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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148664
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】水素燃料電池駆動土木機械
(51)【国際特許分類】
   E21B 4/04 20060101AFI20231005BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231005BHJP
   E21B 3/04 20060101ALI20231005BHJP
   E21B 3/02 20060101ALI20231005BHJP
   E21B 4/12 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E21B4/04
H02J15/00 G
H02J7/00 303E
E21B3/04
E21B3/02 A
E21B4/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056808
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】596109273
【氏名又は名称】株式会社高知丸高
(71)【出願人】
【識別番号】522128343
【氏名又は名称】田島 收
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】高野 広茂
(72)【発明者】
【氏名】田島 收
【テーマコード(参考)】
2D129
5G503
【Fターム(参考)】
2D129BA07
2D129BA21
2D129CA17
2D129CB19
2D129DA13
2D129DA18
2D129DA21
2D129DB06
2D129DC05
2D129DC11
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA04
(57)【要約】
【課題】
土木機械に使用されるオーガーに電力を供給する電源を、燃料電池と蓄電装置の両者から得ることで、環境汚染がなく地球の温暖化を促進せず、燃料電池と蓄電装置の間で負荷の大きさに応じて負荷分担を行うことで設備投資上の無駄がない水素燃料電池駆動土木機械を提供することである。
【解決手段】
本発明の水素燃料電池駆動土木機械は、燃料供給部と燃料電池とパワーコンディショナーと蓄電装置とオーガーを含み、燃料供給部は気体水素を燃料電池に供給し、燃料電池はオーガーの定格運転に必要な電力を発電し、蓄電装置はオーガーの起動時または過負荷運転時に必要な電力とオーガーの定格運転に必要な電力の差分を出力し、パワーコンディショナーは第1の状態において電力を燃料電池と蓄電装置の両者から、第2の状態において燃料電池のみからオーガーに供給可能であり、オーガーは土木機械を駆動することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素燃料電池発電機からの電力で稼働する土木機械であって、当該土木機械は燃料供給部と、燃料電池と、パワーコンディショナーと、蓄電装置と、オーガーを含み、
前記燃料供給部は気体状態の水素を前記燃料電池に供給可能であり、
前記燃料電池は、前記水素から少なくとも前記オーガーの定格運転に必要な電力を発電し、前記オーガーに供給可能であり、
前記蓄電装置は、前記オーガーの起動時または過負荷運転時に必要な電力と定格運転に必要な電力の差分を前記オーガーに供給可能であり、
前記パワーコンディショナーは、第1の状態において電力を前記燃料電池と前記蓄電装置の両者から前記オーガーに供給可能であり、第2の状態において電力を前記燃料電池のみから前記オーガーに供給可能であり、
前記オーガーはパワーコンディショナーから供給される電力によって土木機械を駆動すること
を特徴とする水素燃料電池駆動土木機械。
【請求項2】
前記土木機械はアースオーガースクリュー、ダウンザホールハンマー掘進機またはテーブルマシンであることを特徴とする請求項1に記載の水素燃料電池駆動土木機械。
【請求項3】
オーガーの定格運転時にオーガーに消費される電力と起動時または過負荷運転時にオーガーに消費される電力の差分が、定格運転時にオーガーに消費される電力の200%乃至500%であることを特徴とする請求項1または2に記載の水素燃料電池駆動土木機械。
