(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148776
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】環境配慮型建物
(51)【国際特許分類】
F24S 20/60 20180101AFI20231005BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20231005BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
F24S20/60
E04B1/76 100A
E04B1/76 200A
E04D13/18 ETD
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056978
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松原 悟志
【テーマコード(参考)】
2E001
2E108
【Fターム(参考)】
2E001DD12
2E001FA16
2E001FA24
2E001NA07
2E001ND02
2E001ND05
2E001ND08
2E001ND27
2E108KK01
2E108NN07
(57)【要約】
【課題】集熱パネルと集熱配管の組み合わせが一組に限定されることなく、従って、太陽熱や太陽光といった再生可能エネルギーをより効果的に有効利用することができ、太陽熱により生成された暖気を清浄な状態で各室に供給することのできる、環境配慮型建物を提供すること。
【解決手段】環境配慮型建物200は、屋根勾配が同方向もしくは逆方向の第1片流れ屋根21及び第2片流れ屋根22と、第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22の間にある、陸屋根23もしくは第3片流れ屋根とを備えている、異種混合屋根20と、第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22の棟頂部25,26もしくはその近傍に取り付けられている、集熱パネル71,72と、暖められた空気である暖気を、複数の棟頂部25,26から1階へ導く複数の集熱配管75とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根勾配が同方向もしくは逆方向の第1片流れ屋根及び第2片流れ屋根と、該第1片流れ屋根と該第2片流れ屋根の間にある、陸屋根もしくは前記屋根勾配に直交する屋根勾配を備えている第3片流れ屋根と、を備えている、異種混合屋根と、
前記第1片流れ屋根と前記第2片流れ屋根の棟頂部もしくはその近傍に取り付けられている、集熱パネルと、
暖められた空気である暖気を、複数の前記棟頂部から1階へ導く複数の集熱配管とを有することを特徴とする、環境配慮型建物。
【請求項2】
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根に、太陽光パネルが取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の環境配慮型建物。
【請求項3】
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根の下の1階のうち、外壁に面する1つの室に複数の前記集熱配管が導かれて前記暖気が集積される、暖気集積室が設けられており、該暖気集積室から隣接室に暖気が供給され、該隣接室から他の室に暖気がさらに供給されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の環境配慮型建物。
【請求項4】
前記暖気集積室と前記隣接室を隔てる間仕切壁には、ダクトレス熱交換器が埋設され、該ダクトレス熱交換器にて前記暖気が清浄された後に該隣接室に供給されることを特徴とする、請求項3に記載の環境配慮型建物。
【請求項5】
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根の下の1階のうち、前記暖気集積室に隣接する循環暖気清浄室がさらに設けられ、該循環暖気清浄室には調湿喚起ユニットが収容されており、
各室に供給された暖気がリターン配管を介して前記調湿喚起ユニットに戻され、該調湿喚起ユニットにて清浄された暖気が、供給配管を介して各室に再度供給されることを特徴とする、請求項3又は4に記載の環境配慮型建物。
【請求項6】
前記循環暖気清浄室の室温度が、前記暖気が再度供給される各室の設定温度と同一、もしくは略同一の温度に設定されていることを特徴とする、請求項5に記載の環境配慮型建物。
【請求項7】
