(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148656
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01N27/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056798
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田邊 圭
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046BA01
2G046BA07
2G046BB02
2G046BE04
(57)【要約】
【課題】基板の変形に起因するセンサ素子の特性変動を防止し得るガスセンサを提供する。
【解決手段】枠状の保持部と、前記保持部の第1方向側の第1開口に配置される感応膜と、前記感応膜に接続する一対の電極と、を有するセンサ素子と、前記センサ素子を実装する基板と、を有し、前記センサ素子は、前記保持部における前記第1開口の周縁部であって前記センサ素子の角部を除く周縁非角部に配置され、一対の前記電極に電気的に接続する少なくとも一対の電極パッド部を有し、前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部を介して前記基板に接続されるガスセンサ
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の保持部と、前記保持部の第1方向側の第1開口に配置される感応膜と、前記感応膜に接続する一対の電極と、を有するセンサ素子と、
前記センサ素子を実装する基板と、を有し、
前記センサ素子は、前記保持部における前記第1開口の周縁部であって前記センサ素子の角部を除く周縁非角部に配置され、一対の前記電極に電気的に接続する少なくとも一対の電極パッド部を有し、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部を介して前記基板に接続されるガスセンサ。
【請求項2】
前記センサ素子は、前記感応膜を加熱する熱源と、前記周縁非角部に配置され、前記熱源に電気的に接続する熱源パッド部を有し、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記熱源パッド部を介して前記基板に接続される請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部のうち少なくとも2つは、前記周縁部における前記第1方向に垂直な第2方向に沿って中心間距離が第1の長さになるように配置されており、
前記第1の長さは、前記センサ素子の前記第2方向の長さである素子長さの60%以下である請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部のうち少なくとも2つは、前記周縁部における前記第1方向に垂直な第2方向に沿って中心間距離が第1の長さになるように配置されており、
前記第1の長さは、前記センサ素子の前記第2方向の長さである素子長さの20%以下である請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記センサ素子は、複数の前記感応膜と、それぞれの前記感応膜に対応する複数対の前記電極と、いずれも前記周縁非角部に配置されており複数対の前記電極に電気的に接続する少なくとも複数対の前記電極パッド部を有し、
前記センサ素子は、複数対の前記電極パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部を介して前記基板に接続される請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項6】
複数対の前記電極パッド部は、前記周縁非角部のうち複数の前記感応膜の間の部分である膜間部分に配置されている請求項5に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記センサ素子は、前記周縁非角部に配置され、前記センサ素子における他の部分に対して絶縁されているダミーパッド部を有し、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部および前記ダミーパッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記ダミーパッド部を介して前記基板に接続される請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記センサ素子は、複数の前記感応膜と、それぞれの前記感応膜に対応する複数対の前記電極と、いずれも前記周縁非角部に配置されており複数対の前記電極に電気的に接続する少なくとも複数対の前記電極パッド部を有し、
前記センサ素子は、前記周縁非角部のうち複数の前記感応膜の間の部分である膜間部分に配置されており、前記センサ素子における他の部分に対して絶縁されているダミーパッド部を有し、
前記センサ素子は、複数対の前記電極パッド部および前記ダミーパッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記ダミーパッド部を介して前記基板に接続される請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項9】
枠状の保持部と、前記保持部の第1方向側の第1開口に配置される感応膜と、前記感応膜に接続する一対の電極と、前記感応膜を加熱する熱源と、を有するセンサ素子と、
前記センサ素子を実装する基板と、を有し、
前記センサ素子は、前記保持部における前記第1開口の周縁部に配置され、一対の前記電極に電気的に接続する少なくとも一対の電極パッド部と、前記周縁部に配置され、前記熱源に電気的に接続する熱源パッド部と、を有し、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記熱源パッド部を介して前記基板に接続されており、
一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部のうち少なくとも2つは、前記周縁部における前記第1方向に垂直な第2方向に沿って中心間距離が第1の長さになるように配置されており、
前記第1の長さは、前記センサ素子の前記第2方向の長さである素子長さの60%以下であるガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、たとえばガスの漏洩を検知するための装置であり、家電機器、産業用機器あるいは環境モニタリング機器等に搭載される。たとえば特許文献1に記載されているように、ガスセンサは、センサ素子と、センサ素子が搭載される基板とを有する。
【0003】
