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  • 特開-視野角制御フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148723
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】視野角制御フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20231005BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20231005BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231005BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
B60R11/02 C
B60K35/00 Z
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056905
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
(72)【発明者】
【氏名】福島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
【テーマコード(参考)】
2H042
3D020
3D344
【Fターム(参考)】
2H042BA09
2H042BA14
2H042BA15
2H042BA20
3D020BA04
3D020BC03
3D020BD05
3D344AA19
3D344AB01
3D344AD01
(57)【要約】
【課題】正面輝度の低下を抑制しつつ、視野角を制御することのできる視野角制御フィルムを提供する。
【解決手段】射光拡散角度領域を有する視野角制御フィルム1であって、当該視野角制御フィルム1を地面に対して垂直に設置したときに、上下方向における入射光拡散角度領域には、地面に対して水平方向の正面0°が含まれておらず、正面0°における全光線透過率が、85%以上、100%以下である視野角制御フィルム1。視野角制御フィルム1は、屈折率が相対的に低い領域(低屈折領域12)中に屈折率が相対的に高い複数の領域(板状高屈折領域11)を備えた、ルーバー状の内部構造を有していることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光拡散角度領域を有する視野角制御フィルムであって、
前記視野角制御フィルムを地面に対して垂直に設置したときに、上下方向における前記入射光拡散角度領域には、地面に対して水平方向の正面0°が含まれておらず、
前記正面0°における全光線透過率が、85%以上、100%以下である
ことを特徴とする視野角制御フィルム。
【請求項2】
前記正面0°におけるヘイズ値が、0%以上、40%以下であることを特徴とする請求項1に記載の視野角制御フィルム。
【請求項3】
JIS K7374:2007に準拠して測定した0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学櫛の像鮮明度の合計値が、350以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の視野角制御フィルム。
【請求項4】
厚さが、50μm以上、450μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の視野角制御フィルム。
【請求項5】
所定の光源と輝度測定装置との間に前記視野角制御フィルムがない場合に測定される輝度をL0とし、前記光源と前記輝度測定装置との間に前記視野角制御フィルムがある場合に測定される輝度をL1としたときに、下記式(1)で表される輝度変化率(%)が、
前記視野角制御フィルムの前記正面0°において、85%以上であり、
前記視野角制御フィルムの入射光拡散角度領域の中心角から-10°(視野角制御フィルムの製造時搬送方向の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとする)において、95%以下である
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の視野角制御フィルム。
輝度変化率(%)=(L1/L0)×100 ・・・(1)
【請求項6】
前記視野角制御フィルムが、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた、ルーバー状の内部構造を有しており、
前記視野角制御フィルムを地面に対して垂直に設置したときに、前記ルーバー状の内部構造の長手方向が水平方向に延在するように、前記ルーバー状の内部構造が設けられている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の視野角制御フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野角制御フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等においては、カーナビゲーションシステムや、スピードメーター等の各種メーターに、発光表示装置(ディスプレイ)が使用されることが多くなっている。
【0003】
上記のような車載用ディスプレイは、一般的に、自動車のフロントガラスやサイドガラス付近にて多く使用されている。そのため、夜間には、ディスプレイの光がフロントガラスやサイドガラスに映り込んで、安全性が損なわれることがあった。また、助手席の前にディスプレイが設置されている場合に、助手席の人が当該ディスプレイで映画やテレビを視聴したときに、運転席の運転手からも見えてしまうことがあり、かかる観点からも安全性が損なわれることがあった。
【0004】
上記のような課題を解決するために、ディスプレイに遮光フードを設置することが考えられるが、デザイン的に問題が生じる。また、ディスプレイにセキュリティ/プライバシーフィルター(例えば3M社製)を設けることも可能であるが、ディスプレイの正面輝度が低下するという問題が生じる。
【0005】
なお、特許文献1には、視野角と輝度に言及した表示装置が開示されているが、当該表示装置は、基本的には色変化の問題を改善することを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-115421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、正面輝度の低下を抑制しつつ、視野角を制御することのできる視野角制御フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、入射光拡散角度領域を有する視野角制御フィルムであって、前記視野角制御フィルムを地面に対して垂直に設置したときに、上下方向における前記入射光拡散角度領域には、地面に対して水平方向の正面0°が含まれておらず、前記正面0°における全光線透過率が、85%以上、100%以下であることを特徴とする視野角制御フィルムを提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係る視野角制御フィルムは、入射光拡散角度領域を有することにより、視野角を制御することができる。すなわち、当該視野角制御フィルムを発光表示装置(ディスプレイ)に設けたときに、ディスプレイの光が所定の角度では透過し易く、別の角度では透過し難くなるよう、制御することが可能となる。また、上記視野角制御フィルムは、入射光拡散角度領域に上記正面0°が含まれていないこと、および上記正面0°における全光線透過率が上記の範囲にあることにより、正面輝度の低下を抑制することができる。したがって、当該視野角制御フィルムを設けたディスプレイの画像は、正面からは見易いものとなる。
【0010】
上記発明(発明1)においては、前記正面0°におけるヘイズ値が、0%以上、40%以下であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)においては、JIS K7374:2007に準拠して測定した0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学櫛の像鮮明度の合計値が、350以上であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1~3)においては、厚さが、50μm以上、450μm以下であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)においては、所定の光源と輝度測定装置との間に前記視野角制御フィルムがない場合に測定される輝度をL0とし、前記光源と前記輝度測定装置との間に前記視野角制御フィルムがある場合に測定される輝度をL1としたときに、下記式(1)で表される輝度変化率(%)が、
