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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148602
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G08B17/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056728
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】野村 優弥
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AA06
5C085AB09
5C085AC18
5C085CA04
5C085CA16
(57)【要約】
【課題】スピーカなどの発音手段が動作しているか否かに関わらず、煙の濃度が所定の閾値を超えているか適切に判定することができる煙感知器を提供する。
【解決手段】実施形態の煙感知器100は、煙を検出する煙感知手段2と、動作時に音を発する発音手段3と、発音手段3が動作しているか否かを判断する発音判断手段4と、煙濃度が閾値を超えているかを所定の判定方法に基づいて判定して警報動作の制御を行う制御手段1と、を備えている。制御手段1は、煙感知手段2によって検出された煙から濃度を検出し、発音判断手段4の判断結果に基づいて、発音手段3が動作している場合と動作していない場合とで煙濃度の判定方法を変更し、発音手段3が動作している場合、所定期間内に検出した検出濃度のいずれか1以上が所定の閾値を超えているかを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙を検出する煙感知手段と、
動作時に音を発する発音手段と、
前記発音手段が動作しているか否かを判断する発音判断手段と、
煙濃度が閾値を超えているかを所定の判定方法に基づいて判定して警報動作の制御を行う制御手段と、
を備える煙感知器であって、
前記制御手段は、
前記煙感知手段によって検出された煙から濃度を検出し、
前記発音判断手段の判断結果に基づいて、前記発音手段が動作している場合と前記発音手段が動作していない場合とで前記判定方法を変更し、
前記発音手段が動作している場合、所定期間内に検出した検出濃度のいずれか1以上が前記閾値を超えているかを判定する、
煙感知器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記発音手段が動作していない場合、所定のタイミングで検出した検出濃度が前記閾値を超えているかを判定する、
請求項1記載の煙感知器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記発音手段が動作していない場合、前記所定のタイミングで検出した検出濃度が所定の回数前記閾値を超えている場合に前記煙濃度が前記閾値を超えていると判定する、
請求項2記載の煙感知器。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記発音手段が動作している場合、一度の前記所定期間内に検出した検出濃度のいずれか1以上が前記閾値を超えている場合に前記煙濃度が前記閾値を超えていると判定し、
前記発音手段が動作していない場合、前記所定のタイミングで検出した検出濃度が複数回続けて前記閾値を超えている場合に前記煙濃度が前記閾値を超えていると判定する、
請求項2又は3記載の煙感知器。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記発音手段が動作していない場合は、前記煙感知手段によって検出された煙から一定周期で濃度を検出し、
前記発音手段が動作している場合は、前記煙感知手段によって検出された煙から前記一定周期よりも短い周期で濃度を検出する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の煙感知器。
【請求項6】
一酸化炭素濃度を検出するCO検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、一酸化炭素濃度が閾値を超えているかを所定の判定方法に基づいて判定して警報動作の制御を行い、
前記発音手段が動作している場合と前記発音手段が動作していない場合とで、一酸化炭素濃度が閾値を超えているかの判定方法は同じである、請求項1~5のいずれか1項に記載の煙感知器。
【請求項7】
前記所定期間内に検出された検出濃度の全て又は最大値を記憶する記憶手段をさらに備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載の煙感知器。
【請求項8】
前記発音手段が動作しているか否かについての情報を記憶する記憶手段をさらに備えている、請求項1~7のいずれか1項に記載の煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅などの屋内の煙の濃度を監視して、一定以上の濃度の場合に対処や避難を促すべく使用者などに報せる煙感知器が用いられている。煙感知器は、火災警報器を始めとする各種警報器にも、火災などの異常状態発生の判定手段として用いられ、さらに、一酸化炭素などの有毒ガスの感知手段なども含む複合型の警報器にも用いられている。このような煙感知器では、その側面などに設けられた吸入口から筐体内に流入した煙が、発光部と受光部との間の煙の検知空間に導入され、導入された煙によって、発光部から検知空間を通って受光部へと向かう光が散乱し、煙の濃度に応じた散乱光が受光部で検知されることによって煙の濃度が検出される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7001397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単独の煙感知器、乃至煙感知器を含む火災警報器などの各種警報器には、多くの場合、火災やガス漏れなどの検出された異常事態の発生を音響で使用者などに報せるべく、発音手段が備えられている。例えばスピーカは、単調な警告音だけでなく具体的な異常状況や対処手段などの情報を含む音声を発することができるため、警報器の高機能化や制御の多様化が進むに連れて、スピーカを装備する警報器の普及が進んでいる。
【0005】
しかしながら、このようにスピーカなどの発音手段を備える、煙感知器を含む警報器では、スピーカなどの動作による空気の振動によって、警報器の外部から検知空間までの煙の導入が阻害されることがある。特に、警報器に求められる小型化の要求に応えるべく、スピーカなどの発音手段と、煙の吸入口から検知空間に至る煙の導入路とが近接して配設されると、空間的な両者の分離が困難になると共に、スピーカなどの動作が煙の導入に与える影響は大きくなると考えられる。そして、煙の適切な導入が阻害されると、異常と判定されるほどの濃度で警報器の周囲に煙が充満しているに関わらず、例えば火災警報などの煙の濃度に基づく警報が速やかに発せられないということにもなりかねない。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、内部に備えるスピーカなどの発音手段が動作しているか否かに関わらず、煙の濃度が所定の閾値を超えているか適切に判定することができる煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の煙感知器は、煙を検出する煙感知手段と、動作時に音を発する発音手段と、前記発音手段が動作しているか否かを判断する発音判断手段と、煙濃度が閾値を超えているかを所定の判定方法に基づいて判定して警報動作の制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記煙感知手段によって検出された煙から濃度を検出し、前記発音判断手段の判断結果に基づいて、前記発音手段が動作している場合と前記発音手段が動作していない場合とで前記判定方法を変更し、前記発音手段が動作している場合、所定期間内に検出した検出濃度のいずれか1以上が前記閾値を超えているかを判定する。
