(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148774
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】露出型柱脚基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E02D27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056976
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】市岡 大幸
(72)【発明者】
【氏名】岸田 久之
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA02
2D046AA14
2D046AA17
(57)【要約】
【課題】柱型基礎体に対して基礎梁の主筋が機械式定着している露出型柱脚基礎構造において、柱脚から斜め方向に作用する圧縮力に対する耐圧縮性に優れ、施工性も良好な露出型柱脚基礎構造を提供すること。
【解決手段】柱型基礎体10の上にアンカーボルト50にてベースプレート41が固定され、ベースプレート41に鉄骨柱30が固定されており、柱型基礎体10の側面13に固定されている基礎梁20の主筋25の端部にある第1定着板26が柱型基礎体10に定着している、露出型柱脚基礎構造100であり、アンカーボルト50はその下端に第2定着板51を備え、基礎梁20側に配設されている複数の第1アンカーボルト50Aと基礎梁20と反対側に配設されている複数の第2アンカーボルト50Bが含まれており、複数の第1アンカーボルト50Aを、それぞれの第2定着板51の上で相互に繋いでいる定着部補強部材60が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の柱型基礎体の上に直接的もしくは間接的にベースプレートが載置され、該ベースプレートの上面に鉄骨柱が固定されており、該ベースプレートに固定されているアンカーボルトが該柱型基礎体に埋設され、該柱型基礎体の側面に鉄筋コンクリート製の基礎梁が固定され、該基礎梁の主筋の端部にある第1定着板が該柱型基礎体に定着している、露出型柱脚基礎構造であって、
前記アンカーボルトはその下端に第2定着板を備え、該アンカーボルトには、前記基礎梁側に配設されている、複数の第1アンカーボルトと、該基礎梁と反対側に配設されている、複数の第2アンカーボルトが含まれており、
複数の前記第1アンカーボルトを、それぞれの前記第2定着板の上で相互に繋いでいる、定着部補強部材が設けられていることを特徴とする、露出型柱脚基礎構造。
【請求項2】
前記定着部補強部材は、プレートと、該プレートの端面の一部に固定されている該プレートに直交する補強リブとを有し、
前記プレートの前記端面には、複数の前記第1アンカーボルトが嵌まり込む複数の収容溝が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の露出型柱脚基礎構造。
【請求項3】
前記複数の第2アンカーボルトが、別途の前記定着部補強部材の前記収容溝に収容され、相互に繋がれていることを特徴とする、請求項2に記載の露出型柱脚基礎構造。
【請求項4】
前記定着部補強部材は、プレートと、該プレートの端面の一部に固定されている該プレートに直交する補強リブとを有し、
前記プレートの前記端面には、複数の前記第1アンカーボルトと前記第2アンカーボルトの全てが嵌まり込む複数の収容溝が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の露出型柱脚基礎構造。
【請求項5】
前記柱型基礎体の内部において、定着している前記主筋に含まれる下端主筋よりも下方位置に前記第2定着板と前記定着部補強部材が配設されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の露出型柱脚基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露出型柱脚基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造の柱脚の基礎構造として、鉄筋コンクリート製の基礎(柱型基礎体)に埋設されるアンカーボルトにより固定されるベースプレートが柱型基礎体の天端に露出している、露出型柱脚基礎構造や、ベースプレートが基礎(根巻きコンクリート基礎)に埋設されている、根巻き柱脚基礎構造、鉄筋コンクリート製の基礎にベースプレートが埋設されている、埋め込み柱脚基礎構造などがある。その中で、露出型柱脚基礎構造は、一般に半固定柱脚として設計され、設計の際にピン柱脚から固定柱脚まで剛性を変化させることができ、他の柱脚基礎構造に比べて施工が容易であるといった利点を有している。
