(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148662
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】半導体集積回路、電源管理回路および電子機器
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20231005BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
H02M3/00 H
G05F1/56 310N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056806
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 忠之
【テーマコード(参考)】
5H430
5H730
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB05
5H430BB09
5H430BB11
5H430CC05
5H430EE04
5H430EE18
5H430FF02
5H430FF13
5H430GG08
5H430GG17
5H430HH03
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB11
5H730BB57
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG07
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】小型化および低消費電力化が可能な半導体集積回路を提供する。
【解決手段】リニアレギュレータ110は、電源ライン102に電源電圧V
DDを供給する。リニアレギュレータ110は、能力が高い第1モードと消費電力が低い第2モードとが切りかえ可能である。デジタル回路130は、電源ライン102と接続され、クロック信号CLKに応じて信号処理を実行する順序回路132を含む。順序回路132が動作する期間、オシレータ120はイネーブル状態となり、リニアレギュレータ110が第1モードで動作する。順序回路132が停止する期間、オシレータ120はディセーブル状態となり、リニアレギュレータ110が第2モードで動作する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外付けの出力キャパシタが接続されない電源ラインと、
前記電源ラインに電源電圧を供給するとともに、能力が高い第1モードと消費電力が低い第2モードとが切りかえ可能なリニアレギュレータと、
前記電源ラインと接続され、イネーブル状態においてクロック信号を生成し、ディセーブル状態において停止するオシレータと、
前記電源ラインと接続され、前記クロック信号に応じて信号処理を実行する順序回路を含むデジタル回路と、
を備え、
前記順序回路が動作する期間、前記オシレータは前記イネーブル状態となり、前記リニアレギュレータが前記第1モードで動作し、
前記順序回路が停止する期間、前記オシレータは前記ディセーブル状態となり、前記リニアレギュレータが前記第2モードで動作する、半導体集積回路。
【請求項2】
前記リニアレギュレータは、
差動アンプと、
前記差動アンプの出力電流を増幅するカレントミラー回路と、
を含む、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記カレントミラー回路は、ミラー比が可変に構成され、
前記第2モードにおいて、前記ミラー比が小さくなる、請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記差動アンプの基準電流が可変であり、
前記第2モードにおいて前記基準電流が減少する、請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
外付けの出力キャパシタが接続されない電源ラインと、
前記電源ラインに電源電圧を供給するとともに、能力が高い第1モードと消費電力が低い第2モードとが切りかえ可能なリニアレギュレータと、
前記電源ラインと接続され、イネーブル状態においてクロック信号を生成し、ディセーブル状態において停止するオシレータと、
複数の電源回路と、
前記電源ラインと接続され、前記クロック信号に応じて前記複数の電源回路を制御する制御ロジックと、
を備え、
前記複数の電源回路のひとつはDC/DCコンバータであり、当該DC/DCコンバータがパルス幅変調モードで動作する期間、前記オシレータは前記イネーブル状態となり、前記リニアレギュレータが前記第1モードで動作し、
前記DC/DCコンバータが、パルス周波数変調モードで動作する期間、前記オシレータは前記ディセーブル状態となり、前記リニアレギュレータが前記第2モードで動作する、電源管理回路。
【請求項6】
前記リニアレギュレータは、
