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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148700
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B60T7/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056859
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 星志
(72)【発明者】
【氏名】栗原 陽介
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA25
3D246GB29
3D246GB30
3D246GC16
3D246HA13A
3D246HA81A
3D246HA86A
3D246HB12A
3D246HB18A
3D246HB20C
3D246HC07
3D246JB12
3D246JB32
3D246JB43
3D246KA11
3D246LA52
(57)【要約】
【課題】自車の走行路外の連続障害物を衝突対象から除外して不要な警報の作動を抑止することができる車両用制御装置を提供する。
【解決手段】衝突判定部103が車両と物標とが衝突する可能性があると判定された場合、車両の進行方向と物標の進行方向との関係に基づいて、車両と物標との衝突形態を予測する衝突形態予測部104と、衝突形態予測部104により予測された衝突形態に応じて、警報及び物標との衝突を回避する自動ブレーキの作動タイミングを1次判定し、さらに該1次判定結果に対し、物標に関する幾何学的情報の複数の端点位置から得られる指標値をもとに物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物であるか否かの2次判定を行う作動判定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用制御装置であって、
前記車両用制御装置が搭載される車両の所定時間後の位置を示す車両未来位置を予測する車両位置予測部と、
物標の前記所定時間後の位置を示す物標未来位置を予測する物標位置予測部と、
前記車両未来位置および前記物標未来位置に基づいて、前記車両と前記物標とが衝突する可能性があるか否かを判定する衝突判定部と、
前記車両と前記物標とが衝突する可能性があると判定された場合、前記車両の進行方向と前記物標の進行方向との関係に基づいて、前記車両と前記物標との衝突形態を予測する衝突形態予測部と、
前記衝突形態予測部により予測された衝突形態に応じて、警報及び前記物標との衝突を回避する自動ブレーキの作動タイミングを1次判定し、さらに該1次判定結果に対し、前記物標に関する幾何学的情報の複数の端点位置から得られる指標値をもとに前記物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物であるか否かの2次判定を行う作動判定部と、
を備える車両用制御装置。
【請求項2】
前記指標値は、連続する物標間の距離と、連続する物標間のなす角度とであり、
前記作動判定部は、前記距離が所定距離閾値未満であり、かつ、前記角度が所定角度未満である場合、連続する物標を走行路外の連続障害物であるとする2次判定を行う、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記指標値は、連続する物標がなす半径と、前記車両の車速とであり、
前記作動判定部は、前記半径が所定半径閾値未満であり、かつ、前記車速が所定車速閾値未満である場合、連続する物標を走行路外の連続障害物であるとする2次判定を行う、請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記作動判定部は、前記走行路外の連続障害物であるか否かの2次判定を、前記指標値を用いたヒステリシス判定により行い、所定期間、前記走行路外の連続障害物であることを条件として、連続する物標を前記走行路外の連続障害物であると2次判定し、前記所定期間、前記走行路外の連続障害物でないことを条件として、連続する物標を前記走行路外の連続障害物でないと2次判定する、請求項1~3のいずれか一つに記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記作動判定部は、連続する物標が前記走行路外の連続障害物であると判定された場合、連続する次回以降のヒステリシス判定の上限閾値及び下限閾値をそれぞれ大きくして前記走行路外の連続障害物の判定を甘くする、請求項4に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記作動判定部により前記物標が前記走行路外の連続障害物であるとする2次判定がなされた場合、前記車両と前記物標とが衝突すると予測された時点で、前記作動判定部により1次判定された警報の作動タイミングを遅らせて実行する実行部を備える、請求項1~5のいずれか一つに記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車の走行路外の連続障害物を衝突対象から除外して不要な警報の作動を抑止することができる車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両および物標のそれぞれの移動速度および移動方向を検出し、当該移動速度および移動方向に基づいて、車両と物標との衝突の可能性を予測し、車両と物標とが衝突する可能性がある場合、車両のドライバに対して注意を喚起する衝突警報の出力および自動ブレーキの作動を実行する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、車両と物標との衝突の可能性ありと予測された場合、車両と物標との衝突予測位置が走行路外であるか否かを判定し、衝突予測位置が走行路外であると判定された場合、物標と車両との衝突を回避するための衝突回避制御を抑制するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-124786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、路側物であるガードレールや隣車線の車列等の路側側に連続して存在する障害物は、カーブしているため、本来は衝突の可能性がない状態でも、自車の進路上に存在するかどうかを区別できず、衝突警報を不要に作動させてしまうという問題があった。