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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148764
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】車両用空調制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B60H1/00 101F
B60H1/00 101Q
B60H1/00 102J
B60H1/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056961
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 修生
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211DA12
3L211EA04
3L211EA12
3L211EA16
3L211EA21
3L211EA28
3L211FB03
3L211GA10
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、発熱源やブロア風量に影響を受けずに車室内の内気温推定を行って空調制御を行うことができる車両用空調制御装置を提供する。
【解決手段】車両における車室内の空調を制御する車両用空調制御装置1であって、車室内における温度を測定する赤外センサなどの温度測定部26と、温度測定部26により、車室内における車両の温度及び車室内に有する物体の温度を取得する温度取得部と、車両の温度及び物体の温度と、車室内空調の吹出口の温度の状態とに応じて車室内における推定内気温を決定する推定内気温決定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における車室内の空調を制御する車両用空調制御装置であって、
前記車室内における温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部により、前記車室内における前記車両の温度及び前記車室内に有する物体の温度を取得する温度取得部と、
前記車両の温度及び前記物体の温度と、車室内空調の吹出口温度の状態とに応じて前記車室内における推定内気温を決定する推定内気温決定部と、
を備える車両用空調制御装置。
【請求項2】
前記温度測定部は、赤外線センサであり、
前記温度取得部は、前記車室内における前記車両の表面温度及び前記車室内の乗員を含む物体の表面温度を取得する、請求項1に記載の車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記推定内気温と前記車室内の前記物体の表面温度とをもとに体感温度を算出する体感温度算出部と、
ユーザ設定温度である目標体感温度に応じて、複数有する前記空調の吹出口の中から空調風を吹き出す1以上の吹出口を判定する吹出口判定部と、
前記吹出口判定部が判定した1以上の吹出口から空調風の吹出を行う空調制御部と、
を備える、請求項1又は2に記載の車両用空調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で、発熱源やブロア風量に影響を受けずに車室内の内気温推定を行って空調制御を行うことができる車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調(以下、エアコンという)は、制御手段により、ダクト内に配設されたブロアモータを駆動して空調風を発生し、内気温度センサにより検出される車室内温度が予め設定された目標温度になるように、エアミックスドアなどの温度調整手段により車室に吹き出す空調風の温度を制御するようにしている。
【0003】
ここで、エアコンのコントローラを車室内のインストルメントパネルに設置し、コントローラの筐体前面に配設された複数のエアコンの操作スイッチを車両の乗員が操作することにより、目標温度の設定や、空調風の吹出強度や吹出口の切替などの設定がなされ、コントローラの筐体前面に配設された液晶ディスプレイによりエアコンの作動状況が表示される。
【0004】