差動アンプと、
前記差動アンプの出力電流を増幅するカレントミラー回路と、
を含む、請求項5に記載の電源管理回路。
【請求項7】
前記カレントミラー回路は、ミラー比が可変に構成され、
前記第2モードにおいて、前記ミラー比が小さくなる、請求項6に記載の電源管理回路。
【請求項8】
前記差動アンプの基準電流が可変であり、
前記第2モードにおいて前記基準電流が減少する、請求項6に記載の電源管理回路。
【請求項9】
ひとつの半導体基板に集積化される、請求項5から8のいずれかに記載の電源管理回路。
【請求項10】
請求項5から8のいずれかに記載の電源管理回路を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)には、内部電源回路を備えるものがある。内部電源回路は、リニアレギュレータが使用される。リニアレギュレータは、LDO(Low Drop Output)回路とも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なリニアレギュレータの出力ラインには、出力電圧の安定性を高めるために、大容量の平滑化キャパシタが接続される。大容量の平滑化キャパシタを集積化することは難しいため、平滑化キャパシタは、外付けのチップ部品で構成される。そのため、ICには、平滑化キャパシタを接続するためのピン(端子)が必要となる。ICの用途やパッケージの種類にはよっては、ピン数に余裕がない場合があり、ピン数の削減が求められる。
【0005】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、小型化および低消費電力化が可能な半導体集積回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様は半導体集積回路に関する。半導体集積回路は、外付けの出力キャパシタが接続されない電源ラインと、電源ラインに電源電圧を供給するとともに、能力が高い第1モードと消費電力が低い第2モードとが切りかえ可能なリニアレギュレータと、電源ラインと接続され、イネーブル状態においてクロック信号を生成し、ディセーブル状態において停止するオシレータと、電源ラインと接続され、クロック信号に応じて信号処理を実行する順序回路を含むデジタル回路と、を備える。順序回路が動作する期間、オシレータはイネーブル状態となり、リニアレギュレータが第1モードで動作し、順序回路が停止する期間、オシレータはディセーブル状態となり、リニアレギュレータが第2モードで動作する。
【0007】
本開示の別の態様は、電源管理回路である。この電源管理回路は、外付けの出力キャパシタが接続されない電源ラインと、電源ラインに電源電圧を供給するとともに、能力が高い第1モードと消費電力が低い第2モードとが切りかえ可能なリニアレギュレータと、電源ラインと接続され、イネーブル状態においてクロック信号を生成し、ディセーブル状態において停止するオシレータと、複数の電源回路と、電源ラインと接続され、クロック信号に応じて複数の電源回路を制御する制御ロジックと、を備える。複数の電源回路のひとつはDC/DCコンバータであり、当該DC/DCコンバータがパルス幅変調モードで動作する期間、オシレータはイネーブル状態となり、リニアレギュレータが前記第1モードで動作する。DC/DCコンバータが、パルス周波数変調モードで動作する期間、オシレータはディセーブル状態となり、リニアレギュレータが第2モードで動作する。
【0008】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0009】
本開示のある態様によれば、半導体集積回路を小型化し、低消費電力化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体集積回路のブロック図である。
【
図3】
図3は、リニアレギュレータの構成例を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源管理回路を備える電子機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0012】
一実施形態に係る半導体集積回路は、外付けの出力キャパシタが接続されない電源ラインと、電源ラインに電源電圧を供給するとともに、能力が高い第1モードと消費電力が低い第2モードとが切りかえ可能なリニアレギュレータと、電源ラインと接続され、イネーブル状態においてクロック信号を生成し、ディセーブル状態において停止するオシレータと、電源ラインと接続され、クロック信号に応じて信号処理を実行する順序回路を含むデジタル回路と、を備える。順序回路が動作する期間、オシレータはイネーブル状態となり、リニアレギュレータが第1モードで動作し、順序回路が停止する期間、オシレータはディセーブル状態となり、リニアレギュレータが第2モードで動作する。
【0013】