従来のセンサ素子は、雰囲気中のガス濃度等に応じて物理的特性を変化させるセンサ感応体と、その物理的特性の変化を電気信号として取り出すための電極とを有する。基板は、印刷回路基板などで構成され、センサ素子やこれを制御する制御素子を保持しつつ、各種電子機器のモジュール基板などに固定される。
【0004】
従来のガスセンサでは、温度や湿度の影響や、他の基板からの応力の伝搬により、基板に反りなどの変形が生じる場合がある。このようなガスセンサでは、基板の反りに伴う応力がセンサ素子に伝わり、センサ素子の電極間距離が変動するなどして、感度などのガスセンサの特性が変動し、ガスセンサの検出精度が低下するなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示では、基板の変形に起因するセンサ素子の特性変動を防止し得るガスセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点に係るガスセンサは、
枠状の保持部と、前記保持部の第1方向側の第1開口に配置される感応膜と、前記感応膜に接続する一対の電極と、を有するセンサ素子と、
前記センサ素子を実装する基板と、を有し、
前記センサ素子は、前記保持部における前記第1開口の周縁部であって前記センサ素子の角部を除く周縁非角部に配置され、一対の前記電極に電気的に接続する少なくとも一対の電極パッド部を有し、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部を介して前記基板に接続される。
【0008】
このようなガスセンサでは、センサ素子が、電極パッドが基板側を向く姿勢で、電極パッド部を介して基板に接続されている。したがって、このようなガスセンサは、電極パッドが基板とは反対側を向く従来技術とは異なり、センサ素子における基板側と反対側を向く面には、ワイヤボンディングの接続部のような基板に対する接続部分が形成されておらず、このような面が基板の変形に追従しないことによる課題が回避されている。また、基板に接続される電極パッド部は、センサ素子の角部を避けて、周縁非角部に配置されているため、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わることが防止される。したがって、このようなガスセンサは、基板の変形に起因するセンサ素子の電極間距離や特性変動を効果的に防止でき、また、センサ素子における基板側と反対側を向く面が、基板の変形に従来ほど追従しなくても、センサ素子と基板との接続箇所に、大きな応力が作用する問題を防止できる。
【0009】
また、たとえば、前記センサ素子は、前記感応膜を加熱する熱源と、前記周縁非角部に配置され、前記熱源に電気的に接続する熱源パッド部を有してもよく、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記熱源パッド部を介して前記基板に接続されてもよい。
【0010】
このようなガスセンサは、熱源により感応膜の温度を制御することにより、精度の高い検出を可能とする。また、基板と熱源との電気的接続を確保するための熱源パッド部も、電極パッド部と同様に、基板側を向く面の周縁非角部に配置されることにより、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わる問題を、効果的に防止できる。
【0011】
また、たとえば、一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部のうち少なくとも2つは、前記周縁部における前記第1方向に垂直な第2方向に沿って中心間距離が第1の長さになるように配置されていてもよく、
前記第1の長さは、前記センサ素子の前記第2方向の長さである素子長さの60%以下であってもよい。
また、たとえば、前記第1の長さは、前記センサ素子の前記第2方向の長さである素子長さの20%以下であってもよい。
【0012】
電極パッド部と熱源パッド部の合計数が3以上となる場合では、2つ以上のパッド部を第1方向に垂直な方向である第2方向に沿って配置することで、保持部の3つ以上の辺にパッド部を分散配置することを回避し、基板からセンサ素子への応力の伝搬を防止できる。また、パッド部の中心間距離を、素子長さに対して所定の比率以下とすることにより、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わる問題を、効果的に防止できる。
【0013】
また、たとえば、前記センサ素子は、複数の前記感応膜と、それぞれの前記感応膜に対応する複数対の前記電極と、いずれも前記周縁非角部に配置されており複数対の前記電極に電気的に接続する少なくとも複数対の前記電極パッド部を有してもよく、
前記センサ素子は、複数対の前記電極パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部を介して前記基板に接続されてもよい。
【0014】
複数の感応膜を有するガスセンサは、たとえば、一方の出力を参照値とすることなどにより、精度の高い検出を行うことができる。また、複数対の電極パッドを、いずれも基板側を向く面の周縁非角部に配置することにより、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わる問題を、効果的に防止できる。
【0015】
また、たとえば、複数対の前記電極パッド部は、前記周縁非角部のうち複数の前記感応膜の間の部分である膜間部分に配置されていてもよい。
【0016】
膜間部分に電極パッド部が配置されているガスセンサは、基板とセンサ素子との接続箇所が、角部から離れた位置に集中して配置されることになるため、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わる問題を、より効果的に防止できる。
【0017】
また、たとえば、前記センサ素子は、前記周縁非角部に配置され、前記センサ素子における他の部分に対して絶縁されているダミーパッド部を有してもよく、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部および前記ダミーパッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記ダミーパッド部を介して前記基板に接続されてもよい。
【0018】
電極パッド部に加えて、ダミーパッド部を用いて基板と接続するセンサ素子は、センサ素子と基板との接続強度を向上させることができる。また、ダミーパッド部も、電極パッド部と同様に、基板側を向く面の周縁非角部に配置されることにより、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わる問題を、効果的に防止できる。
【0019】
