(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148715
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 13/02 20060101AFI20231005BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B05C13/02
B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056889
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中塩屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
(72)【発明者】
【氏名】上田 勝彦
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA34
4F041CA02
4F041CA12
4F041CA16
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA27
4F042DF19
4F042DF23
4F042DF28
(57)【要約】
【課題】塗布液を塗布する塗布部と基材との間隔を安定して維持することができる塗布装置を提供することを目的としている。
【解決手段】ロールツーロールにより搬送される基材の所定面に対して塗布部により塗布液を塗布する塗布装置であって、前記塗布部は、基材の幅方向に長く形成された本体部と、前記本体部から突出して形成され、基材の所定面に塗布液を吐出する吐出口と、基材の搬送経路を規定するサポート部材と、を備えており、前記サポート部材は、外周面が基材と接触するサポートロールを有し、前記サポートロールは、少なくとも基材の所定面において塗膜が形成されていない不塗布領域の一部と接触するように、前記搬送経路において前記吐出口よりも上流側と下流側の少なくとも一方に位置するよう前記本体部と一体的に設けられている構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールツーロールにより搬送される基材の所定面に対して塗布部により塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布部は、基材の幅方向に長く形成された本体部と、
前記本体部から突出して形成され、基材の所定面に塗布液を吐出する吐出口と、
基材の搬送経路を規定するサポート部材と、を備えており、
前記サポート部材は、外周面が基材と接触するサポートロールを有し、
前記サポートロールは、少なくとも基材の所定面において塗膜が形成されていない不塗布領域の一部と接触するように、前記搬送経路において前記吐出口よりも上流側と下流側の少なくとも一方に位置するよう前記本体部と一体的に設けられていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記サポート部材は、前記サポートロールを複数有しており、
各々の前記サポートロールは、前記搬送経路において前記吐出口よりも上流側と下流側のそれぞれに位置するよう前記本体部と一体的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
各々の前記サポートロールは、外周面が基材の幅方向端部と接触するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記サポート部材は、前記サポートロールと基材を挟んで対向するよう設けられ、前記サポートロールと基材を挟持する複数の挟持用ロールを有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項5】
また、前記サポート部材が有する各々のロールを基材の幅方向に移動させる第1のロール移動手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
前記サポート部材が有する各々のロールを基材の所定面に向かう方向と基材の所定面と離れる方向に移動させる第2のロール移動手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送される基材に対して、塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン電池の電池用極板は、ロールツーロールで搬送される基材に活物質、バインダー、導電助剤および溶媒を含むスラリー(以下、塗布液)が塗布されて製造されている。
【0003】
また、リチウムイオン電池の高容量化のために、基材の両面に塗膜を形成することが行われている。たとえば塗膜を乾燥させる前に
図5に示すように両面同時に塗膜を形成する場合、搬送される基材910の表面側に塗布液を塗布する第1の塗布部920と、搬送される基材910の裏面側に塗布液を塗布する第2の塗布部930の2つの塗布部を備える塗布装置900によって、基材の表面と裏面のそれぞれに対して塗布液の塗布を行っている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の塗布装置900では、特に第2の塗布部930と基材910との間隔を安定して維持することができない場合があった。
