IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-調光装置 図1
  • 特開-調光装置 図2
  • 特開-調光装置 図3
  • 特開-調光装置 図4
  • 特開-調光装置 図5
  • 特開-調光装置 図6
  • 特開-調光装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148622
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】調光装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1345 20060101AFI20231005BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G02F1/1345
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056751
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】辻 真樹
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
【Fターム(参考)】
2H088EA33
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA07
2H088MA20
2H092GA48
2H092GA50
2H092GA52
2H092GA55
2H092GA57
2H092HA03
2H092HA04
2H092NA27
2H092PA01
2H092RA10
(57)【要約】
【課題】調光装置の電源接続部において、ITOとFPCとをACFを用いて接合する際に、ACFに含まれる導電粒子に起因するITOへのクラックの発生を抑制し、FPCと調光シートの接合抵抗値上昇に伴う駆動電圧の低下を防止できる調光装置を提供することを課題とする。
【解決手段】印加電圧に応じて不透明状態と、透明状態とを切り替え可能な調光シートと、調光シートを外部電源に接続するための電源接続部とからなる調光装置であって、
前記調光シートは、調光層と、前記調光層に電圧を印加する透明電極層が形成された透明基材に挟持されてなる構成であり、
前記電源接続部は、前記透明電極層とFPCとをACFを介して電気的に接続しつつ、機械的に接着された構造を有し、前記透明電極層と前記ACF間には、さらに導電性物質が積層され、前記導電性物質は、前記透明電極層より柔軟な材料からなる調光装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧に応じて不透明状態と、透明状態とを切り替え可能な調光フィルムと、前記調光フィルムの端部に形成された電源接続部にFPCの導電部を接続している調光装置であって、
前記調光フィルムは、調光層と、前記調光層に電圧を印加する透明電極層が形成された透明基材に挟持されてなる構成であり、
前記電源接続部は、前記透明電極層とFPCとをACFを介して電気的に接続しつつ、機械的に接着された構造を有し、
前記FPCの両端部には垂直方向(Y方向)のアライメントマークが設けられ、前記アライメントマークを、前記調光フィルムの、前記電源接続部近傍の端辺に合わせて、前記調光フィルムとFPCとの接続の垂直方向(Y方向)の位置決めをしており、
前記透明電極層には、前記電源接続部近傍の端辺に切り欠きまたは凸形状が設けられ、前記切り欠きまたは凸形状の幅方向の一側辺を基準線とし、前記基準線にFPCの幅方向の一側辺を当接させて、前記調光フィルムとFPCとの接続の水平方向(X方向)の位置決めをしていることを特徴とする調光装置。
【請求項2】
前記切り欠きまたは凸形状は、直線状、四角形状、三角形状のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の調光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的制御によって光の透過状態を制御する光学素子を備えた調光装置において、特に、調光フィルムとフレキシブルプリント基板とを接続するための位置決めパターンが形成された調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば窓に貼り付けて外来光の透過を制御する液晶パネルを用いた調光フィルムに関する工夫が種々に提案されている。