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特開2023-14869データ処理装置、データ処理システム、データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014869
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理システム、データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20230124BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20230124BHJP
   B23K 11/36 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
G01N29/06
B23K31/00 K
B23K11/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119054
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真拡
(72)【発明者】
【氏名】千葉 康徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏昌
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB07
2G047BA03
2G047BB01
2G047BC03
2G047CA01
2G047EA12
2G047GH19
(57)【要約】
【課題】溶接及び検査に関するデータについて、利便性を向上可能な、データ処理装置、データ処理システム、データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】実施形態に係るデータ処理装置は、複数の部品を接合して接合体を作製する溶接装置から、前記溶接装置を識別するための溶接装置IDを含む溶接装置データを受信する。前記データ処理装置は、位置データ及び角度データを含む検査データを受信する。前記位置データは、前記接合体への超音波を用いた探査の結果から算出され、前記接合体における溶接部の位置を示す。前記角度データは、前記溶接部の角度を示す。前記データ処理装置は、前記検査データを前記溶接装置データと紐付ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を接合して接合体を作製する溶接装置から、前記溶接装置を識別するための溶接装置IDを含む溶接装置データを受信し、
前記接合体への超音波を用いた探査の結果から算出され、前記接合体における溶接部の位置を示す位置データと、前記溶接部の角度を示す角度データと、を含む検査データを受信し、
前記検査データを前記溶接装置データと紐付ける、データ処理装置。
【請求項2】
複数の前記溶接装置データ及び複数の前記検査データを受信し、
時間に対する複数の前記位置の変化又は複数の前記角度の変化を、出力装置に出力させる、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
複数の前記溶接装置データ及び複数の前記検査データを受信し、
時間に対する複数の前記位置の変化又は複数の前記角度の変化を示すユーザインターフェースを出力装置に表示させ、
前記ユーザインターフェースにおいて、前記複数の位置のいずれか又は前記複数の角度のいずれかの選択を受け付け、
選択された前記位置データ又は前記角度データを含む前記複数の検査データの1つと紐付けられた複数の前記溶接装置IDの1つを、前記出力装置に表示させる、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記複数の検査データのそれぞれは、前記結果に基づく前記溶接部を示す画像、前記溶接部の厚さ、前記溶接部表面の窪みの深さ、及び前記溶接部の径から選択される少なくとも1つのデータをさらに含み、
前記複数の位置のいずれか又は前記複数の角度のいずれかの選択を受け付けると、前記複数の検査データの前記1つに含まれる前記少なくとも1つのデータを、前記出力装置にさらに表示させる、請求項3記載のデータ処理装置。
【請求項5】
選択された前記複数の位置のいずれか又は前記複数の角度のいずれかに関する溶接の条件を示す溶接条件データを、前記出力装置にさらに表示させる、請求項3又は4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記溶接条件データは、前記複数の部品に通電される電流値、前記複数の部品への加圧力、前記複数の部品への加圧時間、及び前記溶接装置における電極の連続使用回数から選択される1つ以上をさらに含む、請求項5記載のデータ処理装置。
【請求項7】
複数の前記溶接装置データ及び複数の前記検査データを受信し、
時間に対する複数の前記位置の変化又は複数の前記角度の変化を示すユーザインターフェースを出力装置に表示させ、
前記ユーザインターフェースにおいて、いずれかの前記時間の選択を受け付け、
選択された前記時間で得られた前記複数の検査データの1つを、前記出力装置に表示させる、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記位置データの前記位置又は前記角度データの前記角度が閾値を超えた場合、通知を出力する、請求項1~7のいずれか1つに記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記位置又は前記角度が閾値を超えた場合、前記検査データ及び前記溶接装置データの1つ以上を、出力装置に出力させる、請求項8記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記溶接装置IDの前記1つによって識別される前記溶接装置が実行した溶接の条件を示し、前記溶接装置における電極の連続使用回数を含む溶接条件データを受信し、
前記位置又は前記角度が閾値を超えた場合、前記連続使用回数が下限値を下回る又は上限値を上回るか判定し、
前記連続使用回数が前記下限値を下回る又は前記上限値を上回る場合、前記電極の不良の可能性を示す通知及び前記電極のメンテナンスを促す通知から選択される1つ以上を出力する、請求項8又は9に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
前記溶接装置データは、前記溶接装置の稼働開始日を含む、請求項1~10のいずれか1つに記載のデータ処理装置。
【請求項12】
前記接合体における前記溶接部を識別するためのデータを含む溶接部データをさらに受信し、
前記溶接部データを、前記検査データ及び前記溶接装置データと紐付けて保存する、請求項1~11のいずれか1つに記載のデータ処理装置。
【請求項13】
前記位置又は前記角度が閾値を超えた場合、前記溶接装置によって実行される溶接の条件を修正する、請求項1~12のいずれか1つに記載のデータ処理装置。
【請求項14】
前記位置又は前記角度が閾値を超えた場合、前記位置又は前記角度の原因の推定結果を出力装置に出力させる、請求項1~13のいずれか1つに記載のデータ処理装置。
【請求項15】
複数の前記原因と、前記複数の原因の可能性をそれぞれ示す複数のスコアと、を前記出力装置に出力させる、請求項14記載のデータ処理装置。
【請求項16】
前記探査の前記結果は、前記溶接部からの前記超音波の反射波強度を示す強度データを含み、
前記溶接部の前記位置は、前記強度データにおける前記溶接部の中心位置である、請求項1~15のいずれか1つに記載のデータ処理装置。
【請求項17】
前記中心位置は、前記強度データにおける前記溶接部の重心位置である、請求項16記載のデータ処理装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1つに記載のデータ処理装置と、
前記探査を実行し、前記検査データを生成する検査装置と、
を備えた、データ処理システム。
【請求項19】
前記溶接装置をさらに備えた、請求項18記載のデータ処理システム。
【請求項20】
処理装置に、
複数の部品を接合して接合体を作製する溶接装置から、前記溶接装置を識別するための溶接装置IDを含む溶接装置データを受信させ、
前記接合体への超音波を用いた探査の結果から算出され、前記接合体における溶接部の位置を示す位置データと、前記溶接部の角度を示す角度データと、を含む検査データを受信させ、
前記検査データを前記溶接装置データと紐付けて保存させる、
データ処理方法。
【請求項21】
前記処理装置に、
複数の前記溶接装置データ及び複数の前記検査データを受信させ、
時間に対する複数の前記位置の変化又は複数の前記角度の変化を示すユーザインターフェースを前記出力装置に表示させ、
前記ユーザインターフェースにおいて、前記複数の位置のいずれか又は前記複数の角度のいずれかの選択を受け付けさせ、
選択された前記位置データ又は前記角度データを含む前記複数の検査データの1つと紐付けられた複数の前記溶接装置IDの1つを、前記出力装置に表示させる、
請求項20記載のデータ処理方法。
【請求項22】
前記処理装置に、
複数の前記溶接装置データ及び複数の前記検査データを受信させ、
時間に対する複数の前記位置の変化又は複数の前記角度の変化を示すユーザインターフェースを前記出力装置に表示させ、
前記ユーザインターフェースにおいて、いずれかの前記時間の選択を受け付けさせ、
選択された前記時間で得られた前記複数の検査データの1つを、前記出力装置に表示させる、