【0006】
具体的に説明する。従来の塗布装置900は、第1の塗布部920により基材910の表面に塗布液を塗布した後に、第2の塗布部930により基材910の裏面に塗布液を塗布している。この場合、
図5に示すように第1の塗布部920による基材910の表面への塗布液の塗布については基材910を裏面側から塗布ロール940で支持して行っているため、第1の塗布部920と基材910との間隔を安定して維持することができ、基材910の表面に塗布液を均一に塗布することができる。
【0007】
一方、第2の塗布部930による基材910の裏面への塗布液の塗布については、基材910の表面に塗布液が塗布された状態で行うため、第1の塗布部920により基材910の表面に塗布液を塗布するときのように塗布ロール940で基材910の表面を直接支持することができない。これに加えて、ロールツーロールを構成する2つのロールにより張力を付与されて搬送される基材910に対して行っている。すなわち、第1の塗布部920による塗布液の塗布を行う際に基材910の裏面側から塗布ロール940により基材910を支持するのとは異なり、前述した2つのロール間で基材910が浮いた状態で第2の塗布部930により基材910の裏面に塗布液を塗布している。
【0008】
そのため、第2の塗布部930により基材910の裏面に塗布液を塗布する際に基材910に撓みや振動が生じる場合がある。すなわち、第2の塗布部930と基材910との間隔を安定して維持することができない場合がある。これにより、基材910の裏面に塗布液を均一に塗布することができないため、基材910の表面と裏面のそれぞれに形成された塗膜の厚み等にばらつきが生じる可能性があった。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、塗布液を塗布する塗布部と基材との間隔を安定して維持することができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の乾燥装置は、ロールツーロールにより搬送される基材の所定面に対して塗布部により塗布液を塗布する塗布装置であって、前記塗布部は、基材の幅方向に長く形成された本体部と、前記本体部から突出して形成され、基材の所定面に塗布液を吐出する吐出口と、基材の搬送経路を規定するサポート部材と、を備えており、前記サポート部材は、外周面が基材と接触するサポートロールを有し、前記サポートロールは、少なくとも基材の所定面において塗膜が形成されていない不塗布領域の一部と接触するように、前記搬送経路において前記吐出口よりも上流側と下流側の少なくとも一方に位置するよう前記本体部と一体的に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記塗布装置によれば、基材の搬送経路において吐出口よりも上流側と下流側の少なくとも一方における吐出口の近傍でサポートロールにより基材を支持するため、塗布部と基材との間隔を安定して維持することができる。
【0012】
また、前記サポート部材は、前記サポートロールを複数有しており、各々の前記サポートロールは、前記搬送経路において前記吐出口よりも上流側と下流側のそれぞれに位置するよう前記本体部と一体的に設けられている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、基材の搬送経路において吐出口よりも上流側と下流側における吐出口の近傍で複数のサポートロールにより基材を支持するため、塗布部と基材との間隔をより安定して維持することができる。
【0014】
また、各々の前記サポートロールは、外周面が基材の幅方向端部と接触するように設けられている構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、各々のサポートロールが基材の所定面に塗布された塗布液と接触することを防ぐことができる。
【0016】
また、前記サポート部材は、前記サポートロールと基材を挟んで対向するよう設けられ、前記サポートロールと基材を挟持する複数の挟持用ロールを有している構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、サポートロールと挟持用ロールにより基材を挟持するため、塗布液と基材との間隔をより安定して維持することができる。
【0018】
また、前記サポート部材が有する各々のロールを基材の幅方向に移動させる第1のロール移動手段を備えている構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、塗布液を塗布する基材の幅方向における寸法が変わっても、塗布部と基材との間隔を安定して維持することができる。
【0020】