車種によっては、コントローラ筐体内にサーミスタなどの内気温度センサが配設されることがある。例えば、コントローラの筐体前面の右端部に車室内に連通するスリット状の開口が形成され、この開口とエアコンのダクト内部とがアスピレータホースなどの連通管により連通され、連通管の開口側の端部に内気温度センサが配置され、エアコンのブロアモータの作動により、車室に空調風が吹き出されて連通管内が負圧になることによって、車室内の空気が連通管内に流入し、内気温度センサにより開口から連通管内に流入する車室内の空気の温度である車室内温度が検出される。そして、エアコンの自動制御モードでは、ユーザ操作によるユーザ設定温度や内気温などから、目標吹出温度を演算し、この目標吹出温度になるよう、コンプレッサや各種サーボモータの制御を行っている。
【0005】
ここで、コントローラの筐体内部とエアコンのダクト内部とを連通管により連通し、連通管の開口側端部にサーミスタなどの内気温度センサを配設する従来の構成では、コントローラの筐体内部の電子部品や光源など発熱源が通電により発熱して筐体内部に熱がこもり、筐体内部の温度が上昇するため、コントローラ筐体内に内気温度センサを配置する場合、内気温度センサが検出する温度に影響を与えてしまう。逆に、エアコンのブロアモータの作動に伴う負圧によって、筐体内にこもっていた熱が筐体からダクト側に放出されるため、筐体内にこもっていた熱が筐体内から放出されて筐体自体の放熱の影響も受けることになる。これにより、発熱の状態及び放熱の状態により内気温を正確に検出できない場合が発生する。一方、ブロア風量が少なくなり連通管の負圧が不足すると、車室内空気の吸引ができず、発熱状態のコントローラ近傍の温度を検出し、正確な内気温測定が困難になる。
【0006】
そこで、特許文献1では、発熱源の発熱量及び内気温度センサ付近の放熱量を考慮して内気温度センサが検出する内気温度を補正する車両用空調制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-138580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された内気温度センサは、発熱源の発熱量及び内気温度センサ付近の放熱量を考慮して内気温度を補正するようにしているため、内気温度センサの構造及び設置場所に左右されて複雑な温度補正を行う必要があるとともに、設置場所の自由度が低いという課題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、発熱源やブロア風量に影響を受けずに車室内の内気温推定を行って空調制御を行うことができる車両用空調制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両用空調制御装置は、車両における車室内の空調を制御する車両用空調制御装置であって、前記車室内における温度を測定する温度測定部と、前記温度測定部により、前記車室内における前記車両の温度及び前記車室内に有する物体の温度を取得する温度取得部と、前記車両の温度及び前記物体の温度と、車室内空調の吹出口温度の状態とに応じて前記車室内における推定内気温を決定する推定内気温決定部と、を備える。
【0011】
また、本発明に係る車両用空調制御装置は、上記の発明において、前記温度測定部は、赤外線センサであり、前記温度取得部は、前記車室内における前記車両の表面温度及び前記車室内の乗員を含む物体の表面温度を取得する。
【0012】
また、本発明に係る車両用空調制御装置は、上記の発明において、前記推定内気温と前記車室内の前記物体の表面温度とをもとに体感温度を算出する体感温度算出部と、ユーザ設定温度である目標体感温度に応じて、複数有する前記空調の吹出口の中から空調風を吹き出す1以上の吹出口を判定する吹出口判定部と、前記吹出口判定部が判定した1以上の吹出口から空調風の吹出を行う空調制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で、発熱源やブロア風量に影響を受けずに車室内の内気温推定を行って空調制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態にかかる車両用空調制御装置の概要構成を示す模式図である。
図2図2は、エアコンECUの内部構成を示す機能ブロックである。
図3図3は、温度取得部が取得した温度分布図の一例を示す図である。
図4図4は、エアコンECUによる空調制御処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、推定内気温の補正処理の詳細フローチャートである。
図6図6は、変形例による推定内気温の補正処理の詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態である車両用空調制御装置について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<全体構成>
