(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148655
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】集合住宅の電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20231005BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20231005BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056797
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA05
5G066AE03
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】 集合住宅の電力供給システムに関し、太陽光発電装置の自己消費率を高める。
【解決手段】 複数の住戸A、B及びCを含む集合住宅2の電力供給システム1である。複数の住戸で共用する太陽光発電装置3と、太陽光発電装置3及び商用電源20から電力の供給を受ける第1分電盤5と、複数の住戸に設けられ、かつ、第1分電盤5からの電力の供給を受ける第2分電盤6と、太陽光発電装置3の発電量を計測するための第1電力量計測具7と、複数の住戸のそれぞれの電力使用量を計測するための複数の第2電力量計測具8と、制御装置12とを備える。制御装置12は、複数の住戸A、B及びCの合計電力使用量と、太陽光発電装置3の発電量とを比較し、その結果に基づいて、第1分電盤5を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸を含む集合住宅の電力供給システムであって、
複数の住戸で共用する太陽光発電装置と、
前記太陽光発電装置及び商用電源から電力の供給を受ける第1分電盤と、
前記複数の住戸に設けられ、かつ、前記第1分電盤からの電力の供給を受ける第2分電盤と、
前記太陽光発電装置の発電量を計測するための第1電力量計測具と、
前記複数の住戸のそれぞれの電力使用量を計測するための複数の第2電力量計測具と、
前記第1分電盤、前記第1電力量計測具、前記第2電力量計測具に接続された制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記複数の住戸の合計電力使用量と、前記太陽光発電装置の発電量とを比較し、
前記合計電力使用量が前記発電量以下の場合、前記複数の住戸の全てに発電電力が供給され、かつ
前記合計電力使用量が前記発電量を上回る場合、予め定めた割当ルールにしたがって前記発電電力が前記複数の住戸の1又は複数に供給されるように前記第1分電盤を制御する、
集合住宅の電力供給システム。
【請求項2】
前記割当ルールは、電力使用量が多い住戸ほど、前記発電電力がより多く供給されるものである、請求項1に記載の集合住宅の電力供給システム。
【請求項3】
前記割当ルールは、予め定められた期間で集計された前記複数の住戸のそれぞれの電力使用量が多い住戸ほど、前記発電電力がより多く供給されるものである、請求項1に記載の集合住宅の電力供給システム。
【請求項4】
前記割当ルールは、床面積が大きい住戸ほど、前記発電電力がより多く供給されるものである、請求項1に記載の集合住宅の電力供給システム。
【請求項5】
1又は複数のヒートポンプ方式の給湯器をさらに備えており、
前記給湯器の少なくとも1つは、前記複数の住戸のうちの、複数の住戸に湯を供給するための共用の給湯器であり、
前記制御装置は、前記発電電力に余力があると判断したときに、前記発電電力を用いて前記共用の給湯器に沸き上げ運転を行わせる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の集合住宅の電力供給システム。
【請求項6】
前記第1分電盤に接続された蓄電池をさらに備えており、