順序回路が動作する期間は、順序回路を構成するゲート素子に、クロック信号と同期した瞬時的な電流が流れる。上記構成では、順序回路が動作する期間は、リニアレギュレータの能力(応答性、電流供給能力)を高めることで、電源電圧を安定化できる。順序回路が動作しない期間は、瞬時的な電流が発生しないため、リニアレギュレータを第2モードで動作させて、消費電力を削減することができる。なお、第1モードと第2モードの、「能力」および「消費電力」は相対的なものであり、第1モードは第2モードに比べて能力が高く、消費電力が大きく、第2モードは第1モードに比べて低消費電力であり、能力が低い関係が成り立っている。
【0014】
一実施形態において、リニアレギュレータは、差動アンプと、差動アンプの出力電流を増幅するカレントミラー回路と、を含んでもよい。
【0015】
一実施形態において、カレントミラー回路は、ミラー比(電流増幅率)が可変に構成され、第2モードにおいて、ミラー比が小さくなってもよい。
【0016】
一実施形態において、差動アンプの基準電流が可変であり、第2モードにおいて基準電流が減少してもよい。
【0017】
一実施形態に係る電源管理回路は、外付けの出力キャパシタが接続されない電源ラインと、電源ラインに電源電圧を供給するとともに、能力が高い第1モードと消費電力が低い第2モードとが切りかえ可能なリニアレギュレータと、電源ラインと接続され、イネーブル状態においてクロック信号を生成し、ディセーブル状態において停止するオシレータと、複数の電源回路と、電源ラインと接続され、クロック信号に応じて複数の電源回路を制御する制御ロジックと、を備える。複数の電源回路のひとつはDC/DCコンバータであり、当該DC/DCコンバータがパルス幅変調モードで動作する期間、オシレータはイネーブル状態となり、リニアレギュレータが前記第1モードで動作する。DC/DCコンバータが、パルス周波数変調モードで動作する期間、オシレータはディセーブル状態となり、リニアレギュレータが第2モードで動作する。
【0018】
一実施形態において、リニアレギュレータは、差動アンプと、差動アンプの出力電流を増幅するカレントミラー回路とを含んでもよい。
【0019】
一実施形態において、カレントミラー回路は、ミラー比が可変に構成され、第2モードにおいて、ミラー比が小さくなってもよい。
【0020】
一実施形態において、差動アンプの基準電流が可変であり、第2モードにおいて基準電流が減少してもよい。
【0021】
一実施形態において、電源管理回路は、ひとつの半導体基板に集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0022】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る半導体集積回路100のブロック図である。半導体集積回路100は、電源ライン102、リニアレギュレータ110、オシレータ120、デジタル回路130を備える。
【0026】
半導体集積回路100の電源ピンVCCには、外部電源電圧VCCが供給される。
【0027】
リニアレギュレータ110は、外部電源電圧VCCを受け、電源ライン102に内部電源電圧VDDを供給する。電源ライン102には、外付けの出力キャパシタ(平滑用キャパシタ)が接続されない。出力に平滑化用の外付けキャパシタが接続されないリニアレギュレータを、キャパレスLDOと称する。なお、リニアレギュレータ110の出力には、容量が小さく、半導体集積回路100に集積化される平滑化コンデンサが接続されてもよい。デジタル回路130は、電源ライン102と接続されており、内部電源電圧VDDが供給される。オシレータ120には、リニアレギュレータ110から電源電圧を供給してもよいし、リニアレギュレータ110とは別の電源回路から、電源電圧を供給するようにしてもよい。
【0028】
オシレータ120は、イネーブル端子ENを有し、イネーブル状態とディセーブル状態が切り換え可能に構成される。オシレータ120は、オシレータイネーブル信号OSC_ENがアサートされるときイネーブル状態となってクロック信号CLKを生成する。オシレータ120は、オシレータイネーブル信号OSC_ENがネゲート(デアサート)されるときディセーブル状態となってクロック信号CLKを停止する。
【0029】
デジタル回路130は、順序回路132および組み合わせ回路134を含む。順序回路132は、順序回路132は、クロック信号CLKに応じて信号処理を実行する。順序回路132は、イネーブル信号ENに応じて、動作状態と停止状態が切り換え可能である。
【0030】
組み合わせ回路134は、半導体集積回路100の状態や外部からの信号を監視し、順序回路132の状態を指示する制御信号CTRLを生成する。また組み合わせ回路134は、順序回路132を動作状態とするとき、オシレータイネーブル信号OSC_ENをアサートし、順序回路132を停止状態とするとき、オシレータイネーブル信号OSC_ENをネゲートする。順序回路132が停止状態であるとき、デジタル回路130はスリープ状態あるいはスタンバイ状態であるという。順序回路132は、ハードウェアロジックであってもよいし、ソフトウェアプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