また、たとえば、前記センサ素子は、複数の前記感応膜と、それぞれの前記感応膜に対応する複数対の前記電極と、いずれも前記周縁非角部に配置されており複数対の前記電極に電気的に接続する少なくとも複数対の前記電極パッド部を有してもよく、
前記センサ素子は、前記周縁非角部のうち複数の前記感応膜の間の部分である膜間部分に配置されており、前記センサ素子における他の部分に対して絶縁されているダミーパッド部を有してもよく、
前記センサ素子は、複数対の前記電極パッド部および前記ダミーパッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記ダミーパッド部を介して前記基板に接続されてもよい。
【0020】
センサ素子が複数の感応膜を有する場合には、ダミーパッド部を感応膜の間の部分である膜間部分に配置することにより、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わる問題を、効果的に防止しながらセンサ素子と基板の接合強度を高めることができる。
【0021】
また、本開示の第2の観点に係るガスセンサは、枠状の保持部と、前記保持部の第1方向側の第1開口に配置される感応膜と、前記感応膜に接続する一対の電極と、前記感応膜を加熱する熱源と、を有するセンサ素子と、
前記センサ素子を実装する基板と、を有し、
前記センサ素子は、前記保持部における前記第1開口の周縁部に配置され、一対の前記電極に電気的に接続する少なくとも一対の電極パッド部と、前記周縁部に配置され、前記熱源に電気的に接続する熱源パッド部と、を有し、
前記センサ素子は、一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部が前記基板側を向く姿勢で、少なくとも前記電極パッド部および前記熱源パッド部を介して前記基板に接続されており、
一対の前記電極パッド部および前記熱源パッド部のうち少なくとも2つは、前記周縁部における前記第1方向に垂直な第2方向に沿って中心間距離が第1の長さになるように配置されており、
前記第1の長さは、前記センサ素子の前記第2方向の長さである素子長さの60%以下である。
【0022】
このようなガスセンサでは、センサ素子が、電極パッドが基板側を向く姿勢で、電極パッド部を介して基板に接続されている。したがって、このようなガスセンサは、電極パッドが基板とは反対側を向く従来技術とは異なり、センサ素子における基板側と反対側を向く面には、ワイヤボンディングの接続部のような基板に対する接続部分が形成されておらず、このような面が基板の変形に追従しないことによる課題が回避されている。また、基板に接続される電極パッド部および熱源パッド部は、2つ以上を第1方向に垂直な方向である第2方向に沿って配置することで、センサ素子の3つ以上の辺にパッド部を分散配置することを回避し、基板からセンサ素子への応力の伝搬を防止できる。また、パッド部の中心間距離を、素子長さに対して所定の比率以下とすることにより、基板の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子に伝わる問題を、効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るガスセンサの概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すガスセンサのセンサ素子における基板と対向する面を示す概念図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すガスセンサに含まれるセンサ素子の概略斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すガスセンサにおいて、センサ素子を実装方向とは逆方向にオフセットさせた状態を示す概念図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るガスセンサの概略的な斜視図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係るガスセンサの概略的な斜視図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態に係るガスセンサの概略的な斜視図である。
【
図12】
図12は、実施例と比較例に係るガスセンサを示す斜視図である。
【
図13】
図13は、実施例および比較例に係るガスセンサにおけるセンサ素子で生じたZ方向変位量の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係るガスセンサ101を示す概略斜視図である。ガスセンサ101は、たとえばガスの漏洩を検知するための装置であり、家電機器、産業用機器あるいは環境モニタリング機器等に搭載される。
図1に示すように、ガスセンサ101は、センサ素子10と、センサ素子10を実装ずる基板80とを有する。
【0026】
図1に示すように、センサ素子10は、ベース20等を含む枠状の保持部12と、保持部12の第1方向D1(Z軸負方向)側の第1開口13に配置される感応膜60と、感応膜60に接続する一対の電極50a、50b(
図5参照)を有する。
【0027】
図2は、
図1に示すガスセンサ101におけるセンサ素子10を、基板80側(Z軸負方向側)から、基板80を透視して観察した斜視図である。
図2に示すように、センサ素子10は、少なくとも一対(センサ素子10では一対)の電極パッド部71aと、2つの熱源パッド部72bとを有する。電極パッド部71a、71bと、熱源パッド部72a、72bとは、保持部12における第1開口13の周縁部14に配置されている。
【0028】
図8は、
図1に示すガスセンサ101において、センサ素子10を基板80に対して、実装方向とは逆方向(Z軸正方向)側に、オフセットさせた概念図である。
図8に示すように、基板80においてセンサ素子10に対向する面である実装面80aには、センサ素子10を接続および固定するための基板パッド部81が形成されている。
【0029】
図8に示す基板80の基板パッド部81は、
図2に示すセンサ素子10の電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bに対応して備えられている。
図1、
図2および
図8から理解できるように、センサ素子10は、一対の電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bが基板80側を向く姿勢で、少なくとも電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bを介して基板80に接続される。
【0030】
センサ素子10は、基板80に対して、たとえばフリップチップボンディングなどにより実装することができるが、センサ素子10の基板80に対する実装方法は、フリップチップボンディング以外の方法であってもよい。また、基板パッド部81と、電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bとの電気接続は、たとえばACP接続や、ACF接続や、超音波接続などが例示されるが、これら以外の接続方法を用いてもよい。