前記視野角制御フィルムの前記正面0°において、85%以上であり、
前記視野角制御フィルムの入射光拡散角度領域の中心角から-10°(視野角制御フィルムの製造時搬送方向の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとする)において、95%以下である
ことが好ましい(発明5)。
輝度変化率(%)=(L1/L0)×100 ・・・(1)
【0014】
上記発明(発明1~5)においては、前記視野角制御フィルムが、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた、ルーバー状の内部構造を有しており、前記視野角制御フィルムを地面に対して垂直に設置したときに、前記ルーバー状の内部構造の長手方向が水平方向に延在するように、前記ルーバー状の内部構造が設けられていることが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る視野角制御フィルムによれば、正面輝度の低下を抑制しつつ、視野角を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る視野角制御フィルムを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る視野角制御フィルムは、入射光拡散角度領域を有しており、当該視野角制御フィルムを地面に対して垂直に設置したときに、上下方向における入射光拡散角度領域には、地面に対して水平方向の正面0°が含まれていないことが好ましい。また、本実施形態に係る視野角制御フィルムの上記正面0°における全光線透過率は、85%以上、100%以下であることが好ましい。
【0018】
なお、本明細書において、「入射光拡散角度領域」とは、視野角制御フィルムに対する測定光の入射角度を変更してヘイズ値を測定したときに、当該ヘイズ値が80%以上となる角度範囲をいうものとする。
【0019】
上記の構成を有する本実施形態に係る視野角制御フィルムは、入射光拡散角度領域を有することにより、視野角を制御することができる。すなわち、本実施形態に係る視野角制御フィルムを発光表示装置(ディスプレイ)に設けたとき(貼付の概念を含む)に、ディスプレイの光が所定の角度では透過し易く、別の角度では透過し難くなるよう、制御することが可能となる。これにより、例えば、本実施形態に係る視野角制御フィルムを車載用ディスプレイに設けると、夜間に、ディスプレイの光がフロントガラスやサイドガラスに映り込むことを抑制することができる。また、助手席の前に設置されたディスプレイの画面に本実施形態に係る視野角制御フィルムを設けると、当該ディスプレイの光や画像(映像の概念を含む)を運転席の運転手から見え難くすることができる。
【0020】
また、上記の構成を有する本実施形態に係る視野角制御フィルムは、入射光拡散角度領域に上記正面0°が含まれていないこと、および上記正面0°における全光線透過率が上記の範囲にあることにより、正面輝度の低下を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る視野角制御フィルムを設けたディスプレイの画像は、正面からは見易いものとなる。
【0021】
正面輝度の観点から、本実施形態に係る視野角制御フィルムの正面0°における全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、特に89%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。上記全光線透過率の上限値は特に限定されず、100%であってよいが、所望の入射光拡散角度領域を得るためには、99%以下であることが好ましく、特に95%以下であることが好ましく、さらには92%以下であることが好ましい。なお、正面0°における全光線透過率の具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0022】
本実施形態における視野角制御フィルムの入射光拡散角度領域の上限値(終了角)は、-1°以下であることが好ましく、-5°以下であることがより好ましく、特に-10°以下であることが好ましく、さらには-15°以下であることが好ましい。一方、入射光拡散角度領域の下限値(開始角)は、-60°に近いことが好ましく、-60°超であってもよい。視野角制御フィルムの入射光拡散角度領域が上記の範囲にあることにより、本実施形態に係る視野角制御フィルムを地面に対して垂直に設置したときに、上下方向における上記入射光拡散角度領域に、地面に対して水平方向の正面0°が含まれないようにすることができる。なお、本明細書における入射光拡散角度領域の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0023】
本実施形態における視野角制御フィルムの正面0°におけるヘイズ値は、0~40%であることが好ましく、0~30%であることがより好ましく、特に0~20%であることが好ましく、さらには0~15%であることが好ましい。正面0°におけるヘイズ値が上記の範囲にあることにより、上述した視野角を制御し易く、また、正面輝度をより高く維持することができる。なお、正面0°におけるヘイズ値の具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0024】
本実施形態における視野角制御フィルムにおいては、JIS K7374:2007に準拠して測定した0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学櫛の像鮮明度(%)の合計値が、350以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、特に430以上であることが好ましく、さらには442以上であることが好ましく、中でも450以上であることが好ましく、470以上であることが最も好ましい。これにより、本実施形態における視野角制御フィルムを設けたディスプレイにおける画像のボケを抑制し、画像の視認性が良好なものとなる。
【0025】
上記像鮮明度(%)の合計値の上限値は特に限定されないが、上述した視野角制御の観点から、500以下であることが好ましく、495以下であることがより好ましく、特に485以下であることが好ましく、さらには480以下であることが好ましい。
【0026】
ここで、像鮮明度は、試験体を透過した平行光線の光量を、透過部および遮光部を有する光学櫛を通して測定されるものである。光学櫛における透過部と遮光部との幅(櫛幅)が小さいほど、精細度の高い像鮮明度を表す。像鮮明度は、JIS K7374:2007の透過法に準じて測定される。具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0027】
本実施形態における視野角制御フィルムにおいては、所定の光源と輝度測定装置との間に当該視野角制御フィルムがない場合に測定される輝度をL0とし、上記光源と輝度測定装置との間に当該視野角制御フィルムがある場合に測定される輝度をL1としたときに、下記式(1)で表される輝度変化率(%)が、当該視野角制御フィルムの正面0°において、85%以上であることが好ましく、当該視野角制御フィルムの入射光拡散角度領域の中心角から-10°(視野角制御フィルムの製造時搬送方向の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとする)において、95%以下であることが好ましい。ここで、「入射光拡散角度領域の中心角」とは、入射光拡散角度領域の開始角と終了角との間の中心の角度をいう。なお、上記輝度の具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
輝度変化率(%)=(L1/L0)×100 ・・・(1)
【0028】
上記正面0°における輝度変化率が上記の値であることにより、正面輝度を高く維持しているということができる。かかる観点から、正面0°における輝度変化率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、特に95%以上であることが好ましく、さらには97%以上であることが好ましく、中でも99%以上であることが好ましく、99.9%以上であることが最も好ましい。上記正面0°における輝度変化率の上限値は、特に限定されず、100%であってもよい。
【0029】
