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特開2023-148682セルフレベリング材添加繊維、それを含むセルフレベリング材、及びセルフレベリング材の製造方法
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  • 特開-セルフレベリング材添加繊維、それを含むセルフレベリング材、及びセルフレベリング材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148682
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】セルフレベリング材添加繊維、それを含むセルフレベリング材、及びセルフレベリング材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 16/06 20060101AFI20231005BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C04B16/06 E
C04B16/06 A
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056830
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山下 憲司
(72)【発明者】
【氏名】山本 基由
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA24
(57)【要約】
【課題】セルフレベリング材の流動性を損なわず、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れを抑制することができるセルフレベリング材添加繊維、それを含むセルフレベリング材、及びセルフレベリング材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ポリオレフィン系樹脂を含むセルフレベリング材添加繊維であって、前記セルフレベリング材添加繊維は、繊維断面の形状が3つ以上の凸部を有し、前記凸部は、長さLtと最大幅Wtの比Lt/Wtが0.5以上3以下である、セルフレベリング材添加繊維に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含むセルフレベリング材添加繊維であって
前記セルフレベリング材添加繊維は、繊維断面の形状が3つ以上の凸部を有し、
前記凸部は、長さLtと最大幅Wtの比Lt/Wtが0.5以上3以下である、セルフレベリング材添加繊維。
【請求項2】
前記凸部は、最大幅Wtが1.5μm以上30.0μm以下であり、長さLtが5.0μm以上50μm以下である、請求項1に記載のセルフレベリング材添加繊維。
【請求項3】
前記セルフレベリング材添加繊維は、繊維径が8μm以上83μm以下である、請求項1又は2に記載のセルフレベリング材添加繊維。
【請求項4】
前記凸部は、繊維の中心に向かってくびれた部分を有し、長さLtと根元部分の幅Wbの比Lt/Wbが0.8以上3.5以下であり、かつ最大幅Wtと根元部分の幅WbのWt/Wbが0.5以上3.5以下である、請求項1~3のいずれかに記載のセルフレベリング材添加繊維。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレン系樹脂を含む、請求項1~4のいずれかに記載のセルフレベリング材添加繊維。
【請求項6】
前記セルフレベリング材添加繊維は、繊維長が0.5mm以上20mm以下である、請求項1~5のいずれかに記載のセルフレベリング材添加繊維。
【請求項7】
前記セルフレベリング材添加繊維は、繊維長Lと繊維径Dの比L/Dで表されるアスペクト比が20以上660以下である、請求項1~6のいずれかに記載のセルフレベリング材添加繊維。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のセルフレベリング材添加繊維を0.03vol%以上0.25vol%以下含む、セルフレベリング材。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のセルフレベリング材添加繊維を含むセルフレベリング材の製造方法であって、
前記セルフレベリング材添加繊維をセルフレベリング性組成物に添加する工程、及び
得られたセルフレベリング材添加繊維を含むセルフレベリング性組成物を水と混合して、セルフレベリング材を得る工程を含み、
前記セルフレベリング材添加繊維は、セルフレベリング材中の含有量が0.03vol%以上0.25vol%以下となるように添加されることを特徴とする、セルフレベリング材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木関連分野で使用されるセルフレベリング材に添加する、セルフレベリング材添加繊維、それを含むセルフレベリング材、及びセルフレベリング材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木関連分野で、コンクリートの不陸面(壁面や床面が垂直または水平面になっていない、傾いている面)を平滑に仕上げる材料としてセルフレベリング材が使用されている。セルフレベリング材は、気象条件や下地の影響により硬化過程で表面にひび割れ(初期ひび割れ)が生じやすい問題があった。