【0031】
なお、
図1に示すように、ガスセンサ101およびセンサ素子10の説明では、センサ素子10の実装方向(実装面80aの法線方向)をZ軸方向、Z軸方向に垂直であって、電極パッド部71aと熱源パッド部72aまたは電極パッド部71bと熱源パッド部72bが並ぶ方向をY軸方向、Z軸方向およびY軸方向に垂直な方向をX軸方向として説明を行う。
【0032】
図3は、ガスセンサ101に含まれるセンサ素子10を、Z軸負方向側から見た斜視図である。センサ素子10は、熱伝導式のセンサ素子であり、CO2、H2、HeあるいはCO等のガスを検知対象とする。センサ素子10は、略直方体形状の外形状を有しており、実装方向(Z軸方向)に平行な方向からみて略矩形である。
【0033】
図4は、センサ素子10の分解斜視図である。
図4に示すように、センサ素子10は、ベース20と、3層の絶縁膜30a、30b、30cと、熱源40と、電極50a、50bと、感応膜60と、電極パッド部71a、71bと、熱源パッド部72a、72bとを有する。
【0034】
図3に示すように、センサ素子10は、枠状の保持部12が、感応膜60などを両持ち梁状に固定するエアブリッジ構造を有する。保持部12には、
図4に示すベース20と、各絶縁膜30a~30cの絶縁膜周縁部36など含まれる。
【0035】
図4に示すように、ベース20は、中空の柱状体若しくは矩形の略リング形状を有する。ベース20をZ軸方向から見た形状は、正方形である。ただし、ベース20の平面視形状は、これに限定されず、長方形あるいはその他の多角形でもよい。また、ベース20の高さは、
図4に示す高さに限定されるものではない。ベース20の第1方向D1(Z軸負方向)側の周縁部であるベース周縁部22に重ねて、絶縁膜30a~30cの絶縁膜周縁部36の少なくとも一部や、各パッド部71a、71b、72a、72bなどの少なくとも一部が配置される。
【0036】
図3に示すように、ベース20は、保持部12の第1開口13に配置される感応膜60や、絶縁膜30a~30cの絶縁膜本体部31等を、支持可能な機械的強度を有する。また、ベース20は、エッチングなどの微細加工に適した材料で構成されていることが好ましい。ベース20を構成する材料としては、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板あるいはガラス基板等が例示される。
【0037】
図4に示す絶縁膜30a~30cは、絶縁性を有する材料で構成され、互いに略同一の平面形状を有し、Z軸方向から見て絶縁膜30a~30cの位置および姿勢が一致するように、Z軸方向に沿って重なるように配置される(センサ素子10の側面図である
図6参照)。絶縁膜30a~30cは、膜体からなり、公知の成膜法(スパッタ法やCVD法等)によって作製される。絶縁膜30a、絶縁膜30bおよび絶縁膜30cは、この順番で、ベース20のベース周縁部22に積層される(
図4参照)。また、
図4に示すように、絶縁膜30a~30cは、絶縁膜本体部31と、絶縁膜梁部32と、絶縁膜周縁部36と、孔部37とを有する。
【0038】
図4に示すように、絶縁膜本体部31は、Z軸方向から見て略矩形状を有する。絶縁膜本体部31は、枠状の保持部12の第1開口13(
図3参照)に配置され、ベース20の内周よりも内側に位置する。絶縁膜本体部31の形状は、
図4に示す形状に限定されず、長方形、その他の多角形、円形あるいは楕円形等であってもよい。絶縁膜周縁部36は、ベース20の形状に対応する略リング形状を有し、少なくとも一部がZ軸方向から見てベース周縁部22の一部に重複しており、ベース周縁部22に接続する。絶縁膜周縁部36は、絶縁膜本体部31との間に所定の間隔を空けつつ、絶縁膜本体部31の外周を囲むように配置される。
【0039】
図4に示すように、絶縁膜梁部32は、絶縁膜本体部31と絶縁膜周縁部36との間に位置し、それぞれ絶縁膜本体部31の4つの角部と、絶縁膜周縁部36の4つの角部とを接続している。
図3に示すように、絶縁膜梁部32は、ベース20の第1開口13において、絶縁膜本体部31を支持する。
図4に示すように、絶縁膜本体部31と絶縁膜周縁部36との間には、4つの絶縁膜梁部32で仕切られた4つの孔部37が形成されている。なお、絶縁膜30a~30cにおける絶縁膜梁部32の数は、4つに限定されるものではない。
【0040】
絶縁膜30a~30cの各々の厚みは、特に限定されないが、たとえば0.05~1.5μmである。絶縁膜30a~30cを構成する材料としては、酸化シリコンあるいは窒化シリコン等が例示される。絶縁膜30a~30cは、同一の材料で構成されていることが好ましい。絶縁膜30a~30cの界面において、密着性が向上し、絶縁膜30a~30cの機械的強度を確保することができるからである。なお、絶縁膜30a~30cは、異なる材料で構成されていてもよい。また、絶縁膜30a~30cは、同一の厚みを有していてもよく、異なる厚みを有していてもよい。
【0041】
図4に示すように、熱源40は、絶縁膜30bと絶縁膜30cとの間に配置される(
図7参照)。熱源40は、対象ガスの検知時において、感応膜60の温度を所定温度(動作温度)まで加熱することができる。熱源40は、抵抗体などの導電性の膜体などで構成され、公知の成膜法によって作製される。熱源40は、熱源本体41と、引出部42、43とを有する。
【0042】
図4に示すように、熱源本体41は、ミアンダパターンを有し、絶縁膜30bの絶縁膜本体部31と絶縁膜30cの絶縁膜本体部31の間に配置されている。熱源本体41をミアンダパターンとすることにより、感応膜60を均質に加熱することができる。また、センサ素子10は、エアブリッジ構造を有するため、感応膜60の加熱時において、熱源40の消費電力を抑えることができる。なお、熱源40の形状は、たとえばエッチング(パターニング)によって付与される。絶縁膜30a~30c等の形状についても同様である。
【0043】
図5は、センサ素子10の配線構造を示す概念図であり、センサ素子10をZ軸負方向側から見た平面図である。
図5に示すように、熱源40の引出部42は、熱源本体41の一端に接続されており、絶縁膜30aと絶縁膜30bの間において、絶縁膜梁部32の1つを介して、保持部12における周縁部14まで延在している。引出部43は、熱源本体41の他端に接続されており、絶縁膜30aと絶縁膜30bの間において、絶縁膜梁部32の他の1つを介して、保持部12における周縁部14まで延在している。
【0044】