一方、入射光拡散角度領域の中心角から-10°における輝度変化率が上記の値であることにより、所定の角度にてディスプレイの光が透過し難くなり、当該角度にて暗く表示することができ、もって視野角が良好に制御されているということができる。かかる観点から、入射光拡散角度領域の中心角から-10°における輝度変化率は、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、特に88%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。上記入射光拡散角度領域の中心角から-10°における輝度変化率の下限値は、特に限定されず、0%であってもよいが、所望の光学特性(像鮮明度、ヘイズ値、全光線透過率等)との両立の観点からは、10%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには50%以上であることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る視野角制御フィルムは、前述した物性を発揮するために、視野角制御フィルムが、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた、ルーバー状の内部構造(ルーバー構造)を有することが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る視野角制御フィルムをディスプレイに設けるにあたり、上記ルーバー構造の長手方向が水平方向に延在するように設けてもよいし、上記ルーバー構造の長手方向が鉛直方向に延在するように設けてもよいし、あるいは上記ルーバー構造の長手方向が所望の角度で延在するように設けてもよく、視野角制御の目的に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
図1に、本発明の一実施形態に係る視野角制御フィルム1の概略斜視図を示す。
【0033】
1.視野角制御フィルムの構造
本実施形態に係る視野角制御フィルム1においては、ルーバー構造として、屈折率が相対的に高い板状高屈折領域11が、所定の間隔をもって複数平行に配置されており、それらの間を、屈折率が相対的に低い低屈折領域12が埋める構造となっている。図1に示される視野角制御フィルム1では、視野角制御フィルム1を地面に対して垂直に設置したときに、上記板状高屈折領域11の長手方向が水平方向に延在するように、ルーバー構造が形成されているが、これに限定されるものではない。
【0034】
上記のようなルーバー構造を有する視野角制御フィルム1に入射された光は、板状高屈折領域11の長手方向に垂直な方向(短手方向)に広がる拡散が生じ易く、これによって入射光拡散角度領域が定まる。本実施形態における板状高屈折領域11は、視野角制御フィルム1の平面に対して傾斜して配置されており、この角度は、前述した物性が満たされるように適宜調整される。本実施形態では、板状高屈折領域11の片面と視野角制御フィルム1の法線とがなす鋭角側の角度は、5~42°であることが好ましく、10~41.5°であることがより好ましく、特に15~41°であることが好ましく、さらには30~40°であることが好ましい。
【0035】
上記のルーバー構造においては、個々の板状高屈折領域11の厚さ(配列方向の幅)が、0.1~10μmであることが好ましく、特に0.5~8μmであることが好ましく、さらには1~5μmであることが好ましい。また、個々の板状高屈折領域11の間隔は、0.1~10μmであることが好ましく、特に0.5~8μmであることが好ましく、さらには1~5μmであることが好ましい。
【0036】
なお、図1では、板状高屈折領域11が、視野角制御フィルム1の厚さ方向全域に存在するものとして描かれているものの、視野角制御フィルム1の厚さ方向の端部の少なくとも一方に、板状高屈折領域11が存在しないものとなっていてもよい。ここで、板状高屈折領域11が視野角制御フィルム1の厚さ方向に延在する割合としては、光拡散性をより効率的なものとする観点から、視野角制御フィルム1の厚さの10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。なお、上限値は制約がなく、100%、すなわち、視野角制御フィルム1の厚さ方向全てに内部構造が形成されていてもよい。
【0037】
上記のルーバー構造においては、屈折率が相対的に高い板状高屈折領域11の屈折率と、屈折率が相対的に低い低屈折領域12の屈折率との差が、0.01~0.3であることが好ましく、特に0.05~0.25であることが好ましく、さらには0.1~0.2であることが好ましい。
【0038】
本実施形態におけるルーバー構造では、板状高屈折領域11は平面形状となっているが、視野角制御フィルム1の厚さ方向の途中にて屈曲した形状となっていてもよい。また、本実施形態におけるルーバー構造は、傾斜角度が異なったり、屈曲角度が異なったり、屈曲の有無が異なったりする板状高屈折領域11を、視野角制御フィルム1の厚さ方向に2つ以上有する構造であってもよい。
【0039】
なお、以上のルーバー構造の内部構造に係る寸法や角度等は、光学デジタル顕微鏡を用いてルーバー構造の断面を観察することにより測定することができる。
【0040】
本実施形態における視野角制御フィルム1の厚さは、50~450μmであることが好ましく、特に60~400μmであることが好ましく、さらには70~300μmであることが好ましく、80~250μmであることが好ましい。視野角制御フィルム1の厚さが上記範囲にあることで、前述した物性を発揮し易いものとなる。
【0041】
2.材料
本実施形態における視野角制御フィルム1は、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有する組成物(以下「光拡散制御組成物C」という。)から得られたものであることが好ましい。本実施形態に係る視野角制御フィルム1は、特に上記光拡散制御組成物Cを硬化させたものであることが好ましく、その場合、高屈折率成分および低屈折率成分は、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものであることが好ましい。このような光拡散制御組成物Cを用いることで、前述したルーバー構造を良好に形成し易い。
【0042】
以下、光拡散制御組成物Cが、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分とを含有し、高屈折率成分および低屈折率成分が、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものである場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
(1)高屈折率成分
上記高屈折率成分の好ましい例としては、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特に複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等が挙げられる。これらの中でも、良好な規則的内部構造を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、具体的には、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0044】
高屈折率成分の(重量平均)分子量は、150~2500であることが好ましく、特に200~2000であることが好ましく、さらには250~1000であることが好ましい。高屈折率成分の(重量平均)分子量が上記範囲であることで、所望のルーバー構造を有する視野角制御フィルム1を形成し易くなる。なお、上記高屈折率成分が、分子構造に基づいて理論分子量を特定可能である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、当該理論分子量(重量平均分子量ではない分子量)を指すものとする。一方、上記高屈折率成分が、例えば高分子成分であることに起因して、上述した理論分子量が特定困難である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値として得られる重量平均分子量をいうものとする。なお、本明細書における重量平均分子量の測定方法は、当該GPC法により測定した標準ポリスチレン換算の値をいうものとする。
【0045】
高屈折率成分の屈折率は、1.45~1.70であることが好ましく、1.50~1.68であることがより好ましく、1.54~1.65であることが好ましく、さらには1.54~1.59であることが好ましい。高屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造および光拡散制御能を有する視野角制御フィルム1を形成し易くなる。なお、本明細書における屈折率とは、光拡散制御組成物Cを硬化する前における所定の成分の屈折率を意味し、また、当該屈折率は、JIS K0062:1992に準じて測定したものである。