また、前記サポート部材が有する各々のロールを基材の所定面に向かう方向と基材の所定面と離れる方向に移動させる第2のロール移動手段を備えている構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、吐出口と基材の所定面との間隔を調節することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の塗布装置によれば、塗布液を塗布する塗布部と基材との間隔を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態における塗布装置を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の第一実施形態における第2の塗布部を示す図である。
【
図3】本発明の第一実施形態における第2の塗布部を説明するための図である。
【
図4】本発明の第二実施形態における第2の塗布部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態における塗布装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0025】
図1は、本実施形態における塗布装置100を概略的に示す図である。
図2は、本実施形態における第2の塗布部3を説明するための図である。
図3は、本実施形態における第2の塗布部3を説明するための図であり、
図3(a)は基材Wの搬送方向から見た第2の塗布部3を示し、
図3(b)は基材Wの上方から見た第2の塗布部3を示している。
【0026】
本実施形態における塗布装置100は、
図1に示すように基材Wを搬送する搬送機構1と、基材Wの表面に塗布液を塗布する第1の塗布部2と、基材Wの裏面に塗布液を塗布する第2の塗布部3と、を備えている。
【0027】
本実施形態における塗布装置100は、搬送機構1により搬送される基材Wの両面に対して第1の塗布部2および第2の塗布部3により塗布液を塗布し、塗膜Mを形成する。
【0028】
本実施形態における基材Wは、リチウムイオン電池などの電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材Wは、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構1により搬送される。
【0029】
本実施形態における塗布液は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤、および溶媒を含むスラリーのことであり、リチウムイオン電池などの電池の電池用極板の材料(所謂、電極材料)として用いられる。この塗布液を基材Wに塗布することで、基材Wに塗膜Mが形成される。
【0030】
本実施形態における搬送機構1は、基材Wを搬送するためのものである。搬送機構11は、
図1に示すように基材Wを巻き出す巻出ロール11と、基材Wを巻き取る図示しない巻取ロールと、巻出ロール11から巻き出された基材Wが巻取ロールに巻き取られるまでに経由する搬送ロール12と、後述する第1の塗布部2により塗布液を塗布する位置に基材Wを案内する塗布ロール13と、を有している。この搬送機構11が有する各々のロールは、円柱状に形成され、この円柱の中心軸を回転軸として回転する。
【0031】
巻出ロール11は、図示しない制御部により回転を駆動制御され、所定の速度で基材Wを巻き出す。制御部は、たとえば、汎用のコンピュータ装置によって構成されている。また、巻取ロールは、巻出ロール11と同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを巻き取る。なお、ここでいう張力は、基材Wの搬送方向(
図1におけるX軸方向)の張力のことである。
【0032】
搬送ロール12は、
図1に示すように複数設けられ、基材Wが塗布装置100を構成する各部を経由するよう配置されている。この複数の搬送ロール12のうち一部、またはすべての搬送ロール12は、巻出ロール11および巻取ロールと同様に制御部により回転を駆動制御され、基材Wに所定の張力を付与しながら基材Wを搬送する。
【0033】
塗布ロール13は、
図1に示すように後述する第1の塗布部2が有する第1の塗布部21と対向するよう配置されている。そのため、第1の塗布部21と一定の間隔を維持しながら基材Wを搬送することができる。
【0034】
これら構成により、搬送機構1は、所定の張力を基材Wに付与しながら基材Wを所定の速度で搬送することができる。
【0035】
本実施形態における第1の塗布部2は、搬送機構1により搬送される基材Wの表面に塗布液を塗布して塗膜Mを形成するためのものである。この第1の塗布部2は、基材Wの幅方向に沿って長く形成されている。ここで、前述した塗布ロール11dが、第1の塗布部2に対して、塗布ロール13の回転軸方向と第1の塗布部2の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置されている。なお、第1の塗布部2の幅方向とは、第1の塗布部2の長手方向のことである。
【0036】
また、第1の塗布部2は、
図1に示すように供給路5に接続され、幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールド21と、このマニホールド21と繋がった幅方向に広いスリット22と、幅方向においてスリット22と同一の長さで開口し、塗布液を吐出する吐出口23により構成される。これにより、マニホールド21に溜められた塗布液がスリット22を経由して、吐出口23から基材Wに吐出される。また、吐出口23は、塗布ロール13と基材Wを挟んで対向している。すなわち、吐出口23は基材Wの表面側で基材Wと対向している。これにより、吐出口23と基材Wとの間隔を安定して維持した状態で、基材Wに塗布液を塗布することができる。