そこで、特許文献1では、セルフレベリング材に比重が1より小さい繊維を配合することで、硬化過程における初期ひび割れを抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-73247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、繊維の比重に着目しているが、セルフレベリング材の流動性を損なわずに、硬化過程における初期ひび割れを抑制する効果が十分ではない場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するため、セルフレベリング材の流動性を損なわず、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れを抑制することができるセルフレベリング材添加繊維、それを含むセルフレベリング材、及びセルフレベリング材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂を含むセルフレベリング材添加繊維であって、前記セルフレベリング材添加繊維は、繊維断面の形状が3つ以上の凸部を有し、前記凸部は、長さLtと最大幅Wtの比Lt/Wtが0.5以上3以下である、セルフレベリング材添加繊維に関する。
【0007】
本発明は、また、前記セルフレベリング材添加繊維を0.03vol%以上0.25vol%以下含む、セルフレベリング材に関する。
【0008】
本発明は、また、前記のセルフレベリング材添加繊維を含むセルフレベリング材の製造方法であって、前記セルフレベリング材添加繊維をセルフレベリング性組成物に添加する工程、及び得られたセルフレベリング材添加繊維を含むセルフレベリング性組成物を水と混合して、セルフレベリング材を得る工程を含み、前記セルフレベリング材添加繊維は、セルフレベリング材中の含有量が0.03vol%以上0.25vol%以下となるように水中に添加されることを特徴とする、セルフレベリング材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セルフレベリング材の流動性を損なわず、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れを抑制することができるセルフレベリング材添加繊維を提供することができる。
本発明によれば、流動性が良好であり、硬化過程における初期ひび割れが抑制されたセルフレベリング材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】四葉断面を有するポリプロピレン繊維の繊維断面の模式図である。
図2】比較例で用いたビニロン繊維の繊維断面の模式図である。
図3】比較例で用いたポリプロピレン連結繊維の単糸の繊維断面の模式図である。
図4】比較例で用いたポリプロピレン割繊維の繊維断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明者らは、比重が1より小さい繊維でも、セルフレベリング材に添加すると、セルフレベリング材の流動性を阻害し、初期ひび割れ抑制効果が不十分である問題を解決するために検討を重ねた。その結果、特定の断面形状を有し、ポリオレフィン系樹脂で構成されている繊維(以下において、単にポリオレフィン系繊維とも記す)を用いることで、セルフレベリング材の流動性を損なわないことを見出した。セルフレベリング材には、石膏系のセルフレベリング材とセメント系のセルフレベリング材があり、無水石膏等を含む石膏系のセルフレベリング材に比べてセメント系のセルフレベリング材はひび割れが生じやすいが、上記のような繊維を添加することで、セメント系セルフレベリング材の場合でも、硬化過程における初期ひび割れを効果的に抑制し得ることを見出した。
【0012】
具体的には、セルフレベリング材添加繊維として、繊維断面の形状が3つ以上の凸部を有するポリオレフィン系繊維を用いるとともに、凸部における長さLtと最大幅Wtの比を0.5以上3以下にすることで、セルフレベリング材における繊維の分散性が良好であり、セルフレベリング材の流動性を損なわず、セルフレベリング材、特にセメント系セルフレベリング材の場合でも、硬化過程における初期ひび割れを抑制することができる。
上述した特定の断面形状を有するポリオレフィン系繊維は、丸断面と比較して表面積が大きいが、凸部間に入り込んだセルフレベリング性組成物が大きく移動することがないために、見かけ上、丸断面に近い形状となり、流動性が丸断面の場合とほぼ変わらないと推測される。
また、上述した特定の断面形状を有するポリオレフィン系繊維は、丸断面と比較して表面積が大きく、セルフレベリング性組成物が凸部間に入り込みやすい、すなわちポリオレフィン系繊維がセルフレベリング性組成物を捕捉しやすいことから、補強効果に優れ、硬化過程における初期ひび割れを抑制し得ると推測される。
さらに、ポリオレフィン系繊維は、公定水分率が(20℃、65%RH)0%であり、親水化処理又は変性しても公定水分率が0.3%程度と低く、セルフレベリング材中の水分と繊維表面が馴染みやすい一方、繊維自体(繊維を構成する樹脂自体)が吸収しないため、セルフレベリング材の流動性を損なわない。
【0013】
本発明においては、特に記載がなければ繊維断面とは、当該繊維の長手方向に対し、垂直な面となるように切断した切断面(横断面)を指す。
【0014】
(セルフレベリング材添加繊維)
セルフレベリング材添加繊維において、繊維断面の形状が3つ以上の凸部を有する。凸部の数は、3個以上16個以下であることが好ましく、より好ましくは3個以上8個以下であり、さらに好ましくは3個以上5個以下である。セルフレベリング材添加繊維の断面形状が3つ以上の凸部を有することで、セルフレベリング性組成物と接触する表面積を増加し得るとともに、セルフレベリング性組成物が入り込むスペースを確保できる。本発明において、セルフレベリング性組成物とは、セメント系、石膏系、あるいはセラミック系等のセルフレベリング材を構成するセメント等を含む粉体混合物を意味し、市販の繊維を含まないセルフレベリング材もセルフレベリング性組成物に含まれる。
