(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148686
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電子機器および通知方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20231005BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20231005BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20231005BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20231005BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231005BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M10/42 P
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/392
H02J7/00 X
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056835
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】込山 広紀
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216CD03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA17
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD05
5G503GD06
5H030AA09
5H030AS11
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】電池の交換の時期となったことを、簡易な構成で精度良く通知する。
【解決手段】電子機器は、電池と、電池から電力が供給され、予め定められた動作タイミングにおいて所定処理を実行する負荷回路と、電池から出力される電圧の電圧値を検出する電圧検出回路と、電池から電力が供給され、負荷回路の動作を制御する制御回路と、を備え、制御回路は、動作タイミングより予め定められた時間前の第1タイミングにおける電圧値である第1電圧値と、動作タイミングより前であって第1タイミングから予め設定された第1時間後の第2タイミングにおける電圧値である第2電圧値と、予め設定された補正パラメータとに基づき、動作タイミングにおける電圧値である動作時電圧値を算出し、動作時電圧値に基づき電池の交換の時期となったことを示すアラート情報を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池から電力が供給され、予め定められた動作タイミングにおいて所定処理を実行する負荷回路と、
前記電池から出力される電圧の電圧値を検出する電圧検出回路と、
前記電池から電力が供給され、前記負荷回路の動作を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記動作タイミングより予め定められた時間前の第1タイミングにおける前記電圧値である第1電圧値と、前記動作タイミングより前であって前記第1タイミングから予め設定された第1時間後の第2タイミングにおける前記電圧値である第2電圧値と、予め設定された補正パラメータとに基づき、前記動作タイミングにおける前記電圧値である動作時電圧値を算出し、
前記動作時電圧値に基づき前記電池の交換の時期となったことを示すアラート情報を出力する
電子機器。
【請求項2】
表示装置をさらに備え、
前記制御回路は、前記アラート情報を前記表示装置に表示させる
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記電池から電力が供給され、前記負荷回路より小さい電流を消費する軽負荷回路と、
前記制御回路による制御によって、前記電池からの電力を前記軽負荷回路に供給するか否かを切り替えるスイッチと、
を備え、
前記制御回路は、
前記スイッチを制御して、前記第1タイミングにおいて、前記電池から前記軽負荷回路への電力の供給を停止させ、
前記スイッチを制御して、前記第2タイミングにおいて、前記電池から前記軽負荷回路へ電力を供給させる