【0037】
供給路5は、マニホールド21と塗布液が貯留されているタンク6を接続している。そして、図示しないポンプによりタンク6から供給路5を介してマニホールド21に塗布液を供給する。
【0038】
これらの構成を有する第1の塗布部2によって、基材Wの表面に塗膜Mを形成することができる。
【0039】
本実施形態における第2の塗布部3は、搬送機構1により搬送される基材Wの裏面に塗布液を塗布して塗膜Mを形成するためのものであり、基材Wの搬送経路において第1の塗布部2よりも下流側に配置されている。第2の塗布部3は、
図2に示すように本体部31と、基材Wの搬送経路を規定するサポート部材4と、を有している。
【0040】
本体部31は、
図3(a)および
図3(b)に示すように基材Wの幅方向に沿って長く形成されている。ここで、本体部31は、基材Wの幅方向と本体部31の幅方向とが平行になるよう所定の間隔を空けて配置されている。なお、本体部31の幅方向とは、本体部31の長手方向のことである。
【0041】
また、本体部31は、
図1に示すように供給路5に接続され、幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールド32と、このマニホールド32と繋がった幅方向に広いスリット33と、幅方向においてスリット33と同一の長さで開口し、塗布液を吐出する吐出口34により構成される。これにより、マニホールド32に溜められた塗布液がスリット33を経由して、吐出口34から基材Wに吐出される。また、吐出口34は、本体部31から突出して形成されており、基材Wの裏面側で基材Wと対向している。これにより、第2の塗布部3は、基材Wの裏面に塗布液を塗布する。
【0042】
供給路5は、マニホールド32と塗布液が貯留されているタンク6を接続している。そして、図示しないポンプによりタンク6から供給路5を介してマニホールド32に塗布液を供給する。
【0043】
これにより、第2の塗布部3は、基材Wの裏面に塗膜Mを形成することができる。
【0044】
サポート部材4は、基材Wの搬送経路を規定するためのものであり、本実施形態では、
図2に示すように基材Wを裏面側から支持する複数のサポートロール41と、各々のサポートロール41と基材Wを挟持する複数の挟持用ロール42と、各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42を本体部31の幅方向(
図2のY軸方向)に水平移動させる図示しない第1のロール移動手段と、各々サポートロール41および各々の挟持用ロール42を上下(
図2のZ軸方向)に直線移動させる第2のロール移動手段と、を有している。
【0045】
サポートロール41は、吐出口34と基材Wとの間隔を所定の間隔に維持するよう基材Wを裏面側から支持するためのものである。サポートロール41は、
図2に示すように回転軸43を有し、これを軸として回転するローラー状の形状に形成されている。このサポートロール41の外周面と基材Wの裏面が接触することで、サポートロール41は搬送される基材Wとの摩擦力により回転する。なお、回転軸43は、
図2に示すように支持部44により回転可能に支持されている。
【0046】
また、複数のサポートロール41のそれぞれは、
図2に示すように基材Wの搬送経路における吐出口34の上流側と下流側のそれぞれにおいて、
図3(a)に示すように基材Wの裏面と対向し、各々のサポートロール41の外周面で基材Wの幅方向両端部を支持するよう配置される。
【0047】
ここで、本体部31には、
図2に示すように基材Wの幅方向に長く、サポートロール41の一部または全部を収容可能な溝部35が形成されている。溝部35は、
図2に示すように吐出口34が突出して形成された本体部31のサポート面36に形成されている。すなわち、溝部35は、基材Wの裏面と対向する本体部31のサポート面36に形成されている。
【0048】
この溝部35は、
図2に示すようにサポート面36に複数形成されており、基材Wの搬送経路における吐出口34の上流側と下流側のそれぞれにおいて、本体部31の幅方向の各々の端部の近傍に形成される。これら各々の溝部35の底部に前述した各々のサポートロール41の回転軸43のそれぞれを回転可能に支持した支持部44が設けられる。すなわち、各々のサポートロール41が各々の溝部35に埋め込まれている。そのため、各々のサポートロール41は、本体部31と一体となる。
【0049】
また、本実施形態では、サポートロール41の外周面の上端部が、吐出口34の先端と同程度の高さになるように、サポートロール41がサポート面36から突出すよう溝部35に埋め込まれている。この状態のサポートロール41を後述する第2のロール移動手段により移動させることによって、適宜サポートロール4の外周面の上端部の位置を適宜調整している。
【0050】