例えば、右カーブに差し掛かった場合、正面に見えるガードレールや車列は実際には自車の進路外であるが、現時点での自車進行方向の正面であるため、警報を不要に作動させてしまう。この不要な警報は、ドライバに煩わしさを与え、運転に支障をきたす。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、自車の走行路外の連続障害物を衝突対象から除外して不要な警報の作動を抑止することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両用制御装置は、車両用制御装置であって、前記車両用制御装置が搭載される車両の所定時間後の位置を示す車両未来位置を予測する車両位置予測部と、物標の前記所定時間後の位置を示す物標未来位置を予測する物標位置予測部と、前記車両未来位置および前記物標未来位置に基づいて、前記車両と前記物標とが衝突する可能性があるか否かを判定する衝突判定部と、前記車両と前記物標とが衝突する可能性があると判定された場合、前記車両の進行方向と前記物標の進行方向との関係に基づいて、前記車両と前記物標との衝突形態を予測する衝突形態予測部と、前記衝突形態予測部により予測された衝突形態に応じて、警報及び前記物標との衝突を回避する自動ブレーキの作動タイミングを1次判定し、さらに該1次判定結果に対し、前記物標に関する幾何学的情報の複数の端点位置から得られる指標値をもとに前記物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物であるか否かの2次判定を行う作動判定部と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記の発明において、前記指標値は、連続する物標間の距離と、連続する物標間のなす角度とであり、前記作動判定部は、前記距離が所定距離閾値未満であり、かつ、前記角度が所定角度未満である場合、連続する物標を走行路外の連続障害物であるとする2次判定を行う。
【0009】
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記の発明において、前記指標値は、連続する物標がなす半径と、前記車両の車速とであり、前記作動判定部は、前記半径が所定半径閾値未満であり、かつ、前記車速が所定車速閾値未満である場合、連続する物標を走行路外の連続障害物であるとする2次判定を行う。
【0010】
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記の発明において、前記作動判定部は、前記走行路外の連続障害物であるか否かの2次判定を、前記指標値を用いたヒステリシス判定により行い、所定期間、前記走行路外の連続障害物であることを条件として、連続する物標を前記走行路外の連続障害物であると2次判定し、前記所定期間、前記走行路外の連続障害物でないことを条件として、連続する物標を前記走行路外の連続障害物でないと2次判定する。
【0011】
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記の発明において、記作動判定部は、連続する物標が前記走行路外の連続障害物であると判定された場合、連続する次回以降のヒステリシス判定の上限閾値及び下限閾値をそれぞれ大きくして前記走行路外の連続障害物の判定を甘くする。
【0012】
また、本発明に係る車両用制御装置は、上記の発明において、前記作動判定部により前記物標が前記走行路外の連続障害物であるとする2次判定がなされた場合、前記車両と前記物標とが衝突すると予測された時点で、前記作動判定部により1次判定された警報の作動タイミングを遅らせて実行する実行部を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自車の走行路外の連続障害物を衝突対象から除外して不要な警報の作動を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施の形態である車両用制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、車両用制御装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、車両用制御装置による車両制御処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、衝突形態の予測処理および車両の自動ブレーキの作動タイミングの算出処理の一例を示す説明図である。
図5図5は、車両用制御装置における車両の自動ブレーキの制御処理の一例を示す説明図である。
図6図6は、警報及び自動ブレーキの作動タイミングの一例を示すタイムチャートである。
図7図7は、物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物の一例を示す図である。
図8図8は、作動判定部による2次判定処理に用いる指標値である距離と角度との算出を説明する説明図である。
図9図9は、2次判定処理手順を示す詳細フローチャートである。
図10図10は、図9に示したヒステリシス制御を説明する説明図である。
図11図11は、作動判定部による2次判定処理に用いる指標値である半径の算出を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態である車両用制御装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<全体構成>