【0031】
本実施形態において、リニアレギュレータ110は、モード制御信号LDO_MODEに応じて、第1モードと第2モードが切りかえ可能に構成される。モード制御信号LDO_MODEが第1レベル(たとえばハイ)のとき、リニアレギュレータ110は第1モードで動作し、モード制御信号LDO_MODEが第2レベル(たとえばロー)のとき、リニアレギュレータ110は第2モードで動作する。
【0032】
リニアレギュレータ110は、第1モードにおいて、消費電力が大きいが、能力が高い。リニアレギュレータ110の能力が高いとは、周波数応答性が高く、および/または、電流供給能力が大きい(出力インピーダンスが低い)ことをいう。第1モードにおけるリニアレギュレータ110の能力は、デジタル回路130に最大の動作電流が流れる状況において、内部電源電圧VDDを目標電圧に維持できる程度に高く設計される。
【0033】
反対にリニアレギュレータ110は、第2モードにおいて、能力は低いが、消費電力が小さい。第2モードにおけるリニアレギュレータ110の能力は、デジタル回路130がディセーブル状態である状況において、内部電源電圧VDDを目標電圧に維持できる範囲でなるべく低く設計される。リニアレギュレータ110の能力と消費電力はトレードオフの関係が成り立つため、第2モードでは、能力の低下と引き換えに、消費電力が削減される。
【0034】
リニアレギュレータ110のモード制御端子MODEには、オシレータイネーブル信号OSC_ENと連動したモード制御信号LDO_MODEが供給される。
【0035】
以上が半導体集積回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
図2は、
図1の半導体集積回路100の動作波形図である。
【0036】
時刻t0~t1の期間、制御信号CTRLは第1レベル(ハイ)であり、順序回路132は所定の信号処理を実行している。この間、オシレータイネーブル信号OSC_ENはアサート(ハイ)されており、オシレータ120はクロック信号CLKを生成している。またモード制御信号LDO_MODEは第1レベル(ハイ)であり、リニアレギュレータ110は、第1モードで動作する。
【0037】
IDDは、デジタル回路130に流れる電流を示している。期間t0~t1において、電流IDDは、クロック信号CLKのエッジのタイミングで瞬間的に大きくなる。リニアレギュレータ110は、期間t0~t1において、第1モードであり、高速応答性を有しているから、クロック信号CLKに応じて瞬時的に変化する電流IDDが流れても、内部電源電圧VDDを一定に保つことができる。
【0038】
時刻t1に、順序回路132が、スリープのトリガとなるイベントEVT1を検出すると、制御信号CTRLが第2レベル(ロー)となり、組み合わせ回路134の動作が停止して、デジタル回路130がスリープ状態となる。またオシレータ120がディセーブル状態となり、クロック信号CLKが停止する。オシレータ120が停止することで、半導体集積回路100の消費電力が削減される。
【0039】
時刻t0において、デジタル回路130に流れる電流が瞬時に小さくなる。したがって、時刻t0の直後に直ちにリニアレギュレータ110を第2モードに切り換えると、リニアレギュレータ110の出力電圧VDDがオーバーシュートする可能性がある。そこで、時刻t0の直後は、リニアレギュレータ110を第1モードのままで動作させ、出力電圧VDDのオーバーシュートのおそれが無くなった後に、モード制御信号LDO_MODEを第2レベルに遷移させて、リニアレギュレータ110を、第2モードに移行させるとよい。これにより、リニアレギュレータ110の動作電流ILDOは、時刻t0~t1に比べて減少し、消費電力が削減される。
【0040】
ここで消費電力の削減と引き換えに、リニアレギュレータ110の能力は低下するが、期間t1~t2のスリープ状態の間、デジタル回路130には微小なアイドル電流が流れ、電流IDDには、クロック信号CLKと同期した高周波成分は含まれない。したがって、リニアレギュレータ110の能力が低下していても、内部電源電圧VDDは目標レベルに維持される。
【0041】
時刻t2に、順序回路132が動作復帰のトリガとなるイベントEVT2を検出すると、制御信号CTRLが第1レベル(ハイ)となり、もとの動作に戻る。
【0042】
以上が半導体集積回路100の動作である。この半導体集積回路100によれば、リニアレギュレータ110を、キャパレスLDOで構成することにより、電源ライン102に外付けのキャパシタを接続する必要がなくなり、またキャパシタを接続するためのピン(パッド、端子)が不要となるため、コストを下げることができる。
【0043】
