはエミッション制御線17に接続されている。エミッショントランジスタT3の一方のソース/ドレインは駆動トランジスタT1のソース/ドレインに接続されている。他方のソース/ドレインは、電源線18に接続されている。図2はnチャネル型酸化物半導体TFTを用いた回路であり、Vdd(電源電圧)は正電位、カソード電位であるVssはVddより低い電位に設定される。なお、エミッショントランジスタT3は、OLED素子E1と駆動トランジスタT1との間に配置されてもよい。
【0023】
次に、画素回路の動作を説明する。走査ドライバ31が走査線16に選択パルスを出力し、選択トランジスタT2をオン状態にする。データ線15を介してドライバIC34から供給されたデータ電圧は、保持容量C1に格納される。保持容量C1は、格納された電圧を、1フレーム期間を通じて保持する。保持電圧によって、駆動トランジスタT1のコンダクタンスがアナログ的に変化し、駆動トランジスタT1は、発光階調に対応した順バイアス電流をOLED素子E1に供給する。
【0024】
エミッショントランジスタT3は、駆動電流の供給経路上に位置する。エミッションドライバ32は、エミッション制御線17に制御信号を出力して、エミッショントランジスタT3のオンオフを制御する。エミッショントランジスタT3がオン状態のとき、駆動電流がOLED素子E1に供給される。エミッショントランジスタT3がオフ状態のとき、この供給が停止される。エミッショントランジスタT3のオンオフを制御することにより、1フレーム周期内の点灯期間(デューティ比)を制御することができる。
【0025】
図2Bは、画素回路の他の構成例を示す。当該画素回路は、図2AのエミッショントランジスタT3に代えて、リセットトランジスタT4を有する。リセットトランジスタT4は、nチャネル型酸化物半導体TFTである。リセットトランジスタT4は、基準電圧供給線11とOLED素子E1のアノードとの電気的接続を制御する。リセットトランジスタT4のゲートにリセット制御線19からリセット制御信号が供給されることによりこの制御が行われる。なお、リセットトランジスタT4は、様々な目的で使用することができる。
【0026】
図2Cは、画素回路の他の構成例を示す。当該画素回路は、nチャネル型TFTである、トランジスタT1からT6を含む。トランジスタT2のゲートにVscan2信号が入力され、トランジスタT4及びT6のゲートにVscan1信号が入力される。トランジスタT2、T1及びT6を介して、保持容量C1にデータ信号(電圧)が与えられ、トランジスタT1の閾値電圧が補正される。トランジスタT4は、OLED素子E1のアノードに基準電圧Vrefを与える。トランジスタT3及びT5は、駆動トランジスタT1と直列に接続され、それらのゲートには、それぞれ、信号Vem1及びVem2が入力され、OLED素子E1の発光の有無を制御する。
【0027】
図2Cの回路構成において、駆動トランジスタT1のゲートと、スイッチトランジスタT6のソース/ドレインとが、接続されている。保持容量C1は、駆動トランジスタT1のゲートと、スイッチトランジスタT3のソース/ドレインとOLED素子E1との間のノードと、に接続されている。保持容量C1は、駆動トランジスタT1が供給する駆動電流量を決めるゲート電圧(ゲートソース間電圧)を保持する。
【0028】
以上説明した画素回路は、駆動TFT(T1)、駆動TFTのソース/ドレインとゲートとの間の信号電圧を保持する保持容量(C1)、及び、駆動TFTのゲートにそのソース/ドレインが接続されているスイッチTFT(T2又はT6)を含む。図2Cに示す回路は、さらに、直列に接続されたスイッチTFT(例えばT2及びT3)を含む。本明細書で説明するTFT構造により、駆動TFT及びスイッチTFTそれぞれに特定の特性を持たせることができる。なお、図2A、2B及び2Cの画素回路は例であって、画素回路は他の構成を有してよい。
【0029】
スイッチTFTは、ゲート信号に応じてON/OFFするため、ドレイン電流のゲート電圧に対する鋭い立ち上がり特性(低いS値[V/dec])を有することが要求される。低いS値により、スイッチTFTの動作電圧振幅(ゲート電圧振幅)を低くでき、その結果、TFTのゲートに印加する電圧を小さくでき閾値電圧の変動を低減できる。
【0030】
一方、OLED素子への電流量を制御する駆動TFTは、緩やかな立ち上がり特性(高いS値)を有することが要求される。高いS値は、データ信号の使用可能な幅が広くなり、また、低階調(低いゲート電圧)における閾値電圧の変動の影響を低減できる。
【0031】
本明細書の一実施形態は、画素回路の少なく都のとも一部のトランジスタを、酸化物半導体TFTで構成する。酸化物半導体TFTの酸化物半導体層(活性層)は、下層の非晶質層と上層の結晶層を含む。結晶層は多結晶層である。本明細書において、基板に近い側が下側、基板から遠い側が上側とする。なお、酸化物半導体層の一部は低抵抗化されて導体の特性を示し得るが、その部分も含めて、当該材料層を酸化物半導体層と呼ぶ。酸化物半導体層は、例えば、金属酸化物で形成できる。
【0032】
酸化物半導体層の上記構成は、チャネル領域の抵抗又は電流を制御するゲート電圧を、トップゲート電極又はボトムゲート電極のいずれに与えるかによって、異なる特性を酸化物半導体TFTに与えることができる。トップゲート電極は、酸化物半導体層のより上層に位置し、ボトムゲート電極は酸化物半導体層より下層に位置する。
【0033】
具体的には、トップゲート電極がチャネル領域の特性を制御する酸化物半導体TFTは、低いS値を示すことができる。ボトムゲート電極がチャネル領域の特性を制御する酸化物半導体TFTは、高いS値を示すことができる。当該構造の酸化物半導体TFTは、画素回路の設計をより容易とすることができる。
【0034】
例えば、高いS値(Vg-Id特性の緩やかな立ち上がり)を示す酸化物半導体TFTを駆動トランジスタとして使用し、低いS値(Vg-Id特性の急峻な立ち上がり)を示す酸化物半導体TFTをスイッチトランジスタとして使用することで、より優れた画素回路を構成することができる。
【0035】
なお、画素回路は、トップゲート電極による電圧で制御される酸化物半導体TFT又はボトムゲート電極による電圧で制御される酸化物半導体TFTの一方種類の酸化物半導体TFTのみを含んでもよい。画素回路は、酸化物半導体TFTに加えて、他の種類のTFT、例えばポリシリコンTFTを含んでもよい。
【0036】
本明細書の一実施形態は、トップゲート電極をマスクとして使用する自己整合ゲート(単に自己整合とも呼ぶ)により、酸化物半導体のソース/ドレイン領域を形成する。自己整合は、酸化物半導体TFTのフィードスルー小さくし、さらに、プロセスのためののみのマスクの形成を不要とすることができる。