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根の下方には、1階と2階の間にスキップフロアが設けられ、該スキップフロアの下方のうち、外壁側に前記暖気集積室が配設され、該暖気集積室に隣接して該スキップフロアの中央側に前記循環暖気清浄室が配設されていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の環境配慮型建物。
【請求項8】
前記第1片流れ屋根と前記第2片流れ屋根の双方の屋根勾配は逆方向であり、
前記第1片流れ屋根と前記第2片流れ屋根の一方が北東乃至南東の範囲に向けられ、他方が南西乃至北西の範囲に向けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の環境配慮型建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境配慮型建物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、大気汚染や地球温暖化等の環境間題が提起されており、建築分野においても、環境を配慮した、持続可能な自然エネルギー共存型の建物、すなわち、環境配慮型建物の設計や施工が模索されている。環境配慮型建物では、熱や日射を上手くコントロールし、太陽光をはじめとする自然エネルギーを利用することにより、化石エネルギーの使用量を低減しながら快適な室内環境を維持することが可能になる。
【0003】
一般に普及している環境配慮型建物として、屋根の棟頂部やその周辺に集熱パネルを設置し、軒先等から取り込んだ外気を屋根空間において屋根勾配に沿って流す過程で空気を暖め、棟頂部付近にある集熱パネルでさらに暖められた空気(暖気)を集熱配管を介して建物の床下空間に導き、床下空間から建物の各室に暖気を供給する、所謂太陽熱利用システムが適用される場合がある。尚、本明細書において、集熱パネルを用いた暖気の生成及び供給システムを太陽熱利用システムと称し、屋根に設置される太陽光パネルにて電力を得るシステムを太陽光発電システムと称するものとする。
【0004】
太陽熱利用システムは、暖められた空気が上昇気流として流れる性質を利用したものであり、従って、屋根においても棟頂部やその周辺に集熱パネルが設置されるのが一般的であり、床下空間に暖気が供給された後、1階の床面から上方へ吹き出す態様で各室に暖気が供給されるのが一般的である。
【0005】
ここで、
図1を参照して、従来一般の太陽熱利用システムが適用された建物について説明する。
図1は、切妻屋根を備えた2階建ての建物10の模式図である。
【0006】
建物10の屋根1において、棟頂部2は1つであり、屋根1における棟頂部2の周辺に集熱パネル7が設置される。軒先1aからX1方向に取り込まれた外気は、流通過程で暖められ、棟頂部2に導かれるとともに、集熱パネル7にてさらに暖められる。集熱パネル7から床下空間4に延びる集熱配管8は、例えば壁3の内部に配設されている。
【0007】
棟頂部2の周辺の屋根裏空間にある暖気は、集熱配管8を介して床下空間4へX3方向に導かれ、床下空間4において水平方向へX4方向に拡散される。床下空間4にて拡散された暖気は、1階の床にある吹出口5を介して、1階の居室R1や階段室K等へX5方向に供給される。階段室K等を介して、暖気は2階の居室R2やリビングL等にもさらに供給される。尚、各室の外壁には換気口6が設けられており、適宜のタイミングで建物内を循環した暖気が排気され、集熱パネル7にて新たに生成された暖気が床下空間4を経由して各室に循環される。
【0008】
従来の公開技術として、特許文献1には、太陽熱利用機器の運転制御方法が提案されている。この太陽熱利用機器の運転制御方法は、ダンパーおよびファンを設けた屋内ユニットとしてのハンドリングボックスを屋根集熱部に直接または間接的に連結し、ハンドリングボックスからのダクトを屋内もしくは床下空間に導くソーラーシムテムハウスにおいて、ヒートポンプによる屋外ユニット、貯湯ユニットを備え、また、ハンドリングボックスに外気と室内空気を熱交換する換気空気と室内戻り空気を混合して全熱交換器とヒートポンプの空調熱交を設置する。集熱可能な条件として、集熱空気温が全熱交換器を通して外気と室内空気を熱交換して得られた空気よりも高いときは、屋根集熱部での集熱空気を取り入れ、ハンドリングボックスからのダクトを介して屋内もしくは床下空間に導く太陽熱集熱暖房を行い、室温が設定温度よりも低いときは、全熱交換器を通した換気空気と室内戻り空気を混合して吸込んでヒートポンプの空調熱交で暖房する暖房運転を行い、もしくは、室温が設定温度よりも低いときで、屋根集熱部からの集熱空気温が、全熱交換器を通ってきた空気温よりも高い場合は、ヒートポンプの空調熱交で暖房し、ハンドリングボックスからのダクトを介して屋内もしくは床下空間に導く太陽熱集熱暖房を行う。一方、冷房室温設定より室温が高いときは、全熱交換器を通した換気空気と室内空気を混合して吸込み、ヒートポンプ冷房する冷房運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の太陽熱利用機器の運転制御方法においても、屋根の棟頂部周辺に集熱パネル(ここでは屋根集熱部)が設けられ、棟頂部から床下空間に延びるダクトを介して暖められた空気が床下空間に導かれ、床下空間から各室に暖気が供給される構成を有していることから、上記する従来一般の太陽熱利用システムが適用された建物と基本的に変わりはない。