前記制御装置は、前記発電電力に余力があると判断したときに、前記発電電力を前記蓄電池に蓄えさせる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の集合住宅の電力供給システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載された電力供給システムと、前記太陽光発電装置とを備えた集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集合住宅の電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、戸建てのみならず、集合住宅においても、太陽光発電装置で発電された電力を活用する試みがなされている。例えば、下記特許文献1は、太陽光発電・蓄電システムを備えた集合住宅を提案している。この集合住宅は、屋上又は屋根上に設置された太陽電池パネルと、太陽電池パネルにより発電される電力を蓄電する蓄電池とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今では、太陽光発電装置で発電された電力の売電単価は低下する傾向にある。したがって、太陽光発電装置を備えた集合住宅において、発電電力の住戸内での自己消費率を高めたいというニーズがある。
【0005】
本開示は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、自己消費率を高めることができる集合住宅の電力供給システムを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、複数の住戸を含む集合住宅の電力供給システムであって、複数の住戸で共用する太陽光発電装置と、前記太陽光発電装置及び商用電源から電力の供給を受ける第1分電盤と、前記複数の住戸に設けられ、かつ、前記第1分電盤からの電力の供給を受ける第2分電盤と、前記太陽光発電装置の発電量を計測するための第1電力量計測具と、前記複数の住戸のそれぞれの電力使用量を計測するための複数の第2電力量計測具と、前記第1分電盤、前記第1電力量計測具、前記第2電力量計測具に接続された制御装置とを備えており、前記制御装置は、前記複数の住戸の合計電力使用量と、前記太陽光発電装置の発電量とを比較し、前記合計電力使用量が前記発電量以下の場合、前記複数の住戸の全てに発電電力が供給され、かつ前記合計電力使用量が前記発電量を上回る場合、予め定めた割当ルールにしたがって前記発電電力が前記複数の住戸の1又は複数に供給されるように前記第1分電盤を制御する、集合住宅の電力供給システムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の集合住宅の電力供給システムでは、上記の構成を採用したことにより、集合住宅において太陽光発電装置で発電された電力の自己消費率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態を示す電力供給システムのブロック図である。
【
図3】制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本開示の一実施形態を示す集合住宅の電力供給システム1のブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態の集合住宅の電力供給システム1は、集合住宅2に電力を供給するシステムである。集合住宅2は、複数の住戸(
図1では、例えば、3つの住戸A、B及びC)を含む。
【0010】
[集合住宅]
まず、集合住宅2が説明される。集合住宅2は、共用の太陽光発電装置3を備える。本実施形態では、太陽光発電装置3で得られた発電電力は複数の住戸A、B及びCで共用される。
【0011】
本実施形態の太陽光発電装置3は、例えば、太陽電池パネル3aと、パワーコンディショナー3bとを含む。
【0012】
太陽電池パネル3aは、例えば、集合住宅2の屋根又は屋上に設置されている。パワーコンディショナー3bは、太陽電池パネル3aにより発電された直流電力を交流電力に変換する。
【0013】
好ましい態様として、太陽光発電装置3は、発電電力を蓄電するための蓄電池3cを含んでも良い。蓄電池3cは、パワーコンディショナー3bに接続されている。蓄電池3cは、発電電力の余剰分を直流電力として蓄えることができる。蓄電池3cは、例えば、集合住宅2の共用部に設置され得る。蓄電池に蓄えられた電力も、複数の住戸A、B及びCで共用される。
【0014】
集合住宅2は、さらに、1又は複数のヒートポンプ方式の給湯器4を備えても良い。給湯器は、電力によって運転するヒートポンプ4aと、貯湯タンク4bとを含む。
【0015】
