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  • 特開-水処理方法及び水処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148669
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/62 20230101AFI20231005BHJP
   C02F 1/74 20230101ALI20231005BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
C02F1/62 Z
C02F1/74 Z
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056815
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】519379732
【氏名又は名称】有限会社エースメンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】福岡 忠博
【テーマコード(参考)】
4D038
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB66
4D038AB79
4D038BA02
4D038BA06
4D038BB10
4D038BB13
4D038BB16
4D038BB18
4D050AA12
4D050AA13
4D050AA15
4D050AB55
4D050BB01
4D050BD02
4D050BD03
4D050BD08
4D050CA10
4D050CA13
4D050CA16
4D061DA08
4D061DB09
4D061EA01
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB37
4D061EB39
4D061ED06
4D061FA11
4D061FA14
4D061FA16
4D061GA07
4D061GC01
4D061GC20
(57)【要約】
【課題】エネルギーの消費量が比較的小さい水処理方法及び水処理装置を提供する。
【解決手段】処理対象水及び鉄炭化物100を反応槽10に収容する。次に、処理対象水を希塩酸41で酸性に維持することで鉄炭化物100から鉄を自発的に処理対象水中に溶出させつつ、散気管33を使用して酸素を処理対象水中に放出し処理対象水中の鉄イオンを酸化させる。次に、処理対象水に苛性ソーダ51を投入し、水酸化鉄を発生させ、処理対象水中の汚濁成分と共に凝集させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象水及び鉄の炭化物を処理容器に収容する第1工程と、
前記第1工程後に、前記処理対象水を酸性に維持することで前記鉄の炭化物から鉄を自発的に前記処理対象水中に溶出させつつ、酸化剤を用いて前記処理対象水中の鉄イオンを酸化させる第2工程と、
前記第2工程後に、前記処理対象水に塩基を投入する第3工程とを備えていることを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記処理対象水、前記鉄の炭化物及び前記処理容器を有する処理系に外部から電圧を印加することなく前記鉄の炭化物から鉄を自発的に溶出させることを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記鉄の炭化物が前記処理対象水中に溶出して2価の鉄イオンを発生させると共に、当該2価の鉄イオンを酸化させて3価の鉄イオンを発生させ、
前記第3工程において、前記第2工程で発生させた3価の鉄イオンと水酸化物イオンから水酸化鉄を発生させると共に、当該水酸化鉄を前記処理対象水中の汚濁成分と共に凝集させることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
鉄の炭化物を収容した処理容器に処理対象水を供給する水供給手段と、
前記処理容器内の前記処理対象水を酸性に維持することで前記鉄の炭化物から鉄を自発的に前記処理対象水中に溶出させつつ、酸化剤を用いて前記処理対象水中の鉄イオンを酸化させる鉄酸化手段と、
