(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148759
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、および、ポリエチレン系樹脂押出発泡体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20231005BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20231005BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20231005BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
B29C48/00
B29C44/00 E
C08L23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056955
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中山 亮二
【テーマコード(参考)】
4F074
4F207
4F214
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA18
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(57)【要約】
【課題】平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体、および、当該ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂組成物、気泡核形成剤および水分除去剤を含む押出発泡用樹脂組成物を押出機にて発泡剤とともに溶融混錬する際に、前記ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、水分除去剤を0.01重量部以上、5.00重量部未満添加する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂組成物、気泡核形成剤および水分除去剤を含む押出発泡用樹脂組成物を押出機にて発泡剤とともに溶融混錬する工程Aと、
前記工程Aにて得られた溶融樹脂を押出発泡させる工程Bと、を有し、
前記工程Aでは、前記ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、水分除去剤を0.01重量部以上、5.00重量部未満添加する、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記水分除去剤の添加量が、下記式(1)を満足する、請求項1に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法:
A=5×10-4×B+K、-0.20≦K≦0.75 ・・・(1)
A:水分除去剤の添加量[重量部]
B:ポリエチレン系樹脂組成物の水分率[ppm]
K:係数[-]。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂組成物は、収縮防止剤を含む、請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記収縮防止剤は、脂肪酸エステルを含む、請求項3に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡剤は物理系発泡剤を含む、請求項1~4の何れか1項に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項6】
前記気泡核形成剤は、熱分解型発泡剤とクエン酸(塩)とを含む、請求項1~5の何れか1項に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項7】
前記水分除去剤は、酸化カルシウムおよび合成ゼオライトの少なくとも一方を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリエチレン系樹脂組成物は、再生ポリエチレン系樹脂を5~90重量%含む、請求項1~7の何れか1項に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法によって得られ、かつ、下記(a)および(b)を満足する、ポリエチレン系樹脂押出発泡体:
(a)前記ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が、650μm以下であり、
(b)前記ポリエチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率が、70%以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、および、ポリエチレン系樹脂押出発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂押出発泡体は、柔軟性および耐磨耗性に優れていることから、緩衝材(例えば梱包用緩衝材)として広く使用されている。例えば、自動車部品などを輸送するための梱包用緩衝材として、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂を使用したポリエチレン系樹脂押出発泡体の開発が進んでいる。
【0003】
ポリエチレン系樹脂押出発泡体の例として、引用文献1には、ポリエチレン系樹脂100重量部に対して、熱分解型発泡剤とクエン酸塩とからなる気泡核形成剤0.03~1.3重量部、および、収縮防止剤0.1~1.5重量部を含み、前記気泡核形成剤添加量Aに対する収縮防止剤添加量Bの比率B/Aが10以下である、ポリエチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られる、(a)発泡倍率が5倍以上30倍以下、および、(b)厚みが20mm以上を満たす、無架橋ポリエチレン系樹脂押出発泡ボードが記載されている。
【0004】
近年、持続可能な開発目標(SDGs)の達成への機運の高まりから、環境汚染を低減させるだけでなく、プラスチックごみの発生量、および、製造に用いるプラスチック量の大きな低減を目指し、再生ポリエチレン系樹脂などを使用する技術の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、再生ポリエチレン系樹脂などを使用してポリエチレン系樹脂押出発泡体を作製すると、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が大きくなるという問題がある。