請求項20記載のデータ処理方法。
【請求項23】
前記探査の前記結果は、前記溶接部からの前記超音波の反射波強度を示す強度データを含み、
前記溶接部の前記位置は、前記強度データにおける前記溶接部の中心位置である、請求項20~22のいずれか1つに記載のデータ処理方法。
【請求項24】
前記中心位置は、前記強度データにおける前記溶接部の重心位置である、請求項23記載のデータ処理方法。
【請求項25】
処理装置に、請求項20~24のいずれか1つに記載のデータ処理方法を実行させる、プログラム。
【請求項26】
請求項25記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、データ処理装置、データ処理システム、データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部品を溶接する溶接装置がある。また、溶接された接合体を検査する検査装置がある。溶接装置及び検査装置を含む製造ラインでは、溶接及び検査に関する種々のデータが得られる。これらのデータについての利便性を向上できる技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-278809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、溶接及び検査に関するデータについて、利便性を向上可能な、データ処理装置、データ処理システム、データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るデータ処理装置は、複数の部品を接合して接合体を作製する溶接装置から、前記溶接装置を識別するための溶接装置IDを含む溶接装置データを受信する。前記データ処理装置は、位置データ及び角度データを含む検査データを受信する。前記位置データは、前記接合体への超音波を用いた探査の結果から算出され、前記接合体における溶接部の位置を示す。前記角度データは、前記溶接部の角度を示す。前記データ処理装置は、前記検査データを前記溶接装置データと紐付ける。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るデータ処理システムを示す模式図である。
図2】溶接装置を例示する模式図である。
図3】抵抗スポット溶接の様子を表す模式図である。
図4】抵抗スポット溶接時の電流及び圧力を表す模式図である。
図5】部品データを例示する表である。
図6】溶接部データを例示する表である。
図7】溶接装置データを例示する表である。
図8】溶接条件データを例示する表である。
図9】紐付データを例示する表である。
図10】検査装置を例示する模式図である。
図11】検出器及び接合体の構造を示す模式図である。
図12】実施形態に係る検査装置の動作を説明するための模式図である。
図13】三次元的な反射波の強度分布を示す画像の一例である。
図14】二次元的な反射波の強度分布を示す画像の一例である。
図15】特定された溶接部を示す画像の一例である。
図16】検出器を示す模式図である。
図17】検査データを例示する表である。
図18】紐付データを例示する表である。
図19】実施形態に係るデータ処理装置による処理を示すフローチャートである。
図20】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図21】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図22】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図23】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図24】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図25】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図26】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図27】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図28】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図29】ルールを例示する表である。
図30】出力例を説明するための図である。
図31】出力例を説明するための図である。
図32】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
図33】ハードウェア構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係るデータ処理システムを示す模式図である。
実施形態に係るデータ処理システム1は、データ処理装置10、記憶装置20、出力装置30、入力装置40、溶接装置100、及び検査装置200を含む。
【0009】
データ処理装置10は、溶接装置100及び検査装置200からデータを受信し、受信したデータを処理する。データ処理装置10は、データを処理する際に、記憶装置20に記憶されたデータを適宜参照する。また、データ処理装置10は、処理によって得られたデータを、記憶装置20に適宜保存する。データ処理装置10は、出力装置30にデータを出力させる。ユーザは、入力装置40を用いて、データ処理装置10にデータを入力できる。
【0010】
溶接装置100は、複数の部品(金属板)を接合し、接合体を製造する。溶接装置100は、例えば、抵抗スポット溶接を実行する。溶接装置100は、その溶接装置100自身に関する情報を示す溶接装置データ、実行した溶接条件等を示す溶接条件データ、溶接部に関する情報を示す溶接部データなどを、データ処理装置10に送信する。
【0011】
検査装置200は、溶接装置100によって溶接された接合体を検査する。検査は、超音波を用いた探査によって得られたデータに基づいて実行される。検査装置200は、検査によって得られた検査データを、データ処理装置10に送信する。
【0012】
まず、溶接装置100の具体例及び溶接装置100によって得られる各種データについて説明する。
【0013】
(溶接装置)
図2は、溶接装置を例示する模式図である。
溶接装置100の一例を説明する。図2に表したように、溶接装置100は、基部101、下部アーム110、下部ホルダ111、下部電極112、上部アーム120、上部ホルダ121、上部電極122、ガイド131、可動部材133、駆動部134、電源140、電流検出部141、及び圧力検出部142を含む。
【0014】
基部101は、製造現場における所定の場所に固定される。下部アーム110及び上部アーム120は、基部101に固定される。下部アーム110及び上部アーム120は、上下方向において、互いに離れて対向している。なお、ここでは、説明のために、下部アーム110から上部アーム120に向かう方向を「上」とし、その反対の方向を「下」としている。これらの方向は、下部アーム110と上部アーム120との位置関係に基づき、重力の方向を示唆するものでは無い。下部アーム110から上部アーム120に向かう方向が、鉛直方向と交差していても良い。
【0015】
下部ホルダ111は、下部アーム110に取り付けられる。下部ホルダ111は、下部アーム110に対して可動であっても良い。下部電極112は、下部ホルダ111に固定され、上方に向けて突出している。
【0016】
ガイド131は、上部アーム120に固定される。ガイド131は、上下方向に沿って延びるポール132を含む。可動部材133は、ポール132に取り付けられる。上部ホルダ121は、可動部材133に固定される。上部電極122は、上部ホルダ121に固定され、下方に向けて突出している。下部電極112及び上部電極122は、上下方向において互いに対向している。
【0017】
駆動部134は、可動部材133を移動させる。可動部材133は、ポール132に沿って移動する。可動部材133が移動すると、上部電極122の上下方向における位置が、下部電極112に対して変化する。すなわち、下部電極112と上部電極122との間の上下方向における距離が変化する。
【0018】
電源140は、下部電極112及び上部電極122と電気的に接続される。電源140は、溶接時に、下部電極112と上部電極122との間に電圧を印加する。電源140は、例えば、下部電極112を接地電位に接続し、上部電極122に電圧を印加する。これにより、下部電極112と上部電極122との間に電流が流れる。
【0019】
電流検出部141は、溶接時に、下部電極112及び上部電極122を流れる電流を検出する。図示した例では、電流検出部141は、電源140と下部電極112との間に電気的に接続されている。電流検出部141は、例えば電流計を含む。
【0020】
圧力検出部142は、溶接時に、溶接される部品に加わる圧力を検出する。図示した例では、圧力検出部142は、上部ホルダ121に設けられ、上部電極122に加わる圧力を検出する。上部電極122に加わる圧力は、部品への圧力と関係する。すなわち、圧力検出部142は、上部電極122に加わる圧力に基づき、溶接される部品に加わる圧力を間接的に検出する。圧力検出部142は、例えばひずみ計を含む。
【0021】
制御装置150は、主制御部151、電流制御部152、及び駆動制御部153を含む。主制御部151は、電流制御部152及び駆動制御部153に指令を送信する。例えば、主制御部151は、電流制御部152及び駆動制御部153に、溶接時の各種設定値を送信する。