【0008】
前記制御手段は、前記発音手段が動作していない場合、所定のタイミングで検出した検出濃度が前記閾値を超えているかを判定してもよい。
【0009】
前記制御手段は、前記発音手段が動作していない場合、前記所定のタイミングで検出した検出濃度が所定の回数前記閾値を超えている場合に前記煙濃度が前記閾値を超えていると判定してもよい。
【0010】
前記制御手段は、前記発音手段が動作している場合、一度の前記所定期間内に検出した検出濃度のいずれか1以上が前記閾値を超えている場合に前記煙濃度が前記閾値を超えていると判定し、前記発音手段が動作していない場合、前記所定のタイミングで検出した検出濃度が複数回続けて前記閾値を超えている場合に前記煙濃度が前記閾値を超えていると判定してもよい。
【0011】
前記制御手段は、前記発音手段が動作していない場合は、前記煙感知手段によって検出された煙から一定周期で濃度を検出し、前記発音手段が動作している場合は、前記煙感知手段によって検出された煙から前記一定周期よりも短い周期で濃度を検出してもよい。
【0012】
本発明の煙感知器は、一酸化炭素濃度を検出するCO検知手段をさらに備えていてもよく、前記制御手段は、一酸化炭素濃度が閾値を超えているかを所定の判定方法に基づいて判定して警報動作の制御を行い、前記発音手段が動作している場合と前記発音手段が動作していない場合とで、一酸化炭素濃度が閾値を超えているかの判定方法は同じであってもよい。
【0013】
本発明の煙感知器は、前記所定期間内に検出された検出濃度の全て又は最大値を記憶する記憶手段をさらに備えていてもよい。
【0014】
本発明の煙感知器は、前記発音手段が動作しているか否かについての情報を記憶する記憶手段をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内部に備えるスピーカなどの発音手段が動作しているか否かに関わらず、煙の濃度が所定の閾値を超えているか適切に判定することが可能な煙感知器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の煙感知器の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態の煙感知器を含む警報器の一例を示す斜視図である。
図3図2の警報器における筐体内での気体の流動の様子を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態における非発音時の濃度判定の一例を示すタイミング図である。
図5】本発明の一実施形態における発音時の煙濃度上昇中の濃度判定の一例を示すタイミング図である。
図6】本発明の一実施形態における発音時の煙濃度下降中の濃度判定の一例を示すタイミング図である。
図7A】本発明の一実施形態の煙感知器の非発音時の動作の一例を示すフローチャートである。
図7B】本発明の一実施形態の煙感知器の発音時の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る煙感知器を説明する。但し、以下に説明される実施形態及び添付の図面は、本発明に係る煙感知器の一例を示しているに過ぎない。本発明に係る煙感知器の構成及び作用は、以下に説明される実施形態及び添付の図面に例示される構成及び作用に限定されない。
【0018】
<基本構成>
図1には、本発明の一実施形態の煙感知器100の主要な構成要素がブロック図で示されている。煙感知器100は、例えば住居や各種建築物などの屋内といった煙感知器100の設置場所の周囲の環境を監視して、周囲の煙の濃度が所定の閾値以上であると判定した場合に光や音などによってユーザーに報せる警報動作を行う。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態の煙感知器100は、煙を検出する煙感知手段2と、動作時に音を発する発音手段3と、発音手段3が動作しているか否かを判断する発音判断手段4と、警報動作の制御を行う制御手段1と、を備えている。図1の例の煙感知器100は、さらに、記憶手段5、及び、一酸化炭素濃度を検出するCO検知手段6を備えている。煙感知器100は、筐体101を有しており、筐体101に、煙感知手段2、発音手段3、発音判断手段4、制御手段1、記憶手段5、及びCO検知手段6が備えられている。記憶手段5は、煙感知器100による一連の警報動作において生成及び/又は利用される、例えば検出された煙の濃度などの各種情報を記憶する。図1の例では、制御手段1は、他の全て、すなわち、煙感知手段2、発音手段3、発音判断手段4、記憶手段5、及びCO検知手段6と接続されている。従って、制御手段1は、これら他の手段の全てを制御可能であってよい。また制御手段1は、これら他の手段の全てとの間で、各手段が有する情報や各手段によって生成された信号の交換が可能であってもよい。図1の例では、煙感知手段2と記憶手段5も互いに接続されている。加えて、発音判断手段4と発音手段3とは、破線の矢印で示されるように、発音手段3が発音していることを伝える、例えば気体の振動である音波のような媒体を介して接続されていてもよい。
【0020】
制御手段1は、煙感知手段2によって検出された煙から濃度を検出する。すなわち制御手段1は、煙感知手段2の近傍において現に煙感知手段2を取り巻いている気体中の煙の濃度を検出する。加えて、制御手段1は、煙感知器100の設置環境の煙濃度が閾値を超えているかを所定の判定方法(以下、この判定方法は単に「濃度判定方法」とも称される)に基づいて判定するように構成されている。なお、以下では、簡潔な用語で区別が明確になるように、煙感知器100によって監視されるべき煙感知器100の設置環境の煙濃度は単に「周囲濃度」とも称され、煙感知手段2によって検出された煙から制御手段1が現に検出する煙の濃度は単に「検出濃度」とも称される。
【0021】
本実施形態において制御手段1は、発音判断手段4の判断結果に基づいて発音手段3が動作しているか否かを把握し、発音手段3が動作している場合と発音手段3が動作していない場合とで、上記濃度判定方法を変更する。そして、制御手段1は、発音手段3が動作している場合、制御手段1が所定期間内に検出した1以上の検出濃度のうちのいずれか1以上が所定の閾値を超えているかを判定するように構成されている。本実施形態では、このように、発音手段3が動作している場合には、制御手段1は、所定期間内に煙感知手段2によって検出された煙から検出した検出濃度のうちの少なくとも1つが所定の閾値を超えているかを判定する。従って、以下に詳述されるように、発音手段3の動作のために煙感知手段2の感知可能領域まで煙が到達し難い状況下でも、周囲濃度が所定の閾値を超えているか否かを適切に判断して速やかにユーザーに報せ得ることがある。
【0022】
<各構成要素及び煙感知器の基本動作>
煙感知手段2は、煙感知手段2の周囲の空間における煙、具体的には、周囲と連通した煙感知手段2内の煙感知領域における煙を感知して、その量、すなわち煙感知領域内の煙の濃度に応じた大きさの電気信号(電圧や電流)などによる感知結果を出力する。従って、煙感知手段2では、煙感知器100の周囲から周囲の空気と共に煙感知手段2の煙感知領域内に流入した煙の濃度に応じた感知結果が出力される。煙感知手段2としては、他に光電式スポット型感知機構が例示されるが、煙感知手段2は、これに限定されない。