図1は、本実施形態にかかる車両用空調制御装置1の概要構成を示す模式図である。図1に示すように、車両用空調制御装置1は、車室内に空調風を送るダクト2内に、後述するエアコンECU(Electroni Control Unit)29により複数段の強弱に制御されるブロアモータ3によって駆動されるブロアファン4、エバポレータ5、エアミックスドア6、ヒータコア7が空気流路の上流側から順次配設されている。
【0017】
ブロアファン4の上流にあたるダクト2の入口側には、空気導入口である内気導入口9および外気導入口10が形成され、エアコンECU29に設けられた内外気切替スイッチの車両乗員による操作に基づき、エアコンECU29により制御される内外気切替ダンパサーボモータ11により、内気導入口9及び外気導入口10の内側に設けられた内外気切替ダンパ12が駆動され、内気導入口9及び外気導入口10のうちいずれか一方が開放されて他方が閉塞され、内気または外気がダクト2内に導入されるようになっている。
【0018】
エバポレータ5は、冷凍サイクルの途中にあたるブロアファン4の下流側に配設され、エアコンECU29に設けられたエアコン電源スイッチ(以下、エアコンスイッチという)の車両乗員によるオン操作により、図示しないコンプレッサがエンジンに接続されてエンジンの回転により駆動されて冷媒が圧縮され、高温高圧状態となった冷媒が図示しないコンデンサで放熱され、図示しない膨張弁を介してエバポレータ5内に放熱された冷媒が流入して気化することにより、エバポレータ5を通過してダクト2内を流れる空気が熱交換されて冷却される。なお、エバポレータ5の下流にはエバポレータフィンの温度を検出するエバフィン温度センサ13が配置され、エバフィン温度センサ13の検出信号がエアコンECU29に取り込まれる。
【0019】
ヒータコア7は、エバポレータ5の下流側であってダクト2の一部を塞ぐように配設され、パイプを介してエンジン冷却水がヒータコア7の内部を流動しており、内気または外気がヒータコア7を通過することにより加熱されるようになっている。このとき、ヒータコア7の通気入口に設けられたエアミックスドア6が、エアコンECU29により制御されるエアミックスドアサーボモータ14により駆動されて、エアミックスドア6が開閉制御され、ヒータコア7の通気入口の開度が調整され、これによりヒータコア7による内気または外気の加熱温度が制御されるようになっている。
【0020】
ここで、エアミックスドア6によりヒータコア7の通気入口を全閉した状態が、いわゆるMAXクール(開度0%)の制御状態であり、ヒータコア7の通気入口を開いてダクト2内のヒータコア7が配設されていない通路をエアミックスドア6により全閉した状態(通気入口は全開)が、いわゆるMAXホット(開度100%)の制御状態であり、エアミックスドア6がクール側に制御されるとエバポレータ5を通って冷やされた空気がほとんど下流に流れ、エアミックスドア6がホット側に制御されるとエバポレータ5を通った空気がヒータコア7により加熱されてから下流に流れる。
【0021】
ダクト2の最下流部には、デフロスタ吹出口15、フェイス吹出口16、フット吹出口17が形成され、各吹出口はそれぞれエアコンECU29により制御されるサーボモータ18,19,20によりそれぞれ駆動されるダンパ21,22,23によって開閉制御されるようになっている。
【0022】
そして、エアコンECU29に設けられた空調動作モード選択スイッチ(以下単に、モード選択スイッチという)の車両乗員による操作により、自動制御モードとマニュアル制御モードのいずれかが選択されるようになっている。マニュアル制御モードが選択された場合には、エアコンECU29に設けられた吹出モード切替スイッチの操作ごとにエアコンECU29によりサーボモータ18,19,20が制御されて各ダンパ21,22,23の開度が制御され、乗員の上半身に向けて空調風をフェイス吹出口16のみから吹き出すフェイスモード、乗員の上半身および乗員の足元に向けてフェイス吹出口16およびフット吹出口17の両方から空調風を吹き出すバイレベルモード、乗員の足元に向けてフット吹出口17のみから空調風を吹き出すフットモード、乗員の足元およびフロントガラスに向けてフット吹出口17およびデフロスタ吹出口15の両方から空調風を吹き出すフットデフモードに、吹出モードが順次(サイクリック)に切り替えられ、マニュアル制御モードでの空調制御が行われる。
【0023】
また、図1に示すように、フロントガラスの内面のルームミラー(図示省略)付近に日射量を検出する日射量センサ25が配置されるとともに、車室内の温度を検出する温度測定部26、エンジン冷却水の温度を検出するエンジン水温センサ27、車室外の外気温度を検出する外気温度センサ28が設けられており、これらの検出信号がエアコンECU29に取り込まれる。