【0003】
上記する露出型柱脚基礎構造を形成する柱型基礎体の側面には、一方側もしくは複数側に延びる基礎梁が固定されることが多く、基礎梁を形成する主筋(上端主筋と下端主筋)が柱型基礎体に定着される。この主筋の定着を、所定の定着長により確保しようとすると、柱型基礎体の内部で鉄筋が錯綜し、鉄筋の納まりが困難になるといったケースや、鉄筋の錯綜によって柱型基礎体を形成するコンクリートが全域に行き渡らなくなるといったケースが生じる等、施工面と品質面の双方に問題が生じ得ることから、主筋の定着をその端部に設けられている定着板により行う、所謂機械式定着が適用される場合がある。
【0004】
柱型基礎体には、地震時の水平力が柱に作用した際に、柱脚から斜め方向に当該柱型基礎体の底面を斜め下方へ押し出そうとする圧縮力が作用し得ることから、機械式定着にて柱型基礎体における基礎梁の主筋の定着を行う場合は、柱型基礎体のせん断補強対策として、その下方を基礎梁に対して数cm乃至十数cm程度突出させる対策や、正面視U型の所謂かんざし筋を配筋する対策が講じられている。しかしながら、柱型基礎体の下方を基礎梁よりも下方に突出させる対策は、地業において柱型基礎体の底面のみを数cm程度低くする必要があり、現場の施工負荷が大きく、そのための副資材の管理をはじめとして施工コストが増加する等、様々な課題がある。
【0005】
また、かんざし筋を配筋する対策は、基礎梁の主筋を機械式定着にしたとしても、柱型基礎体の内部に鉄筋が錯綜している状況に変わりはないことから、下方からかんざし筋を差し込むことそのものが困難である。そこで、かんざし筋を下方から差し込むことに代えて、正面視J形の所謂J形筋を柱型基礎体の上方から差し込んで、配筋済みの複数のアンカーボルトや各アンカーボルトの周囲に配筋されている帯筋等に仮固定する等の措置が講じられることがある。しかしながら、鉄筋が錯綜している中へさらに別の鉄筋を差し込む対策に変わりはなく、差し込み難さをはじめとして施工負荷が高いといった課題を依然として内包している。
【0006】
以上のことから、柱型基礎体に対して基礎梁の主筋が機械式定着している露出型柱脚基礎構造において、柱脚から斜め方向に作用する圧縮力に対する耐圧縮性に優れ、施工性も良好な露出型柱脚基礎構造が望まれる。
【0007】
ここで、特許文献1には、平断面正方形状の柱型コンクリート体内に、上下高さ方向に沿って、環状の配列で複数配筋される立ち上がり筋と、立ち上がり筋の外回りを包囲するように環状に形成され、立ち上がり筋の上下高さ方向に多段に配筋される複数のフープ筋と、立ち上がり筋よりも内方に位置させて環状の配列で複数配設されるアンカーボルトとが埋設され、露出型柱脚部が設置固定される、露出型柱脚用柱型基礎が提案されている。この露出型柱脚用柱型基礎において、アンカーボルトと柱型コンクリート体の外面との間に、最上段のフープ筋から下方のフープ筋にわたり複数のフープ筋に内接させて、かつ各アンカーボルトに対応した複数の補強プレートが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の露出型柱脚用柱型基礎では、アンカーボルトと柱型コンクリート体の外面との間に、最上段のフープ筋から下方のフープ筋にわたり複数のフープ筋に内接させて、各アンカーボルトに対応した複数の補強プレートが設けられていることから、上記するJ形筋の配筋と同様に、柱型基礎における鉄筋が錯綜している領域に対して別の部材を挿入することから、施工負荷が高いことに変わりはない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、柱型基礎体に対して基礎梁の主筋が機械式定着している露出型柱脚基礎構造において、柱脚から斜め方向に作用する圧縮力に対する耐圧縮性に優れ、施工性も良好な露出型柱脚基礎構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による露出型柱脚基礎構造の一態様は、