鉄イオンを酸化させた後に前記処理対象水に塩基を供給する塩基供給手段とを備えていることを特徴とする水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水処理等の水処理においては様々な処理方法が提案されている。特許文献1はその1つであり、電気分解により排水中の汚濁物質を酸化させて分解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-185525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記はエネルギーを利用して排水中の汚濁物質を分解しているが、その水処理に必要なエネルギーの消費量を抑制することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、エネルギーの消費量が比較的小さい水処理方法及び水処理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理方法は、処理対象水及び鉄の炭化物を処理容器に収容する第1工程と、前記第1工程後に、前記処理対象水を酸性に維持することで前記鉄の炭化物から鉄を自発的に前記処理対象水中に溶出させつつ、酸化剤を用いて前記処理対象水中の鉄イオンを酸化させる第2工程と、前記第2工程後に、前記処理対象水に塩基を投入する第3工程とを備えている。また、本発明の水処理装置は、鉄の炭化物を収容した処理容器に処理対象水を供給する水供給手段と、前記処理容器内の前記処理対象水を酸性に維持することで前記鉄の炭化物から鉄を自発的に前記処理対象水中に溶出させつつ、酸化剤を用いて前記処理対象水中の鉄イオンを酸化させる鉄酸化手段と、鉄イオンを酸化させた後に前記処理対象水に塩基を供給する塩基供給手段とを備えている。
【0007】
本発明によると、第2工程又は鉄酸化手段において処理対象水を酸性に保つことで、鉄の炭化物から鉄を自発的に処理対象水中に溶出させる。このため、外部から電圧を掛けないか、掛けた場合にも比較的小さいエネルギー消費で処理対象水中に鉄を溶出させることができる。また、第2工程又は鉄酸化手段において処理対象水中の鉄イオンを酸化させると共に、第3工程又は塩基供給手段において処理対象水に塩基を投入することで、汚濁成分を水酸化鉄で凝集させることができる。これにより、処理対象水から汚濁物質を適切に分離可能である。なお、「自発的に」とは、「外部から電圧を掛けなくても自発的に」という意味を示す。したがって、外部から電圧が掛けられてもよく、その場合には自発的に溶出する作用に外部電圧によって溶出する作用が加わることで鉄の溶出が促進される。
【0008】
また、本発明においては、前記第2工程において、前記処理対象水、前記鉄の炭化物及び前記処理容器を有する処理系に外部から電圧を印加することなく前記鉄の炭化物から鉄を自発的に溶出させることが好ましい。これによると、第2工程において外部から電圧を印加しないので、鉄の溶出に電力を消費しなくて済む。
【0009】
また、本発明においては、前記第2工程において、前記鉄の炭化物が前記処理対象水中に溶出して2価の鉄イオンを発生させると共に、当該2価の鉄イオンを酸化させて3価の鉄イオンを発生させ、前記第3工程において、前記第2工程で発生させた3価の鉄イオンと水酸化物イオンから水酸化鉄を発生させると共に、当該水酸化鉄を前記処理対象水中の汚濁成分と共に凝集させることが好ましい。これによると、各工程において適宜の化学変化を発生させることで処理対象水から汚濁物質を適切に分離する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る水処理方法及び水処理装置について図1及び2を参照しつつ説明する。本発明の水処理は処理対象水中の汚泥成分を沈殿させる。対象となる処理対象水は特に制限されない。処理対象水には、家庭用排水、工場排水、汚水排水、雨水等が含まれる。また、上水や中水用の原水を処理するために本実施形態が用いられてもよい。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の水処理方法及び水処理装置に係る水処理装置1は、鉄炭化物100、反応槽10(本発明でいう処理容器)、ポンプ61(本発明でいう水供給手段)、散気管33、貯液槽40、50及び200、並びに制御部70を有する。なお、以下において、図1に示すように、水処理装置1の横方向を左右方向、紙面に沿った方向であって左右方向と直交する方向を上下方向という。また、上下方向及び左右方向の両方に直交する方向(紙面に対して直交する方向)を前後方向という。
【0013】
反応層10は、処理対象水を収容する、上方に開口した角柱状の容器である。反応槽10の左側壁11は、右側壁12よりやや上方に突出している。反応槽10の内部には、3つの内部区画20が含まれている。内部区画20は、反応槽10の内部より左右方向に小さい側壁を有した角筒状の構造を有している。内部区画20の左側壁21の下端は、反応槽10の底壁13より上方に位置している。左側壁21の上端は左側壁11の上端よりやや下方に位置している。左側壁21は前後方向に反応槽10内の一方の側壁から他方の側壁まで延びている。右側壁21の下端部付近には、反応槽10内の底部付近の内容物を外部に排出するための弁14が接続されている。反応槽10内で処理対象水の処理が進んだ後で、後述する沈殿物を取り除く際に弁を手動で開放する。反応槽10には、収容された処理対象水のpHを測定するpHメーター15が設置されている。