【0037】
[酸化物半導体TFTの構造]
以下において、本明細書の実施形態に係る酸化物半導体TFTの構造例を説明する。上述のように、酸化物半導体TFTの酸化物半導体層(活性層)は、下層の非晶質層と上層の結晶層とを含む。結晶層は多結晶層である。また、酸化物半導体TFTは、トップゲート電極と、1以上のソース/ドレイン電極とを含む。酸化物半導体TFTは、トップゲート電極に加えて又は代えてボトムゲート電極を含んでよい。
【0038】
酸化物半導体層のチャネル領域は、トップゲート電極及びボトムゲート電極それぞれと、平面視において(積層方向において)重なる。平面視において、チャネル領域は、トップゲート電極及びボトムゲート電極それぞれの領域に含まれる。酸化物半導体層とトップゲート電極及びボトムゲート電極それぞれとの間には、ゲート絶縁体が挟まれている。
【0039】
トップゲート電極及びボトムゲート電極の一方に、チャネル領域の抵抗値又は電流量を制御する制御電圧が与えられる。他方の電極は、例えば一定電位が与えれる又はフローティングであってもよい。酸化物半導体TFTが、トップゲート電極及びボトムゲート電極の一方のみ含む場合は、その電極に駆動回路から制御電位が与えられる。
【0040】
ソース/ドレイン電極は、酸化物半導体層のソース/ドレイン領域に接触する。それらの接触領域は、平面視において、トップゲート電極の外側に位置する。本明細書の一実施形態において、ソース/ドレイン電極は、トップゲート電極を覆う層間絶縁層を通過するビア部を含み、ビア部はソース/ドレイン領域と接触する。ビア部は、トップゲート電極より上層の層間絶縁層に加えて、他の絶縁層、例えばトップゲート絶縁体がその一部として含まれる絶縁層を、貫通し得る。この構成は、自己整合ゲートを可能とし、特性の優れた酸化物半導体TFTを効率的に製造し得る。
【0041】
図3は、本明細書の一実施形態に係る酸化物半導体TFTの構成例を模式的に示す。図3に示す酸化物半導体TFTの構成例は、トップゲート電極123及びボトムゲート電極133を含む。当該酸化物半導体TFTは、例えば、駆動トランジスタ又はスイッチトランジスタのいずれにも適用できる。
【0042】
駆動トランジスタとして使用される場合、例えば、ボトムゲート電極133にチャネルの制御電位が与えられ、トップゲート電極123は一定電位が与えられる。スイッチトランジスタとして使用される場合、例えば、例えば、トップゲート電極123にチャネルの制御電位が与えられ、ボトムゲート電極133は一定電位が与えられる。スイッチトランジスタとして使用される場合、ボトムゲート電極133は省略されてよい。
【0043】
酸化物半導体TFTは、樹脂又はガラスで形成された可撓性又は不撓性の絶縁基板101上に形成される。酸化物半導体TFTは、ボトムゲート電極133と、ボトムゲート電極133と酸化物半導体層102との間の下側絶縁層135を含む。ボトムゲート電極133と絶縁基板101との間には、不図示の絶縁層が存在してよい。ボトムゲート電極133は導体であって、例えば、W、Mo、Ta等の高融点金属又はこれらの合金で形成することができる。
【0044】
酸化物半導体層102は、ソース/ドレイン領域(S/D領域)105、107と、面内方向においてソース/ドレイン領域105、107間のチャネル領域103を含む。下側絶縁層135の一部は、ボトムゲート電極133とチャネル領域103領域の間のボトムゲート絶縁体である。
【0045】
下側絶縁層135は、例えば、シリコン酸化物層、又は、シリコン酸化物(上側)/シリコン窒化物(下側)の積層である。酸化物半導体層102は下側絶縁層135上に直接(接触して)形成されている。ソース/ドレイン領域105、107は、低抵抗化された領域である。チャネル領域103は、低抵抗化されていない領域である。低抵抗化については後述する。
【0046】
酸化物半導体層102は、例えば、金属酸化物で形成され、一例は、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxygen)である。
【0047】
他の酸化物半導体材料の例は、IGZTO(Indium Gallium Zinc Tin Oxide)、IGO(Indium Gallium Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の高移動度材料や、ZnO(Zinc Oxide)のような低移動度材料である。
【0048】
酸化物半導体層102は、下層の非晶質層と上層の結晶層とを含む。具体的には、チャネル領域103は、非晶質層111及び結晶層112で構成されている。ソース/ドレイン領域105は、非晶質層113及び結晶層114で構成されている。ソース/ドレイン領域107は、非晶質層115及び結晶層116で構成されている。なお、図3は模式図であって、実際の非晶質層と結晶層の界面は平面ではなく、より複雑な形状を有している。
【0049】
チャネル領域103とソース/ドレイン領域105、107とは、同一組成を有している。また、各領域における非晶質層と結晶層は、異なる秩序状態にあるが、それらの組成は同一である。
【0050】
ボトムゲート電極133は、下側絶縁層135を挟んでチャネル領域103と対向している。ボトムゲート電極133、下側絶縁層135及びチャネル領域103は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されている。下側絶縁層135の一部は、チャネル領域103及びボトムゲート電極133と接触している。下側絶縁層135において、ボトムゲート電極133及びチャネル領域103に接触している部分が、酸化物半導体TFTのボトムゲート絶縁体である。
【0051】
酸化物半導体TFTは、さらに、トップゲート電極123と、積層方向においてトップゲート電極123とチャネル領域109との間に存在する上側絶縁層117を含む。トップゲート電極123は導体であって、例えば、W、Mo、Ta等の高融点金属又はこれらの合金で形成することができる。
【0052】
上側絶縁層117は、酸化物半導体層102を覆う。上側絶縁層117は、例えば、シリコン酸化物層、シリコン窒化物層、又はこれらの積層構造を有している。酸化物半導体層102、上側絶縁層117及びトップゲート電極123は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、上側絶縁層117は、下側絶縁層135、酸化物半導体層102及びトップゲート電極123と接触している。上側絶縁層117において、トップゲート電極123とチャネル領域103と接触している部分は、トップゲート絶縁体を構成する。