図1は、本実施の形態である車両用制御装置1の構成を示すブロック図である。車両用制御装置1は、車両X(図4参照)に搭載されて、車両Xの運転を支援する装置である。ここで、車両Xは、例えば、電気自動車、ハイブリッド車、自動運転車であっても良い。車両用制御装置1は、車両Xと物標T(図4参照)との衝突を回避または衝突による被害を軽減するための運転支援機能を有する。ここで、物標Tは、前方の車両、人、障害物等の対象物である。また、運転支援機能には、衝突警報機能と、1次ブレーキ機能と、2次ブレーキ機能と、が含まれる。
【0017】
衝突警報機能は、自動ブレーキの作動前に衝突の可能性を警報する機能である。また、1次ブレーキ機能は、ドライバに衝突を回避するための行動を促すために、自動ブレーキにより車両Xを1次目標減速度で減速させる機能(緩ブレーキ機能)である。また、2次ブレーキ機能は、衝突の回避および衝突被害の軽減のために、自動ブレーキにより車両Xを1次目標減速度よりも大きい2次目標減速度で減速させる機能(強ブレーキ機能)である(図6参照)。
【0018】
車両用制御装置1には、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)11が含まれる。ECU11は、マイコン(Micro Controller)12を備えている。マイコン12には、CPU13およびメモリ14が内蔵されている。車両Xには、ECU11以外に、各部を制御するための複数のECUが搭載されている。ECU11は、他のECUとCAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0019】
また、車両Xには、カメラ21が搭載されている。カメラ21は、例えば、所定のフレームレートで静止画を連続して撮像可能なステレオカメラであり、車両Xの前方を広角で撮像可能なように、例えば、車室内の前部中央のルームミラーの前方に設置されている。また、カメラ21は、左右両眼のイメージセンサから入力される一対の画像データから、イメージセンサに撮像された各画像で同一対象物に対応する対象画素を抽出する。次いで、カメラ21は、その一対の画像間での対象画素の位置のずれ量を検出し、三角測量の原理で同一対象物(物標T)までの距離を算出する。カメラ21の出力信号は、ECU11に入力される。
【0020】
車両Xには、さらに、車速センサ22、舵角センサ23、およびヨーレートセンサ24が設けられている。車速センサ22は、車両Xの走行に伴って回転する回転体(例えば、ドライブシャフト)の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。舵角センサ23は、車両Xのステアリング機構(例えば、ハンドル)の舵角中点に対する舵角(絶対舵角)に応じた検出信号を出力する。その舵角は、舵角中点からステアリング機構が右に切られた状態(ハンドルが右側に回された状態)で正の値をとり、左に切られた状態(ハンドルが左側に回された状態)で負の値をとる。
【0021】
ヨーレートセンサ24は、車両Xの重心点を通る鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートに応じた検出信号を出力する。車速センサ22、舵角センサ23、およびヨーレートセンサ24の検出信号は、ECU11に入力される。
【0022】
車両Xには、油圧式のブレーキシステムが搭載されている。ブレーキシステムは、ブレーキペダル、ブレーキブースタ、マスタシリンダ、ブレーキアクチュエータ25、および各車輪に設けられるブレーキを含む。ブレーキペダルは、運転席に着座した運転者の右足での足踏み操作が便利な位置に配置されている。ブレーキペダルが踏まれると、そのブレーキペダルに入力された踏力がブレーキブースタに伝達される。ブレーキブースタでは、エンジンの吸気系に発生する負圧が利用され、その負圧と大気圧との圧力差によりブレーキペダルの踏力が増幅される。
【0023】
ブレーキブースタで増幅された力がブレーキブースタからマスタシリンダに伝達され、その力に応じた油圧がマスタシリンダから発生する。マスタシリンダの油圧がブレーキアクチュエータ25に伝達され、ブレーキアクチュエータ25から各車輪に設けられたブレーキのホイールシリンダに油圧が供給されて、その油圧により、各ブレーキから車輪に制動力が付与される。また、ブレーキアクチュエータ25には、電動ポンプが内蔵されており、自動ブレーキが作動時には、電動ポンプがバッテリからの電力で駆動されて、電動ポンプで発生した油圧が各ホイールシリンダに供給される。
【0024】
また、車両Xには、警報器26が備えられている。警報器26は、各種の警報を出力するものであり、その警報は、光により出力されても良いし、音または音声により出力されても良い。
【0025】
<内部機能構成>
図2は、車両用制御装置1の内部構成を示す機能ブロック図である。車両用制御装置1は、CPU13が、メモリ14に記憶される各種プログラムを実行することにより、図2に示すように、車両位置予測部101、物標位置予測部102、衝突判定部103、衝突形態予測部104、作動判定部105、実行部106等の各機能部を実現する。本実施形態にかかる車両用制御装置1では、CPU13がメモリ14に記憶される各種プログラムを実行することにより、車両位置予測部101、物標位置予測部102、衝突判定部103、衝突形態予測部104、作動判定部105、実行部106等の各機能部を実現しているが、これに限定するものではなく、ハードウェアにより各機能部を実現することも可能である。
【0026】
車両位置予測部101は、車両Xの所定時間後の位置を示す未来位置(以下、車両未来位置という)を予測する。ここで、所定時間は、予め設定された時間である。本実施形態では、車両位置予測部101は、車速センサ22から出力される検出信号に応じた車速、舵角センサ23から出力される検出信号に応じた舵角、ヨーレートセンサ24から出力される検出信号に応じた回転角速度等に基づいて、車両未来位置を予測する。また、本実施形態では、車両位置予測部101は、現在時刻から所定時間後までの微小時間毎に、車両未来位置を予測する。