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御回路は、前記動作時電圧値が予め設定された閾値電圧値より低い場合、前記アラート情報を出力する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御回路は、前記動作時電圧値に基づき、前記電池に蓄積された電力の残容量を推定し、推定した前記残容量が予め設定された閾値残容量より少ない場合、前記アラート情報を出力する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御回路は、前記第1電圧値をA、前記第2電圧値をB、前記動作時電圧値をC、および、補正パラメータをpとした場合、式(1)により前記動作時電圧値を算出する
C=A-{p×(A-B)}…(1)
請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記負荷回路は、定期的に前記所定処理を実行する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記負荷回路は、定期的に自身を識別する識別情報を含む信号を、予め定められた一定の電力の電波により無線送信する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記電池は、一次電池である
請求項1に記載の電子機器。
【請求項10】
電池と、前記電池から電力が供給され、予め定められた動作タイミングにおいて所定処理を実行する負荷回路を備える電子機器における、前記電池の交換の時期を通知する通知方法であって、
前記動作タイミングより予め定められた時間前の第1タイミングにおいて、前記電池から出力される電圧の電圧値である第1電圧値を検出し、
前記動作タイミングより前であって前記第1タイミングから第1時間後の第2タイミングにおいて、前記電池から出力される電圧の電圧値である第2電圧値を検出し、
前記第1電圧値と、前記第2電圧値と、予め設定された補正パラメータとに基づき、前記動作タイミングにおける前記電池の電圧値である動作時電圧値を算出し、
前記動作時電圧値に基づき前記電池の交換の時期を示すアラート情報を出力する
通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一次電池を用いる機器は、電池の残容量が低下して動作ができなくなる前に、電池の交換の時期となったことをユーザに通知できることが望ましい。例えば、機器は、電池の電圧を検出し、検出した電池の電圧が設定電圧よりも低くなった場合、電池の交換の時期となったことを示す情報をユーザに表示する。
【0003】
しかし、電池は、内部抵抗があり、消費電流が大きい程、電圧が低下する。このため、電池から出力される電圧は、無負荷または軽負荷において設定電圧より高い場合であっても、負荷での電力消費が大きい場合、機器が動作可能な電圧よりも低くなる可能性がある。
【0004】
特許文献1には、温度検出素子等を備え、様々な要因を考慮して正確な電池の残容量を表示する技術が記載されている。特許文献2には、負荷部の処理による電圧降下を利用して電池の残量を算出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-012104号公報
【特許文献2】特開2021-163597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電池の交換の時期となったことを、簡易な構成で精度良く通知することができる電子機器および通知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、電池と、前記電池から電力が供給され、予め定められた動作タイミングにおいて所定処理を実行する負荷回路と、前記電池から出力される電圧の電圧値を検出する電圧検出回路と、前記電池から電力が供給され、前記負荷回路の動作を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記動作タイミングより予め定められた時間前の第1タイミングにおける前記電圧値である第1電圧値と、前記動作タイミングより前であって前記第1タイミングから予め設定された第1時間後の第2タイミングにおける前記電圧値である第2電圧値と、予め設定された補正パラメータとに基づき、前記動作タイミングにおける前記電圧値である動作時電圧値を算出し、前記動作時電圧値に基づき前記電池の交換の時期となったことを示すアラート情報を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池の交換の時期となったことを、簡易な構成で精度良く通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、実施形態に係る電子機器から送信される信号の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電子機器における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、制御回路によるアラート表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、信号を無線送信する場合における、電池から出力される電圧および電池から出力される電流の波形図である。
