(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148648
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】高周波加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/70 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H05B6/70 C
H05B6/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056789
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】大森 義治
(72)【発明者】
【氏名】久保 昌之
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090AB01
3K090CA15
3K090CA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高周波電力が表面波の形態で表面波線路を伝播し、表面波線路の近傍に設置された被加熱物を加熱する構成において、表面波による加熱を最大化する高周波加熱装置を提供する。
【解決手段】高周波加熱装置は、表面波を伝播する表面波線路7と、高周波電力を表面波線路7に供給する給電部6と、表面波線路7と給電部6とを結合する結合部と、を備え、結合部6から、表面波線路7の終端部8との間に少なくとも1つの整合部9aを設ける。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面波を伝播する表面波線路と、
高周波電力を前記表面波線路に供給する給電部と、
前記表面波線路と前記給電部とを結合する結合部と、を備え、
前記結合部から、前記表面波線路の終端との間に少なくとも1つの整合部を設けた高周波加熱装置。
【請求項2】
前記給電部から前記表面波線路の終端まで伝播する高周波電力の流路に対し、分岐する方向に前記整合部を配置した、
請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
前記表面波線路の終端部と直列に連続して接続され、上方空間に向けて延びるように配置される放射部を備える、
請求項1または2のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
前記整合部は、前記表面波線路の高周波電流流路に接続した、
請求項1から3のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項5】
前記表面波線路が基礎導体にスタブ状導体を複数配列する構成の場合、前記整合部は、前記基礎導体に接続した、
請求項4に記載の、高周波加熱装置。
【請求項6】
前記整合部は、前記結合部および、または、前記表面波線路の食品設置位置に配置した、
請求項1から4のいずれか1項に記載の、高周波加熱装置。
【請求項7】
前記給電部から前記表面波線路の終端まで伝播する高周波電力の流路が、複数線路存在する場合、前記整合部は、前記表面波線路の高周波電力流路ごとに配置する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の、高周波加熱装置。
【請求項8】
前記給電部から前記表面波線路の終端まで伝播する高周波電力の流路が、複数線路存在する場合、複数ある前記高周波電力の流路が重なる位置に前記整合部を設ける、
請求項1から4のいずれか1項に記載の、高周波加熱装置。
【請求項9】
前記給電部から前記表面波線路の終端まで伝播する高周波電力の流路が、複数線路存在する場合、複数ある前記高周波電力の流路が重なる位置として、前記給電部との前記結合部に前記整合部を設ける、
請求項8に記載の、高周波加熱装置。
【請求項10】
前記整合部は、板状のタブ形状とし、その一端を高周波電力流路に接続し、他端を開放した、
請求項1から4のいずれか1項に記載の、高周波加熱装置。
【請求項11】
前記整合部は、前記表面波線路の高周波電力流路に対し、角度をつけて配置する、
請求項10に記載の、高周波加熱装置。
【請求項12】
前記整合部は、設置位置に応じ、板形状の幅と長さを調整する、
請求項10に記載の、高周波加熱装置。
【請求項13】
前記整合部の前記表面波線路との接続側にテーパー形状を設ける、
請求項10に記載の、高周波加熱装置。
【請求項14】
前記整合部は、前記表面波線路と機構的に直接接触せず、電気的に高周波電力流路に接続し、前記整合部と、前記表面波線路との接続位置を移動自在とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の、高周波加熱装置。
【請求項15】
前記整合部は、絶縁物を介して前記表面波線路に固定した、
請求項14に記載の、高周波加熱装置。
【請求項16】
前記表面波線路は、前記給電部を中心軸として回転する構成とし、前記整合部は、前記表面波線路と同期して回転する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の、高周波加熱装置。
【請求項17】
前記給電部に対し、前記表面波線路が非対称な配置となる場合、前記整合部を前記給電部に対し、重量バランスを改善する方向に設置する、
請求項16に記載の、高周波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面波が伝播される高周波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、表面波を伝播して食品を加熱する表面波励振体へ高周波を導く導波管内に調整手段を設け、食品の量に応じて整合を合せることで、発振源の最大電力を食品に入力することが出来るとしている。