【0046】
光拡散制御組成物C中における高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、25~400質量部であることが好ましく、特に40~300質量部であることが好ましく、さらには50~200質量部であることが好ましい。高屈折率成分の含有量がこれらの範囲であることで、形成される視野角制御フィルム1のルーバー構造において、高屈折率成分に由来する領域と低屈折率成分に由来する領域とが所望の割合で存在するものとなる。その結果、所望のルーバー構造を有する視野角制御フィルム1を形成し易くなる。
【0047】
(2)低屈折率成分
上記低屈折率成分の好ましい例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0048】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成されるものであることが好ましい。
【0049】
上記(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物の好ましい例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましく、特にイソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
【0050】
上記(b)ポリアルキレングリコールの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0051】
上記(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2300~19500であることが好ましく、特に3000~14300であることが好ましく、さらには4000~12300であることが好ましい。
【0052】
上記(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
上述した(a)~(c)の成分を材料としたウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って行うことができる。このとき(a)~(c)の成分の配合割合は、ウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成する観点から、モル比にて、(a)成分:(b)成分:(c)成分=1~5:1:1~5の割合とすることが好ましく、特に1~3:1:1~3の割合とすることが好ましい。
【0054】
低屈折率成分の重量平均分子量は、3000~20000であることが好ましく、特に5000~15000であることが好ましく、さらには7000~13000であることが好ましい。低屈折率成分の重量平均分子量が上記範囲であることにより、所望のルーバー構造を有する視野角制御フィルム1を形成し易くなる。
【0055】
低屈折率成分の屈折率は、1.30~1.59であることが好ましく、1.35~1.50であることがより好ましく、特に1.40~1.49であることが好ましく、さらには1.46~1.48であることが好ましい。低屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望のルーバー構造および光拡散制御能を有する視野角制御フィルム1を形成し易くなる。
【0056】
(3)その他の成分
前述した光拡散制御組成物Cは、高屈折率成分および低屈折率成分以外に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー(重合性官能基を3つ以上有する化合物)、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、レベリング剤、酸化防止剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤等が挙げられる。
【0057】
上述した添加剤の中でも、光拡散制御組成物Cは、光重合開始剤を含有することが好ましい。光拡散制御組成物Cが光重合開始剤を含有することで、所望の規則的内部構造を有する視野角制御フィルムを効率的に形成し易いものとなる。
【0058】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
光重合開始剤を使用する場合、光拡散制御組成物C中の光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.2~20質量部とすることが好ましく、特に0.5~15質量部とすることが好ましく、さらには1~10質量部とすることが好ましい。光拡散制御組成物C中の光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、視野角制御フィルム1を効率的に形成し易いものとなる。
【0060】
光拡散制御組成物Cは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、これにより、視野角制御フィルム1の液状化を抑制することができ、耐候性を向上させることができる。
【0061】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系、サリチル酸エステル系等が挙げられ、1種を単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。上記の中でも、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物が好ましく、特にベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。これらの化合物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分との相溶性が良好であり、また、着色の程度も低い。
【0062】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン等が好ましく挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェニル)プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-アルキルエステル等が好ましく挙げられる。トリアジン系化合物としては、例えば、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール等が好ましく挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
紫外線吸収剤を使用する場合、光拡散制御組成物C中の紫外線吸収剤の含有量は、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましく、特に0.02~0.5質量%であることが好ましく、さらには0.06~0.1質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲にあることにより、光拡散制御組成物Cの紫外線硬化を阻害することなく、視野角制御フィルム1の液状化抑制効果がより優れたものになる。
【0064】
光拡散制御組成物Cは、光安定化剤を含有することも好ましい。この場合、特に、視野角制御フィルム1の液状化および黄変を抑制することのできる光安定化剤を含有することが好ましい。
【0065】
上記のような光安定化剤としては、カーボネート骨格を有する低塩基性ヒンダードアミン系化合物(以下、「ヒンダードアミン系化合物CL」という場合がある。)が好ましい。光拡散制御組成物Cがヒンダードアミン系化合物CLを含有すると、視野角制御フィルム1が外光照射環境下で経時使用された場合であっても、液状化および黄変することが抑制される。
【0066】
光拡散制御組成物Cを使用したフィルムの液状化および黄変は、主として活性酸素やラジカルの発生に起因し、特に、それらの発生によって樹脂のエーテル結合が切断され、低分子化することにより生じる。ヒンダードアミン系化合物CLによれば、ヒンダードアミン骨格により、活性酸素やラジカルを捕捉することができ、また、カーボネート骨格により、エーテル結合の切断を抑制することができる。さらに、ヒンダードアミン系化合物CLは、低塩基性であることで、酸による失活が生じない。これらの作用により、ヒンダードアミン系化合物CLは、発生した活性酸素やラジカルを持続的に捕捉することができ、視野角制御フィルム1の経時使用による液状化および黄変を抑制することができる。
【0067】
