(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148708
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20231005BHJP
B29B 15/08 20060101ALI20231005BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B32B5/28 101
B29B15/08
B29K105:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056880
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敬介
(72)【発明者】
【氏名】山本 英紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 慎吾
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB28
4F072AD04
4F072AD52
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4F072AH06
4F072AK14
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4F072AL04
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4F100AD11A
4F100AD11C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
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4F100AK07B
4F100AK07C
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4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DH01A
4F100DH01C
4F100DH02A
4F100DH02C
4F100DJ01B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JK10
(57)【要約】
【課題】軽量性を有しつつ、耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、及び前記コア層の両面に配置されている繊維強化樹脂からなるスキン層を含むコアサンドイッチ構造を有する繊維強化樹脂複合体であって、前記繊維強化樹脂は、前記熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂をマトリックス樹脂としており、少なくとも、前記コア層の片面において、前記スキン層の最小厚みに対する最大厚みの比(最大厚み/最小厚み)が1.10以上であるか、或いは、前記スキン層中の少なくとも1層が、1方向に並んでいる複数の繊維強化樹脂プレプリグのテープで形成されている、繊維強化樹脂複合体に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、及び前記コア層の両面に配置されている繊維強化樹脂からなるスキン層を含むコアサンドイッチ構造を有する繊維強化樹脂複合体であって、
前記繊維強化樹脂は、前記熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂をマトリックス樹脂としており、
少なくとも、前記コア層の片面において、前記スキン層の最小厚みに対する最大厚みの比(最大厚み/最小厚み)が1.10以上である、繊維強化樹脂複合体。
【請求項2】
熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、及び前記コア層の両面に配置されている繊維強化樹脂からなるスキン層を含むコアサンドイッチ構造を有する繊維強化樹脂複合体であって、
前記繊維強化樹脂は、前記熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂をマトリックス樹脂としており、
少なくとも、前記コア層の片面において、前記スキン層中の少なくとも1層が、1方向に並んでいる複数の繊維強化樹脂プレプリグのテープで形成されている、繊維強化樹脂複合体。
【請求項3】
前記繊維強化樹脂プリプレグのテープは、幅が6mm以上25mm以下、かつ厚みが0.15~2.0mmである、請求項2に記載の繊維強化樹脂複合体。
【請求項4】
前記スキン層中の少なくとも1層のスキン層の積層面の面積が前記コア層の積層面の面積とは異なる、請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化樹脂複合体。
【請求項5】
前記コア層及び前記スキン層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化樹脂複合体。
【請求項6】
前記スキン層を構成する熱可塑性樹脂が、エポキシ基含有ビニル系化合物及び芳香族ビニル化合物からなる群から選ばれる一つ以上の化合物で変性した変性ポリプロピレン系樹脂である、請求項5に記載の繊維強化樹脂複合体。
【請求項7】
前記スキン層が1方向に並んでいる炭素繊維を含む炭素繊維強化樹脂のアングルプライ積層体である、請求項1~6のいずれかに記載の繊維強化樹脂複合体。
【請求項8】
落球試験にて、負荷エネルギー100Jの条件下で測定した吸収エネルギーが30J以上である、請求項1~7のいずれかに記載の繊維強化樹脂複合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法であって、
コア層の少なくとも片面に繊維強化樹脂プリプレグを直接積層する積層と、加熱加圧により前記コア層と前記繊維強化樹脂プリプレグとを貼合一体化する一体化成形を同時に行うダイレクトコンソリデーションプロセスを含み、
前記積層は繊維強化樹脂プリプレグのテープを用いた自動テープ積層法による積層を含み、前記一体化成形において、前記コア層と前記繊維強化樹脂プリプレグの界面の熱融着温度が150℃以上である、繊維強化樹脂複合体の製造方法。
【請求項10】
加熱加圧によりコア層と繊維強化樹脂プリプレグとを貼合一体化する一体化成形は、ヒートアンドクールプレスからなるサーモフォーム成形方法による加熱溶融成形を含む、請求項9に記載の繊維強化樹脂複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層を含む繊維強化樹脂複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器、自動車、飛行機等の様々な製品に、繊維強化樹脂複合体が広く使用されている。特に、軽量性を高めるために、特許文献1~3には、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層を繊維強化樹脂で挟むコアサンドイッチ構造の繊維強化樹脂複合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-207523号公報
【特許文献2】特開2019-72859号公報