【0023】
例えば光電式スポット型感知機構では、煙感知領域に向けて光を発する発光素子が備えられると共に、煙感知領域内を伝播する光を受ける受光素子が、発光素子からの光の光軸上からずれた位置に、発光素子との間に遮光壁を介して備えられる。煙感知領域内に煙が存在すると、発光素子からの光が煙感知領域内の煙の濃度に応じた程度に散乱し、その散乱光が受光素子で受け取られる。そして受光素子からは、受光した散乱光の光量に応じた、すなわち煙の濃度に応じた大きさを有する電圧や電流などの出力信号(感知信号)が出力される。光電式分離型感知機構では、光電式スポット型と同様の発光素子と受光素子とが光軸上で対向するように備えられ、煙感知領域内の煙によってその濃度に応じた程度に弱められた光が受光素子で受け取られる。そして受光素子は、受光した光に基づいて、煙の濃度に応じた大きさの感知信号を出力する。
【0024】
図1に示されるように煙感知手段2は、制御手段1と接続されており、煙感知手段2の出力は、制御手段1に入力される。制御手段1に入力された煙感知手段2の出力結果から得られる情報は、記憶手段5に記憶されてもよい。図1の例では煙感知手段2と記憶手段5とが接続されているので、煙感知手段2の感知結果は煙感知手段2から記憶手段5に直接送られてもよい。
【0025】
発音手段3は、発音手段3の外部からの電気信号のような制御情報に従って音を発することが可能な任意の素子であり得る。発音手段3としては、任意の周波数及び音量の音を発することが可能なスピーカや、単調な連続音や断続音を発するブザーなどが例示されるが、発音手段3は、これらに限定されない。発音手段3は、動作時に、周囲の空気などの気体を振動させることによって音を発する。すなわち、発音手段3は、動作時に鳴動することによって任意の音を発し得る。発音手段3は、煙感知器100によって煙の検出に関する警報が発せられるときに警報音を発し得る。例えば、発音手段3がスピーカであるときは、発音手段3によって、警報音と共に、避難や換気などの適切な対処を促すメッセージが発せられてもよい。また、発音手段3は、煙検出時の警報以外の任意の警報時の警報音、例えば一酸化炭素ガス検出時の警報音や換気を促すメッセージを発してもよく、警報発報状況以外の状況下で任意の通知音や通知メッセージを発してもよい。例えば、所定濃度以上の煙検出に基づく火災検出時、及び/又は、所定濃度以上の可燃性ガスや過剰な高温や低湿など周囲環境の温湿度に基づく異常状態の検出時、並びに、電池残量や自主点検結果の通知時などに、発音手段3は、各状態に適した音響や音声を発してもよい。発音手段3の動作は、制御手段1によって制御されてもよく、制御手段1以外の煙感知器100の任意の構成要素によって制御されてもよい。
【0026】
制御手段1は、前述したように、煙感知手段2によって検知された煙からその濃度(検出濃度)を検出して警報動作を制御する。例えば制御手段1は、煙感知手段2から出力される感知信号と煙濃度との検量線を有しており、その検量線を用いて、煙感知手段2から現に入力される信号に基づいて検出濃度を検出する。さらに、その検出濃度が所定の閾値を超えているか否かを判定する。そして、その検出濃度についての判定結果と濃度判定方法とに基づいて、周囲濃度が所定の閾値を超えているか否かを判定する。
【0027】
制御手段1は、周囲濃度の判定だけでなく、煙感知器100における警報動作全体を制御するように構成されていてよい。例えば、制御手段1は、煙感知手段2の感知動作、例えば、煙感知用の光の強度や放射時機、及び感知信号の出力時機などを制御してもよく、発音手段3の動作、例えば、発音時機、その音量、周波数、発音継続時間、及び、発するメッセージの内容などを制御してもよい。また制御手段1は、記憶手段5の制御、例えば、各種情報についての記憶手段への書き込み動作及び読み出しの動作を制御してもよい。例えば、制御手段1によって記憶手段5に書き込むべき情報や記憶手段5から読み出すべき情報が選択されてもよく、記憶手段5内の書き込み及び読み出しの対象の記憶空間(アドレス)が選択されてもよい。
【0028】
さらに、制御手段1は、CO検知手段6の動作を制御してもよい。前述した煙感知手段2についての制御と同様に、制御手段1は、例えばCO検知手段6における一酸化炭素ガスの検知時機や検知信号の出力時機を制御してもよい、さらに制御手段1は、発音判断手段4による判断動作を制御してもよい。例えば、発音手段2による発音の有無の判断時機が制御手段1によって制御されてもよく、発音判断手段4での判断基準が、制御手段1から発音手段4に提供されてもよい。また、制御手段1が発音手段3の動作を制御している場合は、発音有無の判断のための情報や、その情報を示す電圧若しくは電流などの電気信号が制御手段1から発音判断手段4に提供されてもよい。
【0029】
制御手段1は、ハードウェアとしては、例えば、マイコンやASICなどの半導体装置、及び、その周辺部品によって構成され得る。制御手段1は、これらハードウェアと、マイコンやASICなどの半導体装置を所定の手順で動作させる制御プログラムのようなソフトウェアとによって構成されてもよい。このようなソフトウェアは、制御手段1を構成するハードウェア内に内蔵されていてもよく、記憶手段5内に保管されていてもよい。制御手段1は、煙感知手段2による周囲環境の監視から発音手段3などによる警報の発報までの警報動作全体を制御すべく、演算機能、比較機能、記憶機能、及び計時機能などを有し得る。例えば制御手段1を構成する半導体装置に発音判断手段4が内蔵されていてもよい。
【0030】
記憶手段5は、前述したように、例えば検出濃度などの各種の情報を記憶する。記憶手段5には、制御手段1によって随時検出される検出濃度そのものが、検出の都度、全て記憶されてもよく、一定の期間中に検出された複数の検出濃度が制御手段1によって統計処理された結果である統計値、例えば、最大値、最小値、平均値、中央値、及び最頻値などが記憶されてもよい。また、記憶手段5には、発音判断手段4での判断による、又は、制御手段1自らが把握している、発音手段3が動作しているか否かについての情報が記憶されてもよい。記憶手段5としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの各種のメモリ装置が例示されるが、検出濃度などの情報の書き込み及び読み出しが可能な任意の記憶素子が記憶手段5として用いられ得る。また、記憶手段5は、制御手段1に含まれていてもよく、その場合、記憶手段5は、制御手段1を主に構成するマイコンなどに内蔵のRAM、各種のレジスタ、又はレジスタやメモリなどの記憶空間内に設定される各種の識別フラグなどであってもよい。
【0031】
発音判断手段4は、発音手段3が動作しているか否か、すなわち、発音手段3が鳴動して発音手段3から音が発せられているか否かを判断する。例えば、制御手段1によって発音手段3の動作のための制御信号が送られている場合、その制御信号が発音判断手段4によってモニタされる。そして、制御信号を構成する電圧や電流が所定値以上又は所定値以下である場合、発音手段3が動作中又は非動作中であると判断される。従って、発音判断手段4は、コンパレータのような電圧や電流の比較素子であり得る。また、発音判断手段4が制御手段1に含まれている場合、発音判断手段4は、制御手段1を構成するマイコンなどの半導体装置が有する比較機能であってもよい。また制御手段1又は記憶手段5内に、発音手段3が動作中か否かを二つの論理値(ハイレベルとロウレベルなど)で示す識別フラグ(例えば、後述される発音識別フラグFs(図5参照))が設けられている場合、発音判断手段4は、その識別フラグの論理値が入力される論理ゲート素子であってもよい。