ヒンダードアミンとは、アミノ基の両隣に嵩高い置換基を有するアミンをいう。また、本明細書における「低塩基性」とは、塩基性が比較的低いことをいい、通常の「塩基性」とは区別される。具体的には、1気圧25℃の水中における塩基解離定数(pKb)が、好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、特に好ましくは10以上であり、さらに好ましくは11以上であることをいう。
【0068】
ヒンダードアミン系化合物CLは、下記一般式(I)
【化1】

からなる骨格を少なくとも1つ含む化合物であることが好ましい。
【0069】
上記の構造を有するヒンダードアミン系化合物CLは、視野角制御フィルム1の液状化および黄変の抑制効果に優れる。また、ヒンダードアミン系化合物CLは、N-O-R骨格を有するものであることにより、低塩基性を良好に示すものとなり、前述した効果がより優れたものとなる。なお、N-O-R骨格ではなく、N-アルキル基骨格、特にN-CH骨格を有するヒンダードアミン系化合物は、塩基性を示す。
【0070】
ヒンダードアミン系化合物CLは、上記一般式(I)におけるRが、アルキル基であることが好ましい。当該アルキル基の炭素数は、1~30であることが好ましく、3~25であることがより好ましく、特に7~18であることが好ましく、さらには9~13であることが好ましい。Rがアルキル基であることにより、好ましい低塩基性を示すものとなり、当該アルキル基の炭素数が上記の範囲にあることにより、より好ましい低塩基性を示すものとなる。
【0071】
ヒンダードアミン系化合物CLは、上記一般式(I)からなる骨格を1個または2個以上有することが好ましく、2~10個有することがより好ましく、特に2~7個有することが好ましく、さらには2~4個有することが好ましく、2個有することが最も好ましい。上記一般式(I)からなる骨格は、ヒンダードアミン系化合物の末端に存在してもよいし、側鎖に存在してもよいし、末端および側鎖に存在してもよい。
【0072】
なお、ヒンダードアミン系化合物が上記一般式(I)からなる骨格を2個以上有する場合、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
ヒンダードアミン系化合物CLは、いずれかの位置にカーボネート骨格(-O-C(=О)-O-)を有するものであるが、上記一般式(I)からなる骨格における4位の炭素原子に、カーボネート骨格の末端の酸素原子が結合していることが好ましい。ヒンダードアミン系化合物CLは、この位置にカーボネート骨格を有することにより、視野角制御フィルム1の液状化および黄変の抑制効果により優れたものとなる。
【0074】
ヒンダードアミン系化合物CLとしては、下記構造式(A)
【化2】

で示される化合物であることが特に好ましい。
【0075】
上記構造式(A)で示される化合物におけるRは、上述した一般式(I)からなる骨格におけるRと同様である。上記構造式(A)中の2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0076】
光安定化剤を使用する場合、光拡散制御組成物C中の光安定化剤(特にヒンダードアミン系化合物CL)の含有量は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~8質量%であることがより好ましく、特に0.3~5質量%であることが好ましく、さらには0.5~3質量%であることが好ましく、0.8~2質量%であることが最も好ましい。光安定化剤の含有量が上記範囲にあることにより、視野角制御フィルム1の液状化および黄変抑制効果がより優れたものとなるとともに、得られる視野角制御フィルム1の入射光拡散角度領域を所望の範囲にし易くなる。
【0077】
光拡散制御組成物Cは、レベリング剤を含有することも好ましく、これにより、得られる視野角制御フィルム1の表面平滑性を向上させることができる。レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、シロキサン変性アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤等が挙げられる。光拡散制御組成物Cにおいては、相溶性や取扱い性の観点から、アクリル系レベリング剤を使用することが好ましい。
【0078】
アクリル系レベリング剤の市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製のBYK-350、BYK-352、BYK-354、BYK-355、BYK-358N、BYK-361N、BYK-380N、BYK-381、BYK-392等が挙げられる。
【0079】
レベリング剤を使用する場合、光拡散制御組成物C中のレベリング剤の含有量は、0.1~5質量%であることが好ましく、0.15~3質量%であることがより好ましく、特に0.2~2質量%であることが好ましく、さらには0.3~1質量%であることが好ましい。レベリング剤の含有量が上記範囲にあることにより、視野角制御フィルム1の表面平滑性がより優れたものとなる。
【0080】
3.製造方法
本実施形態に係る視野角制御フィルムの製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、前述した視野角制御フィルム用の組成物、好ましくは光拡散制御組成物Cを調製し、これを工程シートの片面に、塗布し、塗膜を形成する。好ましくは上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、視野角制御フィルムを形成することができる。また、上記活性エネルギー線照射の前または後に、上記塗膜における工程シートとは反対側の面に、剥離シートの片面(特に剥離面)を貼合し、工程シートまたは剥離シート越しに、上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射し、当該塗膜を硬化させてもよい。
【0081】
光拡散制御組成物Cは、前述した高屈折率成分および低屈折率成、ならびに、所望により光重合開始剤等のその他の添加剤を均一に混合することで調製することができる。
【0082】
上記混合の際には、40~80℃の温度に加熱しながら撹拌し、均一な光拡散制御組成物Cを得てもよい。また、得られる光拡散制御組成物Cが所望の粘度となるように、希釈溶剤を添加して混合してもよい。
【0083】
上記塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散制御組成物Cは、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0084】
なお、上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0085】
塗膜の活性エネルギー線硬化においては、活性エネルギー線の光源として線状光源を用い、塗膜表面に対して幅方向(TD方向)にはランダムかつ流れ方向(MD方向)には略平行な帯状(ほぼ線状)の光を照射する。このとき、上記光の照射角度を調整することで、視野角制御フィルム1内にルーバー構造として形成される板状高屈折領域11の傾斜角度を調整することができる。
【0086】
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~50mW/cmとすることが好ましい。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~300mJ/cmとすることが好ましい。また、上記積層体に対する、活性エネルギー線の光源の相対的な移動速度は、0.1~10m/分とすることが好ましい。
【0087】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を照射することも好ましい。このとき、均一に硬化させる観点から、塗膜表面に対して、剥離シートを積層してもよい。
【0088】
本実施形態に係る視野角制御フィルムは、上記のようにして製造したフィルムを複数枚積層し、これを視野角制御フィルムとしてもよい。このとき、ルーバー構造の傾斜角度が各層で違っていてもよい。
【0089】
4.視野角制御フィルムの使用方法
本実施形態に係る視野角制御フィルムは、ディスプレイの視認者側に設けることにより使用することができる。具体的には、視野角制御フィルムの一方の面側に粘着剤層を積層し、当該粘着剤層を介してディスプレイの視認者側の表面に貼付することもできるし、視野角制御フィルムを2枚の透明フィルムで挟持したり、視野角制御フィルムを透明板に貼付したり、視野角制御フィルムを枠材で保持したりした上で、ディスプレイの視認者側に設置することもできる。
【0090】
上記粘着剤層は、公知の粘着剤を使用して形成することができる。例えば、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤などを使用することができる。粘着剤層の厚さは特に限定されないが、通常は5~1000μmであることが好ましく、特に10~500μmであることがより好ましく、さらには15~100μmであることが好ましい。