【請求項4】
前記蓄電装置が、二次電池またはキャパシタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水素燃料電池駆動土木機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素燃料電池駆動土木機械に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事の現場は山間・僻地にあることも多く、また土木工事の現場が、インフラが整備された都市部にあっても工事は短期で終了するため、土木機械に使用されるモーターに電力を供給するために固定的な商用電源が用意されることはない。多くの場合、モーターに電力を供給するために、ディーゼルエンジンによる発電機が用いられてきた。
【0003】
ディーゼルエンジンによる発電機は軽油を燃焼させるため、稼動時に騒音と排ガス(窒素酸化物)を発生するので環境を汚染する。さらに二酸化炭素(CO)を排出するため地球に温暖化をもたらす原因となる。
土木機械に使用されるモーターに供給する電力をディーゼルエンジン発電機ではなく他のクリーンな方法によって得ることができれば、環境汚染と温暖化の問題解決に貢献できる。
【0004】
特許文献1には、地面に穴を開けて掘削するよう構成された掘削機であって、穴内において制御された速度での降下行程中に掘削ストリングの電気的制動を実施するよう構成された電動モーターによって移動する掘削ストリングの動作装置を備える掘削機が開示されている。特許文献1に係る発明は燃料電池を備え、燃料電池は第1電動モーターの定格運転に必要な電力を発電する記載があるため、ディーゼルエンジンよりもクリーンな方法によってモーターに電力が供給されることが示されている。
【0005】
一般的にモーターには起動時に大きな電流(突入電流)が流れる。突入電流に対処するために、モーターに電力を供給する電源は、モーターの定格電流を大きく上回る電流を提供せねばならず、設備投資上無駄が多い。このような事態を避けるため、従来、モーターの起動は、起動時にモーターに供給される電源に対して直列に抵抗を挿入することで電流を抑制し、モーターの回転が上昇すると、直列に挿入された抵抗を順次抵抗値の低いものに切り替え、最終的には抵抗をゼロにする手法を用いて、突入電流の抑制を行ってきた。こうすることによりモーターに供給される電流は、起動時においてもほぼモーターの定格電流に近い値とすることができるので、電源は、モーターの定格電流を供給する能力を持てば良いことになる。しかしながら、この方法では、モーターの起動は所謂スロースタートとなり起動時に大きなトルクが提供できないという問題点があった。
【0006】
電車に使用されるモーターのように、起動時の負荷が充分に予測可能であるときにはこの方法は有効である。しかしながら、建設現場で用いられるオーガーシステムの場合、掘り進む地層において、起動時に大きなトルクが必要な場合がある。このようなときに上述の方法は適用が困難であった。
起動後においても、オーガーの先端が予測できない硬い岩盤に当たったとき、オーガーは大きなトルクを必要とし、このときオーガーのモーターには予測できないタイミングで過電流が流れることがある。このような状況に対しても、上述の方法は適用が困難であった。
【0007】
そこで、建設現場では、起動時における抵抗直列挿入を行わず、その代わりオーガーのモーターの定格出力よりも大幅に大きな容量(例えば2倍~5倍)を有する電源を用意する、すなわち電源の最大電力供給能力を起動時や過負荷時に合わせて用意することで、問題の解決を行っていた。このように、建設機械に使用されるモーターの電源では、定格回転時にモーターが必要とする電力よりも大きい電源を用意する必要があるため、前述のように設備投資上大きな無駄が生じていた。
【0008】