【0053】
例えば、駆動トランジスタとして使用される場合、ボトムゲート電極133には、OLED素子への駆動電流を制御するデータ信号(信号電圧)が与えられる。トップゲート電極123は、一定電位が与えられる、又は電気的に浮いている。スイッチトランジスタとして使用される場合、トップゲート電極123には、ON/OFFの制御信号が与えられる。ボトムゲート電極133は、一定電位が与えられる、又は電気的に浮いてよく、省略されてもよい。後述するように、トップゲート電極123は、ソース/ドレイン領域105、107の低抵抗化のためのマスクとして使用される(自己整合)。
【0054】
酸化物半導体TFTは、トップゲート電極123より上層の層間絶縁層118を含む。層間絶縁層118は、トップゲート電極123を覆い、トップゲート電極123及び上側絶縁層117と接触している。層間絶縁層118は、例えば、シリコン絶縁層で構成され、異なる絶縁材料の多層構造を有してもよい。
【0055】
酸化物半導体TFTは、面内方向においてトップゲート電極123を挟む、ソース/ドレイン電極121、122を含む。ソース/ドレイン電極121、122は導体で形成され、例えば、Al単層又はTi/Al/Tiの積層構造を有することができる。
【0056】
ソース/ドレイン電極121は、層間絶縁層118及び上側絶縁層117を貫通するコンタクト部125を含む。コンタクト部125は、層間絶縁層118及び上側絶縁層117に形成されたコンタクトホールにおいて、ソース/ドレイン領域105と接触(直接接続)している。
【0057】
ソース/ドレイン電極122は、層間絶縁層118及び上側絶縁層117を貫通するコンタクト部126を含む。コンタクト部126は、層間絶縁層118及び上側絶縁層117に形成されたコンタクトホールにおいて、ソース/ドレイン領域107と接触(直接接続)している。
【0058】
コンタクト部125、126は、平面視において、トップゲート電極123の外側の領域において、層間絶縁層118及び上側絶縁層117を貫通し、平面視において、トップゲート電極123と重ならない。ソース/ドレイン電極121、122の頂部は、層間絶縁層118に存在している。図3の構成例においては、ソース/ドレイン電極121、122は、平面視において、トップゲート電極123と重ならないように形成されている。
【0059】
図4は、図3に示す酸化物半導体TFTの上面構造を模式的に示す平面図である。図4は、平面視における(積層方向において見た)形状を示す。図4に示すように、上層側からの平面視において、ソース/ドレイン電極121、122は、トップゲート電極123の外側に位置し、それらは重なっていない。
【0060】
図5は、本明細書の一実施形態に係る酸化物半導体TFTの構成例を模式的に示す。図3に示す構成例との相違を主に説明する。上側絶縁層127がエッチングされ、ソース/ドレイン領域105、107を平面視において覆っていない。上側絶縁層127は、チャネル領域103を覆う。上側絶縁層127の一部又全部は、チャネル領域103とトップゲート電極123との間のトップゲート絶縁体を構成する。
【0061】
ソース/ドレイン領域105、107は、層間絶縁層128に対して上側絶縁層127から露出し、層間絶縁層128が、ソース/ドレイン領域105、107に接触し、それらを覆う。ソース/ドレイン電極121のコンタクト部125は、層間絶縁層128を貫通し、層間絶縁層128の孔内でソース/ドレイン領域105と接触(直接接続)する。ソース/ドレイン電極122のコンタクト部126は、層間絶縁層128を貫通し、層間絶縁層128の孔内でソース/ドレイン領域107と接触(直接接続)する。
【0062】
図6は、図3に示す構成を有する酸化物半導体TFTのトップゲート特性及びボトムゲート特性を測定した結果を示す。図6に示すグラフにおいて、横軸はトップゲート電極又はボトムゲート電極から与えられた電界を示し、縦軸はドレイン電流を示す。線203はトップゲート特性を示し、線201はボトムゲート特性を示す。ソースドレイン間電圧Vdは、10Vであった。
【0063】
ボトムゲート特性は、ボトムゲート電極と酸化物半導体層との間の電界強度変化に対するドレイン電流変化を示す。ボトムゲート特性の測定において、トップゲート電極は、フローティング状態であった。トップゲート特性は、トップゲート電極と酸化物半導体層との間の電界強度変化に対するドレイン電流変化を示す。トップゲート特性の測定において、ボトムゲート電極は、フローティング状態であった。
【0064】
図6が示すように、ボトムゲート駆動は、トップゲート駆動と比較して、S値が大きく、ドレイン電流の立ち上がりが緩やかである。そのため、駆動トランジスタとしての使用に有利である。一方、トップゲート駆動はS値が小さく、ドレイン電流の立ち上がりが急峻である。トップゲート駆動は良好なスイッチング特性を示し、スイッチトランジスタとしての使用に有利である。
【0065】
[製造方法]
以下において、酸化物半導体TFTの製造方法の例を説明する。図7A~7Dは、図3に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例を模式的に示す。この方法は、上側絶縁層越しに不純物を酸化物半導体に注入することにより、ソース/ドレイン領域を低抵抗化する。
【0066】
図7Aを参照して、製法は、絶縁基板101上に、ボトムゲート電極133を形成する。このステップは、例えば、スパッタ法等により金属層を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、ボトムゲート電極133を形成する。金属材料は任意であり、例えば、Mo、W、Nb、Al等が使用できる。
【0067】
さらに、製法は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により下側絶縁層135(例えばシリコン酸化物層)を形成した後、酸化物半導体層102を形成する。酸化物半導体層102の形成は、例えば、スパッタ法により酸化物半導体を成膜し、フォトリソグラフィによりパターニングを行う。
【0068】
酸化物半導体層102の形成ステップは、下側非晶質層151と、上側結晶層152とを形成する。例えば、酸化物半導体層102は、結晶(上側)/非晶質(下側)構造は、例えば、スパッタリングにおけるガス条件を適切に設定することで、形成され得る。例えば、スパッタ装置は、酸化物半導体ターゲットが設置されたチャンバ内に酸素ガス及びアルゴン混合ガスを導入する。導入される酸素とアルゴンガスの混合ガスにおいて、酸素ガスの比率(O2/(Ar+O2))は、例えば、30%以上60%以下である。