【0014】
内部区画20の右側壁22の下端は、反応槽10の底壁13に固定されている。内部区画20の右側壁22の上端は右側壁12の上端と上下方向に同じ位置である。内部区画20の底壁はスクリーン23によって構成されている。右側壁22は前後方向に反応槽10内の一方の側壁から他方の側壁まで延びている。スクリーン23は、左側壁21の下端よりやや上方の位置において、底壁13と平行になるように配置されている。スクリーン23は、メッシュ径5~10mmのメッシュ状の部材である。3つの内部区画20が反応槽10の内部に左右方向に並んでおり、最も左方に位置している内部区画20は左側壁11より右方に位置しており、最も右方に位置している内部区画20の右側壁22は右側壁12によって構成されている。
【0015】
処理対象水は、図1の破線に示すように、各内部区画20の右側壁22の上端の高さに水面が配置されるように反応槽10内に収容される。右側壁22は、反応槽10内の処理対象水を左右に区切っている。各内部区画20の左側の空間にある処理対象水は、左側壁21の下端をくぐって各内部区画20内に流入する。各内部区画20内の処理対象水は、右側壁22の上端を乗り越えることにより、右側壁22を跨ぐ越流を形成してその右側の内部区画20との間の空間に流出する。
【0016】
内部区画20の内部には、鉄炭化物100(本発明でいう鉄の炭化物)が収容されている。鉄炭化物100には、セメンタイト、マルテンサイト等が使用される。鉄炭化物100には微量の銅が添加されていてもよい。これにより、処理対象水中での鉄炭化物100の効果持続時間を伸ばすことができる。鉄炭化物100の径はスクリーン23のメッシュ径より大きく、30~50mm程度である。鉄炭化物100の形状は、球状、円柱状、角柱状等のいずれでもよい。
【0017】
ポンプ61は、反応槽10の外部に設置されており、反応槽10に処理対象水を流入させる。ポンプ61が駆動されると、配管62を通じて反応槽10に処理対象水が流入する。
【0018】
散気管33は、反応槽10の内底面の少し上方、且つ、各内部区画20の直下の位置にそれぞれ配設されている。散気管33は反応槽10の外部に設置された曝気ブロア31と配管32を通じて接続されている。曝気ブロア31が気流を形成することにより、配管32を通じて散気管33に空気が供給され、さらに散気管33から反応槽10中にその空気が供給される。これにより、処理対象水中に酸素(本発明でいう酸化剤)が供給される。
【0019】
貯液槽40は、反応槽10の外部に設置されており、希塩酸41を収容する。例えば、食品添加物の10%希塩酸を使用すると、沈殿した汚泥を農地に還元しやすい。貯液槽40にはポンプ42、弁43及び配管44が接続されている。ポンプ42を駆動し弁43を開放することで、配管44を通じて希塩酸41を反応槽10に流入させる。
【0020】
貯液槽50は、反応槽10の外部に設置されており、苛性ソーダ51を収容する。貯液槽50にはポンプ52、弁53及び配管54が接続されている。ポンプ52を駆動し弁53を開放することで、配管54を通じて苛性ソーダ51を反応槽10に流入させる。
【0021】
貯液槽200は右側壁12の中間よりやや上方に固定されている。貯液槽200は、反応槽10における水処理が終了した処理対象水を収容する、上方に開口した箱型の容器である。貯液槽200は、反応槽10の右側壁12の上部と一体化されており、反応槽10の右側壁12の上部が貯液槽200の左側壁201を構成している。貯液槽200の右側壁202は左側壁201の上端より上下方向に高い位置にある。貯液槽200の底壁203には、配管210が接続されており、この配管210を通じて貯液槽200内の処理対象水が後段の装置や容器等に送られ、順次、処理されたり利用されたりする。
【0022】
制御部70は、本装置における各種ポンプ、弁等の動作を制御する。制御部70は、本制御を実行するための専用の制御回路によって構成されてもよいし、汎用のコンピュータとこれに各種の処理を実行させるソフトウェアとの協働により本制御が実行されるように構成されてもよい。制御部70にはpHメーター15によるpHの測定結果が入力される。制御部70は、曝気ブロア31、弁43及び53並びにポンプ42、52及び61の動作を制御する。この制御の内容は、pHメーター15からの入力内容に基づいて適宜調整される。
【0023】
水処理装置1は以下のように動作する。まず、収容工程(S1、本発明でいう第1工程)を行う。あらかじめ内部区画20に鉄炭化物100が収容された反応槽10に対し、制御部70がポンプ61を駆動し、配管62を通じて処理対象水を供給させる。制御部70によるポンプ61の制御は、単位時間当たりに反応槽10に供給される処理対象水の量が所定の大きさとなるように調整されている。