【0022】
電流制御部152は、電源140及び電流検出部141と電気的に接続される。電流制御部152は、電流検出部141による検出結果に基づいて、電源140を制御する。例えば、電流制御部152は、下部電極112及び上部電極122を流れる電流が、主制御部151から送信された設定値となるように、電源140を制御する。また、電流制御部152は、主制御部151から送信された設定値に示された時間の間、下部電極112と上部電極122との間に電流を供給する。
【0023】
駆動制御部153は、駆動部134及び圧力検出部142と電気的に接続される。駆動制御部153は、駆動部134を制御する。例えば、駆動制御部153は、溶接される部品への圧力が、主制御部151から送信された設定値となるように、駆動部134を制御する。
【0024】
制御装置150により制御される溶接装置100には、図2に表した例に限らず、他の公知の構造が適用されても良い。例えば、溶接装置は、マニピュレータを含んでも良い。下部アーム110、下部ホルダ111、下部電極112、上部アーム120、上部ホルダ121、上部電極122などは、マニピュレータの先端に、エンドエフェクタとして設けられても良い。
【0025】
図3(a)及び図3(b)は、抵抗スポット溶接の様子を表す模式図である。
図3(a)は、抵抗スポット溶接により、金属板310と金属板320を溶接するときの様子を表している。まず、金属板310及び金属板320が、下部電極112の上に配される。駆動部134が、上部電極122を下部電極112に向けて移動させる。金属板310及び金属板320が、下部電極112と上部電極122によって挟まれ、押圧される。この状態で、下部電極112、金属板310、金属板320、及び上部電極122に、電流iが供給される。電流iが流れた際に、金属板310及び金属板320の抵抗により、熱が発生する。金属板310及び金属板320のそれぞれの一部が、溶融し、互いに混ざり合う。溶融した部分が冷却され、凝固することで、図3(b)に表したように、溶接部330が形成される。金属板310と金属板320は、溶接部330において互いに接合され、接合体300が作製される。
【0026】
図4は、抵抗スポット溶接時の電流及び圧力を表す模式図である。
図4において、横軸は、時間を表す。縦軸は、電流及び圧力の大きさを表す。実線は、下部電極112及び上部電極122を流れる電流の変化を表す。破線は、抵抗スポット溶接の対象への圧力の変化を表す。
【0027】
例えば図3(a)に表したように、上部電極122が、下部電極112に向けて移動し、金属板310に接触すると、上部電極122から金属板310に加わる圧力が増大していく。圧力は、所定値まで上昇した後に、一定に保たれる。圧力が所定値に保たれた状態で、金属板310及び金属板320に、パルス状の電流が供給される。電流の供給後、金属板310が加圧された状態で保持される。その後、上部電極122から金属板310に加わる圧力が、減少していく。
【0028】
図4に表した、圧力の増大時間T1、加圧時間T2、圧力の減少時間T3、スクイズ時間T4、通電時間T5、電流のオフ時間T6、保持時間T7、電流値V1、及び加圧力値V2のそれぞれについて、標準の値が予め定められる。スクイズ時間T4は、金属板310への加圧の開始から、電流の供給の開始までの時間である。保持時間T7は、電流の供給の終了から、金属板310への加圧の終了までの時間である。電流値V1は、下部電極112及び上部電極122を流れる電流の最大値である。加圧力値V2は、金属板310に加わる圧力の最大値である。
【0029】
(データ)
溶接が実行されるとき、データ処理装置10又は制御装置150は、各種センサや搬送装置の動作ログ等に基づいて、溶接される部品を特定する。データ処理装置10は、記憶装置20にアクセスし、溶接される部品の情報を示す部品データを参照する。溶接装置100が複数の部品を溶接すると、制御装置150は、溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データを、データ処理装置10に送信する。溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データは、複数の溶接装置100を管理する上位の処理装置を介して、データ処理装置10に送信されても良い。データ処理装置10は、溶接部データに、溶接された部品のデータを紐付ける。また、データ処理装置10は、溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データを互いに紐付ける。
【0030】
図5は、部品データを例示する表である。図6は、溶接部データを例示する表である。図7は、溶接装置データを例示する表である。図8は、溶接条件データを例示する表である。
部品データは、接合される各部品の情報を示す。図5に示すように、部品データ410は、部品ID411、部品名412、品種413、材質414、及び厚み415を含む。部品ID411は、部品を識別するための固有の文字列である。部品名412は、その部品の名称である。品種413は、部品の種類を示す。材質414は、部品の材質を示す。厚み415は、部品の厚みを示す。
【0031】
溶接部データは、各溶接部330の情報を示す。図6に示すように、溶接部データ420は、溶接部ID421、溶接部番号422、位置423、板数424、部品ID425、及び部品ID426を含む。溶接部ID421は、溶接部を識別するための固有の文字列である。例えば、1つの接合体300には、複数の溶接部330が形成される。溶接部ID421は、それぞれの溶接部330に対して登録される。溶接部番号422は、1つの接合体300において、それぞれの溶接部330を識別するための番号である。接合体300の種類が互いに同じであれば、接合体300同士の間で、同じ位置にある溶接部330には、同じ番号が付与される。位置423は、その溶接部330が形成される位置を示す。板数424は、その溶接部で接合される部品(金属板)の数を示す。部品ID425及び426は、1つ目の部品のID及び2つ目の部品のIDをそれぞれ示す。この例では、1つの接合体300は、2つの部品から構成されている。1つの接合体300が3つ以上の部品から構成される場合、部品の数に応じて、登録される部品IDの数も増加する。
【0032】
溶接装置データは、各溶接装置の情報を示す。図7に示すように、溶接装置データ430は、溶接装置ID431、溶接装置名432、設置場所433、及び稼働開始日434を含む。溶接装置ID431は、溶接装置を識別するための固有の文字列である。溶接装置名432は、その装置の名称である。設置場所433は、その装置が設置された場所を示す。稼働開始日434は、その装置が稼働を開始した時間である。稼働開始日434は、生産ライン停止に伴う装置休止後の再稼働時間や、メンテナンス後の再稼働時間では無く、その装置が最初に稼働を開始した時間を示す。
【0033】
溶接条件データは、溶接実行時の条件を示す。図8に示すように、溶接条件データ440は、条件データID441、電流値442、加圧力値443、加圧時間444、溶接時刻445、電極の型式446、及び連続使用回数447を含む。条件データID441は、実行された各溶接工程を識別するための固有の文字列である。電流値442及び加圧力値443は、図4に示した電流値V1及び加圧力値V2に対応する。加圧時間444は、図4に示した加圧時間T2に対応する。溶接時刻445は、溶接が実行された時刻を示す。型式446は、電極の種類ごとに固有の型式番号を示す。型式が特定されることで、電極の直径、全長、材質、精度(公差)などを確認できる。連続使用回数447は、電極が交換又は研磨された後に、連続して使用された回数である。
【0034】
図9は、紐付データを例示する表である。
上述した通り、データ処理装置10は、溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データを互いに紐付ける。また、溶接部データは、部品データと紐付けられている。溶接条件データ及び溶接装置データは、溶接部データを介して部品データと紐付けられる。紐付データは、溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データの間の紐付けを示す。図9に示すように、紐付データ450は、紐付データID451、溶接部ID421、溶接装置ID431、及び条件データID441を含む。紐付データID451は、溶接部ID421と、溶接装置ID431と、条件データID441と、の組み合わせに対してそれぞれ付与される固有の文字列である。
【0035】
データ処理装置10は、溶接部データ及び紐付データを参照することで、部品データ、溶接部データ、溶接装置データ、及び溶接条件データのいずれかに基づいて、紐付けられた他のデータを検索できる。
【0036】
次に、検査装置200の具体例及び検査装置200によって得られる各種データについて説明する。
【0037】
(検査装置)
図10は、検査装置を例示する模式図である。
図10に示すように、検査装置200は、制御装置210、処理装置220、及びロボット230を含む。
【0038】
制御装置210は、ロボット230の動作を制御する。制御装置210は、いわゆるロボットコントローラである。制御装置210は、制御回路やサーボ制御部、電源装置などを含む。制御装置210は、予め記憶された動作プログラムに従って各軸のサーボモータを制御することで、ロボット230の動作を制御する。
【0039】