【0069】
酸化物半導体が成膜される基板と酸化物半導体ターゲットとの間には高電圧が与えれる。DCスパッタリング、RFスパッタリング、マグネトロンスパッタリング等、のいずれの方法を使用してもよい。上記のような酸素を使用する反応性スパッタリングによって、結晶(上側)/非晶質(下側)構造を有する酸化物半導体層を形成することができる。
【0070】
次に、製法は、上側絶縁層117を、例えばCVDを使用して形成する。その後、スパッタ法等により金属膜を成膜し、フォトリソグラフィによるマスクのパターニングの後に金属膜をエッチングして、トップゲート電極123を形成する。金属材料は任意であり、例えば、Mo、W、Nb、Al等が使用できる。
【0071】
図7Bを参照して、製法は、上側絶縁層117越しに、トップゲート電極123をマスクとして、不純物(例えばボロンイオン)を酸化物半導体層102に注入する。不純物イオン注入により、酸化物半導体層102に、低抵抗化されたソース/ドレイン領域105、107が形成される。
【0072】
ソース/ドレイン領域105、107は、トップゲート電極123の外側の領域であり、不純物イオンが注入され、低抵抗化される。ソース/ドレイン領域105は、下側非晶質層113と上側結晶層114で構成され、ソース/ドレイン領域107は、下側非晶質層115と上側結晶層116で構成される。不純物イオン注入は、ソース/ドレイン領域105、107の酸素欠損を増加させ、その抵抗値を下げる。後述するように、不純物イオン注入によって、ソース/ドレイン領域105、107の配向度が低下され、抵抗値が下がる。
【0073】
高抵抗領域は、チャネル領域103である。チャネル領域103領域は不純物イオンにさらされない。そのため、下側非晶質層111及び上側結晶層112は、不純物イオン注入の前の、非晶質層151及び結晶層152と同様の特性を有している。チャネル領域103の高抵抗は、維持される。このように、トップゲート電極123をマスクとして使用する自己整合により低抵抗化領域が形成される。
【0074】
図7Cを参照して、次に、製法は、トップゲート電極123及び上側絶縁層117を覆うように、層間絶縁層118を形成する。層間絶縁層118の形成は、例えば、CVDを使用して、シリコン酸化物層やシリコン窒化物層等の1又は複数の絶縁層を形成できる。
【0075】
図7Dを参照して、次に、製法は、フォトリソグラフィによるマスクのパターニングの後のエッチングにより、平面視においてトップゲート電極123の外側に、コンタクトホールを層間絶縁層118及び上側絶縁層117に形成する。コンタクトホールは、トップゲート電極123と重ならない位置において層間絶縁層118及び上側絶縁層117を貫通して、酸化物半導体層のソース/ドレイン領域105、107を、それぞれ露出させる。
【0076】
さらに、製法は、スパッタ法等により金属膜を成膜し、フォトリソグラフィによるマスクのパターニングの後に金属膜をエッチングして、ソース/ドレイン電極121、122を形成する。ソース/ドレイン電極121、122は、層間絶縁層118及び上側絶縁層117を貫通して、ソース/ドレイン領域105、107の上面とそれぞれ接触する。
【0077】
次に、酸化物半導体を製造する方法の他の例を説明する。図8Aから8Dは、図5に示す酸化物半導体TFTの製造方法の例を模式的に示す。この方法は、酸化物半導体の露出している領域をプラズマにさらして、ソース/ドレイン領域を低抵抗化する。以下においては、図7A~7Dを参照した説明との相違点を主に説明する。
【0078】
図8Aは、図7Aと略同様であり、上側絶縁層117に代えて、絶縁層141が形成されている。絶縁層141の形状及び形成方法は、上側絶縁層117と同様でよい。他の構成要素は、図7の構成要素と同様であり、それらの形成方法も同様でよい。
【0079】
次に、図8Bを参照して、製法は、トップゲート電極123をマスクとして、絶縁層141をエッチングして、上側絶縁層127を形成する。これにより、酸化物半導体層102の一部が、露出する。製法は、酸化物半導体層102の露出している部分をHeプラズマにさらして、低抵抗化する。これにより、低抵抗化されたソース/ドレイン領域105、107が形成される。
【0080】
ソース/ドレイン領域105、107の構造については、図7Bを参照して説明した通りである。Heプラズマにさらすことは、ソース/ドレイン領域105、107の酸素欠損を増加させ、その抵抗値を下げる。後述するように、Heプラズマにさらすことによって、ソース/ドレイン領域105、107の配向度が低下され、抵抗値が下がる。
【0081】
高抵抗領域は、チャネル領域103である。チャネル領域103はHeプラズマにさらされない。そのため、下側非晶質層111及び上側結晶層112は、Heプラズマにさらす前の、非晶質層151及び結晶層152と同様の特性を有している。チャネル領域103の高抵抗は、維持される。このように、トップゲート電極123をマスクとして使用する自己整合により低抵抗化領域が形成される。
【0082】
図8Cを参照して、次に、製法は、トップゲート電極123及び上側絶縁層127を覆うように、層間絶縁層128を形成する。層間絶縁層128の形成は、例えば、CVDを使用して、シリコン酸化物層やシリコン窒化物層等の1又は複数の絶縁層を形成できる。
【0083】
図8Dを参照して、次に、製法は、フォトリソグラフィによるマスクのパターニングの後のエッチングにより、平面視においてトップゲート電極123の外側に、コンタクトホールを層間絶縁層128に形成する。コンタクトホールは、トップゲート電極123と重ならない位置において層間絶縁層128を貫通して、酸化物半導体層のソース/ドレイン領域105、107を、それぞれ露出させる。
【0084】
さらに、製法は、スパッタ法等により金属膜を成膜し、フォトリソグラフィによるマスクのパターニングの後に金属膜をエッチングして、ソース/ドレイン電極121、122を形成する。ソース/ドレイン電極121、122は、層間絶縁層128を貫通して、ソース/ドレイン領域105、107の上面とそれぞれ接触する。
【0085】
OLED表示装置の製造は、上述のように画素回路内のトランジスタを作成した後、OLED素子及び封止構造部を形成する。例えば、製法は、ソース/ドレイン電極を含む金属層を形成した後、さらに、CVD法等により絶縁層(例えばシリコン酸化物層)を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、パッシベーション層を形成し、さらにその上に有機物で形成されたオーバーコート層を形成する。
