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特開2023-148702熱硬化性樹脂組成物、硬化物および指紋認証センサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148702
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、硬化物および指紋認証センサー
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 61/10 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L75/04
C08L61/06
C08L61/10
C08K3/36
C08K5/3445
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056864
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一則
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002AA022
4J002CC03Y
4J002CD06W
4J002CK03X
4J002DJ016
4J002EU117
4J002FD016
4J002FD14Y
4J002FD157
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】低誘電正接で印刷性、密着性に優れ、傷つき難い塗膜を形成できる熱硬化性樹脂組成物等を提供する。
【解決手段】(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂、(C)ノボラック型フェノール樹脂、(D)シリカ、および、(E)イミダゾール化合物を含有し、前記(D)シリカの含有量が、前記(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と前記(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂の合計100質量部に対して30~200質量部であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物等である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂、(C)ノボラック型フェノール樹脂、(D)シリカ、および、(E)イミダゾール化合物を含有し、
前記(D)シリカの含有量が、前記(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と前記(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂の合計100質量部に対して30~200質量部であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項3】
請求項2記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【請求項4】
センサーであることを特徴とする請求項3記載の電子部品。
【請求項5】
指紋認証センサーであることを特徴とする請求項4記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電正接で密着性に優れ、傷つき難い塗膜を形成できる熱硬化性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有する指紋認証センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器等に使用されるセンサーにおいて、大容量の情報を高速で処理するためには、伝搬速度の改善が不可欠であり、そのためには基材はもとより絶縁材であるオーバーコートも低誘電正接である必要がある。
【0003】
しかしながら、従来のソルダーレジストを含む絶縁材料(例えば、特許文献1)では、低誘電正接と、窒化ケイ素基材やガラス基材との密着性の両立に課題があり、大容量を扱う通信機器用のセンサーのオーバーコートに適していなかった。また、指紋認証センサーのような接触を伴うセンサーにおいては特に、当該センサーを保護するオーバーコートに傷がついたり、その表面の凹凸(表面粗さ)を示す算術平均粗さRaが所定の値、例えば1.6mm以上であると認証精度が低下するため、傷がつきにくく、オーバーコート表面の凹凸(表面粗さ)を示す算術平均粗さRaが所定の値、例えば、0.9mm以下、より好ましく0.5mm以下であるオーバーコートの形成が求められる。そのような表面粗さの少ないオーバーコートを印刷で形成できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-285624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、低誘電正接で印刷性、密着性に優れ、傷つき難い塗膜を形成できる熱硬化性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有する指紋認証センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、特定の酸価のウレタン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、および、イミダゾール化合物と、特定量のシリカを配合することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂、(C)ノボラック型フェノール樹脂、(D)シリカ、および、(E)イミダゾール化合物を含有し、
前記(D)シリカの含有量が、前記(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と前記(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂の合計100質量部に対して30~200質量部であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の硬化物は、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の電子部品は、センサーであることが好ましい。
【0011】
本発明の電子部品は、指紋認証センサーであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低誘電正接で印刷性、密着性に優れ、傷つき難い塗膜を形成できる熱硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物、および、該硬化物を有する指紋認証センサーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0014】
[(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含有する。(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品の例としては、DIC社製EPCLON N-660、N-665、N-670、N-673、N-680、N-690、N-695等が挙げられる。
【0015】
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、軟化点50℃以上が好ましく、90~100℃がより好ましい。エポキシ当量は、クレゾールノボラックであれば、特に制限されるものではない。