【0027】
物標位置予測部102は、物標Tの所定時間後の位置を示す未来位置(以下、物標未来位置という)を予測する。本実施形態では、物標位置予測部102は、カメラ21により算出される物標Tまでの距離に基づいて、物標未来位置を予測する。すなわち、物標位置予測部102は、撮像される画像データに基づいて、物標未来位置を予測する。本実施形態では、物標位置予測部102は、現在時刻から所定時間後までの微小時間毎に、物標未来位置を予測する。
【0028】
衝突判定部103は、車両未来位置および物標未来位置に基づいて、車両Xと物標Tとが衝突する可能性があるか否かを判定する。本実施形態では、衝突判定部103は、車両未来位置に位置する車両Xを取り囲む矩形状の車両領域を設定する。そして、衝突判定部103は、設定した車両領域内に物標未来位置が含まれる場合、車両Xと物標Tとが衝突する可能性があると判定する。また、本実施形態では、衝突判定部103は、現在時刻から所定時間後までの微小時間毎に、車両未来位置および物標未来位置に基づいて、車両Xと物標Tとが衝突する可能性があるか否かを判定する。
【0029】
衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとが衝突する可能性があると判定された場合、車両Xの進行方向と、物標Tの進行方向との関係に基づいて、車両Xと物標Tとの衝突形態を予測する。本実施形態では、衝突形態予測部104は、車両Xの車両未来位置の周囲を取り囲む車両領域および物標Tの物標未来位置を取り囲む物標領域を設定する領域設定部の一例としても機能する。次いで、衝突形態予測部104は、設定された車両領域および物標領域と、角度θと、に基づいて、車両Xにおける物標Tの衝突部位を含む衝突形態(例えば、フルラップ前面衝突、オフセット前面衝突、側面衝突)を予測する。これにより、車両Xに対する物標Tの衝突部位に基づいて、車両Xの制御処理が可能となるので、車両Xと物標Tとのより多種多様な衝突形態に対処可能となる。
【0030】
ここで、角度θ(図4参照)は、車両Xの進行方向と、物標Tの進行方向と、がなす角度である。本実施形態では、衝突形態予測部104は、車両領域および物標領域を設定しているが、車両未来位置および物標未来位置の少なくとも一方を取り囲む領域に基づいて衝突形態を予測するものであれば良い。
【0031】
本実施形態では、衝突形態には、追突衝突形態、および横断衝突形態が含まれる。ここで、追突衝突形態は、車両Xおよび物標Tの一方が他方の進路に入ることなく衝突する衝突形態(追突衝突形態)である。言い換えると、追突衝突形態は、車両Xおよび物標Tの一方の前面が他方に衝突する衝突形態である。また、横断衝突形態は、追突以外の衝突形態であり、車両Xおよび物標Tの一方が他方の進路に入って衝突する衝突形態である。言い換えると、横断衝突形態は、物標Tおよび車両Xの一方の前面が他方の側面に衝突する衝突形態である。この横断衝突形態には、角度θが180度の正面衝突も含まれる。
【0032】
作動判定部105は、衝突形態予測部104により予測された衝突形態に応じて、警報及び物標との衝突を回避する自動ブレーキの作動タイミングを1次判定し、さらに該1次判定結果に対し、物標に関する幾何学的情報の複数の端点位置から得られる指標値をもとに物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物であるか否かの2次判定を行う。指標値は、連続する物標間の距離と、連続する物標間のなす角度とであり、作動判定部105は、距離が所定距離閾値未満であり、かつ、角度が所定角度未満である場合、連続する物標を走行路外の連続障害物であるとする2次判定を行う。
【0033】
実行部106は、作動判定部105により物標が走行外の連続障害物であるとする2次判定がなされた場合、車両と物標とが衝突すると予測された時点で、作動判定部により1次判定された警報の作動タイミングを遅らせて実行する。なお、作動判定部105により物標が走行外の連続障害物でないとする2次判定がなされた場合、車両と物標とが衝突すると予測された時点で、作動判定部により1次判定された警報あるいは警報及び自動ブレーキの作動(所定の制御)を実行する。
【0034】
ここで、所定の制御は、予め設定される制御であり、例えば、自動ブレーキ(所謂、AEB:Autonomous Emergency Braking)を作動させるタイミング(以下、作動タイミングという)、運転手に対する警報の種類の変更である。また、ここで、自動ブレーキは、車両Xと物標Tとの衝突を抑制するブレーキである。すなわち、所定の制御は、車両Xと物標Tとの衝突を回避する制御である。
【0035】
本実施形態では、実行部106は、作動判定部105の1次判定結果により、衝突形態予測部104により予測される衝突部位に基づいて、車両Xに対して所定の制御を実行するが、作動判定部105の2次判定結果により、物標が走行外の連続障害物であるとする2次判定がなされた場合、警報の作動タイミングを遅らせるようにしているので不要な警報の作動を抑止でき、ドライバの運転に影響を与えない。
【0036】
具体的には、実行部106による所定の制御は、衝突形態予測部104により予測される追突衝突形態と横断衝突形態とで自動ブレーキの作動タイミングを変更する。より具体的には、実行部106は、追突衝突形態による衝突位置と横断衝突形態による衝突位置とで、自動ブレーキの作動タイミングを変更する。例えば、予測された衝突形態が追突衝突形態である場合、実行部106は、衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)に従って、車両Xと物標Tとの衝突位置の手前で車両Xが停車するように自動ブレーキを作動させる。すなわち、実行部106は、車両Xと物標Tとの衝突位置の手前から、車両Xの進行方向とは反対方向に向かって、自動ブレーキの制動距離の分、離れた位置から自動ブレーキを作動させる。
【0037】