【0003】
特許文献2は、表面波を伝播する表面波伝播線路と、高周波電力を表面波伝播線路に伝達する伝達部と、の間にインピーダンスの変化部分を有するマイクロストリップ線路構成をした整合部を設け、表面波伝達線路からの反射波を相殺して、効率的に高周波電力を伝達することができるとしている。
【0004】
特許文献3は、表面波を生成する複数の帯状起立片の所定領域にて帯状起立片高さを変えて、表面波生成強度を食品に合わせ、最適加熱を行うことが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-338387号公報
【特許文献2】国際公開第2014/087666号
【特許文献3】特開平10-41064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の通り、導波管の調整手段により整合を合せても、その先では、表面波線路の他に放射される高周波電力もあり、表面波線路による加熱を最大化できるわけではない。
【0007】
また、特許文献2に記載の通り、表面波伝播線路と、伝達部との間に整合部を設けても、表面波線路の途中に設置される食品による不整合は解決できず、その位置での放射などを生じ食品加熱の最大化ができない。さらに、整合部は、表面波伝播線路と、伝達部との間に直列に入り、表面波線路までの伝播距離が長くなるので、空間放射を増やすことになる。
【0008】
また、特許文献3に記載の通り、食品に合わせて最適な表面波線路を用意する場合、多種多様な食品に対応するには、表面波線路が多量に必要になり、使用間違いなどもあり、実使用に適さない。
【0009】
本開示は、多種多様な食品に合わせて、整合を確保し、表面波線路による食品の加熱を最大化する高周波加熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、
本開示における高周波加熱装置は、
表面波を伝播する表面波線路と、
高周波電力を前記表面波線路に供給する給電部と、
前記表面波線路と前記給電部とを結合する結合部と、を備え、
前記結合部から、前記表面波線路の終端との間に少なくとも1つの整合部を設けることにより、
表面波線路による食品の加熱を最大化するのに適した位置で整合を確保でき、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示による高周波加熱装置は、
表面波線路による食品の加熱を最大化するのに最適な位置に整合部を配置できる。食品設置位置、給電点などの表面波線路に置いて不整合が発生する地点に近い位置で整合を確保できるので、不要な放射や反射を最小限に抑制でき、表面波線路による食品の加熱を最大化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1の高周波加熱装置の概略正面図
【
図3】本発明の実施の形態1の整合部接続の概略斜視図
【
図5】本発明の実施の形態2の表面波線路の概略平面図
【
図6】本発明の実施の形態3の表面波線路の概略斜視図
【
図7】本発明のその他の実施の形態の整合部接続の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、高周波電力を表面波により伝播し食品を加熱するという技術は、食品が焼ける技術として知られているという状況であった。
【0014】
そうした状況下において、発明者らは、表面波を用いて食品を焼くための表面波線路の高周波伝播過程に複数存在する不整合点で、多くの放射や反射電力などが生じているが、整合は、整合位置での反射波の最小化により伝播電力の最大化を図るもので、その先の不整合位置での整合には、ほぼ寄与しないという課題を発見し、その課題を解決するために、不整合位置ごとに整合を確保することが望ましいという本開示の主題を構成するに至った。
【0015】
そこで本開示は、
表面波を伝播する表面波線路と、
高周波電力を前記表面波線路に供給する給電部と、
前記表面波線路と前記給電部とを結合する結合部と、を備え、
前記結合部から、前記表面波線路の終端との間に少なくとも1つの整合部を設けた高周波加熱装置を提供する。
【0016】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0018】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態1の高周波加熱装置の概略構成図を示す。被加熱物2は、金属壁面で囲われた加熱室1内の載置台3の上に配置されて加熱される。高周波電力はマグネトロンや半導体式発振器などの高周波電力発生部4より、導波管5を経由して、給電部6に供給される。給電部6は、結合部10にて表面波線路7に接続し、高周波電力を伝える。表面波線路7は、結合部10で受け取った高周波電力を表面波の形態で終端部8まで伝播する。例えば、表面波線路7は、
図3に示すように、金属製板形状の基礎導体11の上側に、金属製板形状のスタブ状導体12を複数配列した構成をしている。複数配列したスタブ状導体12の高さ、幅、配置間隔、厚みなどを最適化することで、高周波電力が放射せずに、表面波線路に沿って伝播する表面波を形成できる。表面波線路7を伝播する表面波形態の高周波電力は、近傍に設置された被加熱物2を強く加熱して焦げ目をつける。終端部8には、放射部14が接続されている。放射部14は、例えば棒状のアンテナ形状をしていて、使用周波数帯で共振して放射効率が高くなるよう、長さを約λ/4として、高周波電流が最大となる基礎導体11近傍に結合し、終端部8に到達した高周波電力を加熱室1内に放射し、空間より被加熱物2を加熱する。放射部14は表面波線路7の終端部8と直列に連続して接続され、上方空間に向けて延びるように配置される。なお、表面波線路7は、給電部6を中心軸として、回転自在に設置されていてもよい。