【0032】
CO検知手段6は、周囲環境における一酸化炭素の存在、好ましくはその濃度を検出する。CO検知手段6としては、半導体式、電気化学式、接触燃焼式、又は非分散型赤外線式などの任意の方式の一酸化炭素センサが例示されるが、CO検知手段6は、少なくとも一定濃度以上での一酸化炭素の存在の検知が可能であればよく、上記各方式の一酸化炭素センサに限定されない。図1の例においてCO検知手段6は、電気信号などであり得る検知結果を制御手段1へと出力する。制御手段1は、煙に関する警報の制御に加えて、検知された一酸化炭素の濃度が、一酸化炭素に関する所定の閾値を超えているかを所定の判定方法に基づいて判定し、その判定結果に基づいて、一酸化炭素に関する警報動作の制御を行ってもよい。なお、煙感知器100は、CO検知手段6に加えて、又は、CO検知手段6に代えて、可燃性ガスの検知手段、温度検知手段、及び/又は湿度検知手段を備えていてもよい。その場合、制御手段1は、これら各検知手段の検知対象に関する警報動作の制御を行ってもよい。
【0033】
図2には、本実施形態の煙検知器100を含む警報器200の外観の一例が示されている。警報器200は、周囲の煙の濃度や温度に基づいて火災の発生を検知して警報を発する火災警報器であり得る。警報器200は、さらに、一酸化炭素ガス及び一酸化炭素ガス以外の可燃性ガスを検出したり、屋内への部外者の浸入を検出したりして警報を発する複合型の警報器であってもよい。図2に示されるように、警報器200では、筐体201内に、煙感知手段2及び発音手段3などの煙感知器100の構成要素が収められている。図2には示されていないが、筐体201には、煙感知器100の他の構成要素(例えば、図1に例示の発音判断手段4、制御手段1)も収められている。筐体201は、筐体の内部に連通する開口202及び開口203を備えている。
【0034】
開口202は、筐体201の側面全体に渡って設けられており、警報器200の周囲の空気などの気体を警報器200内の各検知素子の近傍へと取り込むための吸入口として機能する。開口203は、筐体201における発音手段3との対向部分に形成されており、発音手段3から発せられる音は、主に開口203を通って外部に放たれる。発音手段3からは、所定の閾値以上の濃度の煙検出時、それに基づく火災検出時、及び/又は所定値以上の濃度の一酸化炭素ガスの検出時などに音が発せられる。また、前述したように、所定の濃度以上の可燃性ガスや過剰な高温や低湿など周囲環境の温湿度に基づく異常状態の検出時、並びに、電池残量や自主点検結果の通知時などに、各状態に適した音響や音声が発音手段3から警報器200の外部に向けて発せられることもある。
【0035】
図3には、図2の警報器200における筐体201内での空気などの気体の流動の様子が模式的に示されている。筐体201の開口202から筐体201の内部に流入した空気は、煙感知手段2に設けられた吸煙口21を通ってその内部の煙感知領域22に流入する。煙感知領域22に流入した気体が煙Sを含んでいると、その煙Sが煙感知手段2によって検出され、制御手段1(図1参照)によってその濃度が検出される。
【0036】
しかし、発音手段3が動作すると、発音手段3の鳴動による空気の振動によって、煙感知手段2の近傍、及び煙感知器100の周囲乃至警報器200の周囲において、警報器200の外部から煙感知手段2に至る気流が影響を受けることがある。とりわけ、煙感知手段2に向かう気体中に粒子状の状態で存在し得る煙Sの流れが、周囲の気体よりも高度に阻害されることがある。例えば、図3の例では、発音手段3の下方から流入する煙Sが発音手段3の動作で影響を受け易いと考えられる。加えて、発音手段3から発せられる音は筐体201の内壁で繰り返し反射し得るため、任意の方向から流入する煙Sの流れも阻害され得ると考えられる。特に警報器200の小型化が進むと、警報器200内や煙感知器100の内部に流入した気体に関する煙感知手段2までの流路と発音手段3とを空間的に分離するのが困難になり、発音手段3の動作による煙の流れへの影響を防ぎ難くなる。煙の流路と発音手段3との間に隔壁などが設けられても、発音手段3からの音波によってその隔壁が振動する場合には、十分な防止効果が得られないこともある。
【0037】
そして煙の流れが阻害されると、本来、煙感知器100の周囲乃至警報器200の周囲における煙の濃度と同程度の濃度であるべき煙感知領域22内の煙の濃度が不安定になり、煙感知器100によってその周囲環境の煙の濃度が適切に検出されないことがある。具体的には、煙感知手段2への煙の流れが阻害されると、煙感知器100は、煙感知器100の周囲の実際の煙濃度よりも低い濃度を検出すると考えられる。その結果、煙感知器100の監視領域において現に所定の閾値を超える濃度で煙か充満しているにも関わらず、例えば火災警報などの煙の濃度に基づく警報が適時に発せられないことも起こり得る。
【0038】
この点に関し、煙感知器100において煙の検出が常時行われれば、検出される煙の濃度が発音手段3の動作によって不安定になっても、気体の振動の合間に煙感知領域22に流入する煙を捉えてその濃度を検出することにより、顕著な遅滞なく所定の警報が発せられるかもしれない。しかし、前述したような光電型の煙感知手段2において常時煙の検出を行うべく発光素子及び受光素子を常時動作させると、煙感知器100の消費電力が無用に増大すると考えられる。特に警報器200が電池式の場合、電力の浪費は至って好ましくない。従って、例えば法規制などで定められた遅延時間内で警報を発し得る程度の間隔を空けて煙の濃度を検出乃至判定することが好ましい。
【0039】
そこで、本実施形態の煙感知器100では、前述したように、制御手段1は、発音手段3が動作している場合と動作していない場合とで、濃度判定方法を変更するように構成されている。そして、制御手段1は、発音手段3が動作している場合、すなわち、煙感知手段2への煙の流れが阻害され易い状況下では、所定期間内に検出した検出濃度のいずれか1以上が所定の閾値を超えているか否かを判定する。例えば、発音手段3が動作している場合、制御手段1は、所定期間の長さよりも短い時間間隔で、好ましくは複数である1以上の煙の濃度(検出濃度)を検出し、所定期間内に検出された、その好ましくは複数の検出濃度のいずれかが所定の閾値を超えているか否かを判定する。そして、制御手段1は、所定期間毎に、その1以上の検出濃度の少なくとも1つが所定の閾値を超えている場合に、周囲濃度が所定の閾値を超えていると判定する。換言すると、制御手段1は、その1以上の検出濃度のうちの最大値だけが所定の閾値を超えている場合でも、周囲濃度が所定の閾値を超えていると判定する。従って、本実施形態では、煙感知領域22内の煙の濃度が不安定であっても、煙の濃度を所定周囲で検出して閾値を超えているか否かを判定する場合と比べて、より確実に、周囲濃度が所定の閾値を超えていると判定することができる。
【0040】
また、このように発音手段3の動作による周囲濃度の判定への影響を少なくできるので、発音手段3と煙感知手段2とを近接して配置することができ、もって、筐体201の形状をシンプルにできたり、より小型の煙感知器100を実現できたりすることがある。
【0041】