【特許文献3】特開2020-163822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層を含むコアサンドイッチ構造の繊維強化樹脂複合体において、軽量性を維持しつつ、さらに耐衝撃性を高めることが求められている。
【0005】
本発明は、従来の課題を解決するため、軽量性を有しつつ、耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂複合体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、及び前記コア層の両面に配置されている繊維強化樹脂からなるスキン層を含むコアサンドイッチ構造を有する繊維強化樹脂複合体であって、前記繊維強化樹脂は、前記熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂をマトリックス樹脂としており、少なくとも、前記コア層の片面において、前記スキン層の最小厚みに対する最大厚みの比(最大厚み/最小厚み)が1.10以上である、繊維強化樹脂複合体に関する。
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、及び前記コア層の両面に配置されている繊維強化樹脂からなるスキン層を含むコアサンドイッチ構造を有する繊維強化樹脂複合体であって、前記繊維強化樹脂は、前記熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂をマトリックス樹脂としており、少なくとも、前記コア層の片面において、前記スキン層中の少なくとも1層が、1方向に並んでいる複数の繊維強化樹脂プリプレグのテープで形成されている、繊維強化樹脂複合体に関する。
【0008】
本発明は、前記繊維強化樹脂複合体の製造方法であって、コア層の少なくとも片面に繊維強化樹脂プリプレグを直接積層する積層と、加熱加圧により前記コア層と前記繊維強化樹脂プリプレグとを貼合一体化する一体化成形を同時に行うダイレクトコンソリデーションプロセスを含み、前記積層は繊維強化樹脂プリプレグのテープを用いた自動テープ積層法による積層を含み、前記一体化成形において、前記コア層と前記繊維強化樹脂プリプレグの界面の熱融着温度が150℃以上である、繊維強化樹脂複合体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、軽量性を有しつつ、耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂複合体を提供することができる。
本発明の製造方法によれば、軽量性を有しつつ、耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂複合体を生産性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図2】実施例2において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図3】実施例3において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図4】実施例4において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図5】実施例5において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図6】実施例6において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図7】比較例1において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図8】比較例2において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図9】比較例3において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【
図10】比較例4において、熱可塑性樹脂発泡体及び繊維強化樹脂プリプレグの配置を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、繊維強化樹脂からなるスキン層を含むコアサンドイッチ構造を有する繊維強化樹脂複合体において、繊維強化樹脂におけるマトリックス樹脂を熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂とし、かつ(1)少なくとも、コア層の片面において、スキン層の最小厚みに対する最大厚みの比(最大厚み/最小厚み)を1.10以上にするか、又は、(2)少なくとも、コア層の片面において、スキン層中の少なくとも1層を、1方向に並んでいる複数の繊維強化樹脂テープで形成することで、軽量性を有しつつ、耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂複合体が得られることを見出した。
特に、本発明では、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層と、熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化樹脂プリプレグの積層中に、積層体を加熱加圧して、貼合一体化する一体化成形を同時に行うことで繊維強化樹脂複合体を得ている。より詳細には、ATL(Automated Tape Laying:自動テープ積層)法を利用したダイレクトコンソリデーションプロセスを適用することで、表面(片面/両面)に熱可塑性樹脂を含浸させた様々な形状の繊維強化樹脂プリプレグテープを熱可塑性樹脂発泡体上に積層するとともに、加熱加圧して一体化成形することで、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層と繊維強化樹脂からなるスキン層との層間接着性が良好になり、高い生産性で、軽量性を有しつつ、耐衝撃性に優れた繊維強化樹脂複合体を得ることができる。
【0012】
本明細書において、数値範囲が「~」で示されている場合、該数値範囲は両端値(上限及び下限)を含む。例えば、「x~y」という数値範囲は、x及びyという両端値を含む範囲となる。また、本明細書において、数値範囲が複数記載されている場合、異なる数値範囲の上限及び下限を適宜組み合わせた数値範囲を含むものとする。
【0013】
(繊維強化樹脂複合体)
本発明の1以上の実施形態の繊維強化樹脂複合体は、コアサンドイッチ構造を有し、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、及び前記コア層の両面に配置されている熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化樹脂からなるスキン層を含む。
【0014】
(コア層)