【0015】
セルフレベリング材添加繊維の繊維断面において、凸部は繊維の中心に向かってくびれた部分を有することが好ましい。この場合、凸部の根元部分は、隣り合うくびれた部分で構成されることになる。これにより、隣り合う凸部間に水や粉体が入り込み易くなる。このような繊維断面の具体的な形状としては、例えば、3個の凸部を有する三葉状、4個の凸部を有する四葉状、8個の凸部を有する八葉状等が挙げられる。
【0016】
セルフレベリング材添加繊維の繊維断面において、凸部の長さLtと凸部の最大幅Wtの比Lt/Wtが0.5以上3以下である。これにより、セルフレベリング材におけるセルフレベリング材添加繊維の分散性が良好になるとともに、セルフレベリング材の流動性を損なわず、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れも効果的に抑制することができる。Lt/Wtは0.7以上2.8以下であることが好ましく、0.9以上2.6以下であることがより好ましく、1.1以上2.4以下であることがさらに好ましい。凸部の最大幅Wtとは、凸部の2つの根元を結ぶ線の中点から凸部の先端までを結ぶ線を引き、その線から凸部の外周に向けて垂線を引いたときの最大長さをいう。凸部の長さLtは、凸部の2つの根元を結ぶ線の中点から凸部の先端までを結ぶ線の長さをいう。凸部の最大幅Wt及び長さLtは、繊維束の繊維断面を電子顕微鏡等で拡大して、任意の繊維10本を選択し、個々の繊維断面における凸部の最大幅Wt及び長さLtを計測し、それらの値を平均して求めることができる。
【0017】
凸部の最大幅Wtは、1.5μm以上30.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは3.0μm以上29.0μm以下であり、さらに好ましくは4.0μm以上27.0μm以下である。上記範囲内にあると、隣り合う凸部間に形成される凹部に水やセルフレベリング性組成物が入り込みやく、分散性が高まりやすく、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れもより効果的に抑制することができる。
【0018】
凸部の長さLtは、5.0μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは6.5μm以上45μm以下であり、さらに好ましくは7.5μm以上40μm以下である。上記範囲内であると、セルフレベリング性組成物を構成する粉体を捕捉しやすいことから、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れもより効果的に抑制することができる。
【0019】
凸部の長さLtと凸部の根元部分の幅Wbとの比Lt/Wbは0.8以上3.5以下であることが好ましく、より好ましくは1.1以上3.0以下であり、さらに好ましくは1.2以上2.8以下であり、特に好ましくは1.3以上2.6以下である。Lt/Wbが前記範囲であると、凸部が根元から変形しやすく、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れもより効果的に抑制する傾向がある。凸部の根元部分の幅Wbは、繊維束の繊維断面を電子顕微鏡等で拡大して、任意の繊維10本を選択し、個々の繊維断面における凸部の根元部分の幅Wbを計測し、それらの値を平均して求めることができる。
【0020】
凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbとの比Wt/Wbは、好ましくは0.5以上3.5以下であり、より好ましくは0.8以上3.0以下であり、さらに好ましくは1.4以上2.5以下であり、特に好ましくは1.5以上2.4以下である。Wt/Wbが上記範囲を満たすと、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れをより効果的に抑制する傾向がある。
【0021】
凸部の根元部分の幅Wbは、1.0μm以上22.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは2.2μm以上18.0μm以下であり、さらに好ましくは2.8μm以上15.0μm以下である。凸部の根元部分の幅Wbが前記範囲内にあると、隣り合う凸部間に形成される凹部にセルフレベリング性組成物が入り込みやすくなり、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れをより効果的に抑制する傾向がある。
【0022】
凸部は、繊維の長さ方向(繊維側面)に対して、連続、不連続のいずれであってもよいが、製造工程性を考慮すると、凸部は繊維側面において連続して存在していることが好ましい。
【0023】
セルフレベリング材添加繊維は、繊維長Lと繊維径Dの比L/Dで表されるアスペクト比が20以上660以下であることが好ましく、30以上400以下であることがより好ましく、50以上250以下であることがさらに好ましくい。L/Dが前記範囲であると、セルフレベリング材の流動性を低下させることなく、セルフレベリング材におけるセルフレベリング材添加繊維の分散性が向上するとともに、セルフレベリング材添加繊維とセルフレベリング性組成物のなじみが良好になり、補強効果が向上し、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れもより効果的に抑制される。本発明において、繊維径は、繊維断面の外接円の直径(最大差し渡し長さ)を意味する。なお、本発明において、繊維断面の外接円が存在しない場合は、繊維径は、最小包含円の最大差し渡し長さを意味する。