一方、発音手段3が動作していない場合は、このような濃度判定方法と異なる濃度判定方法に基づいて、周囲濃度が所定の閾値を超えているかの判定が行われる。例えば制御手段1は、発音手段3が動作していない場合、所定のタイミングで煙の濃度を検出し、その検出濃度が、所定の閾値を超えているか否かを判定する。例えば上記所定期間毎に煙の濃度が検出され、その検出濃度が所定の閾値を超えているか否かが判定される。この場合、煙の濃度検出は、上記所定期間よりも短い時間間隔では行われない。従って、発音手段3が動作していないにも関わらず、すなわち、煙感知領域22への煙の流れが阻害され難い状況であるにも関わらず、煙の濃度が頻繁に検出されることによる多くの電力の無用な消費を回避することができる。このように、本実施形態によれば、発音手段3が動作しているか否かに関わらず、周囲濃度が所定の閾値を超えているかを、無用な電力消費を回避しながら適切に判定することができる。
【0042】
<発音手段の動作の有無に応じた濃度判定方法>
図4図6を参照して、本実施形態の煙感知器における濃度判定方法をさらに説明する。図4には、発音手段3(図1参照)が動作していない状態での濃度判定方法に基づく本実施形態の煙感知器の動作の一例がタイミング図で示されている。図4において、最上段には、周囲濃度Caが実線で示されており、併せて、煙の濃度に基づく警報、例えば火災警報を発するか否かの判断基準である所定の閾値Cthが一点鎖線で示されている。周囲濃度Caの直ぐ下段には、煙感知手段2(図1参照)による煙の検出時機及びその検出された煙の濃度の制御手段1(図1参照)による検出時機が、煙検出パルスPdで示されている。煙検出パルスPdが生じている時点で、煙感知手段2において例えば発光素子及び受光素子が動作して煙感知領域22(図3参照)内の煙が検出され、その煙の濃度が制御手段1によって検出される。煙検出パルスPdの直ぐ下段には、濃度判定方法に基づく制御手段1での濃度判定の時機が判定パルスPjによって示されている。判定パルスPjが生じている時点で、検出された煙の濃度が閾値Cthを超えているか否かが判定され、超えている場合には、周囲濃度Caが閾値Cthを超えているものとして、例えば火災警報などの警報が発せられる。
【0043】
図4の例では、煙検出パルスPd及び判定パルスPjが示すように、煙感知手段2で検出された煙の濃度が制御手段1によって検出される度に、制御手段1による検出濃度の判定が行われている。制御手段1による煙の濃度の検出及びその検出濃度の判定は、所定のタイミングで同期して行われており、図4の例においてこれらの検出及び判定は、所定周期P1で定期的に行われている。このように、制御手段1は、発音手段3が動作していない場合には、煙感知手段2によって検出された煙から一定周期で濃度を検出してもよい。
【0044】
さらに、図4に示される判定パルスPjの直ぐ下段には、煙の濃度に基づく警報、例えば火災警報が発せられているか否かをロウレベルとハイレベルの二値で示す発報状態Saが示されている。ロウレベルの発報状態Saは、煙の濃度に基づく警報が発せられていないことを示し、ハイレベルの発報状態Saは、煙に基づく警報が発せられていることを示している。なお、周囲濃度Caが所定の閾値Cthを超えていると判定されると、例えば火災警報として発音手段3によって音が発せられてもよい。しかし、図4は、発音手段3が動作していない状態での濃度判定方法を示しているので、煙の濃度に基づく警報が発せられても発音手段3は動作せずに光などの他の警報手段によって警報が発せられるものとされている。
【0045】
発報状態Saの直ぐ下段には、さらに、CO検知手段6による一酸化炭素の検出時機、及びその検出された一酸化炭素の濃度が所定の閾値(図示せず)を超えているか否かの判定時機が、CO検出/判定パルスPcoによって示されている。CO検出/判定パルスPcoが生じている時点で、CO検知手段6において一酸化炭素の存在及びその濃度が検出されると共に、検出された濃度が所定の閾値を超えているか否かが判定される。そしてその判定結果に応じて、一酸化炭素に関する警報が発せられる。図4の例では、一定の所定周期P2で一酸化炭素の検出及びその濃度の判定がCO検知手段6によって行われている。図4の例において、所定周期P2は、煙の濃度が検出及び判定される所定周期P1よりも短いが、所定周期P2は所定周期P1よりも長くてもよく、所定周期P1と同じであってもよい。
【0046】
図4において、時点T1及び時点T2において煙の濃度が検出されて閾値Cthを超えているか否かが判定されているが、これらの時点では、火災などは生じておらず、周囲濃度Caも変動なく閾値Cth以下の濃度であるため、発報状態Saが示すように、煙濃度に基づく火災警報などの警報は発せられていない。
【0047】
その後、時点T3において火災が発生し、それに伴って周囲濃度Caが上昇を始め、時点T4で閾値Cthを上回っている。時点T4は、煙濃度の検出及び判定時機ではないため、時点T4では火災警報などは発せられないが、直後の煙濃度の検出及び判定時機である時点T5では、閾値Cthを上回る濃度の煙が煙感知手段2によって検出され、その濃度が検出濃度として制御手段1によって検出される。そして検出濃度が所定の閾値Cthを上回っているか否かが判定され、検出濃度が閾値Cthを上回っているため、発報状態Saが示すように、火災警報などの煙の濃度に基づく警報が時点T5で発せられる。時点T5の次の煙濃度の検出及び判定時機である時点T6においても、周囲濃度Caが閾値Cthを上回っているため、警報が継続される。
【0048】
なお、図4は、一酸化炭素の濃度が一酸化炭素の濃度に関する閾値以下である例を示しているため、CO検知手段6による一酸化炭素の検出及びその濃度の判定は所定周期P2で繰り返し行われているが、一酸化炭素に関する警報は発せられていない。
【0049】
図4の例では、上記の通り、時点T5で一度、検出濃度が所定の閾値Cthを超えると判定されると、直ちに時点T5で警報が発せられている。しかし、発音手段3が動作していない状態でも、例えば煙草の煙などで煙感知領域22の煙の濃度が一時的に上昇し、その煙の濃度を検出することにより、周囲濃度Caが閾値Cthを超えていると誤って判定してしまうことも考えられる。その場合、警報器200(図2参照)によって誤報が発せられることになる。
【0050】
このような誤報を回避するため、制御手段1は、発音手段3が動作していない場合に、所定のタイミングで検出した検出濃度が、所定の回数に及んで所定の閾値Cthを超えている場合に、周囲の煙濃度Caが所定の閾値Cthを超えていると判定するように構成されていてもよい。そうすることによって、一時的又は瞬間的な煙の濃度の上昇による誤報を防止し得ることがある。所定の回数は、例えば2回又は3回などの複数の回数が好ましい。例えば所定の回数が2回である場合、図4の例において時点T5ではなく、時点T6で、煙の濃度に基づく警報が発せられる。
【0051】
また、制御手段1は、発音手段1が動作していない場合、上記誤報を回避すべく、所定のタイミングで検出した検出濃度が複数回続けて所定の閾値Cthを超えている場合に、周囲の煙濃度Caが所定の閾値Cthを超えていると判定するように構成されていてもよい。例えば、火災によって発生した煙の濃度は、閾値Cthを一旦超えた後直ぐに低下することは少ないと考えられるため、このように判定する場合も、一時的又は瞬間的な煙の濃度の上昇による誤報を防止し得ることがある。
【0052】