【0091】
本実施形態に係る視野角制御フィルム1は、ルーバー構造の長手方向が水平方向に延在するようにディスプレイに設けてもよいし、ルーバー構造の長手方向が鉛直方向に延在するようにディスプレイに設けてもよい。例えば、ディスプレイが車載ディスプレイの場合、ディスプレイの光がフロントガラスに映り込むことを抑制する場合には、ルーバー構造の長手方向が水平方向に延在するようにディスプレイに設けることが好ましく、ディスプレイの光がサイドガラスに映り込むこと、または助手席の前に設置されたディスプレイの光・画像が運転手から見えることを抑制する場合には、ルーバー構造の長手方向が鉛直方向または所望の角度方向に延在するようにディスプレイに設けることが好ましい。
【0092】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0093】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0094】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0095】
〔実施例1〕
1.光拡散制御組成物の調製
ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、上記ポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部と、アクリル系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製,製品名「BYK-361N」)0.5質量部と、紫外線吸収剤としてのベンゾフェノン系化合物(BASF社製,製品名「チヌビン384-2」)0.08質量部とを配合した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御組成物を得た。
【0096】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0097】
2.視野角制御フィルムの形成
得られた光拡散制御組成物を、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm;第1のPETフィルム;工程シートとしての役割も有する)の片面に塗布し、厚さ約140μmの塗膜を形成した、次いで、当該塗膜に厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第2のPETフィルム)を積層し、第2のPETフィルム/塗膜/第1のPETフィルムからなる積層体を得た。
【0098】
続いて、得られた積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における第2のPETフィルム側の面が上側となるとともに、第1のPETフィルムの長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「ECS-4011GX」)を設置した。当該装置は、帯状(ほぼ線状)に集光された紫外線を対象に照射することができる。なお、上記装置の設置の際には、上記高圧水銀ランプの長手方向と、コンベアの流れ方向とが直交するように上記紫外線照射装置を設置した。
【0099】
さらに、高圧水銀ランプの長手方向から眺めた場合において、積層体表面に対する法線を基準として、積層体に対して高圧水銀ランプから照射される紫外線の照射角度が35°となるように設定した。なお、ここにおける照射角度とは、積層体における高圧水銀ランプの直下の位置を基準として、コンベアの流れの下流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をプラスの表記にて記載したものとし、コンベアの流れの上流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をマイナスの表記にて記載したものとする。
【0100】
その後、コンベアを作動させて、上記積層体を1.0m/分の速度で移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.5mW/cm、積算光量40.0mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させた。なお、上記のピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。
【0101】
上記の紫外線照射処理により、上述した塗膜が硬化してなる視野角制御フィルムが形成された。これにより、厚さ38μmの第2のPETフィルムと、厚さ140μmの視野角制御フィルムと、厚さ188μmの第1のPETフィルムとがこの順に積層されてなる視野角制御フィルム積層体を得た。なお、視野角制御フィルムの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0102】
形成された視野角制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、視野角制御フィルムの内部に、複数の板状高屈折領域が所定の間隔をもって複数平行に配置され、フィムル厚さ方向にて屈曲したルーバー構造が形成されていることが確認された。ルーバー構造の主面と視野角制御フィルムの法線とがなす鋭角側の平均角度は35°であった。
【0103】
〔実施例2〕
o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、実施例1と同様にして得たポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部と、アクリル系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製,製品名「BYK-361N」)0.5質量部と、光安定化剤として下記構造式(B)で示される、カーボネート骨格を有する低塩基性ヒンダードアミン系化合物(塩基解離定数pKb:11.3)1.0質量部とを配合した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御組成物を得た。
【0104】
【化3】
【0105】
上記光拡散制御組成物を使用し、塗膜の厚さを約130μmに変更するとともに、紫外線の照射角度を40°に変更する以外、実施例1と同様にして視野角制御フィルム積層体を製造した。形成された視野角制御フィルムの厚さは130μmであった。
【0106】
形成された視野角制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、視野角制御フィルムの内部に、複数の板状高屈折領域が所定の間隔をもって複数平行に配置されたルーバー構造が形成されていることが確認された。ルーバー構造の主面と視野角制御フィルムの法線とがなす鋭角側の角度は40°であった。
【0107】
〔実施例3〕
紫外線吸収剤を配合しない以外、実施例1と同様にして光拡散制御組成物を調製した。得られた光拡散制御組成物を、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm;第1のPETフィルム;工程シートとしての役割も有する)の片面に塗布し、厚さ約160μmの塗膜を形成した。これにより、当該塗膜と第1のPETフィルムとからなる積層体を得た。
【0108】
続いて、得られた積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における塗膜側の面が上側となるとともに、第1のPETフィルムの長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、実施例1と同様にして帯状(ほぼ線状)の紫外線を照射した。ただし、積層体表面に対する法線を基準として、積層体に対して高圧水銀ランプから照射される紫外線の照射角度が55°となるように設定した。
【0109】
その後、コンベアを作動させて、上記積層体を1.0m/分の速度で移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.5mW/cm、積算光量40.0mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「一次硬化」という場合がある。)。
【0110】
続いて、積層体における塗膜側の面に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第2のPETフィルム)を積層した後、当該フィルムを介して、塗膜に対し、ピーク照度190mW/cm、積算光量180mJ/cmの条件で紫外線(散乱光)を照射することで、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「二次硬化」という場合がある。)。