【0011】
ところで、従来の太陽熱利用システムが適用された建物では、上記するように棟頂部は原則的に一つであることから、太陽熱利用システムを構成する集熱パネルと集熱配管の組み合わせは、原則的に一つの組み合わせに限定されることになり、太陽熱の有効利用の観点では改善の余地がある。また、暖められた空気が床下空間に導かれることにより、当該暖められた空気がゴミや粉塵等を往々にして含んでいることから、各室に供給される空気の清浄度に疑問の余地がある。さらに、暖められた空気が床下空間に導かれることから、床下空間の気密性を高める必要があり、その対策に手間と費用がかかる。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、集熱パネルと集熱配管の組み合わせが一組に限定されることなく、従って、太陽熱や太陽光といった再生可能エネルギーをより効果的に有効利用することができ、太陽熱により生成された暖気を清浄な状態で各室に供給することのできる、環境配慮型建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明による環境配慮型建物の一態様は、
屋根勾配が同方向もしくは逆方向の第1片流れ屋根及び第2片流れ屋根と、該第1片流れ屋根と該第2片流れ屋根の間にある、陸屋根もしくは前記屋根勾配に直交する屋根勾配を備えている第3片流れ屋根と、を備えている、異種混合屋根と、
前記第1片流れ屋根と前記第2片流れ屋根の棟頂部もしくはその近傍に取り付けられている、集熱パネルと、
暖められた空気である暖気を、複数の前記棟頂部から1階へ導く複数の集熱配管とを有することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、2つの片流れ屋根(第1,第2片流れ屋根)の間に、陸屋根、もしくは屋根勾配が第1、第2片流れ屋根と直交する別途の第3片流れ屋根がある異種混合屋根を有することにより、2箇所の棟頂部が得られる。この2箇所の棟頂部もしくはその周辺に固有の集熱パネルが設置され、各集熱パネルから1階へ延びる集熱配管が設けられていることにより、太陽熱利用システムを構成する集熱パネルと集熱配管の組み合わせが複数となり、太陽熱のより一層の有効利用を図ることができる。
【0015】
さらに、複数の棟頂部からそれぞれに固有の集熱配管を介して、従来の床下空間ではなく、1階へ暖気が導かれることにより、床下空間に暖気が拡散した際に粉塵やゴミ等を含んで暖気の清浄度が低下するといった課題が解消され、清浄度の高い暖気を1階から上階へ供給することが可能になる。
【0016】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根に、太陽光パネルが取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、第1,第2片流れ屋根のそれぞれに集熱パネルが取り付けられて太陽熱利用システムを有することに加えて、それらの間にある陸屋根等に太陽光パネルが取り付けられることにより、太陽光発電システムも備えて、より一層自然エネルギーを有効利用可能な環境配慮型建物となる。
【0018】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様は、
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根の下の1階のうち、外壁に面する1つの室に複数の前記集熱配管が導かれて前記暖気が集積される、暖気集積室が設けられており、該暖気集積室から隣接室に暖気が供給され、該隣接室から他の室に暖気がさらに供給されることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、陸屋根もしくは第3片流れ屋根の下の1階のうち、外壁に面する1つの室に複数の集熱配管が導かれて暖気が集積される、暖気集積室が設けられていることにより、外壁の有する高気密性と高断熱性を利用した高気密な室に暖気を集積することができる。
【0020】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様において、
前記暖気集積室と前記隣接室を隔てる間仕切壁には、ダクトレス熱交換器が埋設され、該ダクトレス熱交換器にて前記暖気が清浄された後に該隣接室に供給されることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、暖気集積室と隣接室の間の間仕切壁にダクトレス熱交換器が埋設され、ダクトレス熱交換器にて清浄した暖気を隣接室に供給することにより、熱交換率の低下を抑制しながら、清浄度の高い暖気を隣接室に供給することができ、隣接室を介してさらに他の室へも当該暖気を供給することができる。