【0007】
なお、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が大きくなると、当該ポリエチレン系樹脂押出発泡体を緩衝材として用いたときに、製品保護性能が劣る等の問題が生じることとなる。
【0008】
そして、上述した従来技術には、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径の観点から、さらなる改善の余地があった。
【0009】
本発明の一態様は、平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体、および、当該ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、(i)水分除去剤の量が特定量であれば、平均気泡径を小さくできること、(ii)水分除去剤の量が多すぎる場合は、理由は不明だが、驚くべきことに、平均気泡径が大きくなること、を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0012】
〔1〕ポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂組成物、気泡核形成剤および水分除去剤を含む押出発泡用樹脂組成物を押出機にて発泡剤とともに溶融混錬する工程Aと、
前記工程Aにて得られた溶融樹脂を押出発泡させる工程Bと、を有し、
前記工程Aでは、前記ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、水分除去剤を0.01重量部以上、5.00重量部未満添加する、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0013】
〔2〕前記水分除去剤の添加量が、下記式(1)を満足する、〔1〕に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法:
A=5×10-4×B+K、-0.20≦K≦0.75 ・・・(1)
A:水分除去剤の添加量[重量部]
B:ポリエチレン系樹脂組成物の水分率[ppm]
K:係数[-]。
【0014】
〔3〕前記ポリエチレン系樹脂組成物は、収縮防止剤を含む、〔1〕または〔2〕に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0015】
〔4〕前記収縮防止剤は、脂肪酸エステルである、〔3〕に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0016】
〔5〕前記発泡剤は物理系発泡剤を含む、〔1〕~〔4〕の何れか1項に記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0017】
〔6〕前記気泡核形成剤は、熱分解型発泡剤とクエン酸(塩)とを含む、〔1〕~〔5〕の何れかに記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0018】
〔7〕前記水分除去剤は、酸化カルシウム、または、合成ゼオライトを含む、〔1〕~〔6〕の何れかに記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0019】
〔8〕前記ポリエチレン系樹脂組成物は、再生ポリエチレン系樹脂を5~90重量%含む、〔1〕~〔7〕の何れかに記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
【0020】
〔9〕〔1〕~〔8〕の何れかに記載のポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法によって得られ、かつ、下記(a)および(b)を満足する、ポリエチレン系樹脂押出発泡体:
(a)前記ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が、650μm以下であり、
(b)前記ポリエチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率が、70%以上である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体、および、当該ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。更に、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0023】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0024】
本明細書において、X単量体に由来する構成単位を「X単位」と称する場合がある。
【0025】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
本発明者らは、従来技術を検討する過程において、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の原料であるポリエチレン系樹脂組成物中の水分量に依存して、驚くべきことに、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が変化するという新規知見を独自に得た。特に、ポリエチレン系樹脂組成物中の水分量が多くなるほどポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が大きくなる、という新規知見を、本発明者らは独自に得た。
【0026】
ポリエチレン系樹脂組成物の水分量は、ポリエチレン系樹脂およびその他の添加剤(例えば吸水性物質など)に依存し得る。本発明者らは、鋭意検討の過程において、再生ポリエチレン系樹脂が、特に水分量が多いという知見も独自に得た。一方、水分によってポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が大きくなる理由としては、定かではないが、造核剤として添加される気泡核形成剤の造核作用が、水分によって失われること等が考えられる。
【0027】
平均気泡径が大きいポリエチレン系樹脂押出発泡体は、平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体と比較して、硬い触感となることや接触している物質への気泡模様の転写を生じ得る。そのため、分野によっては、平均気泡径が大きいポリエチレン系樹脂押出発泡体は敬遠される傾向がある。