コア層を構成する熱可塑性樹脂発泡体には、特に限定されないが、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、及びポリメタクリルイミド樹脂等からなる群から選ばれる1以上の熱可塑性樹脂を含む発泡体を好適に使用することができる。軽量性の観点から、熱可塑性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びポリメタクリルイミド樹脂からなる群から選ばれる1以上の熱可塑性樹脂を含む発泡体が好ましく、安価であり、成形性、耐薬品性、及び電気絶縁性に優れる観点から、ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン樹脂発泡体がより好ましく、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂発泡体がさらに好ましい。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレンでもよく、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体でもよい。プロピレンの共重合体は、結晶性や剛性の観点から、通常プロピレンを50~99モル%含み、55~98モル%含むことが好ましく、60~97モル%含むことがより好ましく、65~96モル%含むことがさらに好ましく、70~95モル%含むことが特に好ましい。共重合体は、ランダムポリプロピレンでもよく、ブロックポリプロピレンでもよい。成形性の点で、ランダムポリプロピレンが好ましい。
【0016】
他のオレフィンとしては、αーオレフィン、環状オレフィン及びジエン等が挙げられる。α-オレフィンは、炭素数2、4~20でもよく、具体的には、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]-4-ドデセン等が挙げられる。ジエンとしては、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等が挙げられる。他のオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が3~30g/10分であることが好ましく、4~20g/10分であることがより好ましく、5~18g/10分であることがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRが上述した範囲内であると、発泡成形体の表面美麗性が良好になるとともに、生産性も向上する。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K 7210のB法の規定に準拠し、オリフィス径2.0959±0.005mm、オリフィス長さ8.000±0.025mm、230℃、21.2N(2.16kgf)の荷重下で測定することができる。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂は、加熱成形性に優れる観点から、ラジカル重合性モノマーで変性した変性ポリプロピレン系樹脂、すなわちポリプロピレン系樹脂鎖にラジカル重合性モノマーをグラフト重合した変性ポリプロピレン系樹脂でもよい。ラジカル重合性モノマーとしては、共役ジエン系化合物、芳香族ビニル化合物、エチレン系不飽和カルボン酸、エポキシ基含有ビニル化合物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、ビニルエステル化合物、アミド化合物、アミノアルキル(メタ)アクリレート化合物、不飽和スルホン酸化合物、及び不飽和リン酸化合物等が挙げられる。
【0020】
共役ジエン系化合物として、例えば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等が挙げられる。これらの共役ジエン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、液状で取り扱いやすく、安価であるという点で、イソプレンが好ましい。
【0021】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン等のメチルスチレン;o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、α-クロロスチレン、β-クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン等のクロロスチレン;o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン等のブロモスチレン;o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレン等のフルオロスチレン;o-ニトロスチレン、m-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレン等のニトロスチレン;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン等のビニルフェノール;o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン;o-ジイソプロペニルベンゼン、m-ジイソプロペニルベンゼン、p-ジイソプロペニルベンゼン等のジイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。中でも、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のメチルスチレン、ジビニルベンゼンモノマーまたはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0022】
エチレン系不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、及びイソクロトン酸、並びにそれらの無水物、及びそれらの誘導体(例えば、アミド、イミド、エステル等)等が挙げられる。エチレン系不飽和カルボン酸の無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。エチレン系不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えな、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、入手性及びコストの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる1以上が好ましい。
【0023】
エポキシ基含有ビニル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p-スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、p-グルシジルスチレン等のグリシジル化合物;3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン等のエポキシオレフィン;ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、例えば、入手性及びコストの観点から、アクリル酸グリシジル、及び/又はメタクリル酸グリシジルが好ましい。
【0024】
ヒドロキシ基含有ビニル化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0025】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
【0026】