【0024】
次に、酸化工程(S2、本発明でいう第2工程)を行う。制御部70がポンプ42を駆動し弁43を開放して、配管44を通じて希塩酸41を反応槽10の処理対象水中に流入させる。制御部70は、pHメーター15からの入力結果に基づき、所定の長さを有する期間中、後述の化学式1に示す反応を所望の程度に維持できるpHになるようにポンプ42及び弁43の動作を制御する。これまでの実験により、pH3.0~4.0が好ましいことが分かっている。例えば、pHメーター15の値が4.0を超えた時、制御部70がポンプ42を駆動し、弁43を開放して希塩酸41を反応槽10に流入させる。そして、pHが3.0~4.0の範囲内になると、制御部70がポンプ42の動作を停止し、弁43を閉める。S2を行う期間の長さは、処理対象水の種類や汚濁の程度により適宜調整される。pH等の各種測定結果に基づいて制御部70がS2を行う期間の長さを自動で調整するように本装置が構成されていてもよい。
【0025】
鉄炭化物100は、鉄と炭素がアノードとカソードになり、これらの間の電位差による起電力を生じる。これにより、アノードとなる鉄の少なくとも一部が自発的に処理対象水中に溶出し、2価の鉄イオンとなる(下記の化学式1参照)。この反応は、処理対象水がpH3.0~4.0に維持された場合に好適な規模で進行する。また、処理対象水の汚濁成分も酸化が進行する。
[化学式1]
アノード(鉄)の反応:Fe→Fe2++2e
カソード(炭素)の反応:2H+2e→H
【0026】
また、制御部70は、曝気ブロア31を駆動し、配管32を通じて散気管33から空気を供給させることで、反応槽10の処理対象水中に酸素を供給する。これにより、化学式2に示すように、酸素によって2価の鉄イオンが酸化されて3価の鉄イオンとなる。なお、制御部70がS2を実行する機能が本発明でいう鉄酸化手段の機能に対応する。
[化学式2]
+4H+4e→2H
+2HO+4e→4OH
4Fe2++O+4H→2HO+4Fe3+
【0027】
次に、塩基投入工程(S3、本発明でいう第3工程)を行う。制御部70は、弁53及びポンプ52の動作を制御することで、処理対象水中に所定量の苛性ソーダを投入させる。これにより、処理対象水中に水酸化物イオンが生じる。水酸化物イオンと3価の鉄イオンは水酸化鉄(III)のコロイドを形成する。水酸化鉄(III)のコロイドが処理対象水中の汚濁成分と共に凝集して沈殿する。処理対象水に添加される苛性ソーダの量は、処理対象水中のpHがpH7.0程度になるよう、制御部70を制御することで適宜調整される。例えば、制御部70がポンプ52を制御することで苛性ソーダを反応槽10に流入させ続け、処理対象水中のpHがpH7.0になった時点で、制御部70がポンプ52の動作を停止させる。なお、制御部70がS3を実行する機能が本発明でいう塩基供給手段の機能に対応する。
【0028】
制御部70は、ポンプ61の駆動を継続することにより、単位時間当たりに所定の量の処理対象水を、配管62を通じて反応槽10に供給させる。供給された処理対象水には、最も左方の内部区画20から最も右方の内部区画20に向かう順に、各内部区画20においてS2及びS3における処理が施される。各内部区画20から次の内部区画20との間の空間には、右側壁22を跨ぐ越流により、S3において汚濁成分から分離された処理対象水の上澄みが流入する。この処理対象水は、さらに、次の内部区画20の左側壁21を下からくぐって次の内部区画20に流入する。そして、最も右方の内部区画20の上部からは、処理対象水の上澄みが溢れて貯液槽200に収容されつつ、配管210を通じて以降の処理や利用に係る装置や容器等に送られる。
【0029】
以上の実施形態によると、S2において処理対象水を酸性に保つことで、鉄炭化物100から鉄を自発的に処理対象水中に溶出させる。このため、外部から電圧を掛けなくとも処理対象水中に鉄を溶出させることができる。よって、鉄の溶出に電力を消費させなくて済む。また、S2において処理対象水中に酸素を放出することで、2価の鉄イオンを酸化させて3価の鉄イオンを生じさせると共に、S3において処理対象水に苛性ソーダを投入することで、水酸化鉄(III)のコロイドを形成する。水酸化鉄(III)のコロイドは、汚濁成分と共に凝集して沈殿する。このようにして、各工程において適宜の化学変化を発生させることで処理対象水から汚濁物質を適切に分離可能である。
【0030】
[実施例]
本発明に係る実施例として、上記実施形態のS2に相当する処理時間を変化させる実験を行った。本実験に係る反応槽10には1リットルのシリンダーを使用した。処理対象水としては大根加工食品工場で大根を破砕加工したときに出る大根汁排水500mlを使用した。鉄炭化物100は、径が30~50mmのほぼ球体のもの(商品名:スターエース)を4~5個使用した。散気管33にはエアーストーンを使用した。