【
図7】
図7は、電池の使用容量と、電池の無負荷時における電圧値との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る電子機器において算出された動作時電圧値と、電池の使用容量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る電子機器20を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る電子機器20を備える位置検出システム10を示す図である。位置検出システム10は、電子機器20と、複数の固定受信装置22と、情報処理装置24とを備える。
【0012】
電子機器20は、ユーザにより交換可能な一次電池または二次電池の電力で動作する機器である。本実施形態においては、電子機器20は、定期的に、自身を識別する識別情報を含む信号を電波により無線送信する無線送信装置である。これにより、電子機器20は、定期的に、識別情報を周囲の機器にブロードキャスト送信することができる。電子機器20は、例えばWi-Fi(登録商標)またはBLE(Bluetooth Low Energy)(Bluetoothは登録商標)等の無線通信方式により信号を無線通信する。
【0013】
電子機器20は、例えばユーザにより保持される。例えば、ユーザは、電子機器20が取り付けられたネックストラップを首にかけることにより、電子機器20を保持する。
【0014】
複数の固定受信装置22は、屋内または地下等における互いに異なる予め定められた位置に配置される。例えば、複数の固定受信装置22のそれぞれは、電子機器20から送信された信号を受信し、信号に含まれる識別情報および信号の電波強度を取得する。なお、複数の固定受信装置22は、屋外における互いに異なる予め定められた位置に配置されてもよい。
【0015】
情報処理装置24は、複数の固定受信装置22とネットワークを介して接続される。情報処理装置24は、複数の固定受信装置22のそれぞれから、識別情報、および、識別情報を含む信号の電波強度を取得する。情報処理装置24は、複数の固定受信装置22のそれぞれの位置、および、複数の固定受信装置22のそれぞれが受信した信号の電波強度に基づき、複数の固定受信装置22のそれぞれが受信した信号に含まれる識別情報により識別される電子機器20の位置を算出する。これにより、情報処理装置24は、電子機器20を保持するユーザの位置を検出することができる。
【0016】
図2は、実施形態に係る電子機器20から送信される信号の一例を示す図である。電子機器20は、例えば
図2に示すように、一定期間毎に、識別情報を含む信号を、予め定められた一定の電力の電波により無線送信する。従って、電子機器20は、予め定められた時刻において、無線送信のために一定の電力を消費する。
【0017】
なお、電子機器20は、一次電池または二次電池の電力により動作し、予め定められた動作タイミングにおいて一定の電力を消費する処理を実行する機器であれば、無線送信装置に限らず、他の機器であってもよい。
【0018】
図3は、実施形態に係る電子機器20の構成を示す図である。
【0019】
電子機器20は、電池32と、送信回路34と、軽負荷回路36と、スイッチ38と、電圧検出回路40と、表示装置42と、揮発メモリ46と、不揮発メモリ48と、制御回路50とを備える。
【0020】
電池32は、例えば、一次電池である。電池32は、例えばリチウムイオン電池である。電池32は、ユーザにより交換可能である。なお、電池32は、ユーザにより交換可能であれば、二次電池であってもよいし、リチウムイオン電池以外の一次電池または二次電池であってもよい。電池32は、電子機器20内の各回路に直流電力を供給する。
【0021】
送信回路34は、負荷回路の一例であり、電池32から電力が供給される。送信回路34は、予め定められた動作タイミングにおいて、所定処理を実行する。送信回路34は、所定処理を実行することより、予め定められた電力を消費する。本実施形態においては、送信回路34は、一定期間毎に、所定処理を実行する。本実施形態においては、送信回路34は、所定処理として、識別情報を含む信号を予め定められた一定の電力の電波により無線送信する。
【0022】