好ましい態様として、給湯器4の少なくとも1つは、複数の住戸A、B及びCのうちの、複数の住戸に湯を供給する共用の給湯器4Aであっても良い。共用の給湯器4Aは、例えば、集合住宅2の共用部に設置される。共用の給湯器4Aには、後述する第1分電盤5から電力が分配される。
図1の例では、貯湯タンク4bは、住戸A、B及びCの各浴室や洗面所の給湯部に接続されており、1つの共用の給湯器4Aで3つの住戸A、B及びCの給湯に共用されるものが示される。このような態様は、給湯器4の設置個数を減らし、土地スペースの有効活用が可能となる。ただし、本開示は、このような態様に制限されるものではない。
【0016】
[電力供給システム]
次に、本実施形態の電力供給システム1が説明される。電力供給システム1は、例えば、集合住宅2に設けられた第1分電盤5と、複数の住戸A、B及びCにそれぞれ設けられた第2分電盤6と、第1電力量計測具7と、複数の第2電力量計測具8と、制御装置12とを含む。
【0017】
[第1分電盤]
第1分電盤5は、例えば、集合住宅2の共用部に設けられており、太陽光発電装置3のパワーコンディショナー3b及び商用電源20に接続されている。したがって、第1分電盤5は、太陽光発電装置3及び商用電源20の双方から電力の供給を受けることができる。第1分電盤5は、これらの電力を集合住宅2の各住戸A、B及びCに設置された第2分電盤6に予め定められた割合で分配する。また、第1分電盤5と電力会社21とは、太陽光発電装置3で発電された電力の余剰分を電力会社に売却するための売電用送電線22が接続されている。
【0018】
[第2分電盤]
第2分電盤6は、例えば、複数の住戸A、B及びCの屋内に設置されている。第2分電盤6は、第1分電盤5からの電力を、ブレーカ等を介して、各住戸A、B及びCそれぞれの複数の部屋に分配する。各部屋では、第2分電盤6からの電力を受けて、各種の電気機器(照明、エアコン等)が利用される。
【0019】
[電力計測具]
第1電力量計測具7は、例えば、パワーコンディショナー3bと第1分電盤5との間に設けられており、太陽光発電装置3で発電された電力量(発電量)を計測する装置である。
【0020】
第2電力量計測具8は、複数の住戸A、B及びCそれぞれの電力使用量を計測する装置である。第2電力量計測具8は、例えば、第2分電盤6に内蔵されたものでも良い。
【0021】
本実施形態の電力供給システム1はまた、第3電力量計測具9、第4電力量計測具10及び第5電力量計測具11を備える。第3電力量計測具9は、商用電源20から供給を受けた(購入した)電力量を計測する。第4電力量計測具10は、電力会社21へ売電した電力量を計測する。第5電力量計測具11は、蓄電池3cに残存している電力量を計測する。
【0022】
第1ないし第5電力量計測具7ないし11で計測された電力量は、それぞれ、制御装置12へと入力される。制御装置12では、これらの電力量に基づいて、各住戸A、B及びCへの電力の分配の他、電気料金を計算する。
【0023】
[制御装置]
制御装置12は、第1分電盤5及び第1ないし第5電力量計測具7ないし11に接続されている。本実施形態の制御装置12は、好ましい態様として、集合住宅2のオーナ(又は管理会社)のコンピュータ30とインターネット等のネットワークを介して接続されている。オーナは、制御装置12から所定の情報を受け取り、リアルタイムで電力供給状況など様々な情報をモニタリングすることができる。
【0024】
制御装置12は、予め記憶されている処理手順にしたがって、各種の機器を制御することができる。
図2は、制御装置12の入出力を含めたブロック図を示す。制御装置12は、例えば、各種のコンピュータであって、演算部12aと、記憶部12bと、作業用メモリ12cとを含む。演算部12aには、例えば、太陽光発電装置3の発電量、各住戸A、B及びCの使用電力量、商用電源20からの購入電力量、電力会社21への売電電力量、及び、蓄電池3cの蓄電量等が入力される。
【0025】
記憶部12bには、上記各情報を処理するための処理手順を記憶するプログラム部と、後述する発電電力の割当ルール(後述)が記憶された割当ルール部と、各住戸A、B及びCのこれまでの電力使用状況といった履歴情報等が記憶されている。
【0026】
制御装置12は、入力された情報及びプログラム部等に基づいて、第1分電盤5や共用の給湯器4A等を制御する。また、必要に応じて、集合住宅2のオーナのコンピュータ30に情報を送信する。