ロボット230は、マニピュレータ231と、マニピュレータ231に取り付けられた検出器232と、を含む。例えば、マニピュレータ231は、垂直多関節型である。検出器232は、エンドエフェクタとして、マニピュレータ231の先端に設けられる。マニピュレータ231は、水平多関節型又はパラレルリンク型であっても良い。マニピュレータ231は、垂直多関節型、水平多関節型、及びパラレルリンク型から選択される2種以上の組み合わせを含んでも良い。マニピュレータ231は、6自由度以上を有することが好ましい。
【0040】
検出器232は、対象に対して探査(プロービング)を実行する。探査は、対象に向けた超音波の送信と、その反射波の検出(受信)と、を含む。検出器232は、探査によって、反射波の強度を示す強度データを取得する。検出器232は、強度データを処理装置220に送信する。
【0041】
図10の例では、エンドエフェクタとして、吐出器235及び撮像部236がさらに設けられている。吐出器235は、対象の表面に向けてカプラント液を吐出する。撮像部236は、溶接部330を撮像し、画像を取得する。処理装置220は、得られた画像から、溶接部330の外観上の位置を算出する。
【0042】
図11は、検出器及び接合体の構造を示す模式図である。
図11の例では、検出器232による探査の対象は、接合体300である。接合体300は、金属板310及び金属板320を含む。金属板310と金属板320は、溶接部330において接合されている。すなわち、溶接部330には、金属板310と金属板320との間の境界面が存在しない。溶接部330には、溶融した金属が混ざり合って形成された凝固部340が存在する。溶接部330は、抵抗スポット溶接により形成される。
【0043】
検出器232は、図11に示すように、検出素子232a、伝搬部232b、及び筐体232cを含む。
検出素子232aは、X方向及びY方向に沿って配列されている。X方向とY方向は、互いに交差する。この例では、Y方向は、X方向に対して垂直である。例えば、検出素子232aは、トランスデューサであり、1MHz以上100MHz以下の周波数の超音波を発する。検出素子232aは、Z方向に沿って超音波を送信する。Z方向は、X-Y面に対して垂直である。
【0044】
複数の検出素子232aは、筐体232cの先端に設けられ、伝搬部232bにより被覆されている。検出器232を接合体300に接触させた際、伝搬部232bは、検出素子232aと接合体300との間に位置する。検出素子232aが超音波を発すると、超音波は、伝搬部232bを伝搬して検出器232の外部に送信される。超音波が反射されると、その反射波は、伝搬部232bを伝搬して検出素子232aに到達する。
【0045】
検出素子232aは、反射波を検出する。検出素子232aによって検出された信号の強度は、反射波の強度に対応する。検出器232は、反射波強度を示す信号(強度データ)を取得し、処理装置220に送信する。
【0046】
伝搬部232bは、超音波が伝搬し易い樹脂材料などにより構成される。伝搬部232bにより、検出器232が溶接部330へ接触した際に、検出素子232aの変形、損傷などを抑制できる。伝搬部232bは、溶接部330への接触時の変形、損傷などを抑制するために、十分な硬さを有する。
【0047】
探査時には、検出器232と接合体300との間で超音波が伝搬し易くなるように、接合体300の表面にカプラント液350が塗布される。それぞれの検出素子232aは、カプラント液350が塗布された接合体300に向けて超音波USを送信する。
【0048】
例えば図11に示すように、1つの検出素子232aが接合体300に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、接合体300の上面又は下面などで反射される。複数の検出素子232aのそれぞれは、反射波RWを検出する。探査では、それぞれの検出素子232aが順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の検出素子232aで検出する。
【0049】
処理装置220は、強度データを処理し、溶接部330に関する検査値を算出する。検査値は、溶接部330の中心の位置、角度、厚み、窪みの深さ、及び径から選択される1つ以上を含む。処理装置220は、検査値を含む検査データを生成する。検査データは、溶接部330の良否の判定結果を含んでも良い。
【0050】
図12(a)~図12(c)は、実施形態に係る検査装置の動作を説明するための模式図である。
図12(a)に示すように、超音波USは、伝搬部232bの表面、金属板310の上面311及び下面312、溶接部330の上面331及び下面332で反射される。
【0051】
伝搬部232bの表面、上面311、上面331、下面312、及び下面332のZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と検出素子232aとの間のZ方向におけるそれぞれの距離が、互いに異なる。検出素子232aがこれらの面からの反射波を検出すると、反射波強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか判別できる。
【0052】
図12(b)及び図12(c)のそれぞれは、X-Y面内の1点において、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。図12(b)及び図12(c)において、横軸は、検出された反射波RWの強度を表す。縦軸は、超音波USを送信した後の経過時間を表す。時間は、Z方向における位置に対応する。図12(b)のグラフは、伝搬部232bの表面、上面311、及び下面312からの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、図12(b)のグラフは、接合されていない点からの反射波RWの検出結果を例示している。図12(c)のグラフは、伝搬部232bの表面、上面331、及び下面332からの反射波RWの検出結果を例示している。すなわち、図12(c)のグラフは、接合されている点からの反射波RWの検出結果を例示している。
【0053】
図12(b)及び図12(c)のグラフにおいて、ピークPe10は、伝搬部232b表面からの反射波RWに基づく。ピークPe11は、上面311からの反射波RWに基づく。ピークPe12は、下面312からの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe11及びピークPe12が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面311及び下面312のZ方向における位置に対応する。
【0054】
同様に、ピークPe13は、上面331からの反射波RWに基づく。ピークPe14は、下面332からの反射波RWに基づく。超音波USの送信からピークPe13及びピークPe14が検出されるまでの時間は、それぞれ、上面331及び下面332のZ方向における位置に対応する。
【0055】
処理装置220は、X-Y面内の各点におけるZ方向の反射波強度分布において、ピークPe12が存在するか判定する。具体的には、処理装置220は、ピークPe12が検出されうるZ方向の範囲において、ピークを検出する。処理装置220は、そのピーク強度を、閾値と比較する。Z方向の範囲及び閾値は、予め設定される。
【0056】
ピーク強度が閾値を超えているとき、処理装置220は、そのピークがピークPe12であると判定する。ピークPe12の存在は、その点において下面312が存在し、金属板310と金属板320が接合されていないことを示す。処理装置220は、ピークPe12が検出された点を、接合されていないと判定する。処理装置220は、ピークPe12が検出されない点を、接合されていると判定する。処理装置220は、X-Y面内の各点が接合されているか、順次判定する。処理装置220は、接合されていると判定された点の集合を、溶接部330として特定する。
【0057】
処理装置220は、探査によって得られた強度データを用いて、画像を生成しても良い。
【0058】
図13は、三次元的な反射波の強度分布を示す画像の一例である。
探査では、上述したように、それぞれの検出素子232aが超音波を順次送信し、それぞれの反射波を複数の検出素子232aで検出する。図11に示す具体例では、8×8の64個の検出素子232aが設けられている。この場合、64個の検出素子232aが超音波を順次送信する。1つの検出素子232aは、反射波を64回繰り返し検出する。1つの検出素子232aからは、Z方向の反射波強度分布の検出結果が、64回出力される。1つの検出素子232aから出力された64回の反射波の強度分布は、合算される。合算された強度分布が、1回の探査において、1つの検出素子232aが設けられた座標における強度分布となる。64個の検出素子232aのそれぞれによる検出結果について、同様の処理が実行される。各検出素子232aの検出結果に対して、X方向及びY方向における分解能を向上させるために、開口合成が実行されても良い。以上により、X-Y面内の各点において、Z方向における反射波の強度分布が生成される。すなわち、X方向、Y方向、及びZ方向の各点における反射波強度を含む3次元の強度データが得られる。
【0059】
図13の画像では、3次元の強度データに基づく溶接部330近傍の様子が示されている。図13において、輝度が高い部分は、超音波の反射波強度が相対的に大きい部分である。図13の例では、溶接部330の上面及び下面からの反射波と、これら上面と下面との間で多重反射した反射波と、が現れている。
【0060】