【0020】
図2は、表面波線路の不整合位置説明図を示す。給電部6から供給された高周波電力20は
図2の点線に示される経路を経て表面波線路7の終端部8へ向かって伝播する。主に不整合は、高周波電力伝播経路のインピーダンスが急激に変化する場所で発生する。この電波経路途中の主な不整合場所は、給電部6から表面波線路7へと切り替わる結合部10のA点線位置、載置台3に対する被加熱物2設置端のB点線位置、表面波線路7終端部8のC点線位置になる。被加熱物2の加熱を最大化するには、少なくとも高周波電力が被加熱物2にいきわたるまでに通過するA位置および、B位置で整合を確保する必要がある。ここで被加熱物2を1個加熱する場合は、大抵中央に設置されるので、この様な場合は、A位置とB位置が同じ結合点に重なることが多い。この場合を鑑み、結合部10から表面波線路7の終端部8までの間に少なくとも1つの整合部を設置する。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態1の整合部接続の概略構成図を示す。
図2で説明した結合部10、つまり給電部6から表面波線路7へと切り替わる結合部のA位置に整合部9aを設置し、載置台3に対する被加熱物2設置端(被加熱物の載置場所により変動有)のB位置に整合部9bを設置して、整合を確保している。また、被加熱物の載置場所により変動するB位置に対して設置する整合部9bに関しては、たとえば、載置台3に被加熱物載置目安用の枠組みを目視できるよう表示し、その通りに被加熱物が載置されたときに、整合部9bが被加熱物2設置端に対応して整合をとれるようにするとよい。または整合部9bが適宜移動可能な構成としてもよい。なお、整合部9aおよび整合部9bは、表面波線路7の被加熱物側に設置すると表面波の妨げになり、放電などが起こる可能性もあるため設置困難である。そのため表面波線路7の基礎導体11側に配置されることが好ましい。表面波線路7は金属製板形状の基礎導体11の上側にスタブ状導体12を複数配列した構成をしている。整合部9a、9bは、板状のタブ形状で、その一端を基礎導体11に接続し、
図2で説明した高周波電力20の流路および表面波線路7に対し、端部より手前の途中位置で分岐して略直交する方向に延びて、他端を開放している。板状タブの接続端から開放端までの長さは1波長以下で、幅は半波長以下であることが望ましい。例として整合部9aの接続端を92a、開放端を91aとして
図3に示している。
【0022】
このように配置することで、表面波伝達線路からの反射波を相殺し効率的に高周波電力を伝達するために、給電距離を必要以上に延長したり、表面波線路7途中に性能の異なる伝送部品を挿入したりする必要がなく、本来の性能を維持しつつ、最適な整合を確保する
ことが出来る。また整合部9の素材は高周波伝送経路の意図する位置に意図するインピーダンスを造ることができればよく、主にアルミなどの金属が使用される。
【0023】
図4は、表面波線路の高周波電流の流路説明図を示す。表面波線路7を構成する基礎導体11とスタブ状導体12を流れる高周波電流21の瞬時分布の例を示す。高周波電流21はスタブ状導体12端から基礎導体11を経て他のスタブ状導体12端へ流れている。整合部9a、9bは、高周波電流21の流路に一端を接続して設置されている。表面波線路7は、高周波電流21とスタブ状導体12先端に生じる電界(図示せず)の相互作用により、高周波電力を表面波の形態で伝播させる。スタブ状導体12先端近傍に被加熱物2が配置されると、近傍の電界に影響し、その変化は高周波電流21に及ぶため、スタブ状導体12や載置台3から離れた基礎導体11に整合部9bを設置しても高周波電流21の流路上にあれば、整合効果を発揮する。
【0024】
図2で説明したA位置とB位置では、インピーダンスの変化状況は異なる。A位置は、同軸線路と同様構成の給電部6から表面波線路7に切り替わっている。B位置は同じ表面波線路7だが、終端部8側は被加熱物2のインピーダンスが付加される。このように設置する位置で、整合を確保する整合部に求められる性能は異なる。このため、
図3に示すように整合部9aと整合部9bは、それぞれに求められる性能を実現するため、幅と長さを調整し、異なる形状になっている。詳細には、整合部の長さをL成分と考え、整合部長さを長くするとL値が増え、短くすると減少する。また、面積を底壁面とのC成分と考え、面積を広くするとC値が増え、狭くすると減少する。このようにLC成分を調整することで、必要なインピーダンスを実現している。ここで例えば整合部9aは、給電部6と表面波線路7との整合を確保できるような長さLaおよび幅Waに設定される。また整合部9bは表面波線路7のうち給電部6側と被加熱物2側との整合を確保できるような長さLbおよび幅Wbに設定される。このように整合部9の形状は不整合となっている複数の対象物それぞれの持つインピーダンスの数値により異なり、形状は問わない。この例に限られず、不整合位置近傍にて意図するインピーダンスを作り出し、不整合による反射を最小化できればよく、整合部の長さ、幅以外に厚みや形状を変えても良いし、誘電体など複数の部品を組み合わせてもよい。
【0025】
図2に示されるように高周波電力20は、表面波線路7で2方向に分かれて伝播する。
図3では左半分が省略されているが、表面波線路7左側に分かれた高周波電力流路にも同様に整合部が設置され、高周波電力流路ごとに最適な整合が図られる。また、結合部10は左右の高周波電力流路が重なる共通の不整合点に当たり、両高周波電力流路を一括で整合部9aにより整合確保できる。
【0026】