【0028】
そこで、本発明者らは、前記課題に鑑み、ポリエチレン系樹脂組成物から水分を除去し、ポリエチレン系樹脂組成物の水分量を調節することにより、平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体を提供すべく、鋭意検討を行った。
【0029】
ここで、水分を除去する方法としては、水分を含む材料(例えば、再生ポリエチレン系樹脂)を乾燥させる方法も考え得る。しかしながら、当該方法の場合、(i)ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造工程が増え、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造効率が下がる、(ii)再生ポリエチレン系樹脂などの水分を含む材料を乾燥させるための設備および燃料が必要となり、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造コストが上がる、(iii)再生ポリエチレン系樹脂などの水分を含む材料を乾燥させる過程において、当該材料の品質が低下する虞がある、等の問題点がある。本発明の場合、これらの問題点が生じることなく、平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体、および、当該ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を提供すべく、さらに鋭意検討を行った。
【0030】
その結果、本発明者らは、特定量の水分除去剤を用いてポリエチレン系樹脂組成物から水分を適度に除去することによって、驚くべきことに、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径を小さくできること、を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0031】
〔2.ポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、ポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂組成物、気泡核形成剤および水分除去剤を含む押出発泡用樹脂組成物を押出機にて発泡剤とともに溶融混錬する工程Aと、前記工程Aにて得られた溶融樹脂を押出発泡させる工程Bと、を有し、前記工程Aでは、前記ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、水分除去剤を0.01重量部以上、5.00重量部未満添加する。
【0032】
「本発明の一実施形態に係るポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法」を、「本製造方法」と称する場合もある。「ポリエチレン系樹脂押出発泡体」を、「押出発泡体」と称する場合もある。
【0033】
本製造方法は、前記構成を有するため、平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体を製造することができる。具体的に、本発明の一実施形態では、特定量の水分除去剤によって気泡核形成剤の造核作用が失われることを防ぎ、これによって、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径を小さくできると考えられる。なお、本発明は、かかる推測になんら限定されない。
【0034】
〔2-1.工程A〕
工程Aは、ポリエチレン系樹脂を含有するポリエチレン系樹脂組成物と気泡核形成剤とを含む押出発泡用樹脂組成物を押出機にて発泡剤とともに溶融混錬する工程である。工程Aでは、ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、水分除去剤を0.01重量部以上、5.00重量部未満添加する。
【0035】
(ポリエチレン系樹脂組成物)
ポリエチレン系樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂を含有するものである。ポリエチレン系樹脂組成物は、収縮防止剤、および/または、ポリエチレン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
【0036】
ポリエチレン系樹脂としては、全構成単位100モル%中、例えば、エチレン単位が50モル%以上(より具体的に、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、または、90モル%以上)の樹脂が挙げられる。
【0037】
ポリエチレン系樹脂としては、より具体的に、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐構造を有する低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ヘキセン共重合体、エチレン/4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン/1-オクテン共重合体、スチレン改質ポリエチレン系樹脂などが挙げられる。「分岐構造を有する低密度ポリエチレン」を「分岐状低密度ポリエチレン」と称する場合も有る。
【0038】
発泡性に優れるとの観点から、ポリエチレン系樹脂の主成分は、分岐状低密度ポリエチレンであることが好ましく、密度が935kg/m3以下の分岐状低密度ポリエチレンであることがより好ましい。「ポリエチレン系樹脂の主成分」とは、ポリエチレン系樹脂100重量%中、50重量%超を占める成分を意図する。
【0039】
発泡性に優れるとの観点から、ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂100重量%中、分岐状低密度ポリエチレンを、60重量%以上含むことが好ましく、70重量%以上含むことがより好ましく、80重量%以上含むことがさらに好ましく、90重量%以上含むことが特に好ましい。
【0040】
分岐状低密度ポリエチレン系樹脂の密度の下限は特に限定されないが、例えば、890kg/m3である。発泡性に優れるとの観点から、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂の密度は、900kg/m3~930kg/m3が好ましく、910kg/m3~925kg/m3がより好ましく、913kg/m3~923kg/m3が特に好ましい。
【0041】