【0086】
次に、製法は、オーバーコート層上にアノード電極を形成し、パッシベーション層及びオーバーコート層に形成されたコンタクトホールを介して、ソース/ドレイン電極に接続する。アノード電極は、例えば、透明導電膜、金属反射膜、及び透明導電膜の3層を含む。透明導電材料は、例えば、ITO、IZO等である。反射金属材料は、例えば、Ag、Mg、Al等である。アノード電極は、スパッタ及びエッチングにより形成され得る。
【0087】
製法は、さらに、スピンコート法等によって感光性の有機樹脂膜を堆積し、パターニングを行って画素定義層を形成する。画素定義層にはホールが形成され、アノード電極が形成されたホールの底で露出する。画素定義層により、各副画素の発光領域が分離される。製法は、さらに、赤、緑、青の色毎に有機発光材料を成膜して、アノード電極上に有機発光膜を形成し、さらに、基板全面にカソード電極を形成する。その後、製法は、封止構造部を形成する。
【0088】
[電子線回折による測定結果]
以下において、本明細書の一実施形態の酸化物半導体TFTの電子線回折による測定結果を説明する。電子線回折測定は、TEM(透過型電子顕微鏡)を使用した。酸化物半導体TFTの酸化物半導体層に電子線を照射して回折パターンを取得し、以下に説明する回折パターンデータ及びその方位角展開グラフを生成した。酸化物半導体層は、下側非晶質層及び上側結晶層で構成されていることが示された。低抵抗化領域(ソース/ドレイン領域)の配向度は、高抵抗領域(チャネル領域)の配向度より低いことが示された。
【0089】
図9A、9Bは、図7A~7Dを参照して説明した方法で作成したサンプルの電子線回折による測定結果を示す。図9Aは、上側結晶層の、(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。図9Bは、下側非晶質の、(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。これらは、図9C、9Dに示すようなTEM像から得られるそのフーリエ変換像(電子線回折像と等価)において、回折スポット強度の方位角依存性を示したものである。これらのフーリエ変換像を見比べると、上側結晶層の方がより明るい回折スポットが明確に見られる。二つのグラフの横軸は方位角を示し、縦軸は電子線回折の強度を示す。図9A及び9Bは、70nm厚の酸化物半導体層における40nm×40nmの局所断面領域での測定結果を示す。
【0090】
図9Aの上側結晶層の測定結果は高いピークを示す。一方、図9Bの下側非晶質層の測定結果は高いピークを示すことなくフラットである。この二つの測定結果は、上側の層が結晶層であり、下側の層が非晶質層であることを示している。結晶層は、平均バックグラウンドレベル(200×106)の2倍以上の強度のピークを有する。非晶質層のピーク強度の最大値は、平均バックグラウンドレベル(200×106)の2倍未満である。ここで、平均バックグラウンドレベルとは、明確なピークが存在しない領域の信号の平均値である。
【0091】
図10A、10Bは、図7A~7Dを参照して説明した方法で作成したサンプルの電子線回折による測定結果を示す。図10Aは、チャネル領域の、(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。図10Bは、ソース/ドレイン領域の、(111)面の回折スポットの方位角展開を示す。二つのグラフの横軸は方位角を示し、縦軸は電子線回折の強度を示す。図10A及び10Bは、70nm厚の酸化物半導体層における70nm×0.7umの比較的広い断面領域での測定結果を示す。
【0092】
図10Aが示す測定結果から算出された(111)配向度は、17.2であった。図10Bが示す測定結果から算出された(111)配向度は、13.7であった。このように配向度が低下することで、ソース/ドレイン領域は適切に低抵抗化される。なお、非晶質の配向度は1である。配向度は、方位角展開の強度ピークの大きさで表される。
【0093】
なお、チャネル領域及びソース/ドレイン領域の局所的な配向度は、上記特性と異なる値を示し得る。つまり、チャネル領域(高抵抗領域)の局所領域は高い配向度を示し、ソース/ドレイン領域(低抵抵抗化領域)の局所領域は低い配向度を示し得る。発明者らの検討によれば、酸化物半導体膜の厚み×0.5um以上の断面領域は、チャネル領域の高い配向度とソース/ドレイン領域の低い配向度を適切に示すことができた。
【0094】
[デバイス構造]
以下において、複数の酸化物半導体TFTを含む回路のいくつかの構造例を説明する。図11は、異なるS値を有するスイッチ酸化物半導体TFT(以下単にスイッチTFTとも呼ぶ)と駆動酸化物半導体TFT(以下単に駆動TFTとも呼ぶ)を含む画素回路の構造例を示す。
【0095】
図11は、スイッチTFT及び駆動TFTの断面構造の例を模式的に示す。樹脂又はガラスで形成された可撓性又は不撓性の絶縁基板325上にスイッチTFT310及び駆動TFT330が形成されている。スイッチTFTは第1酸化物半導体TFTであり、スイッチTFT330は第2酸化物半導体TFTである。スイッチTFT310は、図3を参照して説明した構成からボトムゲート電極を除いた構成を有している。駆動TFT330は、図3を参照して説明した構成を有している。TFT310、330は、図7A~7Dを参照して説明した方法によって、同時に形成され得る。
【0096】
駆動TFT330は、ボトムゲート電極337と、より上層の酸化物半導体層338を含む。ボトムゲート電極337と酸化物半導体層338との間には下側絶縁層326が存在する。酸化物半導体層338は、ソース/ドレイン領域331、332と、面内方向においてソース/ドレイン領域331、332間のチャネル領域333とを含む。
【0097】
酸化物半導体層338は下側絶縁層326上に直接接触して形成されている。ソース/ドレイン領域331、332は、酸化物半導体が低抵抗化された領域である。チャネル領域333は、酸化物半導体が低抵抗化されていない領域である。図3を参照して説明したように、ソース/ドレイン領域331、332及びチャネル領域333は、それぞれ、下側非晶質層及び上側結晶層で構成されている。
【0098】
ボトムゲート電極337は、下側絶縁層326を挟んでチャネル領域333と対向している。下側絶縁層326は、チャネル領域333及びボトムゲート電極337と直接接触している。ボトムゲート電極133には、データ信号が与えられ、OLED素子への駆動電流を制御する。