調光フィルムとして、ITO(Indium Tin Oxide)による一対の透明電極間に保持された液晶層を備え、透明電極に印加する電圧により液晶層に含まれる液晶分子の配向状態を変化させて、入射した光を散乱する不透明状態(あるいは白濁状態)と、入射した光を透過する透明状態とを切り替え可能に構成されるタイプが例示される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような調光フィルムは、例えばガラス等の透明基材に固定することにより、建築物のみならず車両向けの窓ガラスや展示ウィンドウ、間仕切りなどに採用することが可能となり、プライベート空間とパブリック空間とを分離するため等、空間を分離する設備の他、映像を映し出すスクリーンの用途としての利用についても提案されている。
【0004】
こうした調光フィルムは、透明電極層を電源に接続するための電源接続部を有する。外部電源から給電するための電源接続部として、低コストで簡便な構造として、透明電極ITOとFPC(フレキシブルプリント基板)とをACF(導電性接着層)を用いて電気的に接続しつつ、機械的に接着することで配線を引き出す構造も採用されている(特許文献2参照)。FPCとACFを用いた接続では、面状の接合構造となり、調光ユニットの運搬時や取り付け作業時の揺れや衝撃に対して、接合の耐久性が向上している。
【0005】
このとき、調光フィルムの電源接続部の接続端子とFPCの接続端子がずれた状態で接続されないように、調光フィルムの電源接続部とFPCの位置合わせが行なわれる。
【0006】
図1に、調光装置の正面図を示す。図1のように、電源接続部16A、16Bは調光フィルム11の両面端部に設けられており、一方の面の電源接続部16Aの該当する箇所にあたる他方の面の透明電極層13Bの一部はカットされ除去されており、FPC17Aの接続端子は、電源接続部16Aの露出した透明電極層13AにACF19Aを介して接続されている(図2参照)。そして、FPC17Aを電源接続部16Aへ接続する時の、従来行われている位置調整は、調光フィルム11にアライメントマークがない為、垂直方向(Y方向)に関しては、図4に示すように、調光フィルム11の電源接続部16Aの近傍の端辺14とFPCの両側に形成されたCuパターンによるアライメントマーク15Aを合わせ基準とし、水平方向(X方向)に関しては調光フィルム11の外側辺5または他方の面の透明電極層が取り除かれた部分のカットライン6とFPCの幅方向の一端縁7を合わせ基準として接続されている。同様の方法にて、他方の面の電源接続部16BへもFPC17Bの接続端子が接続される。
【0007】
しかしながら、アライメントマークが調光フィルム11上の接続領域に該当する箇所にはなく、X方向のFPCの合わせ基準7と調光フィルム11の合わせ基準(5または6)が離れた位置に形成されているため、位置出し用カメラによる位置出し精度が悪く、調光フィルム11の電源接続部16A、16Bの透明電極層13A、13BとFPC17A、17Bに形成された端子群が精度よく接続されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-187775号公報
【特許文献2】特許第6439029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、FPCを用いる調光装置において、調光フィルムとFPCとの位置決め精度を向上させる調光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の第1の態様は、
印加電圧に応じて不透明状態と、透明状態とを切り替え可能な調光フィルムと、前記調光フィルムの端部に形成された電源接続部にFPCの導電部を接続している調光装置であって、
前記調光フィルムは、調光層と、前記調光層に電圧を印加する透明電極層が形成された透明基材に挟持されてなる構成であり、
前記電源接続部は、前記透明電極層とFPCとをACFを介して電気的に接続しつつ、機械的に接着された構造を有し、
前記FPCの両端部には垂直方向(Y方向)のアライメントマークが設けられ、前記アライメントマークを、前記調光フィルムの、前記電源接続部近傍の端辺に合わせて、前記調光フィルムとFPCとの接続の垂直方向(Y方向)の位置決めをしており、
前記透明電極層には、前記電源接続部近傍の端辺に切り欠きまたは凸形状が設けられ、前記切り欠きまたは凸形状の幅方向の一側辺を基準線とし、前記基準線にFPCの幅方向の一側辺を当接させて、前記調光フィルムとFPCとの接続の水平方向(X方向)の位置決めをしていることを特徴とする調光装置である。
【0011】