整合部9a、9bは一端を表面波線路7の基礎導体11に固定され、他端を開放してあるので、表面波線路7が結合部10を軸として回転する場合、同期して一緒に回転することができ、どのような角度であっても整合機能を維持できる。
【0027】
ここでは主に、表面波線路7の結合部10から終端部8の間に被加熱物2を配置した例で説明した。しかし先述したように被加熱物2を1個加熱する場合は、大抵中央に設置される。この様な場合は、A位置とB位置が同じ結合点に重なるので、整合部9は1か所で良い。この場合の構成の例をその他の実施の形態として
図7に示している。
【0028】
以上説明したように、結合部10から、表面波線路7の終端との間に少なくとも1つの整合部9(図では9a)を設置することにより、不整合が生じている位置で整合を確保でき、表面波による被加熱物2の加熱処理を最大化できる。
【0029】
(実施の形態2)
以下、
図5を用いて、実施の形態2を説明する。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態2の表面波線路を上から見た概略構成図を示す。表面波線路7は
図5において、給電部6との結合部10から終端部8a、終端部8bへ向かって上下二方向に分岐している。表面波線路7を構成する基礎導体11はV字状形状で2又に分かれている。スタブ状導体12は、分岐位置から別の導体に分かれる。高周波電力20の流路もスタブ状導体12と同様に分岐から2方向に分かれる。この電波経路途中の主な不整合場所は、結合部10の位置、表面波線路7の分岐位置、被加熱物設置端の位置、表面波線路7終端部8a、8bの位置になる。被加熱物2の加熱を最大化するには、上記のうち、表面波線路7の分岐位置、被加熱物設置端の位置、の位置で整合を確保することが望ましい。本開示における実施の形態2では、上記不整合場所についてそれぞれ、被加熱物設置端の位置には整合部9cを、表面波線路7の分岐位置には整合部9dを、設けている。ただし、表面波線路7の分岐位置と、被加熱物設置端の位置が近接しているような場合は、それぞれの経路ごとに一括して整合部9dのみを設置しても良い。
【0031】
表面波線路7が給電部6に対して非対称な構成の場合、水平が保ち難かったり、不要な力が働くなど、回転には不都合があるので、整合部9cを給電部6に対してバランスが取れる方向に配置している。
【0032】
また整合部9cは、高周波電力20の流路に接続する側をテーパー状にして、接合点を限られた範囲に絞り込み、整合する位置を確実にしている。
【0033】
(実施の形態3)
以下、
図6を用いて、実施の形態3を説明する。
【0034】
図6は、本発明の実施の形態3の表面波線路の概略構成図を示す。表面波線路7は、給電部6との結合部10から終端部までの間に整合部9eが設置されている。整合部9eは、表面波線路7の基礎導体11下側に絶縁物13を介して、機構的に非接触で、電気的に容量性結合している。整合部9eは、絶縁物13に機構的に固定されているが、絶縁物13は、表面波線路7の基礎導体11下側に沿って移動可能に保持されているので、必要に応じて結合する位置を移動することができ、被加熱物の配置された位置などにより最適な位置で整合を確保することが出来る。このとき、被加熱物の位置検知を撮像部やセンサで行ってもよく、さらに位置検知の結果、整合部9eを高周波加熱装置が自動で任意の位置に動かすようにしてもよい。また絶縁物13は例えばテフロン(登録商標)などが使用される。
【0035】
(効果)
以上のように、本実施の形態において、高周波加熱装置は、表面波線路7と、給電部6と、結合部10と、を備える。表面波線路7は、高周波電力を表面波として伝播させる。結合部10から表面波線路7の終端部8の間に少なくとも1つの整合部9を設置する。これにより、不整合が発生する近傍の最適な位置で整合を確保でき、表面波による食品の加熱を最大化できるので、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0036】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、給電部6から表面波線路7の終端部8まで伝播する高周波電力20の流路に対し、分岐する方向に整合部9を配置してもよい。これにより、給電距離を必要以上に延長したり、表面波線路7途中に性能の異なる伝送部品を挿入する必要がなく、本来の性能を維持しつつ、最適な整合を確保することが出来るので、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0037】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、表面波線路7の終端部8と直列に連続して
接続され、上方空間に向けて延びるように配置される、放射部を備えていてもよい。これにより、表面波線路7の終端部8位置からの反射を抑制して、整合部9による整合効果を確実に機能させ、表面波線路7の性能を設計通りに引き出すことができ、被加熱物に対して効率よく加熱処理できる。また、終端部8からの反射を最小化することで、表面波線路7上の定在波発生を抑制でき、加熱むらを改善することができる。
【0038】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、表面波線路7の高周波電流21の流路に整合部9を接続しても良い。これにより、表面波の形態で伝播する高周波電力20に対して、整合を確保することができるので、表面波による加熱を最大化できる。
【0039】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、表面波線路7の基礎導体11に整合部9を接続しても良い。これにより、表面波の形態で伝播する高周波電力20に対して、整合を確保することができるので、表面波による加熱を最大化できる。