またリニアレギュレータ110を、2つの動作モードで切り換え可能に構成し、デジタル回路130の動作状態と連動して、リニアレギュレータ110の動作モードを制御することとした。これにより、デジタル回路130の動作電流IDDが大きく、また瞬時的な変動が大きい状況では、リニアレギュレータ110の能力を高めることで、内部電源電圧VDDを安定化できる。一方、デジタル回路130の動作電流IDDが小さく、また瞬時的な変動が小さい状況では、リニアレギュレータ110の能力を低下させることで、リニアレギュレータ110の消費電力を下げることができ、半導体集積回路100全体の消費電力も下げることができる。
【0044】
図3は、リニアレギュレータ110の構成例を示す回路図である。リニアレギュレータ110は、差動アンプ112、カレントミラー回路114、出力キャパシタ116、分圧抵抗R21,R22を含む。差動アンプ112は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。カレントミラー回路114は、差動アンプ112の出力電流を増幅する。
【0045】
カレントミラー回路114の出力ノードには、出力キャパシタ116が接続される。出力キャパシタ116は、チップ部品ではなく、半導体基板上に集積化された容量である。
【0046】
リニアレギュレータ110の出力電圧VDDは、VREF×(R21+R22)/R22である目標レベルに安定化される。
【0047】
リニアレギュレータ110のモード切替の例を説明する。一実施例において、カレントミラー回路114を、ミラー比(電流増幅率を)が可変となるように構成し、第2モードにおいてミラー比を小さくしてもよい。
【0048】
一実施例において、差動アンプ112に基準電流(バイアス電流)IBIASを供給する電流源113を可変電流源で構成し、第2モードにおいて、基準電流IBIASを小さくしてもよい。
【0049】
なおリニアレギュレータ110の構成は、
図3のそれに限定されない。
【0050】
続いて、半導体集積回路100の用途を説明する。
【0051】
図4は、実施形態に係る電源管理回路(PMIC:Power Management IC)200を備える電子機器300のブロック図である。電子機器300は、民生機器であってもよいし、車載機器であってもよいし、産業機器であってもよい。
【0052】
PMIC200は、複数n個(n≧2)の負荷302_1~302_nを有する電子機器300に搭載され、複数の負荷302_1~302_nに適切な電源電圧VOUT1~VOUTnを供給する。負荷302の種類や個数は特に限定されない。たとえば複数の負荷302_1~302_nは、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、オーディオ回路、ディスプレイドライバなどが例示される。1個の負荷302に対応する構成や機能の単位を、チャンネルCHと表記する。nをチャンネル数と称する。
【0053】
電子機器300は、マイクロコントローラ310を備える。負荷302のいくつかは、マイクロコントローラ310の内部に設けられる複数のブロック(CPUブロック、メモリブロック)であってもよい。あるいは複数の負荷302_1~302_nは、別々のデバイスであってもよい。
【0054】
電子機器300を正常に動作させるためには、複数の負荷302を所定の順序で起動する必要があり、したがってそれらの部品に対する電源電圧のオン、オフのシーケンスは、数μsのオーダーで正しく制御する必要がある。たとえばRAMに対する電源供給は、CPUがRAMにアクセスする前に完了していなければならない。
【0055】
PMIC200は、主として、制御ロジック210、複数の電源回路220_1~220_n、インタフェース回路230、複数のキャパレスLDO240,242,244、オシレータ250を備え、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。
【0056】
複数の電源回路220_1~220_nは、複数の負荷302_1~302_nに対応する。複数の電源回路220_1~220_nは、個別にオン、オフが切りかえ可能に構成される。電源回路220は、昇圧型、降圧型、昇降圧型のDC/DCコンバータであってもよいし、LDO(Low Drop Output)などのリニアレギュレータであってもよいし、あるいはチャージポンプ回路などであってもよい。当業者であれば電源回路220を構成する部品の一部、たとえばインダクタやトランス、平滑キャパシタ、フィードバック用の抵抗、スイッチング素子などが、チップ部品やディスクリート部品で構成され、PMIC200のIC外部に外付けされることが理解される。
【0057】
制御ロジック210は、PMIC200を統合的に制御する。制御ロジック210の主たる機能のひとつはシーケンサである。制御ロジック210は、電子機器300の動作モードの変更に関連するイベントを検出すると、電源回路220_1~220_nの状態を変化させる。ここでの動作モードは、通常動作、休止、スタンバイ、シャットダウンなどが例示される。どのような動作モードをサポートするかは、電子機器300の種類などに応じており、本開示において限定されない。