本発明によれば、調光フィルム上の接続領域に該当する箇所に、合わせ基準を有する切り欠きまたは凸形状を形成することで位置決め精度を向上させることができる。調光フィルムとFPCとの接続のX方向の位置決めをするために、電源接続部近傍の透明電極層に切り欠き形状か、または凸形状が設けられており、従って、アライメントマークを別に設ける必要がなく、それぞれの基板に設けられた基準同士を当接することによって位置決めすることができるので、位置決め精度を向上させる効果がある。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、
前記切り欠きまたは凸形状は、FPCの幅方向の一側辺とのX方向の距離を測れる基準線を有するものであればよく、直線状、四角形状、三角形状のいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
FPCを用いる調光装置において、調光フィルムの電源接続部近傍の透明電極層に切り欠きまたは凸形状を設け、調光フィルムとFPCとの位置決め精度を向上させる調光装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る調光装置の正面図。
図2】調光装置の一方の面に形成された電源接続部の概略断面図。
図3】調光装置の他方の面に形成された電源接続部の概略断面図。
図4】従来の調光フィルムとFPCの接続の位置決め方法を説明する図。
図5】本発明に係る調光フィルムとFPCの接続の位置決め方法を説明する図。
図6】本発明に係る切り欠きの形状を示す図。
図7】本発明に係る凸形状の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る調光装置の構造の一例について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る調光装置の正面図であるが、図1が示すように、調光装置10は、大面積での使用形態にあたって、例えば、窓ガラス等の透明板20に取り付けられる。調光装置10は、フレキシブルで薄い材料が主体であり、可撓性に富む。支持基材は、ガラスや樹脂等からなる透明な板状の部材であって平面状であってもよいし曲面状でもよい。透明板20は、窓ガラス以外にパーテーションやガラス壁等の建材であってもよいし、自動車の窓ガラス等の車両用部材であってもよい。
【0016】
図1を見てわかるように、調光装置10は、略矩形形状を有しており、調光装置10の大半を占める調光フィルム11は、調光層(液晶層)12と、調光層12に電圧を印加する一対の透明電極層13A、13Bに挟持されてなる構成である(図2および図3参照)。透明電極層13Aの端部には外部電源18Aから給電するための電源接続部16Aが接続され、透明電極層13Bの端部には外部電源18Bから給電するための電源接続部16Bが接続されている。
【0017】
調光層12に電圧を印加する一対の透明電極層13A、13Bの各々は、導電性を有する透明な層である。透明電極層13A、13Bを構成する材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含むポリマー等が挙げられる。透明電極層13A、13Bの好適な厚さは略80nm以上150nm以下である。
【0018】
電源接続部16A、16Bは、調光フィルムの一辺に沿って、透明電極層13A、13Bの端部に位置する。電源接続部16A、16Bが配置される上記一辺は矩形のいずれの辺であってもよく、透明板20や駆動回路(不図示)の配置等に応じて設定されればよい。また、電源接続部16A、16Bは、上記一辺の中央部を含む位置に配置されてもよいし、図1に示す様に、上記一辺の端部を含む位置に配置されてもよい。そして、電源接続部16A、16Bは、リード線(不図示)を備え、リード線は、調光フィルム11の外側に延び、駆動回路に接続されている。
【0019】
また、電源接続部16A、16Bが接続する透明電極層13A、13Bの該当する箇所にあたる他方の面の透明電極層の一部(それぞれ透明電極層13Bの一部、透明電極層13Aの一部)は、カットされて除去されて、電源接続部16A、16Bは、調光層12および他方の面の透明電極層から露出する領域に接続されている。
【0020】
図2および図3に示すように、透明電極層13A、13Bは、接着層25を介して透明板20に貼り付けられており、透明電極層13Aは、調光層12の一方の面に接し、電源接続部16Aは、透明電極層13Aのなかで調光層12および他方の透明電極層13Bから露出する領域に接続されている。透明電極層13Bは、調光層12の他方の面に接している。電源接続部16Bは、透明電極層13Bのなかで調光層12および他方の透明電極層13Aから露出する領域に接続されており、透明板20と対向する。