【0016】
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂との配合比率は、両成分の合計100質量部に対して、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の比率が30~70質量部であることが好ましく、40~60質量部であることがより好ましく、40~50質量部であることがさらに好ましい。この範囲内であれば鉛筆硬度、窒化ケイ素基板及びガラス基板上の密着性の物性がより良好である。
【0017】
[(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(B)酸価30mgKOH/g以上のウレタン樹脂(以下、「(B)高酸価ウレタン樹脂」とも呼称する)を含有する。(B)高酸価ウレタン樹脂はカルボキシル基を有する。(B)高酸価ウレタン樹脂の合成方法は特に限定されないが、例えば、モノマー成分(ポリオール成分、ポリイソシアネート成分)として、カルボキシル基を有するモノマー成分を用いて合成すればよい。そのようなモノマー成分としては、例えば、ジメチロールアルカン酸などが挙げられる。
そのような(B)高酸価ウレタン樹脂としては、特に、(a)ポリイソシアネートと、(b)ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオールと、(c)ポリカーボネートポリオールと、(d)ジメチロールアルカン酸とを反応させて得られるカルボシキル基含有ウレタン樹脂が好ましい。
【0018】
(B)高酸価ウレタン樹脂の酸価は、30~65mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、低誘電正接及びガラス基板や窒化ケイ素基板との密着性のバランスから40~55mgKOH/gがより好ましい。酸価が30mgKOH/g以上であれば、熱硬化性成分との反応性が良好となり、耐熱性、密着性が向上し、酸価が65mgKOH/g以下であれば、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性が良好となる。なお、樹脂の酸価はJIS K5407に準拠して測定した値である。
【0019】
(B)高酸価ウレタン樹脂の重量平均分子量は500~100,000であることが好ましく、8,000~50,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が500以上だと、硬化膜の伸度、可撓性、並びに強度が良好であり、一方、100,000以下だと、硬くなりにくく、可撓性が良好である。
【0020】
(B)高酸価ウレタン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)高酸価ウレタン樹脂の配合量は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂との配合比率として上述した。
【0021】
[(C)ノボラック型フェノール樹脂]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の硬化剤として、(C)ノボラック型フェノール樹脂を含有する。(C)ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂が挙げられる。なかでも、フェノールノボラック樹脂が好ましい。
【0022】
(C)ノボラック型フェノール樹脂の市販品としては、例えば、DIC社製のTD-2131、TD-2106、TD-2093、TD-2091、TD-2090、TD-2093-60M等やアイカ工業社製のBRG-557等(以上、フェノールノボラック樹脂)、DIC社製のKA-1160、KA-1163、KA-1165等(以上、クレゾールノボラック樹脂)、DIC社製のVH-4150、VH-4170、KH-6021等(以上、ビスフェノールノボラック樹脂)が挙げられる。
【0023】
(C)ノボラック型フェノール樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(C)ノボラック型フェノール樹脂の配合量は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(B)高酸価ウレタン樹脂の合計100質量部に対して、5~30質量部であることが好ましく、8~16質量部であることがより好ましい。この範囲内であれば鉛筆硬度、窒化ケイ素基板およびガラス基板との密着性がより良好である。
【0024】
[(D)シリカ]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、フィラー成分として、(D)シリカを配合する。(D)シリカを配合することで、低誘電正接で傷つき難い塗膜を形成することができる。(D)シリカは特に限定されず、例えば溶融シリカでも結晶シリカでもよい。(D)シリカの平均粒子径(メディアン径、D50体積%)は、0.01~10μmであることが好ましく、分散性の観点から0.01~5μmであることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径は、体積累積50%粒子径(D50体積%)の値のことをいい、一次粒子の粒径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒径も含めた平均粒子径である。平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置と動的光散乱法による測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII、動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotracWave II UT151が挙げられる。
【0025】
(D)シリカは、表面処理されていてもよい。表面処理としては、カップリング剤による表面処理や、アルミナ処理等の有機基を導入しない表面処理がされていてもよい。シリカの表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等でシリカの表面を処理すればよい。
【0026】
(D)シリカは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(D)シリカの配合量は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(B)高酸価ウレタン樹脂の合計100質量部に対して、30~200質量部であり、50~150質量部であることが好ましく、60~120質量部であることがより好ましい。この範囲内であれば、印刷性、窒化ケイ素基板との密着性がより良好である。
【0027】
[(E)イミダゾール化合物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(E)イミダゾール化合物を含有する。(E)イミダゾール化合物としては、公知のイミダゾール化合物を用いればよく、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、4-メチル-2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、イミダゾールとエポキシのアダクト体等を挙げることができる。
【0028】