図5には、発音手段3(図1参照)が動作している状態での濃度判定方法に基づく本実施形態の煙感知器の動作の一例がタイミング図で示されている。図5において最上段には、発音手段3が動作しているか否かをロウレベルとハイレベルの二値で示す発音状態Ssが示されている。ロウレベルの発音状態Ssは、発音手段3が動作していない、すなわち音が発せられていないことを示し、ハイレベルの発音状態Ssは、発音手段3が動作している、すなわち音が発せられていることを示している。発音状態Ssの直ぐ下段には、図4と同様に、周囲濃度Caが実線で示されると共に一点鎖線で所定の閾値Cthが示されている。さらに、周囲濃度Caと共に、煙感知領域22(図3参照)内の煙濃度Cdも破線で示されている。煙感知領域22内の煙の濃度は制御手段1(図1参照)によって検出される検出濃度であるので、煙感知領域22内の煙濃度Cdは、以下では「検出濃度Cd」とも称される。周囲濃度Caの下方には、図4と同様に、煙検出パルスPd、判定パルスPj、発報状態Sa、及び、CO検出/判定パルスPcoが順に示されている。
【0053】
図5では、発音状態Ssが示すように、時点T10で発音手段3が動作を開始して音を発している。発音手段3は、煙の感知以外の発音要因、例えば、所定の閾値を超える濃度の一酸化炭素若しくは可燃性ガスの検出、又は、過剰な温湿度の検出に基づいて動作を始め得る。図5の例では、時点T10におけるCO検知/判定パルスPcoで、一酸化炭素に関する所定の閾値を超える濃度の一酸化炭素が検出され、一酸化炭素に関する警報を発するべく発音手段3から所定のメッセージや警報音が発せられている。そしてこの発音手段3の動作によって、煙感知領域22への煙の流れが阻害され、時点T10以降では、煙感知領域22内の煙濃度Cdが、周囲濃度Caに追随できず不安定となって変動を繰り返している。そのため、制御手段1が濃度判定方法を変更せず図4と同様に所定周期P1で煙濃度の検出及び判定を行っていると、周囲濃度Caは時点T12で所定の閾値Cthを超えているにも関わらず、判定パルスPjが生じているときに検出濃度Cdが所定の閾値Cthを超えている時点T15まで、周囲濃度Caが所定の閾値Cthを超えているとは判定されない。すなわち、時点T13及び時点T14でも煙の濃度の検出及び判定が行われているが、時点T13での検出濃度Cdも時点T14での検出濃度Cdも閾値Cthを超えていないので、煙濃度に基づく警報は発せられない。
【0054】
しかし、図5の煙検出パルスPdが示すように本実施形態では、時点T10で発音手段3が動作を開始すると、検出濃度Cdが閾値Cthを超えているか否かを判定する所定周期P1よりも短い周期P3で、制御手段1によって煙の濃度が検出される。そして、制御手段1は、前述したように、発音手段3が動作している場合、所定期間内に検出した検出濃度のうちのいずれか1以上が所定の閾値を超えているかを判定するように構成されている。図5の例では、図4に示された発音手段3が動作していない場合における煙濃度の検出及び判定の周期である所定周期P1と同じ長さの期間である所定期間P1内に検出した1以上の検出濃度が所定の閾値Cthを超えているか否かを判定している。そして、その1以上の検出濃度のいずれか1以上が閾値Cthを超えている場合、周囲濃度Caが所定の閾値Cthを超えていると判定して、煙濃度に基づく警報を発報する。従って、図5の例において時点T12で閾値Cthを超えている周囲濃度Caに関して、発報状態Saが示すように、時点T13において警報が発せられる。
【0055】
すなわち、時点T13の前に判定パルスPjが生じている時点T11から時点T13までの間に、少なくとも時点T121において、閾値Cthを超える検出濃度が検出されている。そのため、時点T13において検出濃度Cdが閾値Cthを下回っていても、警報が発せられる。例えば警報の発報として、時点T13までと異なる警報音や警報メッセージが発音手段3から発せられてもよい。
【0056】
そして、時点T13での警報の発報後も、発音状態Ssが示す如く発音手段3が動作している限り、制御手段1は、周期P3で煙の濃度を検出し、所定期間P1内に検出した検出濃度のうちのいずれか1以上が閾値Cthを超えているかを判定する。そのため、時点T13後の煙濃度の判定時機である時点T14でも、時点T13から時点T14までの間に少なくとも時点T131において閾値Cthを超える検出濃度が検出されるので、時点T14では検出濃度Cdが閾値Cthを下回っていても警報が継続される。その後、時点T15までの期間では、その期間の略全体に渡って検出濃度Cdが閾値Cthを上回っているので、時点T15でも警報が継続される。
【0057】
このように、本実施形態では、発音手段3が動作している場合は、所定期間内に検出した検出濃度のうちのいずれか1以上が所定の閾値Cthを超えているかを判定するように制御手段1が構成されているので、周囲濃度Caにおける閾値Cthの超過後に速やかに火災警報などの煙に関する警報を発することができる。また、周囲濃度Caにおける閾値Cthの超過がこのように速やかに判定されるように、制御手段1は、発音手段3が動作している場合は、発音手段3が動作していない場合に煙濃度を検出する一定周期(所定周期P1)よりも短い周期P3で、煙感知手段2(図1参照)によって検出された煙から濃度を検出してもよい。
【0058】
なお、図4及び図5の例では、発音手段3が動作している場合と動作していない場合とで、煙の濃度の検出頻度は変更されているが、周囲濃度Caが所定の閾値Cthを超えているか否かの判定は所定周期P1毎又は所定期間P1毎であってその判定頻度は変更されていない。例えば法規制などを順守する限り、周囲濃度の判定頻度を変えない方が、消費電力の増大防止の面で好ましいことがある。また、図5では、時点T10での発音手段3の動作開始時に新たに所定期間P1が開始されずに、発音手段3の非動作時における周囲濃度Caの判定時機であった時点T11からの所定期間P1の経過時である時点T13が、発音手段3の動作開始後の周囲濃度Caの最初の判定時機とされている。しかし、本実施形態において制御手段1は、発音手段3の動作開始を把握した時点から新たな所定期間P1を開始させてもよい。例えば図5において時点T10から所定期間P1の経過毎に、周囲濃度が閾値Cthを超えているか否かが、閾値Cthに対する所定期間P1中の検出濃度Cdの判定に基づいて判定されてもよい。従って、発音手段3の動作の開始の前後で一時的に、周囲濃度Caの判定周期が変化してもよい。
【0059】
所定期間(所定周期)P1としては、3秒以上、20秒以下の時間が例示され、好ましくは、所定期間(所定周期)P1は、6秒以上、12秒以下であり得る。また、周期P3としては、0.3秒以上、5秒以下の時間が例示され、好ましくは、周期P3は、0.5秒以上2秒以下であり得る。
【0060】
なお、発音手段3が動作している場合に、本実施形態のように濃度判定方法を変えずに閾値Cthを低くすることで、周囲濃度Caにおける閾値超過の判定の遅延抑制が可能なこともある。しかし単に閾値Cthを低くすると、本来警報を発するべきではない周囲濃度で警報が発せられたり、逆に警報を停止すべき周囲濃度で警報が停止されなかったりするおそれがある。そこで本実施形態では、上記のように濃度判定方法を変更している。なお、時点T13などでの煙に関する警報の発報後、僅かな周囲濃度の変動で警報の発報と停止とが繰り返されないように、閾値Cthが適切な低減幅で低くされてもよい。
【0061】
また、図5の例では、時点T11から時点T13までの所定期間P1における検出濃度Cdのいずれかが閾値Cthを超えているだけで、時点T13で直ちに警報が発せられている。すなわち、その後の時点T13から時点T14までの所定期間P1における検出濃度Cdにおける閾値Cthの超過の有無に関わらず、一つの所定期間P1における検出濃度Cdに対する判定に基づいて警報が発せられている。一方、発音手段3が動作していない場合には、前述したように、周囲濃度Caにおける閾値Cthの超過の判定について、検出濃度Cdの複数回に及ぶ閾値Cthの超過に基づく判定が好ましいことがある。