アミド化合物としては、(メタ)クリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等が挙げられる。本明細書において、(メタ)クリルは、アクリル及びメタクリルの総称である。
【0027】
アミノアルキル(メタ)アクリレート化合物としては、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
不飽和スルホン酸化合物としては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0029】
不飽和リン酸化合物としては、モノ(2-メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。
【0030】
上述したラジカル重合性モノマーの中でも、低密度及び独立気泡率が高い発泡体を得やすい観点から、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物及びからなる群から選ばれる1以上を用いることが好ましい。
【0031】
グラフト重合に用いるラジカル重合性モノマーの使用量は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.01~20重量部でもよく、0.05~10重量部でもよく、0.1~5重量部でもよい。
【0032】
変性ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性モノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下でグラフト重合することで得ることができる。
【0033】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、一般に過酸化物、アゾ化合物等を適宜用いることができるが、ポリプロピレン系樹脂や共役ジエン化合物等のラジカル重合性モノマーからの水素引き抜き能を有する開始剤が好ましく、一般にケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の有機過酸化物が挙げられる。中でも、特に水素引き抜き能が高い開始剤が好ましく、例えば1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシオクテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0034】
ラジカル重合開始剤の使用量は、反応性、並びに変性ポリプロピレン系樹脂の流動性及び機械的特性の観点から、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~5重量部である。
【0035】
前記グラフト重合反応時の各成分の添加順序については、特に限定されないが、例えば、(1)ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤を混合した後、溶融混練してもよいし、(2)ポリプロピレン系樹脂を溶融混練した後、ラジカル重合性モノマー又はラジカル開始剤を同時に、或いは、別々に、一括して又は分割して混合してもよいし、(3)ポリプロピレン系樹脂及びラジカル重合開始剤を溶融混練した後、ラジカル重合性モノマーを一括して又は分割して混合してもよい。ポリプロピレン系樹脂の機械的物性の低下を抑制する観点から、(3)が好ましい。
【0036】
前記グラフト重合反応において、溶融混練の温度は、ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつラジカル重合開始剤が分解する温度であればよく、特に限定されないが、例えば150~300℃であることが好ましい。また溶融混練する時間は、具体的には、ラジカル重合開始剤を添加してからの時間は、一般に1~60分であることが好ましい。
【0037】
溶融混練の装置としては、ロール、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機;二軸表面更新機、二軸多円板装置等の横型撹拌機;ダブルヘリカルリボン撹拌機等の縦型撹拌機等が挙げられる。これらのうち、混練機を使用することが好ましく、特に単軸押出機及び二軸押出機等の押出機が生産性の点から好ましい。また、各々の成分を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂発泡体の製造方法は特に限定されず、例えば、押出発泡法、射出発泡法、ブロー発泡法、ビーズ発泡法等の公知の技術を適宜使用することができる。中でも、高倍率の発泡体が得られやすい観点から、ビーズ発泡法によるポリプロピレン系樹脂発泡体であることが好ましい。
【0039】
ビーズ発泡法によるポリプロピレン系樹脂発泡体は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂を含む基材樹脂及び発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練した後に押出し、押し出された溶融混練物を切断して作製したポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、金型内で蒸気成形することによって作製することができる。発泡剤としては、特に限定されず、物理発泡剤や化学発泡剤を適宜用いることができるが、炭酸ガスを好適に用いることができる。ポリプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて、セル形成剤;着色剤;帯電防止剤;難燃剤;酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤等の安定剤;架橋剤;連鎖移動剤;滑剤;可塑剤;充填材;強化材等の添加剤を含んでもよい。
【0040】
軽量性の観点から、熱可塑性樹脂発泡体は、密度が180Kg/m3以下であることが好ましく、30~150Kg/m3がより好ましく、60~90Kg/m3がさらに好ましい。
【0041】
コア層の厚みは、繊維強化樹脂複合体の用途等に応じて、適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0042】
(スキン層)
スキン層を構成する繊維強化樹脂は、強化繊維及びマトリックス樹脂を含む。
【0043】
強化繊維は、一般的に繊維強化樹脂に用いる繊維を適宜用いることができ、特に限定されない。強化繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、及び金属繊維等が挙げられる。無機繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、及びセラミックス繊維等が挙げられる。炭素繊維は、ポリアクリルニトリル(PAN)系、レーヨン系、リグニン系、及びピッチ系のいずれもよいが、強度の観点から、PAN系を好適に用いることができる。有機繊維としては、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維等が挙げられる。強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、強化繊維としては、軽量性及び高強度の観点から、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、炭素繊維がより好ましい。強化繊維は、強度の観点から、通常、連続繊維(長繊維)として用いる。