熱源40は、比較的高い融点を有する導電性材料で構成されていることが好ましい。熱源40を構成する材料としては、モリブデン、白金、金、タングステン、タンタル、パラジウム、イリジウム、または上記の元素のうち1種以上を含む合金が例示される。特に、高精度なドライエッチング(イオンミリングなど)が可能であり、耐腐食性が高い白金が好ましい。熱源40を白金で構成する場合、絶縁膜30aと熱源40との間にチタンなどからなる密着層を形成することが好ましい。
【0045】
図4に示すように、電極50a、50bは、それぞれ屈曲形状を有し、絶縁膜30bと感応膜60との間に配置される(
図7参照)。電極50a、50bは、感応膜60の物理的特性(抵抗値)の変化を電気信号として取り出すためのものである。電極50a、50bは、たとえば導電性の膜体などで構成され、公知の成膜法によって作製される。
【0046】
図4に示すように、電極50aと電極50bとは、絶縁膜30bの絶縁膜本体部31と感応膜60との間において、所定の間隔を空けて、互いに対向して配置されている。
図5に示すように、電極50aの一部は、絶縁膜梁部32と感応膜梁部62の間を通って、保持部12の周縁部14の位置まで延在している。また、電極50bの一部は、電極50aの一部と同様に、絶縁膜梁部32と感応膜梁部62の間(ただし、電極50aが通るものとは異なる)を通って、保持部12の周縁部14の位置まで延在している。なお、
図5では、電極50a、50bと熱源40とを区別するために、電極50a、50bをドットパターンで表示している。
【0047】
電極50a、50bは、比較的高い融点を有する導電性材料で構成されていることが好ましい。電極50a、50bを構成する材料としては、モリブデン、白金、金、タングステン、タンタル、パラジウム、イリジウム、または上記の元素のうち1種以上を含む合金が例示される。
【0048】
図3に示すように、感応膜60は、雰囲気中のガス濃度等に応じて放熱特性を変化させるとともに、その放熱特性の変化に応じて抵抗値を変化させる性質を有する。感応膜60は、サーミスタ膜や白金膜等で構成されており、公知の成膜法によって作製される。サーミスタ膜を構成する材料としては、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコンあるいはゲルマニウム等が例示される。
【0049】
図4に示すように、感応膜60は、感応膜本体部61と、4つの感応膜梁部62とを有する。感応膜本体部61は、絶縁膜30a~30cの絶縁膜本体部31と対応する平面形状(好ましくは同一平面形状)を有する。感応膜梁部62は、絶縁膜30a~30cの絶縁膜梁部32と対応する平面形状(好ましくは同一平面形状)を有する。それゆえ、Z軸方向に関して、感応膜本体部61は、絶縁膜本体部31と対応する位置に配置され、感応膜梁部62は、絶縁膜梁部32と対応する位置に配置される。
【0050】
感応膜本体部61は、電極50a、50bと接するように配置され、電極50a、50bに電気的に接続されている。感応膜60と電極50aおよび電極50bとは、一体となって、絶縁膜30bと絶縁膜30cとの間に配置される(
図4参照)。
【0051】
図4に示す電極パッド部71a、71bは、一対の電極50a、50bに、電気的に接続する。
図5に示すように、電極パッド部71aは、保持部12の周縁部14において、電極50aの端部に対して、図示しないスルーホールを介して、電気的に接続している。また、電極パッド部71bも、電極パッド部71aと同様に、保持部12の周縁部14において、電極50bの端部に対して、図示しないスルーホールを介して、電気的に接続している。
【0052】
図3および
図5に示すように、電極パッド部71a、71bは、保持部12における第1開口13の周縁部14であって、センサ素子10の角部11を除く周縁非角部14aに配置される。ここで、より具体的には、保持部12における第1開口13の周縁部14は、Z軸負方向から見て、少なくとも1つの絶縁膜30aの孔部37および孔部37の外縁延長線37aより、感応部60の中心60aから離間する部分であり、
図4に示すベース周縁部22や絶縁膜30a~30cの絶縁膜周縁部が含まれる。
【0053】
また、
図3および
図5に示すように、センサ素子10の角部11は、センサ素子10の4つのコーナーの周辺部分であり、より具体的には、2本の外縁延長線37aより感応膜60の中心60aから離間する部分が含まれる。電極パッド部71a、71bは、周縁部14のうち角部11を除く周縁非角部14aに配置される。なお、
図3では、周縁非角部14aの領域を分かりやすくするために、周縁非角部14aをドットパターンで表示している。また、
図9~
図11に示すセンサ素子210、310、410のように、複数の第1開口13および感応部60を有する場合は、2本の外縁延長線37aより感応膜60の中心60aから離間する部分であっても、第2方向D2(Y軸方向)に関して2つの感応膜60の間にある部分は、角部11に含まれない。
【0054】
図4に示す熱源パッド部72a、72bは、熱源40に電気的に接続する。
図5に示すように、熱源パッド部72aは、保持部12の周縁部14において、熱源40の引出部42の端部に対して、図示しないスルーホールを介して、電気的に接続している。また、熱源パッド部72bも、熱源パッド部72aと同様に、保持部12の周縁部14において、引出部43の端部に対して、図示しないスルーホールを介して、電気的に接続している。
【0055】
図3および
図5に示すように、熱源パッド部72a、72bも、電極パッド部71a、71bと同様に、保持部12における周縁非角部14aに配置される。また、センサ素子10では、電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bで構成される4つのパッド部71a、71b、72a、72bは、周縁非角部14aに含まれる4つの辺のうち、互いに平行である2つの辺に、2つずつ配置されている。
【0056】
図5に示すように、一対の電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bのうち少なくとも2つは、周縁部14における第1方向D1(Z軸負方向)に垂直な第2方向D2(Y軸方向)に沿って、中心間距離が第1の長さL1になるように配置されることが好ましい。より具体的には、電極パッド部71aと熱源パッド部72aとは、周縁非角部14aに含まれる4つの辺のうち、感応膜60の中心60aよりX軸負方向側に位置しておりY軸方向に延びる辺に、配置されている。また、電極パッド部71bと熱源パッド部72bとは、周縁非角部14aに含まれる4つの辺のうち、感応膜60の中心60aよりX軸正方向側に位置しておりY軸方向に延びる辺に、配置されている。
【0057】
図5に示すように、電極パッド部71bと熱源パッド部72bとの中心間距離である第1の長さL1は、センサ素子10の第2方向D2(Y軸方向)の長さである素子長さL2の60%以下であることが好ましい。また、電極パッド部71aと熱源パッド部72aとの中心間距離についても、電極パッド部71bと熱源パッド部72bとの中心間距離と同様である。