【0024】
セルフレベリング材添加繊維は、繊維径Dが8μm以上83μm以下であることが好ましく、10μm以上75μm以下であることがより好ましく、15μm以上65μm以下であることがさらに好ましく、18μm以上60μm以下であることが特に好ましい。繊維径が前記範囲であると、セルフレベリング材におけるセルフレベリング材添加繊維の分散性が向上するとともに、セルフレベリング材添加繊維とセルフレベリング性組成物とのなじみが良好になり、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れもより効果的に抑制される。
【0025】
セルフレベリング材添加繊維は、繊維長Lが0.5mm以上20mm以下であることが好ましく、1mm以上15mm以下であることがより好ましく、1.5mm以上10mm以下であることがさらに好ましく、2mm以上8mm以下であることが特に好ましい。繊維長が前記範囲であると、セルフレベリング材におけるセルフレベリング材添加繊維の分散性が向上するとともに、セルフレベリング性組成物となじみが良好になり、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れもより効果的に抑制される。
【0026】
セルフレベリング材添加繊維は、単繊維繊度が0.5dtex以上20.0dtex以下であることが好ましく、0.8dtex以上15.0dtex以下であることがより好ましく、1.0dtex以上8.0dtex以下であることがさらに好ましく、1.0dtex以上6.0dtex以下であることが特に好ましい。単繊維繊度が前記範囲であると、セルフレベリング材におけるセルフレベリング材添加繊維の分散性が向上するとともに、セルフレベリング材添加繊維とセルフレベリング性組成物とのなじみが良好になり、セルフレベリング材の硬化過程における初期ひび割れもより効果的に抑制される。
【0027】
セルフレベリング材添加繊維は、ポリオレフィン系樹脂で構成されていればよく、特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等が挙げられる。耐熱性及び汎用性の観点から、セルフレベリング材添加繊維は、ポリオレフィン系樹脂を50質量%以上含む合成繊維であることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂を60質量%以上含む合成繊維であることがより好ましく、ポリオレフィン系樹脂を75質量%以上含む合成繊維であることがさらに好ましく、ポリオレフィン系樹脂を85質量%以上含む合成繊維であることがさらにより好ましく、実質的にポリオレフィン系樹脂からなることが特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、耐アルカリ性の観点から、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0028】
前記ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンの含有量が50モル%を超えている、プロピレン及びそれと共重合可能な成分を含む共重合体であってもよい。プロピレンと共重合可能な成分としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、ブテン、メチルペンテン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。ポリプロピレンは、好ましくは、プロピレン単独重合体である。前記ポリプロピレンは、一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0029】
セルフレベリング材添加繊維は、2以上の成分からなる複合繊維であってよい。具体的には、同心芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、サイドバイサイド型複合繊維、分割型複合繊維及び海島型複合繊維のいずれであってもよい。
【0030】
セルフレベリング材添加繊維の公定水分率は、セルフレベリング材への分散性の観点から0.5%以下が好ましい。なお、公定水分率は、JIS L 0105に準じて、算出される。
【0031】
セルフレベリング材添加繊維は、繊維表面が親水化されていてもよい。これにより、セルフレベリング材添加繊維の付着水分率を高めることができ、水中やセルフレベリング材中の分散性が向上する。親水化処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、フッ素ガス処理(例えば、フッ素ガスと酸素ガスを含む混合ガスや、フッ素ガスと亜硫酸ガスを含む混合ガスを用いた処理が挙げられる)、オゾン処理(例えば、オゾン水溶液による処理や、オゾンガス処理等が挙げられる)、スルホン化処理(無水硫酸ガスを用いたスルホン化処理の他、発煙硫酸を用いたスルホン化処理、亜硫酸ガスを用いたスルホン化処理、熱濃硫酸を用いたスルホン化処理等が挙げられる)等が挙げられる。中でも、コロナ放電処理やプラズマ処理が好ましい。
【0032】