鉄筋コンクリート製の柱型基礎体の上に直接的もしくは間接的にベースプレートが載置され、該ベースプレートの上面に鉄骨柱が固定されており、該ベースプレートに固定されているアンカーボルトが該柱型基礎体に埋設され、該柱型基礎体の側面に鉄筋コンクリート製の基礎梁が固定され、該基礎梁の主筋の端部にある第1定着板が該柱型基礎体に定着している、露出型柱脚基礎構造であって、
前記アンカーボルトはその下端に第2定着板を備え、該アンカーボルトには、前記基礎梁側に配設されている、複数の第1アンカーボルトと、該基礎梁と反対側に配設されている、複数の第2アンカーボルトが含まれており、
複数の前記第1アンカーボルトを、それぞれの前記第2定着板の上で相互に繋いでいる、定着部補強部材が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、柱型基礎体の側面に鉄筋コンクリート製の基礎梁が固定され、基礎梁の主筋(上端主筋と下端主筋)の端部にある第1定着板が柱型基礎体に定着している露出型柱脚基礎構造において、ベースプレートに固定されて下端に第2定着板を備えているアンカーボルトのうち、基礎梁側に配設されている複数の第1アンカーボルトを、それぞれの第2定着板の上で定着部補強部材が相互に繋いでいることによって支圧面積が増加し、柱脚から斜め方向に作用する圧縮力に対抗する圧縮ストラットを形成し、支圧力を第1アンカーボルトに円滑に伝達することが可能になる。また、定着部補強部材は、複数の第1アンカーボルトの下端の第2定着板の上に載置されるだけでよいことから、例えばアンカーボルトやその周囲の帯筋、基礎梁から延びる上端主筋や下端主筋が配筋された後に、下方や側方から容易に差し込んで、鉄筋等が錯綜していない領域である、複数の第1アンカーボルトの下端の第2定着板の上に載置することができる。
【0013】
ここで、柱型基礎体が直方体形状の場合に、基礎梁は、柱型基礎体の一つの側面に固定される形態や、二つ以上の側面に固定される形態がある。柱型基礎体の一つの側面に一つの基礎梁が固定される形態では、基礎梁側に配設されている第1アンカーボルトと、基礎梁と反対側に配設されている第2アンカーボルトは一義的に決定される。例えば、第1アンカーボルトと第2アンカーボルトがそれぞれ二本ずつの形態が一例である。
【0014】
一方、柱型基礎体が例えば4本のアンカーボルトを備えていて、相互に直交する二つの側面に二つの基礎梁が固定される形態においては、一方の基礎梁に対する2本の第1アンカーボルトと2本の第2アンカーボルトは、他方の基礎梁に対して、そのうちの1本の第1アンカーボルトは第2アンカーボルトとなり、同様に1本の第2アンカーボルトは第1アンカーボルトとなる。従って、後者の形態では、それぞれの基礎梁に対して第1アンカーボルトとなる2本同士を定着部補強部材で繋ぐため、共通する1本の第1アンカーボルトには2つの定着部補強部材が繋がれることになる。
【0015】
本態様において、「柱型基礎体の上に直接的もしくは間接的にベースプレートが載置され」とは、柱型基礎体の天端面にベースプレートが直接載置されている形態の他に、当該天端面にグラウト層を介してベースプレートが載置されている(従って、間接的にベースプレートが載置されている)形態を含む意味である。
【0016】
また、本発明による露出型柱脚基礎構造の他の態様において、
前記定着部補強部材は、プレートと、該プレートの端面の一部に固定されている該プレートに直交する補強リブとを有し、
前記プレートの前記端面には、複数の前記第1アンカーボルトが嵌まり込む複数の収容溝が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、定着部補強部材が、第1アンカーボルトが嵌まり込む収容溝を備えているプレートと、プレートの端面の一部に固定されていてプレートに直交する補強リブを有していることにより、シンプルな構成の定着部補強部材にて支圧面積を増加させることができ、支圧面積に寄与するプレートが補強リブによって効果的に補強され、支圧力を有効に第1アンカーボルトに伝達する強度を有することができる。例えば、2本の第1アンカーボルトがある場合には、プレートの端面のうち、2つの収容溝に挟まれた領域に補強リブが設けられているのが望ましい。
【0018】