軽負荷回路36は、電池32から電力が供給される。軽負荷回路36は、消費する電流が、負荷回路である送信回路34における動作時に消費する電流より小さい。例えば、軽負荷回路36は、固定抵抗であってもよい。例えば、軽負荷回路36は、定電流回路であってもよい。
【0023】
スイッチ38は、制御回路50による制御によって、電池32からの電力を軽負荷回路36に供給するか否かを切り替える。例えば、スイッチ38は、制御回路50による制御によって、電池32の正極端子と軽負荷回路36との間を短絡する。これにより、スイッチ38は、電池32から軽負荷回路36へ電力を供給させる。また、スイッチ38は、制御回路50による制御によって、電池32の正極端子と軽負荷回路36との間を切断する。これにより、スイッチ38は、電池32から軽負荷回路36への電力の供給を停止させる。
【0024】
電圧検出回路40は、制御回路50により指定されたタイミングにおいて、電池32から出力される電圧の電圧値を検出する。電圧検出回路40は、検出した電圧値を制御回路50に与える。電圧検出回路40は、検出した電圧値を不揮発メモリ48に記憶させてもよい。
【0025】
表示装置42は、制御回路50による制御によって、ユーザに情報を表示する。本実施形態においては、表示装置42は、制御回路50による制御によって、電池32の交換の時期となったことを示すアラート情報を表示する。表示装置42は、液晶等の表示パネルであってもよいし、アラート情報を示す光を発光するLED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0026】
揮発メモリ46は、例えばRAM(Random Access Memory)である。揮発メモリ46は、制御回路50による処理の作業領域として機能する。
【0027】
不揮発メモリ48は、例えばROM(Read Only Memory)である。不揮発メモリ48は、制御回路50が実行するプログラムおよび制御回路50の処理により用いられるパラメータを記憶する。
【0028】
制御回路50は、CPU(Central Processing Unit)等の、予め不揮発メモリ48に記憶されたプログラムに従って動作するプロセッサである。制御回路50は、送信回路34および表示装置42の動作を制御する。また、制御回路50は、電圧検出回路40による電圧値の検出タイミングの制御をする。また、制御回路50は、電圧検出回路40により検出された電圧値を、電圧検出回路40から取得する。また、制御回路50は、スイッチ38の切り替えを制御する。
【0029】
そして、制御回路50は、送信回路34において実行される所定処理の動作タイミングを、制御および管理する。本実施形態においては、制御回路50は、送信回路34において実行される識別情報を含む信号を一定の電力で無線送信する処理の動作タイミングを制御および管理する。例えば、制御回路50は、送信回路34が識別情報を含む信号を送信する動作タイミングより前に、例えば送信用プログラムモジュールを実行し、送信回路34に送信準備を開始させ、動作タイミングにおいて信号を無線送信させる。
【0030】
また、制御回路50は、動作タイミングより予め定められた時間前の第1タイミングにおいて、電圧検出回路40に電池32の電圧値を検出させる。そして、制御回路50は、第1タイミングにおける電池32の電圧値である第1電圧値を取得する。第1タイミングは、例えば、送信回路34による信号送信のための送信準備を開始する前のタイミングである。
【0031】
また、制御回路50は、動作タイミングより前であって、第1タイミングから予め設定された第1時間後の第2タイミングにおいて、電圧検出回路40に電池32の電圧値を検出させる。そして、制御回路50は、第2タイミングにおける電池32の電圧値である第2電圧値を取得する。
【0032】
また、制御回路50は、第1タイミングより前において、スイッチ38を制御して切断状態としておき、第1タイミングにおいて電池32から軽負荷回路36への電力の供給を停止させる。これにより、制御回路50は、軽負荷回路36による電力消費がされていない状態における電池32から出力される電圧の電圧値を、第1電圧値として取得することができる。
【0033】
また、制御回路50は、第1タイミングより後、第2タイミングより前に、スイッチ38を制御して短絡状態としておき、第2タイミングにおいて電池32から軽負荷回路36へ電力を供給させる。これにより、制御回路50は、軽負荷回路36による電力消費がされている状態における電池32から出力される電圧の電圧値を、第2電圧値として取得することができる。
【0034】
また、制御回路50は、第1電圧値と、第2電圧値と、予め設定された補正パラメータとに基づき、動作タイミングにおける電池32の電圧値である動作時電圧値を算出する。補正パラメータは、不揮発メモリ48に予め記憶されている。なお、動作時電圧値の具体的な算出方法については、