【0031】
S1に相当する工程として、シリンダーに大根汁排水及び鉄炭化物100を収容した。次に、S2に相当する工程としてシリンダーに希塩酸を添加し、pHメーターでシリンダー内のpHを測定しpH3.0に調整した。エアーストーンでシリンダー内に常時曝気を行って、空気中の酸素を大根汁排水に放出した。大根汁排水に希塩酸1mmL/時間で添加し、大根汁排水のpHが3.2~3.5に維持されるようにした。なお、希塩酸は開始から7時間、大根汁排水に添加した。次に、S3に相当する工程として、3時間、6時間、10時間経過の後、メスシリンダーから大根汁排水をガラスボトルに移し替えて、それぞれの大根汁排水に苛性ソーダ3mLを添加した。大根汁排水に凝集反応が起こって沈殿が生じた後、径5mm程度のホースをメスシリンダーに入れサイホンで上澄液の大根汁排水を採水した。次に、大根汁排水の溶解性BOD(biochemical oxygen demand、生物学的酸素要求量)及びBODを測定した。2回の実験を行い、その結果を表1及び2に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1及び2に示すように、3時間処理後の大根汁排水のBODは10,000mg/mLから7,000mg/L又は4,900mg/Lに変化し、BOD除去率は30%又は51%であった。6時間処理後の大根汁排水のBODは10,000mg/mLから5,700mg/L又は4,800mg/Lに変化し、BOD除去率は43%又は52%であった。10時間処理後の大根汁排水のBODは10,000mg/mLから2,600mg/L又は2,100mg/Lに変化し、BOD除去率は74%又は79%であった。
【0035】
<その他の変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0036】
上述の実施形態では、本発明に係る水処理のみ行っている。しかし、水処理の前後に、ろ過、吸着等の物理化学反応や、細菌等の微生物により汚濁物質を分解する生物学的処理を行ってもよい。
【0037】
上述の実施形態では、外部から電圧を印加していない。しかし、鉄炭化物100に電圧を印加してもよい。鉄炭化物100からは上述の実施形態の通り自発的に鉄が溶出するので、電圧を印加するとしても、自発的な鉄の溶出を補助する程度の電圧の印加でよい。このため、比較的小さいエネルギー消費で処理対象水中に鉄を溶出させることができる。
【0038】
上述の実施形態では、鉄炭化物100を内部区画20に収容した後に、処理対象水を反応槽10に供給している。しかし、処理対象水を反応槽10に供給するのと鉄炭化物100を内部区画20に投入するのを同時に行ったり、鉄炭化物100を内部区画20に収容する前に処理対象水を反応槽10に供給したりしてもよい。
【0039】
上述の実施形態では、処理対象水を酸性に維持するために、希塩酸が使用されている。しかし、希硫酸等の酸が使用されてもよい。
【0040】
上述の実施形態では、塩基として苛性ソーダが使用されている。しかし、カリウム、炭酸カリウム等の塩基が使用されてもよい。食品添加物の炭酸カリウムを使用すると、沈殿した汚泥を農地に還元しやすい。
【0041】
上述の実施形態では、酸化剤として酸素を使用しているが、二酸化炭素(炭酸ガス)等を使用してもよい。
【0042】
上述の実施形態では、反応槽10は角柱状の容器である。しかし、円柱状の形状であってもよい。
【0043】
上述の実施形態では、反応槽10の左側壁11は、右側壁12よりやや上方に突出している。つまり、右側壁12は左側壁11より低く、これによって、水処理終了後の処理対象水を最も右方の内部区画20から貯液槽200に移動させることができる。しかし、反応槽の側壁の一部が開口していることで、処理が終了した処理対象水が次の貯液槽に流出する構造であってもよい。
【0044】
上述の実施形態では、反応槽10には3つの内部区画20が含まれている。しかし、内部区画は1つ、2つ、又は4つ以上であってもよいし、なくてもよい。内部区画20が1つの場合、処理対象水が1つの内部区画20を通った後、すぐに貯液層に送られる構成でもよい。また、内部区画20は円筒状であってもよい。
【0045】
上述の実施形態では、散気管33が各内部区画20の直下にそれぞれ配設されている。しかし、曝気量、反応槽10の有効体積等によって適宜大きさ及び個数が選択されてよい。
【0046】
上述の実施形態では、貯液槽200が反応槽10に固定されている。しかし、反応槽と配管が接続されており、その配管に接続した貯液槽に水処理が終了した処理対象水が送られてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 水処理装置
10 反応槽
20 内部区画
33 散気管
51 苛性ソーダ
61 ポンプ
70 制御部
100 鉄炭化物
図1
図2