【0111】
以上の一次硬化および二次硬化により、上述した塗膜が硬化してなる視野角制御フィルムが形成された。これにより、厚さ38μmの第2のPETフィルムと、厚さ160μmの視野角制御フィルムと、厚さ188μmの第1のPETフィルムとがこの順に積層されてなる視野角制御フィルム積層体を得た。
【0112】
形成された視野角制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、視野角制御フィルムの内部に、複数の板状高屈折領域が所定の間隔をもって複数平行に配置されたルーバー構造が形成されていることが確認された。ルーバー構造の主面と視野角制御フィルムの法線とがなす鋭角側の角度は55°であった。
【0113】
〔実施例4〕
紫外線吸収剤を配合しない以外、実施例1と同様にして光拡散制御組成物を調製した。得られた光拡散制御組成物を、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm;第1のPETフィルム;工程シートとしての役割も有する)の片面に塗布し、厚さ約240μmの塗膜を形成した。これにより、当該塗膜と第1のPETフィルムとからなる積層体を得た。
【0114】
続いて、得られた積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における塗膜側の面が上側となるとともに、第1のPETフィルムの長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、実施例1と同様にして帯状(ほぼ線状)の紫外線を照射した。ただし、積層体表面に対する法線を基準として、積層体に対して高圧水銀ランプから照射される紫外線の照射角度が55°となるように設定した。
【0115】
その後、コンベアを作動させて、上記積層体を1.0m/分の速度で移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.5mW/cm、積算光量40.0mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化(一次硬化)させた。
【0116】
続いて、積層体における塗膜側の面に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第2のPETフィルム)を積層した。そして、一次硬化でも使用した紫外線照射装置により、第2のPETフィルムを介して、ピーク照度2.5mW/cm、積算光量40.0mJ/cmの条件で帯状(ほぼ線状)の紫外線を上記積層体の塗膜に照射し、当該塗膜を硬化(二次硬化)させた。このとき、積層体表面に対する法線を基準として、積層体に対して高圧水銀ランプから照射される紫外線の照射角度が27°となるように設定した。
【0117】
以上の一次硬化および二次硬化により、上述した塗膜が硬化してなる視野角制御フィルムが形成された。これにより、厚さ38μmの第2のPETフィルムと、厚さ240μmの視野角制御フィルムと、厚さ188μmの第1のPETフィルムとがこの順に積層されてなる視野角制御フィルム積層体を得た。
【0118】
形成された視野角制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、視野角制御フィルムの内部に、複数の板状高屈折領域が所定の間隔をもって複数平行に配置され、フィムル厚さ方向にて角度の異なるルーバー構造が形成されていることが確認された。ルーバー構造の一の主面(第1のPETフィルム側)と視野角制御フィルムの法線とがなす鋭角側の角度は55°であり、ルーバー構造の他の主面(第2のPETフィルム側)と視野角制御フィルムの法線とがなす鋭角側の角度は27°であった。
【0119】
〔実施例5〕
紫外線吸収剤を配合しない以外、実施例1と同様にして光拡散制御組成物を調製した。当該光拡散制御組成物を使用し、塗膜の厚さを約130μmに変更するとともに、紫外線の照射角度を40°に変更する以外、実施例3と同様にして第1の視野角制御フィルム積層体を製造した。当該第1の視野角制御フィルム積層体における視野角制御フィルム(第1の視野角制御フィルム)の厚さは130μmであった。
【0120】
第1の視野角制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、視野角制御フィルムの内部に、複数の板状高屈折領域が所定の間隔をもって複数平行に配置されたルーバー構造が形成されていることが確認された。ルーバー構造の主面と視野角制御フィルムの法線とがなす鋭角側の角度は40°であった。
【0121】
実施例3と同様にして得られた視野角制御フィルム積層体を第2の視野角制御フィルム積層体として、当該第2の視野角制御フィルム積層体における視野角制御フィルム(第2の視野角制御フィルム)と、上記第1の視野角制御フィルム積層体における第1の視野角制御フィルムとを積層した。具体的には、第2の視野角制御フィルム積層体の第2のPETフィルムを剥離するとともに、第1の視野角制御フィルム積層体の第1のPETフィルムを剥離し、露出した第2の視野角制御フィルムと、露出した第1の視野角制御フィルムとを積層した。このようにして、第2のPETフィルム/第1の視野角制御フィルム(ルーバー角度40°,厚さ130μm)/第2の視野角制御フィルム(ルーバー角度55°,厚さ160μm)/第1のPETフィルムからなる積層体を得た。
【0122】
〔実施例6〕
紫外線吸収剤を配合しない以外、実施例1と同様にして光拡散制御組成物を調製した。当該光拡散制御組成物を使用し、塗膜の厚さを約100μmに変更するとともに、紫外線の照射角度を25°に変更する以外、実施例1と同様にして視野角制御フィルム積層体を製造した。当該視野角制御フィルムの厚さは100μmであった。
【0123】
形成された視野角制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、視野角制御フィルムの内部に、複数の板状高屈折領域が所定の間隔をもって複数平行に配置されたルーバー構造が形成されていることが確認された。ルーバー構造の主面と視野角制御フィルムの法線とがなす鋭角側の角度は25°であった。
【0124】
〔比較例1〕
3M社製の「セキュリティ/プライバシーフィルター PF12.1W H2」(厚さ:536μm)を比較例1の視野角制御フィルムとした。
【0125】
〔試験例1〕(入射光拡散角度領域の測定)
実施例の視野角制御フィルム積層体および比較例の視野角制御フィルムについて、変角ヘイズメーター(村上色彩社製,製品名「HM-150N」)を用いて、ヘイズ値が80%以上となる入射光拡散角度領域を測定した。
【0126】
具体的には、視野角制御フィルム積層体および視野角制御フィルム(以下、両者を包括して便宜的に「視野角制御フィルム」という場合がある)を、上記変角ヘイズメーターにおける積分球開口から測定光の到達位置までの距離が62mmとなるように設置した。このとき、視野角制御フィルム積層体においては、測定光の光源側に第1のPETフィルム側が配置されるように設置した。次に、上記到達位置における視野角制御フィルムの幅方向を回転軸として、視野角制御フィルムの長手方向(製造時の搬送方向)を回転させることにより、ヘイズ値(%)の変化を測定した。すなわち、視野角制御フィルムの傾き角度のみを変えることで、視野角制御フィルムに対する測定光の入射角度を変更し、それぞれの入射角度ごとにヘイズ値(%)を測定した。なお、測定光が視野角制御フィルムの法線方向となる入射角度を0°とし、視野角制御フィルムの長手方向(製造時の搬送方向)の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとして、-60°~60°の範囲で測定を行った。測定条件の詳細は、次の通りとした。
光源:C光源
測定径:φ18mm
積分球開口径:φ25.4mm
【0127】
そして、測定されたヘイズ値(%)が80%以上となる角度範囲(開始角および終了角)を、入射光拡散角度領域として特定した。また、上記角度範囲から、入射光拡散角度領域の中心角を算出した。結果を表1に示す。
【0128】
〔試験例2〕(全光線透過率の測定)
実施例の視野角制御フィルム積層体および比較例の視野角制御フィルムについて、JIS K7361-1:1997に準じて、視野角制御フィルムの正面0°に設置したヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いて、全光線透過率(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
〔試験例3〕(ヘイズ値の測定)