図6を参照して詳細を後述する。また、制御回路50は、動作時電圧値に基づき、電池32に蓄積された電力の残容量を推定してもよい。
【0035】
そして、制御回路50は、動作時電圧値に基づき電池32の交換の時期となったことを示すアラート情報を、表示装置42へと出力し、アラート情報を表示装置42に表示させる。例えば、制御回路50は、動作時電圧値と予め設定された閾値電圧値とを比較して、動作時電圧値が閾値電圧値より低い場合、アラート情報を出力する。なお、電池32に蓄積された電力の残容量を推定した場合には、制御回路50は、推定した残容量と予め設定された閾値残容量とを比較し、推定した残容量が閾値残容量より少ない場合、アラート情報を出力してもよい。
【0036】
図4は、実施形態に係る電子機器20における処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
電子機器20は、所定時間毎に、S12からS18の処理を実行する(S11とS19との間のループ処理)。例えば、電子機器20は、識別情報を含む信号を送信する送信間隔毎に、S12からS18の処理を実行する。なお、電子機器20は、S12からS18のうちの、S12からS17までの処理については、実行しない場合があってもよい。例えば、電子機器20は、本フローをn回(nは2以上の整数)実行する毎に、S12からS17の処理を例えばm回(mはnより小さい1以上の整数)実行してもよい。
【0038】
まず、S12において、制御回路50は、第1タイミングとなったか否かを判断する。第1タイミングは、送信回路34の次の動作タイミング、すなわち、送信回路34が次に信号を送信するタイミングより、予め定められた時間前の時刻である。制御回路50は、第1タイミングとなっていない場合(S12のNo)、処理をS12で待機する。制御回路50は、第1タイミングとなった場合(S12のYes)、処理をS13に進める。
【0039】
S13において、制御回路50は、電圧検出回路40に電圧値を検出させる。なお、第1タイミングにおいて、スイッチ38は、切断状態とされている。従って、電圧検出回路40は、第1タイミングにおける、電池32から軽負荷回路36への電力の供給がされていない状態での、電池32から出力される電圧の電圧値である第1電圧値を検出する。制御回路50は、第1電圧値を電圧検出回路40から受け取り、例えば揮発メモリ46に記憶させる。
【0040】
続いて、S14において、制御回路50は、スイッチ38を制御して短絡状態とし、電池32から軽負荷回路36へ電力を供給させる。
【0041】
続いて、S15において、制御回路50は、第2タイミングとなったか否かを判断する。第2タイミングは、送信回路34の次の動作タイミングより前であって、第1タイミングから予め設定された第1時間後の時刻である。制御回路50は、第2タイミングとなっていない場合(S15のNo)、処理をS15で待機する。制御回路50は、第2タイミングとなった場合(S15のYes)、処理をS16に進める。
【0042】
S16において、制御回路50は、電圧検出回路40に電圧値を検出させる。なお、第2タイミングにおいて、スイッチ38は、短絡状態とされている。従って、電圧検出回路40は、第2タイミングにおける、電池32から軽負荷回路36への電力の供給がされている状態での、電池32から出力される電圧の電圧値である第2電圧値を検出する。制御回路50は、第2電圧値を電圧検出回路40から受け取り、例えば揮発メモリ46に記憶させる。
【0043】
続いて、S17において、制御回路50は、スイッチ38を制御して切断状態とし、電池32から軽負荷回路36への電力供給を停止させる。
【0044】
続いて、S18において、送信回路34は、予め設定された動作タイミングにおいて、識別情報を含む信号を予め定められた電力で無線送信する。
【0045】
電子機器20は、以上の処理を所定時間毎に繰り返す。これにより、電子機器20は、所定時間毎に、識別情報を含む信号を送信することができる。さらに、電子機器20は、第1タイミングにおける電池32の電圧値である第1電圧値および第2タイミングにおける電池32の電圧値である第2電圧値を検出することができる。なお、制御回路50は、S17の処理を、S18の後であって、次のループにおけるS12の前までに行ってもよい。
【0046】
図5は、制御回路50によるアラート表示処理の流れを示すフローチャートである。
【0047】
制御回路50は、例えば定期的またはユーザ等から指示を受け付けた場合、
図5に示す流れで処理を行う。
【0048】