【0058】
たとえば制御ロジック210は、起動イベントを検出すると、複数の電源回路220_1~220_nを、所定の順序および所定の時間間隔で起動する。
【0059】
また制御ロジック210は、シャットダウンイベントを検出すると、複数の電源回路220_1~220_nを、所定の順序および所定の時間間隔で停止する。
【0060】
また制御ロジック210は、スタンバイイベントを検出すると、複数の電源回路220_1~220_nのうちのいくつかを停止状態に遷移させる。反対に制御ロジック210は、スタンバイ復帰イベントを検出すると、複数の電源回路220_1~220_nのうちのいくつかを停止状態から動作状態に遷移させる。
【0061】
オシレータ250は、クロック信号CLKを生成する。制御ロジック210は、このクロック信号CLKと同期して、信号処理を実行する。またクロック信号CLKは、複数の電源回路220_1~220_nのうち、昇圧コンバータ、降圧コンバータや昇降圧コンバータなどのスイッチング電源(DC/DCコンバータ)に供給される。
図4の例では、電源回路220_nがDC/DCコンバータである。DC/DCコンバータは、重負荷状態において、クロック信号CLKを分周して周期信号を生成し、この周期信号にもとづいて、PWM(パルス幅変調)モードで動作する。またDC/DCコンバータは、軽負荷状態において、PFM(パルス周波数変調)モードで動作する。
【0062】
キャパレスLDO240は、電源ライン202を介して、制御ロジック210およびインタフェース回路230に、内部電源電圧VDDを供給する。電源ライン202には、外付けのキャパシタは接続されない。キャパレスLDO242_1~242_nはそれぞれ、対応する電源回路220に内部電源電圧VDDを供給する。キャパレスLDO244は、オシレータ250に内部電源電圧VDDを供給する。キャパレスLDO242、244の出力にも、外付けのキャパシタは接続されない。
【0063】
図4の制御ロジック210およびインタフェース回路230は、
図1のデジタル回路130に対応する。特に制御ロジック210およびインタフェース回路230のうち、クロック信号CLKと同期して動作する部分は、順序回路132に対応し、残りの部分は、組み合わせ回路134に対応する。また
図4のオシレータ250は、
図1のオシレータ120に対応する。
図4のキャパレスLDO240は、
図1のリニアレギュレータ110に対応しており、第1モードと第2モードが切りかえ可能となっている。
【0064】
以上がPMIC200の構成である。電源回路220_1~220_nの起動シーケンス中は、制御ロジック210がアクティブである。起動シーケンスが完了した後、制御ロジック210は、DC/DCコンバータである電源回路220_nの動作モードを監視する。制御ロジック210は、電源回路220_nがPFMモードに移行すると、オシレータイネーブル信号OSC_ENをネゲートし、オシレータ250を停止する。また制御ロジック210は、オシレータイネーブル信号OSC_ENと連動して、キャパレスLDO240に対するモード制御信号LDO_MODEを制御する。
【0065】
以上がPMIC200の構成である。このPMIC200によれば、キャパレスLDOを利用することにより、平滑キャパシタを接続するためのピンを削減できる。また制御ロジック210のシーケンス制御が完了し、かつDC/DCコンバータがPFMで動作する状況では、オシレータ250を停止することで消費電力を削減できる。
【0066】
(変形例)
上述した実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なことが当業者に理解される。以下、こうした変形例について説明する。
【0067】
(変形例1)
本開示の用途はPMICには限定されず、1チャンネルの電源回路のコントローラ回路にも適用できる。あるいはDC/DCコンバータを内蔵するFPGA(Field Programable Gate Array)や、さまざまなASICの内蔵電源のコントローラ回路にも適用可能である。
【0068】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものである。また、実施形態のみでなく、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
100 半導体集積回路
102 電源ライン
110 リニアレギュレータ
112 差動アンプ
114 カレントミラー回路
116 出力キャパシタ
120 オシレータ
130 デジタル回路
132 順序回路
134 組み合わせ回路
200 PMIC
210 制御ロジック
220 電源回路
230 インタフェース回路
240 キャパレスLDO
250 オシレータ