【0022】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様において、
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根の下の1階のうち、前記暖気集積室に隣接する循環暖気清浄室がさらに設けられ、該循環暖気清浄室には調湿喚起ユニットが収容されており、
各室に供給された暖気がリターン配管を介して前記調湿喚起ユニットに戻され、該調湿喚起ユニットにて清浄された暖気が、供給配管を介して各室に再度供給されることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、陸屋根等の下の1階のうち、外壁側にある暖気集積室に隣接する循環暖気清浄室がさらに設けられ、循環暖気清浄室にある調湿喚起ユニットにて各室に供給された暖気をリターンして再度清浄化し、清浄化された暖気を各室へ再供給することにより、暖気の再清浄化に加えて温湿度を所望に再調整することができる。ここで、調湿喚起ユニットは、建物の全室の調湿喚起を行うことから、全館調湿喚起ユニットと称することもできる。
【0024】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様において、
前記循環暖気清浄室の室温度が、前記暖気が再度供給される各室の設定温度と同一、もしくは略同一の温度に設定されていることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、循環暖気清浄室に冷暖房設備が設けられ、循環暖気清浄室の室温度が、暖気が再度供給される各室の設定温度と同一もしくは略同一の温度に設定されていることにより、各室における冷暖房設備の熱負荷を低減できる。
【0026】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様において、
前記陸屋根もしくは前記第3片流れ屋根の下方には、1階と2階の間にスキップフロアが設けられ、該スキップフロアの下方のうち、外壁側に前記暖気集積室が配設され、該暖気集積室に隣接して該スキップフロアの中央側に前記循環暖気清浄室が配設されていることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、陸屋根等の下方の1階と2階の間にスキップフロアが設けられ、スキップフロアの下方の中央側に循環暖気清浄室が配設されていることにより、建物の中央もしくは略中央に配置された循環暖気清浄室から、各室に延びるリターン配管や再供給配管の全長を可及的に短くすることができる。
【0028】
また、本発明による環境配慮型建物の他の態様において、
前記第1片流れ屋根と前記第2片流れ屋根の双方の屋根勾配は逆方向であり、
前記第1片流れ屋根と前記第2片流れ屋根の一方が北東乃至南東の範囲に向けられ、他方が南西乃至北西の範囲に向けられていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、第1片流れ屋根と第2片流れ屋根の双方の屋根勾配が逆方向であって、一方の屋根が北東乃至南東の範囲(従って、東向き)に向けられ、他方の屋根が南西乃至北西の範囲(従って、西向き)に向けられていることにより、日の出と日の入りあたりの太陽光を利用して集熱することができ、朝晩の暖気を各室に取り込みたい時間帯に暖気を効果的に取り込むことが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の環境配慮型建物によれば、集熱パネルと集熱配管の組み合わせが一組に限定されることなく、太陽熱や太陽光といった再生可能エネルギーをより効果的に有効利用することができ、太陽熱により生成された暖気を清浄な状態で各室に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】従来の環境配慮型建物の一例の縦断面図である。
【
図2】実施形態に係る環境配慮型建物の一例を形成する建物の構成を説明する、東西方向で切断した縦断面図であって、暖気集積室で切断した縦断面図と循環暖気清浄室で切断した縦断面図をともに示す図である。
【
図3】実施形態に係る環境配慮型建物の一例を形成する建物を南北方向で切断した縦断面図である。
【
図4】集熱配管から暖気集積室への暖気の流れと、暖気集積室から隣接室への暖気の流れを、東西方向で切断した縦断面図を用いて説明する図である。
【
図5】集熱配管から暖気集積室への暖気の流れを、南北方向で切断した縦断面図を用いて説明する図である。
【
図6】循環暖気清浄室から延びるリターン配管と再供給配管を介した暖気の流れを説明する、東西方向で切断した縦断面図である。
【