一方、予測された衝突形態が横断衝突形態である場合、実行部106は、衝突余裕時間に従って、車両Xと物標Tとの衝突位置の手前で車両Xが停車するように自動ブレーキを作動させる。若しくは、実行部106は、ブレーキ余裕時間(TTB:Time To Brake)に従って、車両Xと物標Tとの衝突位置の手前であり、かつ物標Tの進路の手前で車両Xが停車するように自動ブレーキを作動させる。すなわち、実行部106は、物標Tの進路の手前から、車両Xの進行方向とは反対方向に向かって、自動ブレーキの制動距離の分、離れた位置から自動ブレーキを作動させる。これにより、追突衝突形態および横断衝突形態のそれぞれについて好適なタイミングにて自動ブレーキを作動させることができる。
【0038】
<車両制御処理>
図3は、車両用制御装置1による車両制御処理手順を示すフローチャートである。図3に示すように、まず物標位置予測部102は、カメラ21により撮像される画像データに基づいて、物標Tの位置である物標位置を算出するとともに、車両位置予測部101は、走行情報を取得する(ステップS11)。ここで、物標位置は、車両Xの中心位置を基準とする物標Tの位置である。また、走行情報は、車両Xの車速、舵角、回転角速度等である。
【0039】
その後、物標位置予測部102は、算出した物標位置に基づいて、物標Tの所定時間後の位置を示す物標未来位置を予測するとともに、車両位置予測部101は、取得した走行情報に基づいて、車両Xの所定時間後の位置を示す車両未来位置を予測する(ステップS12)。
【0040】
その後、衝突判定部103は、車両未来位置および物標未来位置に基づいて、車両Xと物標Tとが衝突する可能性があるか否かを判定する(ステップS13)。衝突判定部103が車両Xと物標Tとが衝突する可能性がないと判定した場合(ステップS13:No)、本処理を終了する。一方、衝突判定部103が車両Xと物標Tとが衝突する可能性があると判定した場合(ステップS13:Yes)、衝突形態予測部104は、車両Xの進行方向と、物標Tの進行方向との関係に基づいて、車両Xと物標Tとの衝突形態を予測する(ステップS14)。
【0041】
その後、作動判定部105は、衝突形態予測部104により予測された衝突形態に応じて、警報及び物標Tとの衝突を回避する自動ブレーキの作動タイミングを1次判定する1次判定処理を行う(ステップS15)。さらに、作動判定部105は、物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物であるか否かを判定する2次判定処理を行う(ステップS16)。
【0042】
その後、2次判定処理の結果が、物標が連続した走行路外の連続障害物であると判定されたか否かを判定する(ステップS17)。走行路外の連続障害物であると判定された場合(ステップS17:Yes)、実行部106は、1次判定結果の警報タイミングを遅らせる衝突回避制御を実行し(ステップS18)、本処理を終了する。一方、走行路外の連続障害物であると判定されない場合(ステップS17:No)、実行部106は、1次判定結果の警報及び自動ブレーキの作動タイミングで衝突回避制御を実行し(ステップS19)、本処理を終了する。なお、本処理は、所定時間ごと繰り返し行う。
【0043】
<具体的な衝突回避制御>
図4は、衝突形態の予測処理および車両Xの自動ブレーキの作動タイミングの算出処理の一例を示す説明図である。まず、衝突判定部103によって車両Xと物標Tとが衝突する可能性があると判定されると、衝突形態予測部104は、車両Xの進行方向を表すベクトルである車両進行方向ベクトルVvecと、物標Tの進行方向を表すベクトルである物標進行方向ベクトルGvecと、がなす角度θを求める。すなわち、角度θは、車両Xの進行方向と、物標Tの進行方向と、がなす角度である。
【0044】
具体的に、衝突形態予測部104は、下記の式(1)に示すように、現在時刻t-1における車両Xの現在位置VUT(t-1)と、現在時刻から所定時間後の未来時刻tにおける車両Xの車両未来位置VUT(t)と、に基づいて、車両進行方向ベクトルVvecを算出する。
Vvec=VUT(t)-VUT(t-1)・・・(1)
【0045】
また、衝突形態予測部104は、下記の式(2)に示すように、現在時刻t-1における物標Tの現在位置GVT(t-1)と、未来時刻tにおける物標Tの物標未来位置GVT(t)と、に基づいて、物標進行方向ベクトルGvecを算出する。
Gvec=GVT(t)-GVT(t-1)・・・(2)
【0046】
そして、衝突形態予測部104は、下記の式(3)に示すように、車両進行方向ベクトルVvecと物標進行方向ベクトルGvecとがなす角度θを求める。
cоsθ=Vvec・Gvec/|Vvec||Gvec|・・・(3)
【0047】
さらに、衝突形態予測部104は、角度θが、閾値θt(例えば、10度)より小さいか否かを判定する。ここで、閾値(所定閾値の一例)θtは、例えば、10度であり、車両進行方向ベクトルVvecと物標進行方向ベクトルGvecとがほぼ一致しており、車両Xと物標Tとが追突以外の衝突形態により衝突すると判定する角度θの閾値である。
【0048】
そして、角度θが閾値θtより小さい場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、追突衝突形態と予測する。次いで、衝突形態予測部104は、車両Xの進行方向側の端点が物標Tの物標領域内に入っているか否かを判定する。本実施形態では、図4に示すように、車両Xの車両領域が矩形状の領域とする場合、衝突形態予測部104は、車両Xの中心位置OXを基準とする矩形状の領域の角A,B,C,Dを、車両領域の端点に設定する。また、図4に示すように、物標Tの物標領域を矩形状の領域とする場合、衝突形態予測部104は、物標Tの中心位置OTを基準とする矩形状の領域の角E,F,G,Hを、物標領域の端点に設定する。
【0049】
そして、衝突形態予測部104は、未来時刻tにおける車両領域の端点A,B,C,Dが、未来時刻tにおける物標Tの中心位置OTを基準とする物標領域内に入っているか否かを判定する。例えば、衝突形態予測部104は、EF×EA、FG×FA、GH×GA、およびHE×HAの外積を算出し、算出した外積の符号が一致した場合には、端点Aが物標領域内に入っていると判定する。衝突形態予測部104は、車両領域の端点B,C,Dについても同様にして、物標領域内に入っているか否かを判定可能である。