これら各々のサポートロール41は、後述する第1のロール移動手段により基材Wの幅方向両端部に移動し、各々のサポートロール41が支持する基材Wと吐出口34との間隔が所定の間隔になるよう後述する第2のロール移動手段により上下に移動する。これにより、各々のサポートロール41は、吐出口34と所定の間隔を空けて基材Wを支持する。
【0051】
挟持用ロール42は、サポートロール41と基材Wを挟持するためのものである。挟持用ロール42は、
図2に示すように回転軸43を有し、これを軸として回転するローラー状の形状に形成されている。この挟持用ロール42の外周面と基材Wの表面が接触することで、挟持用ロール42は搬送される基材Wとの摩擦力により回転する。なお、回転軸43は、
図2に示すように支持部44により回転可能に支持されている。
【0052】
また、複数の挟持用ロール42のそれぞれは、
図2および
図3(a)に示すように各々のサポートロール41と基材Wを挟んで対向する位置に設けられている。ここで、各々の挟持用ロール42は、各々の回転軸43に接続された支持部44が、少なくとも基材Wの搬送と第2の塗布部3による塗布液の塗布を阻害しない外壁のない図示しないフレームに設けられることで、支持されている。
【0053】
これら各々の挟持用ロール42は、後述する第1のロール移動手段と後述する第2のロール移動手段により各々のサポートロール41と基材Wを挟んで対向する位置に移動する。これにより、各々のサポートロール41と各々の挟持用ロール42は、基材Wを挟持する。
【0054】
第1のロール移動手段は、各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42のそれぞれを本体部31の幅方向(
図2のY軸方向)に水平移動させる図示しない第1のスライド機構を有している。第1のスライド機構は、前述した各々の支持部44が固定されている。なお、各々のサポートロール41を移動させる第1のスライド機構は、各々の溝部35の底部に設けられ、各々の挟持用ロール42を移動させる第1のスライド機構は、前述したフレームに設けられる。
【0055】
この第1のスライド機構は、図示しないモータを有し、前述した制御部によりモータの駆動を制御することで、各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42を支持する各々の支持部44を本体部31の幅方向、すなわち、基材Wの幅方向にスライドさせる。
【0056】
これにより、第1のスライド機構が各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42を基材Wの幅方向に移動させる。すなわち、第1のロール移動手段は、サポート部材4が有する各ロールを基材Wの幅方向に移動させる。なお、本実施形態における第1のロール搬送手段は、基材Wの幅方向両端部で各々のサポートロール41と各々の挟持用ロール42とが基材Wを挟んで対向するよう、各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42を移動させる。
【0057】
第2のロール移動手段は、各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42を上下(
図2のZ軸方向)に直線移動させる図示しない第2のスライド機構を有している。第2のスライド機構は、各々の支持部44に設けられている。この第2のスライド機構は、図示しないモータを有し、前述した制御部によりモータの駆動を制御することで、各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42の回転軸43を上下にスライドさせる。
【0058】
これにより、第2のスライド機構が各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42を上下に移動させる。すなわち、第2のロール移動手段は、サポート部材4が有する各ロールを上下に移動させる。なお、本実施形態における第2のロール移動手段は、各々のサポートロール41および各々の挟持用ロール42により基材Wを挟持できる位置かつ、吐出口34と基材Wとの間隔が所定の間隔になるような位置に各々のサポートロール41および挟持用ロール42を移動させる。
【0059】
このように上記実施形態における塗布装置100によれば、塗布液を塗布する塗布部(本実施形態では、第2の塗布部3)と基材Wとの間隔を安定して維持することができる。
【0060】
具体的に説明する。
図5に示す従来の塗布装置900では、基材910の両面に塗膜Mを形成する際に、第1の塗布部920により基材910の表面に塗布液を塗布した後に、第2の塗布部930により基材910の裏面に塗布液を塗布している。
【0061】
第2の塗布部930による基材910の裏面への塗布液の塗布については、基材910の表面に塗布液が塗布された状態で行うため、第1の塗布部920により基材910の表面に塗布液を塗布するときのように塗布ロール940で基材910の表面を直接支持することができない。これに加えて、ロールツーロールを構成する2つのロールにより張力を付与されて搬送される基材910に対して塗布を行っている。すなわち、第1の塗布部920による塗布液の塗布を行う際に基材910の裏面側から塗布ロール940により基材910を支持するのとは異なり、前述した2つのロール間で基材910が浮いた状態で第2の塗布部930により基材910の裏面に塗布液を塗布している。