まず、S31において、制御回路50は、直近において検出された第1電圧値および第2電圧値を揮発メモリ46から読み出す。続いて、S32において、制御回路50は、予め設定された補正パラメータを不揮発メモリ48から読み出す。
【0049】
続いて、S33において、制御回路50は、第1電圧値と第2電圧値と補正パラメータとに基づき、動作タイミングにおける電池32から出力される電圧の電圧値である動作時電圧値を算出する。なお、動作時電圧値の具体的な算出方法については、
図6を参照して詳細を後述する。
【0050】
続いて、S34において、制御回路50は、動作時電圧値に基づき、電池32に蓄積された電力の残容量を推定する。例えば、制御回路50は、予め設定された動作時電圧値と残容量との対応関係を示すテーブルまたは関数を用いて、動作時電圧値に基づき残容量を推定する。なお、制御回路50は、S34の処理を実行しなくてもよい。
【0051】
続いて、S35において、制御回路50は、動作時電圧値と予め設定された閾値電圧値とを比較して、動作時電圧値が閾値電圧値より低いか否かを判断する。動作時電圧値が閾値電圧値より低くない場合、すなわち、動作時電圧値が閾値電圧値以上である場合(S35のNo)、制御回路50は、本フローを終了する。動作時電圧値が閾値電圧値より低い場合(S35のYes)、制御回路50は、処理をS36に進める。
【0052】
なお、制御回路50は、推定した残容量と予め設定された閾値残容量とを比較して、残容量と閾値残容量より低いか否かを判断してもよい。そして、残容量が閾値残容量より低くない場合、すなわち、残容量が閾値残容量以上である場合(S35のNo)、制御回路50は、本フローを終了する。残容量が閾値残容量より低い場合(S35のYes)、制御回路50は、処理をS36に進める。
【0053】
S36において、制御回路50は、電池32の交換の時期となったことを示すアラート情報を表示装置42に表示させる。例えば、制御回路50は、アラート情報として、電池32の交換の時期となったことを示す文字または記号等を表示装置42に表示させてもよい。また、例えば、制御回路50は、アラート情報として、電池32の交換の時期となったことを示す色のLEDを表示させてもよい。また、制御回路50は、アラート情報を表示させるとともに、または、アラート情報の表示に代えて、電池32の交換の時期となったことを示す音声を出力してもよい。制御回路50は、S36の処理を終えると、本フローを終了する。
【0054】
図6は、信号を無線送信する場合における、電池32から出力される電圧および電池32から出力される電流の波形図である。
【0055】
送信回路34は、動作タイミングより所定時間前から、信号送信の準備動作のために電流の消費を開始する。従って、電池32から出力される電流は、
図6に示すように、動作タイミングより所定時間前から時間経過に従って増加する。さらに、電池32から出力される電流は、動作タイミングにおいてピークとなり、動作タイミングにおいてピークとなった後、時間経過に従って減少する。
【0056】
また、電池32から出力される電圧は、電流の増加に従って減少し、電流の減少に従って増加する。従って、電池32から出力される電圧は、
図6に示すように、動作タイミングより所定時間前から、時間経過に従って減少し、動作タイミングにおいて最低電圧となる。そして、電池32から出力される電圧は、動作タイミングにおいて最低電圧となった後に、時間経過に従って増加する。
【0057】
第1タイミングは、動作タイミングより予め定められた時間前の時刻である。制御回路50は、動作タイミングを管理しているので、第1タイミングを特定することができる。また、第1タイミングは、送信回路34により信号送信のための電流消費の影響がない時刻が好ましい。従って、第1タイミングは、送信回路34により信号送信のための準備動作が開始される以前の時刻が好ましい。
【0058】
第2タイミングは、動作タイミングより前であって、第1タイミングから予め定められた第1時間後の時刻である。制御回路50は、第1タイミングから時刻経過をカウントすることにより、第2タイミングを特定することができる。
【0059】
また、第2タイミングは、送信回路34により信号送信の準備動作が開始された後の時刻である。制御回路50は、スイッチ38を制御して、第1タイミングにおいて、電池32から軽負荷回路36への電力の供給を停止させた状態とする。制御回路50は、第1タイミングの後、第2タイミングの前において、スイッチ38を制御して、電池32から軽負荷回路36へ電力を供給させる。従って、第2タイミングにおける電池32の電圧は、第1タイミングにおける電池32の電圧よりも低下している。
【0060】