ここで、プレートは、例えば平面視矩形の平鋼等であり、その1つの長辺に複数(例えば2つ)の収容溝が設けられ、それらの間に例えば平鋼により形成される補強リブが溶接等により固定される。また、この平面視矩形のプレートにおける収容溝のある端面に対して、プレートから上方もしくは下方へ延びる補強リブが設けられている形態、プレートから上下に延びる補強リブが設けられている形態、収容溝のある端面と対になっている他方の端面にも補強リブが設けられている形態等、様々な形態があってよい。
【0019】
また、本発明による露出型柱脚基礎構造の他の態様において、
前記複数の第2アンカーボルトが、別途の前記定着部補強部材の前記収容溝に収容され、相互に繋がれていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、複数の第1アンカーボルトに対して支圧力を伝達する定着部補強部材に加えて、複数の第2アンカーボルトに対して支圧力を伝達する別途の定着部補強部材が設けられていることにより、鉄骨柱が基礎梁から離れようとする方向(開こうとする方向)に変位した際に柱型基礎体に生じる圧縮力に対抗する支圧力は第1アンカーボルトに伝達でき、鉄骨柱が基礎梁に近づこうとする方向(閉じようとする方向)に変位した際に柱型基礎体に生じる圧縮力に対抗する支圧力は第2アンカーボルトに伝達することができる。尚、本発明者等によれば、双方の圧縮力に対する耐力のうち、前者の耐力の方が一般に小さくなることから、本発明では、複数の第1アンカーボルトを相互に繋ぐ定着部補強部材を必須の構成としている。
【0021】
また、本発明による露出型柱脚基礎構造の他の態様において、
前記定着部補強材は、プレートと、該プレートの端面の一部に固定されている該プレートに直交する補強リブとを有し、
前記プレートの前記端面には、複数の前記第1アンカーボルトと前記第2アンカーボルトの全てが嵌まり込む複数の収容溝が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、定着部補強部材が、第1アンカーボルトと第2アンカーボルトが嵌まり込む収容溝を備えているプレートと、プレートの端面の一部に固定されていてプレートに直交する補強リブを有していることにより、シンプルな構成の定着部補強部材にて支圧面積を増加させることができ、支圧面積に寄与するプレートが補強リブによって効果的に補強され、支圧力を有効に第1アンカーボルトと第2アンカーボルトの双方に伝達する強度を有することができる。例えば、2本ずつの第1アンカーボルトと第2アンカーボルトがある場合には、プレートの対向する一対の端面のそれぞれに2つの収容溝が設けられ、それぞれの2つの収容溝に挟まれた領域にそれぞれ補強リブが設けられているのが望ましい。
【0023】
また、本発明による露出型柱脚基礎構造の他の態様において、
前記柱型基礎体の内部において、定着している前記主筋に含まれる下端主筋よりも下方位置に前記第2定着板と前記定着部補強部材が配設されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、柱型基礎体の内部において、定着している下端主筋よりも下方位置に第2定着板と定着部補強材が配設されていることにより、柱型基礎体の下方から圧縮ストラットを形成することができ、アンカーボルトに対して支圧力を有効に伝達することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明の露出型柱脚基礎構造によれば、柱型基礎体に対して基礎梁の主筋が機械式定着している露出型柱脚基礎構造において、柱脚から斜め方向に作用する圧縮力に対する耐圧縮性に優れ、施工性も良好な露出型柱脚基礎構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の一例の縦断面図である。
【
図5】実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の一例において、基礎梁に対して鉄骨柱が開く方向に変位した際に生じる力を説明した図である。
【
図6】実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の変形例の縦断面図である。
【
図8】実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の変形例において、基礎梁に対して鉄骨柱が閉じる方向に変位した際に生じる力を説明した図である。
【
図9】実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の他の変形例の横断面図である。