図14(a)~図14(c)は、二次元的な反射波の強度分布を示す画像の一例である。
処理装置220は、強度データを処理し、図14(a)~図14(c)に示すデータを取得しても良い。図14(a)は、溶接部330近傍のX-Y面における反射波の強度分布を示す。図14(b)は、溶接部330近傍のY-Z面における反射波の強度分布を示す。図14(c)は、溶接部330近傍のX-Z面における反射波の強度分布を示す。
【0061】
図14(a)のデータは、X-Y面の各点において、Z方向に強度を合算することで得られる。図14(b)のデータは、Z方向の各点において、X方向に強度を合算することで得られる。図14(c)のデータは、Z方向の各点において、Y方向に強度を合算することで得られる。図14(a)~図14(c)では、反射波の強度が、模式的に二値化されて示されている。白色の点は、その点における反射波の強度が相対的に高いことを示す。黒色の点は、その点における反射波の強度が相対的に低いことを示す。
【0062】
図15は、特定された溶接部を示す画像の一例である。
図15は、X-Y面の各点における接合又は未接合の判定の結果を示す。接合又は未接合の判定が実行される領域のX方向及びY方向における範囲は、X方向及びY方向において強度データが得られた範囲に対応する。一例として、図15に示す2次元データのX方向における範囲及びY方向における範囲は、図13に示す3次元の強度データのX方向における範囲及びY方向における範囲にそれぞれ対応する。X方向及びY方向において、強度データが得られた範囲の一部が抽出され、抽出された領域に対して接合又は未接合の判定が実行されても良い。判定は、強度データのX-Y面内の各点について実行される。図15では、強度データに基づいて接合されていると判定された点は、白色で表されている。接合されていないと判定された点は、黒色で表されている。接合されていると判定された点の集合が、溶接部330に対応する。処理装置220は、各点における接合の判定結果を用いて、図15に示す画像を生成する。
【0063】
処理装置220は、検査において、溶接部330の中心の位置、角度、厚み、窪みの深さ、及び径から選択される1つ以上をさらに算出しても良い。それぞれの値の算出方法を説明する。
【0064】
(位置)
処理装置220は、図14(a)に示すX-Y面における反射波の強度分布について、強度の重心位置を、溶接部330の位置として算出する。例えば図14(a)に示すように、二値化された画像における輝度的重心位置が算出されても良い。又は、各画素が3段階以上(例えば0~255)のいずれかの画素値を有する画像について、輝度的重心位置が算出されても良い。
【0065】
又は、処理装置220は、Z方向において、溶接部330からの反射波成分を抽出し、重心位置を算出しても良い。例えば、図14(b)及び図14(c)に示すように、溶接部330からの反射波が検出される周期は、その他からの反射波が検出される周期と異なる。処理装置220は、予め設定された溶接部330の厚さを用いて、Z方向において強度分布をフィルタリングする。これにより、処理装置220は、溶接部330からの反射波成分を抽出する。処理装置220は、フィルタリング後のX-Y面における強度分布の重心位置を、溶接部330の位置として算出する。
【0066】
又は、処理装置220は、図15に示すように溶接部330を特定し、そのX-Y面における重心位置を溶接部330の位置として算出しても良い。溶接部330は、上述したように、X-Y面内の各点における接合又は未接合を判定することで、特定できる。処理装置220は、特定された溶接部330について、X-Y面において内接又は外接する円の中心を、溶接部330の位置として算出しても良い。
【0067】
抵抗スポット溶接によって形成された溶接部330は、一般的には円状である。処理装置220は、以下のいずれかの方法により算出される位置を、溶接部330の位置として用いても良い。第1の方法では、処理装置220は、最小二乗法によって溶接部330の近似円を生成し、その近似円の位置を算出する。第2の方法では、処理装置220は、溶接部330の外縁に内接する最大の内接円を生成し、その内接円の位置を算出する。第3の方法では、処理装置220は、溶接部330の外縁に外接する最小の外接円を生成し、その外接円の位置を算出する。第4の方法では、処理装置220は、半径差が最小となる内接円及び外接円の位置を算出する。
【0068】
(角度)
図16は、検出器を示す模式図である。
溶接部330の角度は、例えば図16に示した、溶接部330の上面の法線方向D2と、検出器232の方向D1と、の間の角度に対応する。方向D1は、複数の検出素子232aの配列方向に対して垂直である。角度は、方向D1とD2の間のX方向まわりの角度θx及びY方向まわりの角度θyによって表される。換言すると、溶接部330の角度は、複数の検出素子232aの配列方向に対する、溶接部330の上面の傾きである。
【0069】
角度θxは、図14(b)に示したように、Y-Z面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、図14(c)に示したように、X-Z面での検出結果に基づいて算出される。具体的には、処理装置220は、3次元の輝度勾配の平均を算出する。処理装置220は、X方向まわりの勾配の平均を角度θxとして用いる。処理装置220は、Y方向まわりの勾配の平均を角度θyとして用いる。
【0070】
ここでは、溶接部330の中心の位置を示すデータを、位置データと呼ぶ。溶接部330の角度を示すデータを、角度データと呼ぶ。
【0071】
(厚み、窪みの深さ、径)
溶接部330の厚みは、上面331と下面332との間のZ方向における距離である。溶接部330の厚みは、ピークPe13とPe14との間の時間差に基づいて算出できる。溶接部330の窪みの深さは、上面311と331との間のZ方向における距離である。溶接部330の窪みの深さは、ピークPe11とPe13との間の時間差に基づいて算出できる。径は、X-Y面に平行な任意の一方向における溶接部330の長さである。径として、長径又は短径が用いられても良い。長径は、溶接部330の外縁上の複数点のうち、最も離れた2点間の距離である。短径は、当該2点を結ぶ線分に垂直であり、当該2点間の中央を通る方向における溶接部330の長さである。
【0072】
(良否判定)
処理装置220は、径を、予め設定された閾値と比較する。径が閾値を超えている場合、処理装置220は、その溶接部330が良好であると判定する。径が閾値以下の場合、処理装置220は、その溶接部330が不良であると判定する。閾値と比較される径は、溶接部330の長径又は短径である。
【0073】
上述した図12(b)及び図12(c)の例では、反射波RWの強度は、絶対値で表されている。反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、検出素子232aから出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。特定の周期の周波数成分のみが抽出されるように、フィルタリングが実行されても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、本願で説明する各種処理を実行可能である。
【0074】
以上の処理により、探査結果に基づく検査データが得られる。検査が実行されるとき、データ処理装置10又は制御装置150は、各種センサや搬送装置の動作ログ等に基づいて、検査される接合体を特定する。検査装置200が接合体を検査すると、処理装置220は、検査データをデータ処理装置10に送信する。検査データは、複数の検査装置200を管理する上位の処理装置を介して、データ処理装置10に送信されても良い。データ処理装置10は、検査データを、溶接装置データを含む他のデータと紐付ける。
【0075】
図17は、検査データを例示する表である。
図17に示すように、検査データ460は、検査データID461、検査装置ID462、画像データID463、位置464a、外観位置464b、角度465、厚み466a、窪みの深さ466b、径467、判定結果468、及び検査時刻469を含む。
【0076】
検査データID461は、検査データを識別するための固有の文字列である。検査装置ID462は、その検査データを取得した検査装置を識別するための固有の文字列である。画像データID463は、その検査において得られた画像データのIDを示す。画像データは、例えば、図13に示した3次元の強度分布を示す画像、図14(a)に示した接合の判定結果を示す画像、図14(b)又は図14(c)に示した2次元の強度分布を示す画像、図15に示した溶接部を表す画像から選択される少なくとも1つである。
【0077】
位置464aは、強度データから算出された溶接部330の中心の位置を示す。位置464aは、溶接部330の予め設計された位置を原点として表されても良い。外観位置464bは、撮像部236によって得られた画像から算出された溶接部330の位置を示す。角度465は、溶接部330の角度を示す。厚み466aは、溶接部330の厚みを示す。深さ466bは、溶接部330上面の窪みの深さを示す。径467は、溶接部330の径を示す。判定結果468は、溶接部330の良否の判定結果を示す。検査時刻469は、検査が実行された時刻を示す。
【0078】
検査装置200は、溶接部330に対する検査が実行されると、検査データをデータ処理装置10に送信する。データ処理装置10は、検査データを、部品データ、溶接装置データ、溶接条件データ、及び溶接部データと紐付ける。データ処理装置10は、紐付けたデータを記憶装置20に保存する。