【0027】
本実施形態の制御装置12は、リアルタイム又は所定のサンプリングタイミングで、複数の住戸A、B及びCの合計電力使用量と、太陽光発電装置3の発電量とを比較する。そして、制御装置12は、その結果に基づいて、第1分電盤5を制御する。
【0028】
具体的には、制御装置12は、複数の住戸A、B及びCの合計電力使用量が発電電力量以下の場合、複数の住戸A、B及びCの全てに発電電力が供給されるように第1分電盤5を制御する。これにより、第1分電盤5は、複数の住戸A、B及びCの全ての電力が発電電力で賄われるように、各住戸に発電電力を分配する。
【0029】
一方、制御装置12は、複数の住戸A、B及びCの合計電力使用量が発電量を上回る場合、記憶部12bに予め記憶された割当ルールにしたがい、発電電力が複数の住戸A、B及びCのうちの1又は複数に供給されるように第1分電盤5を制御する。この割当ルールは、自己消費率が向上するように設定されている。そのような割当ルールは、次のようなものが挙げられる。
【0030】
例えば、割当ルールは、現在の電力使用量が多い住戸から順番に、発電電力を割り当てるルールであっても良い。これにより、発電電力の全てが効率的に住戸A、B又はCで消費され得る。
【0031】
また、例えば、割当ルールは、現在の電力使用量が多い住戸ほど、発電電力がより多く分配されるルールであっても良い。一例として、全ての発電電力が、各住戸A、B及びCの電力使用量を基準として、各住戸A、B及びCに按分されても良い。これにより、発電電力の全てが効率的に住戸A、B又はCで消費され得る。
【0032】
また、他の例として、割当ルールは、予め定められた期間で集計された複数の住戸A、B及びCのそれぞれの電力使用量が多い住戸ほど、発電電力がより多く供給されるルールであっても良い。例えば、全ての発電電力が、各住戸A、B及びCの月平均電力使用量を基準として、各住戸A、B及びCに按分されても良い。
【0033】
さらに、他の例として、割当ルールは、床面積が大きい住戸ほど、発電電力がより多く供給されるルールであっても良い。一般的に、床面積が大きい住戸ほど、電力使用量が多くなることは経験則上知られている。
【0034】
図3は、上述のような処理を行うための制御装置12の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、
図3にしたがって、制御装置12のより詳細な処理手順の一例が説明される。なお、
図3のフローチャートの比較・判断処理において、分岐符号「Y」はその結果が肯定的であることを、分岐符号「N」はその結果が否定的であることをそれぞれ意味する。
【0035】
まず、制御装置12は、現在の発電量を取得する(ステップS1)。例えば、演算部12aは、第1電力量計測具7で計測された電力量を読み取って作業用メモリ12cに記憶させることで行われる。
【0036】
次に、制御装置12は、各住戸A、B及びCの電力使用量を取得する(ステップS2)。この処理は、演算部12aが、それぞれの第2電力量計測具8で計測された電力量を読み取って作業用メモリ12cに記憶させることで行われる。
【0037】
次に、制御装置12は、太陽光発電装置3が発電しているか否かを判断する(ステップS3)。この処理は、例えば、演算部12aが第1電力量計測具7からの電力量を読み取り、その値が予め定められた閾値以上であれば発電していると判断し、そうでなければ発電していない、と判断することで行われる。
【0038】
制御装置12は、太陽光発電装置3が発電していると判断した場合、発電量で集合住宅の全ての住戸A、B及びCの合計電力使用量を賄えるか否かを判断する(ステップS4)。この処理は、演算部12aが、ステップS1で取得した発電量と、ステップS3で取得した各住戸A、B及びCの電力使用量の和とを比較することで行われる。
【0039】
制御装置12は、発電量で集合住宅の住戸A、B及びCの合計電力使用量を賄えると判断した場合、全ての住戸A、B及びCに発電電力を供給するように第1分電盤5を制御する(ステップS5)。例えば、制御装置12は、複数の住戸A、B及びCの電力使用量を読み込み、発電電力を、それぞれの電力使用量に応じて各住戸A、B及びCの第2分電盤6に分配するように第1分電盤5を制御する。これにより、太陽光発電装置3で得られた発電電力の自己消費率が向上する。この場合、制御装置12は、商用電源20からの電力の供給を受けず、複数の住戸A、B及びCの電力を全て発電電力で賄うことができる。