【0024】
ここで、エアコンECU29は車室内のインストルメントパネルに配設される筐体30内に収容されている。この筐体30前面の左端部には温度測定部26が配置される。温度測定部26は、赤外線センサであり、車室内の温度分布画像を撮像する。なお、温度測定部26は、車室内の温度を非接触式で検出できればよい。また、温度測定部26は、筐体30に設ける必要はなく、車室内の温度分布画像を撮像できればよく、任意の場所に設置することができる。
【0025】
ここで、エアコンECU29は、CPUやメモリを有するマイクロコンピュータにより構成され、図1に示すように、エアコンECU29の筐体30の前面パネルには、エアコンを駆動・停止するためのエアコンスイッチ(エアコン電源スイッチ)32のほか、エアコンの動作モードとして自動制御モードおよびマニュアル制御モードそれぞれを選択するための自動モード選択スイッチ33およびマニュアルモード選択スイッチ34が設けられ、これらのスイッチの操作信号がエアコンECU29に入力されるとともに、デフロスタ吹出口15、フェイス吹出口16、フット吹出口17の開閉状態を切り替えてフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフモードの順に吹出しモードを切り替えるための吹出モード切替スイッチ35、空調温度設定用の温度設定スイッチ36が筐体30の前面パネルに設けられ、これらスイッチの操作信号がエアコンECU29に入力される。
【0026】
さらに、筐体30の前面パネルには、送風量の強弱を複数段で切り替える風量スイッチ37および内外気切替スイッチ38が設けられ、風量スイッチ37および内外気切替スイッチ38の操作信号がエアコンECU29に入力され、風量スイッチ37の操作信号に応じてエアコンECU29によりブロアモータ3の動作が制御され、内外気切替スイッチ38の操作信号に応じて、内気導入口9および外気導入口10のいずれかを開放すべく内外気切替ダンパサーボモータ11が駆動制御され、内外気切替ダンパ12による内気導入口9および外気導入口10の開閉が行われるとともに、上記したように、エアコンECU29により、エアミックスドアサーボモータ14が駆動制御されてエアミックスドア6が開閉制御され、ヒータコア7の通気入口の開度が調整されることにより、ヒータコア7による内気または外気の加熱温度が制御されるようになっている。なお、前面パネルの中央上部には、エアコンの作動状況等を表示する液晶ディスプレイ39が配置される。
【0027】
<エアコンECUの内部構成>
図2は、エアコンECU29の内部構成を示す機能ブロックである。図2に示すように、エアコンECU29は、温度取得部101、推定内気温決定部102、体感温度算出部103、吹出口判定部104及び空調制御部105を有する。なお、温度分布図Dは、温度測定部26を介して温度取得部101が取得したものである。
【0028】
温度取得部101は、温度測定部26を介して、車室内における車両の温度(表面温度)及び車室内に有する乗員を含む物体の温度(表面温度)を取得する。ここで、車両の温度とは、例えば、天井、ガラスなどの車両の枠体を構成する部位の温度である。また、物体の温度とは、例えばシート、乗員(着衣)などの温度である。
【0029】
図3は、温度取得部101が取得した温度分布図Dの一例を示す図である。図3に示すように、温度分布図Dには、天井の領域40、シートの領域41,41a、ガラス窓の領域42,42a、乗員の領域43が含まれ、各領域40~43の表面温度を得ることができる。具体的には、各領域40~43における各画素の平均温度を各領域40~43の表面温度として求める。なお、各領域40~43は、画像のフィルタリング処理、例えばエッジ処理によって領域判定されてもよいし、予め各領域40~43内の矩形領域を設定しておいてもよい。
【0030】
推定内気温決定部102は、車両の温度及び物体の温度と、車室内空調の吹出口の温度の状態とに応じて車室内における推定内気温を決定する。車室内空調の吹出口の温度とは、具体的に、目標吹出温度(TAO)である。
【0031】
体感温度算出部103は、推定内気温決定部102が決定した推定内気温と車室内の物体の表面温度とをもとに、乗員の体感温度を算出する。例えば、領域41のシートの表面温度が推定内気温より高い場合、乗員の体感温度は推定内気温よりも高く算出される。この体感温度の演算は、所定の演算式により算出してもよいし、体感温度マップを用いて算出するようにしてもよい。