【0079】
図18は、紐付データを例示する表である。
図18に示す紐付データ450aは、図9に示した紐付データ450に対して、検査データID452がさらに紐付けられている。これにより、部品データ、溶接装置データ、溶接条件データ、溶接部データ、及び検査データが、互いに紐付けられる。なお、検査データは、溶接装置データ、溶接条件データ、及び溶接部データと直接紐付けられず、溶接装置データ、溶接条件データ、及び溶接部データと、部品データを介して紐付けられても良い。
【0080】
図19は、実施形態に係るデータ処理装置による処理を示すフローチャートである。
データ処理装置10は、溶接装置100から、溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データを受信する(ステップS1)。データ処理装置10は、部品データに、溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データを紐付ける(ステップS2)。データ処理装置10は、検査データを受信する(ステップS3)。データ処理装置10は、部品データに、検査データを紐付ける(ステップS4)。
【0081】
実施形態の利点を説明する。
溶接部330の検査では、溶接部330の位置を示す位置データ、溶接部330の角度を示す角度データなどが得られる。検査を通して得られたこれらのデータは、溶接部330に異常が無いかを示す。例えば、位置データが示す位置が予め設計された溶接部330の位置からずれている場合、又は角度データが示す角度が大きい場合、それらのデータは、溶接部330に異常があることを示している。そして、溶接部330の異常は、接合体300の製造ラインに異常があることを示す。例えば、溶接装置100の点検又はメンテナンスが必要な可能性がある。
【0082】
検査データから溶接部330の異常が発見された場合、製造ラインのどこに原因があるかを容易に発見できることが好ましい。例えば、溶接部330を形成した溶接装置100がどれか、容易に検索できることが好ましい。実施形態に係るデータ処理装置10は、検査データを受信すると、溶接装置データと紐付ける。このため、検査データから溶接部330の異常が発見された場合に、その溶接部330がどの溶接装置100によって形成されたか、容易に検索できる。実施形態によれば、検査データに基づいて溶接装置データを容易に検索でき、データについての利便性を向上できる。
【0083】
特に、位置については、接合体300の品質への影響が大きい。溶接部330の位置が設計位置から大きくずれていると、接合体300の強度が設計された強度よりも低下する可能性がある。位置は、溶接部330を撮像した画像から算出することも可能である。しかし、外観上確認できる溶接部330の位置は、実際に接合されている溶接部330の位置から、ずれている可能性がある。接合体300について、強度等の信頼性をより精度良く検査するためには、溶接部330の実際の位置を使用することが望ましい。データ処理装置10は、探査結果から算出される溶接部330の位置を含む検査データを、溶接装置データと紐付ける。実施形態によれば、より信頼性の高いデータを、溶接装置データと紐付けることができる。
【0084】
データ処理装置10は、利便性の向上のために、以下の複数の機能の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0085】
(ユーザインターフェース)
図20図28は、ユーザインターフェースを例示する模式図である。
出力装置30は、例えば、モニタ又はプロジェクタである。データ処理装置10は、グラフィカルなユーザインターフェース(UI)を出力装置30に表示させる。データ処理装置10は、UIとして、例えば図20に示すように、ウインドウ500を表示させる。ウインドウ500は、表示領域501を含む。
【0086】
データ処理装置10は、複数の接合体300における同じ番号の複数の溶接部330について、複数の位置データ及び複数の検査時刻を参照する。データ処理装置10は、図20に示すように、時間に対する溶接部330の位置の変化を表示領域501に表示させる。図20の例では、時間(T)に対するX方向の位置(X)の変化と、時間(T)に対するY方向の位置(Y)の変化と、が表示されている。又は、図21に示すように、時間(T)に対するXまわりの角度(θx)の変化と、時間(T)に対するY方向まわりの角度(θy)の変化と、が表示されても良い。
【0087】
表示させるデータを選択するためのアイコン群503が表示されても良い。アイコン群503は、「位置」、「角度」、「厚み」、「深さ」、「径」、「判定」を含む。ユーザは、入力装置40を操作してポインタ502を移動させることができる。ポインタ502でいずれかのアイコンが選択されると、選択されたアイコンに関するデータが表示される。「位置」、「角度」、「厚み」、「深さ」、「径」、又は「判定」のアイコンが選択されると、時間に対する、位置の変化、角度の変化、厚みの変化、窪みの深さの変化、径の変化、又は溶接の良否の判定結果の変化が表示される。
【0088】
UIにおいて、検査で得られたいずれかの検査値が選択可能であっても良い。例えば図22に示すように、ユーザは、ポインタ502を用いて、いずれかの検査値を選択する。データ処理装置10は、検査値の選択を受け付けると、その検査値を含む検査データを参照する。データ処理装置10は、その検査データに含まれる他のデータを示すウインドウ505を表示させる。データ処理装置10は、その検査データと紐付けられた、部品データ、溶接部データ、溶接条件データ、及び溶接装置データから選択される1つ以上を示すウインドウ507を表示させても良い。角度や厚みなど、他のデータが選択されたときにも、データ処理装置10は、同様にウインドウ505及び507を表示可能である。
【0089】
また、データ処理装置10は、ウインドウ507において、いずれかのデータの選択を受け付けても良い。データ処理装置10は、図5図8及び図17に示すように、選択されたデータの詳細を表示させる。図23の例では、ウインドウ507において、溶接条件を示す条件データIDが選択されている。データ処理装置10は、その条件データIDに対応する溶接条件データを示すウインドウ509を表示させる。
【0090】
図24に示すように、いずれかのデータが選択された場合に、データ処理装置10は、そのデータを含む検査データが得られたときの画像データ511を表示させても良い。この例では、画像データ511は、特定された溶接部330を示す画像である。画像データ511として、図13に示した3次元の強度分布を示す画像、図14(a)に示した接合の判定結果を示す画像、図14(b)又は図14(c)に示した2次元の強度分布を示す画像、図15に示した溶接部を表す画像から選択される少なくとも1つが表示されても良い。
【0091】
時間に対する検査値の変化が表示されている状態で、データ処理装置10は、時間の選択を受け付け可能であっても良い。例えば図25に示すように、ポインタ502がいずれかの検査値に近づくと、ポインタ502に最も近い検査値が得られた検査時刻513が表示される。検査値又は検査時刻513が選択されると、図26に示すように、データ処理装置10は、その検査時刻に得られた検査データを示すウインドウ505を表示させる。
【0092】
データ処理装置10は、検査値を予め設定された閾値と比較しても良い。例えば、データ処理装置10は、位置データの位置又は角度データの角度を閾値と比較する。位置データは、溶接部330の位置を示す。溶接部330の位置は、溶接部330の設計位置を原点として表される。換言すると、位置データの位置は、溶接部330の設計位置からのずれ量を示す。また、角度データは、溶接部330の角度を示す。より具体的には、溶接部330の角度は、予め教示された検出器232の姿勢に対する、溶接部330の上面の傾きを示す。
【0093】
位置が位置データに対して予め設定された閾値を超えた場合、又は、角度が角度データに対して予め設定された閾値を超えた場合、データ処理装置10は、通知を出力しても良い。例えば、データ処理装置10は、予め登録された端末装置に通知を送信する。データ処理装置10は、出力装置30に通知を出力させても良い。
【0094】
データ処理装置10は、溶接部330の厚み、溶接部330の窪みの深さ、又は溶接部330の径を、それぞれに対して予め設定された閾値と比較しても良い。厚みが閾値よりも小さい場合、深さが閾値よりも大きい場合、又は径が閾値よりも小さい場合、データ処理装置10は、通知を出力する。溶接の良否が判定される場合には、検査データは、径と閾値との比較結果である溶接の良否の判定結果を含む。この場合、データ処理装置10は、溶接の良否の判定結果を参照する。溶接が不良と判定されている場合に、データ処理装置10は、通知を出力する。例えば、データ処理装置10は、検査値の受信に応じて、検査値を閾値と比較する。
【0095】
ここでは、位置、角度、厚み、及び径のいずれかが閾値よりも小さい場合、又は深さが閾値よりも大きい場合、その検査値及び溶接部330を「異常」とする。例えば、溶接部330の「不良」は、溶接部330の「異常」の一類型である。検査値が異常である場合、溶接装置100又は接合体300の搬送装置に異常が存在する可能性がある。検査値が閾値を超える場合に通知が出力されることで、ユーザに注意を促すことができる。
【0096】