【0050】
車両Xの進行方向側の端点、例えば、図4に示す端点Aおよび端点Bの少なくとも一方)が物標Tの物標領域内に入っている場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、追突衝突形態のうち、車両Xの前面(前部)が、物標Tの後面(後部)に衝突する衝突形態であると予測する。
【0051】
この場合、作動判定部105は、衝突余裕時間(TTC)に従って、車両Xが物標Tに衝突する衝突位置の手前で車両Xが停車するように、自動ブレーキの作動タイミングを算出する1次判定を行う。
【0052】
一方、車両Xの進行方向側の端点が物標Tの物標領域内に入っていない場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、追突衝突形態のうち、物標Tの前面(前部)が車両Xの後面(後部)に衝突する衝突形態であると予測する。この場合、作動判定部105は、車両Xに対する所定の制御を実行せず、そのまま車両Xの走行を継続させる、若しくは、車両Xの運転手に対して警告(所定の制御の一例)等を発して、物標Tが車両Xに追突することを運転手に通知する1次判定を行う。
【0053】
すなわち、車両進行方向ベクトルVvecと、物標進行方向ベクトルGvecと、がなす角度θのみでは、車両Xが物標Tに追突するのか、若しくは、車両Xが物標Tに追突される非追突なのかを判別することが困難である。非追突の場合、車両Xの自動ブレーキを作動させる必要性が低いため、車両Xのどの部位に物標Tが衝突するかを判定する必要がある。
【0054】
このため、衝突形態予測部104は、車両Xの進行方向側の端点の少なくとも一方が物標Tの物標領域内に入っているか否かの判定によって、車両Xと物標Tとの衝突形態が、車両Xの前面が物標Tに衝突する衝突形態であるか否かを予測する。すなわち、角度θが閾値θtより小さく、かつ車両Xの進行方向側の端点が物標領域内に入っている場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、車両Xの前面が、物標Tの一例である前方の車両の後面に衝突する衝突形態であると予測する。一方、角度θが閾値θtより小さく、かつ車両Xの進行方向側の端点が物標領域内に入っていない場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、物標Tの前面が車両Xの後面に衝突する衝突形態であると予測する。
【0055】
また、角度θが閾値θt以上である場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、横断衝突形態(追突衝突形態以外の衝突形態)と予測する。次いで、衝突形態予測部104は、車両Xの進行方向側の端点が物標Tの物標領域内に入っているか否かを判定する。衝突形態予測部104は、車両Xの進行方向側の端点が物標Tの物標領域内に入っているか否かを判定する。
【0056】
車両Xの進行方向側の端点が物標Tの物標領域内に入っている場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、横断衝突形態のうち、車両Xの前面(前部)が物標Tの側面(側部)に衝突する衝突形態(側突)であると予測する。この場合、作動判定部105は、衝突余裕時間(TTC)に従って、車両Xと物標Tの衝突位置の手前で車両Xが停車するように、自動ブレーキの作動タイミングを算出する1次判定を行う。
【0057】
一方、車両Xの進行方向側の端点が物標Tの物標領域内に入っていない場合、衝突形態予測部104は、物標Tの端点が車両Xの車両領域内に入っているか否かを判定する。衝突形態予測部104は、未来時刻tにおける物標Tの物標領域の端点E,F,G,Hが、未来時刻tにおける車両Xの中心位置OXを基準とする車両領域内に入っているか否かを判定する。例えば、衝突形態予測部104は、AB×AE、BC×BE、CD×CE、およびDA×DEの外積を算出し、算出した外積の符号が一致した場合には、端点Eが車両領域内に入っていると判定する。衝突形態予測部104は、物標Tの端点F,G,Hについても同様にして、車両領域内に入っているか否かを判定する。
【0058】
物標Tの進行方向側の端点、すなわち、図4に示す端点Eおよび端点Fの少なくとも一方が車両Xの車両領域内に入っていない場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとが衝突しないと判定する。一方、物標Tの進行方向側の端点、すなわち、図4に示す端点Eおよび端点Fの少なくとも一方が車両Xの車両領域内に入っている場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、横断衝突形態のうち、物標Tの前面(前部)が車両Xの側面(側部)に衝突する衝突形態(側突)であると予測する。
【0059】
この場合、作動判定部105は、ブレーキ余裕時間(TTB)に従って、物標Tの進路の手前で車両Xが停車するように、自動ブレーキの作動タイミングを算出する1次判定を行う。
【0060】
車両Xおよび物標Tの一方が他方の進路を横断する場合でも、車両Xの前面が物標Tに衝突する衝突形態と、車両Xの側面に物標Tの前面が衝突する衝突形態とで、自動ブレーキを作動させる必要があるタイミングが異なる。例えば、車両Xと物標Tとの衝突形態が、車両Xの側面に物標Tが衝突する衝突形態である場合、運転手による操作によって物標Tをすり抜けられる可能性もあり、運転手の意思を尊重して、自動ブレーキの作動タイミングを算出する必要がある。
【0061】