【
図10】定着部補強部材のさらに他の例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る露出型柱脚基礎構造]
図1乃至
図10を参照して、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の一例の縦断面図であり、
図2は、
図1のII-II矢視図である。また、
図3は、定着部補強部材の一例の斜視図であり、
図5は、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の一例において、基礎梁に対して鉄骨柱が開く方向に変位した際に生じる力を説明した図である。
【0029】
露出型柱脚基礎構造100は、鉄筋コンクリート製の柱型基礎体10の側面13に対して、同様に鉄筋コンクリート製の基礎梁20の端面23が固定され、柱型基礎体10の天端面11に対して、グラウト層45を介して鉄骨柱30の下端31に溶接接合されているベースプレート41が載置され、複数(図示例は4本)のアンカーボルト50によりベースプレート41が柱型基礎体10に固定されることによって形成される。
【0030】
鉄骨柱30はH形鋼により形成されている。ここで、鉄骨柱はその他、角形鋼管等によって形成されてもよい。
【0031】
4本のアンカーボルト50のうち、基礎梁20側にある2本は第1アンカーボルト50Aであり、基礎梁20と反対側にある2本は第2アンカーボルト50Bである。各アンカーボルト50は、下端に第2定着板51を備えており、ベースプレート41から突出する上方にナット52が締め付けられている。
【0032】
柱型基礎体10は直方体であり、4つの隅角部に対応する位置に4本のアンカーボルト50が配設され、各アンカーボルト50の間には、複数の立ち上がり筋55が配筋され、各アンカーボルト50と立ち上がり筋55を囲繞する複数の帯筋56が、鉛直方向に間隔を置いて配筋されている。
【0033】
基礎梁20は、上下に2段で、それぞれ4本ずつの上端主筋25Aと下端主筋25Bを有し、各主筋25を囲繞する複数のあばら筋27が、主筋25の長手方向に間隔を置いて配筋されている。
【0034】
また、各主筋25は、その端部に第1定着板26を備え、第1定着板26が第2アンカーボルト50Bの近傍に位置合わせされて、柱型基礎体10の内部に定着している。
【0035】
柱型基礎体10の内部において、2本の第1アンカーボルト50Aのそれぞれの第2定着板51の上には、双方の第1アンカーボルト50Aを相互に繋ぐ定着部補強部材60が配設されている。
【0036】
より詳細には、柱型基礎体10の内部において、基礎梁20の下端主筋25Bよりも下方位置に第2定着板51が位置し、同様に下端主筋25Bよりも下方位置に定着部補強部材60が配設されている。
【0037】
図2と
図3において明瞭に示すように、定着部補強部材60は、平面視矩形(長方形)の鋼製のプレート61と、プレート61の有する複数の端面のうち、一対の端面62,63のそれぞれの一部に対してプレート61に直交する態様で溶接固定されている補強リブ67とを有する。図示例の補強リブ67は、プレート61から上下方向に張り出している。
【0038】
プレート61の端面62,63のうち、一方の端面62には、2本の第1アンカーボルト50Aが嵌まり込む2つの収容溝66が設けられている。
【0039】
以下で説明するように、プレート61によって支圧面積が増加し、柱型基礎体10に作用する圧縮力に対して、支圧面積A(
図2参照)のプレート61から支圧力を効果的に第1アンカーボルト50Aに伝達することが可能になる。その際、プレート61が一対の端面62,63に補強リブ67を備えていることで効果的に補強され、支圧力を有効に第1アンカーボルト50Aに伝達する強度を備えた定着部補強部材60となる。
【0040】
また、端面62では、第1アンカーボルト50Aが収容される2つの収容溝66の間に補強リブ67が設けられていることにより、2本の第1アンカーボルト50Aにて押し込まれたプレート61を効果的に補強することができる。さらに、その対向する端面63にある別途の補強リブ67により、プレート61の全域の剛性が高められる。
【0041】
図1と