【0099】
駆動TFT330は、さらに、トップゲート電極336を含む。トップゲート電極336と酸化物半導体層338との間に、上側絶縁層327が存在する。酸化物半導体層338、上側絶縁層327及びトップゲート電極336は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、上側絶縁層327は、酸化物半導体層338及びトップゲート電極336と直接接触している。
【0100】
トップゲート電極336及び上側絶縁層327を覆うように、層間絶縁層328が形成されている。ソース/ドレイン電極334、335は、層間絶縁層328及び上側絶縁層327を貫通して、ソース/ドレイン領域331、332にそれぞれ直接接続している。ソース/ドレイン電極334、335の頂部は、層間絶縁層328の上面に直接接触している。また、ソース/ドレイン電極334、335の内、より電位の低い方の電極334は、OLED素子のアノード電極に接続される(図11には図示していない)。
【0101】
ソース/ドレイン電極334、335は、平面視においてトップゲート電極336の外側を貫通するコンタクト部339、340をそれぞれ含む。コンタクト部339は、層間絶縁層328及び上側絶縁層327を貫通して、ソース/ドレイン領域331に直接接触している。コンタクト部340は、層間絶縁層328及び上側絶縁層327を貫通して、ソース/ドレイン領域332に直接接触している。
【0102】
ソース/ドレイン電極334とトップゲート電極336とは、相互接続部341によって接続されている。これにより、これらは同電位に維持される。相互接続部341は、ソース/ドレイン電極334に連続しており、同一材料で同時に形成することができる。相互接続部341は、トップゲート電極336に直接接続されている。相互接続部341は、コンタクト部342を含み、コンタクト部342は層間絶縁層328を貫通して、トップゲート電極336の上面に直接接触している。ソース/ドレイン電極334には、例えばソース電位が与えられる。トップゲート電極336は、相互接続部341によりソース/ドレイン電極334接続されており、その電位は、ソース/ドレイン電極334の電位と同一である。
【0103】
スイッチTFT310は、平面視において駆動TFT330と異なる位置に配置されている。スイッチTFT310は、酸化物半導体層318を含む。酸化物半導体層318は下側絶縁層326上に直接接触して形成されている。酸化物半導体層318は、ソース/ドレイン領域311、312と、面内方向においてソース/ドレイン領域311、312間のチャネル領域313とを含む。
【0104】
ソース/ドレイン領域311、312は、酸化物半導体が低抵抗化された領域である。チャネル領域313は、酸化物半導体が低抵抗化されていない領域である。図3を参照して説明したように、ソース/ドレイン領域311、312及びチャネル領域313は、それぞれ、下側非晶質層及び上側結晶層で構成されている。
【0105】
スイッチTFT310は、さらに、トップゲート電極316を含む。トップゲート電極316と酸化物半導体層318との間に、上側絶縁層327が存在する。酸化物半導体層318、上側絶縁層327及びトップゲート電極316は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、上側絶縁層327は、酸化物半導体層318及びトップゲート電極316と直接接触している。トップゲート電極316には、スイッチTFT310をON/OFFする制御信号が与えられる。
【0106】
トップゲート電極316及び上側絶縁層327を覆うように、層間絶縁層328が形成されている。ソース/ドレイン電極314、315は、層間絶縁層328及び上側絶縁層327を貫通して、ソース/ドレイン領域311、312にそれぞれ直接接続している。ソース/ドレイン電極314、315の頂部は、層間絶縁層328の上面に直接接触している。
【0107】
ソース/ドレイン電極314、315は、平面視においてトップゲート電極316の外側を貫通するコンタクト部319、320をそれぞれ含む。コンタクト部319は、層間絶縁層328及び上側絶縁層327を貫通して、ソース/ドレイン領域311に直接接触している。コンタクト部320は、層間絶縁層328及び上側絶縁層327を貫通して、ソース/ドレイン領域312に直接接触している。
【0108】
スイッチTFT310のソース/ドレイン電極314と、駆動TFTのボトムゲート電極337とは、相互接続部323によって接続されている。相互接続部323は、ソース/ドレイン電極314に連続しており、同一材料で同時に形成することができる。相互接続部323は、ボトムゲート電極337に直接接続されている。
【0109】
相互接続部323は、コンタクト部324を含み、コンタクト部324は、層間絶縁層328、上側絶縁層327及び下側絶縁層326を貫通して、ボトムゲート電極337から延在している部分321の上面に直接接触している。ボトムゲート電極337は、相互接続部323によりソース/ドレイン電極314接続されており、その電位は、ソース/ドレイン電極314の電位と同一である。
【0110】
図12は、異なるS値を有するスイッチTFTと駆動TFTを含む画素回路の構造例を示す。図11に示す構成例と相違点を主に説明する。図12は、スイッチTFT及び駆動TFTの断面構造の例を模式的に示す。樹脂又はガラスで形成された可撓性又は不撓性の絶縁基板325上にスイッチTFT350及び駆動TFT370が形成されている。スイッチTFT350は、図5を参照して説明した構成からボトムゲート電極を除いた構成を有している。駆動TFT370は、図5を参照して説明した構成を有している。TFT350、370は、図8A~8Dを参照して説明した方法によって、同時に形成され得る。
【0111】
図11に示す構成例と比較して、上側絶縁層327に代えて、駆動TFT370のトップゲート絶縁体365及びスイッチTFTのトップゲート絶縁体367が存在している。トップゲート絶縁体365、367は、絶縁層をエッチングすることで同時に形成され得る。トップゲート絶縁体365は、トップゲート電極336とチャネル領域333との間に存在し、ソース/ドレイン領域331、332と平面視において重なっていない。トップゲート絶縁体367は、トップゲート電極316とチャネル領域313との間に存在し、ソース/ドレイン領域311、312と平面視において重なっていない。
【0112】