特許文献1には、燃料電池にキャパシタが接続されて、これら2つの要素から電源が構成されているが、この技術においては、キャパシタと燃料電池の負荷分担が開示されておらず、過剰な負荷が生じたときに対応できない欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2021-516732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、土木機械に使用されるオーガーに電力を供給する電源を燃料電池と蓄電装置の両者から得ることで、燃料電池は燃料として水素を用いるために排出されるのは水だけであり、環境汚染がなく地球の温暖化を促進せず、燃料電池と蓄電装置の間で負荷の大きさに応じて負荷分担を行うことで設備投資上の無駄がない水素燃料電池駆動土木機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、水素燃料電池発電機からの電力で稼働する土木機械であって、当該土木機械は燃料供給部と、燃料電池と、パワーコンディショナーと、蓄電装置と、オーガーを含み、前記燃料供給部は気体状態の水素を前記燃料電池に供給可能であり、前記燃料電池は、前記水素から少なくとも前記オーガーの定格運転に必要な電力を発電し、前記オーガーに供給可能であり、前記蓄電装置は、前記オーガーの起動時または過負荷運転時に必要な電力と定格運転に必要な電力の差分を前記オーガーに供給可能であり、前記パワーコンディショナーは、第1の状態において電力を前記燃料電池と前記蓄電装置の両者から前記オーガーに供給可能であり、第2の状態において電力を前記燃料電池のみから前記オーガーに供給可能であり、前記オーガーはパワーコンディショナーから供給される電力によって土木機械を駆動することを特徴とする水素燃料電池駆動土木機械に関する。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記土木機械はアースオーガースクリュー、ダウンザホールハンマー掘進機またはテーブルマシンであることを特徴とする請求項1に記載の水素燃料電池駆動土木機械に関する。
【0013】
請求項3に係る発明は、オーガーの定格運転時にオーガーに消費される電力と起動時または過負荷運転時にオーガーに消費される電力の差分が、定格運転時にオーガーに消費される電力の200%乃至500%であることを特徴とする請求項1または2に記載の水素燃料電池駆動土木機械に関する。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記蓄電装置が、二次電池またはキャパシタであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水素燃料電池駆動土木機械に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明は、水素燃料電池発電機からの電力で稼働する土木機械であって、当該土木機械は燃料供給部と、燃料電池と、パワーコンディショナーと、蓄電装置と、オーガーを含み、前記燃料供給部は気体状態の水素を前記燃料電池に供給可能であり、前記燃料電池は、前記水素から少なくとも前記オーガーの定格運転に必要な電力を発電し、前記オーガーに供給可能であるので、オーガーに電力を供給する電源をディーゼルエンジン発電機以外のクリーンな方法によって負荷分担を実現することができる。
さらに、前記燃料電池は、前記水素から少なくとも前記オーガーの定格運転に必要な電力を発電し、前記オーガーに供給可能であり、前記蓄電装置は、前記オーガーの起動または過負荷運転時に必要な電力と定格運転に必要な電力の差分を前記オーガーに供給可能であり、前記パワーコンディショナーは、第1の状態において電力を前記燃料電池と前記バッテリーの両者から前記オーガーに供給可能であり、第2の状態において電力を前記燃料電池のみから前記オーガーに供給可能であるので、定格時には燃料電池のみからオーガーに電力を供給し、起動時や過負荷時には燃料電池と蓄電装置の両者から電力を供給することができる。よって燃料電池の最大電力供給能力を起動時や過負荷時に合わせて用意する必要がなく、電源の出力をオーガーの定格出力と同程度とすることができる負荷分担を実現した、設備投資上の無駄がないシステムを提供することができる。
【0016】
請求項2に係る発明は、前記土木機械はアースオーガースクリュー、ダウンザホールハンマー掘進機またはテーブルマシンであるので、本願発明は幅広い掘削の現場に適用可能である。
【0017】
請求項3に係る発明は、オーガーの定格運転時にオーガーに消費される電力と起動時または過負荷運転時にオーガーに消費される電力の差分が、定格運転時にオーガーに消費される電力の200%乃至500%であるので、オーガーシステム全体をコンパクトなシステムとすることができる。
【0018】
請求項4に係る発明は、前記蓄電装置が、二次電池またはキャパシタであるので、二次電池またはキャパシタが蓄えていた電力を放電した後、充電を行うことにより次の放電に備えることができる。電力の差分の供給を繰り返し行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1(a1)】本発明の一実施形態にかかる水素燃料電池駆動土木機械の全体を示す概略説明図である。