【0058】
電極パッド部71a、71bと熱源パッド部72a、72bの合計数が3以上となる場合では、2つ以上のパッド部71a、71b、72a、72bを第2方向D2に沿って配置することで、保持部12の3つ以上の辺にパッド部71a、71b、72a、72bを分散配置することを回避できる。このようなセンサ素子10は、基板80に対して実装した状態において基板80に変形が生じた場合にも、基板80からセンサ素子10へ伝わる応力を小さくすることができる。また、第2方向D2に沿って配置されるパッド部71a、72aおよびパッド部71b、72bの中心間距離である第1の長さL1を、素子長さL2に対して所定の比率以下とすることにより、センサ素子10の4つの角部11にパッド部を分散配置する場合などに比較して、基板80の変形に伴う応力が、センサ素子10に伝わる問題を効果的に防止できる。
【0059】
また、基板80からセンサ素子10へ伝わる応力を小さくする観点からは、パッド部71a、72aおよびパッド部71b、72bの中心間距離である第1の長さL1は、素子長さL2の20%以下とすることも好ましい(
図11等参照)。なお、第1の長さL1を、素子長さL2に対して所定の比率以下とすることについては、後ほど実施例を挙げて詳述する。
【0060】
電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bは、たとえばメッキ、リフトオフ法あるいは金属ペースト印刷等の方法により、絶縁膜30aの絶縁膜周縁部36に形成される。
【0061】
図1および
図8に示す基板80は、印刷回路基板などで構成される。基板80は、略平板形状を有する板体で構成されているが、たとえばセンサ素子10を内蔵するためのパッケージ基板であってもよい。
【0062】
図1に示すように、センサ素子10は、
図3等に示す電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bを、
図8に示す基板パッド部81に接続することにより、基板80に対して固定される。
【0063】
図1、
図2および
図8等に示すように、第1実施形態に係るガスセンサ101は、センサ素子10が、電極パッド部71a、71bが基板80側を向く姿勢で、電極パッド部71を介して基板80に接続されている。このようなガスセンサ101は、電極パッド部が基板とは反対側を向く従来技術とは異なり、センサ素子10における基板80側と反対側を向く面(Z軸正方向側の面)には、ボンディングワイヤのような基板に対する接続部分を形成しなくてよい。したがって、ガスセンサ101では、センサ素子10におけるZ軸正方向側の面が基板80に対して拘束されず、また、この面が基板80の変形に追従しないことによる課題が回避されている。
【0064】
これに加えて、
図3および
図5に示すように、基板80に接続される電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bは、センサ素子10の角部11を避けて、周縁非角部14aに配置されている。このため、基板80の反りなどの変形に伴う応力が、センサ素子10に伝わることが防止される。したがって、このようなガスセンサ101は、基板80の変形に起因するセンサ素子10の電極間距離の変化や、これに伴う特性変動を、効果的に防止できる。また、センサ素子10における基板80側と反対側を向く面が、基板80の変形に従来ほど追従しなくても、センサ素子10と基板80との接続箇所に、大きな応力が作用する問題を防止し、接続箇所の損傷を防止できる。
【0065】
したがって、ガスセンサ101は、基板80の変形に起因するセンサ素子10の特性変動を防止することができ、温度や湿度により基板80の変形が生じる状況下においても、精度よく検出を行うことができる。
【0066】
第2実施形態
図9は、第2実施形態に係るガスセンサに含まれるセンサ素子210を示す概略斜視図である。第2実施形態に係るセンサ素子210は、複数(
図9では2つ)の感応膜60を有し、
図3等に示すセンサ素子10を2つY軸方向に連結したような構造を有する。ただし、センサ素子210は、センサ素子10が有するのと略同様の感応膜60、電極50a、50b、熱源40(周縁部214における電極50a、50bおよび引出部42、43の配線形状は若干異なる)を有する。したがって、センサ素子210の説明では、センサ素子10との相違点を中心に行い、
図4に示される内部構造のようなセンサ素子10との共通点については、説明を省略する。
【0067】
図9に示すように、センサ素子210は、複数(実施形態では2つ)の感応膜60と、それぞれの感応膜60に対応する複数対(実施形態では2対)の電極50a、50b(
図4参照)と、複数対(実施形態では2対)の電極50a、50bに電気的に接続する少なくとも複数対(実施形態では2対)の電極パッド部271a、271bを有する。また、内部構造であるため
図9には示されていないものがあるが、センサ素子210は、それぞれの感応膜60に対応して、複数(実施形態では2つ)の熱源40と、熱源40に電気的に接続する少なくとも複数対(実施形態では2対)の熱源パッド部272a、272bを有する。
【0068】
図9に示すように、センサ素子210は、Z軸方向から見て略長方形の平面形状を有する。センサ素子のベース220は、
図4に示すベース20を2つY軸方向に連結した構造を有する。絶縁膜230aについても、ベース220と同様に、
図4に示す絶縁膜30aを2つY軸方向に連結した構造を有する。
図9には示されていないが、絶縁膜230aの下層の絶縁膜(
図4に示す絶縁膜30b、30cに対応)についても、絶縁膜230aと同様の平面形状を有する。
【0069】
センサ素子210の保持部212には、絶縁膜230aの絶縁膜周縁部236およびベース220などが含まれる。保持部212には、Y軸方向に間隔を空けて、2つの第1開口13が形成されており、各第1開口13に、感応膜60が配置されている。なお、2つの第1開口13の間隔は、特に限定されず、例えば、センサ素子210において、第2方向D2(Y軸方向)に配列される4つの孔部37が、略等間隔に配置されていてもよい。また、これとは異なり、第2方向D2に配列される4つの孔部37は、中央の間隔L3が両脇の間隔L4より広くてもよく、狭くてもよい。
【0070】
図9に示す電極パッド部271a、271bは、保持部212の周縁部214において、電極50a、50bの端部(
図5参照)に対してスルーホールを介して、電気的に接続している。また、
図9に示す熱源パッド部272a、272bも、電極パッド部271a、271bと同様に、保持部212の周縁部214において、引出部42、43に対してスルーホールを介して、電気的に接続している。
【0071】