【0062】
しかし、発音手段3が動作している場合は、前述したように音波によって煙感知領域に向かう煙の流れが阻害され易く、図5に示されるように検出濃度Cdが安定せず、且つ周囲濃度Caよりも低下し易い。そのため、発音手段3の非動作時に周囲濃度Caにおける閾値Cthの超過が、検出濃度Cdにおける閾値Cthの複数回の超過に基づいて判定される場合でも、発音手段3の動作時には、検出濃度Cdの少なくとも一つが一つの所定期間P1内で閾値Cthを超えるだけで、周囲濃度Caが閾値Cthを超えていると判定することが好ましいこともある。このように本実施形態では、一度の所定期間P1内に検出した検出濃度Cdのいずれか1以上が閾値Cthを超えている場合に周囲濃度Caが閾値Cthを超えていると判定されてもよい。なお、本実施形態において発音手段3の動作時に、一つの所定期間P1内で検出濃度Cdの2以上が閾値Cthを超える場合、又は検出濃度Cdが連続して閾値Cthを超える場合に、周囲濃度Caが閾値Cthを超えていると判定されてもよい。そうすることによって、偶発的な煙の濃度の上昇による不要な発報を回避し得ることがある。
【0063】
図5の例では、CO検出/判定パルスPcoが示すように、CO検知手段6(図1参照)による一酸化炭素濃度の検出及び制御手段1による一酸化炭素濃度に関する判定に関する所定周期P2は、図4及び図5にそれぞれ示される発音手段3の非動作時と動作時との間で変えられていない。すなわち、図4及び図5の例では、一酸化炭素の濃度について、その閾値を超えているか否かの判定方法は、発音手段3の動作に応じて変えられていない。このように、発音手段3が動作している場合と発音手段3が動作していない場合とで、一酸化炭素濃度がその閾値を超えているかの判定方法は同じであってもよい。一酸化炭素の流れは、煙と比べて音波の影響を受け難いので、発音手段3の動作の有無によって閾値の超過に関する判定方法を変えないことが、消費電力の増大抑制の面で好ましいことがある。
【0064】
図5には、CO検出/判定パルスPcoの下方に、さらに、発音手段3が動作しているか否かを示す発音識別フラグFsと、制御手段1が検出した検出濃度の記憶手段5(図1参照)への書き込みを示す検出濃度書き込みパルスPwと、記憶手段5に記憶される各所定期間P1内の検出濃度の最大値の更新を示す最大値更新パルスPrとが順に示されている。発音識別フラグFsは、例えば記憶手段5内、又は制御手段1の記憶機能を担う記憶装置内の特定の記憶領域に設けられ、発音判断手段4(図1参照)の判断に基づいて、発音手段3が動作しているときにハイレベル(“真(1)”)又はロウレベル(“偽(0)”)に設定され、非動作の時にはその逆に設定される。図5では、発音状態Ssが示すように、発音手段3が動作していないときにロウレベルに設定され、動作しているときにハイレベルに設定されている。制御手段1は、このように記憶手段5内又は制御手段1内に設定される発音識別フラグFsを参照することによって、発音手段3が動作中であるか否かを把握してもよい。
【0065】
検出濃度書き込みパルスPwは、検出濃度Cdが記憶手段5に書き込まれていることを示しており、検出濃度書き込みパルスPwが生じている時点で検出濃度Cdが記憶手段5に書き込まれている。すなわち図5の例では、煙検出パルスPdが生じる度に検出濃度書き込みパルスPwが生じており、各所定期間P1において検出された検出濃度の全てが記憶されている。制御手段1は、時点T13や時点T14などの周囲濃度の判定時機に、これら記憶された検出濃度を記憶手段5から読み出して、各検出濃度Cdのいずれかが閾値Cthを超えているか否かを判定してもよい。所定期間P1毎に記憶手段5に記憶された検出濃度は、各所定期間P1の経過毎に消去されてもよく、次の所定期間P1に検出される検出濃度によって上書きされてもよい。
【0066】
最大値更新パルスPrは、各所定期間P1における検出濃度Cdの最大値が記憶手段5に記憶され、より大きな検出濃度Cdが検出される度に、最大値として記憶されている検出濃度Cdが更新(上書き)されることを示している。すなわち、周期P3での煙の濃度の検出の度に、その検出濃度が、記憶手段5に最大値として記憶されている検出濃度と比較され、その検出濃度の方が大きい場合に、最大値として記憶されている濃度が更新される。図5の例において最大値更新パルスPrが生じている時点で、最大値として記憶されている濃度が更新されている。例えば時点T111では、時点T11で最大値として記憶された時点T11での検出濃度Cdが、時点T111での検出濃度Cdによって上書きされている。なお、最大値として記憶されている濃度は、所定期間P1の経過の度にクリアされる。
【0067】
このようにして、各所定期間P1における検出濃度Cdの最大値が記憶手段5に記憶されてもよい。そして、制御手段1は、時点T13や時点T14などの周囲濃度の判定時機に、このように最大値として記憶されている濃度を記憶手段5から読み出して、その読み出した濃度が閾値Cthを超えているか否かを判定してもよい。
【0068】
図6には、図5と同様に、発音手段3(図1参照)が動作している状態での濃度判定方法に基づく本実施形態の煙感知器の動作の一例がタイミング図で示されている。図6は、例えば小規模の火災の自然鎮火などにより周囲濃度Caが閾値Cthを下回るまで低下して煙に関する警報が停止される状況での煙感知器の動作の例を示している。図6には、図5と同様に、周囲濃度Ca、検出濃度Cd、閾値Cth、煙検出パルスPd、判定パルスPj、及び発報状態Saが示されており、一方、図5に示されている発音状態Ss、CO検出/判定パルスPco、発音識別フラグFs、検出濃度書き込みパルスPw、及び最大値更新パルスPrは省略されている。図6において時点T24までの期間では、発報状態Saが示すように、煙の濃度に基づく火災警報などの警報が発せられている。
【0069】
図6においても、発音手段3が動作しているので、検出濃度Cdが周囲濃度Caから逸脱して変動を繰り返している。そのため、図6においても、図5を参照して説明された方法と同様の濃度判定方法に基づいて、周囲濃度Caが閾値Cthを超えているか否かが判定される。すなわち、制御手段1(図1参照)は、周期P3で煙の濃度を検出し、所定期間P1内に検出した検出濃度Cdのいずれか1以上が閾値Cthを超えている場合に周囲濃度Caが閾値Cthを超えていると判定する。そのため、時点T22では検出濃度Cdが閾値Cthを下回っているが、時点T21から時点T22までの所定期間P1において、例えば時点T211における検出濃度Cdが閾値Cthを超えているため、発報状態Saが示すように、警報は停止されずに継続されている。時点T23においても、周囲濃度Caが時点T222で既に閾値Cthを下回っているが、時点T22からの所定期間P1において、例えば時点T221における検出濃度Cdが閾値Cthを超えているため警報は停止されない。
【0070】
その後、時点T231において周囲濃度Caが定常状態まで低下し、その後の周囲濃度Caの判定時機である時点T24では、時点T23からの所定期間P1における全ての検出濃度Cdが閾値Cthを下回っているので、発報状態Saが示すように、煙の濃度に基づく例えば火災警報などの警報が停止される。なお、図6では、時点T24以後も検出濃度Cdが変動しているが、時点T24での警報の停止と共に発音手段3の動作が停止してもよく、その場合、検出濃度Cdは、周囲濃度Caと略同じ濃度で安定すると考えられる。
【0071】