【0044】
マトリックス樹脂は、コア層の熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂であればよく、特に限定されず、熱可塑性樹脂発泡体の欄において説明したものを適宜用いることができる。本明細書において、「同種の樹脂」とは、樹脂を構成する主成分モノマーが同一である樹脂を意味し、樹脂を構成する主成分モノマーとは、樹脂の構成単位を100モル%とした場合、含有量が50モル%を超えるモノマーを意味する。
マトリックス樹脂は、コア層の熱可塑性樹脂発泡体を構成する熱可塑性樹脂と同様、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、コア層の欄に説明したものを適宜用いることができ、重複する説明を省略する。
【0045】
マトリックス樹脂として使用するポリプロピレン系樹脂は、強化繊維に対する接着性を高める観点から、ラジカル重合性モノマーで変性した変性ポリプロピレン系樹脂、すなわちポリプロピレン系樹脂鎖にラジカル重合性モノマーをグラフト重合した変性ポリプロピレン系樹脂を含んでもよい。変性ポリプロピレン系樹脂は、強化繊維に対する接着性をより高める観点から、ポリプロピレン系樹脂鎖に、エチレン系不飽和カルボン酸及びエポキシ基含有ビニル化合物からなる群から選ばれる1種以上のモノマーを重合させたものであることが好ましい。変性ポリプロピレン系樹脂は、エチレン系不飽和カルボン酸及びエポキシ基含有ビニル化合物からなる群から選ばれる1種以上のモノマーに加えて、任意に他のラジカル重合性モノマーをグラフト重合させたものであってもよい。変性ポリプロピレン系樹脂は、強化繊維に対する接着性を高め、加熱成形性の観点から、エポキシ基含有ビニル系化合物及び芳香族ビニル化合物からなる群から選ばれる一つ以上の化合物で変性した変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸、エポキシ基含有ビニル化合物、芳香族ビニル化合物及び他のラジカル重合性モノマーとしては、コア層の欄に説明したものを適宜用いることができ、重複する説明を省略する。エチレン系不飽和カルボン酸は、特に限定されないが、入手性及びコストの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、及び無水マレイン酸からなる群から選ばれる1以上が好ましい。エポキシ基含有ビニル化合物としては、特に限定されないが、入手性及びコストの観点から、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが好ましい。変性ポリプロピレン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、コア層の欄に説明した製造方法で得ることができ、重複する説明を省略する。
【0046】
マトリックス樹脂として使用する変性ポリプロピレン系樹脂において、エチレン系不飽和カルボン酸及びエポキシ基含有ビニル化合物からなる群から選ばれる1種以上のモノマーの使用量は、特に限定されないが、例えば、強化繊維に対する接着性及び物性の観点から、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.1~20重量部であることが好ましく、0.5~10重量部であることがより好ましい。
【0047】
繊維強化樹脂は、1方向に並んでいる強化繊維(連続繊維)を含む1方向繊維強化樹脂であってもよい。また、1方向繊維強化樹脂は、強化繊維(連続繊維)が1方向に並んでいる1方向繊維シートにマトリックス樹脂を含浸した1方向繊維強化樹脂シートでもよく、1方向繊維強化樹脂シートを所定の幅にカットした1方向1方向繊維強化樹脂テープでもよい。本明細書において、テープとは、幅が6~25mmであることを意味する。1方向繊維強化樹脂テープの幅は、例えば、6~25mmでもよく、10~20mmでもよく、12~15mmでもよい。繊維強化樹脂は、また、強化繊維(連続繊維)を経糸及び緯糸として用いた織物にマトリックス樹脂を含浸した繊維織物強化樹脂でもよい。
【0048】
スキン層は、1層でもよく、2層以上でもよい。また、コア層の両面において、スキン層の層数は同じでもよく、異なってもよい。機械的物性の等方性の観点から、コア層の両面において、スキン層は対称積層又は疑似等方積層されていることが好ましく、対称積層されていることがより好ましい。また、1層のスキン層は、1つの1方向繊維強化樹脂シート又は繊維織物強化樹脂で構成してもよく、2つ以上の複数の1方向繊維強化樹脂テープで構成されてもよい。本明細書において、1層のスキン層全体が1つの繊維強化樹脂で構成されている場合、該繊維強化樹脂はシートと称され、1層のスキン層全体が2つ以上の複数の繊維強化樹脂で構成されている場合は、該繊維強化樹脂はテープと称される。
【0049】
コア層の片側又は両面のスキン層において、最小厚みに対する最大厚みの比(最大厚み/最小厚み)が1.10以上であり、好ましくは1.30より大きい。これにより、軽量性を有し、耐衝撃性に優れる繊維強化樹脂複合体が得られる。また、凸部や曲面形状を有する繊維強化樹脂複合体が得られる。前記最小厚みに対する最大厚みの比の上限は特に限定されないが、例えば、軽量性の観点から、2.0以下であることが好ましい。スキン層の最小厚みは、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、耐衝撃性の観点から、0.16~1.12mmが好ましく、0.33~0.99mmがより好ましく、0.49~0.82mmがさらに好ましい。スキン層の最大厚みは、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、耐衝撃性の観点から、0.33~1.32mmが好ましく、0.49~1.12mmがより好ましく、0.66~0.99mmがさらに好ましい。
【0050】
スキン層において、少なくとも1層のスキン層が、1方向に並んでいる2つ以上の複数の繊維強化樹脂テープで構成されていてもよく、少なくとも1層のスキン層が、1方向に並んでいる2つ以上の複数の1方向繊維強化樹脂テープで構成されていることがより好ましい。これにより、軽量性を有し、耐衝撃性に優れる繊維強化樹脂複合体が得られる。
【0051】
スキン層中の少なくとも1層のスキン層の積層面の面積が前記コア層の積層面の面積とは異なることが好ましい。これにより、凸部や曲面部を有する立体的形状の繊維強化樹脂複合体が得やすくなる。
【0052】
また、スキン層が2層以上の場合、耐衝撃性及び生産性の観点から、1方向繊維強化樹脂が任意の角度で2層以上積層されたアングルプライ積層体で構成されてもよい。2層の1方向繊維強化樹脂に含まれる1方向繊維同士の角度の差(絶対値)は、10~90°が好ましく、30~90°がより好ましく、45~90°が特に好ましい。耐衝撃性を高める観点から、2層以上の1方向繊維強化樹脂のクロスプライ積層体で構成されていることが好ましい。クロスプライ積層体において、隣接するスキン層の繊維間の角度が互いに90°となる。各々のスキン層は、1方向繊維強化樹脂繊維シート又は1方向に並んでいる複数の1方向繊維強化樹脂テープで構成されていることが好ましい。耐衝撃性をより高める観点から、1方向繊維強化樹脂繊維シート又は1方向繊維強化樹脂テープは、それぞれ、1方向炭素繊維強化樹脂繊維シート又は1方向炭素繊維強化樹脂テープであることが好ましい。