図7】循環暖気清浄室から延びるリターン配管と再供給配管を介した暖気の流れを説明する、南北方向で切断した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る環境配慮型建物の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態に係る環境配慮型建物]
図2乃至
図7を参照して、実施形態に係る環境配慮型建物の一例について説明する。ここで、
図2は、実施形態に係る環境配慮型建物の一例を形成する建物の構成を説明する、東西方向で切断した縦断面図であって、暖気集積室で切断した縦断面図と循環暖気清浄室で切断した縦断面図をともに示す図であり、
図3は、実施形態に係る環境配慮型建物の一例を形成する建物を南北方向で切断した縦断面図である。また、
図4は、集熱配管から暖気集積室への暖気の流れと、暖気集積室から隣接室への暖気の流れを、東西方向で切断した縦断面図を用いて説明する図であり、
図5は、集熱配管から暖気集積室への暖気の流れを、南北方向で切断した縦断面図を用いて説明する図である。さらに、
図6と
図7はそれぞれ、循環暖気清浄室から延びるリターン配管と再供給配管を介した暖気の流れを説明する、東西方向と南北方向で切断した縦断面図である。
【0034】
図2に示す環境配慮型建物を形成する建物100は、二階建ての建物であり、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、木造、もしくはこれらのハイブリット構造の建物である。
【0035】
屋根は、西側に屋根勾配を有する第1片流れ屋根21と、東側に屋根勾配を有する第2片流れ屋根22と、第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22の間にある陸屋根23とを備える異種混合屋根20となっている。ここで、東側とは、北東乃至南東の範囲の方角であり、西側とは、南西乃至北西の範囲の方角である。
【0036】
このように、屋根勾配の異なる二種類の片流れ屋根がそれらの間に陸屋根23を介して配設されていることにより、第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22にはそれぞれに固有の棟頂部25,26が形成される。ここで、陸屋根23に代わり、南北方向に屋根勾配を有する別途の第3片流れ屋根を備えた異種混合屋根であってもよく、この第3片流れ屋根によっても、第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22のそれぞれに固有の棟頂部25,26を形成することができる。
【0037】
図2と
図3を参照すると理解が容易となるが、
図2では、建物100のセンターラインCLの左側に、
図3のA-Aラインで切断した縦断面図を示しており、センターラインCLの右側に、
図3のB-Bラインで切断した縦断面図を示している。
【0038】
第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22のそれぞれの下方空間には、地盤G上にある床下空間30C、1階床31の上の1階居室30A、2階床32の上の2階居室30Bがそれぞれ設けられている。
【0039】
一方、それらの中央にある陸屋根23の下方空間には、1階と2階の間、2階の途中レベルにそれぞれスキップフロア41,42が設けられ、各スキップフロア41,42の上には、ホール40A,40Bが設けられている。例えば、双方のホール40A,40Bがリビングやリビングダイニング、バスルーム等、様々な用途に適用される。また、この陸屋根23の下方空間には、各階を繋ぐ階段(室)がある。
【0040】
図3に示すように、下階のスキップフロア41の下方空間のうち、一方の外壁35(図示例は南側の外壁35)に隣接するエリアに暖気集積室50が配置されており、暖気集積室50に隣接するスキップフロア41の下方空間の中央エリアには、循環暖気清浄室60が配置されている。
【0041】
このような屋根構成と室構成の建物100に対して、集熱パネルと太陽光パネルが設置された環境配慮型建物200を、
図4乃至
図7を参照して説明する。
【0042】
第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22のそれぞれの棟頂部25,26の周辺には、集熱パネル71,72が取り付けられている。第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22のそれぞれの軒先21a,22aからY1方向に取り込んだ外気は、屋根勾配に沿ってY2方向に流れる過程で徐々に暖められ、棟頂部25,26にある集熱パネル71,72にてさらに暖められて暖気が生成される。
【0043】
各集熱パネル71,72から、暖気集積室50に対して固有の集熱配管75が延びている。棟頂部25,26と集熱パネル71,72が中央のホール空間の左右(東西)に離れた位置に設けられていることにより、ホール空間の左右の間仕切壁36のそれぞれの内部にそれぞれの集熱配管75を配設することができ、各集熱配管75の配設空間に余裕があり、双方の集熱配管75の設置作業が相互に錯綜しないことから良好な作業性が保証される。