前記親水化処理として、繊維表面に界面活性剤を付着させることが好ましい。これにより、セルフレベリング材添加繊維の付着水分率を高めることができ、水中やセルフレベリング材中の分散性が向上する。上記界面活性剤としては、極性基を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、アルキルホスフェート系界面活性剤を用いることができる。アルキルホスフェート系界面活性剤としては、例えば、オクチルホスフェート、デシルホスフェート、ラウリルホスフェート、トリデシルホスフェート、ミリスチルホスフェート、セチルホスフェート、ステアリルホスフェートなどのアルキルホスフェート、及びポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、並びにこれらのナトリウム及びカリウムなどの金属塩などを用いることができる。
【0033】
セルフレベリング材添加繊維は、熱可塑性樹脂に無機物粒子を混合する方法、熱可塑性樹脂に親水化剤等を混合する方法、熱可塑性樹脂に極性基を有する変性ポリオレフィンを混合する方法、繊維表面に界面活性剤等を付着する方法等により、セルフレベリング材中の他の粉体材料との親和性を向上させてもよい。
【0034】
セルフレベリング材添加繊維は、セルフレベリング性組成物に水とともに添加して使用する場合、付着水分率が10%以上80%以下であることが好ましく、20%以上70%以下であることがより好ましく、25%以上65%以下であることがさらに好ましい。これにより、水中やグラウト材中の分散性が良好になる。本発明において、付着水分率は、公定水分率が0%の合成繊維に適用されるJIS L 1015 8.1.2(付着水分率)に準じて測定する。
【0035】
セルフレベリング材添加繊維は、ポリオレフィン系樹脂を含む、複数本のセルフレベリング材添加繊維の単繊維が集束剤で集束された集束繊維を含んでもよい。集束剤としては、例えば、スルホサクシネート塩、アルキルホスフェートアルカリ金属塩等を含む集束剤を用いることができる。集束剤を繊維質量に対して、1.0質量%以上になるように集束繊維に付着させることで、水を含まないセルフレベリング材、すなわちプレミックスセルフレベリング材中の分散性が良好となるため、好適に用いられる。プレミックスセルフレベリング材中の分散性をより高める観点から、前記集束繊維の付着水分率は0.5%以上5.0%以下であることが好ましく、0.8%以上3.0%以下であることがより好ましい。
【0036】
前記アルキルホスフェートアルカリ金属塩は、セルフレベリング材が水を含む場合、セルフレベリング材中に存在するセメント由来のカルシウムイオンとイオン結合を形成して、繊維の親水性及び繊維とセルフレベリング性組成物の親和性を向上させることができる。なかでもノルマルアルキルホスフェートアルカリ金属塩は、スラリー中で繊維表面に持続的なセメントに対する親和性を与えるので分散性を持続することができ、好ましい。前記ノルマルアルキルホスフェートアルカリ金属塩は、モノアルキルエステル及びジアルキルエステルのいずれでもよい。前記ノルマルアルキルホスフェートアルカリ金属塩において、アルキル基の炭素数は、8以上18以下であることが好ましく、10以上18以下であることがより好ましい。前記ノルマルアルキルホスフェートアルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩等が挙げられ、カリウム塩が好ましい。前記ノルマルアルキルホスフェートアルカリ金属塩としては、例えば、オクチルホスフェートカリウム塩、オクチルホスフェートナトリウム塩、デシルホスフェートカリウム塩、デシルホスフェートナトリウム塩、ラウリルホスフェートカリウム塩、ラウリルホスフェートナトリウム塩、トリデシルホスフェートカリウム塩、トリデシルホスフェートナトリウム塩、ミリスチルホスフェートカリウム塩、ミリスチルホスフェートナトリウム塩、セチルホスフェートカリウム塩、セチルホスフェートナトリウム塩、ステアリルホスフェートカリウム塩及びステアリルホスフェートナトリウム塩等が挙げられる。前記アルキルホスフェートアルカリ金属塩は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
前記集束剤は、前記スルホサクシネート塩やアルキルホスフェートアルカリ金属塩以外に他の成分を含んでもよい。他の成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、例えば、水溶性糊剤、非水溶性糊剤、アルキルホスフェートアルカリ金属塩以外の他の界面活性剤等を用いることができる。水溶性糊剤としては、例えば、コーンスターチ、タピオカ、植物性小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、植物性ガム類、アルファ澱粉、澱粉誘導体の酢酸澱粉、燐酸澱粉、酵素性澱粉、カチオン化澱粉、焙焼澱粉、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、陽性澱粉、シアノエチル化澱粉及びジアルデヒドデンプン等の澱粉類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、フノリ、カゼイン、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、並びにポリアクリル酸等を挙げることができる。また、非水溶性糊剤としては、例えば、酢酸ビニル系、酢酸ビニル-エチレン系、プロピレン系等を挙げることができる。他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、炭素数8以上22以下の高級脂肪酸金属塩、高級アルコール硫酸エステル金属塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンナフタレンスルホン酸金属塩、パラフィンスルホン酸金属塩、アルキルアミン塩、及びアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