実施例の視野角制御フィルム積層体および比較例の視野角制御フィルムについて、JIS K7136:2000に準じて、視野角制御フィルムの正面0°に設置したヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いて、ヘイズ値(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
〔試験例4〕(像鮮明度の測定)
実施例の視野角制御フィルム積層体および比較例の視野角制御フィルムについて、写像性測定器(スガ試験機社製,製品名「ICM-1T」)を使用し、JIS K7374:2007の透過法に準拠して、5種類の光学櫛(櫛幅:0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mm)の像鮮明度(%)を測定し、その合計値を算出した。結果を表1に示す。
【0131】
〔試験例5〕(輝度変化率の測定)
スマートフォン(SAMSUNG社製,製品名「GALAXY S6」)の画面に、白画面を表示させた。当該スマートフォンのディスプレイ表面から3mm離れた位置であって、ディスプレイ中央に対して正面0°の位置に、輝度計(コニカミノルタ社製,製品名「イメージング輝度計 ProMetric-I16+コノスコープ」)を設置して輝度(cd/m)を測定し、当該輝度をL0とした。
【0132】
次いで、実施例の視野角制御フィルム積層体および比較例の視野角制御フィルムを、上記スマートフォンのディスプレイに密着するように設置した。このとき、視野角制御フィルム積層体においては、スマートフォンのディスプレイ表面側に第1のPETフィルム側が配置されるように設置した。そして、上記と同様に輝度(cd/m)を測定し、当該輝度をL1とした。得られた輝度L0および輝度L1から、下記式(1)に基づいて、正面0°の輝度変化率(%)を算出した。結果を表2に示す。
輝度変化率(%)=(L1/L0)×100 ・・・(1)
【0133】
また、上記スマートフォンのディスプレイ表面から3mm離れた位置であって、ディスプレイ中央を基準に、視野角制御フィルムの入射光拡散角度領域の中心角から-10°(視野角制御フィルムの長手方向(製造時の搬送方向)の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとする)の位置に、上記輝度計を設置した。そして、上記正面0°の場合と同様にして、視野角制御フィルムがないときの輝度L0および視野角制御フィルムがあるときの輝度L1を測定し、上記式(1)に基づいて、中心角から-10°の輝度変化率(%)を算出した。結果を表2に示す。
【0134】
〔試験例6〕(目視評価)
市販のスマートフォン(SAMSUNG社製,製品名「GALAXY S6」)の画面に、メニュー画面を表示させた。次いで、実施例の視野角制御フィルム積層体および比較例の視野角制御フィルムを、上記スマートフォンのディスプレイに密着するように設置した。このとき、視野角制御フィルム積層体においては、スマートフォンのディスプレイ表面側に第1のPETフィルム側が配置されるように設置した。そして、上記スマートフォンのディスプレイから約30cmの位置から目視し、画像のボケの程度、および正面から見たときの画面の明るさを判断し、以下の基準に基づいて評価した。また、ディスプレイ中央を基準に視野角制御フィルムの長手方向(製造時の搬送方向)の進行方向をプラスとして、入射光拡散角度領域の中心角-10°から見たときの画面の明るさを判断し、以下の基準に基づいて視野角制御を評価した。なお、正面から見たときに明るく、斜めから見たときに暗い場合には、視野角が制御されているということができる。それぞれの結果を表2に示す。
【0135】
<画像のボケの評価基準>
◎…画像のボケは視認されなかった。
〇…僅かに画像のボケが視認されたが問題となるレベルではなかった。
△…画像のボケが視認されたが画像の内容は分かるレベルであった。
×…画像のボケが視認され、画像の内容が分からないレベルであった。
<正面の明るさの評価基準>
◎…十分な明るさであった。
〇…十分ではないものの、問題ないレベルの明るさだった。
△…暗めだった。
×…暗すぎて画面を視認するには問題があった。
<視野角制御の評価基準>
◎…画面が真っ黒であり、画像の内容を全く視認することができなかった。
〇…画面が暗く、画像の内容を視認することができなかった。
△…画面が明るめだったが、画像の内容を視認しにくかった。
×…画面が明るく、画像の内容を視認することができた。
【0136】
また、スマートフォン(SAMSUNG社製,製品名「GALAXY S6」)のディスプレイに、一面緑色の画像を表示させた。次いで、実施例の視野角制御フィルム積層体および比較例の視野角制御フィルムを、上記スマートフォンのディスプレイに密着するように設置した。このとき、視野角制御フィルム積層体においては、スマートフォンのディスプレイ表面側に第1のPETフィルム側が配置されるように設置した。そして、上記スマートフォンのディスプレイから約30cmの位置から目視して、表示画像におけるギラツキの程度を判断し、以下の基準に基づいて評価した。結果を表2に示す。
<ギラツキの評価基準>
◎…ギラツキが全く確認されなかった。
〇…ギラツキがわずかに確認されたが問題ないレベルであった。
△…ギラツキがやや確認された。
×…ギラツキが全面に確認された。
【0137】
〔試験例7〕(耐候性の評価)
比較例の視野角制御フィルムを、実施例で使用した第1のPETフィルムおよび第2のPETフィルムで挟持し、これを視野角制御フィルム積層体とした。実施例および比較例の視野角制御フィルム積層体における第1のPETフィルムに、アクリル系粘着剤層(紫外線吸収剤なし,厚さ25μm)を積層した。
【0138】
次に、第1のポリ塩化ビニル樹脂(PVC)フィルム(紫外線吸収剤入り,厚さ80μm)の一方の面に、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層(厚さ20μm)を積層した。
【0139】
また、第2のPVCフィルム(紫外線吸収剤なし,厚さ50μm)の一方の面に、反射層として、アルミニウム層(ナノオーダー厚)を蒸着した。そして、当該PVCフィルムにおける反射層とは反対側の面に、アクリル系粘着剤層(紫外線吸収剤なし,厚さ25μm)を積層した。
【0140】
さらに、フッ素系樹脂フィルム(紫外線吸収剤入り,厚さ100μm)の一方の面に、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層(厚さ20μm)を積層した。
【0141】
上記の各構成体を積層し、上から順に、フッ素系樹脂フィルム、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層、第1のPVCフィルム、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層、第2のPETフィルム、視野角制御フィルム、第1のPETフィルム、アクリル系粘着剤層、反射層、第2のPVCフィルム、およびアクリル系粘着剤層からなる積層体を得た。
【0142】
得られた積層体に対し、JIS A1439:2016に準拠して、63±3℃(ブラックパネル温度)、50%RHの雰囲気下、サンシャインウェザーメーター(SWOM)(スガ試験機社製,製品名「S80」)を使用して紫外線を3000時間照射した(放射照度:78.5W/m)。次いで、当該積層体を分解し、視野角制御フィルムの液状化を調べた。そして、以下の評価基準に基づいて、液状化抑制(耐候性)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0143】
<耐候性の評価基準>
◎…液状化が全く発生していなかった。
〇…PETフィルムから剥がした視野角制御フィルムの露出面を指で触れると若干のベタツキが見られたが、触れた後に当該露出面には指の指紋が残らなかった。
△…PETフィルムから剥がした視野角制御フィルムの露出面を指で触れると若干のベタツキが見られ、触れた後に当該露出面に指の指紋が残った。
×…全体的に液状化していた。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
表2から分かるように、実施例で製造した視野角制御フィルムによれば、ディスプレイの正面輝度の低下を抑制しつつ、視野角を制御することができた。また、ディスプレイの表示性能においても問題がなかった。さらに、実施例1および2で製造した視野角制御フィルムは、耐候性にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の視野角制御フィルムは、例えば、安全性のために車載用ディスプレイに設けられる視野角制御フィルムとして好適である。
【符号の説明】
【0148】
1…視野角制御フィルム
11…板状高屈折領域
12…低屈折領域
図1