【0040】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、結合部10および、または、表面波線路7の食品設置位置に整合部9a、9bを配置しても良い。これにより、表面波伝播経路の不整合発生場所の近傍で整合性能を確保でき、表面波による加熱を最大化できる。
【0041】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、給電部6から表面波線路7の終端部8まで伝播する高周波電力20の流路ごとに整合部9dを配置しても良い。これにより、表面波伝播経路の不整合発生場所の近傍で整合性能を確保でき、表面波による加熱を最大化できる。
【0042】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、高周波電力20の流路が重なる位置に整合部9aを設置しても良い。これにより、一括して整合を確保して、部品数を削減して、アンテナの軽量化、コストダウンが図れる。
【0043】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、高周波電力20の流路が重なる結合部10に整合部9を設置しても良い。これにより、一括して整合を確保して、部品数を削減して、アンテナの軽量化、コストダウンが図れる。
【0044】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、整合部9を板状のタブ形状とし、その1端を高周波電力20の流路に接続し、他端を開放しても良い。これにより、給電距離を必要以上に延長したり、表面波線路7途中に性能の異なる伝送部品を挿入する必要がなく、本来の性能を維持しつつ、最適な整合を確保することが出来るので、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0045】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、高周波電力20流路に対し整合部9を角度をつけて配置しても良い。これにより、給電距離を必要以上に延長したり、表面波線路7途中に性能の異なる伝送部品を挿入する必要がなく、本来の性能を維持しつつ、最適な整合を確保することが出来るので、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0046】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、整合部9の板形状の幅と長さを調整しても良い。これにより、整合性能を確実に確保する事ができ、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0047】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、整合部9の高周波電力20の流路に接続する側をテーパー形状にしてもよい。これにより、整合する場所を限られた範囲に絞り込み、整合性能を確実に確保する事ができ、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱
処理できる。
【0048】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、整合部9を表面波線路7と機構的に直接接触せずに電気的に高周波電力20の流路と接続し、整合部9と表面波線路7との接続位置を移動可能としても良い。これにより、食品設置位置など一定しない不整合位置にも確実に整合性能を確保でき、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0049】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、絶縁物13を介して整合部9を表面波線路7に固定しても良い。これにより、これにより、食品設置位置など一定しない不整合位置にも確実に整合性能を確保でき、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0050】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、給電部6を中心軸として、表面波線路7を回転する構成とし、整合部9は、表面波線路7と同期して回転しても良い。これにより、どのような角度であっても整合機能を維持でき、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【0051】
本実施の形態のように、高周波加熱装置は、表面波線路7の給電部6に対する重量バランスを改善方向に整合部9を設置しても良い。これにより、表面波線路7の回転動作を容易にでき、多種多様な被加熱物に対しても所望の状態に加熱処理できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように本開示は、簡単な構造で表面波による加熱を最大化できるため、高周波加熱機などの調理家電に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 加熱室
2 被加熱物
3 載置台
4 高周波電力発生部
5 導波管
6 給電部
7 表面波線路
8 終端部
8a 終端部
8b 終端部
9 整合部
9a 整合部
9b 整合部
9c 整合部
9d 整合部
9e 整合部
10 結合部
11 基礎導体
12 スタブ状導体
13 絶縁物
14 放射部
20 高周波電力
21 高周波電流
91a 整合部9aの開放端
92a 整合部9aの接続端