図1(a2)】図1(a1)の水素燃料電池駆動土木機械のX部分の拡大説明図である。
図1(b)】図1(a1)の水素燃料電池駆動土木機械の変形例の全体を示す概略説明図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる水素燃料電池駆動土木機械の電源の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる水素燃料電池駆動土木機械の燃料電池、蓄電装置、パワーコンディショナー、および土木機器の電気的な接続を示す図である。
図4(a)】本発明の一実施形態にかかる水素燃料電池駆動土木機械の電源の外観を示す図である。
図4(b)】図4(a)の水素燃料電池駆動土木機械の電源に含まれる燃料供給部の模式図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる水素燃料電池駆動土木機械のオーガーの起動時の電流を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1(a1)は、本発明の一実施形態にかかる水素燃料電池駆動土木機械(1)の一例の全体を示す概略説明図であり、図1(a2)は図1(a1)の水素燃料電池駆動土木機械のX部分の拡大図である。車体(2)にはクレーン(3)が取り付けられ、クレーン(3)にはワイヤー(4)が取り付けられワイヤー(4)にはオーガー(5)が吊り下げられている。オーガー(5)の回転軸(6)には地面を掘削するためのダウンザホールハンマー(7)が取り付けられている。ダウンザホールハンマー(7)の先端(TP1)が地面に接するように設置してオーガー(5)を起動させると、ダウンザホールハンマー(7)の先端(TP1)が上方向から地面を掘るとともに、高圧空気(8)を送って穴から土を排出する。
図1(b)は、本発明にかかる水素燃料電池駆動土木機械(1)の変形例の全体を示す概略説明図である。車体(2)にはクレーン(3)が取り付けられ、クレーン(3)にはシャフト(11)が鉛直に取り付けられ、シャフト(11)にはシャフト(11)に沿って上下に移動できるオーガー(5)が取り付けられている。オーガーの回転軸(12)には地面を掘削するためのアースオーガースクリュー(13)が取り付けられている。アースオーガースクリュー(13)の先端(TP2)が地面に接するように設置してオーガー(5)を回転させると、アースオーガースクリュー(13)の先端(TP2)が上方向から地面を掘るとともに、穴から土を排出することができる。
オーガー(5)にはオーガー(5)を駆動するための電源(15)が付属する。
【0021】
なお、本発明にかかる水素燃料電池駆動土木機械(1)は上記に限られるものではなく、テーブルマシン、バックホウ、小型バックホウ、ユンボ、油圧ショベル、パワーショベル、ドラグショベル、ローディングショベル、エクスカベータ、ショベルカー、ブレーカー、大型ブレーカー、ジャイアントブレーカー、圧砕機、破砕機、油圧クラッシャー、油圧カッター、鉄骨切断機、つかみ機、フォークグラブ、つかみバケット、フォークグラップル、クローラクレーン、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフター、ラフテレーン、オルター、オルテレーン、ユニック、パイルドライバ、ディーゼルパイルハンマ、油圧パイルハンマ、バイブロハンマ、バイブロ、振動ハンマ、オールケーシング掘削機、ベノト掘削機、アースドリル掘削機、油圧式杭圧入引抜機、パイラー、トラクタショベル、ホイルローダ、ローダ、ショベルローダ、ブルドーザ、自走式破砕機、ローラ、ロードローラ、スムーズローラ、マダカムローラ、タイヤローラ、振動ローラ、タンレムローラ、アスファルトフィニッシャ、コンクリートフィニッシャ、ぺーバ、路面切削機、ロードカッタ、ダンプトラック、ダンプカー、ダンプ、トラックミキサ、ミキサー車、生コン車、アジテータトラック、コンクリートポンプ車、コンクリート作業車、ハンドブレーカー・削孔機、コンクリートブレーカー、ピックハンマ、コールピック、ジャックハンマ、ランマ、タンパ、振動コンパクタ、バイブロプレート、コンクリートカッタ、空気圧縮機、ウォータージェットの電気を使用する物のいずれかであってもよい。
【0022】
電源(15)の構成を図2に示す。電源(15)は燃料電池(30)と蓄電装置(31)を含んでいる。