図9に示すように、電極パッド部271a、271bはいずれも、保持部212の第1開口13の周縁部214であって、センサ素子210の角部211を除く周縁非角部214aに配置される。
図9では、周縁非角部214aを、理解しやすくするためにドットパターンで強調している。なお、センサ素子210の角部211、周縁部214、周縁非角部214a等は、センサ素子10の角部11、周縁部14、周縁非角部14aと同様に規定される。
【0072】
図9に示すように、熱源パッド部272a、272bも、電極パッド部271a、271bと同様に、いずれも周縁非角部214aに配置される。また、センサ素子210では、電極パッド部271a、271bおよび熱源パッド部272a、272bは、センサ素子10のY軸中心位置を基準として対称に配置されていてもよく、非対称に配置されていてもよい。
【0073】
図9に示すように、センサ素子210では、8つのパッド部のうち4つのパッド部271b、272bが、第2方向D2(Y軸方向)に沿って配置されている。また、8つのパッド部のうち残りの4つのパッド部271a、272aが、他のパッド部271b、272bに対してセンサ素子10のX軸方向の中心位置を挟んで、第2方向D2(Y軸方向)に沿って配置されている。
【0074】
センサ素子210のように、第2方向D2に沿って3つ以上のパット部271b、272bが配列される場合、第2方向D2に沿って配列されるパット部271b、272bのうち任意の2つについての第1の長さL1(中心間距離)が、素子長さL2の60%以下であることが好ましい。パッド部271a、272aについても同様である。全てのパット部271b、272b、271a、272aを、素子長さL2について所定の比率以下の領域に集中して配置することにより、素子長さL2が長いセンサ素子210においても、基板の変形に起因するセンサ素子210の特性変動を、効果的に防止できる。
【0075】
図9に示すセンサ素子210は、
図2に示すセンサ素子10と同様に、複数対の電極パッド部271a、271bが基板側を向く姿勢で、少なくとも電極パッド部271a、271bを介して基板に接続される。センサ素子210を実装する基板は、電極パッド部271a、271bおよび熱源パッド部272a、272bに対応する基板パッド部(
図8参照)を有しており、電極パッド部271a、271bおよび熱源パッド部272a、272bは、基板パッド部に接続される。
【0076】
その他、センサ素子210を有するガスセンサは、第1実施形態に係るガスセンサ101との共通点については、ガスセンサ101と同様の効果を奏する。
【0077】
第3実施形態
図10は、第3実施形態に係るガスセンサに含まれるセンサ素子310を示す概略斜視図である。第3実施形態に係るセンサ素子310は、ダミーパッド373を有する点で
図9に示すセンサ素子210とは異なるが、その他の点ではセンサ素子210と同様である。したがって、センサ素子310の説明では、センサ素子210との相違点を中心に行い、第2実施形態に係るセンサ素子210との共通点については、説明を省略する。
【0078】
図10に示すように、センサ素子310のダミーパッド部373は、他のパッド部271a、271b、272a、272bと同様に、保持部212における周縁部214のうち、センサ素子310の角部211を除く周縁非角部214aに配置されている。ダミーパッド部373は、絶縁膜230aの絶縁膜周縁部236における第1方向D1側の表面に設けられており、センサ素子310の周縁部214における他の導電部分(たとえば、電極50a、50bの端部や引出部42、43等(
図4参照))に対して絶縁されている。
【0079】
センサ素子310は、電極パッド部271a、271b、熱源パッド部272a、272bおよびダミーパッド部373が基板側を向く姿勢で、電極パッド部271a、271b、熱源パッド部272a、272bおよびダミーパッド部373を介して、基板に接続される。なお、センサ素子310を実装する基板は、電極パッド部271a、271b、熱源パッド部272a、272bおよびダミーパッド部373が各々対応する基板パッド部(
図8参照)を有する。
【0080】
ダミーパッド部373は、パッド部271a、271b、272a、272bと同様に、たとえばメッキ、リフトオフ法あるいは金属ペースト印刷等の方法により、絶縁膜周縁部236に形成される。ダミーパッド部373は、センサ素子310の他の部分に対して電気的に絶縁されており、基板からの電力供給は行われないが、センサ素子310の基板に対する固定に寄与する。
【0081】
図10に示すように、ダミーパッド部373は、周縁非角部214aのうち、Y軸方向に関して2つの感応膜60の間の部分である膜間部分314bに配置されている。膜間部分314bは、絶縁膜周縁部236の中でも角部211からの距離が長い部分であるため、膜間部分314bにダミーパッド部373を配置することで、センサ素子310を基板に実装した状態において、基板80の変形に伴う応力が、センサ素子310に伝わる問題を効果的に防止しながらセンサ素子310と基板の接合強度を高めることができる。なお、
図10では、膜間部分314bを、理解しやすくするためにドットパターンで強調している。
【0082】
その他、センサ素子310を有するガスセンサは、センサ素子310を有するガスセンサと同様の効果を奏する。
【0083】
第4実施形態
図11は、第4実施形態に係るガスセンサに含まれるセンサ素子410を示す概略斜視図である。第4実施形態に係るセンサ素子410は、電極パッド部471aおよび熱源パッド部472aの全てが、膜間部分414bに配置される点などで
図9に示すセンサ素子210とは異なるが、その他の点ではセンサ素子210と同様である。したがって、センサ素子410の説明では、センサ素子210との相違点を中心に行い、第2実施形態に係るセンサ素子210との共通点については、説明を省略する。
【0084】
図11に示すように、センサ素子410は、センサ素子210と同様に、複数の感応膜60と、それぞれの感応膜60に対応する複数対(実施形態では2対)の電極50a、50b(
図4参照)と、複数対(実施形態では2対)の電極50a、50bに電気的に接続する少なくとも複数対(実施形態では2対)の電極パッド部471a、471bを有する。また、内部構造であるため
図11には示されていないものがあるが、センサ素子410は、それぞれの感応膜60に対応して、複数(実施形態では2つ)の熱源40と、熱源40に電気的に接続する少なくとも複数対(実施形態では2対)の熱源パッド部472a、472bを有する。
【0085】
図11に示すように、センサ素子410では、感応膜60および感応膜60が配置される第1開口13の大きさは、
図9に示すセンサ素子210と同様である。一方、センサ素子410は、絶縁膜430aの孔部37の外縁から素子外縁410aまでの幅W1が、センサ素子210より狭くなっている。したがって、センサ素子410は、絶縁膜周縁部436およびベース420の平面形状がセンサ素子210とは異なっており、Z軸方向から見た場合、絶縁膜周縁部436およびベース420の外形状が、