層間絶縁層328に代えて、層間絶縁層368が存在している。層間絶縁層368は、ソース/ドレイン領域311、312、331、332に直接接触し、覆っている。スイッチTFT350において、ソース/ドレイン電極314のコンタクト部319は、層間絶縁層368を貫通し、層間絶縁層368の孔内でソース/ドレイン領域311と接触(直接接続)する。ソース/ドレイン電極315のコンタクト部320は、層間絶縁層368を貫通し、層間絶縁層368の孔内でソース/ドレイン領域312と接触(直接接続)する。
【0113】
駆動TFT370において、ソース/ドレイン電極334のコンタクト部339は、層間絶縁層368を貫通し、層間絶縁層368の孔内でソース/ドレイン領域331と接触(直接接続)する。ソース/ドレイン電極335のコンタクト部340は、層間絶縁層368を貫通し、層間絶縁層368の孔内でソース/ドレイン領域332と接触(直接接続)する。
【0114】
図13は、二つのTFTを含む回路の構造例を示す。第1TFT及び第2TFTは、図11に示すスイッチTFT310と同様の構造を有している。図13に示す構成例は、低抵抗化された酸化物を配線として利用している。具体的には、第1TFT410のソース/ドレイン領域と第2TFT430のソース/ドレイン領域は、低抵抗化された酸化物の配線(配線部)440によって接続されている。これにより、TFTのソース/ドレイン領域と金属電極とのコンタクト抵抗を避けることができる。TFT410、430は、第1酸化物半導体TFT及び第3酸化物半導体TFTであり、図7A~7Dを参照して説明した方法によって、同時に形成され得る。
【0115】
基板425上に形成された下側絶縁層426上に、第1TFT410及び第2TFT430が存在している。第1TFT410は、平面視において第2TFT430と異なる位置に配置されている。
【0116】
第1TFT410は、酸化物半導体層418を含む。酸化物半導体層418は、ソース/ドレイン領域411、412と、面内方向においてソース/ドレイン領域411、412間のチャネル領域413とを含む。
【0117】
ソース/ドレイン領域411、412は、酸化物半導体が低抵抗化された領域である。チャネル領域413は、酸化物半導体が低抵抗化されていない領域である。ソース/ドレイン領域411、412及びチャネル領域413は、それぞれ、下側非晶質層及び上側結晶層で構成されている。
【0118】
第1TFT410は、トップゲート電極416を含む。トップゲート電極416と酸化物半導体層418との間に、上側絶縁層427が存在する。酸化物半導体層418、上側絶縁層427及びトップゲート電極416は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、上側絶縁層427は、酸化物半導体層418及びトップゲート電極416と直接接触している。トップゲート電極416には、例えば、第1TFT410をON/OFFする制御信号が与えられる。
【0119】
トップゲート電極416及び上側絶縁層427を覆うように、層間絶縁層428が形成されている。ソース/ドレイン電極415は、層間絶縁層428及び上側絶縁層427を貫通して、ソース/ドレイン領域412に直接接続している。ソース/ドレイン電極415の頂部は、層間絶縁層428の上面に直接接触している。
【0120】
ソース/ドレイン電極415は、平面視においてトップゲート電極416の外側を貫通するコンタクト部420を含む。コンタクト部420は、層間絶縁層428及び上側絶縁層427を貫通して、ソース/ドレイン領域412に直接接触している。
【0121】
第2TFT430は、酸化物半導体層438を含む。酸化物半導体層438は、ソース/ドレイン領域431、432と、面内方向においてソース/ドレイン領域431、432間のチャネル領域433とを含む。
【0122】
ソース/ドレイン領域431、432は、酸化物半導体が低抵抗化された領域である。チャネル領域433は、酸化物半導体が低抵抗化されていない領域である。ソース/ドレイン領域431、432及びチャネル領域433は、それぞれ、下側非晶質層及び上側結晶層で構成されている。
【0123】
第2TFT430は、トップゲート電極436を含む。トップゲート電極436と酸化物半導体層438との間に、上側絶縁層427が存在する。酸化物半導体層438、上側絶縁層427及びトップゲート電極436は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、上側絶縁層427は、酸化物半導体層438及びトップゲート電極436と直接接触している。トップゲート電極316には、例えば、第2FT430をON/OFFする制御信号が与えられる。
【0124】
トップゲート電極436及び上側絶縁層427を覆うように、層間絶縁層428が形成されている。ソース/ドレイン電極435は、層間絶縁層428及び上側絶縁層427を貫通して、ソース/ドレイン領域432に直接接続している。ソース/ドレイン電極435の頂部は、層間絶縁層428の上面に直接接触している。
【0125】
ソース/ドレイン電極435は、平面視においてトップゲート電極436の外側を貫通するコンタクト部442を含む。コンタクト部442は、層間絶縁層428及び上側絶縁層427を貫通して、ソース/ドレイン領域432に直接接触している。
【0126】
第1TFTの酸化物半導体層418と第2TFTの酸化物半導体層438は、連続する半導体層膜の一部であり、それらに間に配線(配線領域)440が存在している。配線440は、低抵抗化された酸化物で構成されている。酸化物半導体層418のソース/ドレイン領域411、配線440及び酸化物半導体層438のソース/ドレイン領域431は連続しており、これらは同一材料で同時に形成される。
【0127】
例えば、製造工程は、トップゲート電極416、436をマスクとして使用し、不純物イオンを絶縁層427越しに酸化物半導体に注入して低抵抗化することで、ソース/ドレイン領域411、配線440及びソース/ドレイン領域431を同時形成する。上述にように、第1TFT410と第2TFT430は、低抵抗化された酸化物の配線440によって直列に接続される。これにより、TFTの酸化物と金属との間のコンタクト抵抗を小さくできる。
【0128】
図14は、二つのTFTを含む回路の構造例を示す。第1TFT450及び第2TFT470は、図11に示すスイッチTFT310と同様の構造を有している。第1TFT450及び第2TFT470は、第1酸化物半導体TFT及び第4酸化物半導体TFTである。図14に示す構成例は、一方のTFTのソース出力を、他方のTFTのトップゲート電極に接続する。一方のソース出力で他方の結晶性チャネルのゲートを駆動し、動作の高速化できる。例えば、ドライバ31、32内での接続や、ドライバ31、32の出力と画素回路のTFTのゲートとの接続に適用できる。