図2から明らかなように、定着部補強部材60はその全体が略扁平であることから、各アンカーボルト50や帯筋56,基礎梁20の各主筋25が配筋された後、アンカーボルト50の下方の隙間や側方の隙間を介して内部に差し込み、2つの第1アンカーボルト50Aを対応する収容溝66に挿入させながら、各第2定着板51の上に載置することで設置が完了することから、その取り付け性は極めて良好である。
【0042】
また、アンカーボルト50や帯筋56,立ち上がり筋55、基礎梁20の主筋25が錯綜する領域から少し離れた下方領域に定着部補強部材60が設置されることから、定着部補強部材60の設置が柱型基礎体10の内部の鉄筋等をさらに錯綜させる要因にはならない。そのため、柱型基礎体10を形成するコンクリートをその全域に隙間なく行き渡らせることができ、高品質な柱型基礎体10を施工することが可能になる。
【0043】
ここで、定着部補強部材には、
図3に示す形態の他にも、
図4に示すように、収容溝66のある端面62にのみ、下方に張り出している補強リブ67Aが取り付けられている定着部補強部材60Aであってもよい。その他、図示を省略するが、
図4に示す定着部補強部材60Aに対して、他の端面63にも下方に張り出す補強リブがさらに取り付けられている形態や、
図4に示す形態と異なり、上方に張り出す補強リブが一方の端面62にのみ取り付けられている形態や双方の端面62,63に取り付けられている形態であってもよい。さらに、
図3に示す形態から、端面63に取り付けられている補強リブ67を省略した形態であってもよい。
【0044】
図5に示すように、地震時に作用する水平力により、鉄骨柱30が基礎梁20から離れる方向(従って、双方が開く方向)であるY1方向に変位した際に、柱型基礎体10には、図示するように鉄骨柱30が倒れ込む側の上端(図示例は左上)から斜め方向(対角線方向)の下端(図示例は右下)に向かう圧縮力C1が生じる。
【0045】
柱型基礎体10では、この圧縮力C1の作用方向において、支圧面積Aを有する定着部補強部材60が設けられていることにより、定着部補強部材60の全域にて柱型基礎体10の上方から支圧力q1を受け、支圧力q1(分布荷重である支圧力q1の総和)をそれぞれの第1アンカーボルト50Aに軸力N1として効果的に伝達することができ、有効な圧縮ストラットを形成して、作用する圧縮力C1に対抗することができる。特に、柱型基礎体10の内部において、基礎梁20の下端主筋25Bよりも下方位置に第2定着板51と定着部補強部材60が配設されていることにより、柱型基礎体10の全域に圧縮ストラットを形成することができる。
【0046】
比較対象として、例えば定着部補強部材60がない形態を取り上げると、支圧力を受ける支圧面積は第2定着板51の僅かな面積に留まることから、第1アンカーボルト50Aに伝達できる支圧力は図示する支圧力q1に比べて格段に小さくなる。
【0047】
また、このような圧縮力C1が作用した際には、
図2に示すように、定着部補強部材60は基礎梁20側へX方向に押し出されようとするが、収容溝66が基礎梁20側に開口するようにして第1アンカーボルト50Aが収容されていることにより、定着部補強部材60は2本の第1アンカーボルト50Aを押圧した状態で係合され、この係合状態により定着部補強部材60から第1アンカーボルト50Aへの支圧力の伝達性がより一層高められる。
【0048】
また、定着部補強部材60によって圧縮力C1に対抗できる支圧力を受けて第1アンカーボルト50Aに伝達することから、従来構造のように基礎梁の底面に比べて柱型基礎体の底面を数cm程度下方へ突出させるといった対策を不要にでき、図示例のように、柱型基礎体10と基礎梁20の双方の底面12,22を面一に施工できることから、より一層良好な施工性が得られる。尚、図示例では、基礎体10と基礎梁20の双方の天端面11,21も面一に施工されている。
【0049】
次に、
図6乃至
図8を参照して、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の変形例について説明する。ここで、
図6は、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の変形例の縦断面図であり、
図7は、
図6のVII-VII矢視図である。また、
図8は、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の変形例において、基礎梁に対して鉄骨柱が閉じる方向に変位した際に生じる力を説明した図である。
【0050】
露出型柱脚基礎構造100Aは、
図6と