図9に示す絶縁膜周縁部236およびベース220より小さい。
【0086】
図11に示すように、電極パッド部471a、471bおよび熱源パッド部472a、472bはいずれも、保持部412の第1開口13の周縁部414であって、センサ素子410の角部411を除く周縁非角部414aに配置される。さらに、電極パッド部471a、471bおよび熱源パッド部472a、472bはいずれも、周縁非角部414aのうち、Y軸方向に関して複数の感応膜60の間の部分である膜間部分414bに配置される。
【0087】
図11に示すセンサ素子410は、
図9に示すセンサ素子210と同様に、複数対の電極パッド部471a、471bおよび熱源パッド部472a、472bが基板側を向く姿勢で、少なくとも電極パッド部271a、271bおよび熱源パッド部472a、472bを介して基板に接続される。
【0088】
センサ素子410は、電極パッド部471a、471bおよび熱源パッド部472a、472bを膜間部分414bに配置することにより、絶縁膜430aの孔部37の外縁から素子外縁410aまでの幅W1を、この部分にパッド部を配置するセンサ素子210に比べて狭くできる。したがって、このようなセンサ素子410は、小型化に関して有利である。また、センサ素子410は、センサ素子410の外形状の拡大を回避しつつ、電極パッド部471a、471bおよび熱源パッド部472a、472bの面積を広くできるため、基板に対する接合強度を高めることができる。
【0089】
その他、センサ素子410を有するガスセンサは、第2実施形態に係るセンサ素子210を有するガスセンサと同様の効果を奏する。
【0090】
実施例
以下、上述したガスセンサ101に関する実施例を挙げてさらに詳細に説明をおこなうが、ガスセンサ101の技術的範囲は、これらの実施例のみには限定されない。
【0091】
(サンプル)
図12は、実施例と比較例に係るガスセンサに用いたセンサ素子を示す斜視図である。
図12(a)に示す実施例に係るガスセンサ101としては、
図2等を用いて説明した第1実施形態に係るガスセンサ101と同様のセンサ素子10および基板80を用いた。
【0092】
また、実施例に係るガスセンサ101として、パッド部72a、71aまたはパッド部71b、72bの中心間距離である第1の長さL1が異なる4種類のサンプルを準備した。準備したサンプルにおける第1の長さL1は、素子長さL2に対して13%、30%、47%、63%とした。なお、いずれのサンプルでも、パッド部72a、71a、71b、72bは、周縁非角部14aに配置した。
【0093】
図12(b)に示す比較例に係るガスセンサ901では、電極パッド部971a、971bおよび熱源パッド部972a、972bを、センサ素子910における周縁部914であって、センサ素子910の角部に配置したものを用いた。比較例に係るサンプルにおいて、パッド部972a、971aまたはパッド部971b、972bの中心間距離である第1の長さL1は、素子長さL2に対して83%であった。ガスセンサ901は、電極パッド部971a、971bおよび熱源パッド部972a、972bの配置と、基板980における基板パッド部の配置を除き、実施例に係るガスセンサ101と同様である。
【0094】
(評価)
実施例および比較例の各サンプルについて、ガスセンサ101、901の基板80、980に一定の反りが生じさせ、その場合においてセンサ素子10、910に生じる変形(ΔZ方向変位量)を計測した。
図13は、横軸を各サンプルの第1の長さL1(素子長さL2に対する比率)とし、各サンプルのΔZ方向変位量(縦軸)をプロットしたものである。なお、
図13におけるΔZ方向変位量(縦軸)の値は、相対値(無次元)である。
【0095】
図13からは、パッド部72a、71a、71b、72bを周縁非角部14aに配置する実施例では、パッド部972a、971a、971b、972bを角部に配置する比較例に比べて、基板80に所定の反りが生じた場合におけるセンサ素子10の変形量が小さいことを確認できた。また、実施例同士の比較では、サンプルの第1の長さL1が短いほど、センサ素子10の変形量が小さい。また、第1の長さL1を素子長さL2の60%以下とすることにより、比較例に対して約20%以上の変形抑制効果が見られ、第1の長さL1を素子長さL2の20%以下とすることにより、比較例に対して約90%以上の変形抑制効果が見られた。
【0096】
以上、実施形態および実施例等を挙げて本開示に係るガスセンサ101およびセンサ素子10、210、310、410を説明したが、本開示に係るガスセンサは、多くの他の実施形態や変形例を含むことは言うまでもない。たとえば、センサ素子10、210、310、410は、3つまたは4つ以上の感応膜を有していてもよい。また、実施形態では、電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bを、第2方向D2の中央付近に配置する例を示したが、パッド部をいずれか一方の角部11に近づけて配置することも考えられる。
【0097】
また、
図2等に示すセンサ素子10では、電極パッド部71a、71bおよび熱源パッド部72a、72bが基板80側を向く姿勢で基板80に実装されるが、これとは異なり、電極パッド部71a、71bだけが、基板80側を向く姿勢で実装されてもよい。たとえば、基板80側を向く電極パッド部71a、71bがフリップボンディングにより基板80に接続され、他の方向を向く熱源パッドが、ワイヤボンディングなどにより基板80に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0098】
101…ガスセンサ
10、210、310、410、910…センサ素子
410a…素子外縁
11、211、411…角部
12、212、412…保持部
13…第1開口
14、214、414、914…周縁部
14a、214a、414a…周縁非角部
20、220、420…ベース
22…ベース周縁部
30a、30b、30c、230a、430a…絶縁膜
31…絶縁膜本体部
32…絶縁膜梁部
36、236、436…絶縁膜周縁部
37…孔部
37a…外縁延長線
40…熱源
41…熱源本体
42、43…引出部
50a、50b…電極
60…感応膜
60a…中心
61…感応膜本体部
62…感応膜梁部
71a、71b、271a、271b、471a、471b、971a、971b…電極パッド部
72a、72b、272a、272b、472a、472b、972a、972b…熱源パッド部
80…基板
80a…実装面
81…基板パッド部
D1…第1方向
D2…第2方向
L1…第1の長さ
L2…素子長さ
L3、L4…間隔
W1…幅
314b、414b…膜間部分
373…ダミーパッド部