【0053】
本発明の1以上の実施形態において、繊維強化樹脂複合体は、耐衝撃性に優れる観点から、落球試験にて、負荷エネルギー100Jの条件下で測定した吸収エネルギーが30J以上であることが好ましく、より好ましくは35J以上であり、さらに好ましくは40J以上であり、特に好ましくは45J以上である。前記吸収エネルギーの上限は特に限定されない。
【0054】
(繊維強化樹脂複合体の用途)
本発明の1以上の実施形態において、繊維強化樹脂複合体は、軽量性を有し、耐衝撃性に優れることから、電気・電子機器、自動車、飛行機等の様々な製品に用いることができ、特に、凹凸や曲面部を有する立体的形状の繊維強化樹脂複合体は、スーツケース等の薄肉で剛性を必要とする耐衝撃構造体に好適に用いることができる。
【0055】
(繊維強化樹脂複合体の製造方法)
本発明の1以上の実施形態において、繊維強化樹脂複合体の製造方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層、及び前記コア層の両面に配置されている繊維強化樹脂からなるスキン層を含むコアサンドイッチ構造を有する繊維強化樹脂複合体が得られる公知の方法を適宜用いることができる。
【0056】
繊維強化樹脂複合体は、例えば、コア層の少なくとも片面に繊維強化樹脂プリプレグを積層し、加熱加圧により前記コア層と前記繊維強化樹脂プリプレグとを貼合一体化する一体化成形を行うことで製造することができる。
【0057】
繊維強化樹脂複合体の製造方法は、ダイレクトコンソリデーションプロセスを含むことが好ましい。これにより、少なくとも、前記コア層の片面において、最小厚みに対する最大厚みの比(最大厚み/最小厚み)が1.10以上、或いは、スキン層中の少なくとも1層が、1方向に並んでいる複数の繊維強化樹脂テープで形成されている繊維強化樹脂複合体を、高い生産性で得ることができる。
【0058】
ダイレクトコンソリデーションプロセスでは、コア層の少なくとも片面に繊維強化樹脂プリプレグを直接積層する積層と、加熱加圧により前記コア層と前記繊維強化樹脂プリプレグとを貼合一体化する一体化成形を同時に行う。
【0059】
繊維強化樹脂プリプレグは、強化繊維に熱可塑性樹脂材料を含浸させる公知のプリプレグ製造装置により製造することができる。好適には、強化繊維(連続繊維)が1方向に並んでいる1方向繊維シートや強化繊維(連続繊維)を経糸及び緯糸として用いた織物の片側又は両面にマトックス樹脂となる熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂フィルムを1層又は2層以上積層し、加熱加圧することで、熱可塑性樹脂を繊維シート中に含浸させることで得ることができる。熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、特に限定されず、1方向繊維シート又は織物の目付、及び繊維強化樹脂プリプレグの所望の繊維含有率等に基づいて適宜設定されるが、例えば、30~80μmでもよい。
【0060】
繊維強化樹脂プリプレグは、特に限定されないが、繊維強化樹脂複合体の機械的物性及び軽量性をより高める観点から、繊維体積含有率が30~60体積%であることが好ましい。繊維強化樹脂プリプレグは、繊維強化樹脂複合体の機械的物性及び軽量性をより高める観点から、目付が150~300g/m2であることが好ましく、200~250g/m2であることがより好ましい。繊維強化樹脂プリプレグの厚みは、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、積層作業性の観点から、0.15~0.20mmでもよく、0.16~0.18mmでもよい。
【0061】
前記積層は、生産性及び立体形状を有する繊維強化樹脂複合体が得やすい観点から、繊維強化樹脂プリプレグのテープを用いた自動テープ積層法による積層を含むことが好ましい。繊維強化樹脂プリプレグのテープは、特に限定されないが、自動テープ積層法にて積層しやすい観点から、厚みが0.15~0.20mmであり、幅が6~25.0mmであり、長さ(長手方向のサイズ)が10~100mであることが好ましく、より好ましくは厚みが0.16~0.18mmであり、幅が12.5~25.0mmであり、長さ(長手方向のサイズ)が50~100mである。
【0062】
ダイレクトコンソリデーションプロセスでは、コア層の少なくとも片面に維強化樹脂プリプレグのテープを自動テープ積層法にて積層しつつ、コンパクションローラー等を用いて加熱及び加圧を同時に行うことで、コア層と繊維強化樹脂プリプレグとを貼合一体化する一体化成形を行うことができる。
【0063】
前記一体化成形において、コア層と繊維強化樹脂プリプレグの界面の熱融着温度が150℃以上であることが好ましく、より好ましくは170~230℃であり、さらに好ましくは190~230℃である。これにより、コア層と繊維強化樹脂プリプレグを強固に一体化することができ、繊維強化樹脂複合体の耐衝撃性等の機械的物性が向上しやすい。また、前記一体化成形において、圧力は、0.1~1.0Nであることが好ましく、より好ましくは0.2~0.8Nであり、さらに好ましくは、0.4~0.6Nである。具体的には、一体化成形にコンパクションローラーを用いた場合は、押付力は、100~300Nであることが好ましく、より好ましくは150~300Nであり、さらに好ましくは、200~300Nである。
【0064】
繊維強化樹脂プリプレグを2層以上積層する場合は、繊維強化樹脂プリプレグ同士の界面の熱融着温度が150℃以上であることが好ましく、より好ましくは170~230℃であり、さらに好ましくは190~230℃である。これにより、コア層と繊維強化樹脂プリプレグを強固に一体化することができ、繊維強化樹脂複合体の耐衝撃性等の機械的物性が向上しやすい。
【0065】
前記一体化成形は、ヒートアンドクールプレスからなるサーモフォーム成形方法による加熱溶融成形を含むことができる。例えば、繊維強化樹脂プリプレグとして1方向シート状及び/又は織物の繊維強化樹脂プリプレグを用いる場合、ヒートアンドクールプレスからなるサーモフォーム成形方法にて、所定の温度に設定された金型に2層以上の繊維強化樹脂プリプレグを配置して加熱し、繊維強化樹脂プリプレグ同士の層間を熱融着した後、金型を所定の温度まで冷却した後、一体化された2層以上の繊維強化樹脂プリプレグの片面上にコア層を構成する熱可塑性樹脂発泡体を積層し、冷却開始と同時に加圧してコア層とスキン層を一体化することができる。
【実施例0066】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の一実施形態を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法および判定基準は次の通りである。
【0068】
<スキン層の厚み>
繊維強化樹脂複合体の中心部分5cm角をダイヤモンドカッターで切り出し、エポキシ樹脂中に包埋させた。次いで、ダイヤモンドカッターを用いて上記繊維強化樹脂複合体の断面を露出させ、研磨装置(MINITECH223 Presi社製)で当該断面を研磨した。その後、断面をデジタルマイクロスコープ(VHX-200 キーエンス社製)で観察することにより、スキン層の厚みを計測した。