【0040】
次に、制御装置12は、共用の給湯器4Aの有無を判断する(ステップS6)。共用の給湯器4Aが設置されている場合、共用の給湯器4Aの沸き上げ運転をする電力余力があるか否かを判断する(ステップS7)。これは沸き上げに必要な電力量と、余剰電力量(すなわち、発電量-各住戸A、B及びCの合計電力使用量)とを比較することで行われる。
【0041】
次に、制御装置12は、ステップS7の結果が肯定的である場合、共用の給湯器4Aに沸き上げ運転を指示する(ステップS8)。このように、余剰電力を売電ではなく、例えば、昼間の給湯器の沸き上げに用いることにより、さらに発電電力の自己消費率が高められる。なお、このように、本実施形態では、発電電力のうち、各住戸A、B及びCの合計電力を超える余剰分は、共用の給湯器4Aの沸き上げに消費されるが、さらなる余剰分は蓄電池3cへと蓄電される。これにより、自己消費率がさらに高められる。
【0042】
次に、制御装置12は、各住戸A、B及びCの電力使用量(発電電力の使用量及び商用電源の使用量)に基づいて、複数の住戸A、B及びCそれぞれの電気料金を計算する(ステップS9)。ステップS1からS9まで直列的に処理された場合、各住戸A、B及びCで使用された電力は、全て発電電力として確定される。この場合、使用した電力量に発電電力の単価を乗じて各住戸A、B及びCの電気料金が計算され得る。なお、ステップS6及びS7の結果が否定的な場合も(各ステップでN)、ステップS9が実行される。
【0043】
次に、太陽光発電装置3が発電していない場合(ステップS3でN)が説明される。このような場合、本実施形態の制御装置12は、蓄電池3cの有無を判断する(ステップS11)。
【0044】
制御装置12は、蓄電池3cがないと判断した場合(ステップS11でN)、制御装置12は、商用電源20から不足電力を購入して全ての住戸A、B及びCに供給する(ステップS12)。その後、制御装置12は、ステップS9を実行する。ステップS11、S12を経由した場合、各住戸A、B及びCでそれぞれ使用された電力は、全て商用電源20から購入した電力として確定される。そして、使用した電力量に商用電力の買電単価を乗じて各住戸A、B及びCの電気料金が計算され得る。
【0045】
次に、制御装置12は、ステップS11において、蓄電池3cがあると判断した場合、制御装置12は、蓄電池3cに蓄えられている蓄電量を取得する(ステップS13)。
【0046】
次に、制御装置12は、蓄電量+発電量で現在の全ての住戸A、B及びCの電力を賄えるか否かを判断する(ステップS14)。ステップS13の結果が肯定的である場合、各住戸A、B及びCに蓄電力+発電電力の電力を供給する(ステップS15)。ただし、ステップS3からステップS11、S13及び14が実行された場合には、制御装置12は蓄電力(発電電力はゼロ)だけが各住戸A、B及びCに供給される。本実施形態では、蓄電力は、太陽光発電装置3で得られた電力であるため、この処理を行うことでさらに自己消費率が向上する。この場合、制御装置12は、商用電源20からの電力の供給を受けず、複数の住戸A、B及びCの電力を全て蓄電力で賄うことができる。
【0047】
以上のように、ステップS11、S13及びS14を経由した場合も、商用電源から電力の供給を受けず、蓄電池の電力が消費される。したがって、本実施形態の電力供給システム1は、高い自己消費率を達成する。なお、ステップS4の結果が否定的である場合(すなわち、発電量で全住戸の電力を賄えない場合)も、制御装置12は、ステップS11以降を実施する。
【0048】
一方、ステップS14の結果が否定的である場合、すなわち、蓄電量+発電量で全ての住戸A、B及びCの電力を賄うことができない場合、制御装置12は、各住戸A、B、Cに、上述したような割当ルールにしたがって蓄電力及び発電電力を分配するように第1分電盤5を制御する(ステップS16)。また、制御装置12は、不足分を商用電源20から購入して各住戸A、B及びCに供給する(ステップS17)。
【0049】
その後、制御装置12は、ステップS9を実行する。この場合、各住戸A、B及びCでそれぞれ使用された電力は、発電電力、蓄電力(ある場合)及び商用電力の混合である。この場合の各住戸A、B及びCの電気料金は、例えば、使用した電力種別の割合に応じて決定される。