(セルフレベリング材)
セルフレベリング材は、セルフレベリング性組成物に加えて、上述したセルフレベリング材添加繊維を0.03vol%以上0.25vol%以下含む。これにより、セルフレベリング材添加繊維が均一に分散されており、流動性を有するセルフレベリング材が得られる。セルフレベリング材は、セルフレベリング材添加繊維を0.05vol%以上0.23vol%以下含むことが好ましく、0.07vol%以上0.2vol%以下含むことがより好ましい。ここで、セルフレベリング材添加繊維の含有量は、セルフレベリング材において、セルフレベリング材添加繊維を除くその他の成分の合計体積(セルフレベリング性組成物と水の合計体積)を100体積%(100vol%)とした場合の体積含有量(vol%)である。
【0039】
セルフレベリング性組成物を構成する成分は、特に限定されず、一般的にセルフレベリング材に用いられるものを適宜用いることができる。セルフレベリング性組成物は、例えば、セメント、骨材、及び混和剤等を含んでもよい。
【0040】
セメントは、特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、及び耐硫酸塩ポルトランドセメント等が挙げられる。
【0041】
細骨材は、特に限定されず、例えば、珪砂、川砂、海砂、浜砂、砕石等が挙げられる。また、水酸化カルシウム、高炉スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ及び電気炉酸化スラグといった各種スラグ等の無機粉体を使用することができる。
【0042】
混和剤としては、例えば、流動化剤、膨張剤、硬化促進剤、防錆剤、凝結遅延剤、急結剤、及び収縮低減剤等が挙げられる。混和剤としては、通常、セルフレベリング材に用いるものを適宜用いることができる。
【0043】
流動化剤としては、AE剤、AE減水剤、高機能AE減水剤等を適宜用いることができ、具体的には、例えば、スルホン酸系流動化剤、ポリカルボン酸系流動化剤、ポリエーテル系流動化剤、ポリエーテルポリカルボン酸系流動化剤、カゼイン、カゼインカルシウム、リン酸エステル系界面活性剤、及び高縮合トリアジン系化合物等が挙げられる。スルホン酸系流動化剤としては、例えば、アリールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸系縮合物、ポリアルキルアリルスルホン酸塩等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
セルフレベリング材は、セルフレベリング材添加繊維を、セルフレベリング性組成物(例えば、セメント、細骨材、及び混和剤等を含む)、並びに水と混合することで得ることができる。セルフレベリング材添加繊維は、セルフレベリング材中の含有量が0.03vol%以上0.25vol%以下となるように添加されればよく、0.05vol%以上0.23vol%以下となるように添加されることが好ましく、0.07vol%以上0.2vol%以下となるように添加されることがより好ましい。セルフレベリング性組成物としては、セメント、細骨材、及び混和剤等を含む市販のセルフレベリング材等を用いてもよく、例えば、ポルトランドセメント、細骨材(珪砂、水酸化カルシウム)、及び流動化剤を含むセルフレベリング性組成物として、日本化成株式会社製のセメント系セルフレベリング材「NSニューハイレベラー」を用いてもよい。混合は、例えば、パン型ミキサー、オムニミキサー、グラウトミキサー、高速ハンドミキサー、モルタルミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー、及びホバートミキサー等の撹拌機を用いて行うことができる。
【0045】
セルフレベリング材は、セルフレベリング材添加繊維(以下において、「SL材添加繊維とも記す」を水中に添加してセルフレベリング材添加繊維の水分散液を作製し、得られたセルフレベリング材添加繊維の水分散液を、セルフレベリング性組成物と混合することで作製してもよく、あるいは、セルフレベリング材添加繊維を、セメント、細骨材、及び混和剤等を含むセルフレベリング性組成物と混合した後、さらに水と混合することで作製してもよい。
【0046】
セルフレベリング材は、流動性に優れる観点から、ガラス板上に配置された塩ビ管(内径50mm、長さ51mm、100mL)にセルフレベリング材を充填し、塩ビ管を引き抜いた際、広がったセルフレベリング材の長辺方向の長さ及びその直交方向の長さの平均値で示されるフロー値が190mm以上であることが好ましい。これにより、日本建築学会品質基準JASS 15 M-103セルフレベリング材の品質基準を満たし、コンクリートの不陸面(壁面や床面が垂直または水平面になっていない、傾いている面)を平滑に仕上げる材料として好適に用いることができる。
【0047】
セルフレベリング材は、硬化後の圧縮強度が20N/mm2以上であることが好ましい。これにより、日本建築学会品質基準JASS 15 M-103セルフレベリング材の品質基準を満たし、コンクリートの不陸面(壁面や床面が垂直または水平面になっていない、傾いている面)を平滑に仕上げる材料として好適に用いることができる。
【実施例0048】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(単繊維繊度)
JIS L 1015に準じて測定した。
【0050】
(付着水分率)
JIS L 1015 8.1.2に準じて付着水分率を測定した。具体的には、試料約5gを採り、その質量及び標準状態における質量を量り、次の式によって付着水分率(%)を算出し、2回の平均値をJIS-Z-8401によって小数点以下1桁に丸めた。