燃料電池(30)は、複数のセルが積層され、直流電力をパワーコンディショナー(41)に出力する。直流電力はパワーコンディショナー(41)によって50または60Hz、200Vの三相交流に変換される。
また、蓄電装置(31)からの直流電力も同様にパワーコンディショナー(41)によって50または60Hzの200Vの三相交流に変換される。
【0023】
蓄電装置(31)から出力された直流電力は、燃料電池(30)から出力された直流電力に重畳され、パワーコンディショナーで交流に変換された電力がオーガー(5)に供給される。
燃料電池(30)の定格出力電力(60kW)は、オーガー(5)の定格運転時の消費電力(45kW)のおよそ1.3倍である。オーガー(5)が定格運転をしているときには、オーガー(5)の電力はすべて燃料電池から供給される。しかしオーガーの起動時には定格運転時の電力の4.4倍程度の突入電力が消費される。一例としてオーガー(5)の突入消費電力は200kWにもなる。この電力は燃料電池(30)のみでは賄いきれない。蓄電装置(31)はオーガー(5)が消費する電力と燃料電池(30)(定格電力60kW)から供給される電力の差分の電力(140kW)を供給する。
【0024】
燃料電池(30)は、水素と酸素から電気を作り出すので、水素の供給系統と、空気(酸素)の供給系統と、電気出力系統を必要とする。また、熱が生じることから冷却水循環系統も必要とされる。水素は水素ボンベの圧力によって燃料電池(30)内部に導入される。空気はエアコンプレッサー(図示せず)によって圧力を付加され燃料電池(30)内部に導入される。排熱は冷却水によりラジエター(図示せず)から大気中に放熱される。燃料電池(30)、水素の供給系統、空気(酸素)の供給系統、電気出力系統、および冷却水系統は一体で、燃料電池モジュール(39)(図4にて後述する)を構成する。
【0025】
図3は、燃料電池(30)、蓄電装置(31)、パワーコンディショナー(41)および土木機器(49)の電気的な接続を示す。
パワーコンディショナー(41)は、DC/DC昇圧コンバータ(47)、DC/ACインバータ(48)、ダイオード(42)、パワーコンディショナー制御装置(60)および充電制御装置(52)を含んでいる。
燃料電池(30)の出力は、DC/DC昇圧コンバータ(47)に接続されている。DC/DC昇圧コンバータ(47)の出力は、燃料電池への逆充電を防止するための逆流防止用のダイオード(42)を経て、直流ラインDにおいて蓄電装置(31)とDC/ACインバータ(48)の両者に接続される。DC/ACインバータ(48)の出力はオーガー(5)に代表される土木機器(49)に接続される。
燃料電池(30)からの充電電流は、充電電流を制御するための充電制御装置(52)を経て蓄電装置(31)を充電する。
パワーコンディショナー制御装置(60)は、DC/DC昇圧コンバータ(47)、DC/ACインバータ(48)、充電制御装置(52)等に接続されている。
【0026】
動作について説明する。
燃料電池(30)から供給される直流はDC/DC昇圧コンバータ(47)によって昇圧され直流ラインDでDC/ACインバータ(48)に入力される。蓄電装置(31)から供給される直流も直流ラインDでDC/ACインバータ(48)に入力される。
オーガー(5)の消費電力が燃料電池(30)の定格出力より小さいときには、燃料電池(30)から供給される直流電力の多くの部分は、DC/ACインバータ(48)によって50または60Hz、200Vの3相交流に変換され、オーガー(5)に代表される土木機器(49)に供給される。
燃料電池(30)から供給される残りの電力は充電制御装置(52)を介して、蓄電装置(31)の充電のために使用することができる。典型的には図2に示したように、燃料電池(30)からの出力は60kWであり、オーガー(5)が定格運転された場合オーガー(5)が必要とする電力は45kWであるので、充電には最大で15kWの電力を当てることが出来る。
オーガー(5)の消費電力が燃料電池(30)の定格出力より大きいときには、燃料電池(30)から供給される直流電力のすべては、オーガー(5)に代表される土木機器(49)に供給される。蓄電装置(31)からはオーガー(5)の消費電力と燃料電池(30)の定格出力の差分が供給される。典型的には図2に示したようにオーガー(5)が起動時または過負荷運転された場合、オーガー(5)が必要とする電力は200kWであるので、燃料電池(30)からの出力60kWとの差分である140kWが蓄電装置(31)から供給される。