【0050】
本実施形態の集合住宅の電力供給システムは、入居者、集合住宅のオーナ及び電力事業者(以下、単に、「事業者」という。)のそれぞれにいくつかの利点をもたらす。
【0051】
例えば、オーナは、太陽光発電装置3で発電された電力を一旦全て事業者に売却する。この際の売電単価はx円とされる。一方、入居者は、集合住宅2に入居するにあたり、事業者から電力を購入する契約を結ぶ。入居者の買電単価は、上記売電単価(x円)よりも高いy円とされる。この買電単価y円は、電力会社21の買電単価z円よりも低額とされるのが好ましい。
【0052】
以上のビジネスモデルによれば、集合住宅2のオーナは、売電による利益が得られる。また、入居者は、安い料金で電力を使用できる。しかも、その電力の大部分が自然エネルギーで発電された電力であるため、入居者は、地球環境負荷の低減という社会目的にも貢献できる。これは、集合住宅の入居率を向上させ、ひいては集合住宅の投資利回りが向上する。また、事業者は、電力事業者として、オーナから買い取った発電電力を入居者に供給し、単価差額y-x円による利益が得られる。さらに、このような集合住宅は高い投資利回りを期待できることから、事業者が住宅供給者を兼ねる場合、より多くの集合住宅を販売できるメリットがある。
【0053】
以上、本開示の実施形態が説明されたが、本開示は、上記の実施形態に制限されるものではない。また、本開示は、その均等物を含む。
【0054】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0055】
[本開示1]
複数の住戸を含む集合住宅の電力供給システムであって、
複数の住戸で共用する太陽光発電装置と、
前記太陽光発電装置及び商用電源から電力の供給を受ける第1分電盤と、
前記複数の住戸に設けられ、かつ、前記第1分電盤からの電力の供給を受ける第2分電盤と、
前記太陽光発電装置の発電量を計測するための第1電力量計測具と、
前記複数の住戸のそれぞれの電力使用量を計測するための複数の第2電力量計測具と、
前記第1分電盤、前記第1電力量計測具、前記第2電力量計測具に接続された制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記複数の住戸の合計電力使用量と、前記太陽光発電装置の発電量とを比較し、
前記合計電力使用量が前記発電量以下の場合、前記複数の住戸の全てに発電電力が供給され、かつ
前記合計電力使用量が前記発電量を上回る場合、予め定めた割当ルールにしたがって前記発電電力が前記複数の住戸の1又は複数に供給されるように前記第1分電盤を制御する、
集合住宅の電力供給システム。
[本開示2]
前記割当ルールは、電力使用量が多い住戸ほど、前記発電電力がより多く供給されるものである、本開示1に記載の集合住宅の電力供給システム。
[本開示3]
前記割当ルールは、予め定められた期間で集計された前記複数の住戸のそれぞれの電力使用量が多い住戸ほど、前記発電電力がより多く供給されるものである、本開示1に記載の集合住宅の電力供給システム。
[本開示4]
前記割当ルールは、床面積が大きい住戸ほど、前記発電電力がより多く供給されるものである、本開示1に記載の集合住宅の電力供給システム。
[本開示5]
1又は複数のヒートポンプ方式の給湯器をさらに備えており、
前記給湯器の少なくとも1つは、前記複数の住戸のうちの、複数の住戸に湯を供給するための共用の給湯器であり、
前記制御装置は、前記発電電力に余力があると判断したときに、前記発電電力を用いて前記共用の給湯器に沸き上げ運転を行わせる、本開示1ないし4のいずれかに記載の集合住宅の電力供給システム。
[本開示6]
前記第1分電盤に接続された蓄電池をさらに備えており、
前記制御装置は、前記発電電力に余力があると判断したときに、前記発電電力を前記蓄電池に蓄えさせる、本開示1ないし5のいずれかに記載の集合住宅の電力供給システム。
[本開示7]
本開示1ないし6のいずれか1項に記載された電力供給システムと、前記太陽光発電装置とを備えた集合住宅。
【符号の説明】
【0056】
1 電力供給システム
2 集合住宅
3 太陽光発電装置
3c 蓄電池
4A 共用の給湯器
5 第1分電盤
6 第2分電盤
7 第1電力量計測具
8 第2電力量計測具
12 制御装置
20 商用電源
A、B、C 住戸