f=(m-m’)/m’×100
f:付着水分率(%)
m:試料の採取時の質量(g)
m':試料の標準状態における質量(g)
【0051】
(繊維径)
繊維束の繊維断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番「SU3500」)で観察し、2次元画像計測ソフト(スカラ株式会社製、Micro Measure)で繊維径を算出した。具体的には、図1~4に示すように、繊維断面1の外接円2の直径(最大差し渡し長さ)を測定し、繊維径Dとした。
【0052】
(凸部のWt、Lt、及びWb)
繊維束の繊維断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番「SU3500」)で観察し、2次元画像計測ソフト(スカラ株式会社製、Micro Measure)で、任意の繊維10本を選択し、個々の繊維における凸部のWt、Lt、及びWbを計測し、その平均値を求めた。個々の繊維において、凸部のWt、Lt、及びWbは、図1及び図3に示したとおりに計測した。
【0053】
(繊維の水中分散性)
水槽に水を80L入れ、繊維3gと分散剤水溶液(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル系分散剤、分散剤濃度2質量%)10mL投入し、2500rpmで2分間攪拌後に、下記の基準で目視判定した。
A:きれいに分散し、単繊維で存在する状態
B:未解繊が数個(5個以下)存在あるいは繊維が絡んで小塊(直径が約1mm程度以下)が存在する状態
C:未解繊が多数(5個を超える)存在あるいは繊維が絡んで大塊(直径が約1mmを超える)が存在する状態
【0054】
(繊維のセルフレベリング材における分散性)
セルフレベリング材における分散性を、下記の基準で目視判定した。
A:きれいに分散し、単繊維で存在する状態
B:未解繊が数個(5個以下)存在あるいは繊維が絡んで小塊(直径が約1mm程度以下)が存在する状態
C:未解繊が多数(5個を超える)存在あるいは繊維が絡んで大塊(直径が約1mmを超える)が存在する状態
【0055】
(フロー値)
ガラス板上に配置された塩ビ管(内径50mm、長さ51mm、100mL)にセルフレベリング材を充填し、塩ビ管を引き抜き、セルフレベリング材の広がりを、長辺方向の長さ及びその直交方向の長さを測定することで評価し、その平均値をフロー値とした。フロー値が190mm以上であると、日本建築学会品質基準JASS 15 M-103セルフレベリング材の品質基準を満たしており、流動性に優れることになる。
【0056】
(初期ひび割れ本数)
直方体の型枠(100mm×100mm×400mm)にコンクリートを80mm厚で屋外にて打設し、2時間後にセルフレベリング材を10mm厚流し込み、3時間後にひび割れ発生状況を目視観察し、ひび割れ本数を測定した。コンクリートの配合は、普通ポルトランドセメント336kg/m3、水154kg/m3、砂841kg/m3、砂利1083kg/m3であった。
【0057】
(密度)
セルフレベリング材を円柱状の型枠(直径50mm、高さ100mm)に充填し、打設した後、水中養生し、材齢28日で得られた硬化体を供試体とし、供試体の重量を測定し、供試体の体積及び重量に基づいて、密度を算出した。供試体の体積は、196.25cm3(直径50mm、高さ100mm)である。
【0058】
(圧縮強度)
セルフレベリング材を円柱状の型枠(直径50mm、高さ100mm)に充填し、打設した後、水中養生し、材齢28日で得られた硬化体を供試体とし、JIS A 1108に準じて圧縮強度を測定した。
【0059】
(実施例1)
単繊維繊度1.3dtex、繊維長3mmの四葉断面のPP繊維(大和紡績株式会社「マーキュリー(登録商標)C」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率51.4%)をSL材添加繊維として用いた。
【0060】
(実施例2)
単繊維繊度1.3dtex、繊維長6mmの四葉断面のPP繊維(大和紡績株式会社「マーキュリー(登録商標)C」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率52.1%)をSL材添加繊維として用いた。
【0061】
(実施例3)
単繊維繊度2.2dtex、繊維長3mmの四葉断面のPP繊維(大和紡績株式会社「マーキュリー(登録商標)C」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率50.8%)をSL材添加繊維として用いた。
【0062】
(実施例4)
単繊維繊度2.2dtex、繊維長6mmの四葉断面のPP繊維(大和紡績株式会社「マーキュリー(登録商標)C」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率51.0%)をSL材添加繊維として用いた。
【0063】
(実施例5)
単繊維繊度2.2dtex、繊維長12mmの四葉断面のPP繊維(大和紡績株式会社「マーキュリー(登録商標)C」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率51.5%)をSL材添加繊維として用いた。
【0064】
(実施例6)
単繊維繊度5.4dtex、繊維長3mmの四葉断面のPP繊維(大和紡績株式会社「マーキュリー(登録商標)C」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率50.5%)をSL材添加繊維として用いた。
【0065】
(実施例7)