【0069】
<耐衝撃性>
耐衝撃性試験として、繊維強化樹脂複合体の中央部から60mm角でカットした試料を用い、落球衝撃試験機(INSTRON製「CEAST 9350型」)にて、錘(ストライカー)として径φ20mm、負荷エネルギー100J、衝撃速度6.1m/秒の条件にて、落錘試験を実施した。
100J衝撃時の弾性域で吸収されるエネルギー量(J)を測定し、下記の判定基準で耐衝撃性を評価した。なお、弾性域で吸収されるエネルギー量とは,衝撃荷重(y軸)-変位(x軸)線図において原点からピーク荷重までを数値積分し、面積を求めたものとした。耐衝撃性の判断がB以上であれば、耐衝撃性に優れることになる。
A:50J以上
B:30J以上50J未満
C:25J以上30J未満
D:25J未満
【0070】
<軽量性>
繊維強化樹脂複合体の目付は、得られた繊維強化樹脂複合体の質量を面積(縦150cm×横150cm)で除して算出し、下記の判定基準で軽量性を評価した。軽量性の判断がC以上であれば、軽量性を有することになる。
A:2,000g/m2以下
B:2,000g/m2以上2,500g/m2未満
C:2,500g/m2以上3,000g/m2未満
D:3,000g/m2以上
【0071】
<熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層>
熱可塑性樹脂発泡体からなるコア層として、(a)発泡倍率が5~6倍であり、(b)寸法が縦150mm×横150mm×厚さ6mm、(c)目付975±25g/m2である、ビーズ発泡法によるポリプロピレン系樹脂発泡成形体(株式会社カネカ製「エペラン-PP(登録商標)LBS05」、プロピレン及びαオレフィンのランダム共重合体、融点143℃、MFR8g/10分)を準備した。
【0072】
<繊維強化ポリプロピレンプリプレグの製造例1>
ホモポリプロピレン(プライムポリプロJ106G、(株)プライムポリマー製)100重量部、及び1、3-ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、日油(株)製)0.5重量部を、200℃に設定した二軸押出機(HK-25D(61D);L/D=61、(株)パーカーコーポレーション製)のホッパーに供給して溶融混練した後、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル(GMA)(富士フィルム和光純薬(株)製)5重量部、及びスチレンモノマー(富士フィルム和光純薬(株)製)5重量部の混合液を圧入し、溶融混練して、変性ポリプロピレンのペレットを得た。
得られた変性ポリプロピレン(融点161℃、MFR53g/10分)のペレットを30重量部、及びランダムポリプロピレン(プロピレン及びαオレフィンのランダム共重合体、融点133℃、MFR24g/10分、株式会社プライムポリマー製「Y-2045GP」)70重量部をドライブレンドし、180℃に設定した二軸押出機(HK-25D;L/D=41、(株)パーカーコーポレーション製)のホッパーに供給して溶融混練して、混合ポリプロピレンのペレットAを得た。
得られたペレットAをTダイ押出フィルム成型機(L/D=26)に供給し、厚さ45μmのフィルムAを得た。
得られたフィルムAとPAN系炭素繊維(東レ株式会社製「T710-24K」)をプリプレグ製造装置に供給し、幅300mm、厚さ230μm、目付240g/m2、及び繊維体積含有率52%の1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ1を得た。この幅300mmの1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ1を幅25mmにスリットしてUDテープを得た。また、この幅300mmの1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ1を幅150mmにスリットして1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ2を得た。
【0073】
<繊維強化ポリプロピレンプリプレグの製造例2>
製造例1と同様にして得られた変性ポリプロピレンのペレットを30重量部、及びランダムポリプロピレン(プロピレン及びαオレフィンのランダム共重合体、融点135℃、MFR27g/10分、株式会社プライムポリマー製「F329RA」)70重量部をドライブレンドし、180℃に設定した二軸押出機(HK-25D;L/D=41、(株)パーカーコーポレーション製)のホッパーに供給して溶融混練して、混合ポリプロピレンのペレットBを得た。
得られたペレットBをTダイ押出フィルム成型機(L/D=26)に供給し、厚さ45μmのフィルムBを得た。
得られたフィルムBと炭素繊維平織クロス(東レ株式会社製「トレカ(登録商標)クロCO6343B」)を連続プレス装置に供給し、厚さ250μm、目付280g/m2、及び繊維体積含有率55%の3K平織炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ(以下、3K平織クロス含有CFRTPとも記す)を得た。
【0074】
(実施例1)
自動テープ積層装置を用いて、上述した150mm角のポリプロピレン系樹脂発泡体の両面全面に、
図1及び表1に示すように、配向角度が(90°/0°/90°)の対称積層となるように製造例1で得られたUDテープを配置した。いずれのプリプレグ層も、UDテープを同じ方向になるように6枚並べて形成した。その両面最外層の中央部に、配向角度0°の対称積層となるように、製造例1で得られたUDテープを1枚並べて25mm幅×150mm長面積分を部分的に追加積層した。ここで、配向角度は、
図1に示すように、コア層を構成するポリプロピレン系樹脂発泡体Zの縦方向Yに対する角度である。以下、同様である。
UDテープの積層中に、コア層と1方向繊維強化ポリプロピレンプリプレグの界面、及び1方向繊維強化ポリプロピレンプリプレグ同士の層間は、レーザー制御による230℃の被加熱面温度とコンパクションローラーによる押付力300Nの加熱加圧によって接着一体化し、自然に室温(20±5℃)まで冷却することで、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0075】
(実施例2)
自動テープ積層装置を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面全面に、
図2及び表1に示すように、配向角度が(45°/90°/135°)の疑似等方対称積層となるように製造例1で得られたUDテープを配置した。90°のプリプレグ層は、UDテープを同じ方向になるように6枚並べて形成した。45°と135°のプリプレグ層は、それぞれUDテープを同じ方向になるように9枚ずつ並べて形成した。その両面最外層の中央部に、配向角度0°の疑似等方対称積層となるように、製造例1で得られたUDテープを1枚並べて25mm幅×150mm長面積分を部分的に追加積層した。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0076】
(実施例3)
自動テープ積層装置を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面全面に、