【0062】
そのため、第2の塗布部930は、基材910が支持されていない状態で基材910の裏面に塗布液の塗布を行うため、基材910に撓みや振動が生じやすい。これにより、第2の塗布部930により塗布液の塗布を行うときに、第2の塗布部930と基材910との間隔を安定して維持することができなかった。その結果、基材910の裏面に塗布液を均一に塗布することができず、基材910の表面と裏面のそれぞれに形成された塗膜の厚み等にばらつきが生じる可能性があった。
【0063】
これに対して、本実施形態における塗布装置100は、基材Wの裏面に塗布液を塗布する第2の塗布部3が、基材Wの搬送経路における吐出口34の上流側と下流側のそれぞれに位置するよう本体部31と一体的に設けられた複数のサポートロール41を有し、これら各々のサポートロール41により吐出口34と基材Wとの間隔が所定の間隔となるよう基材Wを裏面側から支持している。
【0064】
このように、各々のサポートロール41により基材Wの搬送経路において吐出口34よりも上流側と下流側における吐出口34の近傍で基材Wを支持しているため、基材Wに撓みや振動が生じることを抑制することができる。これにより、第2の塗布部3と基材Wとの間隔を安定して維持することができる。したがって、基材Wの裏面に塗布液を均一に塗布することができ、基材Wの表面と裏面のそれぞれに形成された塗膜Mの厚み等にばらつきが生じることを防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態では、各々のサポートロール41の外周面が基材Wの幅方向両端部と接触するように設けられているため、各々のサポートロール41が基材Wに塗布された塗布液と接触することを防ぐことができる。
【0066】
また、本実施形態では、各々のサポートロール41と基材Wを挟持する複数の挟持用ロール42を有し、これら各々のサポートロール41と各々の挟持用ロール42とで基材Wを挟持するため、第2の塗布部3と基材Wとの間隔をより安定して維持することができる。
【0067】
また、本実施形態では、サポート部材4が有する各々のロールを基材Wの幅方向に水平移動させる第1のロール移動手段を備えているため、第2の塗布部3により塗布液を塗布する基材Wの幅方向における寸法が変わっても、その基材Wの寸法に合わせて各々のロールの位置を移動することができる。そのため、基材Wの寸法に関わらず第2の塗布部3と基材Wとの間隔を安定して維持することができる。
【0068】
また、本実施形態では、サポート部材4が有する各々のロールを上下に直線移動させる第2のロール移動手段を備えているため、吐出口34と基材Wとの間隔を塗布条件に応じて調節することができる。
【0069】
また、本実施形態では、サポートロール41の外周面の上端部が、吐出口34の先端と同程度の高さになるように、サポートロール41がサポート面36から突出すよう溝部35に埋め込まれている。この状態のサポートロール41を第2のロール移動手段により移動させることによって、サポートロール4の外周面の上端部の位置を適宜調整している。そのため、サポートロール41の外周面の上端部が、吐出口34の先端よりも高い高さになるように溝部35に埋め込まれた場合よりも、サポートロール41は、吐出口34と基材Wとの間隔がより狭くなる位置で基材Wを支持しやすくなる。
【0070】
〔第二実施形態〕
次に本発明の第二実施形態における塗布装置100について
図4を用いて説明する。本実施形態では、第1の塗布部2と第2の塗布部3により基材Wの幅方向にストライプ状の塗膜Mを形成することと、サポート部材4の配置が異なっている点で第一実施形態と異なっている。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様な構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0071】
図4は、本実施形態における第2の塗布部3を説明するための図であり、
図4(a)は基材Wの搬送方向から見た第2の塗布部3を示し、
図4(b)は基材Wの上方から見た第2の塗布部3を示している。
【0072】
本実施形態における第1の塗布部2および第2の塗布部3は、
図4(a)および
図4(b)に示すように塗膜Mが形成された複数の塗布領域Tと、複数の塗布領域Tの間に塗膜Mが形成されていない不塗布領域Nを基材Wが有するよう、基材Wの幅方向(
図4(a)におけるY軸方向)に塗膜Mを形成する、すなわち基材Wの幅方向にストライプ状の塗膜Mを形成する。
【0073】
第1の塗布部2および第2の塗布部3には、基材Wに形成する塗膜Mをストライプ状にするための図示しないシム板がさらに設けられている。シム板は、たとえば、略櫛型状を有しており、スリット22およびスリット33を幅方向に分割するよう配置されている。このシム板によりスリット22およびスリット33を幅方向に分割した状態で塗布液を塗布すると、シム板がない部分から塗布液が塗布され、シム板がある部分から塗布液が塗布されないようになる。これにより、塗膜Mをストライプ状に形成することができる。なお、このシム板の形状を変更することで、塗膜Mの幅を調節することができるようになっている。すなわち、基材Wの幅方向における塗布領域Tと不塗布領域Nの幅を調節することができる。