(E)イミダゾール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(E)イミダゾール化合物の配合量は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(B)高酸価ウレタン樹脂の合計100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、3~7質量部であることがより好ましい。この範囲内であれば、印刷性、窒化ケイ素基板との密着性がより良好である。
【0029】
(シランカップリング剤)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよく、ガラス基材等の無機基材との密着性をより向上させることができる。
【0030】
シランカップリング剤に含有される有機基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、ポリスルフィド基、イソシアネート基などが挙げられる。前記有機基は、熱硬化性反応基であることが好ましい。
【0031】
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KA-1003、KBM-1003、KBE-1003、KBM-303、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-1403、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-602、KBM-603、KBE-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-6123、KBE-585、KBM-703、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007(いずれも商品名;信越化学工業社製)などを挙げることができる。
【0032】
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤の配合量は(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(B)高酸価ウレタン樹脂の合計100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、2~5質量部であることがより好ましい。この範囲であれば、窒化ケイ素基板との密着性がより良好となる。
【0033】
(消泡剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、消泡剤を配合してもよい。消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤、非シリコン系消泡剤等が挙げられる。本発明においては、より優れた効果が得られることからシリコン系消泡剤を用いることが好ましい。
【0034】
シリコン系消泡剤としては、例えば、KS-66(信越化学工業社製)、BYK-063、BYK-065、BYK-066N、BYK-067A、BYK-077(以上、ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。非シリコン系消泡剤としては、BYK-054、BYK-055、BYK-057、BYK-1790、BYK-1791(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、FOAMKILLER NSI-0.00(青木油脂工業社製)等が挙げられる。
【0035】
消泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、例えば、シリコン系消泡剤と非シリコン系消泡剤を併用してもよい。
【0036】
消泡剤の配合量は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂と(B)高酸価ウレタン樹脂の合計100質量部に対して0.1~5.0質量部、より好ましくは0.5~3.0質量部である。この範囲であれば、消泡効果が高く、ハジキや分離を発生させない。
【0037】
(有機溶剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板に塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(その他の成分)
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の従来公知の着色剤、アスベスト、オルベン、ベントン、微紛シリカ等の従来公知の増粘剤、レベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系カップリング剤等の密着性付与剤、熱可塑性樹脂、活性エステル基を有する化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物、脂環式オレフィン重合体、難燃剤、有機フィラー、ゴム状粒子、増感剤、チタネート系、アルミニウム系の従来公知の添加剤類を用いることができる。
【0039】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、(B)高酸価ウレタン樹脂以外のウレタン樹脂、(C)ノボラック型フェノール樹脂以外のフェノール樹脂、(D)シリカ以外の無機フィラー、(E)イミダゾール化合物以外の硬化促進剤を含有してもよい。
【0040】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1液性でも2液性以上でもよいが、保存安定性の観点から2液性以上であることが好ましい。
【0041】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、スクリーン印刷法等により、基材上にパターン印刷し、その後、例えば、約120~200℃の温度、より好ましくは140~180℃、30~90分、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて、加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性に優れた硬化皮膜(硬化物)を形成することができる。
【0042】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、用途は特に限定されないが、電子部品の永久被膜の形成に好適に用いることができる。なかでも、ソルダーレジスト、カバーレイ、層間絶縁層、オーバーコートなどの絶縁性の永久被膜の形成に用いることが好ましい。より好適にはセンサーのオーバーコートを形成するために使用される。低誘電正接に優れることから、大容量の情報を高速で処理するセンサー、具体的には通信機器等に使用されるセンサー、特には指紋認証センサーのオーバーコートの形成に好適である。また、ガラスや窒化ケイ素に対する密着性に優れることから、特に窒化ケイ素基板を使用する指紋認証センサーのオーバーコートの形成に好適である。また、硬化物の鉛筆硬度に優れることから、最外層の永久被膜の形成に好適である。
【0043】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物によれば、上記の特性に加え、耐薬品性や誘電率にも優れた硬化物を形成することもできる。
【実施例0044】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0045】
<高酸価ウレタン樹脂の合成例>