ここで、送信回路34による信号送信のために消費する電流のプロファイルは、送信回路34が一定電力で信号を送信することから、信号を送信する毎に変化は無く、一定である。また、軽負荷回路36の消費電力は、軽負荷回路36が固定抵抗または定電流回路である場合、温度に応じて変化する。しかし、軽負荷回路36の消費電力は、電池32から発生される電圧の温度変化と同様に温度変化するので、温度変化の影響が打ち消されるように変化する。従って、第1タイミングにおける電池32の電圧値と、第2タイミングにおける電池32の電圧値と、動作タイミングにおける電池32の電圧値との相対的な電圧関係は、一定であると推定される。このことから、制御回路50は、第1タイミングにおける電池32の電圧値である第1電圧値、第2タイミングにおける電池32の電圧値である第2電圧値、および、予め設定された補正パラメータに基づき、動作タイミングにおける電池32の電圧値である動作時電圧値を算出することができる。
【0061】
例えば、第1電圧値をA、第2電圧値をB、動作時電圧値をC、および、補正パラメータをpとした場合、制御回路50は、式(1)により動作時電圧値を算出する。
C=A-{p×(A-B)}…(1)
【0062】
すなわち、制御回路50は、第1電圧値から第2電圧値を減算した差分値に補正パラメータを乗じた値{p×(A-B)}を、第1電圧値(A)から減算した値を、動作時電圧値として算出する。
【0063】
ここで、補正パラメータは、例えば設計時または工場出荷時等において設定される。例えば、設計者等は、第1タイミングにおいて電池32から出力される電流の電流値、第2タイミングにおいて電池32から出力される電流の電流値、および、動作タイミングにおいて電池32から出力される電流の電流値を、シミュレーションまたは計測により取得する。そして、第1タイミングにおいて電池32から出力される電流の電流値をa、第2タイミングにおいて電池32から出力される電流の電流値をb、および、動作タイミングにおいて電池32から出力される電流の電流値をcとした場合、設計者等は、式(2)により補正パラメータであるpを算出する。
p=c/(b-a)…(2)
【0064】
そして、設計者は、このように算出した補正パラメータを、電子機器20における不揮発メモリ48に記憶させる。
【0065】
図7は、5個の電池32のそれぞれを電子機器20に取り付けて、25℃で1秒毎に信号を送信した場合における、電池32の使用容量と、無負荷時の電池32の電圧との関係を示す図である。
【0066】
無負荷時の電池32の電圧は、所定使用容量となるまで、減少量が小さくほぼ一定である。そして、無負荷時の電池32の電圧は、所定使用容量を超えると、急峻に低下する。このため、制御回路50は、無負荷時の電池32の電圧を検出しても、所定使用容量まで一定であるので、電池32の残容量が無くなる前に電池32の交換の時期を検出することは非常に困難である。
【0067】
図8は、5個の電池32のそれぞれを電子機器20に取り付けて、25℃で1秒毎に信号を送信した場合における、電池32の使用容量と、実施形態に係る電子機器20において算出された動作時電圧値との関係を示す図である。
【0068】
実施形態に係る電子機器20により算出される動作時電圧は、使用容量の増加に従って、比較的にリニアに減少し、ある使用容量を超えると、急峻に低下する。このため、制御回路50は、動作時電圧を算出し、算出した動作時電圧に基づき使用容量を精度良く推定することができる。従って、制御回路50は、算出した動作時電圧と予め設定された閾値電圧とを比較することにより、電池32の残容量が無くなる前に、電池32の交換の時期を、精度良く検出することができる。また、制御回路50は、算出した動作時電圧から例えば予め設定されたテーブルまたは関数に基づき残容量を算出し、算出した残容量と予め設定された閾値残容量とを比較することにより、電池32の残容量が無くなる前に、電池32の交換の時期を検出することができる。
【0069】
さらに、実施形態に係る電子機器20により算出される動作時電圧は、送信回路34による電力消費の影響の無い第1タイミングにおける第1電圧値と、軽負荷回路36により電力消費がされた第2タイミングにおける第2電圧値とに基づき、推定される。軽負荷回路36の電力消費は、電池32の電圧の温度変化の影響が打ち消されるように変化する。これにより、制御回路50は、温度変化に依らず精度良く動作時電圧を算出して、電池32の残容量が無くなる前に電池32の交換の時期を精度良く検出することができる。
【0070】
以上のように本実施形態に係る電子機器20によれば、電池32の交換の時期となったことを、簡易な構成で、精度良くユーザに通知することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
20 電子機器
32 電池
34 送信回路
36 軽負荷回路
38 スイッチ
40 電圧検出回路
42 表示装置
46 揮発メモリ
48 不揮発メモリ
50 制御回路