ポリエチレン系樹脂は、未使用のポリエチレン系樹脂であってもよいし、再生ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン系樹脂発泡体の製造過程で発生した端材や不良品を粉砕して得られた再生ポリエチレン系樹脂(当該再生ポリエチレン系樹脂は収縮防止剤を含み得る))であってもよいし、これらの混合物であってもよい。再生ポリエチレン系樹脂は多くの水分を含み得る。当該水分は、押出発泡体の平均気泡径を大きくする。本発明の一実施形態は、水分除去剤によって当該水分を適度に除去することができるので、多くの水分を含んでいる再生ポリエチレン系樹脂を用いたとしても、押出発泡体の平均気泡径を小さくすることができる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂組成物に含まれる未使用のポリエチレン系樹脂の量は、限定されない。ポリエチレン系樹脂組成物は、例えば、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、または、95重量%以上の未使用のポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。平均気泡径がより小さい押出発泡体を実現するという観点から、ポリエチレン系樹脂組成物に含まれる未使用のポリエチレン系樹脂の量は、多い方が好ましい。
【0043】
ポリエチレン系樹脂組成物に含まれる再生ポリエチレン系樹脂の量は、限定されない。ポリエチレン系樹脂組成物は、例えば、5~90重量%、10~90重量%、または、20~90重量%の再生ポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。
【0044】
再生ポリエチレン系樹脂の含水率は、限定されず、例えば、当該再生ポリエチレン系樹脂の重量を基準として、100~5000ppm、500~5000ppm、500~4000ppm、または、1000~3000ppmであってもよい。
【0045】
再生ポリエチレン系樹脂に含まれる、ポリエチレン系樹脂の種類は特に限定されない。例えば、分岐状低密度ポリエチレン系樹脂を含んでいる再生ポリエチレン系樹脂を使用する場合、当該分岐状低密度ポリエチレン系樹脂の量も、ポリエチレン系樹脂が含有する分岐状低密度ポリエチレン系樹脂の量に含まれる。
【0046】
ポリエチレン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、および、ポリオレフィン系樹脂以外の合成樹脂が挙げられる。
【0047】
ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン単独重合体、ポリプロピレン/エチレンブロック共重合体、ポリプロピレン/エチレンランダム共重合体、プロピレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/1-ブテン/プロピレン共重合体、プロピレン/塩素化ビニル共重合体、プロピレン/無水マレイン酸共重合体、高い溶融張力を有する長鎖分岐ポリプロピレン、イソプレン変性ポリプロピレン、超高分子量成分を含むポリプロピレンなどが挙げられる。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂以外の合成樹脂としては、例えば、(a)酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、(b)ポリアミド/ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー、および、(c)ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマー、等が挙げられる。
【0049】
ポリエチレン系樹脂組成物は、当該ポリエチレン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分100重量%中、ポリエチレン系樹脂を50重量%以上含むことが好ましく、60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがより好ましく、75重量%以上含むことがより好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、85重量%以上含むことがさらに好ましい。当該構成によると、(a)ポリエチレン系樹脂組成物が発泡性に優れ、かつ(b)平均気泡径が小さく、かつ独立気泡率が高い押出発泡体を提供できる、という利点を有する。
【0050】
ポリエチレン系樹脂組成物の水分率は、限定されず、例えば、5~5000ppm、10~3000ppm、または、50~1500ppmであってもよい。本発明の一実施形態は、水分除去剤によって水分を適度に除去することができるので、ポリエチレン系樹脂組成物の水分率が上述した値であっても、押出発泡体の平均気泡径を小さくすることができる。
【0051】
収縮防止剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪族アミン、脂肪酸アミドなどを使用できる。前記脂肪酸エステルとしては、炭素数8~30の脂肪酸と水酸基を3~7個有する多価アルコールとのエステルが好ましい。炭素数8~30の脂肪酸としては、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコ酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などが挙げられる。水酸基を3~7個有する多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エリトリットアラビット、キシリマアット、マンニット、ソルビット、ソルビタンなどが挙げられる。使用する物理発泡剤と空気との置換が好適に実施可能との観点から、好ましい脂肪酸エステルとしては、より具体的に、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘン酸モノグリセライド、または、ステアリン酸モノグリセライドとベヘン酸モノグリセライドとの混合物)を挙げることができる。
【0052】
収縮防止剤は、脂肪酸エステルを含むことが好ましく、脂肪酸エステルである(脂肪酸エステルのみから構成される)ことがより好ましい。収縮防止剤は、グリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましく、グリセリン脂肪酸エステルである(グリセリン脂肪酸エステルのみから構成される)ことがより好ましい。収縮防止剤は、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘン酸モノグリセライド、および、ステアリン酸モノグリセライドとベヘン酸モノグリセライドとの混合物からなる群から選択される1種以上を含んでいてもよく、当該群から選択される1種以上であっても(1種以上のみから構成されても)よい。