【0074】
これにより、第1の塗布部2および第2の塗布部3により、基材Wの両面にストライプ状の塗膜Mを形成することができる。
【0075】
本実施形態におけるサポート部材4が有する複数のサポートロール41のそれぞれは、
図4(a)および
図4(b)に示すように基材Wの裏面側から基材Wの幅方向両端部と基材Wの不塗布領域Nのそれぞれと外周面が接触するように配置される。この不塗布領域Nのそれぞれに配置された各々のサポートロール41は、前述した第一実施形態におけるサポートロール41と同様の構成を有し、第1のロール移動手段および第2のロール移動手段により移動が可能になっている。
【0076】
本実施形態における不塗布領域Nのそれぞれに配置された各々のサポートロール41は、その外周面が少なくとも塗膜Mと接触しない位置に第1のロール移動手段により移動され、基材Wの幅方向両端部に配置された各々のサポートロール41と同じ高さで基材Wを支持する位置に第2のロール移動手段により移動させられる。
【0077】
また、本実施形態では、挟持用ロール42が、少なくとも基材Wの幅方向両端部を支持する各々のサポートロール41と基材Wを挟持する位置に配置されている。なお、挟持用ロール42が、基材Wの不塗布領域Nのそれぞれに配置された各々のサポートロール41と基材Wとを挟持する位置にも配置してよい。
【0078】
また、各々のサポートロール41を基材Wの幅方向両端部から中央に向かうに従って徐々に直径が増大するクラウン形状に形成してもよい。この形状に形成したサポートロール41は、前述したローラー形状のサポートロール41と比較して基材Wと接触する接触部の面積が小さくなるため、基材Wの不塗布領域Nの幅が狭い場合であっても、塗膜Mと接触せずに基材Wを支持することができる。これは、挟持用ロール42も同様である。
【0079】
これにより、本実施形態では、各々のサポートロール41により基材Wの幅方向両端部だけでなく、基材Wの不塗布領域Nでも基材Wを支持することができる。そのため、基材Wの幅方向両端部だけを支持する場合より、吐出口34と基材Wとの間隔を安定して維持することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の追加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、サポートロール41が、基材Wの搬送経路において吐出口34よりも上流側と下流側のそれぞれに位置するよう本体部31と一体的に設けられている例について説明したが、これに限られない。たとえば、サポートロール41が、基材Wの搬送経路において吐出口34よりも上流側と下流側の少なくとも一方に位置するよう本体部31と一体的に設けられているとよい。
【0081】
また、上記実施形態では、サポートロール41は、外周面が基材Wの幅方向端部に接触するように設けられている例について説明したが、外周面が少なくとも基材Wの不塗布領域Nに接触するように設けるとよい。
【0082】
また、基材Wの搬送経路において吐出口34よりも上流側に位置するサポートロール41は、基材Wの幅方向に向かって延び、基材Wを幅方向にわたって支持するような形状に形成してもよい。これにより、サポートロール41が、第2の塗布部3により塗布液が塗布される前の基材Wの裏面を幅方向にわたって支持することができる。すなわち、サポートロール41と基材Wとが接触する部分の面積が大きくなるため、より安定して第2の塗布部3と基材Wとの間隔を維持することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、基材Wの裏面に塗布液を塗布する第2の塗布部3がサポート部材4を有している例について説明したが、これに限らない。たとえば、第1の塗布部2が、基材Wの表面に塗布液を塗布する際に、何らかの要因により基材Wを塗布ロール13により支持できない場合に、第1の塗布部2にサポート部材4を設けて、基材Wを支持しながら基材Wに塗布液を塗布させてもよい。すなわち、第1の塗布部2または第2の塗布部3のいずれか一方の塗布部にサポート部材4を設け、基材Wの表面または裏面のいずれか一方の基材Wの所定面から基材Wを支持した状態で、基材Wの塗布液を塗布してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、第2のロール移動手段が、サポート部材4が有する各々のロールを第2のスライド機構により上下に移動させる例について説明したが、これに限らず、少なくとも基材Wの所定面に向かう方向と基材Wの所定面と離れる方向に移動させる構成であればよい。
【符号の説明】
【0085】
100 塗布装置
1 搬送機構
11 巻出ロール
12 搬送ロール
13 塗布ロール
2 第1の塗布部
21 マニホールド
22 スリット
23 吐出口
3 第2の塗布部
31 本体部
32 マニホールド
33 スリット
34 吐出口
35 溝部
36 サポート面
4 サポート部材
41 サポートロール
42 挟持用ロール
43 回転軸
44 支持部
5 供給路
6 タンク
W 基材
M 塗膜
T 塗布領域
N 不塗布領域