図7に示すように、2本の第1アンカーボルト50Aを定着部補強部材60が繋ぐことに加えて、他の2本の第2アンカーボルト50Bを別途の定着部補強部材60が繋ぐ点において、
図1等に示す露出型柱脚基礎構造100と相違する。
【0051】
鉄骨柱30は、
図5に示すように基礎梁20から離れる方向に変位することの他にも、基礎梁20に対して近づく方向(従って、双方が閉じる方向)であるY2方向にも変位し得る。そして、このように鉄骨柱30が変位した際に、柱型基礎体10には、図示するように鉄骨柱30が倒れ込む側の上端(図示例は右上)から対角線方向の下端(図示例は左下)に向かう圧縮力C2が生じる。
【0052】
露出型柱脚基礎構造100Aでは、この圧縮力C2の作用方向において、支圧面積Aを有する定着部補強部材60が設けられていることにより、定着部補強部材60の全域にて柱型基礎体10の上方から支圧力q2を受け、支圧力q2(分布荷重である支圧力q2の総和)を第2アンカーボルト50Bに軸力N2として効果的に伝達することができ、有効な圧縮ストラットを形成して、作用する圧縮力C2に対向することができる。
【0053】
すなわち、
図5に示す方向の圧縮力C1と
図8に示す方向の圧縮力C2の双方に対して、それぞれ有効な圧縮ストラットを形成し、各圧縮力C1,C2に対して対抗できる。
【0054】
尚、本発明者等の解析によれば、鉄骨柱30が基礎梁20から離れる方向(開く方向)に変位した際に生じる圧縮力C1が、他方の圧縮力C2に比べて大きくなることが特定されている。このことから、露出型柱脚基礎構造100のように、基礎梁20側の第1アンカーボルト50A同士を繋ぐ定着部補強部材60を必須の構成とし、さらに、露出型柱脚基礎構造100Aのように、第2アンカーボルト50B同士を繋ぐ別途の定着部補強部材60をオプション構成としている。
【0055】
次に、
図9と
図10を参照して、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の他の変形例について説明する。ここで、
図9は、実施形態に係る露出型柱脚基礎構造の他の変形例の横断面図であり、
図10は、定着部補強部材のさらに他の例の斜視図である。
【0056】
露出型柱脚基礎構造100Bは、
図7に示すように、第1アンカーボルト50Aと第2アンカーボルト50Bで相互に異なる定着部補強部材60を適用することに代わり、
図9と
図10に示すように、共通する1枚のプレート61Aの一対の端面64,65にそれぞれ、第1アンカーボルト50Aと第2アンカーボルト50Bが嵌まり込む収容溝66が設けられている定着部補強部材60Bを有する点において、露出型柱脚基礎構造100Aと相違する。
【0057】
定着部補強部材60Bが適用された露出型柱脚基礎構造100Bによっても、露出型柱脚基礎構造100Aと同様に、異なる方向の圧縮力C1,C2の双方に対して、有効な支圧力q1、q2を受けて第1アンカーボルト50Aと第2アンカーボルト50Bに伝達することが可能になる。
【0058】
また、図示を省略するが、
図9において、柱型基礎体10の他の側面13(例えば、
図9における上方の側面13や下方の側面13)に別途の基礎梁20がさらに固定される形態においても、共通する定着部補強部材60Bが全てのアンカーボルト50に跨がってそれぞれを相互に繋いでいることから、鉄骨柱30の様々な方向への変位に起因して生じる圧縮力に対して、有効に対抗する支圧力をプレート61Aの一部領域が受けて、アンカーボルト50に伝達することができる。
【0059】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0060】
10:柱型基礎体
11:天端面
12:底面
13:側面
20:基礎梁
21:天端面
22:底面
23:端面
25:主筋
25A:上端主筋(主筋)
25B:下端主筋(主筋)
26:第1定着板
27:あばら筋
30:鉄骨柱
31:下端
41:ベースプレート
45:グラウト層
50:アンカーボルト
50A:第1アンカーボルト(アンカーボルト)
50B:第2アンカーボルト(アンカーボルト)
51:第2定着板
52:ナット
55:立ち上がり筋
56:帯筋
60,60A,60B:定着部補強部材
61,61A:プレート
62、63,64,65:端面
66:収容溝
67,67A:補強リブ
100,100A:露出型柱脚基礎構造
C1,C2:圧縮力
q1,q2:支圧力
A:支圧面積
N1,N2:軸力