図3及び表1に示すように、配向角度が(0°/90°/0°/90°)の対称積層となるように製造例1で得られたUDテープを配置した。いずれのプリプレグ層も、UDテープを同じ方向になるように6枚並べて形成した。その両面最外層の中央部に、配向角度90°の対称積層となるように、製造例1で得られたUDテープを1枚並べて25mm幅×150mm長面積分を部分的に追加積層した。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0077】
(実施例4)
自動テープ積層装置を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面中央部に、
図4及び表2に示すように、配向角度が(0°/90°/0°/90°/0°/90°/0°)の対称積層となるように製造例1で得られたUDテープを、75mm幅×150mm長面積分配置した。いずれのプリプレグ層も、UDテープを同じ方向になるように3枚並べて形成した。その両面最外層の中央部に、配向角度90°の対称積層となるように、製造例1で得られたUDテープを1枚並べて、25mm幅×150mm長面積分を部分的に追加積層した。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0078】
(実施例5)
自動テープ積層装置を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面中央部に、
図5及び表2に示すように、配向角度が(90°/0°/90°)の対称積層となるように製造例1で得られたUDテープを、100mm幅×150mm長面積分配置した。いずれのプリプレグ層も、UDテープを同じ方向になるように4枚並べて形成した。その両面最外層の中央部に、配向角度0°の対称積層となるように、製造例1で得られたUDテープを1枚並べて、25mm幅×150mm長面積分を部分的に追加積層した。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0079】
(実施例6)
高速ヒートアンドクールプレス成形装置(Go Molding System、 GMS、株式会社郷製作所製)が搭載されたデジタルサーボブレス(ZEN Former MPS675DS、株式会社放電精密加工研究所製)を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面全面に、
図6及び表2に示すように、製造例2で得られた3K平織炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグを2層積層した。
具体的には、金型温度220℃にセットされた金型に、製造例2で得られた3K平織炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ(縦150mm×横150mm)を2層積層した積層体を配置して加熱し、層間が熱融着した後、金型を金型温度200℃近傍まで冷却後、一体化した2層のプリプレグの上にポリプロピレン系樹脂発泡体を載置し、金型上下間のクリアランスを6.1mmまで閉じてプレス保持させ、すぐさま冷却開始し、50℃まで冷却した時点で金型から片面スキン層を形成したものを取り出した。他面へのスキン層形成は金型上下間のクリアランスを6.3mmとしてそれ以外は同様の操作を行い、スキン層をコア層の両面に形成した。
次に、自動テープ積層装置を用いて、
図6に示すように、得られた積層体の両面最外層の中央部に配向角度0°の積層となるように、製造例1で得られたUDテープを1枚並べて、25mm幅×150mm長面積分を部分的に追加積層した。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0080】
(比較例1)
自動テープ積層装置を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面全面に、
図7及び表3に示すように、配向角度が(0°/0°/0°/0°)の積層となるように製造例1で得られたUDテープを配置した。いずれのプリプレグ層も、UDテープを同じ方向になるように6枚並べて形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0081】
(比較例2)
自動テープ積層装置を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面全面に、
図8及び表3に示すように、片側4層となるように、製造例1で得られたUDテープを配向角度が同一平面内で(0°)部分と(90°)部分が混在するように配置した。それ以外は、実施例1と同様にして、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0082】
(比較例3)
高速ヒートアンドクールプレス成形装置(Go Molding System、 GMS、株式会社郷製作所製)が搭載されたデジタルサーボブレス(ZEN Former MPS675DS、株式会社放電精密加工研究所製)を用いて、上述したポリプロピレン系樹脂発泡体の両面全面に、
図9及び表3に示すように、製造例1で得られた1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ2を4層積層した。
具体的には、金型温度220℃にセットされた金型に、製造例1で得られた1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ2(縦150mm×横150mm)を4層積層した積層体を配置して加熱し、層間が熱融着した後、金型を金型温度200℃近傍まで冷却後、一体化した4層の1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ2の上にポリプロピレン系樹脂発泡体を載置し、金型上下間のクリアランスを6.6mmまで閉じてプレス保持させ、すぐさま冷却開始し、50℃まで冷却した時点で金型から片面スキン層を形成したものを取り出した。いずれのプリプレグ層も、1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ2を同じ方向になるように4枚並べて形成した。他面へのスキン層形成は金型上下間のクリアランスを7.3mmとしてそれ以外は同様の操作を行い、スキン層をコア層の両面に形成し、繊維強化樹脂複合体を得た。
【0083】
(比較例4)
図10及び表3に示すように、製造例1で得られた1方向炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ2(縦150mm×横150mm)を4層積層した積層体の代わりに、製造例2で得られた3K平織炭素繊維強化ポリプロピレンプリプレグ2層の積層体を用いてスキン層を形成した以外は、比較例3同様な方法で、繊維強化樹脂複合体を作製した。
【0084】
実施例及び比較例の繊維強化樹脂複合体について、スキン層の厚み、耐衝撃性、及び軽量性を上述したとおりに測定評価し、その結果を下記表1~表3に示した。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
上記表1及び表2から分かるように、実施例では、軽量性を有し、耐衝撃性に優れる立体的形状の繊維強化樹脂複合体が得られた。一方、上記表3から分かるように、比較例の繊維強化樹脂複合体は耐衝撃性に劣っていた。