このように、図6の例において制御手段1は、煙濃度に基づく警報が発せられると共に発音手段3が動作している場合、所定期間P1内に検出された検出濃度Cdの一部が閾値Cth以下であっても警報を停止しない。本実施形態において制御手段1は、煙濃度に基づく警報が発せられると共に発音手段3が動作している場合には、このように所定期間P1内に検出された全ての検出濃度Cdが閾値Cthを下回るときに、発している警報を停止するように構成されてもよい。発音手段3の鳴動によって煙の流れが阻害され、その結果、発報されている警報が拙速に停止されることを防ぎ得ることがある。
【0072】
<本実施形態の煙感知器の動作フロー例>
図7A及び図7Bには、本実施形態の煙感知器の動作の一例がフローチャートで示されている。図7Aは、発音手段3(図1参照)が動作していないときの煙感知器の動作を例示しており、図7Bは、発音手段3が動作中の煙感知器の動作を例示している。図7Aは、特に、検出濃度が所定の回数Nに及んで所定の閾値を超えている場合に、周囲濃度が所定の閾値を超えていると判定する煙検知器の動作の例を示している。なお、図7A及び図7Bに示される動作と並行して、発音手段3が動作しているか否かが発音判断手段4(図1参照)によって判断されており、その判断に基づいて、制御手段1(図1参照)によって、図7A又は図7Bに示される制御が実行される。
【0073】
図7Aに示されるように、発音手段が非動作であると判断されている(ステップS0)場合、所定の閾値を超える検出濃度が検出される毎にカウントされるカウント値nがクリアされる(ステップS1)。カウント値nは、例えば制御手段1の記憶機能や演算機能を担う素子によってカウントされる。またカウント値nは、記憶手段5(図1参照)に記憶され、制御手段1の制御の下でカウント及びクリアされてもよい。その後、ステップS2にて、煙の濃度を検出する所定のタイミングが到来したか否かが判断される。例えば、直前の煙濃度の検出から所定周期P1(図4参照)の時間が経過したか否かが判断される。所定のタイミングが到来していない場合(ステップS2で“N”)は、ステップS2の判断が繰り返される。
【0074】
所定のタイミングが到来している場合(ステップS2で“Y”)は、煙感知手段2(図1参照)で検出された煙の濃度が検出される(ステップS3)。続いてその検出濃度が所定の閾値を超えているか否かが判定される(ステップS4)。検出濃度が閾値を超えている場合(ステップS4で“Y”)、カウント値nが1だけカウントアップされ(ステップS5)、カウント値nが所定の回数Nに達したか否かが判断される(ステップS6)。カウント値nが所定回数N未満である場合(ステップS6で“N”)、制御がステップS2に戻されて所定のタイミングの到来に応じた煙の濃度の検出が繰り返される。ステップS6においてカウント値nが所定回数Nに達している場合(ステップS6で“Y”)、煙濃度に基づく警報、例えば火災警報の発報(ステップS7)を経て、制御がステップS1に戻される。
【0075】
一方、検出された煙の濃度が所定の閾値を超えていない場合(ステップS4で“N”)は、既に警報発報中であるか否かが判断され(ステップS8)、発報中でない場合(ステップS8で“N”)は、制御がステップS2に戻されて所定のタイミングの到来に応じた煙の濃度の検出が繰り返される。既に警報発報中である場合(ステップS8で“Y”)は、警報の停止(ステップS9)を経て、制御がステップS2に戻される。
【0076】
なお、所定の閾値を超える検出濃度が1度検出されただけで警報が発せられる場合は、ステップS1、S5、及びS6が省略される。また、所定の閾値を超える検出濃度がN回連続して検出されたときに警報が発せられる場合は、ステップS4からステップS8の間に、カウント値nがクリアされる。
【0077】
一方、図7Bに示されるように、発音手段3が動作を開始すると(ステップS10)、直前の煙の濃度の検出時機から、所定の煙の濃度の検出周期(例えば図5の例の周期P3)の時間が経過したか否かが判断される(ステップS11)。検出周期の時間が経過していない場合(ステップS11で“N”)は、ステップS11の判断が繰り返される。
【0078】
検出周期の時間が経過している場合(ステップS11で“Y”)は、煙感知手段2で検出された煙の濃度が検出される(ステップS3)。ステップS3で検出された検出濃度は、記憶手段5(図1参照)に記憶されてもよく、記憶手段5が所定期間中の検出濃度の最大値を記憶している場合は、ステップS3で検出された検出濃度と記憶されている最大値との比較結果に応じて記憶手段5に記憶されている最大値が更新されてもよい。
【0079】
続いて、直前の周囲濃度の判定時機から所定期間(例えば図5の所定期間P1)が経過しているか否かが判断され(ステップS12)、所定期間が経過していない場合(ステップS12で“N”)は、制御がステップS11に戻されて検出周期の経過に応じた煙の濃度の検出が繰り返される。一方、所定期間が経過している場合(ステップS12で“Y”)は、所定期間中の検出濃度の1以上が、所定の閾値を超えているか否かが判定される(ステップS13)。ステップS13の判定において、記憶手段5に記憶されている所定期間中の検出濃度又はその最大値が参照されてもよい。
【0080】
所定期間中の検出濃度の少なくとも1つが閾値を超えている場合(ステップS13で“Y”)、火災警報などの煙の濃度に基づく警報の発報(ステップS7)を経て、制御がステップS11に戻される。一方、所定期間中の検出濃度のいずれも所定の閾値を超えていない場合(ステップS13で“N”)、既に警報発報中であるか否かが判断され(ステップS8)、発報中でない場合(ステップS8で“N”)は、制御がステップS11に戻されて検出周期の時間の経過に応じた煙の濃度の検出が繰り返される。既に警報発報中である場合(ステップS8で“Y”)は、警報の停止(ステップS9)を経て、制御がステップS11に戻される。
【0081】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0082】
例えば、発音手段から発せられる音の周波数や音量に応じて、発音手段の動作中に煙の濃度を検出する頻度を変えてよい。例えば、周波数が高い、及び/又は、音量が大きい程、煙の濃度が頻繁に検出されてもよい。また、ブザーとスピーカなど、複数の発音手段が備えられる場合、その複数の発音手段の位置に応じて、発音手段毎に、その動作時の濃度判定方法が選択されてもよい。例えば煙感知手段に近接して配置される発音手段の動作時ほど、煙の濃度が頻繁に検出されてもよい。さらに、本実施形態の煙感知器では、煙感知器が収容される筐体の共振周波数を含む音を発音手段が発してもよい。本実施形態では、周囲濃度の判定が音波の影響を受け難いので、発音手段の音が共鳴しても、周囲濃度が所定の閾値を超えているという判定が遅延し難いと考えられる。筐体と共鳴する音を発することによって、より遠くのユーザーに火災などの異常事態の発生を報知できることがある。
【0083】
上記実施形態では、説明の便宜上、実施形態の煙感知器の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、煙感知器の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0084】
100 煙感知器
1 制御手段
2 煙感知手段
22 煙感知領域
3 発音手段
4 発音判断手段
5 記憶手段
6 CO検知手段
200 警報器
Ca 周囲濃度
Cd 煙感知領域内の煙濃度(検出濃度)
Cth 所定の閾値
Fs 発音識別フラグ
Pd 煙検出パルス
Pj 判定パルス
P1 所定周期(所定期間)
P3 発音時の濃度検出周期
Sa 発報状態
Ss 発音状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B