【0044】
暖気集積室50と、その左右(東西)の隣接室である1階居室30Aとの間の間仕切壁36には、ダクトレス熱交換器77が埋設されている。また、外壁35における1階居室30Aと2階居室30Bの対応位置には、換気口78が埋設されている。
【0045】
各集熱パネル71,72から延びるそれぞれの集熱配管75を介して、Y3方向に暖気が流下し、暖気集積室50へY4方向に送られてここで集積される。そして、暖気集積室50から、ダクトレス熱交換器77を介して隣接室である1階居室30Aへ暖気がY5方向に供給される。
【0046】
1階居室30Aに供給された暖気は、例えば中央のホール空間の階段(室)等を経て各ホール40A,40Bに供給され、例えば上階のホール40Bを介して2階居室30Bに供給される。
【0047】
このような流れで暖気は建物内を循環し、さらに以下で説明するように調湿喚起ユニット80(
図5乃至
図7参照)を介して再清浄化と調湿調整がなされた暖気が再供給されるようになっており、このような暖気の循環が建物内で所定回数実行された後、換気口78を介してY6方向に、暖気の排気や適度な外気の給気等が行われる。
【0048】
図4に示すように、陸屋根23には、太陽光パネル73が取り付けられている。
【0049】
このように、環境配慮型建物200は、各片流れ屋根21,22のそれぞれに集熱パネル71,72が取り付けられて太陽熱利用システムを有することに加えて、それらの間にある陸屋根23に太陽光パネル73が取り付けられることにより、太陽光発電システムも備えていることから、自然エネルギーを最大限利用可能な環境配慮型建物となる。
【0050】
環境配慮型建物200では、2箇所の棟頂部25,26に固有の集熱パネル71,72から、1階へ延びる集熱配管75を介して暖気が1階に供給されることにより、太陽熱利用システムを構成する集熱パネル71,72と集熱配管75の組み合わせが複数となり、太陽熱のより一層の有効利用を図ることができる。
【0051】
また、第1片流れ屋根21と第2片流れ屋根22の双方の屋根勾配が逆方向であって、第1片流れ屋根21が東に向けられ、第2片流れ屋根22が西に向けられていることにより、日の出と日の入りあたりの太陽光を利用して集熱することができ、朝晩の暖気を各室に取り込みたい時間帯に暖気を効果的に取り込むことができる。
【0052】
また、集熱配管75を介して、床下空間30Cではなく、スキップフロア41の下方の暖気集積室50へ暖気が導かれることにより、従来のように床下空間30Cに供給された暖気が拡散した際に粉塵やゴミ等を含んで暖気の清浄度が低下するといった課題が解消され、清浄度の高い暖気を暖気集積室50から隣接室30Aや他の室へ供給することが可能になる。
【0053】
また、床下空間30Cに暖気を取り込み、水平方向へ拡散させる構成でないことから、床下空間30Cの気密性を高める必要がなく、従来のように床下空間の気密性を高めるための対策に要する手間と費用も解消できる。
【0054】
また、集熱パネル71,72と太陽光パネル73が個別(異種)の屋根に取り付けられることにより、例えば、それぞれのパネルの設置工事の際に、複数種の設備工事が錯綜(干渉)することを解消でき、各パネルの納まりの自由度が高められ、各パネルの納まりの簡素化を図ることが可能になる。
【0055】
さらに、各片流れ屋根21,22の間にある陸屋根23の直下に暖気集積室50を設けることにより、双方の片流れ屋根21,22から暖気集積室50に通じる集熱配管75の全長を可及的に短くすることができ、各集熱配管75を異なる間仕切壁36(陸屋根23の直下にある2階や1階の左右にあるそれぞれの間仕切壁36)に配設できることで、各集熱配管75の施工性も良好になる。
【0056】
また、陸屋根23の下方の1階と2階の間にスキップフロア41が設けられ、スキップフロア41の下方のうち、外壁35に面する1つの室に暖気集積室50が形成され、暖気集積室50に複数の集熱配管75が導かれて暖気が集積されることにより、外壁35の有する高気密性と高断熱性を利用した高気密な室に暖気を集積することができる。すなわち、外壁35は、例えば、外壁面材、ポリスチレンフォーム等の断熱ボード、グラスウールボード等の断熱ボード、外壁フレーム、外壁フレームの内部に充填されるグラスウール等の充填断熱材を備えており、高気密性と高断熱性を有する壁を形成する。このような外壁の構造を有効利用することにより、高気密な暖気集積室50を可及的に低コストで形成することができる。
【0057】