【0032】
吹出口判定部104は、ユーザ設定温度である目標体感温度に応じて、複数有する空調の吹出口の中から空調風を吹き出す1以上の吹出口を判定する。例えば、目標体感温度が所定値以下の場合、バイレベルモードでフェイス吹出口16およびフット吹出口17の両方から空調風を吹き出す判定を行い、目標体感温度が冷やす側の温度である場合、フェイスモードでフェイス吹出口16のみから空調風を吹き出す判定を行い、目標体感温度が冷やす側の温度でない場合、フットモードでフット吹出口17のみから空調風を吹き出す判定を行う。
【0033】
空調制御部105は、各種サーボモータ及びコンプレッサなど制御して、体感温度が目標体感温度となるように制御するとともに、吹出口判定部が判定した1以上の吹出口から空調風の吹出を行う。
【0034】
<空調制御処理>
図4は、エアコンECU29による空調制御処理手順を示すフローチャートである。図4に示すように、エアコンECU29はまず、車室内の車両の温度及び車室内の物体の温度を取得する(ステップS101)。すなわち、温度分布図Dを取得する。その後、車両の温度のうち、天井の表面温度から内気温を推定する(ステップS102)。この内気温の推定は、天井の表面温度と内気温との相関関係をもとに行われる。具体的には、内気温推定マップや所定の演算式により求める。
【0035】
その後、推定内気温の補正処理を行って補正後推定内気温を求める(ステップS103)。推定内気温を補正するのは、空調制御により冷やし始めや温め始めの過渡期は、推定内気温と実内気温とが乖離しているからである。具体的には、TAO補正に応じて補正する。
【0036】
その後、補正後推定内気温と物体の表面温度とから、体感温度を算出する(ステップS104)。この体感温度も、補正後推定内気温及び物体の表面温度と、体感温度との相関関係によって求められ、例えば、体感温度マップや所定の演算式によって求める。
【0037】
その後、ユーザ設定温度を目標体感温度として、目標体感温度が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS105)。目標体感温度が所定値以下である場合(ステップS105:Yes)には、吹出口は、ハイレベル(B/L)モードと判定し、フェイス吹出口16およびフット吹出口17の両方から空調風を吹き出す判定を行い(ステップS106)、ステップS110に移行する。
【0038】
一方、目標体感温度が所定値以下でない場合(ステップS105:No)には、さらに、目標体感温度は、冷やす側の温度か否かを判定する(ステップS107)。目標体感温度が冷やす側の温度である場合(ステップS107:Yes)には、吹出口は、フェイス(FACE)モードと判定し、フェイス吹出口16のみから空調風を吹き出す判定を行い(ステップS108)、ステップS110に移行する。
【0039】
また、目標体感温度は、冷やす側の温度でない場合(ステップS107:No)には、吹出口は、フット(FOOT)モードと判定し、フット吹出口17のみから空調風を吹き出す判定を行い(ステップS109)、ステップS110に移行する。
【0040】
その後、ステップS110では、各種サーボモータ及びコンプレッサなど制御して、体感温度が目標体感温度となるように制御するとともに、判定した吹出口により空調風を吹き出す空調制御を行って、本処理を終了する。なお、本処理は所定時間ごと繰り返し行う。
【0041】
<推定内気温の補正処理>
図5は、ステップS103における推定内気温の補正処理の詳細フローチャートである。図5に示すように、エアコンECU29は、推定内気温をもとにTAOを演算する(ステップS201)。その後、前回のTAOは冷やす側の温度であるか否かを判定する(ステップS202)。ここで、前回のTAOとは、前回のルーチンで算出したTAOであり、初期ルーチンの場合は、初期値となる。
【0042】
前回のTAOは冷やす側の温度である場合(ステップS202:Yes)には、冷やす側のTAO補正をもとに推定内気温を補正し(ステップS203)、この補正により、補正後推定内気温を決定し(ステップS206)、ステップS103に戻る。
【0043】
前回のTAOは冷やす側の温度でない場合(ステップS202:No)には、さらに、前回のTAOは温める側の温度であるか否かを判定する(ステップS204)。そして、前回のTAOは温める側の温度である場合(ステップS204:Yes)には、温める側のTAO補正をもとに推定内気温を補正し(ステップS205)、この補正により、補正後推定内気温を決定し(ステップS206)、ステップS103に戻る。
【0044】