パワーコンディショナー制御装置(60)は、DC/DC昇圧コンバータ(47)、DC/ACインバータ(48)、充電制御装置(52)等を制御し、パワーコンディショナー(41)の最適制御を行う。
【0027】
充電制御装置(52)について述べる。
蓄電装置(31)がリチウムイオン二次電池であった場合には、蓄電装置(31)への充電は充電制御装置(52)を経て行われる。なぜならば、リチウムイオン二次電池は爆発を防止するために厳密な充電電流の制御が必要であるからである。
リチウムイオン二次電池は、満充電に近い状態まで充電を行うと爆発することがある。したがって充電は満充電容量の80%まで行うことになっている。典型的な充電方法は、充電初期は大きな電流(例えば1.0C)で定電流充電を行い、決められた充電電圧に達したら低い電流値(例えば0.1C以下)で定電圧充電を行う。決められた状態に達したところで充電を終了し、充電完了と判断する。
リチウムイオン二次電池は、安全に放電を行える放電電圧の最低値(放電終止電圧)が決められており、この放電終止電圧に達した場合は、電池回路を遮断して使用できないようにする。
【0028】
ここで蓄電装置(31)はキャパシタであってもよく、二次電池でもよく、その両方の組み合わせであってもよい。二次電池はキャパシタに比べてより多くの電力を蓄えることができる。過負荷時の電流または突入電流が多い場合、もしくは過負荷時の電流または突入電流が長い時間流れる場合には、二次電池を用いることが好ましい。一方、キャパシタは劣化がなく、構造が単純で信頼性が高い。キャパシタが過負荷時の電流および突入電流をまかなうことができるのならば、蓄電装置(31)においてキャパシタを用いることは二次電池を用いることより好ましい。
【0029】
図4(a)は、本発明にかかる水素燃料電池駆動土木機械(1)の電源(15)の外観を示す。水素燃料電池駆動土木機械(1)の電源(15)は、電気部(71)と燃料供給部(72)からなる。電気部(71)は、燃料電池モジュール(39)と冷却装置であるクーリングファン(73)および、電力系サブシステム(74)を含んでいる。燃料電池モジュール(39)は前述のように、燃料電池(30)、水素の供給系統、空気(酸素)の供給系統、電気出力系統、および冷却水系統を含んでいる。電力系サブシステム(74)には、前述のパワーコンディショナー(41)および蓄電装置(31)が組み込まれる。燃料供給部(72)には、水素ボンベ(36)40本が並列に接続されて設置される。
【0030】
図4(b)は、図4(a)の電源に含まれる燃料供給部(72)の模式図である。実線は配管系統、破線は電気信号系統を表す。
水素ボンベ(36)の最高内部圧力は19.6MPaであるが、当該最高内部圧力は19.6MPaに限定されることは無い。水素ガスの全貯蔵量は300m未満である。
【0031】
水素ボンベ(36)の出口にはボンベ元弁(81)とボンベ口金(82)とボンベ取合い弁(83)が設けられている。複数の水素ボンベ(36)からの配管は、高圧配管(84)(図4(b)において太線で示される)において1本の配管に接合され、まとめられる。高圧配管(84)の下流に向かって、ボンベ圧力計(85)、遮断弁(86)、減圧弁(87)が接続されている。減圧弁(87)の下流には低圧配管(90)(図4(b)において細線で示される)により供給ガス圧力計(88)、取り合い弁(89)が設けられている。
燃料供給部(72)の天井に水素センサー(101)が取り付けられている。水素センサー(101)は燃料供給部制御装置(104)に接続されている。燃料供給部(72)の壁には排気ファン(102)が設けられている。排気ファン(102)が設けられた壁と対抗する壁には空気取り入れ口(103)が設けられている。
水素ボンベ(36)から電気部(71)に至る高圧配管(84)および低圧配管(90)は、金属製であり、金属製継手によって接続される。高圧配管(84)および低圧配管(90)を接続する継ぎ手はスウェージロック(登録商標)など食い込み型の継ぎ手であってもよいが、安全と信頼性の高さを考慮した場合、溶接が好ましい。
複数の水素ボンベ(36)からの水素ガスは高圧配管(84)において混ぜ合わされる。高圧配管(84)に設けられたボンベ圧力計(85)の示す圧力は、水素ボンベ(36)に残留する水素ガスの圧力、すなわち水素の残量を示している。当該圧力は燃料供給部制御装置(104)に転送される。減圧弁(87)は、最大19.6MPaの一次圧を1MPa未満の二次圧に減圧する。減圧弁の二次圧、すなわち電気部(71)への水素供給圧力は供給ガス圧力計(88)によって示される。