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール成分として1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(数平均分子量800)を288g(0.36mol)、ビスフェノールA型プロピレンオキシド付加体ジオール(ADEKA社製、BPX33、数平均分子量500)45g(0.09mol)、ジメチロールアルカン酸としてジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn-ブタノール11.8g(0.16mol)、溶媒としてカルビトールアセテート(ダイセル化学工業社製)250gを仕込み、60℃で全ての原料を溶解した。ポリオール成分を攪拌しながら、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを200.9g(1.08mol)を滴下した。滴下終了後、80℃で撹拌しながら反応を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のポリウレタン樹脂(ワニスA)を得た。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は18,300、固形分の酸価は50.3mgKOH/gであった。尚、平均分子量は、ゲル担体液体クロマトグラフィー(HLC-8120 GPC 東ソー社製)を用い、ポリスチレンに換算した値で求めた。
【0046】
<ウレタン樹脂の合成例>
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(宇部興産社製、PCDL800、数平均分子量800)を800g(1.00mol)、及び1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としてヒドロキシフェニルエチルアルコール22.1g(0.16mol)を投入した。次に、ポリイソシアネートとしてトリレンジイソシアネート187.9g(1.08mol)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のフェノール性ヒドロキシル基を有するウレタン樹脂を得た。固形分の酸価は、0mgKOH/gであった。
【0047】
<実施例1~6、比較例1~5>
表1に示す成分をそれぞれ記載した割合(単位:部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散および混練して、熱硬化性樹脂組成物を得た。尚、各成分は、有機溶剤を除き、固形分を表す。
【0048】
<印刷性、密着性、鉛筆硬度、耐薬品性の評価用基板の作製条件>
基材:ソーダライムガラス(以下、ガラス基板ともいう)、密着性のみ窒化ケイ素基板
前処理:アルコール洗浄
印刷:SUS120メッシュ 乾燥膜厚 30μm
硬化:150℃ 30分 熱風循環式Box炉
【0049】
<誘電率、誘電正接の測定用基板の作製条件>
・硬化後フィルムの作製
ステンレス製120メッシュのスクリーンを用いて印刷で、実施例1~6、比較例1~5の各熱硬化性樹脂組成物を銅箔(古河電気工業社製F2-WS、18μm厚)の光沢面上に二回に分けて印刷後、熱風循環式乾燥炉にて1回目は80℃で20分、二回目を150℃で30分間硬化させた後、銅箔を剥離し、厚み約50μm、50mm×60mmの硬化後フィルム(硬化膜)を作製した。
【0050】
<評価方法>
[印刷性]
上記印刷性、密着性、鉛筆硬度、耐薬品性の評価用基板の作製条件で作成した各ガラス基板上の硬化塗膜の凹凸(表面粗さ)を、表面粗さ測定器SE600(小坂研究所社製)を用いて測定した。
以下の判断基準の値は、各硬化塗膜の表面粗さ(算術平均粗さRa)の値である。
◎:0.5mm以下
〇:0.6~0.9mm
△:1.0~1.5mm
×:1.6mm以上
【0051】
[密着性]
JIS K 5600-5-6に準拠して、上記印刷性、密着性、鉛筆硬度、耐薬品性の測定用基板の作製条件で得られた各基板上の硬化塗膜の1インチ×1インチの範囲内に1mm間隔用クロスカットガイドを用いて縦横11カットして縦横それぞれ幅1mmのマス目を100個(10×10)作製し、透明付着テープ(幅25±1mm)を硬化塗膜のマス目にカットした部分に貼り、硬化塗膜が透けて見えるようにしっかり指でテープをこすり、付着して5分以内に60℃に近い角度で、0.5~1.0秒で確実に引き離し(テープピーリング)、マス目の状態を調べた。
◎:ピール後のマス目は100%付着したままであり、欠けは見られない
〇:ピール後のマス目は70%~99%付着したままである
×:ピール後のマス目は50~69%付着したままである
××:ピール後のマス目は49%以下付着したままである
【0052】
[鉛筆硬度]
JIS K 5600の試験方法に従って試験を行い、上記印刷性、密着性、鉛筆硬度、耐薬品性の測定用基板の作製条件で得られた各ガラス基板上の硬化塗膜に傷のつかない最も高い鉛筆硬度を測定した。
【0053】
[耐薬品性試験]
上記印刷性、密着性、鉛筆硬度、耐薬品性の測定用基板の作製条件で得られた各ガラス基板上の硬化塗膜を10vol%硫酸、30℃、30分、浸漬処理した。この処理後各硬化塗膜に透明付着テープ(幅±1mm)を貼り、硬化塗膜が透けて見えるようにしっかり指でテープをこすり、付着して5分以内に60℃に近い角度で、0.5~1.0秒で確実に引き離し(テープピーリング)、テープピーリングした範囲の状態を調べた。
○:剥がれなし。△:0超~50%剥がれ。×:51~100%剥がれ。
【0054】
[誘電率、誘電正接(Df)]
SPDR(Split-post Dielectric Resonator)誘電体共振器とネットワークアナライザー(ともにアジレント社製)を用い、誘電率、誘電正接の測定用基板の作製条件で得られた各硬化後フィルム(硬化膜)について、23℃における10GHzの誘電率、誘電正接の測定を行った。
【0055】
【表1】
【0056】
*1:DIC社製N-695(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)
*2:ダウ・ケミカル社製DEN431(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)
*3:上記高酸価ウレタン樹脂の合成例で得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(固形分酸価=50.3mgKOH/g)
*4:上記ウレタン樹脂の合成例で得られたフェノール性ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂(固形分酸価=0mgKOH/g)
*5:アイカ工業社製BRG-557(フェノールノボラック樹脂)
*6:信越化学工業社製KS-66(シリコン系消泡剤)
*7:信越化学工業社製KBM-403
*8:四国化成工業社製2MZA-PW(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン)
*9:瀧森社製CRS-1103-GE(溶融シリカ)
*10:堺化学工業社製110(硫酸バリウム)
*11:神港有機化学工業社製酢酸エチルジユーキゾール(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0057】
上記表中に示す評価結果から明らかなように、本発明の実施例1~6の熱硬化性樹脂組成物は、低誘電正接で印刷性、密着性に優れ、傷つき難い塗膜を形成できることが分かる。尚、本発明の実施例1~6の熱硬化性樹脂組成物につき、密着性評価において、基材をソーダライムガラスに変更して評価した結果、全て「◎」という結果であった。