暖気集積室50では、ある程度温度上昇した暖気を集積し、これを1階居室30Aやホール40A等に供給することで、各室の温度調整を行う際に、各室の調整温度と暖気との温度差Aと、各室と外気との温度差Bを比較した際に、温度差Bに比べて温度差Aを小さくすることができるため、各室の冷暖房設備の熱負荷の低減に繋がり、省エネルギーを図ることができる。例えば、外気温が0℃、暖気の温度が10℃、各室の調整温度が20℃の場合に、温度差Aは10℃となり、温度差Bは20℃となることから、暖気を各室に供給することによる各室の冷暖房設備の熱負荷低減効果は極めて高くなる。
【0058】
また、各片流れ屋根21,22の間にある陸屋根23の1階に暖気集積室50を設けることにより、双方の片流れ屋根21,22から暖気集積室50に通じる集熱配管75の全長を可及的に短くすることができ、各集熱配管75を異なる間仕切壁36に配設できることで、集熱配管の施工性も良好になる。
【0059】
また、暖気集積室50と隣接室30Aの間の間仕切壁36にダクトレス熱交換器77が埋設され、ダクトレス熱交換器77にて清浄した暖気を隣接室30Aに供給することにより、熱交換率の低下を抑制しながら、清浄度の高い暖気を隣接室30Aに供給することができ、隣接室30Aを介してさらに他の室へも当該暖気を供給することができる。環境配慮型建物200では、床下空間30Cでなく、1階にある暖気集積室50に暖気が集積されることから、集積された暖気の清浄度は極めて高いが、暖気集積室50から隣接室30Aへ暖気を供給する際に、ダクトレス熱交換器77のフィルターを介して暖気の清浄度をさらに高めることにより、清浄度の極めて高い暖気を隣接室30Aに供給することができて好ましい。
【0060】
また、暖気集積室50と隣接室30Aの間にある間仕切壁36にダクトレス熱交換器77が埋設されていることから、暖気集積室50側もしくは隣接室30A側から、ダクトレス熱交換器77の構成要素であるフィルターや蓄熱エレメント等のメンテナンス(水洗い等)が可能になる。
【0061】
図6と
図7に示すように、陸屋根23の下方のスキップフロア41の下方のうち、暖気集積室50に隣接したスキップフロア41の中央側には、循環暖気清浄室60が配設されている。
【0062】
循環暖気清浄室60には、調湿喚起ユニット80が収容されており、冷暖房設備の一例である、エアコンディショナー89(air conditioner)(
図5参照)が設置されている。
【0063】
図6に示すように、循環暖気清浄室60の調湿喚起ユニット80から、各室にリターン配管83や再供給配管84が延びていて、間仕切壁36に埋設されている吸込口86にリターン配管83が接続され、間仕切壁36に埋設されている給気口85に再供給配管84が接続されている。
【0064】
また、
図7に示すように、調湿喚起ユニット80から暖気集積室50を経由して外壁35に外気取り込み配管81と排気配管82が延びている。
【0065】
各室に供給された暖気は、リターン配管83をY10方向に流れて調湿喚起ユニット80に戻され、調湿喚起ユニット80にて再度清浄化が図られ、さらに暖気の温湿度が所望に再調整される。
【0066】
調湿喚起ユニット80にて清浄化と温湿度の調整がなされた暖気は、再供給配管84をY11方向に流れて各室にY12方向に再供給される。
【0067】
このように、調湿喚起ユニット80を利用した暖気の再循環が所定回数実行された後、調湿喚起ユニット80から暖気が屋外へY14方向に排出され、外気が適宜Y13方向で取り込まれる。
【0068】
下階のスキップフロア41の下方の中央側に循環暖気清浄室60が配設されていることにより、建物の中央もしくは略中央に配置された循環暖気清浄室60から、各室に延びるリターン配管83や再供給配管84の全長を可及的に短くすることができる。
【0069】
また、循環暖気清浄室60から各室に延びるリターン配管83や再供給配管84を、原則的に縦方向(垂直方向)に配管することができるため、配管の曲がりが少なくなることで空気抵抗を低減でき、暖気の高循環を長期に亘って保つことが可能になる。
【0070】
さらに、循環暖気清浄室60に冷暖房設備89が設けられ、循環暖気清浄室60の室温度が、暖気が再度供給される各室の設定温度と同一もしくは略同一の温度に設定されていることにより、各室における冷暖房設備の熱負荷を低減できる。
【0071】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0072】
20:異種混合屋根
21:第1片流れ屋根(片流れ屋根)
21a:軒先
22:第2片流れ屋根(片流れ屋根)
22a:軒先
23:陸屋根
25,26:棟頂部
30A:1階居室(隣接室)
30B:2階居室
30C:床下空間
31:1階床
32:2階床
35:外壁
40A,40B:ホール
41,42:スキップフロア
50:暖気集積室
60:循環暖気清浄室
71,72:集熱パネル
73:太陽光パネル
75:集熱配管
77:ダクトレス熱交換器
78:換気口
80:調湿喚起ユニット
81:外気取り込み配管
82:排気配管
83:リターン配管
84:再供給配管
85:給気口
86:吸込口
87:排気口
89:エアコン
100:2階建て建物
200:環境配慮型建物
G:地盤