検査値と閾値との比較結果の他、検査値の変化に基づいて、データ処理装置10は、通知を適宜出力しても良い。例えば、データ処理装置10は、特定の番号の溶接部に関する最新の検査データを受信する。データ処理装置10は、同じ番号の溶接部に関する直前の検査データを参照する。データ処理装置10は、最新の検査データ及び直前の検査データに含まれる、同じ番号の溶接部に関する最新の検査値及び直前の検査値を参照する。データ処理装置10は、それらの検査値の変化が閾値を超える場合、通知を出力する。
【0097】
閾値に基づいて検査値が異常と判定されない場合でも、検査値の変化が大きい場合、製造ラインに異常が存在する可能性がある。検査値の変化が大きい場合に通知が出力されることで、ユーザに注意を促すことができる。
【0098】
データ処理装置10は、図27に示すように、検査値と閾値の比較を表示させても良い。図27の例では、X方向における位置と閾値THxの比較が示され、Y方向における位置と閾値THyの比較が示されている。図28に示すように、検査値が閾値を超えた場合に、データ処理装置10は、その検査値に関する検査データを示すウインドウ505、及びその検査値に係る溶接部330を形成した溶接装置のデータを示すウインドウ515を表示させても良い。
【0099】
検査値が閾値を超えた場合に、データ処理装置10は、その検査値に係る溶接部330を形成したときの溶接条件データを参照しても良い。データ処理装置10は、電極の連続使用回数を閾値と比較する。データ処理装置10は、連続使用回数が下限値を下回る又は上限値を超える場合、通知を出力する。通知は、溶接装置の電極の不良の可能性を示す通知、及び電極のメンテナンスを促す通知から選択される1つ以上を含む。
【0100】
電極の連続使用回数が多すぎる場合、電極が劣化し、溶接部330の特性に影響を与える可能性がある。電極の連続使用回数の少なさは、電極が交換された後、又は電極が研磨された後に、使用された回数が少ないことを示す。電極の連続使用回数が少ない場合には、電極の交換作業又は研磨処理に不備があった可能性がある。これらのいずれかの場合、電極が検査値の異常の原因と推測される。通知が出力されることで、ユーザに、可能性のある異常の原因を知らせることができる。
【0101】
(溶接条件の修正)
検査値が異常である場合、データ処理装置10は、検査値を改善するために、溶接条件を修正しても良い。例えば、径が異常である場合、データ処理装置10は、電流値、加圧力値、電流の供給時間、及び加圧時間から選択される少なくともいずれかの設定値を大きくする。データ処理装置10は、設定値を直接修正しても良いし、設定値の補正割合を溶接装置100に送信しても良い。
【0102】
一例として、金属板310及び金属板320は、炭素鋼である。金属板310のZ方向における厚さは、1.2mmである。金属板320のZ方向における厚さは、1.2mmである。溶接の実行時、電流値は、13kAに設定される。加圧力値は、500kgfに設定される。通電時間は、60ミリ秒に設定される。通電は、2回繰り返される。加圧時間は、2秒に設定される。1000MPaよりも大きいせん断強さを得るために、溶接部330の径は6.2mmより大きいことが求められる。この場合、閾値は、マージンを含めて6.4mmに設定される。
【0103】
例えば、径が6.4mmを下回ると、電流値が、14kAに設定される。又は、加圧力値が、600kgfに設定されても良い。又は、通電時間が、80ミリ秒に設定されても良い。又は、加圧時間が、2.5秒に設定されても良い。これにより、接合時に各部品により大きなエネルギーを与えることができ、溶接部330の径を大きくできる。
【0104】
溶接部330の厚みについては、厚みが小さすぎると、溶接部330における強度が低下しうる。また、接合体300については、凝固部340の厚みに対して、溶接部330の厚みが所定の割合以上大きいことが求められる。例えば、溶接を実行する際の部品への圧力が大きいほど、溶接部330の厚みが小さくなる。厚みが閾値よりも小さい場合、データ処理装置10は、加圧力値又は加圧時間を小さくする。
【0105】
溶接部330の窪みの深さが大きすぎると、接合体300のその後の工程において、不具合が生じうる。例えば、塗装工程では、溶接部330の窪みに均一に塗料が付着せずに、外観が悪くなる可能性がある。洗浄工程では、窪みに入り込んだ汚れが十分に除去されない可能性がある。溶接を実行する際の部品への圧力が大きいほど、窪みが大きくなる。窪みの深さが閾値よりも大きい場合、データ処理装置10は、加圧力値又は加圧時間を小さくする。
【0106】
(原因の推定)
検査値が異常である場合、データ処理装置10は、その原因を推定しても良い。例えば、記憶装置20は、異常の種類ごとに、事象と、異常の原因と、の対応関係を示す対応データを記憶する。データ処理装置10は、検査値が異常である場合に、対応データを参照する。データ処理装置10は、対応データに従って異常の原因を推定する。データ処理装置10は、推定された原因を出力する。例えば、データ処理装置10は、原因を出力装置30に表示させる。データ処理装置10は、原因を所定の端末装置に送信しても良い。
【0107】
図29(a)及び図29(b)は、対応データを例示する表である。
図29(a)に示す対応データ600aは、異常の種類601、事象611~616、原因621~624、及びスコア630を含む。例えば、検査値に関する異常の種類ごとに、条件(閾値)が予め設定される。いずれかの条件が満たされると、その検査値には、条件を満たした異常が存在すると判定される。種類601は、判定された異常の種類を示す。事象611~616は、検査値に関する事象及び溶接に関する事象を含む。原因621~624は、異常の原因を示す。スコア630は、事象と原因のそれぞれの組み合わせに対して設定され、事象と原因との関係性を示す。
【0108】
図29(a)の例では、種類601「傾き大」は、溶接部330の角度が予め設定された閾値よりも大きいことを示す。事象611は、特定の溶接装置100によって溶接された接合体で、種類601と同じ種類の異常が、過去にも発生していることを示す。事象612は、検査された接合体300とは別の接合体300において、異常と判定された溶接部330と同じ位置の別の溶接部330で、種類601と同じ種類の異常が過去にも発生していることを示す。事象613は、製造される接合体300の品種を切り替えてから短い期間の間に、異常が発生したことを示す。事象614は、異常と判定された溶接部330に使用された電極の連続使用回数が、予め設定された閾値よりも少ないことを示す。事象615は、異常と判定された溶接部330に使用された電極の連続使用回数が、予め設定された閾値よりも多いことを示す。事象616は、設計位置に対する溶接部330の位置のずれが、予め設定された閾値よりも大きいことを示す。
【0109】
原因621は、溶接装置100に異常の原因があることを示す。原因622は、溶接装置100の下部電極112又は上部電極122に異常の原因があることを示す。原因623は、溶接を実行する際の溶接条件に異常の原因があることを示す。原因624は、検査装置200に接合体300を搬送する搬送装置に異常の原因があることを示す。それぞれの事象に対して、原因ごとに、関係性を示すスコアが設定される。例えば、スコアが高いほど、その異常とその原因との関係性が高いことを示す。
【0110】
記憶装置20は、複数の事象をそれぞれ判定するための複数の条件を記憶する。データ処理装置10は、検査値が異常と判定されると、判定された異常の種類と紐付けられた対応データを参照する。データ処理装置10は、データ処理システム1で得られた各種データを、複数の事象に対する複数の条件と比較する。データ処理装置10は、条件を満たした事象を抽出する。データ処理装置10は、対応データに従って、抽出された事象に対するそれぞれの原因のスコアを取得する。データ処理装置10は、それぞれの原因について、事象ごとのスコアを合算する。データ処理装置10は、最もスコアが高い原因を異常の原因と判定する。
【0111】
一例として、「傾き大」の異常が判定され、事象612及び615の条件が満たされた場合、図29(a)に示すデータに従って、原因622「電極」のスコアが最も大きくなる。データ処理装置10は、「傾き大」の原因が、「電極」であると判定する。
【0112】
図29(b)に示す対応データ600bは、異常の種類602、事象611~617、及び原因621~624を含む。種類602「溶接径小」は、溶接部330の径が予め設定された閾値よりも小さいことを示す。事象617は、溶接部330の角度が予め設定された閾値よりも大きいことを示す。一例として、「溶接径小」の異常が判定され、事象611及び612の条件が満たされた場合、図29(b)に示すデータに従って、原因621「溶接装置」のスコアが最も大きくなる。データ処理装置10は、「溶接径小」の原因が、「溶接部」であると判定する。
【0113】
対応データは、ユーザにより予め準備される。対応データの行の項目、列の項目、及びスコアは、対応データの作成後に適宜修正されても良い。ここでは、異常の種類ごとに対応データが用意される例を説明した。この例以外に、複数の対応データが1つのテーブルにまとめられても良い。
【0114】
又は、異常の種類の判定と原因の抽出が、モデルにより実行されても良い。例えば、モデルは、人工パーセプトロン、ディープニューラルネットワーク、ランダムフォレストにより学習された分類器、又はベイズ分類器を含む。モデルは、データ処理システム1からの各種データの入力に応じて、異常の有無の判定結果及び異常の原因を出力する。データ処理装置10は、データ処理システム1からの各種データをモデルに入力する。データ処理装置10は、モデルから、判定結果及び原因を取得する。
【0115】