【0053】
(気泡核形成剤)
工程Aに用いられる押出発泡用樹脂組成物には、上述したポリエチレン系樹脂組成物以外に、気泡核形成剤が含まれる。
【0054】
気泡核形成剤としては、熱分解型発泡剤、有機酸(塩)および無機物(例えばタルクなど)などが挙げられる。本明細書において、「有機酸(塩)」とは「有機酸および/または有機酸塩」を意味する。気泡核形成剤は、熱分解型発泡剤および/または有機酸(塩)を含むことが好ましい。気泡核形成剤が熱分解型発泡剤および/または有機酸(塩)を含む場合、気泡核形成剤が熱分解型発泡剤および/または有機酸(塩)を含まず無機物(例えばタルクなど)のみを含む場合と比較して、押出発泡体の平均気泡径をより容易に小さくすることができる。平均気泡径がより小さい押出発泡体を実現するという観点から、気泡核形成剤は、熱分解型発泡剤および有機酸(塩)を含むことがより好ましく、熱分解型発泡剤と有機酸(塩)との混合物からなることがさらに好ましい。より具体的に、気泡核形成剤は、熱分解型発泡剤とクエン酸(塩)とを含むことがさらに好ましい。
【0055】
熱分解型発泡剤としては、例えば、ADCA(アゾジカルボンアミド)、DPT(N,N’-ジニトロペンタメチレンテトラミン)、OBSH(4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)、炭酸水素塩、炭酸塩等が挙げられる。熱分解型発泡剤としては、炭酸水素塩、炭酸塩、または炭酸水素塩と炭酸塩との混合物、が好ましい。炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0056】
有機酸(塩)としては、シュウ酸(塩)、乳酸(塩)、コハク酸(塩)、リンゴ酸(塩)、クエン酸(塩)などが挙げられる。気泡径の微細化効果が高いことから、有機酸(塩)としては、クエン酸(塩)が好ましい。クエン酸(塩)としては、クエン酸、クエン酸モノナトリウム、クエン酸トリナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、クエン酸カリウム等が挙げられる。
【0057】
気泡核形成剤としては、取り扱いが容易であり、かつ気泡核の生成効果が高いことから、炭酸水素塩とクエン酸(塩)との混合物、炭酸塩とクエン酸(塩)との混合物、および炭酸水素塩および炭酸塩とクエン酸(塩)との混合物からなる群より選択される1種以上の混合物が好ましく、炭酸水素塩とクエン酸(塩)との混合物がより好ましく、炭酸水素ナトリウムとクエン酸モノナトリウムとの混合物が特に好ましい。
【0058】
気泡核形成剤における熱分解型発泡剤と有機酸(塩)との含有比率は、熱分解型発泡剤および有機酸(塩)の総量を100重量%とすると、熱分解型発泡剤が10重量%~90重量%および有機酸(塩)が90重量%~10重量%が好ましく、熱分解型発泡剤が20重量%~85重量%および有機酸(塩)が80重量%~15重量%がより好ましく、熱分解型発泡剤が30重量%~80重量%および有機酸(塩)が70重量%~20重量%が更に好ましい。当該構成によると、少量の気泡核形成剤によって、効率良く造核効果が得られ易い、という利点を有する。
【0059】
本製造方法において、気泡核形成剤の使用量を多くするほど、押出発泡体の気泡径は小さくなる傾向にある。ただし、本製造方法において、気泡核形成剤の使用量が少ないほど、製造コストが安価となり、気泡核形成剤の分解物による異物発生のリスクが低くなる。よって、本製造方法における気泡核形成剤の使用量は、ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.03重量部~1.50重量部が好ましく、0.08重量部~1.20重量部がより好ましく、0.10重量部~1.00重量部が更に好ましい。
【0060】
本製造方法において、気泡核形成剤としては、粉体状の気泡核形成剤を直接使用しても良く、原料樹脂との混合性およびハンドリング性を考慮した気泡核形成剤のマスターバッチを使用しても良い。気泡核形成剤のマスターバッチとしては、市販品を使用することもでき、例えば、永和化成工業製ポリスレンEE275F、大日精化工業製ファインセルマスター SSC PO217K等が挙げられる。
【0061】
(水分除去剤)
工程Aでは、上述したポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、水分除去剤が、0.01重量部以上、5.00重量部未満、より好ましくは0.05重量部以上、5.00重量部未満、より好ましくは0.10重量部以上、5.00重量部未満、添加される。なお、これらの各数値範囲において、上限値「5.00重量部未満」は、「4.00重量部以下」、または、「3.00重量部以下」であってもよい。当該構成によれば、水分を適度に除去することが可能となり、その結果、ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径を小さくすることができる。
【0062】
水分除去剤としては、水分を吸着し得る物質、または水分と反応して水分を消費し得る物質が挙げられる。水分を吸着し得る物質としては、活性炭、シリカゲル、合成ゼオライト系吸着材が挙げられ、水分と反応して水分を消費し得る物質としては、アルカリ金属の酸化物である酸化カリウム、酸化セシウム、酸化ナトリウム、またはアルカリ土類金属の酸化物である酸化カルシウム、酸化マグネシウムが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。これらの水分除去剤の中では、取り扱いが容易であることおよび効率的に水分を除去するという観点から、合成ゼオライト系吸着材および/またはアルカリ土類金属の酸化物が好ましく、酸化カルシウムおよび/または合成ゼオライトがより好ましい。酸化カルシウムは、合成ゼオライトと比較して、安価であるという利点も有する。
【0063】
本発明者らは、鋭意検討の過程において、水分除去剤の添加量は、原料であるポリエチレン系樹脂組成物の水分率を考慮して適切に選択することが好ましいという新規知見を独自に得た。より具体的に、本発明者は、工程Aでは、水分除去剤の添加量が、下記式(1)を満足することが好ましいという新規知見を独自に得た:
A=5×10-4×B+K、-0.20≦K≦0.75 ・・・(1)
A:水分除去剤の添加量[重量部]
B:ポリエチレン系樹脂組成物の水分率[ppm]
K:係数[-]。
【0064】