単繊維繊度5.4dtex、繊維長15mmの四葉断面のPP繊維(大和紡績株式会社「マーキュリー(登録商標)C」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率50.6%)をSL材添加繊維として用いた。
【0066】
(比較例1)
単繊維繊度2.2dtex、繊維長3mmの丸断面のPP繊維(大和紡績株式会社「PZ」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率35.3%)をSL材添加繊維として用いた。
【0067】
(比較例2)
単繊維繊度2.2dtex、繊維長6mmの丸断面のPP繊維(大和紡績株式会社「PNHC」、プロピレン単独重合体からなる単一繊維、付着水分率34.8%)をSL材添加繊維として用いた。
【0068】
(比較例3)
単繊維繊度が2.2dtex、繊維長が6mmの略まゆ形断面のビニロン繊維(以下において、PVA繊維とも記す、付着水分率3.8%)をSL材添加繊維として用いた。
【0069】
(比較例4)
PP繊維である連結繊維(商品名「バルリンク」、萩原工業株式会社製、付着水分率0%)をSL材添加繊維として用いた。
【0070】
(比較例5)
PP繊維である割繊維(商品名「タフライトRG」、株式会社テザック製、付着水分率0%)をSL材添加繊維として用いた。
【0071】
下記表1に、実施例1~7、比較例1~5の繊維の繊維径D、アスペクト比、及び凸部寸法を示した。なお、下記表1において、連結繊維の繊維径Dは、単糸の外接円径を測定したものである。実施例1~7、比較例1、2、4及び5のPP繊維の公定水分率は0.0%(日本工業規格JIS L 0105 4.1に規定する値)であり、比較例3のPVA繊維の公定水分率は5.0%(日本工業規格JIS L 0105 4.1に規定する値)である。
【0072】
(実施例8~17)
セルフレベリング性組成物(日本化成株式会社製、「NSニューハイレベラー」、セメント系セルフレベリング材)にSL材添加繊維を、下記表2に示す配合量となるように添加し撹拌して混合した。そこへ水を添加して撹拌し、セルフレベリング材を作製した。セルフレベリング性組成物の配合量は1667kg/m3、水の配合量は400kg/m3となるようにした。SL材添加繊維の配合量は、セルフレベリング性組成物及び水の合計体積を100体積%(100vol%)とした場合の体積含有量(vol%)である。
【0073】
(比較例6)
繊維を用いず、セルフレベリング性組成物(日本化成株式会社製、「NSニューハイレベラー」、セメント系セルフレベリング材)に水を添加して撹拌し、セルフレベリング材を作製した。
【0074】
(比較例7~15)
下記表2に示すSL材添加繊維を下記表2に示す配合量となるようにした以外は、実施例8~17と同様にして、セルフレベリング材を作製した。
【0075】
実施例及び比較例で用いたSL材添加繊維の水中分散性及びセルフレベリング材における分散性を上述したとおりに評価した。また、実施例及び比較例のセルフレベリング材の密度及び圧縮強度を上述したとおりに評価した。実施例及び比較例のセルフレベリング材の初期ひび割れ本数を上述したとおりに測定した。結果を下記表2に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1及び表2から分かるように、セルフレベリング材添加繊維として繊維断面の形状が3つ以上の凸部を有し、凸部の寸法が特定の範囲を満たすポリプロピレン系繊維を用いた実施例では、少量添加でも、セルフレベリング性組成物に対する捕捉性が優れるため、硬化過程における初期ひび割れを抑制する効果が高い。また、セルフレベリング材における繊維の分散性が良好である上、添加量が少ないことから、セルフレベリング材の流動性が低減することもない。
【0079】
実施例10と比較例9の対比、実施例12と比較例11の対比から分かるように、3つ以上の凸部を有する特定の断面形状のPP繊維を用いた実施例の方が、丸断面のPP繊維を用いた比較例より、硬化過程における初期ひび割れを抑制する効果が高い。理由は定かではないが、3つ以上の凸部を有する特定の断面形状のPP繊維は、丸断面のPP繊維と比べて繊維表面積が大きく、セルフレベリング性組成物に対する捕捉性が優れるため、硬化過程における初期ひび割れを抑制する効果が高いと推定される。
【0080】
実施例13と比較例12の対比から分かるように、3つ以上の凸部を有する特定の断面形状のPP繊維を用いた実施例の方が、丸断面のPP繊維を用いた比較例より、少ない添加量で硬化過程における初期ひび割れを抑制する効果が高い。理由は定かではないが、3つ以上の凸部を有する特定の断面形状のPP繊維は、丸断面のPP繊維と比べて繊維表面積が大きく、セルフレベリング性組成物に対する捕捉性が優れるためと推定される。
【0081】
実施例8~10、12、14~16と比較例14~15の対比から分かるように、3つ以上の凸部を有する特定の断面形状のPP繊維を用いた実施例に対し、連結繊維又は割繊維を用いた比較例は、繊維分散性が劣り、硬化過程における初期ひび割れ抑制効果も劣る。理由は定かではないが、連結繊維又は割繊維は、繊維の付着水分率が低く、均一に分散していないため、分散性が劣ると推定される。さらに、凸部のくびれ部分を持たないため、セルフレベリング性組成物に対する捕捉性が劣り、初期ひび割れ抑制効果も劣ると推定される。
【0082】
実施例12と比較例13の対比より分かるように、3つ以上の凸部を有する特定の断面形状のPP繊維を用いた実施例に対し、PVA繊維を用いた比較例では、流動性が低下する傾向がある。理由は定かではないが、PVA繊維はPP繊維と比べて公定水分率が高く、セルフレベリング材中の水分を繊維自体(繊維を構成する樹脂自体)が吸収してしまうため、流動性が低下すると推定される。
図1
図2
図3
図4