このため、衝突形態予測部104は、物標Tの進行方向側の端点E,Fが車両領域内に入っているか否かの判定によって、車両Xと物標Tとの衝突形態が、車両Xの側面に物標Tの前面が衝突する衝突形態であるか否かを予測する。すなわち、角度θが閾値θt以上であり、かつ車両Xの進行方向側の端点が物標領域内に入っている場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、車両Xの前面が、物標Tの側面に衝突する衝突形態であると予測する。一方、角度θが閾値θt以上であり、車両Xの進行方向側の端点が物標領域内に入っておらず、かつ物標Tの進行方向側の端点が車両領域内に入っている場合、衝突形態予測部104は、車両Xと物標Tとの衝突形態が、物標Tの前面が車両Xの側面に衝突する衝突形態であると予測する。なお、衝突形態予測部104は、角度θが180度である場合、車両Xと物標Tとの衝突形態は、正面衝突であると判定する。
【0062】
図5は、車両用制御装置1における車両の自動ブレーキの制御処理の一例を示す説明図である。従来の車両用制御装置では、車両Xの自動ブレーキの作動タイミングを算出する際、車両Xと、物標Tの一例である他の車両Yと、の衝突形態に関わらず、車両Xの進行方向において、車両Xと他の車両Yとの衝突位置P1よりも距離d1だけ手前の停車位置P2で当該車両Xが止まるように、停車位置P2から距離d2手前を自動ブレーキの作動タイミングとして算出している。ここで、距離d2は、自動ブレーキの制動距離である。そのため、車両Xが他の車両Yの進路に入り、かつ、他の車両Yの前面が車両Xの側面に衝突する場合、従来の車両用制御装置では、図5(a)に示すように、車両Xが他の車両Yの進路内の停車位置P2において停車するため、他の車両Yの前面が車両Xの側面に衝突してしまう可能性がある。
【0063】
これに対し、車両用制御装置1では、車両Xが他の車両Yの進路に入り、かつ、他の車両Yの前面が車両Xの側面に衝突する場合、作動判定部105は、図5(b)に示すように、他の車両Yの進路の手前の停車位置P3で車両Xが止まるように、停車位置P3から距離d2手前を自動ブレーキの作動タイミングとして算出する1次判定を行う。これにより、車両Xの側面に他の車両Yの前面が衝突する可能性があると判定された場合に、他の車両Yの進路に入ることなく車両Xを停車させることができる。この結果、車両Xの側面に他の車両Yの前面が衝突する場合でも、車両Xと他の車両Yとの衝突を回避することが可能となる。
【0064】
このように、車両用制御装置1によれば、車両Xと物標Tとが衝突する可能性があると判断された場合、車両Xの進行方向と、物標Tの進行方向との関係に基づいて、車両Xと物標Tとの衝突形態を予測し、予測した衝突形態に応じて、車両Xに対して所定の制御(通常制御)を実行することにより、車両Xと物標Tとの衝突形態に応じて車両Xに対する制御を変更できるので、車両Xと物標Tとの多種多様な衝突形態に対処可能となる。
【0065】
図6は、警報及び自動ブレーキの作動タイミングの一例を示すタイムチャートである。図6に示すように現時点t0において衝突の可能性があると予測された場合、車両が停止する時点t10から衝突余裕時間(TTC)に対応する時間T1遡った時点t1から警報を発する。また、ブレーキ余裕時間(TTB)に対応する時間(T2+T3)遡った時点t2から1次ブレーキを作動させ、時点t3から1次ブレーキよりも強ブレーキの2次ブレーキを作動させる。1次ブレーキと2次ブレーキとは一体とした時間であり、時点t2から自動ブレーキが作動することになる。なお、2次ブレーキは、停止位置との関係で時点の経過とともに、さらに最大ブレーキに変更することが可能である。
【0066】
ここで、本実施形態では、作動判定部105が、物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物であるか否かの2次判定を行い、この2次判定の結果が走行路外の連続障害物でない場合、作動判定部105により1次判定された上記の制御内容を実行し、この2次判定の結果が走行路外の連続障害物である場合、作動判定部105により1次判定された上記の制御内容の警報来民具を遅らせる制御を実行する。
【0067】
<走行路外の連続障害物の一例>
図7は、物標が弧状に連続した走行路外の連続障害物の一例を示す図である。図7(a)は、車両Xが走行路BRに沿って右カーブに差し掛かった場合、正面に見える路側物であるガードレールZが連続して配置されている例である。この場合、ガードレールZは現時点で車両Xの進行方向の正面であるため、衝突予測点P10での衝突を予測してしまう。しかし、実際には、車両Xの走行路外であるため、衝突はしない。
【0068】
一方、図7(b)は、車両Xが走行路BRに沿って右カーブに差し掛かった場合、正面に見える車両Yの車列は、路側側の隣車線に連続している例である。この場合、車両Yの車列は車両Xの進行方向の正面であるため、衝突予測点P10での衝突を予測してしまう。しかし、実際には、車両Xの走行路外であるため、衝突はしない。図7(a)及び図7(b)のいずれの場合にも、車両Xは警報を発したまま、走行路BRを走行し続けることになる。
【0069】
<指標値の算出>
図8は、作動判定部105による2次判定処理に用いる指標値である距離Dと角度θとの算出を説明する説明図である。図8(a)は、物標である車両Y1,Y2が隣車線で車列を組んでいる場合を示し、作動判定部105は、車両Y1,Y2の画像を撮像することにより、図4と同様に、車両Y1の端点A,B,C,Dと中心位置P1、及び、車両Y2の端点E,F,G,Hと中心位置P2を求めることができる。
【0070】
図8(b)に示した連続する物標間の距離Dと、連続する物標間のなす角度θとは指標値であり、車両Y1,Y2の端点位置を用いて求めることができる。まず、角度θは、端点の差標から、ベクトルDA,HEを得ることができる。このベクトルの内積を用いて次式(4)に示す角度θを求めることができる。
cоsθ=DA・HE/|DA||HE|・・・(4)
【0071】
また、距離Dは、中心位置P1,P2間の距離として次式(5)により、求めることができる。
D=√((P1-P2+(P1-P2) ・・・(5)
なお、P1及びP1は、それぞれP1(x、y)のx成分、y成分を示す。また、P2及びP2は、それぞれP2(x、y)のx成分、y成分を示す。