【0021】
電源接続部16A、16Bは、透明電極層13A、13Bに接合された導電性接着層であるACF19A、19Bと、ACF19A、19Bによって接合されたフレキシブルプリント基板FPC17A、17Bとを備える。電源接続部16A、16Bは、さらに、FPC17A、17Bに接続されたリード線とを備える。リード線は、電源から供給される
電圧を駆動電圧に変換する駆動回路に接続され、電源接続部16A、16Bを通じて、透明電極層13A、13Bに駆動電圧が印加される。従って、電源接続部16A、16BとFPC17A、17Bに設けられた端子とを相対的に位置合わせすることで、調光フィルム11とFPC17A、17Bとがそれぞれ電気的に接続されることになる。
【0022】
図5では、本発明に係る調光フィルム11における、電源接続部16Aの該当する箇所へFPC17Aを接続させる位置の両側に形成された四角形状の切り欠き30を示している。この切り欠き30の幅方向の一側辺31とFPC17Aの幅方向の一側辺7をX方向のアライメント基準とし、FPCの両端部に形成されたY方向のアライメントマーク15Aと電源接続部近傍の端辺4をY方向のアライメント基準として、調光フィルムとFPC17Aとの接続の位置決めをして接続している。また、調光フィルム11と他の面のFPC17Bも同様の位置決め方法で接続する。なお、四角形状の切り欠き30は、接続させる位置の片側にのみ形成してもよい。
【0023】
このように、調光フィルム11とFPC17A、17Bを接続させる位置の両側に近接して切り欠き30が形成されるので、切り欠き30の幅方向の一側辺31とFPC17Aの幅方向の一側辺7をX方向の合わせ基準とすることによって、位置決め用カメラによって、X方向の位置決めを精度よく行うことが可能になる。
【0024】
また、本発明に係る切り欠き30の形状は、X方向に対して基準線を有するものであれば、図6に示すように、四角形状以外に、三角形状、直線状も用いることができる。また、同様の理由から、切り欠き以外に凸形状でもかまわない。凸形状としては、図7に示すような四角凸形状、三角凸形状、FPC部凸形状などを用いることができる。
【0025】
上記の切り欠きまたは凸形状の位置決めパターン30による位置決めは、例えば、CCDカメラ及び照明光源などを設置して、位置決めパターン30の近傍を拡大して観察しながら行なわれる。照明光源で位置決めパターン30の近傍を照明し、CCDカメラで撮像した位置決めパターン30の近傍の画像をモニタなどに表示させる。このモニタを見ながら基準線同士を当接するようにFPC17A、17Bを移動させてアライメントを行ない、調光フィルム11とFPC17A、17Bとを位置合わせした状態でACF19A、19Bを介して貼り合わせる。これによって、調光フィルム11とFPC17A、17Bとが精度よく接続することができる。
【0026】
以上によれば、FPC17A、17Bの幅方向の一側辺7をX方向の基準線とし、電源接続部16A、16Bの近傍の透明電極層13A、13Bに設けた、切り欠きまたは凸形状の幅方向の一側辺に基準線を沿わせて当接配置するだけで、FPC17A、17Bの端子部が自動的に電源接続部16A、16Bの端子部に合致するので、CCDカメラを用いて光学的にアライメントすることで短時間で精度よく位置決め作業を行うことができる。換言すれば、透明電極層13A、13Bに設けた、切り欠きまたは凸形状の位置決めパターン30を、位置決め治具として代用することで、FPC17A、17Bの位置決めを安価かつ簡単に行うことができる。
【0027】
従って、本発明によれば、調光フィルム11とFPC17A、17Bとは、水平方向および垂直方向とも精度よく接続することが可能な調光装置を供給することができる。
【符号の説明】
【0028】
4・・・調光フィルム端辺
5・・・調光フィルム側辺
6・・・透明電極層カットライン
7・・・FPC側辺
10・・・調光装置
11・・・調光フィルム
12・・・調光層
13A、13B・・・透明電極層
15・・・アライメントマーク
16A、16B・・・電源接続部
17A、17B・・・FPC
18A、18B・・・外部電源
19A、19B・・・ACF
20・・・透明板
25・・・接着層
30・・・切り欠きまたは凸形状(位置決めパターン)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7