【0032】
水素センサー(101)が水素の漏洩を検知すると、燃料供給部制御装置(104)は遮断弁(86)を閉鎖し、水素漏洩警報が出される。水素が空気と混合しても爆発することがない濃度(爆発下限界)は4%であるため、水素漏えい警報装置の水素濃度の上限は爆発下限界の1/4である1%(25%LEL)に設定されている。水素漏えい警報が発報されると燃料供給部制御装置(104)は遮断弁(86)を閉鎖し、電源(15)を非常停止させる。
また排気ファン(102)の回転が停止すると、燃料供給部制御装置(104)は、排気ファン停止警報を発して遮断弁(86)を閉鎖し、電源(15)を非常停止させる。
【0033】
上記した例は、水素が圧縮されたガスの状態で蓄えられるものであるが、この例に限定されることはなく水素は液体の状態で蓄えられて気化して使用されてもよく、水素吸蔵合金に蓄えられて使用されてもよい。
【0034】
従来例においてはオーガー(5)に電力を供給するためにディーゼルエンジン発電機が用いられてきた。さらに、本発明に備えられるような蓄電装置(31)による起動時の電力サポートは無かった。したがって、ディーゼルエンジン発電機は、モーターの定格出力の2倍~5倍の出力を有するものが使用されてきた。
逆に言えば、モーターが定格出力で運転されるときには、ディーゼルエンジンは定格出力の20~40%の部分負荷出力で運転されることになる。ディーゼルエンジンの熱効率が最大となる点は100%近傍の出力で運転がなされる領域であるので、従来のオーガーにおいては、ディーゼルエンジン発電機は熱効率の良くないところで運転が為され、燃料の使用効率が悪いという問題点を有していた。
しかし、本発明による水素燃料電池駆動土木機械においては、オーガー(5)が定格で運転されているとき、燃料電池(30)は自身の定格出力の80%程度の電力を出力する。燃料電池(30)は定格出力の50~100%負荷範囲において高効率を維持する特性のため、効率の良い領域で燃料電池(30)を動作させることができるので、燃料の使用効率が良い。
【実施例0035】
以下、本発明の水素燃料電池駆動土木機械(1)について実施例に基づいて更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
本発明者らは、実際のオーガー(5)を用いて起動時にオーガー(5)で消費される電力の測定を行った。オーガー(5)にディーゼルエンジン発電機を接続し、発電機から流れる電流をオシロスコープで計測した。オーガー(5)は三和機工社製であり定格出力は45kWであった。ディーゼルエンジン発電機は日本車両製造社製NES150SHEで、定格出力電力は150kWであった。オーガー(5)に印加した電圧は3相220V60Hzの交流であった。
オーガーに印加される電圧の瞬時値と、上記電流の値から、オーガー(5)で消費される電力を求めた。図5はオーガー(5)の起動時の消費電力を表すグラフである。縦軸は電力(kW)、横軸は時間(秒)を意味する。
起動と同時に大きな電力が消費され、ピーク消費電力は200kWであり、0.8秒後に安定した空運転時の約20kWの消費電力となっている。起動時の突入電力はオーガー(5)の定格電力45kWの4.4倍程度であり、この突入電力はオーガー(5)の起動後0.8秒間にわたって消費されることがわかる。このように、起動時の突入電力の振る舞いを正確に観測することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、土木機械に使用されるオーガー(5)に電力を供給する電源を燃料電池(30)と蓄電装置(31)の両者から得ることで、燃料電池は燃料として水素を用いるために排出されるのは水だけであり、環境汚染がなく地球の温暖化を促進せず、燃料電池(30)と蓄電装置(31)の間で負荷の大きさに応じて負荷分担を行うことで設備投資上の無駄がない水素燃料電池駆動土木機械(1)の提供に好適に利用される。
【符号の説明】
【0037】
1 水素燃料電池駆動土木機械
7 ダウンザホールハンマー
13 アースオーガースクリュー
30 燃料電池
31 蓄電装置
41 パワーコンディショナー
49 土木機器
72 燃料供給部
図1(a1)】
図1(a2)】
図1(b)】
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5