換言すれば、工程Aにおける、水分除去剤の添加量とポリエチレン系樹脂組成物の水分率とを、式「A=5×10-4×B+K」で表した場合、係数であるKが特定の範囲(-0.20≦K≦0.75)であることが好ましい。上述した式(1)において、「-0.20≦K≦0.75」は、「-0.18≦K≦0.50」であることがより好ましく、「-0.16≦K≦0.40」であることがより好ましく、「-0.14≦K≦0.35」であることがより好ましく、「-0.12≦K≦0.30」であることがより好ましく、「-0.08≦K≦0.20」であることが最も好ましい。当該構成であれば、平均気泡径がより小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体を実現することができる。
【0065】
(発泡剤)
工程Aでは、押出発泡用樹脂組成物を押出機にて発泡剤とともに溶融混錬する。
【0066】
発泡剤としては、例えば、(a)(a-1)プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;(a-2)シクロペンタン、シクロブタン等の脂環式炭化水素類;(a-3)ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類;(a-4)メタノール、エタノール等のアルコール類;(a-5)空気、窒素、炭酸ガス等の無機ガス;並びに(a-6)水、などの物理系発泡剤、並びに、(b)重炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの熱分解型発泡剤を含む化学系発泡剤、等が挙げられる。発泡剤としては、これらのうちでも、所望の発泡倍率、所望の独立気泡率、および所望の平均気泡径が得られやすいことから物理系発泡剤が好ましく、脂肪族炭化水素類がより好ましく、特にノルマルブタンおよび/またはイソブタンが好ましい。
【0067】
上述した発泡剤は1種を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、上述した発泡剤は、物理系発泡剤のみを含んでいてもよいし、物理系発泡剤と物理系発泡剤以外の発泡剤とを含んでいてもよい。
【0068】
発泡剤の使用量は、特に限定されない。発泡剤の使用量は、発泡剤の種類および目標とする押出発泡体の発泡倍率に応じて、適宜調整すればよい。本製造方法において、使用する発泡剤の合計使用量は、ポリエチレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.5重量部~20.0重量部が好ましく、1.0重量部~15.0重量部がより好ましく、1.0重量部~10.0重量部がさらに好ましく、1.0重量部~5.0重量部が最も好ましい。
【0069】
(押出機による溶融混練)
工程Aでは、押出機として、二軸押出機と単軸押出機とを連結したタンデム押出機、または、単軸押出機と単軸押出機とを連結したタンデム押出機を使用してもよい。工程Aの具体的な態様としては、例えば、次の(A1)~(A3)の操作を順に行う方法が挙げられる:(A1)ポリエチレン系樹脂組成物、気泡核形成剤、および水分除去剤を第1押出機(一段目の押出機、二軸)に供給する;(A2)供給された原料を混錬に適した温度(例えば、ポリエチレン系樹脂の融点以上の温度)で溶融混錬する;(A3)得られた混合物(溶融混練物)に対して、第1押出機の途中から、発泡剤を圧入し、溶融樹脂を調製する。
【0070】
〔2-2.工程B〕
工程Bは、工程Aにて得られた溶融樹脂を押出発泡させる工程である。
【0071】
工程Bの具体的な態様としては、例えば、次の(A4)~(A6)の操作を順に行う方法が挙げられる:(A4)得られた溶融樹脂を第1押出機から、第1押出機に連結された第2押出機(二段目の押出機、単軸)に供給する;(A5)第2押出機において、溶融樹脂を所望の温度になるように冷却する;(A6)第2押出機に備えられたダイスから、溶融樹脂を低圧(例えば、大気圧)環境下へ吐出して、溶融樹脂を発泡させて押出発泡体を得る。工程Bでは、(i)第2押出機に加えて、第2押出機に連結された冷却装置(例えばスタティックミキサー)をさらに使用してもよく、(ii)第2押出機に代えて、第1押出機に連結された冷却装置をさらに使用してもよい。冷却装置は、例えば第2押出機とともに、溶融樹脂を所望の温度になるように冷却する機能を担いうる。
【0072】
〔3.ポリエチレン系樹脂押出発泡体〕
本発明の一実施形態に係るポリエチレン系樹脂押出発泡体は、本発明の一実施形態に係るポリエチレン系樹脂押出発泡体の製造方法によって得られ、かつ、下記(a)および(b)を満足する、ポリエチレン系樹脂押出発泡体である:
(a)前記ポリエチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径が、650μm以下であり、
(b)前記ポリエチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率が、70%以上である。
【0073】
「本発明の一実施形態に係るポリエチレン系樹脂押出発泡体」を、「本押出発泡体」と称する場合もある。
【0074】
本押出発泡体は、(i)原料となる物質Aであって、未反応にて残留する物質Aと、(ii)反応によって生じる、新たな物質Bと、を含むと考えられる。当該物質Aおよび物質Bは、各々、多くの物質を包含すると考えられる。本押出発泡体において、何れの物質が重要であるのか解析して特定することには、不可能・非実際的事情が存在する。
【0075】
(発泡倍率)
本押出発泡体の発泡倍率は、限定されず、例えば、5倍~30倍が好ましく、5倍~20倍がより好ましく、10倍~20倍がさらに好ましく、10倍~15倍が特に好ましい。当該構成によると、押出発泡体は、軽量性、製品のグリップ性および緩衝性等のバランスに優れるという利点を有する。また、当該構成によると、押出発泡体の主要な用途の一つである緩衝材にするための押出発泡体の加工性が良好となる。その結果、押出発泡体を加工して緩衝材とし、軽量部品から重量部品まで幅広い搬送品の緩衝材として使用することが可能となる。本明細書において、押出発泡体の発泡倍率は、後述する実施例に記載の測定方法により得られた値である。
【0076】
(平均気泡径)
本押出発泡体の平均気泡径は、650μm以下が好ましく、630μm以下がより好ましく、600μm以下がより好ましく、550μm以下がより好ましく、500μm以下がより好ましく、450μm以下がより好ましく、400μm以下がより好ましく、350μm以下が特に好ましい。本押出発泡体の平均気泡径の下限値は、100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上が特に好ましい。当該構成によると、(a)押出発泡体を、所望の独立気泡率および発泡倍率に調整し易い、および、(b)押出発泡体が、押出発泡体の主要な用途である緩衝材用途において、製品保護に優れる、という利点を有する。本明細書において、押出発泡体の平均気泡径は、後述する実施例に記載の測定方法により得られた値である。