一方、前回のTAOは温める側の温度でない場合(ステップS204:No)には、補正を行わず、推定内勤をそのまま補正後推定内気温として決定し(ステップS206)、ステップS103に戻る。
【0045】
<推定内気温の補正処理の変形例>
図6は、変形例によるステップS103における推定内気温の補正処理の詳細フローチャートである。この変形例では、TAO補正をもとにした補正処理を行わず、補正マップを用いた処理を行うようにしている。図6に示すように、まずエアコンECU29は、推定内気温をもとにTAOを演算する(ステップS301)。
【0046】
その後、補正マップM10を用いて、現在の吹出口、現在のブロア風量、及び、物体の表面温度分布を補正マップM10に入力し、補正マップM10によって補正した推定内気温を出力する(ステップS302)。その後、この補正により、補正した推定内気温を補正後推定内気温として決定し(ステップS303)、ステップS103に戻る。
【0047】
ここで、補正マップM10は、現在の吹出口、現在のブロア風量、及び、物体の表面温度分布の3つを入力変数とし、補正された推定内気温を1つの出力変数とするものである。マップ作成に時間を要するが、マップが作成されていれば迅速な補正処理が可能になる。なお、3つの入力変数のうち、現在の吹出口を削除し、2つの入力変数とする補正マップを作成し、用いてもよい。
【0048】
上記の実施形態では、赤外センサなどの温度測定部26を用いて内気温を推定しているので、発熱源やブロア風量に影響を受けずに、かつ、簡易な構成で、車室内の内気温推定を行って空調制御を行うことができる。温度測定部26は、任意の場所に設置することができるので車室内設計が容易になる。
【0049】
また、本実施形態では、少ない温度測定部26の数で乗員の体感温度を精度高く算出することができ、この乗員の体感温度を用い、ユーザ設定温度を目標体感温度とすることによってユーザの温度認識誤差を低減することができる。特に、ユーザ設定温度である目標温度を空気温度ではなく、体感温度(目標体感温度)として制御しているので、冷え過ぎることを防止できる。
【0050】
さらに、本実施形態では、吹出口判定を行っており、例えば、夏場を想定した本実施懈怠によるバイレベルモードによるクールダウンは、ファイスモードによりフェイス吹出口からのみ空調風を吹き出す従来の空調制御よりも、空調風が顔に当たる煩わしさを軽減できる。さらに、夏場では足元が薄着になることを想定すると、従来の空調制御よりも早期に冷え感を感じることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、温度測定部26としての赤外線センサを1つ設けていたが、複数個、設けてもよいし、複数個設けた場合の撮像範囲を異なるようにしてもよい。例えば、1つの赤外線センサが1列目の前席シートを中心に撮像し、他の1つの赤外センサが2,3列目の後席シートを中心に撮像してもおい。また、車両に複数の車両用空調制御装置が設置されている場合、各車両用空調制御装置の空調対象域をそれぞれ異なる赤外センサで撮像するようにしてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、車両として自動車を例に説明したが、電車、飛行機などの各種移動体の室内にも本実施形態は適用することができる。
【0053】
さらに、上述した実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用空調制御装置
2 ダクト
3 ブロアモータ
4 ブロアファン
5 エバポレータ
6 エアミックスドア
7 ヒータコア
9 内気導入口
10 外気導入口
11 内外気切替ダンパサーボモータ
12 内外気切替ダンパ
13 エバフィン温度センサ
14 エアミックスドアサーボモータ
15 デフロスタ吹出口
16 フェイス吹出口
17 フット吹出口
18,19,20 サーボモータ
21,22,23 ダンパ
25 日射量センサ
26 温度測定部
27 エンジン水温センサ
28 外気温度センサ
30 筐体
33 自動モード選択スイッチ
34 マニュアルモード選択スイッチ
35 吹出モード切替スイッチ
36 温度設定スイッチ
37 風量スイッチ
38 内外気切替スイッチ
39 液晶ディスプレイ
40,41,41a,42,42a,43 領域
101 温度取得部
102 推定内気温決定部
103 体感温度算出部
104 吹出口判定部
105 空調制御部
D 温度分布図
ECU エアコン
M10 補正マップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6