【0129】
絶縁基板465上に第1TFT450及び第2TFT470が形成されている。TFT450、470は、図3を参照して説明した構成からボトムゲート電極を除いた構成を有している。TFT450、470は、図7A~7Dを参照して説明した方法によって、同時に形成され得る。
【0130】
基板465上に形成された下側絶縁層466上に、第1TFT450及び第2TFT470が存在している。第1TFT450は、平面視において第2TFT470と異なる位置に配置されている。
【0131】
第1TFT450は、酸化物半導体層458を含む。酸化物半導体層458は下側絶縁層466上に直接接触して形成されている。酸化物半導体層458は、ソース/ドレイン領域451、452と、面内方向においてソース/ドレイン領域451、452間のチャネル領域453とを含む。
【0132】
ソース/ドレイン領域451、452は、酸化物半導体が低抵抗化された領域である。チャネル領域453は、酸化物半導体が低抵抗化されていない領域である。図3を参照して説明したように、ソース/ドレイン領域451、452及びチャネル領域453は、それぞれ、下側非晶質層及び上側結晶層で構成されている。
【0133】
第1TFT450は、さらに、トップゲート電極456を含む。トップゲート電極456と酸化物半導体層458との間に、上側絶縁層467が存在する。酸化物半導体層458、上側絶縁層467及びトップゲート電極456は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、上側絶縁層467は、酸化物半導体層458及びトップゲート電極456と直接接触している。トップゲート電極456には、例えば、第1TFT450をON/OFFする制御信号が与えられる。
【0134】
トップゲート電極456及び上側絶縁層467を覆うように、層間絶縁層468が形成されている。ソース/ドレイン電極454、455は、層間絶縁層468及び上側絶縁層467を貫通して、ソース/ドレイン領域451、452にそれぞれ直接接続している。ソース/ドレイン電極454、455の頂部は、層間絶縁層468の上面に直接接触している。
【0135】
ソース/ドレイン電極454、455は、平面視においてトップゲート電極456の外側を貫通するコンタクト部459、460をそれぞれ含む。コンタクト部459は、層間絶縁層468及び上側絶縁層467を貫通して、ソース/ドレイン領域451に直接接触している。コンタクト部460は、層間絶縁層468及び上側絶縁層467を貫通して、ソース/ドレイン領域452に直接接触している。
【0136】
第2TFT470は、酸化物半導体層478を含む。酸化物半導体層478は下側絶縁層466上に直接接触して形成されている。酸化物半導体層478は、ソース/ドレイン領域471、472と、面内方向においてソース/ドレイン領域471、472間のチャネル領域473とを含む。
【0137】
ソース/ドレイン領域471、472は、酸化物半導体が低抵抗化された領域である。チャネル領域473は、酸化物半導体が低抵抗化されていない領域である。図3を参照して説明したように、ソース/ドレイン領域471、472及びチャネル領域473は、それぞれ、下側非晶質層及び上側結晶層で構成されている。
【0138】
第2TFT470は、さらに、トップゲート電極476を含む。トップゲート電極476と酸化物半導体層478との間に、上側絶縁層467が存在する。酸化物半導体層478、上側絶縁層467及びトップゲート電極476は、この順で下から(基板側から)並ぶように積層されており、上側絶縁層467は、酸化物半導体層478及びトップゲート電極476と直接接触している。トップゲート電極476には、例えば、第2TFT470をON/OFFする制御信号が与えられる。
【0139】
トップゲート電極476及び上側絶縁層467を覆うように、層間絶縁層468が形成されている。ソース/ドレイン電極474、475は、層間絶縁層468及び上側絶縁層467を貫通して、ソース/ドレイン領域471、472にそれぞれ直接接続している。ソース/ドレイン電極474、475の頂部は、層間絶縁層468の上面に直接接触している。
【0140】
ソース/ドレイン電極474、475は、平面視においてトップゲート電極476の外側を貫通するコンタクト部479、480をそれぞれ含む。コンタクト部479は、層間絶縁層468及び上側絶縁層467を貫通して、ソース/ドレイン領域471に直接接触している。コンタクト部480は、層間絶縁層468及び上側絶縁層467を貫通して、ソース/ドレイン領域472に直接接触している。
【0141】
第1TFT450のソース/ドレイン電極454と、第2TFT470のトップゲート電極476とは、相互接続部483によって接続されている。相互接続部483は、ソース/ドレイン電極454に連続しており、同一材料で同時に形成することができる。相互接続部483は、トップゲート電極476に直接接続されている。
【0142】
相互接続部483は、コンタクト部484を含み、コンタクト部484は、層間絶縁層468を貫通して、トップゲート電極476の上面に直接接触している。トップゲート電極476は、相互接続部483によりソース/ドレイン電極454接続されており、その電位は、ソース/ドレイン電極454の電位と同一である。
【0143】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0144】
102、318、338 酸化物半導体層
103、109、313、333 チャネル領域
105、107、311、312、331、332 ソース/ドレイン領域
111、113、115、151 非晶質層
112、114、116、152 結晶層
117、127、135、141、326、327 絶縁層
118、128、328、368 層間絶縁層
121、122、314、315、334、335、354 ソース/ドレイン電極
123、316、336 トップゲート電極
125、126、319、320、324、339、340、342 コンタクト部
133、337 ボトムゲート電極
323、341、483 相互接続部
365、367 トップゲート絶縁体
410、450 第1TFT
430、470 第2TFT
440 配線
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14