モデルは、データ処理システム1からの各種データの入力に応じて、異常の有無の判定結果及び異常の原因を出力する数理モデルを含んでも良い。数理モデルは、回帰分析等を用いて予め作成される。
【0116】
図30(a)~図30(e)及び図31(a)~図31(d)は、出力例を説明するための図である。
図30(a)及び図30(b)は、それぞれ別の接合体において特定された溶接部330を示す模式図である。画像の外縁は、探査が実行された範囲の外縁に対応する。画像では、溶接部330の中心の位置335が示されている。図30(c)及び図30(d)は、それぞれ、図30(a)及び図30(b)の画像が得られた接合体に関するデータを示す。
【0117】
図30(c)のデータは、品種Xの接合体Aに関する。図30(d)のデータは、同じ品種Xの別の接合体Bに関する。接合体Aは、溶接装置Aによって溶接されている。接合体Bは、溶接装置Bによって溶接されている。図30(c)のデータが得られた溶接部の番号は、図30(d)のデータが得られた溶接部の番号と同じである。図30(c)及び図30(d)のデータについて、「中心位置」は、設計位置に対する溶接部330の中心位置のずれを示す。
【0118】
例えば、図30(d)のデータが得られた接合体300に関して、1つの溶接部330の径が小さく、その溶接部330が異常と判定される。データ処理装置10は、「溶接径小」の異常に関する対応データを参照する。データ処理装置10は、図30(d)に示す各データが、それぞれの事象の条件を満たすか判定する。データ処理装置10は、条件を満たした事象に基づいて、異常の原因を推定する。
【0119】
一例として、図30(d)のデータについて、「中心位置」及び「設備稼働開始」の日時が、事象の条件を満たすと判定される。これらの事象に基づいて、溶接装置に異常の原因があると判定される。図30(d)に示すように、データ処理装置10は、事象の条件を満たしたデータに、注意を促すマーク523を表示させても良い。図30(e)に示すように、データ処理装置10は、溶接装置の確認を促すメッセージ527を表示させても良い。図30(a)及び図30(b)に示すように、同じ溶接装置によって溶接された別の接合体に関するデータが表示されても良い。
【0120】
図31(a)及び図31(c)は、別のデータの例である。例えば、図31(a)のデータが得られた接合体300に関して、1つの溶接部330の厚みが小さく、その溶接部330が異常と判定される。データ処理装置10は、「溶接厚小」の異常に関する対応データを参照する。データ処理装置10は、図31(a)に示すように、事象の条件を満たしたデータにマーク523を表示させる。事象に基づいて、溶接装置の電極に原因が有ると判定される。データ処理装置10は、図31(b)に示すように、溶接装置の電極の確認を促すメッセージ527を表示させる。
【0121】
例えば、図31(c)のデータが得られた接合体300に関して、1つの溶接部330の窪みが大きく、その溶接部330が異常と判定される。データ処理装置10は、「溶接窪み大」の異常に関する対応データを参照する。データ処理装置10は、図31(c)に示すように、事象の条件を満たしたデータにマーク523を表示させる。事象に基づいて、溶接条件に原因が有ると判定される。データ処理装置10は、図31(d)に示すように、溶接条件の確認を促すメッセージ527を表示させる。
【0122】
図32は、ユーザインターフェースを例示する模式図である。
データ処理装置10は、推定された原因について、それぞれの原因の可能性を示すスコアを表示させても良い。データ処理装置10は、図32に示すように、対応データに含まれる1つ以上の原因531と、各原因のスコア533と、を含むウインドウ535を表示させても良い。この例では、各スコアの合計が1となるように、各スコアが正規化されている。また、スコアが高いほど、その原因が異常と関係している関係性が相対的に高いことを示す。
【0123】
データ処理装置10は、原因の推定結果について、ユーザからのフィードバックを受け付けても良い。データ処理装置10は、ユーザから入力されたフィードバックに基づいて、対応データのスコアを修正する。
【0124】
図33は、ハードウェア構成を示す模式図である。
データ処理装置10、制御装置150、制御装置210、及び処理装置220は、例えば図33に示すコンピュータ90の構成をそれぞれ含む。コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0125】
ROM92は、コンピュータ90の動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータ90に実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0126】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0127】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。
【0128】
入力インタフェース(I/F)95は、コンピュータ90と入力装置95aとを接続する。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。
【0129】
出力インタフェース(I/F)96は、コンピュータ90と出力装置96aとを接続する。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HDMI(登録商標))等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aにデータを送信し、出力装置96aに画像を表示させることができる。
【0130】
通信インタフェース(I/F)97は、コンピュータ90外部のサーバ97aと、コンピュータ90と、を接続する。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0131】
記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。出力装置96aは、モニタ及びプロジェクタから選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0132】
データ処理装置10、制御装置150、制御装置210、及び処理装置220のそれぞれの機能は、複数のコンピュータの協働により実現されても良い。1つのコンピュータが、データ処理装置10、制御装置150、制御装置210、及び処理装置220から選択される2つ以上として機能しても良い。
【0133】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又は、他の非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0134】
例えば、記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0135】
以上で説明した、データ処理装置、データ処理システム、又はデータ処理方法によれば、検査データに基づいて溶接装置データを容易に検索でき、データについての利便性を向上できる。コンピュータに、データ処理方法を実行させるプログラムを用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0136】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0137】
1:データ処理システム、 10:データ処理装置、 20:記憶装置、 30:出力装置、 40:入力装置、 90:コンピュータ、 91:CPU、 92:ROM、 93:RAM、 94:記憶装置、 95:入力インタフェース、 95a:入力装置、 96:出力インタフェース、 96a:出力装置、 97:通信インタフェース、 97a:サーバ、 98:システムバス、 100:溶接装置、 101:基部、 110:下部アーム、 111:下部ホルダ、 112:下部電極、 120:上部アーム、 121:上部ホルダ、 122:上部電極、 131:ガイド、 132:ポール、 133:可動部材、 134:駆動部、 140:電源、 141:電流検出部、 142:圧力検出部、 150:制御装置、 151:主制御部、 152:電流制御部、 153:駆動制御部、 200:検査装置、 210:制御装置、 220:処理装置、 230:ロボット、 231:マニピュレータ、 232:検出器、 232a:検出素子、 232b:伝搬部、 232c:筐体、 235:吐出器、 236:撮像部、 300:接合体、 310:金属板、 311:上面、 312:下面、 320:金属板、 330:溶接部、 331:上面、 332:下面、 340:凝固部、 410:部品データ、 420:溶接部データ、 430:溶接装置データ、 440:溶接条件データ、 450:紐付データ、 460:検査データ、 RW:反射波、 T1:増大時間、 T2:加圧時間、 T3:減少時間、 T4:スクイズ時間、 T5:通電時間、 T6:オフ時間、 T7:保持時間、 US:超音波、 V1:電流値、 V2:加圧力値

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
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図28
図29
図30
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図33