【0077】
(独立気泡率)
本押出発泡体の独立気泡率は、限定されず、例えば、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、78%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、83%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。当該構成によると、押出発泡体の、緩衝材としての緩衝性能、繰り返し使用性能、および、打ち抜き加工時の寸法回復性、が良好となるという利点を有する。
【実施例0078】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の一実施形態を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
実施例および比較例において、各種の評価方法に用いられた試験法および判定基準は次の通りである。
【0080】
<メルトフローレート(MFR)>
ポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K 7210(1999)記載のA法の規定に準拠して測定した。具体的には、メルトインデクサーS-01(東洋精機製作所製)を用い、190℃、一定荷重(2.16kg)下にて、ダイから単位時間に押し出される樹脂量(g)を測定した。得られた樹脂量(g)を10分間に押し出される樹脂量(g)に換算した値を算出した。
【0081】
なお、前記単位時間とは、メルトフローレートが0.5g/10分を超え1.0g/10分以下の場合は120秒間、1.0g/10分を超え3.5g/10分以下の場合は、60秒間、3.5g/10分を超え10g/10分以下の場合は30秒間、10g/10分を超え25g/10分以下の場合は10秒間、25g/10分を超え100g/10分以下の場合は5秒間、100g/10分を超える場合は3秒間とした。
【0082】
ダイから単位時間に押し出される樹脂量を樹脂1ユニットとした。MFRの測定では、樹脂3ユニットを採取し、各々のユニットに対して、10分間に押し出される樹脂量(g)に換算した値を算出し、その平均値をポリエチレン系樹脂のMFRとした。一回の測定で3ユニットの樹脂量を採取できない場合は、3ユニット採取できるまで測定を継続するものとした。ある単位時間で測定した際のメルトフローレートが対応する範囲に無かった場合は、そのメルトフローレートに応じた単位時間で再度測定するものとした。
【0083】
<水分率>
各樹脂の水分率は、微量水分測定装置(CA-200/VA-230、三菱化学アナリテック製)を使用し、設定温度180℃にて測定した。測定に使用するサンプル量は、測定される水分量が100~500μgとなるように調整した。
【0084】
<独立気泡率>
実施例および比較例で得られた各押出発泡体から、長さ30mm、幅20mm、厚み20mmの試験片を3つ切り出した。当該試験片を用い、ASTM D2856に記載の方法に準拠し、エアピクノメータ(東京サイエンス株式会社製空気比較式比重計モデル1000)を用いて、試験片の体積Vc(cm3)を測定した。次に測定後の同じ試験片をメスシリンダー内のエタノール中に沈めた。メスシリンダーの液面(エタノール面)上昇分から、見かけ上の体積Va(cm3)を求めた。このような見かけ上の体積の測定方法を、水没法と称する場合もある。下記式に従って独立気泡率(%)を求めた:
独立気泡率(%)=(Vc/Va)×100。
【0085】
なお、測定は、1つの押出発泡体あたり、3つの試験片について実施し、3つの測定値の相加平均値を押出発泡体の独立気泡率とした。
【0086】
<押出発泡体密度>
前記独立気泡率の測定で用いた試験片の重量W(kg)と、前記水没法によって求めた体積Va(m3)とを用いて、押出発泡体密度を下記式により求めた:
押出発泡体密度(kg/m3)=W/Va。
【0087】
なお、測定は、1つの押出発泡体あたり、3つの試験片について実施し、3つの測定値の相加平均値を押出発泡体密度とした。
【0088】
<発泡倍率>
実施例および比較例で使用した、原料樹脂(例えば、(i)ポリエチレン系樹脂、または(ii)ポリエチレン系樹脂と再生ポリエチレン系樹脂との混合物)の樹脂密度をJIS K 7112に準じて測定した。前記押出発泡体密度(kg/m3)と樹脂密度(kg/m3)とを用いて、発泡倍率を下記式により求めた:
発泡倍率(倍)=樹脂密度/押出発泡体密度。
【0089】
<押出発泡体サイズ>
実施例および比較例で得られた押出発泡体について、厚さ方向に垂直な面を面aとし、押出方向に垂直な面を面bとし、幅方向に垂直な面を面cとした。ここで、押出発泡体の厚さ方向とは、押出発泡体の押出方向に垂直な断面における短手方向ともいえ、押出発泡体の幅方向とは、押出発泡体の押出方向に垂直な断面における長手方向ともいえる。実施例および比較例で得られた押出発泡体を面bに沿って切断し、押出方向の長さが20mmのサンプルAを3つ作製した。サンプルAについて、厚さ方向の長さおよび幅方向の長さを測定した。厚さ方向の長さについて具体的に説明する。各サンプルAにつき、幅方向の中央および幅方向の両端部から30mm内側、の合計3箇所について、厚さ方向の長さを測定した。サンプルA3個につき各々3箇所で合計9個の測定値の平均値を、押出泡体の厚さ方向の長さ(厚さ寸法)とした。幅方向の長さについて具体的に説明する。各サンプルAにつき、幅方向の長さを測定した。サンプルA3個の値の平均値を、押出発泡体の幅方向の長さ(幅寸法)とした。また、得られた厚さ寸法と幅寸法との積を算出し、当該積を断面積とした。
【0090】
<平均気泡径>
押出発泡体サイズの測定で作製した3つのサンプルAの各々から、下記に示す各測定点(5箇所)について、各辺が5~10mmの立方体(サンプルBとする。)を切り出した。サンプルBを、上述した面a、bおよびcの各々と平行な面に沿って、両刃カミソリ[フェザー製、ハイステンレス両刃]を用いて、気泡膜(セル膜)が破壊されないように充分注意して切断した。得られた切断面(3面)をマイクロスコープ[キーエンス社製、VHX-900]を用いて観察し、各々の切断面の画像を得た。得られた各画像において、長さ4000μmの線分を引き、該線分が通る気泡数nを測定し、下記式により気泡径を算出した:
気泡径(μm)=4000/n。
【0091】
3つのサンプルAの各測定点(5箇所)について得られたサンプルB(15個)の3つの切断面の各々の画像から得られた気泡径の相加平均値を平均気泡径(μm)とした。すなわち、45面(3面×5箇所×3つのサンプルA)の気泡径の相加平均値を平均気泡径(μm)とした。
【0092】
測定点を、サンプルAに対して説明する。下記に示すように、1つのサンプルAに対して5か所測定した:
(a)サンプルAの面bにおける、幅方向および厚さ方向の中央部(1箇所、「測定点A」とする);
(b)サンプルAの面bにおける、厚さ方向の中央部の、測定点Aと幅方向端部との中央部(幅方向両端部につき、2箇所);
(c)サンプルAの面bにおける、幅方向の中央部の、測定点Aと厚さ方向端部との中央部(厚さ方向両端部につき、2箇所)。
【0093】
<K値>
水分除去剤の添加量A[重量部](後述する表1を参照)と、ポリエチレン系樹脂組成物の水分率B[ppm](後述する表1を参照)とを、式「A=5×10-4×B+K」へ代入し、係数K[-]を算出した。
【0094】
以下の実施例および比較例において用いた原料は、次の通りである。
【0095】
<ポリエチレン系樹脂>
ポリエチレン系樹脂としては、分岐状低密度ポリエチレン「C470」(宇部丸善ポリエチレン製、MFR2.0g/10分、密度918kg/m3、融点Tm109℃)を使用した。当該樹脂の水分量は実質0ppmであった。
【0096】
<収縮防止剤>
収縮防止剤としては、理研ビタミン製「ELB348」(グリセリン脂肪酸エステルを含むマスターバッチ)を使用した。
【0097】
<気泡核形成剤>
気泡核形成剤としては、熱分解型発泡剤と有機酸(塩)との混合物である、永和化成製「EE275F」を使用した。EE275Fは、炭酸水素ナトリウムとクエン酸(塩)との混合物を含むマスターバッチである。
【0098】
<水分除去剤>
a)「Bell CML EO」(近江化学製、酸化カルシウムを50重量%含むマスターバッチ):
b)「モレキュラーシーブ3A」(ユニオン昭和製、合成ゼオライト)を50重量%含むマスターバッチ(キャリア樹脂は低密度ポリエチレン)。
【0099】
<発泡剤>
発泡剤としては、イソブタンを使用した。
【0100】
<再生ポリエチレン系樹脂>
以下製法により得られた押出発泡体を粉砕処理したものを押出機に供給し、ストランド状に押し出し、当該ストランドを、水槽を通して冷却した後にペレタイザーにてカットし、ペレット化した。当該ペレットを乾燥機にて目標水分率に調整したものを、再生ポリエチレン系樹脂として使用した。(i)97.6重量%のポリエチレン系樹脂「C470」、2.4重量%の収縮防止剤「ELB348」からなる、100重量部のポリエチレン系樹脂組成物、および、(ii)2重量部の気泡核形成剤を配合して、原料を準備した。準備した原料を、タンデム押出機装置の第1押出機に供給した。ここで、タンデム押出機装置としては、第1押出機として口径40mmの二軸押出機と、第2押出機として口径90mmの単軸押出機とが連結されたタンデム押出機装置を使用した。第1押出機は、220℃に設定されており、すなわち第1押出機に供給した原料を220℃にて溶融混錬した。ここで、得られた溶融混練物に対して、発泡剤としてイソブタン3.5重量部を、第1押出機の途中から圧入した。かかる操作により、溶融樹脂を調製した。
【0101】
続いて、得られた溶融樹脂を第1押出機から第2押出機(口径90mm)に供給した。その後、第2押出機中で、溶融樹脂を、バレル温度およびスクリュ回転数の調整により樹脂温度を発泡に適した温度にまで冷却した。続いて、第2押出機の先端に取り付けられたダイスから、大気圧下に50kg/時間の吐出量にて溶融樹脂を吐出して、押出発泡した。ここで、ダイスは矩形の形状を有しており、ダイスの開口部の大きさは50mm×5mmであった。
【0102】
続いて、ダイスから押出された発泡体を成形ダイで矩形化するとともに、当該発泡体を成形機で引取速度を調整しつつサイズを調整し、幅140mmおよび厚さ55mmの板状に成型し、板状の押出発泡体を得た。
【0103】
(実施例1)
ポリエチレン系樹脂「C470」、収縮防止剤「ELB348」からなるポリエチレン系樹脂組成物、気泡核形成剤、および水分除去剤を表1に示す配合量で準備した。準備した原料を、タンデム押出機装置の第1押出機に供給した。ここで、タンデム押出機装置としては、第1押出機として口径40mmの二軸押出機と、第2押出機として口径90mmの単軸押出機とが連結されたタンデム押出機装置を使用した。第1押出機は、220℃に設定されており、すなわち第1押出機に供給した原料を220℃にて溶融混錬した。ここで、得られた溶融混練物に対して、発泡剤としてイソブタン3.5重量部を、第1押出機の途中から圧入した。かかる操作により、溶融樹脂を調製した。
【0104】
続いて、得られた溶融樹脂を第1押出機から第2押出機(口径90mm)に供給した。その後、第2押出機中で、溶融樹脂を、バレル温度およびスクリュ回転数の調整により樹脂温度を発泡に適した温度にまで冷却した。続いて、第2押出機の先端に取り付けられたダイスから、大気圧下に50kg/時間の吐出量にて溶融樹脂を吐出して、押出発泡した。ここで、ダイスは矩形の形状を有しており、ダイスの開口部の大きさは50mm×5mmであった。
【0105】
続いて、ダイスから押出された発泡体を成形ダイで矩形化するとともに、当該発泡体を成形機で引取速度を調整しつつサイズを調整し、幅140mmおよび厚さ55mmの板状に成型し、板状の押出発泡体を得た。得られた板状の押出発泡体は、平均気泡径が小さく、かつ、独立気泡率が高かった。得られた押出発泡体の各種物性の測定結果を、表1に示す。
【0106】
(実施例2~9)
表1の通りに各配合を変更した以外は、実施例1と同じ方法にて板状の押出発泡体を得た。得られた板状の押出発泡体は、平均気泡径が小さく、かつ、独立気泡率が高かった。得られた押出発泡体の各種物性の測定結果を、表1に示す。
【0107】
(比較例1~2)
水分除去剤の量を表1に記載の量に変更した以外は、実施例1と同じ方法にて板状の押出発泡体を得た。得られた押出発泡体について各種物性を測定および評価した結果を表1に示す。
【0108】
表1に示される通り、実施例1~9の押出発泡体は、平均気泡径が小さく、かつ、独立気泡率が高かった。一方、比較例1~2の押出発泡体は、独立気泡率は高いものの、平均気泡径が大きかった。
【0109】
本発明の一実施形態によれば、平均気泡径が小さいポリエチレン系樹脂押出発泡体を提供できる。そのため、本発明の一実施形態は、各種緩衝材、包装材および断熱材などに好適に利用できる。