【0072】
<2次判定処理>
図9は、ステップS16の2次判定処理手順を示す詳細フローチャートである。図9に示すように、作動判定部105は、まず、物標の位置情報を取得する(ステップS21)。その後、連続する物標間のなす角度θ及び物標間の距離Dを算出する(ステップS22)。
【0073】
その後、角度θが下限角度θin未満、かつ、距離Dが下限距離Din未満であるか否かを判定する(ステップS23)。角度θが下限角度θin未満、かつ、距離Dが下限距離Din未満である場合(ステップS23:Yes)、さらに、角度θが上限角度θout未満、かつ、距離Dが上限距離Dout未満である状態を所定期間継続したか否かを判定する(ステップS24)。角度θが上限角度θout未満、かつ、距離Dが上限距離Dout未満である状態を所定期間継続した場合(ステップS24:Yes)、物標は、走行路外の連続障害物であると判定し(ステップS25)、ステップS16に戻る。一方、角度θが上限角度θout未満、かつ、距離Dが上限距離Dout未満である状態を所定期間継続しない場合(ステップS24:No)、そのままステップS16に戻る。
【0074】
一方、角度θが下限角度θin未満、かつ、距離Dが下限距離Din未満でない場合(ステップS23:No)、さらに、角度θが上限角度θoutを超え、かつ、距離Dが上限距離Doutを超えているか否かを判定する(ステップS26)。角度θが上限角度θoutを超え、かつ、距離Dが上限距離Doutを超えている場合(ステップS26:Yes)、さらに、角度θが下限角度θinを超え、かつ、距離Dが下限距離Dinを超える状態を所定期間継続したか否かを判定する(ステップS27)。
【0075】
角度θが下限角度θinを超え、かつ、距離Dが下限距離Dinを超える状態を所定期間継続した場合(ステップS27:Yes)、物標は、走行路外の連続障害物であるとの判定を解除し(ステップS28)、ステップS16に戻る。一方、角度θが下限角度θinを超え、かつ、距離Dが下限距離Dinを超える状態を所定期間継続しない場合(ステップS27:No)、そのままステップS16に戻る。
【0076】
なお、図9に示した2次判定処理では、図10に示すように、下限角度θin及び上限角度θoutと、下限距離Din及び上限距離Doutとを用いたヒステリシス制御処理を行っている。
【0077】
また、連続する物標が走行路外の連続障害物であると判定された場合、連続する次回以降のヒステリシス判定の上限閾値(上限角度θout,上限距離Dout)及び下限閾値(下限角度θin,下限距離Din)をそれぞれ大きくして走行路外の連続障害物の判定を甘くした、上限角度θout´,上限距離Dout´,下限角度θin´,下限距離Din´に設定するようにしてもよい。これにより、次回以降、連続障害物であるとの判定がしやすくなるとともに、解除しにくくなり、安定した判定を行うことができる。
【0078】
なお、ヒステリシス制御でなく、単一の角度閾値θth及び距離閾値Dthを用いて2次判定処理を行うようにしてもよい。
【0079】
また、連続する路側物の円弧の先には、さらに路側物が存在すると仮定できる。このため、路側物が存在すると仮定できるエリアでは、距離Dに関する閾値を大きくし、路側物(障害物)の判定を安定して行うようにしてもよい。
【0080】
<変形例>
本変形例では、指標値として、連続する物標がなす半径Rと、車両の車速Vとを用い、作動判定部105は、半径Rが所定半径閾値Rth未満であり、かつ、車速Vが所定車速閾値Vth未満である場合、連続する物標を走行路外の連続障害物であるとする2次判定を行うようにしている。この所定半径閾値Rthと所定車速閾値Vthとは、それぞれ角度閾値θthと距離閾値Dthとに対応し、図9に示した処理手順に置き換えて行うことができる。なお、本変形例においてもヒステリシス制御などが適用できる。
【0081】
図11は、作動判定部105による2次判定処理に用いる指標値である半径Rの算出を説明する説明図である。作動判定部10は、まず、3つの障害物ni,nj,nkを選択する。この3つの障害物は、隣接する距離Dが距離閾値Dthより小さいものを選択する。例えば、障害物ni,nj間の距離dij及び障害物nj,nk間の距離djkは、それぞれ次式(6)及び次式(7)に求めることができる。
dij=√((x-x+(y-y) ・・・(6)
djk=√((x-x+(y-y) ・・・(7)
【0082】
そして、障害物ni,nj間を結ぶ直線の垂直2等分線は、次式(8)で表せる。
(y-(y+y)/2)
=-(x-x)/(y-y)*(x-(x+x))/2 ・・・(8)
同様にして障害物nj,nk間を結ぶ直線の垂直2等分線も表せる。そして、この2つの垂直2等分線の交点Nの位置を求める。この交点Nと障害物ni,nj,nkとの距離が半径Rとなる。図11における円弧CAは、交点Nを中心とする半径Rの円弧である。
【0083】
本変形例では、車速Vに対して、円弧の半径Rが小さ過ぎる場合、衝突の可能性があるとして、警報を第1判定の警報タイミングで出力し、警報タイミングを遅延しないようにする。
【0084】
なお、指標値である角度θと距離Dとにより判定に、半径Rと車速Vとによる判定を加えるようにしてもよい。この場合、判定は、各判定のアンド条件であってもよいし、オア条件であってもよい。また、本変形例においても、ヒステリシス制御を行ってもよい。
【0085】
また、上述した実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 車両用制御装置
11 ECU
12 マイコン
13 CPU
14 メモリ
21 カメラ
22 車速センサ
23 舵角センサ
24 ヨーレートセンサ
25 ブレーキアクチュエータ
26 警報器
101 車両位置予測部
102 物標位置予測部
103 衝突判定部
104 衝突形態予測部
105 作動判定部
106 実行部
D 距離
R 半径
T 物標
V 車速
X,Y 車両
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11